fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
ロンドンの地下深くに隠蔽された、保守派魔術師たちの秘密工房。
そこは今、硝煙と魔力の残滓、そして濃密な血の匂いに包まれていた。
「……チッ。まさか『第五魔法』の余波すら減衰させる対魔術結界に、神代の合成獣(キメラ)の残骸まで持ち出してくるなんてね。時計塔の古狸どもも、随分と必死じゃない」
蒼崎青子は、土埃で汚れ、ところどころが破れた魔術協会のコートを翻しながら、忌々しそうに舌打ちをした。
彼女の背中合わせに立つのは、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト。彼女の豪奢な青いドレスもまた、戦闘の激しさを物語るように幾重にも裂け、豊かな胸の谷間や太ももの白い肌が露わになっていた。
「ええ。わたくしたちの特許(資金源)を物理的に潰しに来たようですが……少々、見積もりが甘かったようですわね。ですが、この魔力泥棒の霧……鬱陶しいことこの上ありませんわ」
ルヴィアは両手に最高級の宝石(ガンド)を握りしめ、周囲を取り囲む三頭の巨大な合成獣を睨みつけた。
圧倒的な強者である二人にとって、この程度の罠や魔獣は、時間をかければ確実に殲滅できる相手だ。しかし、魔力を吸い取る濃霧の中で戦いを長引かせれば、無傷というわけにはいかない。
「青子、わたくしが三秒だけ結界に穴を開けます。その隙に……」
「ええ、私の魔弾で一匹ずつ粉砕するわ」
二人が魔術回路を極限まで回転させ、決死の反撃に出ようとした、まさにその瞬間だった。
ドガァァァァンッ!!!
地下工房の分厚い天井が、まるで紙屑のように木っ端微塵に粉砕された。
降り注ぐ瓦礫の雨の中、眩いほどの黄金の光を纏って、一頭の幻獣(ヒポグリフ)が舞い降りる。
「やあやあ! ボクのお姫様たちをいじめる悪い子たちは、みーんなお仕置きだよっ!」
桜色の髪をなびかせ、底抜けに明るい声と共に飛び降りてきたのは、アストルフォだった。
彼は空中で黄金の馬上槍(トラップ・オブ・アルガリア)を構えると、着地の勢いそのままに、三頭の巨大な合成獣の懐へと疾風のごとく潜り込んだ。
「アストルフォ……!?」
青子とルヴィアが目を丸くする。
「そりゃそりゃそりゃーっ!!」
一切の魔術に頼らない、純粋かつ極め抜かれた騎士の武芸。
アストルフォの槍が合成獣の脚を掠めた瞬間、呪いのような強制転倒効果が発動し、巨大な獣たちは為す術もなく次々と地響きを立てて倒れ伏した。
そこに、抜く手も見せない剣の一閃が叩き込まれ、数秒前まで二人を包囲していた脅威は、文字通り瞬きする間にただの肉塊へと変わってしまった。
「ふぅ! 間に合ってよかった! 二人とも、怪我はない!?」
アストルフォは剣を納め、振り返って極上の笑顔を向けた。
その背後で、彼が持ち込んだ地上の新鮮な風が、魔力泥棒の鬱陶しい霧を完全に吹き飛ばしていく。
「……っ」
青子とルヴィアは、息を呑んだ。
ホテルや別邸のベッドの上では、あんなにも無邪気で、甘えん坊で、自分たちに抱きついては「大好き」とすり寄ってくる、愛らしい少年。
しかし、戦場に立つ彼の背中は、どこまでも広く、逞しく……数多の死線を潜り抜けてきた『シャルルマーニュ十二勇士』としての、絶対的なオスとしての頼もしさに満ち溢れていた。
魔術世界において、常に頂点に君臨し、誰かに守られることなどなかった彼女たち。
その彼女たちの分厚いプライドの鎧を、彼はこうして、圧倒的な物理の力と純粋な愛情で、いとも容易くぶち抜いてみせるのだ。
「……ええ。本当に、世話の焼ける殿方ですわ。わたくしたちだけで、十分に対処できましたのに」
ルヴィアが、頬をカッと赤く染めながら、強がりのようにツンとそっぽを向く。
「たくっ、いいとこ取りなんだから。……でも、助かったわ。ありがとう、アストルフォ」
青子もまた、口元に隠しきれない女としての甘い笑みを浮かべ、彼へと歩み寄った。
