※この作品はR-18です。

ToLOVEる 生まれ変わった意味を探して   作:雪だるま2世

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Passing down feelings~きっかけ、人のぬくもり~

アゼンダがヤミお姉ちゃんを襲った次の日。

 

「どうして、アゼンダを攻撃しなかったの?時雨優斗せんぱいが居なかったら、殺されてたかもしれないんだよ!?」

 

昨日、ヤミお姉ちゃんがアゼンダを攻撃しなかった事にわたしは理解できなかった。

あの時、時雨優斗せんぱいがいなければ、ヤミお姉ちゃんは殺されていたかもしれない…

人質なんて気にせずに攻撃をすれば倒せたのに…

 

「……かも、しれませんね、完全に私の判断ミスでした、最初から一人で何とかしようとせず友達を頼るべきだったと思います」

「友達を……頼る……?」

「……」

 

…なにそれ、意味わかんないよ、わたし達は戦うために生まれたトランス兵器、そんな事しなくても…

 

「メア、確かに私達は、戦うために作られた兵器……でもそれが行き方の全てではありません」

 

ヤミお姉ちゃんの深紅の瞳がわたしを貫く、まるでわたしの全てを見透かしているように…

 

「もし、あなたが本当に私を家族として迎えたいのなら、人と触れ合い、その温もりを知ってください…それが私達がわかりあうための…」

 

ヤミお姉ちゃんはそう言って図書室から出ていった。

人のぬくもり…?わからないよ…わたしはずっと一人で生きて来た、マスターがそれが正しい道だって教えてくれたから……

 

「やあ、黒咲さん」

「…時雨せんぱい」

 

教室に戻る為、歩いていると後ろから時雨せんぱいに声をかけられる。

 

「悩んでるみたいだね?」

「………」

 

時雨せんぱいはわたしの顔を見て言ってくる。

 

「マスターに言われたんだろ?闇の世界で一人で生きて、孤独に戦う、それが兵器のお前として正しい道だと…違う?」

「ッ!?」

 

思わず、わたしは驚いてしまった、似た様なことを前にマスターに言われたことがあるから。

…マスターに言われた言葉をせんぱいがなんで知ってるの?

 

「…自分が見て、教えられてきた世界が正しいとは限らない」

「え?」

「…黒咲さんのマスターが言っていることが全て正しいとは限らないって事だ」

「っ!マスターが間違ってると言うの…」

 

マスターを否定されたと感じたわたしは思わず、髪をトランスで刃に変える。

…マスターは間違っていない、だってわたしはマスターが居たから生きてこられたんだ。

 

「全て間違ってるとは言わない、正しさは人によって違うからな…それに…俺もそうだった」

「…え?」

 

時雨せんぱいは一瞬目を閉じてゆっくりと口を開く。

 

「…俺も信じてた、俺に戦い方を教えてくれた人の言葉を信じて戦い続けた…でも違った、それ以外にも答えがあった、俺にはそれを教えてくれた親友がいた」

「………」

「俺の親友が教えてくれたように、きっとナナも黒咲さんに新しい生き方を教えてくれる」

 

…ナナちゃんがわたしに新しい生き方を教えてくれる?なんでそんなことが言い切れるの?わたしは兵器なんだよ?

 

「わたしは兵器、戦い以外の生き方なんて───」

「黒咲さんもヤミと同じで兵器なんかじゃない、人間で普通の女の子なんだ」

「ッ!?」

 

時雨せんぱいの私を見る目は真っ直ぐで、思わず目を逸らしてしまった。

 

「だから、ゆっくり自分で考えるんだ…そして経験して感じるんだ、ヤミがこの星で色んな事を経験して感じたように…」

 

時雨せんぱいはそう言いながら、わたしの横を通り過ぎる。

 

「人を殺す力があるのに普通の女の子なワケないじゃん」

「…それを言ったら、人を沢山殺してきた俺だって人間じゃないよ、それに人を傷つける力は、使い方次第で人を救う力にもなる」

「………」

「そして黒咲さんにしか救えない人が必ず現れる」

 

それだけ言い残すと時雨せんぱいは自分の教室に向かって歩いていった。

 

「…何それ、意味わかんないよ」

 

わたしは教室に向かって歩く時雨せんぱいの背中を見ながら呟いた。

 

 

◇

 

~優斗side~

 

