※この作品はR-18です。

コトネイロ 再起エンド   作:むー

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コトネイロEND後の想定です
なんか思いついてしまったので


IF もしも暁人が記憶喪失になったら R18

暁人視点 

あの日から半年経った。

 地獄のような日々に俺の体調は日に日に悪くなっていき、バスケも勉強も何もうまくいかないことが多くなっていた。

 昨夜のコト姉の言葉が耳に残り眠れず翌朝逃げるように学校に向かい授業を受けていた俺。

(頭いてぇ...)

 鈍く痛み続ける頭に吐き気を覚えながら体育のために階段を下りていた。

 頭を抑え痛みに耐えながら無理矢理足を動かしていたせいもあり足をもつれさせ

「っへ?」

 間抜けな声を出しながらも反射的に手すりに手を伸ばすも届かず一番上からゴロゴロと転げ落ちる。

 意識がスローになり

(ああ、やっちまった死ぬのかな?俺?)

 ガンッと大きな音とともに頭に強い衝撃がきて意識が薄れていく。

 意識が薄れる中聞こえてきた誰かの悲鳴はすぐに聞こえなくなってしまい俺の意識は闇に落ちた。

 

 

 目が覚めるとぼやけた視界には知らない天井と自分へとつながる点滴が目に映った。

「...ここは?」

 っと起き上がろうとすると頭に激痛が走り「ッ!?!?」と大きな声を出しまたベッドに倒れこんでしまう。

 その声に気づいたのか横にいた誰かの気配にようやく気付く。

「...暁人?」

 声の方向に目をむけると知らない金(・)髪(・)の(・)女(・)性(・)がいた。

(誰だ??)

 俺が頭に疑問符を浮かべていると、覚えのないその女性とその声を聞きつけバタバタと音をたて母さんがベッドに近づいてくる。

「暁人!!よかった...」

「おばさん、私先生を呼んできます!」

 安堵の表情を浮かべ俺の顔に触ってくる母さんと慌ただしく部屋を出ていく女性。

「あ、うん。ここは?」

 混乱しながらもまず聞きたいことを確認する。

「病院よ。何があったか覚えてる?」

「へ?病院...あ!」

 一瞬理解が追いつかなかったが先ほどのことを思い出し

「そっか...俺階段から落ちたんだっけ」

「ええ、それで頭を強く打ったみたいで3日も目を覚まさなかったのよ!!」

 そういう母さんの目元を見ると赤く腫らした跡が見えた。

「え?3日!?ッテ!?」

 そのことに申し訳なさを感じつつもどうしても気になった単語にまた大きな反応をしてしまい頭痛にあえぐ。

 心配そうにこっちを見る母さんに申し訳なさがいっぱいになり

「ごめん...あんまり眠れてなくて体調ちょっと悪くてさ」

 謝罪をする。

「まったく...心配させて!でも無事で本当に良かった」

「ほんとごめん」

 (あれそもそも何で眠れなかったんだっけ?)

 と疑問が浮かぶ。

 考えていると先生と看護師さんがさっきの女性に先導され部屋へ入ってくる。

 そして頭を強く打って数日目を覚まさなかったこともあり容体確認のための問診が始まった。

 色々な質問に答えひとまずは安心だと告げられ一安心する俺たち。

 落ち着いたところでずっと疑問だったことを母さんに尋ねる。

 「と(・)こ(・)ろ(・)で(・)そ(・)こ(・)の(・)金(・)髪(・)の(・)女(・)の(・)人(・)は(・)誰(・)?(・)母(・)さ(・)ん(・)の(・)知(・)り(・)合(・)い(・)?(・)お(・)腹(・)大(・)き(・)い(・)み(・)た(・)い(・)だ(・)け(・)ど(・)」

 その言葉を発した瞬間凍り付く場。

(え?何この空気)

「え?は? 何を言ってるの、あなたの奥さんの琴音ちゃんでしょ!?」

 母さんが俺の身体をゆすりながら大きな声を出す。

「は?奥さん??俺まだ高校生だよね?」

 あまりにも現実味のない言葉に呆けたように返答する。

「あ、暁人?私よ、真津琴音よ?」

 震えた声で俺の名前を呼ぶ女性――真津さん――の顔をまじまじと見るが

「?????」

 誰かわからないのだが?

