「あのさコト姉」
ある夜、勉強も終わり落ち着いたころ暁人が真剣な顔で私をみる
「暁人?」
ただならぬ様子に身構えると
「俺たち別れようか」
「...え?ああ勉強会のこと?それなら——「いや違うよ、
急に意味のわからない言葉がきて動揺したが今やっている予習復習の時間に関してかと思い提案をしようとしていたことを伝えようとするがそれを遮るように暁人が言う
「な...え?なん、で?」
その真剣な表情と
「それはさ自分が一番よくわかってるでしょ?」
何より自分がしでかしていることを思い呆けてしまう
「
「ッ!?」
「気づかないわけないじゃん、何よりも誰よりもコト姉のこと見てきたんだよ?」
泣きそうな笑顔で暁人が私を見る
「俺はコト姉のことが何よりも好きだし愛してるけど、コト姉はそうではないんでしょう?」
「気持ちが離れたのなら悲しいけどもう戻ってこないでしょ。ならスパっと切ってもらった方が嬉しいよ」
「付き合う前から俺よりもいい男をみつけて一緒にいられなくなる日が来るのかなとは思っていたけど...まさか恋人になってからこんなことになるとは思わなかったよ...」
「まあ、俺にコト姉を繋ぎ止めておけるだけの魅力がなかったってことだから」
「そんなこと!!」
そんなことない!暁人は誰よりも優しくて傍にいるだけで幸せになれる魅力的な男の子だ
「そんなことあるからこうなったんでしょ?」
苦笑を浮かべ私の言うことを信じてくれない暁人
「昔みたいにっていうのも今更もう無理だから」
「ちょっとづつ、さよならしていこう?」
「いやよ...」
「俺も嫌だけどさ」
「なら!!」
「だからこそだよ」
「は?」
「お互い嫌いにならないうちに思い出に変えよう?」
「コト姉は幼馴染の男の子でいろんな練習をした。俺は幼馴染のお姉さんとひと夏の夢をみたって感じでさ」
「な、なんでそんなこと...」
「なんでって...普通に想像してみてよ」
「
想像するだけで身の毛がよだつ、嫉妬で狂いそうになる
「あ、う...」
でもそれをやってしまったのが私なんだと理解する
「ね?俺の気持ちわかってくれた?とりあえず今日は帰ってくれる?」
暁人にそういわれても私の足は動いてくれない
「う~ん、しょうがない」
そういうと暁人は荷物をまとめ
「今日は俺の部屋使うと良いよ。俺は友達んちにとまるから」
私が声をかける間もなくさっと出ていく
追いかけたいし縋りつきたいが足がすくんで動いてくれない
今まであった私の土台が崩れる音が頭の中で響く...
それからというもの私が何を言おうとしても柳に風のようにのらりくらりと躱してしまう暁人
会えば話を聞いてくれるし笑顔も見せてくれるが、近づくとその分離れその手に触れようとするとポケットの中に手をしまう
家に行っても私の作ったご飯を食べず
「いつまでも、コト姉に迷惑かけてられないからね」
とコンビニで買ったらしいプロテインやサラダチキンなどを食べていたり、自分で簡単な料理を作るようになっていった
暁人との関係が壊れたそんな中でも猛はお構いなしにやろうとしてきたが半殺しにしてあの動画を撮影したスマホもPCもすべて壊してやった
でも私があれをやった事実は消えないし何より暁人は猛を見ても何とも思っていないようだった
何もうまくいかない私とは異なり、暁人は部活により精を出すようになり一年生ながら要所で光る活躍をしていたようだった
監督からも褒められ先輩たちにも可愛がられている様子が遠目からでも魅力的に映った
同い年であろうマネージャーの女の子からタオルをもらい昔まで私にしか見せていなかったあの笑顔をその子に向けていた
ずっと見ていたい筈の暁人の姿を見たくなくて嘘をついて部活を早退して部屋で泣き喚いた
——暁人は私がいなくても十分に魅力的で色んな人に好意を持ってもらえる魅力的な男の子であると思い知らされた
たまたま通りかかった暁人の教室をのぞくとクラスメイトであるらしい娘に
「ここは...これがヒントで...そうそう!そしたら...正解!!よくできました。なんてね」
と優しくわからない部分の解説をしてあげていた
マネージャーが重いドリンクサーバーを運んでいるのをみてすぐに駆け寄り
「持つよ、って重いねコレ!!」
ふざけながらもゆっくりと同じペースで手伝ってあげていた
私が得ていたはずの優しさとその笑顔
もう私に向けられることのないそれに後悔がつのっていき、翌日の放課後どうにか暁人に接触をする
「ああ、
「...なんで...」