昼休み、昼食を食べ終えた俺は、廊下で窓の外を眺めながら、昨日ヤミが俺とモモに話してくれた事を思い出していた。

 

───メアは…昔の私と同じです″兵器″として…闇の世界以外に生きる道はないと信じている

 

───…できれば彼女にも知って欲しいと思っています、私がこの星で得たコトを…そうすればきっとあのコも───…

 

───だから、私は彼女に変わる″きっかけ″を与えたい、優斗が私に与えてくれたように…

 

ヤミは黒咲さんに闇の世界以外に生きる道があると知って欲しいと思っている。

それなら、俺は黒咲さんが変わる事ができるようにサポートをする。

 

「ユウト!」

「…ナナ」

 

神妙な顔をしたナナが俺に話しかけてくる。

…恐らくナナは、黒咲さんの事で話しかけてきたはず。

 

「その…ちょっといいか…?」

「いいよ、ここじゃあれだし、ジュースでも飲みながら話そうか?」

 

俺はナナと一緒に自販機に寄ってから、中庭に向かった。

 

「それでどうしたの?ナナ」

「…それがメアがお姉ちゃんとケンカしちゃったらしいんだ───」

 

二人でジュースをもってベンチに座り、俺が話を聞くとナナが黒咲さんの事を話し始めた。

 

やっぱり黒咲さんの事だったか。

ナナなら、黒咲さんを励まそうと行動するとは思っていたけど、まさかここまで早いとは思わなかった…

 

「そんなわけでさ、よけいメアを落ちこませちゃったみたいで…あたし、あいつに何か出来る事ないかな?」

 

友達として黒咲さんを励まそうとしたのに落ち込ませてしまった事で、ナナはどうすればいいのか分からないみたいらしい。

 

「ナナが楽しいと思える事に連れ出してみたらいいんじゃないかな」

「楽しいと思える事?」

 

輝が俺を自分の楽しいと思える事に連れ出して、色々な世界を見せてくれたように…ナナも輝の様に色んな世界を黒咲さんに見せてあげて欲しい。

 

「輝はスポーツや海とか自分が楽しいと思った事を俺に経験させて笑わせてくれたんだ」

「…笑わせる」

「笑えば、悩みも吹き飛ぶし、もしかしたら、解決出来る答えが見つかるかもしれないよ」

 

まあ、輝の場合連れ出し方がかなり強引だったけどな、でも今思えばあれも楽しいかった…最高の思い出だ。

 

「…あたしにメアを笑わせる事ができるかな?」

「大丈夫、ナナならできるよ」

 

だってナナの目が、あの時、俺を連れ回した輝にそっくりだから…

 

「…わかった!やってみるよ!サンキュな、ユウト!」

 

隣に座っていたナナは笑顔になって、ベンチから立ち上がり一目散にどこかへ走っていった。

後はナナと黒咲さんを見守れば、きっと二人は大丈夫だろう、それよりも…

 

「…いつまで隠れてみてるつもり?ララさん」

「アハハ…バレちゃったか…」

 

″ゴメンね?隠れてみるつもりはなかったんだー″と言いながら、柱の後ろから出てくるララさん。

 

「ありがとう!ナナの相談に乗ってくれて♡」

「お礼を言われる程、大したこと言ってないよ?」

「そんな事ないよー!ユウトがいなかったら、ナナはずっと悩んでたと思うし」

 

ララさんは嬉しそうに笑っていうと俺が座っているベンチの隣に腰を下ろす。

もしナナがずっと悩んでいても、きっとララさんが動いて解決していたと思うけど。

 

「ナナはね、ああ見えて結構あまえんぼなの、慣れないクラスで最初に友達になったメアちゃんは、きっと特別なんだと思う」

「特別ね…確かにそう見えるよ」

「上手くいくといいよね♫ナナとメアちゃん」

「上手くいくよ、ナナと黒咲さんなら、きっと親友にだってなれる、もし何かで躓いたら、その時は俺達が支えればいい」

 

ララさんを俺を見ると″そうだね!″と言って微笑んだ。

 

「やっぱり、ユウトは優しいね!だからナナは………」

「ごめん、聞こえなかった、なんて言ったの?」

「ヒミツー!」

 

ララさんは笑顔になって教室へ駆け足で戻っていく。

…ララさんは本当になんて言ったんだ?

