羽根を開く夜に、はじめてを。〜ひきこもりになった幼馴染を支え続けたら、二年参りの夜に関係が変わった話〜 作:若菜はかり
「あっ、はあぁ……健ちゃんのおち×ちん、私の中でまだ飛び跳ねてる……ゴムもしてるのに、精液すごく熱いよ……」
千鶴は俺にしがみついたまま、依然として絶頂の大波にさらわれ続けているようだった。熱く艶めかしい吐息を幾度も繰り返すばかりで、それが頬を焼くたび、尿道に残っていた精液が名残惜しむようにびゅるりと溢れる。
「千鶴の中、すっげえ気持ちいい。こんなに長く出るの、生まれて初めてだ……」
「私も……こんなに満たされた感じがするの、生まれて初めて……」
途方もない満足感と疲労感に瞳を微睡ませながら、俺たちは見つめ合った。
自然と唇を押しつけ合うだけのキスをする。
たったそれだけの触れ合いでも脳髄が甘く痺れた。もう達した後だというのに虚無感はなく、心を満たすのはただ温かい愛着だけ。
「エッチ、しちゃったね」
「ああ。満足したか?」
「もちろん。ずっと望んでいたことだから」
抱きしめ合ったまま言葉を交わす。
いつまでもそうしていたいのが本音だった。
とはいえ、俺がいつまでも覆いかぶさっていては千鶴も辛いだろう。泣く泣く身体を離し、彼女の横で仰向けになる。
「健ちゃん……離れちゃ、やだ」
すると千鶴はすぐに肌恋しくなったのか、俺の左腕にしがみついてきた。やむなく片手で避妊具を外そうとする俺の手元を見て、驚いたように声を漏らす。
「わ、こんなに出たんだ。やっぱりおち×ちんが大きいと、精液の量も多かったりする?」
「さあな。多分、サイズよりも溜まってるかどうかだと思うけど」
たっぷりの白濁液で満たされたゴムの口を縛り、ベッド下のゴミ箱に放り捨てた。その行方を追っていた千鶴だったが、やがてまた俺の股間へと視線を落とした。
「じゃあ、健ちゃんは相当溜まってたんだね。あんなにたくさん射精したのに、まだここ、怖いくらいバキバキのままだよ?」
「……まあ、そうだな」
まったく彼女の指摘通りだった。俺の陰茎は渾身の吐精を経てもなお屹立し、むしろヌメリを帯びて禍々しさを増してさえいる。
ただこれは何を隠そう、千鶴の媚肉の味を知ってしまったがためでもある。責任の一端は彼女にもあると言えるのだが、果たしてそれを自覚しているのだろうか。
「……ねえ。もしかして、もう一回したい?」
そんなことを考えていると、千鶴が控えめに口を開いた。行為に耽っていた時はあれだけ情熱的だったのに、今は目も伏せて、どこか借りてきた猫のよう。
「いいのか? 無理しなくても」
「別に無理なんかしてないよ。ただ、私も痛くなかったし……まだここの時間もあるはずだから、よければどうかなって」
そこで俺はようやく気づいた。千鶴はおずおずとしているが、実はむしろ――。
「千鶴もしたいのか?」
「……っ! そ、そういうわけじゃ」
千鶴は誤魔化すように視線を逸らし、太ももを擦り合わせた。まだ乾いていない股間がねちゃりと音を立て、耳まで真っ赤にする。
そんな姿がたまらなく可愛い。
悪戯心がふつふつと湧いてくる。
「じゃあ今度は千鶴に上になってもらおうか」
「う、上?」
狼狽える彼女に見せつけるように俺は新しいコンドームに着け替えた。そしてまた仰向けとなり、手を取って次の行動を促す。
「騎乗位ってやつだよ。千鶴ならそれくらいわかるだろ?」
「わかる、けど……」
千鶴は躊躇っていた。だが強く拒むこともなく、起き上がって俺の胸板に手をついた。
「……あんまり見ないで」
彼女が跨ろうとして片脚を上げた。
その際に白く泡立った愛液まみれの秘所が垣間見えた。俺の下半身はますます奮い立ったのだが、それが羞恥心を刺激したらしい。
「そのまま俺のを掴んで、入り口にあてがうんだ。後はゆっくり腰を降ろせば大丈夫」
「こう、かな……?」
