※この作品はR-18です。

fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ   作:鰻天ぷら

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インターバル⑤

ロンドンの空を覆っていた厚い雲が割れ、透き通るような午後の陽光が、レンガ造りの街並みに降り注いでいた。

 

エーデルフェルト家が誇る郊外の広大な別邸。その豪奢なエントランスで、蒼崎青子とルヴィアゼリッタ、そして時計塔から少しだけ顔を出したライネスの三人が、出かけていく一組の男女……いや、一人の騎士と二人の少女の背中を、穏やかな笑みを浮かべて見送っていた。

 

「……たまには、ああいう時間も必要よね。私たちみたいな灰汁の強い女たちが毎日束になって彼を独占していたら、あの子たち、少し息が詰まっちゃうでしょうし」

青子が、窓枠に寄りかかりながらふうっと息を吐く。

 

「ええ。わたくしたちがこうして彼に救われ、気兼ねなく愛を貪れるのも……元を正せば、あの方々が一番最初に彼の熱を受け止め、彼をこの世界に繋ぎ止めてくれたからですわ。……今日一日は、『最初の王妃たち』に彼を譲って差し上げるのが礼儀というものです」

ルヴィアが扇子を広げ、誇り高く微笑む。

 

「……兄上への報告書をでっち上げてきた甲斐があったというものだ。まあ、私としても、昨夜の彼のデタラメな体力のせいで、今日はまともに歩くのすら億劫だからね。……存分に、最初の恋人たちと羽を伸ばしてくればいいさ」

ライネスもまた、壁にもたれかかりながら、首筋に残る赤い痕を指先でなぞって妖艶にくすくすと笑った。

 

桜とバゼットも、別邸の奥で彼らの帰りを待つための準備を進めている。

ロンドンという魔術の陰謀が渦巻く都市において、彼女ら後続の恋人たちが完璧な「防波堤」となり、絶対の安全を確保したからこそ実現した、穏やかな時間だった。

 

***

 

「わぁ……! 見て、フィオレ、レティシア! あそこの時計塔、昨日ボクたちが行ったところ(魔術協会)とは違うやつだ! やっぱり大きいね!」

 

テムズ川沿いの遊歩道。

アストルフォは、フィオレの乗る車椅子をゆっくりと押し、もう片方の腕にレティシアの手を絡ませながら、無邪気な声を上げていた。

彼が指差しているのは、ロンドンの象徴たるビッグ・ベン(ウェストミンスター宮殿)。魔術の秘匿など一切関係ない、純粋な人間の歴史と活気が息づく表の世界の風景だ。

 

「ええ、本当に……。私、本でしか見たことがありませんでした。まさか、自分の目で、こんな風にロンドンの街を歩ける日が来るなんて……」

フィオレは、車椅子の上で膝掛けをぎゅっと握りしめ、目を輝かせていた。

あの暗く冷たいルーマニアの城から、彼が強引に連れ出してくれたからこそ、今、彼女はこの眩しい世界を知ることができている。

 

「アストルフォ様……人が、たくさんいますね。私の故郷とは、全然違います」

レティシアもまた、少しだけ緊張した面持ちで、アストルフォの腕にきゅっとしがみついた。

フランスの純朴な学生だったレティシア。聖女の依り代に選ばれるという数奇な運命に翻弄された彼女の心は、今や彼の温もりなしでは生きていけないほどに満たされ、甘く染め上げられている。

 

「大丈夫だよ、レティシア。ボクがずっと手、繋いでるからね。……ほら、あそこで冷たいアイスクリーム売ってる! 一緒に食べよ!」

 

アストルフォは二人に極上の笑顔を向け、屋台へと駆け出していった。

その無邪気な背中を見つめながら、フィオレとレティシアは顔を見合わせ、ふわりと柔らかく微笑み合った。

 

「……なんだか、不思議ですね。ルヴィアさんやライネスさんのような、魔術世界の頂点に立つような方々が、私たちを気遣って、こうして彼との時間を作ってくださるなんて」

フィオレが、少しだけ申し訳なさそうに、けれど嬉しそうに呟く。

 

