※この作品はR-18です。

fate/Apocrypha偽書 千人斬りのアストルフォ   作:鰻天ぷら

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外伝 玲瓏館美沙夜編②

東京の夜景を一望できる、銀座の超高級ホテルのペントハウス・スイート。

広大なリビングルームでは、美しい夜景を背に、極上のワインを開けた三大お嬢様たちが優雅なひとときを過ごしていた。

 

「……今日の昼間のあの娘、玲瓏館の次期当主だったわね。わざとらしくぶつかってきて、古典的な手を使うものだわ」

 

遠坂凛は、グラスを揺らしながら呆れたようにため息をついた。

彼女の目は、ただの学生のものではない。時計塔で酸いも甘いも噛み分けてきた、若きエリート魔術師としての鋭い光を帯びている。

 

「ええ。わたくしたちエーデルフェルトと極東の繋がりを利用しようと、うちの騎士殿を籠絡する気だったのでしょうけれど。……本当に、愚かとしか言いようがありませんわね」

 

ルヴィアゼリッタが、扇子を広げてオーッホッホと高笑いする。

 

「ふふっ。あの子、アストルフォさんに腕を掴まれた瞬間、腰が抜けたように震えていました。……あの方の熱と魔力の前に、ちっぽけな策など一瞬で溶かされてしまうことにも気づかずに」

 

桜が、柔らかなソファに沈み込みながら、自身の頬に手を当てて艶然と微笑んだ。彼女の紫の瞳は、昼間の出来事を嘲笑うというよりは、これから自分たちがアストルフォに愛される夜の時間を想像し、すでに情欲でトロンと濁り始めている。

 

「やあやあ! ミサヤのこと? すっごくいい匂いがする、綺麗なお姫様だったね!」

 

シャワールームから、水滴を滴らせたままの桜色の騎士が、腰にバスタオル一枚を巻いた無防備な姿で現れた。

 

「ちょっ、アストルフォ! ちゃんと拭いてから出てきなさいよ!」

 

凛が顔を真っ赤にして注意するが、彼女の視線はアストルフォのがっしりとした胸板や、引き締まった腹筋、そこから放たれる火傷しそうなほどのオスの熱気に完全に釘付けになっていた。

 

「だって、早くみんなのところに行きたかったんだもん。……それに、凛もルヴィアも桜も、もうすっごくいい匂いになってるよ」

 

アストルフォは、全く悪びれることなくソファの真ん中へと潜り込み、凛と桜の腰を左右の腕でぐっと引き寄せた。

 

「ひゃうっ……!」

「あ……っ、アストルフォ、さん……っ」

 

冷房の効いたスイートルームの空気が、彼が触れた瞬間から、むせ返るような熱帯の夜へと変貌する。

彼から放たれる圧倒的な体温が、彼女たちの薄いネグリジェを貫通し、魔術回路の芯へと直接甘い痺れを叩き込んでいく。

 

「お仕事終わったご褒美、いっぱいいっぱいあげるね。……朝まで、みーんなドロドロに溶けちゃおっか」

 

アストルフォの紫水晶の瞳が、情欲に濡れて甘く光る。

その底なしの肯定感とフェロモンに、三人の気高き令嬢たちは一切の抵抗を放棄し、自ら彼にすがりつくようにして、深く、濃厚な夜の海へと沈んでいった。

 

***

 

同時刻。東京・白金台に位置する玲瓏館本邸の、豪奢な自室。

玲瓏館美沙夜は、アンティークの鏡台の前で、自らの腕をギュッと握りしめ、荒い息を吐いていた。

 

(……おかしい。何かの間違いよ。私が、あんな単純な男に触れられただけで、足がすくむなんて)

 

昼間、銀座でアストルフォに腕を掴まれた感触。

たったそれだけの接触だったのに、彼女の研ぎ澄まされた黒魔術の回路は、彼から流れ込んできた「規格外の熱」をまだ錯覚のように覚え、子宮の奥底で奇妙な疼きを持て余していた。

 

(準備が足りなかっただけ。あの男の持つ特異な魔力波形さえ解析できれば、必ず私の手駒にして、遠坂やエーデルフェルトを出し抜いてみせる……!)

 

美沙夜は、強く自分に言い聞かせると、窓を開け放ち、闇夜に向かって詠唱を紡いだ。

彼女が得意とする黒魔術の使い魔――漆黒の鴉(カラス)が、魔力によって何羽も実体化し、夜の東京の空へと飛び立っていく。

 

(私の感覚を使い魔と完全に同調(シンクロ)させる。あの男の弱点、あるいは夜の無防備な姿を探り出し、次こそ完璧な罠に嵌めるための情報を引き出すのよ)

 

美沙夜はベッドに腰掛け、目を閉じた。

彼女の視覚、聴覚、そして魔力的な触覚が、銀座の高級ホテルのペントハウスへと向かった鴉のそれと完全にリンクする。

 

やがて、使い魔は標的のスイートルームの窓枠へと音もなく降り立った。

カーテンの隙間から、室内の光景が美沙夜の脳内へと直接流れ込んでくる。

 

(……見つけたわ。さあ、あの馬鹿な騎士が、夜にどんな間抜けな顔を晒しているか……)