緊張まじりの指先で亀頭を摘まむと、千鶴は俺の指示通りに動いた。その手つきは案外淀みなく、いつも自分を慰めているときの姿を意識せずとも想像させる。
「ああぁ……んっく、はぁ……っ」
じゅぷりという音とともに天を向く肉鉾が肉厚な女性器に吞み込まれていく。
まだ二度目ではあったが、しっかりほぐれていることもあり円滑な挿入だった。
そうして切っ先が最奥部にまで達すると、千鶴は眉を八の字に歪め、悩ましげに背中を反らす。再びの圧迫感に堪えるように俺の下腹部に両手を添えて突っ張るのだが、そのせいで二の腕に挟まれた乳房が強調され、何とも官能的な光景が作り上げられた。
「ぐぅ、きっつ……!」
「はぁ、あっ、何これ……あふぅ……っ」
性器同士が完全に繋がった直後、息を合わせたように俺たちの隙間は一分の隙もなく埋まった。それだけでなく互いの熱に浮かされて、今まさに溶け合おうともしているようだ。
「やばいよ、これ……健ちゃんの、入れてるだけで気持ちいい……奥までずっぽり刺さって、腰抜けちゃいそう……」
「俺も、だ……千鶴のおま×こ、うねうねしながら締めつけて……入れたばっかりなのに、もう精子が上がってくる……っ」
腰を動かずとも、わずかな身悶えと性器の蠕動だけで震えるほどの快感を覚える。
俺も千鶴もしばらくの間動けなかった。ただただ一つになる悦びを静かに享受しあう。
そうして先に身体の自由が利くようになったのは、意外にも千鶴の方だった。
「……健ちゃん、私動くよ?」
徒競走のあとのように荒い息をつきながら、据わった目つきで彼女は予告した。そして前傾姿勢になって胸板に手を添えると、いまだに歯を食いしばる俺を見下ろしながらグラインドを開始する。
「あっ、あっ、や……んっ、ふぅ……っ」
最初はいかにもたどたどしい腰つきだった。しかし、学習力旺盛な彼女は一往復ごとに要領を掴んでいく。途切れがちだった水音も、まもなく淫猥なリズムへと変わった。
「お、おいっ。待て、千鶴……なんか急に、激し……っ」
「ごめん……はぁ、ごめんね、健ちゃん……っ。このおち×ちん、具合良すぎて腰止まんないの……あっ、いっ、あはぁ……っ」
「だからって……あっ、ううっ!」
終いにはグチュグチュと音を立てながら、一心不乱に腰を擦りつけるようになる。はしたなく半開きになった口からは涎が垂れているが、一向に気にとめる様子はない。髪も振り乱し、頬はリンゴのように真っ赤だ。
俺はこんな千鶴を見たことがなかった。
初めて知る彼女の淫乱な本性。最初のセックスでも乱れた姿は見せてくれたが、今の表情はそのときよりも一層艶めかしい。
「あぁ、健ちゃんってば、すごくいやらしい顔してる……私の腰振り、そんなに気持ちいいんだ。なら、もっともっと感じさせてあげるね……?」
すっかり雌の顔になった千鶴は妖しげな口ぶりでそう言った。両膝を立て、ちょうどお座りをした犬のような格好になる。
「ちょっと恥ずかしいけど……男の人って、こういう動きの方が好きなんだよね?」
「や、めっ……うぉ、おおぉ……っ」
前後から上下の動きへ、体勢を整えた千鶴の腰遣いが一変した。
先ほどまでは襞筒に包み込まれたまま揉みくちゃにされる感覚だったが、今度はまさにピストン運動。射精感を訴え始めた剛直をざらつく膣肉で扱き上げられ、情けない呻き声を上げさせられてしまう。
「はぁ……可愛い……」
それがまた千鶴の興奮を煽る。俺をまるで子ども扱いするようにうっとり呟くと、彼女は叩きつけるように尻を振り下ろした。
汗だくになった魅惑的な女体が眼前で躍る。たわわな二つのメロンが大きく弾んだ。
ぶつかる肌と肌との間で粘液が爆ぜ、バチュン、バチュン、と凄まじい音が鳴り響く。
「あんっ、んふっ、はぁ、あぁん……っ!」
「くぅっ……さっきまで処女だったくせに、飛ばし過ぎだっつうの……」
「あはっ、必死だね、健ちゃん……このまま私にイカされちゃってもいいんだよ?」
