fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
時計塔の猟犬として、感情を殺し、ただ任務のためだけに生きてきたバゼット・フラガ・マクレミッツ。
彼女の人生において、誰かにここまで無防備な姿を晒し、あまつさえ肌の熱を分け合うことなど、想像すらしたことがなかった。
「んんっ……!! ぁ……っ、んちゅ……ぁっ……」
ロンドンの夜景を見下ろす、エーデルフェルト別邸の豪奢なメインリビング。
その広大な空間の壁際で、バゼットはアストルフォの逞しい腕の中に完全に閉じ込められ、深く、貪欲な口付けを交わし続けていた。
彼女の鍛え上げられた長身を包んでいたエンジ色のスーツは、すでに重厚な絨毯の上に乱雑に脱ぎ捨てられている。タイトなワイシャツも大きくはだけ、純白の肌着越しに、女性らしい豊かな双眸が荒い呼吸に合わせて激しく上下していた。
「バゼット……キミの唇、すごく柔らかい。……もっと、口開けて?」
「あ、ぁ……だめ、アストルフォ……これ以上、は……私……っ」
「だめじゃないよ。キミも、こんなにボクのこと、強く握りしめてる」
アストルフォの言う通りだった。
彼を突き放すはずのバゼットの両手は、いつの間にか彼の黒いシャツの背中を、まるで溺れる者がしがみつくように、ギュッと強く握りしめていた。
彼から注ぎ込まれる、常人離れした圧倒的な体温と、花のような甘い香りが、バゼットの脳を直接麻痺させていく。魔術回路を回すための冷徹な計算式は、彼がもたらす『快楽』という未知の熱量によって完全に焼き切られていた。
「アストルフォ……っ、貴方の、熱……あ、熱すぎ、ます……っ」
「キミが今まで一人で抱えてた冷たいもの、全部溶かしてあげるって言ったでしょ? だから……もっとボクに甘えて、バゼット」
アストルフォの顔が首筋へと移動し、彼女の白い肌にちゅっ、と吸い付くように熱いキスを落とした。
「ひゃああっ!!」
背筋を突き抜けるような強烈な電流。
今まで痛みと血の匂いしか知らなかった彼女の肌に、初めて「愛される」という強烈な刺激が刻み込まれた瞬間だった。
バゼットの膝から完全に力が抜け、彼女は崩れ落ちるようにアストルフォの胸にすがりついた。彼がしっかりと腰を抱き留めていなければ、そのまま床にへたり込んでいただろう。
「可愛いよ、バゼット。……キミの全部、ボクに見せて」
アストルフォは彼女を軽々と抱き上げると、リビングの中央にあるふかふかの巨大なソファへと、ひどく丁寧に横たえた。
***
一方、その頃。
分厚い防音扉を一枚隔てた奥の巨大な寝室(マスターベッドルーム)では、五人の美女たちが、備え付けのワイングラスを片手に、リビングから微かに漏れ聞こえてくる甘い声に耳を傾けていた。
「……まぁ。あのお堅くて、氷のように冷徹なバゼットさんが、あのような可愛らしい声を出すなんて。……アストルフォの熱というものは、本当に恐ろしい毒ですわね」
ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが、艶やかな金髪を揺らしながら、呆れたように、しかしどこか共感の混じったため息をこぼした。
「ふふっ。でも、お義姉様も昨日の夜は、あんな風に泣いて彼にしがみついていらっしゃいましたよ?」
シルクのネグリジェ姿の桜が、悪戯っぽく微笑みながらルヴィアの肩に寄り添う。
「サ、サクラ! それは言わない約束ですわ! あなただって、わたくしの隣でとんでもない嬌声を……っ!」
顔を真っ赤にして抗議するルヴィアに、桜はくすくすと笑い声を上げた。
「まあ、あんなどこまでも真っ直ぐで、規格外の愛情を向けられたら、どんなに硬い鎧を着てても溶かされちゃうわよね」
蒼崎青子が、大きなベッドに寝転がりながら、ワイングラスの赤い液体を揺らす。
「あのバゼットって子、時計塔じゃ相当な武闘派で、誰も寄り付かないような存在だったんでしょ? ずっと『執行者』っていう機械みたいに生きてきたんだから、あんな風に女の子として全肯定されたら、一溜まりもないわよ」
青子の言葉に、車椅子からベッドに移っていたフィオレが、深く頷いた。
「ええ……。私も、これからの身の振り方を考えていた時、彼が『ただのフィオレ』として私に触れてくれたから……。だから、バゼットさんの今の気持ち、すごくよくわかります」