 俺の顔を見て涙を流す真津さん。

「と、とりあえず皆さん落ち着いてください。暁人さんが混乱してしまっていますので」

 混乱する場を看護師さんが何とかなだめてくれ先生からの問診が改めて始まる。

「――脳に異常はないが、特定の記憶だけが抜け落ちている状態です」

 いくつかのテストをさせられ先生からそう診断された俺。

「ッ先生!記憶は?暁人の記憶は戻るんですか!?」

 先生に縋りつくように母さんが尋ねる。

「...大変申し訳ありませんが確実に戻るとは言えないのが現状です」

 苦しそうに回答する先生。

 その言葉に崩れ落ちる母さんを看護師さんと真津さんが支える。

 深刻そうな雰囲気だが忘れているゆえについていけないしどこか他人事にしか思えない俺は

「ま、ふとしたきっかけで記憶が戻るかもしれないしさ」

「そんな辛そうな顔しないでよ母さん」

 努めて明るく声をかける。

「暁人...」

「そうですね、今まで通りの日常を過ごしていれば脳が刺激され記憶を取り戻しやすくなる可能性もありますので」

 と俺の言葉に乗っかってくれる先生。

「そう、です、ね...はい」

 何故だか気まずそうな真津さんと

「わかりました」

 気丈にふるまう母さんが対照的に思えた。

 

 

 その日はとりあえず状況が状況のためひとまず病室で過ごし翌日退院することになった。

 まだ少し触ると頭が痛いがほぼ健康になった俺は父さんと家へと帰る。

 家に着くと母さんと猛と小さな女の子を抱えた真津さんと知らない大人2人が待っていた。

「お帰りなさい」

 と口々に出迎えられ少し照れくさい気持ちとなる。

「ただいま...ところでそっちの方々は?」

「「「ッ!?」」」

 息をのむ音が聞こえる。

(あ!そうか!)

 よく考えればすぐわかることだ。

 婚約しているらしい俺と真津さんなのだから、俺の現状は両家の問題なんだ。

「えっと、真津さんのご両親、ですよね?」

 顔色をうかがいながら尋ねる俺にショックを隠せない2人と改めて現状を理解したうちの両親。

 そしてどうでもよさそうな顔をしている猛。

(この野郎...!他人事だと思いやがって!)

 猛に嫌悪感を抱きつつ

「と、とりあえずリビングで座って話しましょう」

 気まずすぎる空気だが当事者のため逃げるわけにもいかずリビングへ向かう。

 

 そこで改めて自分の現状をその場の全員に話し、俺の知らない記憶を教えてもらうことになった。

 その中でいろいろな話や幼少期のアルバムなどを見せられた。

 だけど写っている自分の姿といつもとなりに映っている真津さんの姿を見ても他人事にしか見えない。

 一緒に写っている以上それが事実なのだろうし髪型とかが変わってしまっているが面影も感じる。

 それでも今の自分と結びついてくれないし記憶が戻る気配も感じない。

 黙り込む俺に涙を浮かべる真津さんと両親たち。

 申し訳ない気持ちでいっぱいだが何も思い出せない。

 とりあえずその場は解散となり話し合いなどはまた後日となった。

 真津さんの両親――おじさんとおばさんが帰路につくが真津さんは動かない。

 疑問に思ってしまうが婚約しているのだからウチにいて当たり前なのだと気づく。

 女の子――俺の娘らしい弓月――を抱いたまま放心している真津さん。

 今どんな現状なのか理解できないであろう弓月は無邪気に俺の方へ手を伸ばしてくる。

 重たい空気だったが子供の無邪気な反応に笑みがこぼれその手に触れようとした瞬間。

(は!?!?)

 強烈な吐き気がこみあげてきてしまいえづいてしまう。

「え?暁人!!」

 俺の意味が解らない反応に母さんが飛んでくる。

「だ、大丈夫...」

 俺自身理解できない弓月に対する猛烈な嫌悪感に動揺を隠せない。

 ひとまず原因不明だが対症療法として俺と弓月は接触を極力避けることに決まる。

(なんなんだ?この感情?意味わかんねぇ...)

