fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ 作:鰻天ぷら
ルーマニアの最高級ホテルのVIPラウンジから、沙条姉妹が滞在する最上階のスイートルームへ。
ふかふかの巨大なキングサイズベッドの上に、パジャマ姿の美しい姉妹と、桜色の髪の騎士がもつれ込むようにして腰を下ろしていた。
「あぁっ……王子様。あなたの匂い、本当に……頭の中が真っ白になっちゃう……っ」
沙条愛歌は、アストルフォのがっしりとした太ももに跨るようにしてすがりつき、完全に骨抜きにされた甘い吐息を漏らしていた。
『根源』に接続し、過去から未来に至るまでのすべての事象を瞬時に演算・予測できる全能の脳。
当然、彼女はこの甘い熱がどこに向かうのか、そしてアストルフォの背後に広がる「十数人の女たちで構成された巨大な愛の城(ハーレム)」の存在も、出会った瞬間に完全に視て、理解していた。
普通であれば、全能のヤンデレたる彼女が他の女の存在を許すはずがない。
しかし、アストルフォという「本物のイングランドの王子様」が放つ、宇宙の理すら焼き尽くす圧倒的なオスの熱量は、彼女のバグった愛の形すらも、極限まで甘く、都合よく融解させてしまっていた。
(……ええ、知っているわ。私の王子様には、たくさんの美しいお付きの女の子たちがいること。……でも、それでいいの。おとぎ話の王子様には、華やかな宮廷が必要だもの。彼女たちはみんな、私の王子様がどれほど素晴らしいかを証明するための、綺麗な飾り(デコレーション)。……そして、最後に王子様の一番深くで愛されるお姫様は、私なんだから)
全能の視座から導き出された、狂気的でありながらも絶対的な肯定。
愛歌は、自らの『全能性』という冷たい鎧をあっさりと脱ぎ捨て、ただ彼に抱かれ、熱を注がれるだけの「無力で恋する女の子」へと、自ら進んで堕ちていったのだ。
「愛歌の髪、すっごくサラサラしてて綺麗だね。太陽の光みたいだ」
アストルフォの大きな手が、愛歌の金糸のような髪を撫で、そのままパジャマの薄い布地越しに、彼女の華奢な背筋をなぞり下ろす。
「んんひぃッ……!! ぁ、ああっ……! だめ、王子様の手……あつすぎるわ……っ。私の中の……全部がっ……!、あなたの色に染まっちゃう……っ」
愛歌の瞳は情欲にトロンと濁り、彼女は自らアストルフォの首に腕を絡ませて、その熱い唇を貪るように求めた。
「んちゅ……っ、ぁ、んんっ……!!」
二人の舌が深く絡み合い、甘い唾液が交わる卑猥な水音がスイートルームに響き渡る。
全能の天才ダメ人間は、今や完全にアストルフォの熱に溺れ、子宮の奥底から湧き上がる未知の快楽に身をよじらせるただの雌と化していた。
「お、お姉ちゃん……っ! ちょっと、二人とも、やめてよ……っ! まだ会ったばかりなのに、そんな……っ!」
その光景を目の前で見せつけられ、ベッドの端で顔から火が出るほど赤面していたのは、妹の綾香だった。
常識人であり、良心の塊である彼女は、この異常な状況をなんとか止めなければと必死に声を上げる。
「アストルフォさん! お姉ちゃんから離れてください! それに、貴方には下の階に、フィオレさんという大切な女性(ヒト)が……っ」
綾香が、アストルフォの腕を引っ張って引き剥がそうとした、その時だった。
「綾香」
「ひゃうっ!?」
アストルフォが、愛歌を片腕で抱きしめたまま、もう片方の腕で綾香の細い腰をぐいっと自らの身体へと引き寄せた。
至近距離。鼻先が触れ合うほどの位置で、アストルフォの紫水晶の瞳が、綾香の揺れる瞳を真っ直ぐに射抜く。
