ToLOVEる 生まれ変わった意味を探して 作:雪だるま2世
「待ってて、ネコちゃん!動いちゃダメよ!」
懐かしい記憶。
小さい頃の私は木から降りることができずに怯えているネコに駆けよった。
「すぐ助けてあげるからね!」
ランドセルを地面に置いた私はそのまま───
◇
ジリリリリリリリ───と鳴り響く目覚ましを止めた私は目を覚ます。
「ん……」
眠たい身体を何とか起こした私は、目を覚ます為にシャワーを浴びる。
昔の夢…小学5年生くらいだっけ…学校帰りに木から降りれなくなってるネコちゃんを見つけて…あれから、どうしたんだっけ?
「どーした、唯、誰かとデートか?」
「違うわよっ!!」
シャワーを浴び終えた私は着替えて外出しようとリビングを通りかかるとお兄ちゃんに話しかけられた。
「ほんとかー?ユウトってやつとデートなんじゃないのか?」
「なっ!?」
お兄ちゃんが優斗くんの事をどうして知ってっ!!
お兄ちゃんの言葉を聞いて思わず後ずさり、私は震えた声でお兄ちゃんに問いただす。
「な…なんで!お兄ちゃんが優斗くんの事を知ってるのよっ!!」
「なんでって…唯がよく部屋で呟いてるからだろ?優斗くん…優斗くんってよ」
…ウソ…き…聞かれてたの!?よりにも寄って一番聞かれたくなかったお兄ちゃんに聞かれていたなんて…
「優斗ってやつ…もしかして彼氏か?」
「違うわよっ!!」
お兄ちゃんの質問に即答で否定した私はこれ以上お兄ちゃんに詮索されると色々と厄介な為、急いで玄関に向かい靴を履いてから外に出る。
「…最悪だわ、もしお兄ちゃんに私が優斗くんの事が好きな事を知られでもしたら───」
絶対にからかわれる…もしくは″優斗ってやつに会わせろよっ″とかニヤニヤしながら言ってくる。
「…私が優斗くんの事を好きなだけで、まだ彼氏なんかじゃ───」
それに優斗くんはこの前、籾岡さんと屋上でハレンチな事をしていた。
「…最初に籾岡さんが優斗くんを襲ったみたいだけど、優斗くんに逆転されて襲われたって言ってたわね…」
放課後、反省文を書く前に二人に事情徴収をした所、籾岡さんが嬉しそうに話していた。
───まあ、あたしも優斗のハーレムに入るんだし、これからセックスする機会なんていくらでもあるっしょ
以前、モモちゃんに屋上に連れてかれて、優斗くんのハーレム計画の話を聞いた時は″ありえない″と思ってしまった。
…でも、もし優斗くんが彼氏だったら、私は幸せだろうな…
───ただいま、唯…
───おかえり、優斗くん。ご飯にする?それともお風呂に…
───…唯がいい
───え!?ちょっと…優斗くんっ!玄関でそんなハレンチな事…っ!
───…でも、唯のココ濡れてるよ?期待してたんでしょ?
───っ…違うよ…私は…んっ!
───好きだ…唯…
思わず想像してしまった優斗くんとの甘い日常…こうなったら幸せだろうなと妄想が膨らんでいく。
…この前、私が優斗くんを襲いそうになった時、もし優斗くんが少しだけ違う人だったら───…
───…唯
───優斗くん…
───んっ…♡
───胸、大きいね…はむっ…
───ふぁっ♡
優斗くんにおっぱいを揉まれながら口に加えて、乳首を舐め回される。
───ちゅぅぅぅ──────
───やぁぁ♡
ちゅぅぅぅ───と赤ちゃんの様に吸われて…そのまま優斗くんに押し倒されて…
───挿れるよ、唯
───優しくしてね、優斗くん
そのまま優斗くんの大きなアソコが私のマンコに───
…っ!?わ…私は…何考えて───…でも、もし私も優斗くんのハーレムに参加すれば、そういう事だって出来る。
優斗くんに愛してもらえる…優斗くんを堂々と愛する事ができる…
「…きゃっ!?」
「………」
私が優斗くんのハーレムの事を考えながら歩いていると前から音も気配もなく急に現れた人影にぶつかり転びそうになる。
「…あ…ありがとうございます」
「……」
ぶつかった人は転びそうになった私を支えて無言で立たせてくれた。
っ!私の不注意で見つかったんだから!早く謝らないと!!