 疑問に思う俺とは裏腹に動揺を隠せないでいる真津さんに俺はまだ気づくことができなかった。

 

 

 色々あって疲れは取れないけど家にいると息が詰まってしまうので母さんたちを説得して学校へ復帰することに決めた。

 久々の登校に少し胸を躍らせていると友人たちやバスケ部の先輩たちが声をかけてくれる。

「元気そうで安心したぞ矢凪!!」

「最近ずっと調子悪そうだったからな」

 などと優しい言葉をくれるみんなに照れ笑いを浮かべながら感謝をする。

「でも、いいよな~あんな大変なことになったら真津先輩、相当甘やかしてくれたんじゃねぇか?」

「2人ともラブラブだったみたいだからなぁ、うらやましいぞこの野郎!!」

 急にでてきた真津さんの名前にびっくりしつつ「ま、な」とあいまいに流す。

(そりゃそうだよな、真津さんと俺婚約するくらいだったらしいからみんなも知ってるんだよな)

 未だに実感はわかないが外堀だけは埋まっていっている感覚。

 それなのに他人事にしか感じない俺を我がことながら理解できないと思う。

(ま、そのうち思い出すだろ)

 分からないものはしょうがない。気楽に過ごすことにしようと気分を新たにする。

 久々の学校だが相も変わらず授業は眠くなる。

 予習復習のおかげか休み明けの授業にも問題なくついていけている。

「矢凪~授業大丈夫か?」

 友人の1人が声をかけてくれる。

「ああ、意外と何とかなってる」

 素直に答える。

「マジ?じゃここ解る?」

「ん?あ、ここは――」

「お、おー!ほんとだわかりやすい。やっぱりお前頭良かったんだな」

「んなことないって、ただ無理矢理やらされてただけだよ」

 ――ん?誰に?母さんがうるさく言ってきた記憶はないんだよなぁ。

 疑問が浮かぶが友人の「サンキュー」という言葉でその疑問が頭から消える。

 (なんか引っ掛かった気がするけど...ま、いっか)

 そんなこんなで放課後を迎え部活に顔を出す。

「矢凪!頭打ったって聞いたが大丈夫か?」

 コーチがわざわざこっちへ来て体調を心配してくれる。

「はい!もうすっかり治ってます!」

「そうか、最近不調だったみたいだからなゆっくりペースを戻せよ」

「はい!」

「とりあえず今日のところは激しい運動を避けておけ、マネージャーの手伝いを頼む」

「わかりました」

 身体を動かしたかったがコーチの指示に納得してマネージャーのところへ向かう。

「おっす、今日はこっち手伝えってことだからよろしく~」

 同級生の2人に声をかけ指示を仰ぐ。

「あ、矢凪君、おつ~」

「よろしくね~、じゃ早速だけどコレお願い」

 と出されたのはウォータージャグ数個。

「げ!超重いやつじゃん、俺病み上がりなんですけど?」

「え~でも女の子にこんな重たいの持たせていいの~」

 からかうように言ってくるマネージャー。

「くっ!それを言われると弱い...頑張ります」

「ふふ、ありがと矢凪君」

「あいあい」

 2人の指示に従いみんなのサポートをしつつ軽くボールを触り身体を動かす。

 そんなことをしていると2人から声をかけられる。

「矢凪君、最近暗かったけど今日は調子よさそうだね」

「え?」

「あ、私も思った。今日の矢凪君前までより話しやすい」

「マジ?なんも意識してないんだけどな」

「あんま関わってこなかったけど、彼女がいるからか結構気遣いうまいんだよね」

「あ、わかる。かゆいところに手が届く感じ」

 2人の意外なくらいの高評価にビックリする。

「そうなの?自分じゃよくわからないな」

 ――無意識でも女の子への気遣いができるよくらいじゃないと彼女に釣り合わないから頑張ったんだ。

(ん?なんのことだ?)

 急に頭をよぎった思考が理解できずにいると

「矢凪!」

「あ、はい!」

 コーチに声を掛けられ思考を止める。

(ま、いっか)

 とバスケへ集中することに決めた。

 

 

 

琴音視点

 暁人が学校に行っている間、妊娠をしている私は家で弓月の面倒を見ている。

 おじさんとおばさんは仕事でおらず家にいるのは私たちだけ。

「......」

 ――暁人が記憶喪失になってもう2週間も経つが未だに記憶が戻る気配は無いようだった。

 暁人が学校でけがをして病院へ運ばれたと聞いたときは面倒だと思った。

 でもご主人様に迷惑をかけるわけにはいかないからしょうがなく病院に向かった。

 けが自体はたいしたことがなかったようだが頭を打ったせいか暁人はその日目を覚まさなかった。

(暁人?)

