fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
エーデルフェルト別邸の、南向きの大きな窓から差し込む午後の陽光が、レースのカーテン越しに豪奢な天蓋付きベッドを黄金色に染め上げていた。
本日はオルガマリーという新たな住人を迎えたこともあり、ヒロインたち総出(もちろん使い魔も駆使して)で広大な別邸の大掃除と模様替えが行われていた。
その「休憩時間」と称して、アストルフォが自室で休んでいた桜・エーデルフェルトの部屋に潜り込んできてから、すでに数時間が経過していた。
「……んっ、はぁ……アストルフォさん……っ」
清々しいはずの午後のベッドの上は、今や完全に二人だけの、むせ返るような甘い熱とシーツの擦れる淫らな音に支配されていた。
桜の透き通るような白い素肌は、彼から与えられた幾度もの絶頂によって桜色に染まり上がり、汗ばんだ柔らかな身体が、アストルフォのがっしりとした胸板にぴたりと張り付いている。
「桜、すっごくいい匂い。お掃除頑張ったから、汗も甘いね」
アストルフォが、桜のうなじに顔を埋め、ちゅっ、と音を立てて熱いキスを落とした。
「ひゃっ……! あ、だめです、お掃除の途中なのに……私、アストルフォさんに触られたら……また、腰が……っ」
桜は抗議するように彼の背中に腕を回すが、その手には全く力がこもっておらず、むしろ彼を逃がさないようにしがみついてしまっている。
かつて、遠縁であるエーデルフェルト家に養女として引き取られた彼女。
義姉であるルヴィアと共に、魔術のみならず淑女としての教養(そして苛烈なプロレス技をも含む護身術)を叩き込まれ、誇り高き「エーデルフェルトの双璧」として健やかに育ってきた。
しかし、その完璧な令嬢としての振る舞いの裏には、常に圧倒的な輝きを放つルヴィアへの小さな引け目と、遠く日本にいる天才肌の実姉(凛)に対する、微かなコンプレックスが隠れていた。
「自分は、本当にこの名門に相応しいのか」という、誰にも言えない重圧。
その彼女の心の最も脆い部分を、この底抜けに明るく、規格外の熱を持った桜色の騎士は、一切の躊躇なく抱きしめ、ただの「サクラ」として純度百パーセントの愛で完全に満たしてしまった。
今の桜の身体は、彼に触れられるだけで、完璧な令嬢としての鎧など一瞬で吹き飛び、極上の快感と幸福感だけでドロドロに溶け去ってしまう体質へと作り変えられていた。
「もう休憩終わり? でも、桜のここ、まだボクのこと欲しがって、トクトク鳴ってるよ?」
アストルフォの大きな手が、桜の滑らかな背中を撫で下ろし、柔らかな双丘の側面を指先でそっと這う。
「あぁっ……! 意地悪、です……っ。アストルフォさんが、私の中を……そんなに熱くするから……っ」
桜の紫の瞳が、情欲と彼への果てしない愛でトロンと濁る。
彼女は自らアストルフォの唇を探り当て、貪るようにその熱を奪い合った。
部屋の中に、舌と舌が絡み合う、甘く卑猥な水音が響き渡る。
しばらくの濃厚な口付けの後。
アストルフォの胸の中で、桜は心地よい気怠さに身を委ねながら、ふと、窓の外の遠い空――遥か東の空へと視線を向けた。
「……どうしたの? 桜」
彼女の僅かな視線の変化に気づき、アストルフォが優しく彼女の頭を撫でる。
「……いえ。少しだけ、遠くにいる『家族』のことを思い出していたんです」
桜は、アストルフォの逞しい大胸筋を指先でなぞりながら、ふわりと、どこか悪戯っぽい微笑みを浮かべた。
「ボク以外の家族? あ、もしかして、日本の……?」
「はい。私の、本当の姉です。……遠坂、凛」
桜の口から紡がれたその名前に、アストルフォはキョトンと首を傾げた。
「リンっていうんだ! 桜のお姉ちゃんなら、きっとすっごく可愛くて、優しい人なんだろうな!」
「ふふっ。可愛いのは確かですが……優しいかと言われると、少し難しいですね。姉さんは、すごく真っ直ぐで、誇り高くて……そして、とても面倒見が良い人ですから」
