fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
ロンドン・ヒースロー空港の奥深く、一般客は決して立ち入ることのできないVIP専用ターミナル。
灰色の空の下、滑走路で静かに待機していたのは、一国の首脳が使用するレベルの超大型プライベートジェット機だった。
「オーッホッホッホ! さあ皆様、どうぞお乗りになって。極東の田舎町までの退屈な空の旅も、わたくしの手配した空飛ぶ宮殿(ホテル)ならば、極上の時間に変わりますわよ」
ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが、タラップの前で扇子を揺らしながら誇らしげに胸を張る。
その背後で、ヒロインたちが次々とタラップを登っていく中、間桐桜――いや、エーデルフェルトの養女である彼女は、少しだけ立ち止まり、冷たい風に紫の髪を揺らしながら空を見上げていた。
「……冬木。お姉ちゃんがずっと(実質的に)一人で守ってきた街。……私にとっては、幼い頃に離れた、故郷の地ですね」
桜の美しい紫の瞳に、微かな不安と、得体の知れない緊張感が過る。
魔術の血を残すため、遠くフィンランドの地へ送られた彼女には、冬木という土地への郷愁も、そこに住む人々との面識もほとんどない。
彼女の帰る場所は、エーデルフェルトの洋館であり、そして今は……。
「桜、どうしたの? 寒いの?」
不意に、背後からふわりと、途方もなく温かいものが彼女の肩を包み込んだ。
アストルフォが、自らのジャケットを桜の肩に掛け、そのまま彼女の華奢な背中を広い胸板でそっと抱きしめたのだ。
「アストルフォ、さん……」
「桜の身体、少し強張ってる。……初めての場所に行くの、不安?」
首筋に落ちる、彼の甘く優しい声。
そして、彼のがっしりとした胸板から、冷たいロンドンの風を完全に遮断するような『圧倒的なオスの熱量』が、服の布地をすり抜けてじんわりと流れ込んでくる。
「……少しだけ。大昔に離れた故郷で、私はどう振る舞えばいいのか……」
「振る舞い方なんて、桜のそのままでいいんだよ。だって桜は、すっごく優しくて、綺麗で……ボクの世界で一番可愛いお姫様の一人だもん! 冬木の人たちも、絶対に桜のこと好きになるよ!」
一切の打算もない、純度百パーセントの肯定。
その言葉と、肩を抱く腕の熱さに、桜の胸の奥でこわばっていた氷のような不安が、ドロドロと甘く溶け出していくのを感じた。
「ふふっ……。ええ、そうですね。貴方が一緒にいてくださるなら、私はどこへ行っても大丈夫です」
桜は、自らの意思で彼のがっしりとした腕に自らの白い手を重ね、その熱にすがりつくように微笑んだ。
「おーい! いつまで外でいちゃついてるのよ、置いていくわよバカ騎士!」
機内の入り口から、凛が顔を真っ赤にしながら(しかしその声には隠しきれない情欲と独占欲を滲ませて)二人を呼んでいる。
「あはは! 今行くよー!」
***
機内は、ルヴィアの豪語した通り、およそ飛行機の中とは思えないほど豪奢な空間だった。
ふかふかの巨大なソファーが並ぶラウンジ、バーカウンター、そして奥には完全防音のプライベートベッドルームまで完備されている。
「はぁ……。相変わらず、ルヴィアの金銭感覚は狂ってるわね」
凛がソファーに深く腰を沈めながら、ウェルカムドリンクのフルーツジュースを口にする。
「あら、これでもわたくしたち『家族』が快適に過ごすための最低限の設備ですわ。……ねえ、アイリスフィール?」
「ええ、とても素晴らしい空間です。アインツベルンの冷たい馬車とは大違いね」
アイリスフィールは、向かいの席でセラとリーゼリットに紅茶を淹れてもらいながら、すっかり毒の抜けた(そして艶やかな)笑顔で同意する。
現代魔術科の次期当主であるライネスも、紅茶入りのティーカップを持ちながら満足げに笑った。
「まったく、エーデルフェルトの財力には恐れ入るよ。……それにしても、完全防音のプライベートベッドルームとは、気が利いているじゃないか。これでオルガマリーのような子供は奥でゆっくり寝かせておいて、私たちは手前のラウンジで気兼ねなく『空の旅』を満喫できるというわけだ」
ライネスの言葉通り、まだ幼いオルガマリーは、「絶対的なお兄ちゃん(アストルフォ)」との新しい生活に疲れが出たのか、すでに奥の防音ベッドルームで健やかな寝息を立てていた。