 次の日規則正しい寝息をしている暁人だが一向に目を覚ます気配のない彼を見て急に寒気がした。

 ずっとそばにいれくれる筈でしょ?

 私が何したって離れないでいてくれたじゃない。

 面倒と思っていたことすら忘れ看護師さんに面会時間の終わりを告げられても動けずにいた。

 翌日は朝一面会開始時間に急いで向かった。

 昨日と変わらず安らかに寝息を漏らす暁人の姿に安堵と恐怖を覚える。

(もし、もしこのまま暁人が目を覚まさなかったら...)

 想像しただけで胸に穴が開いてしまったかのような感覚に襲われる。

 縋りつくように暁人の手を握ろうとすると、その瞬間暁人から呻き声のようなものが聞こえ手を引っ込めてしまう。

 すると暁人の寝息が落ち着く。

 ただの気のせいなのだろうが暁人が私のことを拒絶をしたと思ってしまった。

(そんなはずない。暁人は私のことを拒絶するなんてありえない)

 ぶつぶつと独り言を言いながら無理矢理暁人の手を握る。

 昔までよりほっそりとしているその手が白くなってしまうくらいに強く握りしめる。

「暁人、起きて...起きてよ暁人...」

 暁人の手を自分の顔へもっていきその熱を感じる。

(あったかい...)

 久しぶりに感じる暁人の温もり。

 あの日暁人に全てが知られてからは更に箍が外れ、人目がないときは暁人と触れ合うことがなくなりご主人様に媚びて快楽をむさぼる日々。

 ご主人様の2人目を妊娠し男の子と分かりご主人様にも喜んでもらい幸せの絶頂だった。

 そのはずだったのに、暁人のことなんて優しいだけの存在でそれでも私から離れられない弱いオスだとそう思っていたはずなのに。

 いなくなってしまう可能性に今更気づいてしまい恐怖がぬぐえない。

「だから、起きてよ暁人。私を独りにしないでよ...」

 そう言った時願いが通じたのか暁人が身じろぎをし

「ここは...?」

 という聴きたかった声が耳に届く。

「暁人...?」

 目を覚ました暁人は起き上がろうとすると呻き声をあげベットに倒れこむ。

 外にいたおばさんが物音に気付き部屋へ入ってきて安堵の声を出しながら暁人の顔をぺたぺた触る。

 その間に私は先生を呼び出す。

(よかった...暁人)

 ――安堵の気持ちでいっぱいになっていた私は暁人から向けられる視線に気づかなかった。

 「と(・)こ(・)ろ(・)で(・)そ(・)こ(・)の(・)金(・)髪(・)の(・)女(・)の(・)人(・)は(・)誰(・)?(・)母(・)さ(・)ん(・)の(・)知(・)り(・)合(・)い(・)?(・)お(・)腹(・)お(・)っ(・)き(・)い(・)み(・)た(・)い(・)だ(・)け(・)ど(・)」

 暁人の口から出た言葉がどういう意味なのか分からない。

 金髪?お腹が大きい?おばさんの知り合い?

 それに誰?って...

 どうして?なんで?私だよ?どういうこと?なんでなんでなんで

 おばさんが私のことを紹介しても私が名乗っても本当に分からない様子だった。

 お医者さんから暁人が私のことだけ記憶喪失となっていることを告げられ頭が真っ白になる。

 混乱のあまりどうしても思考がまとまらずにいたがひとまず目が覚めたばかりだからという可能性と検査のせいで時間が押していたため翌日退院となり家に帰ってきてくれることになった。

(大丈夫、今日は寝ぼけてただけよ大丈夫)

 自分に言い聞かせて無理矢理寝て暁人の帰りを待つ。

 暁人の帰ってきた日、暁人がいないためクズる弓月を抱っこし暁人の帰りを待つ。

 ご主人様も流石に今日ばかりは家におり、アピールのために暁人の出迎えをすることにしたようだった。

 家の前に車が止まり少しすると玄関が開く音とおじさんと暁人の声が聴こえ全員で出迎えに行く。

 そして私の希望は簡単に消し飛んでしまった。

 私の両親のことも忘れてしまっている暁人はあっけらかんとした様子でいたが私のほうは見ることが極端に少なかった。

 アルバムを引っ張り出していろいろな思い出を話して記憶を刺激しようとしてもどこか他人事のような反応をする暁人。

(どうして?私のこと...なんで)