桜は、かつて遠くから眺めることしかできなかった、太陽のように眩しい姉の姿を思い浮かべた。
第三次聖杯戦争で大聖杯が奪取され、冬木での聖杯戦争が起きなくなったこの世界線。本来なら時計塔に留学してきているはずの凛が、まだロンドンに到着していないのは、冬木の霊脈を預かるセカンドオーナーとしての激務や、世界中で頻発している亜種聖杯戦争の余波への対応に追われているためだ。
「でも、姉さんはすごく鋭いんです。……遠く離れた日本にいても、ルヴィアさんの莫大な資金の動きや、エルメロイ教室の不可解な沈黙……そして何より、私自身の魔力波形が『誰かの色に完全に染まりきっている』ことに、もう気づいているかも」
桜は、自らの身体の奥底で脈打つ、アストルフォから注がれ続けた圧倒的な魔力と熱の残滓を感じながら、頬を赤く染めた。
「そっか! じゃあ、リンももうすぐロンドンに来るかもしれないんだね!」
アストルフォは全く危機感を抱く様子もなく、むしろ目を輝かせた。
「ええ。きっと、私たちが何かの陰謀に巻き込まれていると勘違いして、ドアを魔術で吹き飛ばして助けに来るでしょうね。……『ちょっと桜! ルヴィア! あんたたち、こんなところで何やってるのよ!』って、真っ赤な顔をして怒鳴り込んでくる姿が目に浮かびます」
桜はクスリと笑った。
かつての彼女なら、優秀な姉に対して顔を合わせることに少しの緊張を抱いていたかもしれない。
しかし今は違う。彼女の心には、アストルフォという絶対的な光があり、ルヴィアや青子たちという頼もしい共犯者の家族がいる。
今の桜から見れば、これからこの底なし沼に足を踏み入れようとしている姉の姿は、ひどく愛らしく、そして「彼にどうやって溶かされるのか」という昏い愉悦すら感じさせる対象となっていた。
「リン、怒りんぼさんなの? じゃあ、ボクがいっぱいいっぱいヨシヨシして、ニコニコにしてあげなきゃ!」
アストルフォが、ドンと自分の胸を叩いて無邪気に宣言する。
「……アストルフォさん。姉さんは、すごく意地っ張りで、自分の弱さを絶対に見せない人です。ライネスさんやオルガマリーさん以上に、素直になれない……手強い『ツンデレ』ですよ?」
桜は、アストルフォの首元に両腕を絡ませ、自らの豊かな胸の膨らみを彼の身体にぴったりと押し付けた。
「でも……姉さんも、本当は誰かに甘えたくて、いっぱいいっぱい愛してほしいはずなんです。遠坂の当主として、ずっと一人で気を張って頑張ってきましたから。……だから」
桜の顔が近づき、彼の下唇を甘噛みする。
「姉さんが来たら……私にしてくれたみたいに、姉さんの心も身体も、アストルフォさんのそのデタラメな熱で、ぐちゃぐちゃに溶かしてあげてくださいね……?」
それは、妹から姉への、最大の愛情と、最高に淫らな呪い(招待状)だった。
「うん! 任せて! 桜のお姉ちゃんなら、ボクの大切な家族だもん! 桜と同じくらい、いっぱいいっぱい愛してあげる!」
アストルフォは極上の笑顔で頷き、そのまま桜の身体を再びベッドの上へと押し倒した。
「ひゃっ……! ア、アストルフォさん……っ、まだ、お掃除が……っ」
「お掃除は後! 今は、桜のこと、もっともーっと可愛がってあげる時間!」
アストルフォの熱い唇が、桜の首筋から鎖骨へと滑り落ち、彼女の柔らかな素肌に吸い付く。
「んひぃッ……!! ぁ、あぁぁっ……! だめ、また……私、おかしく、なっちゃう……っ!」
「おかしくなっちゃえ。桜、大好きだよ」
アストルフォの長い指先が、桜の太ももを撫で上げ、最も熱を帯びた秘所のすぐ近くへと滑り込む。
「あぁっ! はぁっ、あ……っ! アストルフォさんの……手、すごく熱い……っ! 奥まで、届いて……っ!」
午後の陽光が差し込むベッドルーム。
遠い東の空から迫り来る「赤い悪魔」の足音を感じながら、桜は愛する騎士の熱に再び完全に理性を溶かされ、甘く、狂おしい嬌声を部屋中に響かせ続けるのだった――。