fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
完全に日が落ちたロンドン。
外界の冷たい霧を分厚いガラスが遮断する温室(サンルーム)の中は、色とりどりの蘭や薔薇が放つむせ返るような香りと、三人の男女が発するひどく甘い熱気によって、まるで夢の中の楽園のように隔離されていた。
「ああっ……! アストルフォ……私、脚の感覚は、ないはずなのに……っ!」
車椅子の上で、フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアは、自らの茶色の髪を乱しながら、限界まで首を反らせて喘いだ。
魔術回路すら通っていない、白く細い両脚。しかし、アストルフォの火傷しそうなほど熱い手のひらがタイツ越しに撫で上げ、その唇が膝下から太ももへと吸い付くたびに、強烈な快感の痺れが脳の奥底と子宮を直接激しく揺さぶるのだ。
「フィオレの身体が冷たくても、ボクの熱はキミの心の一番奥まで届くよ。……キミが、ボクの最初の恋人なんだから」
アストルフォが顔を上げ、紫水晶の瞳で真っ直ぐにフィオレを見つめる。
その視線に含まれた、圧倒的な肯定と、底なしの慈愛。
数多の強大な魔術師や君主たちが集うこのロンドンのハーレムにおいて、フィオレは心のどこかで「足も動かない、当主も降りた不完全な自分」に微かな負い目を感じていた。
しかし、彼のその一言と熱量が、そんなちっぽけな劣等感を跡形もなく完全に焼き尽くしてくれた。
「アストルフォ……っ、ああ、好き……っ、好きよ……っ」
フィオレは涙でぐちゃぐちゃになった顔で、自らブラウスの胸元を大きくはだけさせた。
「私を……ルーマニアで出会ったあの時のように、いっぱいに、して……っ!」
「うん……! フィオレの全部、ボクの熱で満たしてあげる」
アストルフォが立ち上がり、フィオレの身体を車椅子から軽々と抱き上げた。
そして、温室の奥に設えられていた、分厚い絨毯と無数のクッションが敷き詰められた豪奢な寝所(ソファベッド)へと、彼女をひどく丁寧に横たえた。
「レティシアも、おいで」
アストルフォが、背後で自らのワンピースを胸元までずり下げ、熱い吐息を漏らしていたレティシアに向かって手を伸ばす。
「はい……っ、アストルフォ様……っ」
レティシアは、もはや聖女の依り代としての矜持など欠片もなく、完全に彼に恋焦がれる一人の『メス』の顔つきになっていた。
彼女は彼の手を引き寄せると、自ら彼の広い胸板にすがりつき、その桜色の髪に顔を埋めて、狂おしいほどに甘い匂いを深く吸い込んだ。
「アストルフォ様……私、ずっと……ずっと、皆さんが羨ましかった……っ。皆さんが、夜、貴方に抱かれて……幸せそうな声を、出しているのが……っ」
フランスの純朴だった少女の、不器用で、けれど純度百パーセントの嫉妬と情欲。
アストルフォは極上の笑みを浮かべ、レティシアの白く健康的な背中を強く抱きしめながら、彼女ごと、フィオレの待つ絨毯の上へと倒れ込んだ。
「ああっ……!」
「んっ……レティシア……」
下にはフィオレの柔らかい身体。上にはアストルフォの逞しい筋肉と、レティシアの滑らかな素肌。
三人の体温が、月明かりと魔法の光に照らされた温室の中で、完全に一つに溶け合う。
「ごめんね、レティシア、フィオレ。……ボク、キミたちのこと、絶対に寂しくさせないって約束したのに」
アストルフォは、自らの上着を乱暴に脱ぎ捨てながら、二人の少女の顔を交互に見つめた。
「だから今夜は……時計塔のことも、他の女の子たちのことも全部忘れて。ボクの全部を、キミたち二人だけにあげる」
その独占の宣言は、二人にとってどんな魔術の呪文よりも強力な劇薬だった。
「ひゃああっ!!」
アストルフォの大きな手が、レティシアのワンピースを完全に剥ぎ取り、剥き出しになった健康的な胸の膨らみを、容赦なく下から揉みしだいた。
「あ、熱い……っ! アストルフォ様の手、すごく……っ、あぁっ!!」
同時に、彼の顔はフィオレの首筋へと沈み込み、彼女の白い肌にちゅっ、ちゅっ、と真っ赤な所有印をいくつも刻み込んでいく。
「あぁっ! だめ、そんなに強く……吸われ、たら……っ! 私の頭、真っ白に……っ!」
視覚、触覚、聴覚。すべてが彼のもたらす圧倒的な快楽によって支配される。
レティシアの指先が、快感にのけぞるフィオレの手に絡みつき、二人の少女は互いの熱を確かめ合うように指を強く絡ませた。
「フィオレさん……熱いです……アストルフォ様の熱、私の中まで……っ」
「レティシア……ええ、私も……身体の芯が、溶けてしまいそう……っ」
二人の少女が互いに涙目で見つめ合う中、アストルフォはついに、自らの限界まで膨れ上がった熱の塊を、まずはレティシアの最も熱を帯びた奥深くへと、ゆっくりと沈み込ませた。
「んひぃぃぃッ!! ぁ、あぁぁぁっ!! アストルフォ様ッ!!」
温室のガラスを震わせるほどの、高く、甘い絶頂の嬌声。
聖女の依り代であった少女の清らかな身体が、彼の下でビクンビクンと激しく跳ね、歓喜と快楽の涙がとめどなく溢れ出す。
「レティシア、中、すっごく熱いよ……っ。キミの全部、ボクの熱でいっぱいに……っ」
激しい水音と、肉が打ち据えられる淫らな音が、静寂の温室に響き渡る。
レティシアが絶頂の波に何度も呑み込まれ、白目を剥きそうになるほどに快楽を与え尽くされた直後。
アストルフォは、今度は息も絶え絶えになっているフィオレの華奢な腰を、両手でしっかりと掴み上げた。
「フィオレ……次は、キミの番だ」
「あ……はい……っ。私を、壊して……っ。ユグドミレニアの当主じゃなくて……ただのフィオレとして……抱いて……っ!」
フィオレの恳願を合図に、アストルフォは彼女の身体の最も奥、魔術回路すら届かない魂の深淵にまで届くような、途方もない熱と深さで、彼女を貫いた。
「あぁぁぁぁぁっ……!! ぁ……あ……っ!! 好き……っ、アストルフォ、好きよ……っ!!」
脚が動かないことなど、もはや何の意味も持たなかった。
彼女の全身の細胞が、彼から与えられる圧倒的な愛と快楽の奔流によって完全に蘇り、弾け飛ぶ。
フィオレは自ら上半身を起こし、アストルフォの首に激しくすがりついて、その桜色の髪に狂ったようにキスを繰り返した。
「ボクも、フィオレのこと……レティシアのこと……だぁい好きっ!!」
月明かりの下。
時計塔の陰謀も、次なる戦いの予感も、すべてが彼らの激しい情熱の前に遠ざかっていく。
本館で静かに待つ五人の恋人たちの気遣いに守られながら、アストルフォと、彼をこの世界に繋ぎ止めた『最初の二人の王妃』は、互いの存在を魂の底から確かめ合うように、何度も、何度も、朝の光が温室を照らし出すまで、狂おしいほどに濃厚な愛を交わし続けたのだった――。