 放心していると腕の中にいた弓月が暁人の方に手を伸ばす。

 それを見た暁人がいつもの優しい笑みを浮かべ手を取ろうとすると急に顔を真っ青にして口を抑えうずくまる。

 自分がなんでこんな反応を弓月にしてしまうのか理解ができていない様子の暁人。

 そんな彼をみてようやく理解させられる。

 ――暁人にとって記憶を失っても私たちは吐き気を催すほど不快な存在なのだと。

 そうして弓月のためにもと距離を置くことになった暁人と弓月。

 必然的に世話をしている私との距離も離れていく。

 暁人は部活に精を出し毎日充実したような表情を浮かべるようになっていた。

 帰りもどんどん遅くなっていき顔を合わせる時間も少なくなっていく。

(別に暁人がいなくてもご主人様がいるからいいの)

 自分へそう言い聞かせご主人様に媚びを売り快楽をむさぼろうとする。

 気持ちいいはずのご主人様とのH。

 実際身体は反応するし心が満たされていく感じがするはずのにどうしても満たされない。

 それが伝わっているのかご主人様は外出が増えていた。

 (ご主人様にも捨てられる...?)

 暁人を捨ててまで選んだのに?

 あなたのために弓月もお腹の子も作ったのに?

「...許さない」

 この日私はご主――猛に声をかける。

「ご主人様、今日は...」

「あ?今日は気分ではないので」

「...最近いつもそうじゃない」

 誘っても乗ってくれないこと、雑になってきていることが言外からも伝わってくる。

「っち、うるせぇな」ボソ

 その言葉に私の中でプツンと音がした。

「ねぇご主人様...」

「あ?...は?」

 猛の足を払い床に倒す

「ぐっ!?」

 そうして猛自慢の逸物を踏みつけると強めの刺激のせいか条件反射なのか硬く大きくなる。

「私のために使わないなら、コレ要らないですよね?」

 クローゼットに隠していた枝切はさみを取り出し逸物へ向ける

「は?ま、まっ――」

 ジョキンと有無を言わさぬうちにそれを切り取った瞬間、猛の絶叫と血が噴き出す。

「汚いじゃない」

 絶叫する猛を見下ろしているとその声を聞きつけたおばさんが血相を変えて部屋に入ってくる。

 目の前で広がる惨状に絶句している。

「母さん!救急車!」

 続けて飛び込んできた暁人がおばさんに指示を出すと、おばさんははっとすると震える手でスマホを操作する。

 その姿を見ながら私は動かずにいた。

「コ(・)ト(・)姉(・)!!」

 ――今なんて?

 

 

 