 

そんな事を考えながら、俺もララさんの後を追って教室へ戻るために歩き出した

 

◇

 

 

「見せたいものがあるって何?ナナちゃん」

「いーからいーから!」

 

授業が終わって放課後になると、黒咲さんを連れたナナが河川敷まで走ってきた。

 

「あ!いたいた、おーい!!」

「ひゃ───っ」

 

ナナが呼ぶと同時に一匹の犬が走って黒咲さんに突っ込んでいく。

 

「何、このコ!?」

「春菜のペットで西連寺マロンだ!!面白い顔してるだろ」

「ホントだ!へんなカオ~」

「バゥワゥ」

 

黒咲さんはマロンを持ち上げて笑っている。

マロン、変な顔って言われてキレてるよな?黒咲さんにめっちゃ噛みつきそうだけど…

 

「クゥーン…クゥーン」

「きゃはっ、やわらかプニプニ──!」

 

と思ったら、急に懐いて黒咲さんに擦り寄ってる…マロンにナナがなんか言ったのか。

 

そんな様子を遠くで、俺とモモと西連寺とリト──リトは何故か着いてきた───の四人で見守っていた。

 

「ありがとう、西連寺さん、部活もあったのにマロンを連れてきてくれて」

「大丈夫だよ、時雨くん、マロンも外に出られて喜んでるし」

 

急な頼みだったのに、西連寺さんは快くマロンを連れてきてくれた。

 

「でも、いいトコあるわね、ナナちゃん。お友達を元気づけたいなんて」

「だよな───」

 

西連寺さんと一緒に着いてきたリトがいい感じの雰囲気で話している。

この前屋上でララに告白したけど、西連寺さんに告白するのは失敗したって言ってたし…二人にしてやるか。

 

「おい、リト…」

「なんだよ、優斗」

「ここは俺とモモが見守るから、そっちは二人で楽しめよ」

「そうですよ、リトさん。せっかくの″本命″の春菜さんがいる事ですし、何かアプローチをしてみては?」

「は!?」

 

モモも俺に加担して、リトを後押しする。

それにしても本命…ね、さてはララさんから聞いたな?

 

「二人でゆっくり楽しんでくださいな」

「頑張れよ、リト」

 

俺とモモはリトの背中を押して、西連寺さんの横に立たせる、今リトならこの先は、自分で何とかできるだろ。

 

…てか待て、今思ったけど二人に告白ってお前までハーレム作るって言う気じゃないだろうな?

 

「…優斗さん、一つ聞いてもいいですか?」

「いいよ」

 

そんな事を考えながらナナとメア、リトと西連寺さんが二人で話しているのを見守っているとモモから話しかけられる。

 

「優斗さんは黒咲さんが変わることができると思っていますか?」

「あぁ、思ってる」

 

俺が即答するとモモは驚いたように目を見開いた。

 

「…どうして言いきれるんですか?」

「人はきっかけ一つで変わることができる、良い方向にも悪い方向にもな」

「その言葉、彩南ウォーターランドでリトさんにも言っていましたよね」

 

…ウォーターランドでリトと話していた内容を一体どこまで聞いてたんだか…

 

「…この言葉は輝の受け売りなんだ」

「え?」

「あいつが俺と初めてあった時に言った言葉、その言葉は、俺の中にある何かを変えるきっかけになった」

 

───優斗、きっかけ1つで人は変わるんだ、善人から悪人へ、悪人から善人へ、ボクたちは悪人を善人に変わるきっかけを与えてあげないかい?

 

輝が言った言葉を俺は最初は信じなかった、でも輝と一緒に任務をこなしていくうちにあいつは自分が言った言葉を証明するように、色んな人にきっかけを与えて行った。

 

そんな輝を見て、俺の中にあった何かが変わった。

 

「優斗さんは″ナナがメアさんの心を変えるきっかけになる″そう思っているんですね」

「…そうだね」

 

ヤミも美柑と出会って変わったように、ナナは黒咲さんを変えるきっかけになると信じている。

 

「モモはナナと楽しんでいる黒咲さんを見てどう思う?」

 

ヤミから黒咲さんの正体を聞いて、モモはきっと心配になって俺達に着いてきた。

そんなモモが今ナナと笑っている黒咲さんを見て、変わる事ができると思ってくれるといいんだけどな。

 

