※この作品はR-18です。

fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ   作:鰻天ぷら

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ライネス・エルメロイ・アーチゾルテ編⑤

「んんっ……!! ぁ……っ、んちゅ……っ!」

 

ロンドンの郊外に建つ、エーデルフェルト別邸の豪奢なリビング。その広大な空間の中心で、時計塔の若き支配者たるライネス・エルメロイ・アーチゾルテの唇が、桜色の騎士によって容赦なく蹂躙されていた。

鼓膜を揺らす卑猥な水音。舌と舌が絡み合い、極上の紅茶の香りが、彼から発せられる濃厚なオスのフェロモンに完全に塗り潰されていく。

 

(……っ! ば、馬鹿な……私が、こんな……っ!)

 

ライネスは混乱する思考の中で、必死に次期当主(姫君)としての残存理性をかき集めた。

ここで彼に流されれば、自分が築き上げてきた盤上のゲームがすべて崩壊する。エルメロイ派を背負う者として、誰かの庇護下に入るなど、絶対に許されない敗北だ。

 

「はぁっ……! 放し……たまえッ!!」

 

ライネスはありったけの魔力を両腕に込め、アストルフォの胸を思い切り突き放した。

「おっと」

 

アストルフォは抵抗にあっさりと従い、ふわりと一歩後退する。

 

「はぁっ……はぁっ……! 貴様……っ、私を誰だと思っている……っ!」

 

ライネスは乱れたドレスの胸元を片手で押さえ、荒い息を吐きながらアストルフォを鋭く睨みつけた。彼女の青い瞳の奥には、極度の興奮と怒り、そして未知の快楽への恐怖が入り混じっていた。

 

「トリムマウ! 何をしている! 対象を直ちに排除したまえッ!!」

 

ライネスはステッキを突きつけ、自らの絶対的防衛礼装である水銀のメイドに命令を下した。

 

しかし。

 

『……警告。マスターノ心拍数、通常ノ二・五倍。体温異常上昇。……対象排除コマンド、実行――』

水銀の刃がアストルフォに向かって伸びかけた、その瞬間。

『――エラー。対象(アストルフォ)カラノ敵意、及ビ殺意ヲ一切検出セズ。更ニ、マスターノ魔力波形ニ『明確ナ拒絶』ト『強烈ナ受容(渇望)』ガ混在シテイマス。防衛基準ノ判断ニ矛盾ガ発生。システム、一時凍結シマス』

「な……っ!? この、ポンコツが……っ!!」

 

ライネスは信じられないものを見るように、動きを止めた水銀のメイドを振り仰いだ。

主の深層心理を正確に反映する至高の礼装が、「ライネス自身が本当は彼を求めている」と判断し、攻撃を停止したのだ。

 

その滑稽なまでに無情な結末に、周囲で見守っていたヒロインたちから、クスクスと妖艶な笑い声が漏れた。

 

「あらあら。自慢のメイドさんにまで見透かされているじゃない、ライネスちゃん」

 

蒼崎青子が、ワイングラスを片手に意地悪く笑う。

 

「ええ。もう無駄な抵抗はおやめなさいな、エルメロイの姫君。あなたの心は、すでに彼の熱に当てられて、とろとろに溶けかかっているのですから」

 

ルヴィアゼリッタが扇子を揺らし、勝利を確信したような笑みを向ける。

 

極めつけは、かつての自分の手駒であったバゼットだった。

 

「ライネス様……。もう、無理をしないでください。……彼に身を委ねれば、すべてが満たされます。その重たい王冠を下ろすのは、決して敗北ではありません……っ」

 

顔を真っ赤に染め、フリルエプロン姿のまま切々と訴えかけてくる執行者。

 

「お前たち……っ、よくも私を、コケにしてくれたね……っ!」

 

ライネスはギリッと奥歯を噛み締めた。

完全に包囲されている。魔術的な意味ではなく、精神的な逃げ場がどこにもない。彼女が強がれば強がるほど、このむせ返るような愛の巣窟の中では、滑稽な少女の強がりにしか見えないのだ。

 

「誰もライネスをコケになんてしてないよ」

 

再び、アストルフォの優しく、けれど絶対に逃げられない甘い声がすぐ耳元で響いた。

彼がいつの間にか再びライネスの背後に回り込み、その広い胸板で彼女の背中をすっぽりと包み込んでいた。

 

「ひゃっ……! 触るな……っ!」

「トリムマウはポンコツじゃないよ。キミがずっと我慢してきた『誰かに甘えたい』って気持ちに、ちゃんと気づいてくれたんだから。すごく賢いメイドさんだね」

 

アストルフォの両腕が、ライネスの細い腰に回される。

彼から放たれる熱気が、ライネスの上質なドレスを容易く貫通し、素肌を直接焦がすように伝わってくる。

 