暁人視点

 何とか一命はとりとめた猛はしかし自慢の逸物を失い絶望しているようだった。

 あの凄惨な現場には流石に警察も来てコト姉は現行犯逮捕され警察署へ連れていかれどうしてこんなことになったのかすべてを話したようだ。

 そしてあんなこともあり不安定となったコト姉のお腹の子は息を引き取ってしまったらしい。

 あまりにもな状況に警察も混乱していたようだが猛のスマホから出てきた動画等で証拠が山ほど出てきたためコト姉だけでなく猛も逮捕目前らしい。

 そしてまだ未成年であるため猛の悪行は現在の保護者である母さんたちにも伝わり俺の情けない現状も全て伝わってしまった。

 俺も警察から事情聴取を受けることになり、俺の解る限りを話したら同情され「本当はよくないんだがね」とコーヒーをおごってくれた。

 人のぬくもりに感謝しつつ、今思うと思い出しくもなかった記憶を取り戻してしまったことに後悔する。

 ――記憶が戻ったのは本当に偶然だった。

 大騒ぎとなったあの日、猛とコト姉の姿を見て俺の記憶は戻ってしまった。

 コト姉の裏切りも、己の無力さも、何よりこんなことになってもコト姉のことがまだ未だに好きであるこの感情も全て。

「最悪だ...」

 正直ここまでの騒ぎになると学校にも伝わってしまうし、そこから学校中に噂が流れてしまうだろう。

 転校も考えたほうが良いかもしれないと両親から告げられ納得する。

 ただ、ふと思う。

 何故被害者といえる俺が逃げなければならない?何故俺があんな奴らに気を使わなければいけない?と。

 ――もう逃げるのなんて御免だ。

 ならどうしたらよいだろうか。

 インターネットなどを駆使し今の自分に何ができるのかを考え続ける。

 そして1つの答えを出す。

 それは自ら俺の知るすべてを友人たちに話して俺を完璧な被害者にして同情させることだった。

 人は基本的に自分よりも弱い存在には優しくなれる。

 その心理を利用し俺を同情するべき弱い存在であると認識させる。

 なけなしのプライドすら捨てる行為ではあるがそれでも逃げる続けたい今までよりは100倍マシだ。

 事情聴取のおかげで自分の中の感情とあいつらにやられたことは全て書き出せるくらいには整理ができてしまっている。

 使えるものはすべて使ってやる。

 

 それからは思った以上に簡単にことが進んでいった。

 信頼できる友人や部活の仲間たちに恥を忍んで現状を話すと絶句し同情し義憤にかられてくれた。

 特にマネージャーの2人は顔が広く瞬く間に学校中へ話が広まった。

 中には俺を馬鹿にしてくる奴もいたがそいつはすぐに学校中から嫌われ居場所をなくし俺に泣きついてきた。

 馬鹿にしたくなる気持ちが俺の方がよく理解できるから許し友人となった。

 それすらも美談として広まり俺はいつの間にかかつてのコト姉と同じ学校の人気者になっていた。

 そうこうしているうちにコト姉の処分が決まったらしい。

 未成年であることや始まりが猛からの脅迫であったことなどが証明され執行猶予付きの保護観察処分となったようだった。

 弓月のこともお腹にいた子のことも全てを知ったおじさんたちは俺に土下座をしてきてせめてもの償いと見たこともない厚みのお金を渡してきた。

 だけど弓月のことも考えるとお金はいくらあっても足りないため固辞し、そのお金はあの娘のために使うようにお願いした。

 2人には「なんでこんな...暁人君を裏切って...あのバカ娘」泣かれてしまった。

 その後コト姉が家へ送られるとおじさんたちから激しい折檻を受けたようだった。

 弓月自身に何の罪もない以上流石に寝覚めが悪いのでしょうがない。

 そもそも悪いのはあの2人なのだからそれ以外を恨むのはお門違いだ。

 すべてうまくいっている。

 なんの問題もない。

 ――なわけあるか!!!!!!!

 確かに計画通りに進んでいるしやっていることは本心ではある。

 ただこの胸に残るあまりにも大きな憎悪の炎は今ものなお燃え盛っている。

 猛なんかもうどうでもいい。

 コト姉だけは絶対に許さない。

 そして俺はもう1つの計画を実行に移す。

 

 

 

琴音視点

 猛を壊したあの日、ようやく暁人が私を見てくれたあの日。

 警察で取り調べを受け何度も何度も同じ話をして自分の罪に向き合ってようやく少しだけ暁人が好きでいてくれた自分を取り戻せた気がする。

 刑務所から出て自宅に送られてまず両親から思い切り殴られた。

 当然の報いだ。

 あんなに私に尽くしてくれた暁人にあんなことをした私を許せなくて当然だった。

 そんな私を泣きながら叩く両親。

 謝ることしかできない私は土下座を続ける。

 そんな中でふと視界の端に何かが映る。

 ドアで身体を隠し、こちらを覗き込む弓月の姿だった。

 それを見て私は自分の罪の証が目の前にいることに耐えられなくなり絶叫してしまう。

 自(・)分(・)で(・)無(・)理(・)矢(・)理(・)抜(・)い(・)た(・)せ(・)い(・)で(・)短くなった髪を掻きむしり頭を床にたたきつける。

 私の奇行に両親は絶句し視線の先に弓月の存在を確認すると素早く隔離し私を取り押さえようとする。

 その手を振り切り自傷行為をやめられない私だったが

 「やめろ!!コト姉!!」

 後ろから届いた聴きたかったけど聴きたくなかった大好きな声に動きを止める。

 騒ぎを聞きつけた暁人がそこにいた。

 会いたかった暁人の存在を前に身体の動かない私を何(・)故(・)か(・)持っている手枷で拘束する。

「おじさん、悪いけど上がるね。部屋借りるよ」

「わかった。本当にすまない...」

「大丈夫、任せてください」

 そういうと暁人は私を引っ張り部屋へ連れていく。

 