「…私は黒咲メアのあの笑顔を見て、本当に心から楽しんでいるみたいに見えます」

「………」

「…だから私もナナを信じます」

「ありがとう、モモ」

 

俺の腕に頭を預けながら、ナナと黒咲さんを見守るモモ。

…きっと黒咲さんの正体を知った時点でナナと黒咲さんを引き離すか悩んでいたんだろうな。

 

「ひゃっ!?はうぅ…何コレぇぇぇ」

「おいコラ、マロン───!!」

「…あっ…♡…はっ♡スゴッ♡…イッ」

 

急にマロンが暴走して、黒咲さんの全身を舐め回す、そして舐められている黒咲さんは…なんかすごいことになってる。

 

「そんなペロペロしたら、メアが困るだろ!あれっ…そうでもない?」

 

いや、困って無さそうだけど、外で見せるような顔はしてないよ?

てか、ナナの後ろにいる動物達も目がぎらついている気がするのは気の所為か?

 

「お…お前ら!?こ…こら!?どこ入っ………ふぁっ!?あ…っ!?そこ…ダメっ……はっ…んっ…ユウト…やめ…やめてぇぇ~」

 

ナナの後ろに居た動物達に、ナナは押し倒されて全身を舐め回される。

…俺が舐めまわしてるみたいだから、名前呼ぶのやめて欲しい…とりあえず、助けるか。

 

「…その辺で終わりだ」

 

俺が倒れたナナと黒咲さんの腕を引っ張って起き上がらせるて動物達を振り払う。

 

「大丈夫?二人とも」

「…ありがと…せんぱい」

「…はぁ……はぁ…」

 

黒咲さんは大丈夫そうだな、ナナも返事はないけど、大丈夫か?

 

「わわわわわ」

「きゃっ」

「ゆ…結城くん、引っ張らないでっ」

「ゴ…ゴメン!で…でも身動きがっ」

 

声のした方をみると巨大なタコとイカに捕まった、リトと西連寺さんがお互いに絡まりあって大変な事になっている。

 

「ナナ、デダイヤルでリトと西連寺さんを───」

「はぁ…はぁ…ユウトぉ…」

 

俺がナナに声をかけると顔を赤く染め、とろんとした顔で俺を見たナナはそのまま俺を強く抱きしめる。

…ナナさん?何をしてるの?

 

「…はぁ…はぁ…あたしも…ユウトの事…ペロペロしたい」

 

舐め回されて何かのストッパーが外れたのか、ナナはそのまま俺を押し倒して俺の上に馬乗りにで座る。

 

「ナナ、落ち着いて?とりあえずズレた制服と下着を…」

「あたしだって…舐め回したい…」

「ッ!?ナナ!!」

 

ナナは俺のワイシャツのボタンを一つずつ外していく。

…まずい!このままだと、色々アウトだぞ!?

 

「ナナ!ここ外だから!」

「…外じゃなかったらいいのか?」

「…え?」

「…あたしは…外でもいいぞ……はむっ…ちゅ…」

 

ワイシャツのボタンを外し下着をたくしあげたナナが、とろんとした顔で言うと俺の抵抗した手を掴みで口まで持っていき、俺の指を口に入れて舐め回す。

本当にどうしたんだ?ナナはこんな事、言う子じゃないでしょ…

 

「っ──────」

「ちょっ!ナナっ!?」

 

ナナは指、手のひら、腕と伝って身体の中心に向かって舐めていく。

耳とか舐められてるのと訳が違う、くすぐったくて、変な気分になる。

 

「…ナナちゃん、大胆」

「…え?」

 

二の腕を舐め終わり、脇を舐めようとした時、黒咲さんの声を聞いたナナは我に返った。

 

「っ!?ユウト!!違うっ…これは!!」

「…とりあえず、離れて欲しい」

「ナナ!!リトさん達がステキな…じゃない大変な事になって…ナナ、あなたこんな所で優斗さんを襲うつもりだったの?」

「そんなワケないだろ!!」

 

いや、そんなワケあったよ?ナナさん。

モモに言われて咄嗟に立ち上がるナナは急いでズレた制服と下着を直してデダイヤルを探す。

 

「あれっデダイヤルがない!?」

「えぇ!?」

 

デダイヤルがない?まさかさっき動物達に揉みくちゃにされた時に落としたのか?

先程、ナナが動物達に押し倒された場所を見るがそこには何も落ちていない…一体どこにある?

