※この作品はR-18です。

コトネイロ 再起エンド   作:むー

3 / 15
新しい日常 芽吹く想い

翌日勇次さんに早朝からたたき起こされた

「暁人!畑いくぞ!!」

「ふぁ!?ふぁい...」

久(・)し(・)ぶ(・)り(・)に(・)何(・)も(・)考(・)え(・)ず(・)に(・)寝(・)ら(・)れ(・)た(・)おれは寝ぼけた状態で車に乗せられ馬鹿みたいに広い農園に連れていかれ

「こことここの掃除と雑草抜きを頼む」

「は、はい」

頭が働かないままに指示に従う

幸いというかコトねぇにお願いと称された強制の影響で

それなりの手際で作業を済ませる

「お、手慣れてんな。よし今度はこっちでーー」

次々に何をやればいいのかを説明しいろんな仕事をさせられるが

その間は何も考えず目の前のことに集中できて心が落ち着く

言われるがままに作業をこなしていると

「おし、助かったありがとう」

「いえ」

「帰って母さんの飯腹いっぱい食ってくれ」

「は、はい」

この間まではただただ心を殺して弓月のお世話にだけ集中していたから

何も考えずにすむ重労働に身体中が痛いが心地よい疲労感だった

(こういうことやって誰かに感謝してもらえたのはいつ以来かな...)

勇次さんにありがとうと言ってもらえて少しだけ報われた気分だった

家に着くと

「暁人、先風呂入っちまえ。昨日の雪のせいで泥だらけで汚ねぇからな」

勇次さんに洗面所に押し込まれる

服を見ると確かに泥だらけで今更ながら寒さを感じる

お言葉に甘えることにしてお風呂をいただく

湯船にたっぷりとお湯が張られその光景に昨日と同じように感謝の念に堪えない

身体を洗い風呂に

「久しぶりだなぁ...何もしなくてもいいなんて」

ぼそっと呟いてしまうのだった

 

 

 

風呂から上がりだいぶ大きめの勇次さんのお古を着て

「勇次さん一番風呂ありがとうございました」

と礼を言いつつ炬燵に入らせてもらう

「おう!俺も腰がやばいからな助かった。明日からも頼むぞ」

明日も居ていいという言葉にちょっと涙が出そうになりつつ

「はい」

と答え「よし、俺も風呂入ってくる」という勇次さんを見送る

ふとテーブルの上を見ると炬燵の上に暁人用と書かれた歪な形のおにぎりがあり

その横には少しだけ顔を赤くしながら学校の課題をやっているらしい愛がいた

それをみて心がまた軽くなる俺は

「ありがとう!いただきます」

と手を合わせそれを頬張る

少ししょっぱいが運動をした後にはこのぐらいがちょうどいい

中の具は梅干しで酸っぱさの中に甘みも感じるはちみつ梅でうれしい

「うんまい!!ありがとう愛」

気遣いへの感謝をちゃんと言葉にして伝える

これも癖なんだけど

「う、うん...」

耳を真っ赤にして課題に目を落としている愛

可愛いその反応につられ課題が目に入る

「ーーあ、ここ間違ってるぞ」

去年やった内容だ

コト姉のスパルタのせいで記憶に定着されている

「え?」

驚く愛からペンを借り

「これわかりづらいよなぁ、ここはこうして…」

スラスラと途中式を訂正していく

「あ、本当だ」

それをみてさらに驚く愛

「な?」

ちょっとカッコつけてみる

「暁人って勉強出来たんだ?」

からかうようにいわれ

「ま、な。去年やったとこだし」

歯切れの悪い暁人は琴音との超絶スパルタではあっても

何より代えがたい幸せだった勉強会を思い出し歯切れを悪くする

「そっか年上だったっけ。ね、ここも教えて?」

その苦味をこらえる顔を見て努めて明るく振る舞う愛

明るくしてくれる愛に

「...ありがとな」

とぼそっと呟きつつ愛の課題を見る

 

 

 

「...うん?」

課題はさっと終わり落ち着いたところで俺は眠ってしまっていたらしい

突っ伏していた体を起こすと

「あ、起きた?」

手に絆創膏をつけた愛が俺の前に皿を置く

その中には形がバラバラなクッキーが目の前に置かれる

「ちょっと焼きたくなったから」

「え?あ、ありがとう」

びっくりしつつ好意に甘え一口手をつける

運よく作りたてだったらしいアツアツのクッキーを口に入れる

口いっぱいにバターの香りと優しい甘さが広がる

「どう?」

「…めちゃめちゃ美味い?」

余りのうまさに昔初めてコト姉が作ってくれたクッキーを思い出してしまう

(あれもうまかったけど形が崩れっちゃっていたなぁ)

何をしていてもよぎるコト姉との思い出に胸がズキンと痛むが

「ホントに?良かった…」

安心したように笑う愛の顔を見てその痛みが和らぐ

「…ねえ暁人。好きな食べ物と嫌いな食べ物教えて?」

愛が意を決したような表情で聞いてくる

「んー、好きなものカレーかな?キノコは全部嫌い」

普通に答えると

「え?キノコ嫌いなの!?仲間じゃん」

ビックリしたようにテンションが上がる愛

「あれ愛も?」

仲間を見つけ俺もテンションが上がる

「うん!あの食感と匂いが...存在意義がわかんない」

うんうんと頷きを返し

「はは、超わかる。栄養あるって言われても嫌いなもんは嫌だよな」

感情が高ぶったらしい愛は身を乗り出してくる

「そう!そうなの!!あとカレー好きなのもおんなじ!」

満面の笑みを浮かべる彼女に胸が高鳴る

「あ、ああ」

久々に感じる不快以外の感情での心臓の鼓動に俺は動揺してしまう

(そういえば...)

おにぎりを食べたのに吐き気が来ない

その理由に気づかないふりをしながら愛との話に花を咲かせる

 

 

 

「でーー」

他愛もない話をしながら私の頭の中は

(うわーー顔近い!!なんでこんな近づいちゃってるの!?)

自分の大胆な行動に混乱するも

(暁人のさっきの顔...)

私の顔が思ったよりも近くにあったこととカ(・)レ(・)ー(・)が(・)好(・)き(・)

って言った時の反応にキュンとしてしまった

(やっと私のこと見てくれた気がする)

別に暁人のことが好きってわけじゃない...はず

私はそんなに軽い女じゃない。出会って1日で好きになるなんて...

(でも一目見た時から暁人の顔が離れない)

私と同い年くらいのはずなのにビックリするぐらいやつれていて

目も濁っていたのに無理をして笑っている彼

一番信じて大事に思っていた人から信じられないような裏切りをうけ

それでも見ず知らずのお父さんを助けてくれたと知った時

私の胸が締め付けられたかのようにキューっとなった

気づいたら私の一番知られたくない秘密まで話していた

勢いって怖い

でも暁人は自分のことよりも私の方を心配してくれた

またキューっと胸が高鳴った

色々と2人で秘密を共有した事実に昨日は寝付けず

気づいたら朝になってた

お父さんが暁人を畑に連れていく音が聞こえる

「そうだ...」

キッチンへ向かうと

「お母さん、私も手伝う」

「あら?珍しい...じゃあお願いしちゃおうかしら」

はいこれとお米の入ったお櫃を目の前に置く

「お(・)に(・)ぎ(・)り(・)握(・)っ(・)て(・)あ(・)げ(・)て(・)?」

「う、うん」

お母さんの言葉に気づかないまま必死にアツアツのご飯を握っていく

食べてくれるかな?

 

 






予定外の追記
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。