 久しぶりに見た暁人は随分と大人びていた。

 背も伸びて前までよりも逞しくなった腕にドキッとしてしまう。

 そんな自分に嫌悪感を抱きまた発狂しそうになる。

「動くな」

 私が暴れそうな気配を感じ取ったのかその逞しい腕で私の身体を抱きしめる。

 苦しいくらいに強く抱きしめてくれる暁人の温もりに心が満たされていく。

「やめて...暁人にこんなことしてもらう価値なんて私には」

「うるさい」

 一言そういうと私をベッドに押し倒す。

「キャッ!?」

 こんな状況でもつい媚びた声を出してしまう自分に嫌気が差してしまう。

「あき...んん!?」

 私の感情なんてお構いなしに暁人は強引に唇を重ねてくる。

 舌を絡め私へのしかかるようにしながら思い切り抱きしめてくれる暁人。

 口の中を蹂躙する暁人の舌は猛のテクを思い出させるような快感をもたらす。

 久しぶりに感じる暁人の温かさと匂いに下腹部が疼き、いつの間にかお腹に当たる熱くて硬い暁人のアレに下着が意味をなさないくらい汁が溢れてきてしまう。

 脳が痺れてくるような快感におぼれそうなのに頭をよぎるのは猛の凶悪なアレだった。

「コト姉はやっぱり変わってしまったね」

 そんな私の思考を見透かしたかのように暁人が耳元で囁く。

 冷や水を浴びせられたかのように思考が止まり、心臓がキュッとなる。

「俺を見ているようでただ単に自分の身体を満たしてくれるものが欲しかっただけでしょ?」

「どうせ俺のじゃ満足できないもんね?今も猛のアレを忘れられないんでしょ」

「ち、ちがっ!?」

「言い訳なんていらないよ」

 どこまでも冷静に冷たく濁った眼をした暁人。

「あ、あ...」

 その見たこともない眼に言葉が出てこない。

 そして気づく。

 反省したと思っていた。

 暁人のことだけを愛していると思っていた。

 ――でもそれは嘘だった。

 暁人に唇を無理矢理奪われ強く抱きしめられ心が満たされているのに身体が求めてしまうのは、アイツの頭がおかしくなるような程暴力的な快楽だった。

 お腹に当たる暁人のモノがあいつと比べて小さく、あのころ私を満たしてくれなかった程度のものだと頭の奥では考えている。

 だからアイツのモノが忘れらないし、暁人に抱きしめられているのにアイツのモノのことばかり考えてしまう。

「もうコト姉はとっくに壊れてるんだよ」

「俺が大好きで愛していたコト姉はもうこの世にいないんだよ」

 耳に届く心地よいはずの暁人の声が頭に広がっていく。

「いや...」

「どうせ今でも俺のこと馬鹿にしてるんでしょ」

「自分が弱っていたら俺は見捨てられないって、俺になら何してもいいって」

 私の弱い心の中を言葉のナイフでえぐり続ける暁人。

「やめて...」

 自分の口から出たとは思えないくらいにか細い声。

「だって事実でしょ?あなたが自分自身で言っていたことじゃないですか」

「思っていないような言葉あんな場で出てくるわけないでしょ?」

 暁人の口は止まらず、耳を塞ぎたくなるも手を拘束されて上に乗られている以上身動きも取れずにいる。

「やだ、やだよやめてよ...」

 涙で視界が滲み声も震えイヤイヤと首を振る。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 ずっと言えなかった謝罪を子供のように繰り返す

