fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
陽の光が柔らかく降り注ぐ、コッツウォルズのマナーハウスの庭園。
色鮮やかな薔薇のアーチの木陰で、アインツベルンの冷徹なメイドであったはずのホムンクルスは、完全にその機能を融解させ、一人の恋する乙女として甘い産声を上げようとしていた。
「んっ……あ……っ、アストルフォ……。そこ、あつい……っ。お腹の奥、とけちゃう……っ」
アストルフォのがっしりとした太ももの上に跨るように座らされたリーゼリットは、自らの銀色の髪を乱し、彼の分厚い胸板にすがりついていた。
感情の起伏を持たず、ただアイリスフィールを守るための重たい斧を振るうことだけが彼女の存在意義だった。
しかし今、彼女の赤い瞳は完全にトロンと濁り、彼から与えられる未体験の熱と快感に、思考回路を真っ白に染め上げられている。
「リズのここ、すっごく柔らかいね。ボクの手が触れると、ビクンって震えて、可愛い声が出る。……ほら、もっとボクの熱、教えてあげる」
アストルフォの大きな手が、彼女のメイド服の背中から滑り込み、雪のように白い素肌を直接撫で回す。
彼の指先が、背骨のラインをなぞり、そのまま柔らかな双丘の側面へと這い進むたびに、リーゼリットの口から「ひゃああっ」という、今まで発したことのない高く甘い嬌声が漏れた。
「あぁ……っ! アストルフォ……っ、だめ、おかしく、なる……っ。私、こわれちゃう……っ」
「壊れないよ。リズは、今までずっと冷たいお城で頑張ってきたから。ボクがいっぱいいっぱいヨシヨシして、温かい女の子にしてあげるんだ」
アストルフォの顔が近づき、彼女の震える唇を貪るように塞いだ。
「んんっ……!! ぁ……っ、んちゅ……っ、ふぁ……っ」
舌と舌が絡み合い、甘い唾液が交わる卑猥な水音が、静かな庭園に響く。
リーゼリットは自ら彼の首に腕を回し、もっと深く、もっと強く触れてほしいと、自らの熱を帯びた秘所を、服越しに彼の身体へと執拗に押し付けた。
彼がもたらす圧倒的な肯定感と、オスのフェロモン。それが、彼女の魔術回路の芯に眠っていた『雌としての本能』を完全に叩き起こしたのだ。
「すき……っ。アストルフォ、すき……っ。私、もう……斧、もてない……っ。貴方の熱がないと、生きていけない……っ!」
「うん……! リズの全部、ボクがずっと温めてあげる!」
アストルフォの指先が、彼女の最も敏感な部分を的確に、そして果てしなく優しく愛撫する。
「あぁぁぁぁっ……!! ぁ……あ……っ!! アストルフォ……っ!!」
庭園の薔薇が霞むほどの、強烈で甘い絶頂。
リーゼリットは白目を剥きそうになるほどの快楽にのけぞりながら、彼の背中に爪を立て、自らの意思で、彼という太陽の引力に完全に囚われることを選んだ。
小さく痙攣しながら、彼女は至福の笑みを浮かべてアストルフォの胸に顔を埋め、ぽかぽかとした心地よい微睡みの中へと落ちていった。
***
「……あ、あぁ……っ。リズが……あんな、あんな顔で……っ」
その一部始終を、わずか数メートル離れた場所から見せつけられていたセラは、薔薇のアーチの柱にしがみつき、立っているのがやっとの状態だった。
彼女の顔は爆発しそうなほどに赤く染まり、呼吸は荒く、純白のエプロンドレスの胸元が激しく上下している。
止めなければならなかった。アインツベルンのメイドとして、アイリスフィール様に続いて相棒までもが毒牙にかかるのを、命に代えても阻止しなければならなかったはずだ。
だが、彼女の足は一歩も前に出なかった。
アストルフォがリーゼリットを愛撫するたびに放たれる、むせ返るような甘い匂いと、空気を伝わってくる圧倒的な熱気。
それが、セラの鼻腔を犯し、彼女自身の冷たい身体の奥底――子宮の最も深い部分に、ジンジンと焼け付くような『情欲』の火種を植え付けてしまっていたのだ。
(私のお腹の奥が……熱い……っ。リズが撫でられているのを見ているだけで、私の、ここが……きゅうって、疼いて……っ)