一体全体、こんな腰遣いをどこで覚えてきたのか。今すぐ問い質したかったが、快感が大きすぎてそれもままならない。
そのうち急速に射精感が込み上げてきた。
初めての千鶴にこうも容易く追い詰められるとは。信じられない思いだったが、圧倒的な現実を前に俺は屈しそうになる。
「やばいっ、もうイク……! ――あっ?」
「……あ、あれ?」
あと三擦りもされれば達してしまいそうだった。無駄な足掻きを放棄し、精液を搾り取られる至福に身を委ねようとする。
しかし、そのときは訪れなかった。
急に千鶴がぺたんと尻餅をつき、動かなくなってしまったからだ。
「どうした?」」
「……腰、抜けたかも」
「このタイミングで?」
なんとも言えぬ空気が漂う。
とはいえ、既に臨界を迎えつつあった欲動はこれ以上の遅滞を許してはくれない。
「だったら、あとは俺がやる」
「健、ちゃん……?」
ため息ひとつ零して、俺は千鶴の双臀を鷲掴みにした。
しっかりとした幅があり、搗き立ての餅のような柔らかさと弾力を併せ持つ、いわゆる安産型。
少々荒っぽく扱っても問題はないだろう。
「覚悟しろよ。最後まで突っ走ってやる」
「お、お手柔らかに……や、あぅん……っ!」
ベッドに沈めた腰を一気に突き上げる。
スプリングの力も借りたその一撃は膣奥を捉え、千鶴の裸体がぐんと反り返った。
「あぁっ、はぁっ、あぁっ、あっ……!」
ベッドが悲鳴のような軋みを上げ、裏返った啼き声とともに彼女が跳ねる。高々と、まるでバウンドするボールのようだ。
丸尻が落ちてくるたびに肉槍が柔襞を抉りかえし、その分だけ千鶴の身体を悦ばせた。だが俺に返ってくる快感も甚大で、まさに諸刃の刃。体力ともども長く続きそうはない。
「ひぃ、やっ、はぁんっ……! だ、だめ、強すぎるの……この勃起おち×ちんにおま×こ壊されちゃう……私の身体、全部健ちゃんの形に変えられちゃうよ……」
身悶え、可愛らしい泣き言を漏らす千鶴。
そんな彼女に俺は言葉で追い打ちをかけた。
「なあ千鶴、もっといやらしく言うんだ。おち×ちんじゃなく、『おち×ぽ』って」
「お、おち……」
千鶴は躊躇うように下唇を噛んだ。しかし結局は指示通り、淫らな呼び名を口にする。
「おち×、ぽ……おち×ぽ……あぁ、健ちゃんの、おち×ぽぉ……っ」
「ああ、そうだ。千鶴はずっとこれが欲しかったんだろう?」
「うん、欲しかった……。でも、初めはただ健ちゃんが好きなだけだったんだよ? だんだんとエッチなこと知って、会えない間に気持ちだけが募って……そのうちに思い詰めて、健ちゃんに抱かれるの想像しながら自分で処女膜破っちゃった……」
「俺を想像しながら?」
不意打ちのような告白に思わず耳を疑う。
「そうだよ……だって、そのときの私はもう半分ひきこもりになってたから。こんなんじゃ健ちゃんと胸を張って会えない。ましてや恋人になるなんて、夢のまた夢。だから全部諦めた。けどせめて空想の中だけでは愛されてみたかったから、それで……」
「千鶴、お前……」
そうだ。彼女はたしかに言った。ずっと一途に俺のことが好きだった、と。
病気で暗い青春を過ごし、結果的にそうなったのかもしれない。叶わぬ思いの遂げ方さえどこか歪んでいる。それでも痛々しいまでに貫き通してくれた純情に胸を打たれた。
「ごめんな。俺があのとき告白しなかったばかりに、千鶴には辛い思いをさせた」
「ううん、そんなことないよ。それに健ちゃんは私を助けに来てくれたもの。あんなに嬉しかったの、病気になってから初めてだった」
瞳に溢れんばかりに涙を湛え、千鶴が俺の胸に飛び込んでくる。
それを優しく受け止めた。背中に回した手にぎゅっと力を込め、もう離さないと誓う。
「ちゃんと埋め合わせはするから。寂しくさせた分、千鶴のことしっかり大切にする」
「ふふ……期待してるね」
俺の改まった言葉に微笑む千鶴。