「私もです。聖女様の依り代として、自分の中が空っぽだと思いかけていた私を、アストルフォ様はいっぱいの愛で満たしてくれました。……バゼットさんも、今、きっとすごく幸せなんだと思います」
レティシアが両手を胸の前で組み、祈るように微笑む。
時計塔の猟犬として恐れられる執行者。
しかし、彼女たちヒロイン五人は、扉の向こうで陥落しようとしているバゼットに対し、一切の嫉妬や優越感を抱いていなかった。
同じ男の、底なしに深く甘い愛によって救われた者同士。彼女たちは、新たな「家族」がその重い鎧を脱ぎ捨て、真の自分を取り戻す瞬間を、温かく、そしてひどく妖艶な共犯者の笑みで見守っていたのだ。
***
「はぁっ……あ、あぁっ……!」
リビングのソファの上。
バゼットのワイシャツは完全に開かれ、純白のランジェリー越しに、アストルフォの熱い指先が彼女の柔らかな肌を撫で回していた。
武術で鍛え抜かれた無駄のない腹筋のラインと、それとは対照的な、女性特有の豊かな胸の膨らみ。
「すごく綺麗だよ、バゼット。キミの身体、戦うためだけにあるんじゃない。……こんなに柔らかくて、温かい」
「アストルフォ……っ、だめ、そんなに見つめられ、たら……私……っ」
恥じらいで顔を真っ赤に染め、両腕で胸元を隠そうとするバゼット。
しかし、アストルフォはその両手首を片手で優しく掴み、彼女の頭上のソファのクッションにふわりと縫い留めた。
「隠さないで。ボクは、キミの全部が大好きだよ。……キミの、強いところも。こうやってボクの下で震えてる、可愛いところも」
アストルフォの顔が近づき、彼女の耳元で低く囁く。
その声に含まれた圧倒的な『オス』の引力に、バゼットの背筋にゾクゾクと甘い痺れが走った。
「あ……っ」
カチャリ、と。最後の障壁であった純白のランジェリーのホックが外される。
豪奢な別邸の柔らかな照明の下、冷徹な執行者として生きてきた彼女の、誰にも見せたことのない無防備な裸身が、完全に彼に曝け出された。
「ひゃああっ!! あ、ああっ……!」
剥き出しになった敏感な頂に、アストルフォの滑らかな舌が這う。
優しく舐め上げ、そしてちゅっ、と強く吸い込まれた瞬間、バゼットの口から、今まで押し殺してきたすべての理性を吹き飛ばすような、甘く高い嬌声が響き渡った。
「あ、熱い……っ! アストルフォ……あぁっ、そこ……っ!」
「バゼット、すごくいい匂い。キミのここ、こんなに熱くなって、硬くなってるよ」
「だめ、だめです……私、どうにカなって、しまいそう……っ!」
快感のあまり、バゼットの身体が弓なりに反り返る。
頭の中が真っ白になり、執行者としての誇りも、任務も、何もかもがどうでもよくなっていく。ただ、自分を貪るこの美しい騎士の熱だけが、世界のすべてだった。
アストルフォの大きな手が、彼女の滑らかな太ももを撫で上げ、最も熱を帯びた秘所へと滑り込んだ。
「ひぃっ……!!」
すでに彼女の身体は、彼を求めて甘い蜜を溢れさせていた。
「……キミも、ボクのこと、こんなに欲しがってるじゃないか」
「あ……はい……っ。私、貴方の、熱が……欲し……っ!」
涙でぐちゃぐちゃになった青灰色の瞳で、バゼットは完全に降伏を宣言した。
彼女は拘束を解かれた両手を伸ばし、アストルフォの首にしっかりと腕を回した。
「私を……っ、戦う道具じゃなくて……ただの女として……抱いてください……っ!」
その懇願を合図に、アストルフォは極上の笑顔を浮かべ、彼女の震える唇を深く塞ぎながら、自らの圧倒的な熱の塊を、バゼットの身体の奥深くへとゆっくりと、しかし確かな力強さで沈み込ませた。
「あぁぁぁぁっ……!! ぁ……あ……っ!!」
バゼットの瞳から、快感と歓喜の涙が堰を切ったように溢れ出した。
熱い。内側から身体が完全に溶かされてしまうほど、熱く、そして途方もなく満たされていく。
ずっと一人で戦ってきた孤独な魂が、彼の愛の熱量によって完全に肯定され、一つに結びついた瞬間だった。
「アストルフォ……! アストルフォ……っ!! 好き……っ、好きです……っ!!」
「ボクもだよ、バゼット……! キミの中、すごくきゅって締め付けてくる……っ」
ソファが激しく軋む音と、肌が打ち据えられる淫らな水音が、リビングに響き渡る。
バゼットは彼の桜色の髪を掻き毟るように抱きしめ、何度も何度も絶頂の波に呑み込まれながら、狂おしいほどの愛と快楽の底へと完全に沈んでいった。
時計塔の最強の猟犬は、今宵、一人の無邪気な騎士の腕の中で、世界で一番幸せな『ただの乙女』へと生まれ変わったのだった――。