「私は……誰にも、甘えない……っ。兄上と、二人で……っ」

「うん、兄さんのことも大事なんだね。でも、今は兄さんはいない。ボクとキミだけだ」

 

アストルフォの顔が、ライネスの華奢な肩口へと沈み込む。

彼の高い鼻梁が、ライネスの白い首筋にすり寄せられ、熱い吐息が直接肌に吹きかけられた。

 

「あっ……んっ……」

「ライネス、すっごくいい匂い。高そうな紅茶の匂いの奥に、キミだけの甘い匂いがする」

 

ちゅっ、と。

アストルフォの滑らかな唇が、ライネスのうなじに吸い付いた。

 

「あぁっ!! ぁ……あ……っ」

 

ライネスのステッキが、カランと音を立てて絨毯の上に滑り落ちた。

次期当主としての計算式も、他者を盤上の駒として扱うサディスティックな余裕も、すべてが彼のもたらす強烈な快感の前に消し飛んだ。

背筋を駆け上がる痺れに、ライネスの足から完全に力が抜け、彼女の小柄な身体はアストルフォの腕の中に完全に預けられる形となった。

 

「だめ……っ、私、は……っ。次期当主、なのに……っ」

「次期当主でも、ライネスは可愛い女の子だよ。……ほら、もっとボクの熱、教えてあげる」

 

アストルフォの大きな手が、ライネスのドレスの背中にある編み上げの紐へと伸びた。

するり、と。極めて器用に、そしてひどく艶めかしい手つきで、彼女を縛り付けていたドレスの拘束が解かれていく。

 

「ひぃっ……! な、なにを……っ! 見ている、皆が……っ!」

ライネスは羞恥で顔を真っ赤にし、涙目で周囲のヒロインたちを見た。

 

「大丈夫ですよ、ライネスさん。……私たちも、そうやって彼に全部剥がされて、幸せにしてもらいましたから」

 

桜がふわりと優しく、慈愛に満ちた(しかし完全にこちらの沼の住人としての)微笑みを向ける。

 

「そうそう。意地っ張りな子ほど、一度堕ちると歯止めが効かなくなるのよねぇ」

 

青子が楽しげにクスクスと笑う。

 

「あぁ……っ、この、悪魔ども……っ!!」

 

ライネスの呪詛のような叫びは、次の瞬間、彼女の背中からドレスが滑り落ち、冷たい空気に晒された純白の素肌をアストルフォの熱い手が撫で上げたことで、甘い嬌声へと強制的に変換された。

 

「ひゃああっ!! ぁ、あ、熱い……っ!! アストルフォ……っ、貴方の、手……っ」

「ライネスの肌、すっごくすべすべだ。雪みたいに白いのに、ボクが触るとすぐにピンク色になる。……すっごく、可愛い」

 

アストルフォの指先が、華奢な肩甲骨をなぞり、そのまま脇腹を滑って、ライネスの柔らかな胸元へと回り込んだ。

ドレス越しに隠されていた、小柄ながらも女性らしい膨らみを、彼の手のひらが下からふわりと包み込む。

 

「あぁぁっ!! だめっ、そこは……っ、んんっ!!」

「だめじゃないよ。キミのここ、こんなにドキドキしてる。ボクの手、すごく気持ちいいんでしょ?」

 

意地悪く囁きながら、アストルフォの親指が、薄い下着越しの敏感な頂を執拗に弾き、転がした。

 

「ああっ……! ひぃっ、あ……っ! おかしく、なる……っ! 狂って、しまう……っ!」

 

時計塔の若き支配者の口から、理性を完全に失った喘ぎ声がとめどなく溢れ出す。

彼女のサディスティックな性癖は、アストルフォという絶対的な無自覚のプレデターの前に完全に反転させられ、ただ快楽を与えられて震えるだけの『究極のマゾヒスト』へと作り変えられようとしていた。

 

「狂っちゃえばいいよ、ライネス。キミの退屈な毎日、ボクが全部、甘くてドロドロの熱で塗り潰してあげるから!」

 

アストルフォはライネスの身体を軽々と抱き上げ、ヒロインたちが見守るリビングの巨大なソファへと、彼女をひどく丁寧に押し倒した。

上から覆い被さってくる、桜色の騎士の圧倒的な熱量と、情欲に濁った紫水晶の瞳。

 

「アストルフォ……! アストルフォ……っ!!」

 

もはや、ライネスの口から彼を拒絶する言葉は一つも出てこなかった。

彼女は涙でぐちゃぐちゃになった顔で自ら彼に腕を伸ばし、その熱を乞うように、自分から唇を塞ぎにいったのだった――。

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