※この作品はR-18です。

コトネイロ 再起エンド   作:むー

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改めてよろしく

 

 

ふと物音がした気がして目が覚めた

「……?」

 今日は父さんの恩人とはいえ赤の他人が家にいるのだから警戒して当然だった

 

 がしかし

 

 彼はトイレで蹲り胃の中のも全て出してしまいそうなほど激しい嘔吐を繰り返していた

(え? なに?)

 あまりの理解できない状況に病気か何かを疑ってしまう

 ふと夕食の時の彼の顔を思い出す

 一瞬見せた懐かしそうな顔とその後に見せた顔

 私は生まれて初めて絶望というものを理解した

 激しい嘔吐が治り彼がふと服をまくると

(ッ!?)

 ガリガリになって骨と皮だけしか残っていないようなお腹につい悲鳴をあげそうにやってしまう

(なんで? どうして? 何があったらそんな事になるの?)

 頭がパンクしそうになる

 少し目を離すと彼はまとめてあったらしい荷物を背負い

「ありがとうございました。お邪魔しました」

 と頭を下げ静かになるべく音を立てないように家を出ていった

(待って……)

 その余りにも寂しげな後ろ姿に思わず駆け出す

「──何してるの?」

 貴方の事を教えて? 

 

 

 

 

「愛さん……」

 参ったなまさか起きてくるなんて思ってなかったし勇治さん以外に引き留められるなんて思ってなかった

「何って夜の散歩ですよ? せっかく知らない町に来たので」

「こんな夜遅くに?」

「静かなのも趣があって良いですよ」

 あくまでおどけて言う俺に苛立ったのか

「……馬鹿言わないで」

 小さな震えた声をだす愛さんが気にならないように

「嫌だな「馬鹿いうな!」ッ」

 物静かだった彼女から出たとは思えない大きな声に息が詰まる

「さっきあんなに苦しそうにしてた癖に!」

「っ」

 見られてた

「そんなボロボロの身体でそんな格好で出ていこうなんてふざけないでよ!!」

 感情が昂ってしまったらしい彼女の目には涙が浮かぶ

 嗚呼、俺のために泣いてくれる人がまだいるなんてと場違いな事を思ってしまう

「……ごめん」

 そう言うと彼女の目元をなるべく優しく拭う

 暖かな感触に少しだけ心が満たされるのを感じた

 

 

 

 俺たちは家へ戻り愛さんの部屋へと入れてもらうことになった

「……何があったの?」

 当然の疑問だ

「……」

 でも正直情けない話だから話したくはない

「お願い聴かせて?」

 久しぶりに自分のことを真っ直ぐに見てくれる人の

「な、情けない話だから言いたく無かったんだ」

 その潤んだ瞳に耐えきれず

 思い出したくも無い記憶を掘り起こしながらポツポツ語る

 コト姉という人のこと弓月という娘の話

 そして猛というクズの話

 気づけば口から壊れた蛇口のように言葉が出て来る

「あの時俺が気づけていたら」

「なんで俺はあんなに未熟だったのか」

「どうしてこんな目にあわなきゃいけないのか」

 と情けない後悔と憤りが止まらない

 とっくに枯れたと思っていた涙も止まらない

 自己嫌悪で死にたくなる

 語り切った後情けない顔を袖で乱暴に拭い涙の後を無理矢理消す

「っとまぁこんなもんだよ。情けないって言った理由わかっただろ?」

 努めて明るく話は終わりだと暗に示す

「──」

 愛は開いた口が塞がらない様子で何か言おうにも口がパクパクと

(そりゃあそうだいきなりこんな身の上話されたって理解が追いつくわけがない)

 そもそも俺すら理解できてないのだから

「……矢凪さん」

「? なに?」

「あ(・)な(・)た(・)は(・)悪(・)く(・)な(・)い(・)よ」

「え?」

 何を? 

「あなたは被害者だよ。自分を責める必要なんてない」

「ッ」

「あなたの言葉がどこまで本当の事なのかはわからないけど」

 誰にも話せず味方なんていない

 愛した人(コト姉)が1番の敵になった

「今あなたは傷だらけでそれでも困っていた人を見捨てられなくて」

 気を許せる人なんていない

 誰(・)よ(・)り(・)も(・)信(・)じ(・)て(・)い(・)た(・)人(・)から裏切られたのだから

「私はあなたの味方でありたい」

 心を閉ざして限界で旅に出た

 いく当てもなくやりたい事などない

 ただ何かも捨てて楽になりたかっただけの俺にそんな言葉を貰う資格はない

「信じられないかな? じゃあ1つ私も話をするよ」

「……え?」

 

 

 本当に好きだった愛してた事が伝わる声とトーンに胸が締め付けられた

 そんな話の後に続くのは現実感のない今時ドラマですらやらないだろう聴くに耐えない内容だった

 そんな過酷で悲惨な体験をしてそれでもなお父を助けてくれた恩人に

「私はね3年くらい前に強姦の被害にあったの」

 1番知られたくない過去を話す

 3年ほど前に友人の家へ行った帰り少し遅くなってしまった為近道を通る事にした

 その道はよくある夜になると真っ暗で危ないと言われている場所だったがまぁ田舎だから大丈夫だろうとたかを括っていた

 そしたらいきなり背後から口を押さえられて刃物で脅され私は純潔を奪われた

 幸い命は取られなかったけど親にすら言いたくない触れたくも思い出したくもない経験だった

 話終わると矢凪くんは拳を握りしめていた

「犯人はどうなったんだ?」

「流石に逮捕されたよ」

 その他人の為に怒る事ができるあなたは優しい人だよ

「でもそのせいで私はろくに学校に通えなくなってね」

「……」

「男の人が怖くなっちゃってさ、先生とかでも近づかれると動悸が止まらなくなってすぐ過呼吸起こしちゃうの」

「……え?」

 気づいた? 

「まぁ流石にお父さんは大丈夫だったけど今までたとえお医者さんであってもカウンセラーの先生であっても男ってだけで過呼吸になってたのに」

 なんでだろうね? 

「矢凪くんにだけはそれが起こらなかったの」

 不思議なこともあるものだと思っていた

 だけど

「理由がわからなかったけど同じように心に深い傷を抱えてた矢凪くんだから大丈夫だったのかもしれない」

 だから

「私達似たもの同士だね?」

 恐る恐る2人の手を重ねる

「「……」」

 不快感ではなく優しい温もりに安心感を覚える

 そんな私を見て呆然とする矢凪くんは

「ッ」

 反対の腕目元を隠し押し殺した嗚咽を漏らすのだった

 

 

 

 

 

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