飛行機が静かに滑走路を走り出し、やがて高度を上げて厚い雲を突き抜けた。
シートベルトの着用サインが消え、機内が安定した巡航モードに入った頃。
「凛! 桜! ボクも一緒に座っていい?」
アストルフォが、凛と桜が並んで座る広いソファーの真ん中へと、無邪気に潜り込んできた。
「ちょっ……! 広い席なんだから、わざわざこんなに密着しなくても……っ」
凛が抗議の声を上げるが、アストルフォは左右から二人の腰に腕を回し、ぐっと自らの身体へと引き寄せた。
「ひゃうっ……!」
「あ……っ、アストルフォ、さん……っ」
三人の太ももが、ソファーの上で隙間なく密着する。
気圧の変化のせいだろうか。それとも、彼から放たれる常軌を逸した体温のせいだろうか。機内の空気が、急激に酸素濃度を下げたようにじっとりと重く、そして甘く熱を帯び始めた。
「空の上って、なんかドキドキするね。……二人とも、すっごくいい匂いがする」
アストルフォの顔が、まずは右側に座る桜の首筋へと近づく。
至近距離で交差する視線。
アストルフォの紫水晶の瞳が、情欲で甘く濁り、桜を真っ直ぐに射抜く。
「んっ……ぁ……」
彼の吐息が、桜の耳たぶを直接掠めた。
服越しに密着している太ももから、彼の逞しい筋肉の動きと、火傷しそうなほどの熱が伝わってくる。桜の魔術回路の芯が、その熱に呼応するようにカッと熱を持ち、子宮の奥底から甘い痺れが湧き上がってきた。
「アストルフォさんの……熱……っ。服を、着ているのに……直接、奥の方まで……届いて……っ」
桜の口から、無防備で艶めかしい吐息が漏れる。彼女は完全に抗うことをやめ、自らの豊かな胸の膨らみを、彼のがっしりとした腕へと押し付けた。
「桜の身体、ボクの腕の中でトクトク鳴ってる。……すっごく熱いよ」
彼の手が、桜の腰を撫で下ろし、スカートの布地越しに、最も熱を帯びている柔らかな太ももの内側へとじっとりと滑り込む。
「あぁっ……! ぁ、はぁっ……! だめ、です……っ、お姉ちゃんが、すぐ隣に……っ」
桜は顔を真っ赤にしながらも、彼の手の動きに合わせて微かに腰をよじり、もっと深く触れてほしいと無自覚に強請ってしまう。
「あんたたち……っ! いくらなんでも、こんな明るい機内で……っ」
隣でその淫らな光景を見せつけられていた凛は、顔から火が出るほど赤面し、彼を咎めようとした。
しかし、アストルフォの左腕は、しっかりと凛の腰もホールドしていた。
「凛も、お腹の奥がきゅってなってるの、伝わってくるよ」
アストルフォが振り返り、今度は凛の顔へと自らの顔を近づける。
「ひゃっ……!?」
二人の鼻先が触れ合うほどの距離。
彼の放つ圧倒的なオスのフェロモンが、凛の呼吸を容赦なく奪い去る。
「凛の黒い髪、すっごく綺麗。……ボクの匂い、いっぱいつけてあげる」
彼の手が、凛の膝裏から太ももへと滑り込み、服の上から優しく、しかし確かな雄の力強さで揉みほぐす。
「んんひぃッ……!! ぁ、ああっ……! アストルフォ……っ、そんな、指の動かし方……っ」
凛の全身に、強烈な快感の電流が走った。
冬木へ帰るというわずかな緊張感すら、彼のもたらす圧倒的な熱と快楽の前に白く塗り潰されていく。
周囲に他のヒロインたちがいるという背徳感が、空の上という密室のシチュエーションと相まって、彼女たちの理性をさらにドロドロに溶かしていた。
「空の上なら、誰にも邪魔されないね。……冬木に着くまで、二人とも、ボクがいっぱいいっぱい温めてあげる」
アストルフォの甘い囁きと共に、彼の熱い唇が、凛の震える唇を貪るように塞いだ。
「んんっ……!! ぁ……っ、んちゅ……っ」
同時に、彼の手が桜の秘所を服越しに執拗に愛撫し、桜の口からも甘い嬌声が引き出される。
「あぁぁっ……! アストルフォさん……っ、好き……っ、私、もっと……っ」
「はぁっ、あ……っ! 溶けちゃう……っ、あんたの熱で、頭がおかしく……っ」
豪華なプライベートジェットのラウンジは、もはや飛行機としての役割を放棄し、最強の騎士がもたらす果てしない愛と熱の濁流が渦巻く、極上の愛の巣へと変貌していた。
窓の外に広がる雲海の上で、遠坂の姉妹は互いの吐息を感じながら、愛する男の熱に身も心も完全に支配され、日本に到着するまでの数時間、ただ快楽の波に呑み込まれ続けるのだった――。