「フィオレも、ロンドンでお留守番してるみんなも、ボクの大切なお姫様だよ。……でもね、綾香。キミも、ボクにとってはすっごく大切で、可愛いお姫様なんだ」
「え……っ、な、なにを……っ」
「綾香は、いっつもお姉ちゃんのこと心配して、一生懸命お世話して……すっごく偉いね。でも、心の中では『私だって、誰かに優しく甘やかされたい』って、ずっと思ってたんでしょ?」
ドクンッ、と。
綾香の胸の奥で、決して誰にも見せまいと蓋をしていた本音が、彼の一言であっさりと暴き立てられた。
優秀すぎる姉の陰で、常にストッパー役として生きてきた彼女。普通の女の子のように恋をして、誰かに守られたいというささやかな願い。
「あ……ぅ……っ。ちが……私、は……っ」
綾香の瞳から、無自覚に涙がこぼれ落ちそうになる。
「違わないよ。綾香のここ、ボクに触られて、すっごく熱くなって震えてる」
アストルフォの大きく、火傷しそうなほど熱い手が、綾香のパジャマの裾から直接素肌へと滑り込んだ。
彼の手のひらが、綾香の柔らかなお腹から、胸の膨らみを下からそっと、けれど逃げ場のないオスの力強さで包み込む。
「あぁぁっ……! ぁ、あ……っ! アストルフォさんの、手……っ! だめ、直接、そんなところ……っ」
綾香の良心と常識が、彼の圧倒的な体温と、むせ返るような薔薇の香りの前に、音を立てて崩壊していく。
彼女の魔女術の使い手としての理性が、彼に触れられた部分からドロドロに溶かされ、強烈な快感の電流となって全身を駆け巡った。
「いいのよ、綾香……っ。あぁっ……王子様の熱、すっごく気持ちいいでしょう……? 私たち、二人で一緒に……王子様に、めちゃくちゃに溶かしてもらいましょう……っ」
愛歌が、アストルフォの腕の中から、情欲に濡れた目で妹に甘く囁きかける。
「お姉、ちゃん……っ。でも、こんなの……おかしいよ……っ。私、頭が、真っ白に……っ」
綾香は涙目で抵抗しようとしたが、彼女の身体はすでにアストルフォの熱の虜となっていた。自らの意思とは裏腹に、彼女の細い腕はアストルフォの広い背中へと回り、その温もりにすがりついてしまう。
「綾香、いっぱいいっぱい頑張ったね。……これからは、ボクが綾香のこと、世界で一番甘やかしてあげるからね」
アストルフォの熱い唇が、綾香の震える唇を優しく、そして深く塞いだ。
「んんっ……!! ぁ……っ、んちゅ……っ、ふぁ……っ」
綾香の口から、姉と同じように、ひどく甘く、蕩けきった嬌声が漏れる。
良心からの最後の抵抗は、彼から注ぎ込まれる果てしない肯定感と愛情の濁流に完全に呑み込まれ、彼女は自ら進んで、この底なしの愛の沼へと沈み込んでいった。
「……ふふっ。やっぱり、あの姉妹も一瞬でしたわね」
開け放たれたスイートルームの扉の向こう。
車椅子に乗ったフィオレが、ベッドで桜色の騎士に組み敷かれ、快楽と幸福に泣き濡れながら互いに体を絡め合い、腰を振り続けている沙条姉妹の姿を、極上の共犯者の笑みを浮かべて見守っていた。
(オルガマリーは「大人の時間は子供の身体に障る」という理由で、すでに別の客室でアストルフォの残した温かい毛布に包まれ、幸せそうに夢の世界にいる)
「さあ、私も混ざりましょうか。……新しい『家族』の歓迎会として、たっぷりと愛の熱を共有してあげなくては」
ルーマニアの冷たい夜の空気など全く届かない、熱帯のように甘く火照ったスイートルーム。
退屈を持て余していた全能の姉と、常識に縛られていた妹は、この夜、世界で一番温かい王子様の熱に骨の髄まで焼き尽くされ、彼なしでは生きていけない極上のヒロインとして、完全に生まれ変わったのだった――。