fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
コッツウォルズのマナーハウス、薔薇が咲き乱れる午後の庭園。
美しいアーチの木陰で、アインツベルンのメイド・セラの分厚い氷の鎧は、たった一言の「偉いね」という言葉と、目前に迫る圧倒的な熱源によって、音を立てて崩壊しようとしていた。
「アストルフォ、様……っ。私、は……っ、あぁ……っ」
セラの赤い瞳から、ポロリと一粒の涙がこぼれ落ちる。
彼女の顔を優しく包み込む、大きく分厚い手のひら。そこから伝わってくる、火傷しそうなほどの体温。
アストルフォの紫水晶の瞳は、セラの瞳を真っ直ぐに捉え、彼女の奥底に隠されていた「女の子としての弱音」をすべて肯定するように、柔らかく微笑んでいた。
「泣かないで、セラ。……セラの真面目で冷たいところ、全部ボクが、あたたかくしてあげる」
彼の顔がゆっくりと近づき、その熱い唇が、セラの震える唇を優しく、そして逃げ場のないほど深く塞いだ。
「んんっ……!! ぁ……っ、んちゅ……っ、ふぁ……っ」
冷徹な論理回路しか持たなかったはずのホムンクルスの脳内に、経験したことのない甘い痺れが爆発的に広がる。
舌と舌が絡み合い、彼の熱い唾液が口内を満たしていく。それは、アインツベルンの城で供給されていた無機質な魔力とは全く違う、純度百パーセントの『オス』の生命力と愛情の塊だった。
「はぁっ……あ……っ、アストルフォ、様……っ。あつい……っ、頭の中が、白く……っ」
セラは自らの両腕を、どうしていいかわからずに空中で彷徨わせていたが、やがて本能の赴くまま、彼のがっしりとした首元にしがみついた。
「セラ、すっごく甘い匂いがする。……いつも怒ってた顔が、今はとろとろになってて、すっごく可愛いよ」
アストルフォの唇が、彼女の口から離れ、そのまま雪のように白い首筋、そしてメイド服の襟元へと這い下がっていく。
ちゅっ、と音を立てて皮膚を吸い上げ、彼のものだという赤い印(キスマーク)を容赦なく刻み込む。
「んひぃッ……!! ぁ、ああっ……! だめ、そんなところ……っ、私、おかしな声が……っ」
「おかしな声じゃないよ。セラがボクに触られて、気持ちよくなってる、可愛い声だもん」
アストルフォの大きな手が、純白のエプロンドレスの背中のファスナーを器用に下ろし、その内側にある素肌へと直接滑り込んだ。
彼の手のひらが、セラの華奢な背筋をなぞり、そのまま柔らかな双丘の側面へと這い進む。
服の上からではなく、直接肌に触れられる強烈な熱と感触。
「あぁぁっ……! はぁっ、あ……っ! アストルフォ様の手……あつい、です……っ! お腹の奥が、ぎゅって、なって……っ!」
セラは完全に自らの足で立つことができなくなり、彼に抱え込まれるようにして身体を預けた。
メイドとしての矜持も、アイリスフィール様を守るという使命も、もうどうでもよかった。
今の彼女の頭を支配しているのは、ただ目の前の男にもっと触れてほしい、自分の中にある冷たくて寂しい空洞を、この途方もない熱でドロドロに満たしてほしいという、ただの一人の女としての情欲だけだった。
「アストルフォ様……っ。すき……っ、私、貴方のこと……っ。お願い、私を……もっと、貴方の熱で、めちゃくちゃに……っ」
涙と快感でぐちゃぐちゃになった顔で、セラは自らの秘所を、彼の逞しい身体へとすり寄せる。
もう後戻りはできない。彼女は自らの意思で、アインツベルンの呪縛を断ち切り、彼という底なしの愛情と快楽の沼へと全身まで浸かりに行ったのだ。
「うん……! セラの全部、ボクがずっと大切にしてあげる!」
アストルフォの指先が、彼女の最も熱を帯びた部分を的確に、そして果てしなく優しく愛撫する。
「あぁぁぁぁっ……!! ぁ……あ……っ!! 好き……っ、アストルフォ様ぁ……っ!!」
薔薇のアーチの影で、冷徹だったメイドは白目を剥きそうになるほどの快楽にのけぞりながら、何度も何度も絶頂の波に呑み込まれていく。