「ああ呼び方ですか?いつまでもコト姉なんて子供っぽい呼び方は失礼かなと思いまして改めないと」
暁人の声が遠く感じる
「いやよ...」
前みたいにコト姉って呼んで
「いや」
前みたいに私のことだけ見て
「お願いだから...」
膝から崩れ落ちそうになるのをこらえ暁人に縋りつくが困ったように頬を掻く暁人はどこまでも他人行儀だった
縋りついているのを拒否したりはしないが前までみたいに抱きしめてくれたりはしない
その事実に耐えきれなくなった私は
「私が弱かったから、自分でどうにかしなきゃって」
「暁人に頼ればよかったのに話して暁人に嫌われたらどうしようって思ったら話せなくて」
「あいつに好き放題されて開発されて暁人に嘘ついてずるずると続けてしまって」
「それなのに心のどこかでは暁人が気づかないのが悪いなんて思ってた」
「暁人に言われて、暁人から距離を置かれてようやく私が何をしていたのか理解した」
どうしようもない自分を曝け出す
「本当にごめんなさい」
情けない自分に涙があふれ止まらない
「許してなんてもう言えないけど」
暁人に縋りつく腕をより強く暁人が離れてしまわないよう抱きしめるように
「もう奴隷でもなんでもいい、暁人が傍にいてくれないと生きていけないの」
以前よりもより逞しくなった胸に顔を押し付け
「ねぇ、抱きしめてよ」
「今まで通りにコト姉って呼んでよ」
「私以外見ないでよ」
この期に及んで自分のことしか考えられない私自身に反吐が出るが
「私は暁人がいないとダメなの」
それでも、醜くても私らしくないと思われても暁人だけは
「暁人だけがいてくれればもう何もいらないから...」
失いたくない
「......」
長い沈黙、どのくらい時間がたったのかわからない
数分だったのか十分以上時間がたっていたのか
「...はぁ」
「ッ」
頭の上から聞こえる呆れたようなため息にビクっと体が震える
「コト姉、どれだけ自分勝手なこと言ってるかわかってる?」
「...うん」
「それなのに俺にそんなこと言ってくるんだ」
「ごめんなさい。でも!」
「でももくそもないよ。物語とかでもよくあるでしょ
「...はい」
「俺は一生コト姉のことを信頼しないよ?それでも一緒にいたいの?」
「うん、暁人を裏切った報いだから」
暁人から嫌われていたとしても私はもう逃げたりしない
「はぁ、情けないなぁ」
「...」
何も言えない
「惚れた弱みってやつなのかな」
そういうと暁人は私の身体を強く抱きしめて
「裏切られたの知ってもさ、
「え?」
「許せない気持ちも当然あるけど、それ以上にコト姉のことが好きだし離れたくないんだ」
暁人は私の目元を優しくぬぐってくれ、いつもの笑顔を見せてくれる
「だからやり直そうか俺たち」
「幼馴染ではなくゼロからまたお互いを知っていこう?」
「~~~~暁人ぉ」
その言葉に想いが溢れ止まらなくなり暁人の唇を無理矢理奪う
「んぐ!?」
「ごめん、ごめんなさい。暁人、本当にごめんなさい」
息継ぎの合間に謝罪を繰り返す
「ん...」
最初は驚いていた暁人だったけどすぐに受け入れ頭を撫でてくれる
優しい思いやりに満ちたその手つきにまた涙があふれてしまう
それでも暁人は落ち着くまで私の頭を撫で続けてくれた
あれから数か月
前までとは違う関係になった私たちだったがぎこちないながらもゆっくりと仲を深めていった
幼馴染ゆえの相手のことをわかった気になっていた私はそれ故に失敗をしてしまった
だからこそ今度こそ「暁人の事だから」、「コト姉の事だから」と決めつけるのではなくより深く話し合ってお互いを知る努力をし始めた
嫌われるかもという不安はある
それでも話さないことでどうなるかを身をもって知ったからどんなことでも共有をするようにした
エッチのことも何もかも包み隠さずすべてを曝け出した
暁人もショックを受けてはいたがそれでも話したことを受け入れ改善してくれた
アイツの快楽に毒された体だったがあの時とは比べ物にならないくらいに心も身体も満たされる経験ができた
暁人は本気でイった私の姿をみて本当に幸せそうな顔になってくれ、余裕のない姿をみせてもむしろ喜んでくれた
そもそも最初から正直にこうして欲しいと言っていればよかっただけだった
暁人は私のためならどんな努力でもしてくれることはバスケのことからも知っていたはずなのに
独りよがりで勝手に比べて何も言わなかった私がいけなかった事実にまた打ちのめされる
後悔をしてももう時は戻せない
一生をかけて暁人に償いをしていくしかない
なにより暁人のそばにいたいから