 

「あっ!あった!」

「キ?」

 

ナナが指を指した方をみると、一匹の猿のような動物がデダイヤルを持っていた。

 

「こ…こら!?それ返せっ」

「ッ!?ダメだ、ナナ行くな!!」

 

猿のような動物を捕まえようと飛び出した道路の先にはトラックがナナの方に向かって走っていた。

…今ならまだ間に合う、猿もナナも両方助けられる!!

俺は地面を蹴って、ナナの元に全力で走り出す。

 

「ナナちゃん!!」

 

黒咲さんも気づいて声をあげたがナナは気づかない。

 

「げっ」

 

猿のような動物を抱えたナナは、ようやく迫り来るトラックに気づいたが、ナナは動くことができずに固まってしまう。

 

「ナナ!!」

 

モモが叫んだ、瞬間近くにいたはずの黒咲さんが俺よりも先にナナの前に庇うように抱きかかえた。

 

(黒咲さんはトラックを斬るつもり───…は?トラックが加速した?)

 

黒咲さんの目の色が変わり、髪は刃に変形して斬ろうとするが、恐らくそれよりも先にトラックが二人を轢いてしまう。

…二人を抱きかかえて逃げることはできない、なら…やることは一つ

 

「ッ!!」

「…え、せんぱい?」

「ユウト!?」

 

俺は道路に飛び出し、二人を突き飛ばす、トラックの車線は俺を捉えていた。

 

「…ありがとう、黒咲さん、ナナを守ろうとしてくれて」

「え?」

「ユウト!避けろ───!!」

 

ナナの叫びは届かず、俺を轢き殺すようにトラック更には加速する。

 

「あなたは馬鹿なんですか?優斗」

 

ヤミの声が聞こえた瞬間、空から現れたヤミとララに手によって俺を轢くはずだったトラックは止められた。

 

「姉上…!」

 

ヤミとララさんがトラックを止めてくれた事で誰も怪我をせずに済んだ。

俺はトラックの運転手さんの″女性″に突然飛び出した事を謝罪したが、″女性″は帽子を深く被って顔を隠し、無言で去っていった。

 

…なぜあの女性はナナやメアが前に出てきても、一切ブレーキを踏まずそれどころか加速した?

 

それに去り際に何故、俺とヤミを見ていた?

 

そして俺は顔は見えなかったがあの女性を″何処かで見た事がある気がした″のは気の所為か?

 

…いや、さすがに気の所為か?

 

「いや───危ないトコだったね〜!」

 

俺が考え事をしているとララさんは″みんなが怪我してなくてよかったよ!″と明るい声で言う。

 

「みんな、ゴメンな…なんか大騒ぎになっちゃって…」

 

ナナが申し訳なさそうに謝ると俺の方へ近づいてくる。

 

「…ユウトもゴメン、怪我してないよな?」

「心配しなくても俺は大丈夫だよ」

 

轢かれる前にヤミとララさんが止めてくれた、むしろ突き飛ばした二人に怪我がなくてよかった。

 

「メアもその…ゴメン」

「え?なんで謝るの?すっごく楽しかったよ!動物って素敵っ♡」

 

黒咲さんは明るく笑顔になりながら言う、楽しかったみたいでよかったよ。

 

「それにペロペロって素敵かも…♡こんど、ナナちゃんみたいに身体の隅々までペロペロさせてください、時雨せんぱい」

「…いや、それは───」

「ッ!?違うぞ!メア!あれは…」

 

黒咲さんは俺の胸板に手を置いて、とろんとした顔で俺を見る。

…やばい、黒咲さん、マジで言ってる、

 

「一方的に舐められるのはイヤですか?なら!せんぱいと私の身体、お互いにペロペロするのも素敵かも♡」

「おい!メア何言って!」

「ナナちゃんも混ざって三人でペロペロする?」

「なっ!?」

 

黒咲さん、それ最終的に俺が一方的に二人に身体を舐め回されて終わる気しかしない。

これ以上、人数と頻度が増えたら、近いうちに俺はみんなに全て美味しく食べられて終わるぞ?