鼻先を触れ合わせ、軽くキスをした。
そうしながら俺は、いつしか止まっていた腰を今度はゆっくりと動かし始める。
「あんっ、あっ、あっ、やぁ……」
先ほどのような激しさはない。代わりに肉先で慈しむように、千鶴の一番大事なところをトントンと押し上げ続けた。
腕の中で身を揺する彼女の声もやがて甘く蕩けだし、しがみつく力も強くなる。
「はぁ、んっ、おち×ぽ、優しい……強いのも好きだけど、こうやって赤ちゃんのお部屋ナデナデされるの、溶けそうになる……」
「いつでも気持ちよくなっていいからな。さっき頑張ってくれたお礼だ」
「それじゃダメだよ……気持ちよくなるなら健ちゃんと一緒がいい……私だけなら一人のときと同じだもん」
「いちいち嬉しいこと言ってくれるな、お前は」
「え? 何、を……んんぅっ!?」
尾骶骨のあたりを手で軽く押さえ、ペニスを奥まで押し込む。そのまま亀頭で子宮口を掻き混ぜるようにしてやると、彼女の身体が小刻みに震えだした。
「あっやっあっ、そこグリグリ、やだ……本当にイっちゃう、イっちゃうからぁ……っ」
「安心しろ。今は一人じゃない。千鶴が可愛くイクところ、俺が見といてやるよ」
「ま、待って、待って待ってぇ……ひぁ、うっ……あ、あああぁ……!」
一瞬の硬直ののち、膣壁は息苦しいまでの収縮運動を見せた。同時に腰が大きく跳ね、千鶴がオーガズムに達する。
絶頂に波立つ雌穴は俺に至福ともいえる愉悦をもたらしてくれた。
だから動きを止めない。千鶴が少しでも長く天国を味わえるように、そして俺自身の欲望を満たすためにも腰を遣い続けた。
「イッてる、私もうイッてるぅ……あっ、いっ、いっくっあっ、んくぅ……っ!」
彼女はたまらず俺の首元に顔をうずめた。その真っ赤な耳元で「イケ、イケ」と唆す。
「だめ、もう許して……おっきいおち×ぽ気持ちよすぎる……これ以上されたら、頭馬鹿になっちゃうからぁ…………あっ、や、またおま×こ来る……イク、イっちゃ……ひっ、んんぅ~~っ! ……あぁ、はぁ、はぁ……どうし、て? こんなにお願いしてるのに、なんで奥トントン止めてくれないの……?」
千鶴の声にはもう半分以上泣きが入っていた。だが言葉とは裏腹に、蜜壺はますますきつく食い締まって具合が良くなるばかり。
ひとたび絆された女体はもはや本人の意思と無関係に快楽を貪ろうとしているのか。彼女もやがてはその疼きに浮かされたと見え、淫らな言葉まじりの懇願さえ口にした。
「ねえ、意地悪はもういいよ……早く一緒に気持ちよくなろう? 頑張っておま×こギュってするから、私の中に健ちゃんのち×ぽ汁早くドビュドビュってして……」
身も心も――のみならず舌の根までトロトロにしながら、千鶴は必死に子種を乞う。
その柔らかな声音が俺を狂わせた。下腹部に熱い血潮が集まり、ここまで長らえた忍耐のタガが外れる音がした。
「……俺、これから千鶴のこと、滅茶苦茶にしてしまうかもしれない」
震える手で頭をポンポンと撫でながらそう言うと、彼女は嬉しそうに桃尻を揺らした。
「いいよ、思いっきり腰振っちゃうんだよね。私の拗らせおま×こ、健ちゃんが満足するまで使ってくれていいから……だからその代わり、最後は一緒に。ね?」
「わかった。ありがとうな、千鶴」
健気な献身に感謝を口にしながら、俺は彼女の背中に腕を回した。
汗に濡れた白磁のような肌。
爪を立てないように抱きすくめ、ありったけの想いを込めてまた告白する。
「好きだ。愛してる」
「私も。健ちゃんのこと、愛してるから」
互いの肩に顎を乗せ合ったまま、俺たちは頬擦りをした。キスもしたかったけれど、今はそのために肌が離れることすら惜しい。
「健ちゃん……あぁ大好き、健ちゃん」
「俺も好きだ、千鶴。もう離さないからな」
「うん、うんっ……。絶対に離れない……だから私のこと、健ちゃんだけのものにし、て……んっ、ああぁっ!」