 

だが。

使い魔の視界を通じて飛び込んできた光景は、美沙夜の冷徹な論理を、根底から粉砕するものだった。

 

『あぁぁっ……! アストルフォ……っ、だめ、そんな奥まで……っ、あつい、です……っ』

『んひぃッ……!! ぁ、ああっ……! アストルフォっ、もっと……わたくしを、めちゃくちゃに……っ』

 

そこにあったのは、気高いはずの三大お嬢様たちが、一人の男の下で完全に理性を剥ぎ取られ、獣のように快楽を貪り、愛を乞う、狂おしいほどに淫らで艶めかしい姿だった。

 

(な、に……これ……っ!? 遠坂が、エーデルフェルトの当主が……あんな、あんなだらしない顔で……っ!?)

 

驚愕する美沙夜の脳裏に、さらなる衝撃が走る。

ただ視覚と聴覚を共有しているだけではない。使い魔を通じて、アストルフォから放たれる『常軌を逸したオスの魔力(熱量)』が、美沙夜の神経系へとダイレクトにフィードバックされてしまったのだ。

 

『桜、すっごく柔らかいね。……凛もルヴィアも、ボクの熱でいっぱい満たしてあげる』

 

彼が彼女たちを愛撫するたびに発生する、濃密な魔力の波動。

それが使い魔の魔術回路を逆流し、白金台の屋敷にいる美沙夜自身の身体を、容赦なく貫いた。

 

「っ……あ……ぁあっ!?」

 

美沙夜の背筋に、落雷のような強烈な快感の電流が走った。

彼女はベッドの上で大きく身体を反らし、自らの胸元をギュッと握りしめた。

 

(ちが、う……っ! これは、使い魔が感じている魔力の波……っ! 私の身体じゃないのに……っ、どうして、お腹の奥が……こんなに、熱く……っ)

 

視界の向こうで、アストルフォが凛の唇を深く塞ぎ、その滑らかな背中を執拗に撫で回す。

その感触が、美沙夜自身の肌を直接撫でられているかのように、生々しい熱を伴って錯覚を引き起こす。

 

「ひゃうっ……!! あ、あつ……っ。だめ、こんなの……っ、私は、玲瓏館の……っ」

 

美沙夜は必死に使い魔とのリンクを切断しようとしたが、アストルフォの放つ底なしの魔力(フェロモン)が彼女の接続を強制的にホールドし、甘い毒のように彼女の全身を犯していく。

 

『アストルフォさん……っ、好き……っ、私、貴方の熱がないと……もう、生きていけませんわ……っ』

桜の甘く蕩けた嬌声が、美沙夜の鼓膜を直接震わせる。

 

同時に、アストルフォの巨大な熱の塊が、美沙夜の蜜壺の最も敏感な部分を、見えない陽根でじっとりと愛撫し始めたかのように犯してくる幻触に襲われた。

 

「あぁぁぁっ……! ぁ、はぁっ……! いや、やめて……っ、見たく、ない……っ。感じたく……な、い……っ」

 

美沙夜の瞳から、屈辱と、それを遥かに上回る『未知の情欲』による涙がこぼれ落ちる。

彼女の純潔な身体は、遠く離れたホテルの部屋で繰り広げられる極上の愛の営みを疑似体験させられ、自らの意思とは裏腹に、甘い蜜を溢れさせながらガクガクと小刻みに痙攣し始めていた。

 

「んんっ……あ……ぁああっ……!」

 

もはや、彼女の頭の中に「利用する」という冷徹な計算など存在しなかった。

ただ、あの桜色の髪の騎士の放つ、火傷しそうなほどの熱と、彼の下で泣き濡れるお嬢様たちの圧倒的な幸福感が、美沙夜の胸の奥に「私も、あそこに混ざりたい」という恐ろしいほどの羨望と情欲を植え付けてしまったのだ。

 

ブツンッ!!

 

限界ギリギリのところで、美沙夜は自らの腕を爪で強く掻き毟り、その痛みをもって強引に使い魔との接続を断ち切った。

 

「はぁっ……はぁっ……あぁ……っ」

 

静寂が戻った自室のベッドの上で、美沙夜は汗だくになり、乱れた衣服のまま荒い息を繰り返していた。

彼女の黒い瞳は、屈辱と怒り、そして完全に火をつけられてしまった雌としての情欲で、ドロドロに濁り切っている。

 

「……アストルフォ……ッ。遠坂やエーデルフェルトだけでなく……この私の身体まで、こんな、こんな無様に……ッ」

 

美沙夜は、自らの震える太ももをきつく擦り合わせながら、ギリッと唇を噛んだ。

 

「許さない……。絶対に、許さないわ。……小細工は無用よ。玲瓏館のゲストハウスに、彼らを直接招待してやるわ。……そして、あの男を絶対に私の足元に跪かせて、私だけのものにしてやる……ッ!」

 

彼女は自分自身にそう言い聞かせたが、その言葉の裏にある本音が「あの男の腕に抱かれて、あの熱で私をドロドロに溶かしてほしい」という完全なる陥落への渇望にすり替わっていることに、誇り高き令嬢はまだ気づいていなかった。

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