※この作品はR-18です。

fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ   作:鰻天ぷら

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インターバル⑭

エーデルフェルト別邸の朝は、甘い疲労と喧騒から始まる。

 

桜との会話を終え、ようやくベッドから這い出した遠坂凛は、借り物のネグリジェの上にガウンを羽織り、少し覚束ない足取りで本館の廊下を歩いていた。

昨夜、アストルフォに一晩中溺れさせられた影響で、太ももの内側が微かに震え、腰の奥には彼が注ぎ込んだ常軌を逸した熱と魔力が、未だにジンジンと脈打っている。

 

(……くそっ。歩くたびに、あいつの感触が……っ。それに、この身体から漂う匂い……完全に、あいつの匂いでコーティングされてるじゃない……っ)

 

顔を真っ赤にして自らの首筋を押さえていた凛だったが、ふと、廊下の向こうから歩いてくる豪奢な青いドレス姿の令嬢と視線がぶつかった。

エーデルフェルトの双璧にして、冬木における最大のライバル――ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトである。

 

「……オーッホッホッホ。随分と遅いお目覚めですわね、遠坂。冬木の管理者ともあろうお方が、たった一晩であの方の愛に腰を抜かして、昼前までベッドから出られないなんて。……本当に、だらしないこと」

 

ルヴィアは優雅に扇子を広げ、凛の首元から胸元にかけて散らばる真っ赤なキスマークを、勝ち誇ったように(そして同じ雌としての共感を含んだ瞳で)見下ろした。

 

「なっ……! ルヴィア、あんたね……っ! 自分の妹(桜)がこんな目に遭っているっていうのに、平然とそれを共有して……あんたの誇りはどこに行ったのよ!」

 

凛は顔に血を上らせて言い返すが、ルヴィアは全く動じず、むしろ自らのドレスの胸元を少しだけはだけさせた。

 

「誇りですって? わたくしは今も昔も、世界で最も気高く誇り高いエーデルフェルトの当主ですわ。……ただ、わたくしの絶対的な価値基準の頂点に『あの方(アストルフォ)に愛されること』が加わっただけのこと。……それに」

 

ルヴィアは、自身の透き通るようなデコルテに刻まれた、凛よりも遥かに濃く、深い無数の赤い印をこれ見よがしに見せつけた。

 

「あの方は、わたくしを愛する時、いつも『ルヴィアが一番綺麗だ』と仰ってくださいますの。……遠坂、貴女のような色気のない小娘では、あの方の底なしの熱量を満足させることなど到底不可能ですわ」

「~~~~ッ! 言ったわねこの金髪縦ロール!! 昨日の夜、あいつは私のことを『世界で一番可愛いお姫様』って言って、朝まで何度も、何度も……っ!!」

 

売り言葉に買い言葉。

かつては魔術の優劣や領地の権利で争っていた二人が、今は完全に「どちらがよりアストルフォに愛され、彼を喜ばせているか」という、極限までレベルが低く、しかし本人たちにとっては死活問題であるマウント合戦を繰り広げていた。

 

「あら、たかが一晩で何を知った口を。わたくしなんて、あの方の手にかかれば、魔術回路の芯までドロドロに溶かされて、自分の名前すら忘れるほどに……っ」

「私だって! あいつの指が触れただけで、頭の中が真っ白になって、もうどうにでもしてって啼かされたんだから……ッ!」

 

互いに顔を真っ赤にして、自分がいかに彼に骨抜きにされ、快楽に溺れているかを自慢し合うという、魔術世界の常識からすれば完全に狂気とも言える口論。

二人の顔が数センチの距離まで近づき、互いの吐息が混じり合おうとした、まさにその時だった。

 

「やあやあ! 二人とも、朝からすっごく元気だね! 何のお話ししてるの?」

「「ひゃああっ!?」」

 

背後から、がっしりとした熱い両腕が伸び、凛とルヴィアの細い腰を、まとめて強引に抱き寄せた。

 

「ア、アストルフォ……っ!?」

「あ、貴方、いつからそこに……っ」

 

アストルフォは、二人の間に顔を突っ込み、極上の笑顔でニコニコと笑っていた。

彼のがっしりとした胸板から放たれる、むせ返るような薔薇の香りとオスのフェロモン。それに触れた瞬間、先ほどまでいがみ合っていた二人の令嬢の身体から、スッと力が抜けた。

 

「ルヴィアも凛も、二人ともボクのこといっぱいいっぱい褒めてくれて、すっごく嬉しい! だからね、どっちが一番なんて決められないよ。……二人とも、ボクの世界で一番大切なお姫様だもん!」

「あ……っ、アストルフォ……っ」

 

アストルフォの顔が、まずはルヴィアのうなじへと沈み込み、ちゅっ、と音を立てて熱いキスを落とした。

 

「んひぃッ……!! ぁ、あ……っ」

 

ルヴィアの扇子が手から滑り落ち、彼女は完全にアストルフォの腕の中に身を預ける。

 

「あぁっ、ルヴィアだけずるい……っ! 私も……っ」

 

凛が抗議の声を上げる前に、アストルフォのもう片方の手が凛のガウンの隙間に滑り込み、彼女の柔らかな胸の膨らみを下からむぎゅっと揉み上げた。

 

「んんひぃッ!! ぁああっ!! だ、だめ、廊下で……っ!」

「だめじゃないよ。二人とも、ボクに触られてすっごく身体熱くなってる」

 

アストルフォは二人の耳元で、甘く、そして脳髄を直接溶かすような低い声で囁いた

。

「ねえ、ルヴィア、凛。……ケンカするくらい元気なら、今からボクと、三人でお部屋に行こっか? ……二人まとめて、腰が立たなくなるまで、いっぱいいっぱいヨシヨシしてあげる」

 

「あぁっ……はい……っ。アストルフォの熱で、私を……もっと、めちゃくちゃにして……っ」

 

凛の青い瞳から、ツンデレの意地が完全に消失し、ただ彼を求めるトロンと濁った色だけが浮かぶ。

 

「わたくしも……っ。遠坂なんかより、わたくしをもっと深く……愛してくださいませ……っ」

 

ルヴィアもまた、彼にすがりつくように息を荒げた。

 

かつてのライバル同士は、アストルフォという無限の熱量の前に、もはや争う意味すら失い、ただ彼に愛される快楽の沼の中で、互いの熱を共有する「最高の共犯者(メス)」として完全に堕ちていくのだった。

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