「はい。皆さん、すごく綺麗で、強くて……私なんて、ただの学生なのに。……でも」

 

レティシアは、戻ってきたアストルフォから甘いバニラアイスを受け取りながら、彼の紫水晶の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。

 

「アストルフォ様は、私たち皆に、同じだけの熱をくださるから。……だから、不安なんて、これっぽっちもありません」

 

「えへへ! 当たり前だよ! フィオレもレティシアも、青子もルヴィアも、桜もバゼットもライネスも……みーんな、ボクの大切なお姫様だもん!」

 

アストルフォはフィオレの口元に自分のアイスを差し出し、「はい、あーん!」と無邪気に笑った。

 

「あ、ありがとう……アストルフォ。んっ……冷たくて、美味しいわ」

 

フィオレが少しだけ頬を染めてアイスを口に含む。

その唇の端についた白いクリームを、アストルフォが自分の親指でそっと拭い、そのままペロリと舐め取った。

 

「っ……アストルフォ……皆が、見ているわ……」

「誰も見てないよ。みんな、自分のことで忙しいもん。ボクの目には、フィオレとレティシアしか映ってないよ」

 

ただの観光デート。

しかし、彼から発せられる熱を帯びた言葉と、さりげない視線の交差が、二人の少女の胸の奥を、じわり、じわりと甘く焦がしていく。

ロンドンの冷たい風が吹いているはずなのに、彼と触れ合っている部分から、火傷しそうなほどの熱が全身に広がっていくのを感じていた。

 

***

 

夕暮れ時。

ロンドン市内の喧騒から離れ、エーデルフェルト別邸へと帰還した三人。

他のヒロインたちは気を利かせてくれたのか、本館の居住エリアには人気がなく、静寂に包まれていた。

 

「……あっちの、ガラス張りの温室(サンルーム)。行ってみようよ」

 

アストルフォに手を引かれ、フィオレの車椅子と共に案内されたのは、夕日が差し込む美しい温室だった。

色とりどりの蘭や薔薇が咲き誇り、むせ返るような花の香りが満ちている。

外界の冷気を完全に遮断したその空間は、まるで彼ら三人だけのために用意された、秘密の楽園のようだった。

 

「わぁ……綺麗……」

 

レティシアが、夕日に照らされて黄金色に輝く花々を見て感嘆の声を漏らす。

 

アストルフォは、フィオレの車椅子を温室の中央、最も夕日が美しく差し込む場所へと止めると、その前に静かに片膝をついた。

そして、車椅子の横に立つレティシアの手を引き、彼女を自分の隣に座らせるように促した。

 

「アストル、フォ……?」

 

フィオレが、不思議そうに彼を見下ろす。

 

「……今日ね。青子やルヴィアたちが、ボクに言ってくれたんだ。『あの子たちに、ちゃんとお礼を言ってきなさい』って」

 

アストルフォの紫水晶の瞳から、いつもの無邪気な少年の色が消え、どこまでも深く、熱い『オス』の色へと変わる。

 

「お礼、ですか?」

 

レティシアが小首を傾げる。

 

「うん。……ボクが、こうしてロンドンでいっぱいの女の子たちを助けたり、愛したりできるのは……一番最初に、キミたちがボクを受け入れて、愛してくれたからだ。

フィオレが、ルーマニアでボクの恋人になってくれて。

レティシアが、ボクのことを信じて、その身体を預けてくれたから。

……キミたち二人は、ボクの心の、一番大事な『根っこ』なんだよ」

 

「……っ」

 

その言葉に、フィオレとレティシアの瞳から、ポロリと涙が溢れ出した。

時計塔の君主や、最強の魔法使い。そんな圧倒的な強者たちの中に混じり、心のどこかで微かに抱いていた「自分たちは不釣り合いなのではないか」という小さな小さな劣等感。

それが、彼のたった一言で、跡形もなく完全に溶かされ、浄化されていく。

 

「アストルフォ……ずるいわ。そんなこと言われたら、私……っ」

 