どこまでもいじらしくて、愛らしい。
そんな彼女の睦言に本能的に腰が動いた。
まるで精を放つまで許さないとばかりにむしゃぶりついてくる膣洞。その窮屈で甘美なる道程を、痛いくらい腫れ上がった肉茎でぐいぐいと掘り返す。
「あんっ、いっ、本気おち×ぽ、すごっ、奥、当たって……おっ、おっ、おっ、ほぉ……っ」
らしくない下品な嬌声が部屋中に響いた。
それさえ可憐に聞こえるのは、きっと俺が恋の深みに嵌りこんでしまったからだろう。
敏感な性粘膜を粒目だった肉襞が容赦なく削り取ってくる。最奥に触れるたびに蕩けきったポルチオが亀頭に口づけてくるのも、背中に鳥肌が立つほど心地がよかった。
しかし、そうしたとびきりの快感すら俺たちを包む幸福感には遠く及ばない。
「千鶴っ……好きだぞ、千鶴ぅ……っ!」
「んぅ、ひぃっ、けんちゃ……健、ちゃん……っ! あっあっあっ……!」
思考がゆるゆるとほぐれていく。
それでも辛うじて思い浮かぶのは、抱きしめた相手の名前と、膨らみ続ける愛情だけ。
だが多分、それで十分なのだ。
今この瞬間、余計なものは何もいらない。
「ああっ、出るっ! 出すぞ、千鶴……今は無理だけど、いつか絶対にこの中に注ぎ込んで、可愛い子ども産ませてやるからな……」
「……っ! そ、それって……」
俺の一言に千鶴がはっと息を呑む気配がした。それにあえて応えず、最後の膂力を振り絞ってラストスパートをかける。
「あんっ、やっ、あんっ……! き、期待していいの? 本気になっちゃうよ、私……」
「考えといてくれ。俺はこれでも真剣だから」
「健ちゃん……んっ、あっ、はぁっ……!」
千鶴の尻がツンと跳ね上がる。まるで喜んで尻尾を振る柴犬のように。それでいて胎内も妖しく蠢き、肉棒を甘やかに締め上げた。
「あぁ、やだ……嬉しすぎてアクメ来る……まだ先のことだってわかってるのに、おま×こが赤ちゃんつくる準備しちゃう……っ」
「うっ、千鶴……ぐぅっ!」
そのとき、不意に彼女の身体が力を取り戻した。今の今まで全く動けないでいたのに、生殖本能の目覚めによるものか、射精をせがむように腰を前後に擦りつけてくる。
その奇襲に期せずして絶頂に至ってしまったのが俺だった。あともう少しで欲望を吐き出す爽快感に酔うはずが、まるで失禁でもしてしまったかのようにひどく心許ない。
イキっぱなしの膣内はそれでも相変わらず精液を搾り取ろうとしてきた。
これまでに味わったことのない不思議な快感と解放感に思わず腰が引ける。その際、ペニスがコンドームを残して膣から抜け出たが、恍惚とする俺はすぐには気がつけなかった。
「ひゃんっ、あっ……精子、あっつい……っ」
途中で外に引っ張り出された太棹は深い尻の谷間に埋もれながらも、いまだにドクドクと青臭い白濁液を迸らせていた。
そのほとんどはどうやら千鶴の背中に降りかかったらしい。肌にねっとりとへばりつく熱を感じ、彼女の身体はぷるぷると震える。
「はぁ、これ本当に熱くて、火傷しそう……それに、んんっ……精液かけられただけなのに、私また……あっ」
そうしてついには千鶴も絶頂してしまう。
背中を反らし、久々に垣間見えた彼女の表情。それは男に純潔を汚された悦びに濡れ、今までよりもずっと美しく感じられた。
***
次第に浅くなりつつある眠りの中で、俺は聞き慣れない電話の音に目を覚ました。
見覚えのない天井。
同じく、普段とは違う布団の肌触り。
それも当然で俺は全裸だった。しかしそれを抜きにしても違和感だらけといえる。
ひとまずベッドから身を起こし、眠い目を擦りながら電話に出た。
相手は落ち着いた年配女性の声。
チェックアウトの時間だがどうするかという問いかけに、昨夜の記憶が徐々に蘇る。
俺はベッドで眠っているもう一人の姿を確認しながら、一時間の延長を申し出た。
電話を切り、ほっと息をつく。
(さて、まずはどうしようか?)