 

「…うまくいったみたいだね、ナナ」

 

ララさんがナナに近づき、俺達の会話に割って入ってくる。

 

「ナナはね───!メアちゃんが元気になる所を見たかったんだよ」

「あ…姉上!」

「…え?」

 

ララさんの言葉を聞いた、黒咲さんは胸を押えて固り、そんな黒咲さんを遠くから見つめていたヤミは微笑んでいた。

 

「優斗さん、彼女もハーレム候補に加えますか?」

 

モモが俺の耳元で囁いてくる、…まだ諦めてなかったのか。

 

「…何度も言うけど、俺はハーレムを作るつもりは無いよ」

「私も何度も言いますが、諦めるつもりはありませんよ」

「………」

「さっきトラックに轢かれそうになったナナとメアさんを助けようとして、無茶をした優斗さんを見て、さらに決意は固まりましたから…」

「…なんでさ」

 

…俺は俺で問題は山積みだな。

 

その夜、みんながお風呂に入っている時、俺の携帯に一本の着信があった。

 

「もしもし、時雨です」

『あ、どうも私は児童福祉課の天馬透(てんまとおる)です、時雨優斗様の電話番号でお間違いないですか?』

「はい、間違ってないです」

 

相手は児童福祉課の担当者、俺はこの人に用がある。

 

『昨日は予定があって会えずにすまなかったね、今週の土曜日の午前中なら、時間があるんだがどうだろう?』

 

俺は昨日の学校が終わった後、この人に会いに行ったが会うことができず、携帯の番号と要件だけメモに残し別の人に渡してもらう事にした。

 

「わかりました、土曜日の午前中に伺わせて頂きます」

『わかった、時間は───でいいかな?』

「大丈夫です」

『じゃあ、また土曜日に』

 

そう言うと電話が切れる。

 

俺は知らないといけない…この世界の俺───朝比奈桜の事を…

 

古手川さんと一緒に帰った日の夜、南雲の資料から、過去の俺の資料がパソコンに送られてきた、その資料を呼んだ際、名字が朝比奈だったという事を知った。

 

そして資料に書いてあった内容は俺の知らない事ばかり、いや───覚えていない事ばかりだった。

 

なぜ、覚えていないのかは分からないが、朝比奈桜(あさひなさくら)を知る事が、俺がこの世界に生まれ変わった理由に関わっている可能性が高い。

 

それに俺の予想が正しければ、南雲に探してもらっている物は必ず見つかる。

 

「…ただ、もし───が見つかった場合、俺はどうすればいいんだろうな」

 

見つかれば、俺はどうすればいいか分からない、どうするのが正解なのかも…

ただ───見つかって───を回収すれば分かるかもしれない。

 

 

 

 

 

俺がこの世界に生まれ変わった理由が……

 

 

◇

 

~メアside~

 

家でわたしはさっき言われたことを思いだす。

 

───ナナはね───!メアちゃんが元気になる所を見たかったんだよ

 

なんでだろう……思い出しただけでも……胸があたたかい…これがヤミお姉ちゃんの言ってた……人のぬくもり?

 

それだけじゃない、ナナちゃんがトラックに轢かれかけた時、わたしは守らなきゃって思った…

 

───人を傷つける力は、使い方次第で人を救う力にもなる

 

───そして黒咲さんにしか救えない人が必ず現れる

 

……わたしは人を殺す力でナナちゃんを守ろうとした?

 

───…ありがとう、黒咲さん、ナナを守ろうとしてくれて

 

時雨せんぱいはわたし達を助けて轢かれかけた時、確かにそう言った。

 

今までマスター以外の誰かに助けてもらった事もないし、マスターにもお礼なんて言われた事もなかった。

そんなわたしが、助けられて、初めてお礼を言われた。

 

「ありがとう…かぁ」

 

…お礼を言われただけでなんでこんな嬉しいの?

 

それに轢かれそうになった時雨せんぱいを見て、なんで死んで欲しくないって思ったの?

 

「…また分からないことができちゃったなぁ」

 

…でも、今日は時雨せんぱいの言葉とヤミお姉ちゃんの言葉が少しだけわかった気がして嬉しかったなぁ。




確認はしましたが、誤字等ございましたら報告よろしくお願いします。
感想やお気に入り、いつもありがとうございます。

私事で申し訳ありませんが、仕事が忙しくなり、今週から8月中旬くらいまで投稿頻度が少し落ちるかもしれません。(かもなのでいつも通りの可能性もあります)

完結は必ずさせたいと思っていますので今後ともよろしくお願いします。
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