※この作品はR-18です。

fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ   作:鰻天ぷら

21 / 181
ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト編⑤

ロンドンの冷たい夜雨を切り裂き、巨大な幻獣が高級ホテルの最上階、その豪奢なバルコニーへと音もなく舞い降りた。

 

「ただいまー! 二人とも、待たせたね!」

 

アストルフォがバルコニーのガラス扉を足で押し開けると、暖炉の火が赤々と燃えるスイートルームの暖かな空気が、冷え切ったルヴィアの身体をふわりと包み込んだ。

 

「……遅いわよ、アストルフォ。こっちは待ちくたびれて、ワインが一本空いちゃったじゃない」

「お義姉様……っ!!」

 

革張りのソファでグラスを傾けていた蒼崎青子が呆れたように息を吐き、その隣に座っていた桜が、弾かれたように立ち上がって駆け寄ってきた。

 

アストルフォの腕の中で、泥と雨にまみれ、ドレスが引き裂かれたルヴィアの姿を見た瞬間、桜の紫の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。

 

「お義姉様、ひどい傷……っ! ごめんなさい、私が……私がもっと早く気づいていれば……っ!」

「サクラ……」

 

アストルフォがルヴィアをそっと床に下ろすと、桜は迷うことなく、泥で汚れるのも構わずに姉の身体をきつく抱きしめた。

その温もりと、妹の心からの涙に触れ、ルヴィアが必死で保とうとしていた「エーデルフェルトの当主」としての最後の理性の糸が、音を立てて解けていく。

 

「……サクラ、わたくしの方こそ、謝らなければなりませんわ」

 

ルヴィアは震える手で、桜の背中に腕を回した。

 

「わたくしは……最低の姉ですわ。あなたがようやく見つけた、大切な人……あなたを暗闇から救い出してくれた彼を、わたくしは……っ、奪い取ろうとしてしまった……っ!」

 

ルヴィアの口から、血を吐くような懺悔が零れ落ちる。

妹の恋人に惹かれてしまった自分への嫌悪感。ホテルから逃げ出したのも、自分の狂おしい恋情が、妹の笑顔を再び奪ってしまうことを何よりも恐れたからだ。

 

しかし、桜はルヴィアの胸の中で首を横に振り、涙で濡れた顔を上げて、姉を真っ直ぐに見つめた。

 

「違います、お義姉様。奪うだなんて……そんなこと、言わないでください」

「え……?」

「私、お義姉様にずっと嘘をつかせていました。私を守るために、立派な『当主』という重い鎧を着せて……一人で、震えさせてしまっていた」

 

桜の両手が、ルヴィアの冷え切った両頬を優しく包み込んだ。

かつての虚ろだった妹の瞳には、今やアストルフォから与えられた圧倒的な熱と、自分自身を肯定する強い光が宿っている。

 

「私、アストルフォさんに教えてもらったんです。一人で独占しなくても、彼の熱は……海みたいに広くて、絶対に誰も一人ぼっちにしないって。だから……お義姉様も、もう我慢しないで。私のために、自分を犠牲になんてしないでください……っ」

「サクラ……あなた、本気で……」

「はい。私、お義姉様と一緒に……彼に、甘やかされたいです」

 

それは、魔術師の世界の常識からすれば、あまりにも狂っていて、けれどこの上なく純粋で美しい「赦し」だった。

 

「ほんと、世話の焼ける姉妹ね。……でも、これでやっと全員、素直になれたってわけだ」

 

青子がふっと笑いながら近づいてきて、ルヴィアの頭にポン、と手を乗せた。

最強の魔法使いである彼女の瞳にも、嫌悪感や嫉妬は微塵もない。同じ男のデタラメな熱に当てられ、孤独から救われた者同士の、奇妙で温かい連帯感だけがそこにあった。

 

「……蒼崎、先生……わたくし……っ」

「泣くのはそこまで。ほら、あんた身体中冷え切ってるじゃない。こんな傷だらけで泥だらけのままじゃ、せっかくのお姫様が台無しよ」

 

青子がウインクをして一歩下がると、ずっと三人のやり取りを極上の笑顔で見守っていたアストルフォが、ルヴィアの背後からその身体をすっぽりと抱きしめた。

 

「ひゃっ……! ア、アストルフォ……っ」

 

「ルヴィアの身体、氷みたいだ。早く温めてあげないと!」

 

耳元で囁かれる、甘く低いオスの声。

先ほどの戦闘の余韻と、妹からの完全な赦しを得たことで、ルヴィアの心を守っていた防壁は完全に消滅していた。そのため、彼が放つ『熱』とフェロモンが、何の抵抗もなくルヴィアの脳髄を直接痺れさせていく。

 