セラは、自らの太ももを無意識にギュッと擦り合わせ、溢れ出しそうになる甘い蜜の感覚に、涙目で首を振った。
(だめ……っ、私は、ホムンクルス……っ。あんな、雄の熱に当てられて、発情するなんて……っ、そんな機能、私には……っ)
必死に論理回路を回転させ、自らを律しようとするセラ。
しかし。
「――セラ。ずっと、そこで見てたの?」
「ひゃあっ!?」
不意に、すぐ目の前から声が降ってきた。
ハッと顔を上げると、いつの間にかリーゼリットをベンチに寝かせたアストルフォが、音もなくセラの目の前――鼻先が触れ合うほどの至近距離に立っていた。
「あ、ア、アストルフォ……様……っ! 近い、です……っ、離れて……っ!」
セラは慌てて後退りしようとしたが、背中はすでに薔薇のアーチの柱にぶつかっていた。
逃げ場はない。
ドン、と。
アストルフォのがっしりとした腕が、セラの頭横の柱につかれ、彼女は完全に彼の腕の中に閉じ込められてしまった。
「顔、すっごく真っ赤だよ。それに、息もハァハァしてる」
アストルフォの紫水晶の瞳が、セラの潤んだ赤い瞳を真っ直ぐに射抜く。
その瞳には、獲物を狩るような邪悪さは一切ない。ただただ、「頑張っている女の子を甘やかしたい」という、純度百パーセントの慈愛と、ひどく艶めかしい雄の熱だけが満ちていた。
「こ、これは……っ! 貴方の放つ、その、非常識な魔力のせい、です……っ! 私は、断じて……っ、貴方の破廉恥な行為を見て、興奮など……っ」
「嘘だぁ。セラのここ、ボクのこと欲しがって、トクトク鳴ってるよ?」
アストルフォの手が、そっとセラの胸元に触れた。
服の上からでも、彼女の心臓が早鐘のように打ち鳴らされているのがはっきりと伝わる。
「んひぃッ……!!」
指先が触れた瞬間、セラの全身に強烈な電流が走り、彼女の膝から完全に力が抜け落ちた。
ずるずると座り込みそうになる彼女の細い腰を、アストルフォのもう片方の腕が、力強く、そして優しく抱き留める。
「あぁっ……! だめ、です……っ。私は、アイリスフィール様を……お守りする、メイドで……っ。貴方みたいな、女の人をたぶらかす悪魔に、触れられ、たら……っ」
「セラは、いっつも怒ってて、みんなのお世話をして、すっごく真面目だよね。……リズの斧も重たいけど、セラの『メイドでいなきゃいけない』って気持ちも、すっごく重たくて、冷たかったでしょ?」
アストルフォの顔が近づき、彼の熱い吐息がセラの唇を掠める。
「え……っ」
「セラも、本当は……誰かに『偉いね』って、いっぱいいっぱいヨシヨシしてほしかったんじゃないの?」
その言葉は、セラの胸の奥に分厚く張られていた氷の壁を、一瞬にして打ち砕いた。
誰も、彼女自身の感情を気にかけてくれる者などいなかった。彼女はただの管理用の機能であり、小言を言うための装置でしかなかったからだ。
だが、目の前のこの男は、彼女のそんな強がりをすべて見透かし、その上で、彼女自身を「一人の女の子」として全肯定してくれている。
「あ……ぁ……っ」
セラの瞳から、ポロリと一粒の涙がこぼれ落ちた。
メイドとしての矜持も、アインツベルンへの忠誠も、彼がもたらす圧倒的な肯定感と、身体の奥をドロドロに溶かす情欲の熱の前に、音を立てて崩れ去っていく。
「泣かないで、セラ。……セラの真面目で冷たいところ、全部ボクが、あたたかくしてあげる」
アストルフォの手が、セラの銀色の髪を優しく梳き、そのまま彼女の後頭部を抱き寄せる。
「アストルフォ、様……っ。私、は……っ、あぁ……っ」
セラは、自らの意思で彼の胸板にすがりつき、瞳を閉じた。
薔薇の香りが漂うアーチの影で、アストルフォの熱い唇が、セラの震える唇を優しく、そして逃げ場のないほど深く塞ごうとしていた。
館の窓辺では、凛やルヴィア、そしてアイリスフィールたちが、その様子を紅茶を傾けながら、極上の共犯者の笑みを浮かべて見下ろしていることなど、今の彼女の白く染まった頭には、もう知る由もなかった――。