※この作品はR-18です。

fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ   作:鰻天ぷら

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インターバル⑮

ロンドンの裏通り、テムズ川沿いの薄暗い裏路地を、二つの影が歩いていた。

 

「……なるほどね。ダーニックに大聖杯を奪われたあのアハト翁が、諦めきれずにロンドンに嗅ぎ回る猟犬を放った、と」

 

蒼崎青子は、トレンチコートのポケットに手を突っ込み、口にくわえたタバコから紫煙を吐き出した。

 

「うん! さっきの情報屋のおじさん、そう言ってた! 北の雪のお城(アインツベルン)が、ルーマニアでの聖杯大戦の生き残りの英霊……つまり、ボクを探してるんだって!」

 

アストルフォが、隣で無邪気にケラケラと笑う。

 

二人は、時計塔の監視の目を掻い潜り、ロンドンの魔術的裏社会(情報屋や裏のブローカーたちが集まるパブ)へと潜入し、不穏な噂の裏付けを取ってきた帰りだった。

 

アハト翁――ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルン。

彼は、大聖杯を取り戻すための強烈な執念から、聖杯大戦の当事者であったアストルフォを「大聖杯の鍵」、あるいは「貴重な戦力」として捕獲・利用しようと目論んでいるらしい。

そして情報屋の噂によれば、アインツベルンはアストルフォを誘惑し、捕獲するための『最高傑作のホムンクルス』を新たに鋳造し、ロンドンへ送り込む準備を進めているとのことだった。

 

「……相手は、感情を知らない、ただ命令に従うだけの人形(ホムンクルス)。ハニートラップのつもりかしら。随分と舐められたものね」

 

青子が、忌々しそうに目を細める。

 

「ねえ、アストルフォ。あんた、その雪の城から来るっていうお人形さん……どうするつもり?」

「どうするって、決まってるよ!」

 

アストルフォは、冷たい霧雨の降る裏路地で、ドンと自分の胸を叩いた。

 

「どんな女の子だって、ボクがいっぱいいっぱい抱きしめて、熱を分けてあげれば、絶対にニコニコのトロトロになるんだ! もしその子が感情を知らないお人形さんなら、ボクが世界で一番熱い愛を教えて、ボクの可愛いお姫様にしてあげるだけだよ!」

 

「……っ」

 

一切の迷いもない、アストルフォのその言葉。

相手が自分たちを捕獲するための刺客(兵器)であろうと、女の子である限り、全力で愛して沼に引きずり込むという、あまりにも規格外で狂った宣言。

 

しかし、その宣言こそが、青子たち最強の女たちが、彼に絶対的な敗北を喫し、骨抜きにされた最大の理由だった。

 

「……ふっ、あはははっ! 本当に、あんたって男は……最高に頭がイカれてるわね」

 

青子は腹を抱えて笑い出した。

そして、彼女は急に立ち止まると、吸っていたタバコを石畳に落として踏み消し、そのままアストルフォの首元に腕を絡ませて、彼をレンガ造りの壁へと押し付けた。

 

「わっ!? 青子?」

 

「……でもね、アストルフォ」

 

青子の顔が近づき、彼女の大人びた、むせ返るような女の匂いがアストルフォの鼻腔をくすぐる。

街灯の光が届かない暗がり。最強の魔法使いの瞳が、今は極限の情欲と、強い独占欲でドロドロに濁っていた。

 

「その『新しい雪のお姫様』が来る前に。……まずは、目の前にいる女を、満足させるのが騎士の義務じゃないかしら?」

 

青子の熱い吐息が、アストルフォの唇を掠める。

裏路地の冷たい空気と、青子の身体から発せられる熱のコントラストが、異常なほどの官能を引き立てていた。

 

「青子、すっごく身体熱い。……情報屋のおじさんと話してる時から、ずっとボクのこと見て、ドキドキしてたでしょ?」

 

アストルフォは壁に背を預けたまま、彼女の細い腰を大きな両手でしっかりと抱き寄せた。

 

「……ええ、そうよ。あんたが隣にいるだけで、私、魔術回路の芯からドロドロに溶けちゃいそうで……っ、頭がおかしくなりそうなのよ」

 

青子は自ら彼の唇を貪るように塞いだ。

 

「んんっ……!! ぁ……っ、んちゅ……っ」

 

湿った裏路地に響く、水気を帯びた卑猥な口付けの音。

アストルフォの手が、青子のトレンチコートの隙間に潜り込み、彼女の豊かな胸の膨らみを、服越しに下から力強く揉みしだく。

 

「んひぃッ……!! ぁ、ああっ……! アストルフォ……っ、だめ、こんな外で……っ」

「外だからだめなの? 誰かに見られたら、青子のこんな可愛い顔、ボク以外の人にバレちゃうね」

 

「あぁっ! いじわる……っ、あんたのその熱で、私を……もっと、頭の先まで狂わせて……っ!」

 

青子は完全に理性を手放し、最強の魔法使いの威厳など欠片もなく、ただの欲情した一人の女として彼にすがりつく。

 

北の雪の城(アインツベルン)が、感情を持たない冷たい人形を送り込んでこようとしていることなど、もはや彼女の頭にはなかった。

どんな刺客が来ようとも、この圧倒的な熱源である男の前に立てば、すべてが同じように快楽の沼に溶かされてしまうことを、彼女は自身の身体で痛いほどに理解していたからだ。

 

ロンドンの冷たい夜霧の中。

二つの影は深く重なり合い、アインツベルンの冷徹な陰謀すらも焼き尽くすほどの、狂おしく甘い熱を放ち続けていた――。

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