「あ……ぁっ、あ、熱い……ですわ……あなたの、胸……っ」

「もっと熱くしてあげる。……青子、桜。手伝ってくれる?」

「ええ。この意地っ張りな令嬢の鎧、三人で綺麗に引っぺがしてあげましょうか」

「はい……お義姉様、すぐに温かくなりますからね」

 

アストルフォの言葉に、青子と桜が妖艶に微笑んで応じる。

ルヴィアは、自分がこれからどうなってしまうのかという圧倒的な羞恥心と、それ以上の、背筋が粟立つような強烈な期待感に、身体をガタガタと震わせた。

 

アストルフォがルヴィアの腰を抱いたまま、彼女を暖炉の前のふかふかな絨毯の上へと静かに下ろす。

青子の手が、ルヴィアの泥にまみれたドレスの背中のジッパーを下ろした。

 

「あっ……だめ……そんな、皆さんの前で……っ」

「もう遅いわよ、ルヴィア。あんたも、この底なし沼みたいな男の熱に、完全に溺れちゃいなさい」

 

青子の手が、破れたドレスをルヴィアの肩から滑り落とす。

同時に、桜の手がルヴィアの冷たい素足に触れ、濡れたストッキングをゆっくりと剥ぎ取っていく。

 

「ひぁっ……! サ、サクラ……あ、そこは……っ!」

「お義姉様、すごく綺麗……。私と同じように、こんなに震えてる」

 

信頼する義理の妹と、かつて敵対すらした最強の魔法使い。その二人によって自らの身ぐるみを剥がされていく背徳感。

そして何より、正面から彼女を抱きすくめ、その無防備な素肌に熱い唇を落としていくアストルフォの存在が、ルヴィアの理性を根底から焼き切っていく。

 

「んんっ……!! ぁ……あぁっ……!」

 

純白の肌着一枚となったルヴィアの鎖骨に、アストルフォが深く吸い付いた。

ちゅっ、と淫らな水音が部屋に響き、彼女の白い肌に真っ赤な所有印が刻み込まれる。

 

「ルヴィア……すっごくいい匂い。キミの身体、全部ボクの熱で染めてあげる」

「あ、アストルフォ……! あぁっ、だめ……そんなに強く、吸われ、たら……っ!」

 

快感にのけぞるルヴィアの背中を、青子のしなやかな手が撫で上げる。

「本当に、すごく敏感なのね。……ほら、アストルフォ。この子のここ、もうこんなに熱を持ってるわよ」

 

青子の指先が、肌着越しのルヴィアの柔らかな膨らみを悪戯っぽく弾く。

「いやぁっ!! あ、蒼崎先生っ……ひっ、ぁああっ!!」

 

さらに、桜の滑らかな頬が、ルヴィアの太ももにすり寄せられる。

「お義姉様……いい匂いがします。アストルフォさんと同じ、甘い匂い……」

 

「あぁぁっ……!! だめ、だめですわ……三人から、そんな……一気に、触れられ……頭が、おかしくなってしまいますわ……っ!」

 

視覚、触覚、嗅覚。すべての感覚が、極上の快楽と途方もない愛情によって満たされていく。

一人で戦い、一人で耐え忍んできたルヴィアの『孤独』は、今や一欠片も残っていなかった。

彼女の視界は快感の涙で完全に霞み、口からは自分でも信じられないほど甘く、だらしない嬌声がとめどなく溢れ出し続ける。

 

「おかしくなっちゃえばいいよ、ルヴィア。ボクたち全員、キミのことが大好きなんだから!」

 

アストルフォは極上の笑みを浮かべ、ルヴィアの最後の布切れを容赦なく剥ぎ取った。

暖炉の赤い光に照らされた彼女の完璧な肢体が、三人きりの濃密な空間に曝け出される。

 

「あ、あぁぁ……っ! アストルフォ……! わたくしを……わたくしを、めちゃくちゃに……っ、あなたの熱で……溶かして……っ!!」

 

もはや、誇り高きエーデルフェルトの当主の面影はない。

ただ愛を乞い、快楽に身をよじる一人の「女」となったルヴィアは、自らアストルフォの首に腕を回し、その熱い唇を貪るように塞いだ。

 

「――んっ! ふぁ……ルヴィア……っ、すごく、甘いよ……っ!」

 

アストルフォの滑らかな舌がルヴィアの口腔を蹂躙し、彼女の甘い唾液を完全に奪い尽くす。

その深く激しい口付けを合図にするように、アストルフォの途方もない熱の塊が、ルヴィアの身体の最も奥深くへと、ゆっくりと、しかし確実に沈み込んでいった。

 

「あぁぁぁぁっ……!! ぁ……あ……っ!!」

 

スイートルームの中に、ルヴィアの泣き叫ぶような、絶頂の嬌声が響き渡る。

青子と桜に見守られ、彼女たちとも体温を交わしながら、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトは、自らの生涯で最も甘く、最も熱い、狂おしいほどの愛の夜の底へと完全に沈んでいったのだった――。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。