と思案していると、布団の中で丸くなっていた千鶴がおもむろに寝返りを打った。
「ん……健ちゃ、ん……?」
「よお、おはよう」
「おはよう……あっ」
挨拶を交わし、彼女は起き上がろうとする。
だが途中で自分の姿に気づいたようで、はたと動きを止めた。シーツを胸元に引き寄せ、乱れた髪を直しながらこちらを見やる。
「私たち、あのまま寝ちゃったんだ」
「まあな。結局、終わったころには明け方が近かったし。今電話があったから、ホテルの人には延長をお願いしといたよ」
「そう。ありがとね」
じゃあ、まずはシャワーでも浴びるか。
そう言いかけたとき、どこからともなく(クゥ)と可愛らしい音が聞こえた。
「あ……」
「今の音、千鶴か?」
恥ずかしそうに視線を逸らした彼女に、優しく笑みを向ける。
だがそれと同時に俺の腹も、(グゥ)と先ほどより低く大きな音を鳴らした。
「今のは健ちゃん?」
「……ああ、だな」
二人で顔を見合わせ、一緒に吹き出す。
俺はとりあえず、備え付けの冷蔵庫からスポーツドリンクを二本拝借することにした。
「ほら、糖分と水分補給」
「ん、サンキュ」
俺がベッドサイドに腰を下ろすと、千鶴は布団にくるまったままそばに寄ってきた。
並んでペットボトルに口をつける。
しばしの沈黙。
「こういうの姫始めって言うらしいぞ」
「知ってる。年が明けて初めてのエッチのこと、そう呼ぶんだよね」
ぽつりぽつりと会話をする。
なんだか少しむず痒い。
「そもそも新年から朝帰りになるだなんて、家族には伝えてあるのかよ」
「言うわけないでしょ。健ちゃんとラブホに寄るから遅くなるなんて。だから多分、携帯に鬼電入ってると思う」
「マジか。なんて言い訳しよう」
元旦から先が思いやられることである。
それなのに憂鬱ではなく、むしろ心が弾んでいる気がするのはどうしてだろう。
「まあ、ここで悩んでも仕方がないか。気を取り直して風呂にしようぜ。それからホテル出て、どっかで飯にしよう」
「何食べよっか?」
「まずは開いてる店を探すところからだな。どこかのモーニングでもやってればいいが」
俺たちはバスローブを羽織り、連れだって浴室へと向かった。その間も昔と同じような取り留めのない会話が続く。
(――いや、やっぱり違うのか)
思い出したのは数時間前、二人で肌を重ねながら思いを伝え合った記憶。
あのとき「付き合おう」とストレートに言ったわけではない。けれど、俺たちの関係は幼馴染から確かに恋人同士へと変わったのだ。
千鶴が彼女で、俺がその彼氏。
恋愛未経験者でもないのに、その事実を改めて認識すると何となく落ち着かない。
「健ちゃん、入らないの?」
「……うん? おお」
先に裸になった千鶴が不思議そうにこちらを見ていた。身体の前はタオルで隠しているが、シミ一つない綺麗な背中は剥き出しだ。
この背中はこんなに小さかったっけ?
会わないうちに身長で追い越してしまったとはいえ、今さらながらに驚く。ずっと目線を上げて憧れていた相手は、今や腕の中にすっぽりと収まる可憐な女性だった。
「さっきからボンヤリしてるね。どうしたの? やっぱり昨日頑張ったからお疲れ?」
「いや、何と言うか……ちょっと昔のことを思い出してた」
「昔、って?」
心配そうな顔をして近づいてきた彼女の手が、俺の腕にそっと触れた。
少しひんやりとする指先。
そのどこか覚えがある温度に、二人で交わしたあの日の約束が思い起こされる。
「たしか中学を卒業する前の日だったか。帰り道で指切りしたよな。覚えてるか?」
「懐かしいね。健ちゃんの夢、見つけたらいつか教えて欲しいって言ってたっけ」
「そう。それなんだけど――」
続く言葉はもう喉元まで上がって来ていた。しかし、俺はそこで口籠って頬を掻く。
いざ伝えようとするといかにも子どもっぽくて気恥ずかしかった。あるいは昔から心のどこかで燻ぶっていた願いだったのかもしれない。これまでずっと奥にしまい込んで見ないふりをしていたのだろう。
だが、それも今日で終わりだ。
俺は千鶴の華奢な肩を抱き寄せ、意を決して口を開く。
「俺の夢は、『千鶴と幸せになること』だ。すごく曖昧だけど、絶対に叶えたい」
「……そっか。なら応援するんじゃなくて、私も一緒に頑張らないとね」
千鶴はくすりと笑い、それ以上は何も言わなかった。ただ俺の背中に腕を回してくる。
その抱擁は癒えた翼で包み込んでくれるように、どこまでも温かくて柔らかかった。