2人で秘密を共有した俺と愛は短い付き合いながらも色んなこと話して共有して
「愛、これどうしたらいい?」
「ああ、そこに置いといて」
「わかった」
「ありがとうアキ君」
急速に仲を深めていた
もともと波長が合っていたのかもしれないが
好きなものなどを共有して嫌いなものを分かち合って
なんでも話す関係になった俺たちは一か月もすると阿吽の呼吸といえるほど呼吸が合うようになっていた
「……仲が良いなお前たち」
自分で呼び込んでおいて複雑そうな勇次さんだったが真面目に働く俺を見て色々と本格的に仕込んでくれるようになった
恵さんはのほほんとした感じだったが思っていた以上に鋭く
「2人で行ってらっしゃい」
たまにお世話を焼いてくれる
その鋭さに思い出してしまう人もいるが最近は愛のおかげで少し落ち着いて来た
「あれだけ想っていたはずなんだけどな」
少しづつあのことも消化でき始めている自分に
「俺って思ったより薄情なのかも知れない」
少しばかり落ち込むが
「アキ君、こっち来て」
愛の声を聴くと不思議と心穏やかになれた
「ああ」
俺年上好きなはずだったんだけどな?
なんて空元気でもなくそんなことを考えられるようになっていた
そんなある日作業も落ち着き先に風呂へ行くよう言われた俺はお言葉に甘えて1番風呂をいただく
ゆっくりと疲れを癒すと今で勇次さんと恵さんが話している声が聞こえる
「そろそろ──ー」
「ええ先生に──」
「──でどうにかなるか?」
「そこまではでも──ー」
重い雰囲気を感じ取り居間から離れようとするが
(ここで逃げたら前と変わらないか……)
せっかく愛のおかげで前を向けるようになったのだから
この逃げ癖を矯正する覚悟が必要だと思った
「お風呂いただきました!」
努めて明るく元気な声で居間に入る
勇次は暁人を一目見た時から気に入っていた
己の命すらどうでもいいと世捨て人のような生気の抜けた顔をしていたが娘である愛とどこか近しい雰囲気を感じ取っていた
そんな目をしながらも、出会ったあの日自分の方が死にそうな癖に勇次の事を一目散に助けに来た少年になら愛を任せられると考えた
実は初めて暁人が勇次の家に泊まった際の夜に起きた出来事は勇次と恵も盗み聞きしており義憤にかられた勇次は愛の件で世話になった弁護士に相談をする事にしていた
話だけを鵜呑みにするわけにはいかないと探偵を雇い調査をさせたとのろ余りにも悪質な案件に弁護士も探偵をも閉口させた
恐らく暁人は知っていたのだろうが2人とも暁人の血を一切引いていないいわば赤の他人である確率が高い事を知り現在の暁人の庇護者として法的にもきっちりと落とし前をつける事にした
幸い家業のおかげでお金には困っていない為嫡出子否認の届出の作成とDNA鑑定を急がせた
そんな中探偵からの追加報告で大きく状況が変わった事が判明するのだった
勢いよく居間のドアを開けると難しそうな表情を浮かべる2人が目に入る
その2人の間にあるものを見て俺は目を疑う
「ど、どうして……」
なぜコト姉の写真がと思い動揺が止まらない
でも俺を受け入れてくれた恩人の2人に不義理をしていたのは自分であると思い直し覚悟を決めるその場に正座し頭を下げる
「勇次さん、恵さんこんなタイミングになり申し訳ありませんが私の身の上話を聞いていただけませんか?」
なるべく丁寧にお願いをする
「ああ聴こう」
今までのことなるべく詳細に愛に話した時と同じくらい詳しく話した
「そんな離婚歴まである俺が2人の大事な愛さんに近づいてしまい申し訳ありません」
「でも許してもらえるのなら愛さんと、皆さんと一緒にいさせてください」
今の偽らざる本心を告げふたたび頭を床につける
「お願いします」
するとすぐに
「もう良いの頭をあげなさい」
恵さんの優しい声が聞こえてつい頭を上げてしまう
目に入ったのは2人の優しい笑顔だった
「あんな顔してやがったからな、何かあることくらい気づいていたし悪いが愛との話も聞いていた」
「ごめんなさいね」
2人は頭を下げてくれる
「い、いえ……」
愛との話が聞かれていたなんて予想も出来ていない展開に動揺が隠せない
「だから俺はお前の重荷を取り除いてやる為に色々と準備をしていたんだが……」
言いづらそうな顔をして机の上に目を向ける
「因果応報っていうのかねぇ」
苦笑を浮かべる勇次さんと
「当然の報いです」
毅然とした態度の恵さん
時は遡り暁人が旅に出た日
琴音はいつものように大きくなったお腹を抱えながらリビングへ降りていく
今日は妙に静かな事に少し疑問を覚えつつも
「今日もご主人様にこの子共々愛してもらわないとね」
と呟きつつドアを開ける伽藍とした静かなリビングには暁人がおらず
「まぁそんなことはどうでも良いんだけど」
キッチンの方へ歩いていく
「ご主人様の為に今日も美味しい料理を作らないとね♡」
と言いつつ袖を捲る
その視界の端にキラリと光るものが映る
「ん〜?」
何故だか今日はやけにそれが気になりテーブルに向かうと
「──え? なに、これ?」
そこには指輪と片方が記載された離婚届が置いてあった
もちろんそこに記載されているのは暁人の名前だ
震える手で縁の紙を取ると間違いなく暁人の字だった
「うそ……え?」
脳みそが急速に冷めていくのを感じる
冷めて来た脳はその隣に置いてあったコト姉へと書かれた封筒を見つける
そこには
「幸せに出来なくてごめん、さようなら」
とだけ書かれていた
涙で滲んだ後と何度も書き直された後を見た顔から血の気が引いていく
そこで玄関が壊れてしまうのではないかというほど強く開け大きな音を立てながらリビングに近づいてくる音がきこえる
「琴音!!! いるのか!!!」
久しぶりに聞く父の声は今まで聞いたことのないような怒声だった
(暁人……?)
そう呟き崩れ落ちるのだった