「えへへ! 青子もルヴィアも、ボクの大切なお姫様だもん! ボクが絶対に守るに決まってるじゃないか!」
アストルフォが屈託なく笑い、二人に手を差し伸べようとした、その時。
ガシッ、と。
青子がアストルフォの胸ぐらを強引に掴み、そのまま彼を壁際へと押し付けた。
「わっ!? 青子……?」
「……あんたのその背中見てたら、なんだか無性に、身体の奥が熱くなっちゃったわ」
青子の美しい瞳が、極限の情欲と、彼への独占欲でドロドロに濁っている。
戦闘の興奮(アドレナリン)が、そのまま強烈な雌としての渇望へと直結したのだ。
彼女は言葉を待たずに、アストルフォの唇を貪るように塞いだ。
「んんっ……!! ぁ……っ、ちゅ、んっ……」
激しい舌の絡み合い。青子の豊かな胸が、破れたコート越しにアストルフォの胸板に押し付けられ、形を変える。
「はぁっ……あ……っ、アストルフォ……あんたの熱、全部寄越しなさいよ……っ」
最強の魔法使いが、ただの欲情した女の顔で彼にすがりつく。
「蒼崎先生だけずるいですわ……。アストルフォ……わたくしも、貴方の熱が……欲しいです……っ」
背後から、ルヴィアがアストルフォの腰に腕を回し、その引き締まった背中に、ドレスの裂け目からこぼれる豊満な双丘をむぎゅっと押し当てた。
「ルヴィア……っ、二人とも、すっごく熱いよ。戦闘の後で、汗もかいてるのに……」
「汗の匂いすら、貴方の前では極上の媚薬ですわ……っ。ああ……アストルフォの匂い……っ」
ルヴィアは彼のうなじに顔を埋め、ちゅっ、ちゅっ、と吸い付くように熱いキスを落としていく。
冷たい地下工房の空気は、もはや完全に、三人が発する狂おしいほどの情熱と、むせ返るようなオスのフェロモンに塗り潰されていた。
アストルフォは極上の笑みを浮かべ、二人を同時に抱き寄せた。
「青子、ルヴィア……二人とも、すっごく綺麗だよ。ボクのお姫様たち……いっぱいいっぱい、ご褒美あげるね」
アストルフォの大きな手が、青子の破れたコートの中に滑り込み、彼女の引き締まった、けれど女性らしい柔らかな腹筋を撫で上げ、そのまま胸の膨らみへと到達する。
「あぁっ! はぁっ……! あんたの手、熱い……っ! 奥まで、火がつきそう……っ!」
同時にもう片方の手が、背後にいるルヴィアのドレスのファスナーを一気に下ろし、彼女の透き通るような背中を執拗に愛撫する。
「んひぃッ……!! ぁ、あぁぁっ……! だめ、そんなに激しく、撫でられたら……わたくし、立っていられなく……っ!」
「立ってなくていいよ。ボクに全部預けて?」
アストルフォは二人を抱え込んだまま、魔法の絨毯のように滑らかに、地下工房の一角にある革張りのソファへと彼女たちを押し倒した。
右には蒼崎青子、左にはルヴィアゼリッタ。
時計塔の誰もが恐れる最強の女たちが、今は完全に衣服を剥ぎ取られ、彼の圧倒的な愛情と体温の前に、ただ快楽を乞い、甘い喘ぎ声を上げるだけの『メス』へと成り果てている。
「アストルフォ……っ! 早く……私の中、あんたの熱で、めちゃくちゃにして……っ!」
「わたくしも……っ! わたくしの奥まで、貴方でいっぱいにしてくださいませ……っ!」
「うん……! 二人の全部、ボクがもーっと熱くしてあげる!」
アストルフォの限界まで高まった熱の塊が、二人を交互に、あるいは同時に、狂おしいほどの深さで貫いていく。
「あぁぁぁぁぁっ……!! ぁ……あ……っ!!」
「んひぃぃぃッ!! アストルフォ……っ、好き……愛していますわ……っ!!」
死と隣り合わせの地下空間が、一転して、限界ギリギリの快楽と蜜月に満ちた、極上の愛の巣へと変貌する。
彼女たちの魔法や魔術など、彼がもたらすこの脳髄を溶かすような快感の前には、児戯に等しかった。
最強の女たちが、自らの全てを彼に委ね、朝が来るまで何度も何度も絶頂の波に呑み込まれながら、狂ったように彼の名前を叫び続ける。
それは、アストルフォという一人の騎士が、彼女たちの心を完全に、そして永遠に支配したことを証明する、最高に淫らで、最高に美しい共闘の結末だった――。