彼女の小さな身体が大きく跳ね、そしてゆっくりと力を失い、至福の吐息と共にアストルフォの広い胸板へと崩れ落ちた。
***
「……はぁ。本当に、見事な手際だこと。うちの騎士殿は、少し目を離すとすぐに新しいお姫様を捕まえてしまうのだから」
静寂が戻った庭園に、優雅で、そして底意地の悪い女の笑い声が響いた。
ハッとしてセラがアストルフォの胸の中で身をすくませると、薔薇のアーチの向こう側から、日傘を差したルヴィアゼリッタ、赤いコートを羽織った遠坂凛、タバコを吹かす蒼崎青子、そして……純白のワンピースに身を包んだ、アイリスフィールが歩いてくるのが見えた。
「ア、アイリスフィール、様……っ! これは、その……っ」
セラは慌てて乱れたエプロンドレスの胸元をかき合わせ、顔から火が出るほど赤面しながら弁解しようとした。
主を守るはずの自分が、その主と同じように、男の腕の中で情けない声を上げて腰を抜かしている。その事実を突きつけられ、パニックに陥るセラ。
しかし、歩み寄ってきたアイリスフィールの赤い瞳には、咎めるような光は一切なかった。
むしろ、どこまでも優しく、そして「同じ熱を知る女」としての共感と慈愛に満ちていた。
「セラ……。もう、言い訳はしなくてもいいのですよ」
アイリスフィールは、アストルフォの胸の中で縮こまるセラの頬に、そっと自らの手を当てた。
「アイリスフィール様……っ」
「貴女も、あの熱を知ってしまったのですね。……冷たかった私たちの身体を、内側から狂わせてしまう、あの優しくて残酷な熱を」
アイリスフィールの首元には、アストルフォが刻み込んだ無数のキスマークが誇らしげに覗いている。彼女の微笑みは、完全に「恋する女」の艶を帯びていた。
「はい……っ。私、アイリスフィール様をお守りしなければならないのに……あの方の熱に触れたら、もう、どうしようもなくて……っ。自分が、ただの淫らな女に……っ」
セラはポロポロと涙をこぼしながら、主の手に頬をすり寄せた。
「オーッホッホッホ! 淫らな女、大いに結構ですわ! むしろ、あの方の前に立って、そうならない女がいたらお目にかかりたいものですわね!」
ルヴィアが扇子を揺らしながら、高らかに笑う。
「そうそう。あんたの主なんて、昨日の夜、あいつに抱かれながら信じられないくらい甘い声で啼いてたんだから。あんたが落ちるのも時間の問題だったってわけよ」
青子が意地悪く笑いながら、紫煙を吐き出す。
「ちょっ、蒼崎先生! さすがにそれは……っ、それにルヴィア、あんたも前に私にマウント取ってきたくせに……っ」
凛が顔を赤くしてツッコミを入れるが、彼女自身の表情も完全に「こちらの沼」に定着した者の余裕に満ちていた。
「やあやあ! みんな揃ってどうしたの? ちょうどセラもリズも、ボクのお姫様になったところだよ!」
アストルフォは、隣のベンチで幸せそうに眠るリーゼリットと、胸の中で真っ赤になっているセラを両腕で抱え込みながら、満面の笑みでヒロインたちを迎え入れた。
「ええ、見ていましたわ。……ようこそ、セラ、リーゼリット。私たちの『狂ったお城』へ」
アイリスフィールが、クスリと妖艶に笑い、セラの頭を優しく撫でる。
「アインツベルンの悲願なんて、もうどうでもいいのです。……私たちはこれから、この人の腕の中で、ただの女の子として、永遠に甘やかされればいいのですから」
「……はい、アイリスフィール様。……私、もう……アストルフォ様から、離れられません……っ」
セラは、完全に敗北と幸福を受け入れ、自らアストルフォの胸板にすり寄って、その熱い体温に身を委ねた。
眠っていたリーゼリットも目を覚まし、「……アストルフォ、あったかい。……みんな、あったかい」と、アイリスフィールやセラの手に触れて微笑む。
コッツウォルズの美しい陽光の下。
かつては敵対し、冷徹な使命を帯びていたアインツベルンの主従は、エーデルフェルトや時計塔の魔術師たちと共に、一人の騎士の無限の熱量によって完全に一つに溶け合い、誰も逃れられない、そして誰も逃げようとしない、極上の『家族(ハーレム)』として完成を果たしたのだった――。