フィオレが涙声で震える両手を伸ばすと、アストルフォはその手を優しく包み込み、自らの頬にすり寄せた。

 

「ずるくていいよ。……ボク、フィオレとレティシアのこと、今からいっぱいいっぱい、ずるいくらいに愛してあげるから」

 

アストルフォの顔が上がり、まず、すぐ横で涙を流すレティシアの頬にそっと手を添えた。

 

「レティシア……泣かないで。キミの涙は、ボクが全部飲んであげる」

「あっ……アストルフォ、様……っ」

 

夕日の逆光の中、アストルフォの唇が、レティシアの震える唇に優しく、そしてひどく熱く重なった。

 

「んんっ……!! ぁ……っ、んちゅ……っ」

 

温室に満ちる花の香りが、彼から放たれる濃厚なフェロモンと混じり合い、レティシアの脳髄を直接麻痺させていく。

聖女の依り代としての純潔は、すでに彼によって甘く汚されている。彼女の身体は、彼の唇が触れただけで、条件反射のように熱を帯び、奥から甘い蜜を溢れさせてしまう。

 

「はぁっ……あ……っ。アストルフォ様……私、もっと……っ」

 

レティシアの素朴なワンピースの背中のリボンが、アストルフォの手によってするりと解かれる。

肩から布地が滑り落ち、彼女の白く健康的な素肌が、夕日の赤い光に染め上げられて露わになった。

 

「レティシア……すっごく綺麗。キミの身体、どんどん女の人になっていくね……っ」

「あぁっ! だめ、そんな……フィオレさんが、見ているのに……っ」

 

顔を真っ赤にして車椅子の方を見るレティシア。

しかし、フィオレは目を逸らすどころか、微かに息を荒げ、潤んだ瞳で二人の口付けを見つめていた。

 

「……見せて、レティシア。……私にも、彼の熱を……分けて……っ」

 

フィオレの懇願。

アストルフォはレティシアの腰を抱き寄せたまま、今度はフィオレの車椅子の前へと身を乗り出した。

 

「フィオレ。キミのここ……まだ冷たいでしょ? ボクがいっぱいに温めてあげる」

 

アストルフォの手が、フィオレの膝掛けをそっと払い除け、魔術回路が通っていない、感覚のないはずの彼女の白く細い脚を、ひどく愛おしそうに撫で上げた。

 

「あ……っ!」

 

感覚はないはず。それなのに、彼の手が触れた場所から、火傷しそうなほどの『熱』と、強烈な快感の電流が、直接彼女の脳と子宮へと流れ込んでくる。

 

「アストルフォ……! あぁっ、熱い……! 脚の先まで、あなたの熱が……っ!」

「フィオレの脚、すっごく綺麗だよ。……ボクの熱で、キミの全部を動かしてあげる」

 

アストルフォの顔がフィオレの太ももへと沈み込み、薄いタイツの上から、ちゅっ、と強い愛の印を刻み込む。

 

「ひぃッ!! ぁ、ああっ!! だめ、そこは……っ、んんッ!」

 

脚からの快感にのけぞるフィオレの身体を、今度はレティシアが背後からそっと抱きしめた。

「フィオレさん……熱いですね。私も、すごく熱いです……っ」

レティシアの豊かな胸の膨らみがフィオレの背中に押し当てられ、二人の少女の体温が混じり合う。

 

前からは、アストルフォがフィオレのブラウスのボタンを外し、彼女の柔らかな胸元へと滑らかな舌を這わせる。

「あぁぁっ……! 二人とも……私、おかしくなって……っ、狂ってしまいます……っ!」

 

「狂っちゃえ、フィオレ。レティシアも。……キミたちが、ボクのこと一番最初に愛してくれたんだから。今日は、誰にも邪魔させないで、ボクの熱、全部キミたちの奥まで注いであげる……っ」

 

温室のガラス越しに、完全に日が沈む。

ロンドンの夜の帳の下で、アストルフォと、彼をこの世界に繋ぎ止めた二人の少女による、淫靡で、底なしに甘く、狂おしいほどに濃厚な恩返しの夜が、深く静かに幕を開けたのだった――。

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