「何に謝ってるの?」

「馬鹿な女でごめんなさい暁人を裏切ってごめんなさい暁人で満足できないって逃げてごめんなさい」

「...」

「暁人が優しいから何してもそばにいてくれるって甘えてしまってごめんなさい」

「でも本当に暁人のこと愛してるのそれだけは嘘じゃないから」

 まくしたてるように心の思うままに暁人へ向かって言葉を紡ぐ。

 「...」

 どれほど時間がたっただろう。

 何時間にも感じる息苦しい暁人の沈黙の中ただただ謝罪を続ける。

「――もういいよ琴(・)音(・)」

「ッ!?」

 ずっと呼んでくれていた「コト姉」という親しみを込めた愛称がなくなる。

「一生許さないから」

 聴きたくない言葉とともに暁人の手が首にかかる。

「ただコト姉とずっと一緒に居たかった」

「それだけだったのに」

 少しづつ力が込められていく。

「あんなことされてもでもそれでも捨てられなくて遠回りしてしまったけど」

「思い出したくもない記憶もあるけど」

 でも暁人からの強すぎる執着と狂気的な愛を感じ

「それでも俺はコト姉とこれからも一緒にいるよ」

 最後のその言葉だけで子宮が震え、言葉だけでイってしまう。

 震える私をまた強く抱きしめ唇を重ねてくる暁人。

 それだけでまた軽くイってしまう。

「絶対に逃がさないから」

 暁人は私の服を脱がして鞄から道具を取り出す。

 猛にも使われたことのある道具だけど見覚えのない形状のものが多い。

「もう二度と裏切れないよう徹底的に依存させるから」

 

 

 そこからは記憶があいまいだった。

 暁人が私を拘束したまま何度イっても許してくれずひたすら道具を使い上も下もと責め続けた。

 アイツに開発され簡単にイクようになった私の身体をゆっくりとじわじわ反応を見て私の弱いところを見つけてきた。

 あの頃はこんなことできなかったのに。

 私以外の誰かで経験を積んだのだろうか。

 そう考えた瞬間嫉妬で狂いそうになるも

「変なこと考えてるみたいだけど俺は琴音以外と経験はないよ」

「あなたみたいに誰でもいいわけではないから」

 と見透かし毒を吐く暁人。

 嬉しさと死にたくなるほどの罪悪感を抱かされ心がぐちゃぐちゃになる。

 その間も容赦なく暁人は手を休めずに私をイカせ続けた。

 ドロドロに溶けたようになった私の中に暁人とローターが一緒に入ってくる。

 イキすぎて収縮している私の中は暁人のモノを思い切り締め付ける。

 奥まで道具と暁人に刺激をされ腰が跳ねる。

 暁人の硬いそれで入口を奥をローターに刺激され頭が真っ白になるほどの快感に意識が飛びそうになる。

 はしたない顔を曝す私を見下ろす暁人の腰の動き1つで壊れてしまいそうになる刺激が走り、獣のような声を上げ続けてしまう。

 ひときわ早く暁人が動き始め中でゴム越しに果てた時には私は意識がもうろうとしてしまっていた。

 暁人の温もりが私の中から消えそうになると無意識で足を絡みつけ逃がさないようにする。

 その私の反応にビクンと暁人のモノが私の中で跳ね硬くなるがそれを抜き新しいゴムを装着するとまた私の中に入ってくる。

 それだけでわたしは心と体が満たされこの場で死んでもいいと思えるくらいの快楽が全身を走り回り身体を震わせる。

 

 後から聞いた話だと暁人は私が刑務所にいる間、色んな先輩やらネットなどでどうしたら性的に女の子を悦ばせられるのかを貪欲に研究をしていたらしい。

 高校生ゆえに年齢とともに成長を続ける身体をジムに通ってより理論的に鍛えることで、1回で終わってしまっていたものを何度もできるくらいになれるようひたすら努力をし続けていたらしい。

 少し考えればわかることだった。

 今はまだHが未熟でも暁人は私のためならどんな努力も惜しまないでいてくれたのだから。

 何をしてほしいのかを言えば頑張って応えようとしてくれる男だということを今まで証明し続けてくれていた事実。

 目先の快楽に溺れそんな当たり前だったことすら忘れてしまっていた自分に反吐が出る。

 後悔し続けてももう今更遅すぎるがせめて暁人に尽くし続けることで償うことしか思いつかない。

 両親からは勘当されそうになったが暁人たってのお願いで、お父さんのお店でキッチンとして人目につかないように両親に監視されながら働き続けることになった。

 そして私の罪の証明である弓月を育てながら暁人の帰りを待つ。

 「ただいま」

 という声がまた聴ける今を今度こそ失わないために。








記憶喪失ネタ書いてみようと思ったのと寝取る側は小道具を持ち出すことが多いけど主人公側が使ったら足りないものを補えるのではという考えの元に後半は書いてみました

アペンド出るらしいですが公式でも痛いめにあってくれると嬉しいが期待薄だと思うので

原作者様におきましてはもしも本作でネタ潰しをしてしまっていたら申し訳ございません
つい思いついて書いてしまっているので許してください


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