「ゴ…ゴメンなさ───え?…お静ちゃん…よね?」
「…っ!!」
ぶつかった人物は帽子を深く被って長い髪を後ろで結び、はとさぶれとひらがなで書かれて、鳩がサブレを持っている服を着ていたが、帽子で隠された顔は私のよく知るお静ちゃんだった。
…髪型もそうだけど…何よ、その服…
「…あ……え?…は?」
お静ちゃん?は何事も無かった様に走ってこの場から立ち去った。
…え?別人?いやでも、やっぱりお静ちゃんよね…?
「…明日学校で聞いてみる…でも、知られたくない事なのかしら?」
顔は似ていたけど…普段の姿とは違ったし…走り方も男の人みたいな走り方だった。
「お静ちゃんがプライベートでハレンチな事をしてるとは思えないわ…きっと他人の空似ね…あ…」
お静ちゃんと似ていた人の事を考えながら歩いていた私は鳥居の前で立ち止まる。
(この神社…そうだ、あの時、学校帰りに猫の鳴き声が聞こえて──────…)
「…唯?」
「っ!!ゆ…優斗くん!?何でここに!?」
鳥居を見ていた私に話しかけてくる優斗くんにびっくりして思わず声が裏返ってしまった。
「リトのお父さんの仕事を手伝った帰りだよ、まあ、漫画の方はとっくに終わってたから、リトは先に帰らせたけど…」
「…結城くんのお父さんのお手伝い?」
「漫画家の結城才培さんだよ」
「そういえばそうだったわね」
私は結城くんのお父さんとは、結城くんの家で一度だけ会った事があった。
…え?結城くんは先に帰らせた?どうして一緒に帰らなかったの?
「あれ?知ってたの?」
「え…えぇ…あなたが連れ去られた時、結城くんの家でどうやってあなたを助けるか話し合いになってた時に帰ってきたのよ」
「…その節はご心配お掛けしました」
「本当よっ!」
私の話を聞いて色々察したのか、優斗くんは申し訳なさそうに謝る。
…もしかしたら、もう帰ってこないんじゃないかって…心配したんだからっ!
なんて…優斗くんに言ったら、申し訳なさそうに謝り倒される気がするから絶対に言わない。
「…唯は?何処かに行く予定だったの?」
「う…」
言えない…ペットショップに猫を見に行くだなんて…
「ペットショップに猫を見に行く予定だった?」
「何でわかるのよっ!!」
「…唯の好みくらいわかるよ」
「ッ!?」
優斗くんは私の心の中を読んだように笑顔で言い当てられて、優斗くんに私の好みくらいわかるって言われた瞬間、胸が熱くなるのを感じる。
好きな人に好みを知って貰えてるだけなのに…なんでこんなに嬉しいのよ…
「…あれ?あの動物どっかで見なかったか?」
「…え?あ…その子って確か…モドリスカンクよね?前にルンさんが連れてきた……なんでこんなところにいるのよ?」
優斗くんが指を指す方に居たのは、以前ルンさんが学校に連れてきたモドリスカンクが神社の塀の前を歩いていた。
あの時は、私や学校の皆が子供に戻って大変だった…
「と…とりあえず、捕まえた方がいいんじゃない?また興奮してガスを出して回ったら大変だわ!」
「でも…どうやって捕まえる?」
「…え?それは…」
「…餌で引き寄せるか?」
「餌って…私、何も持ってないわよ?」
「…チョコレートとかなら…流石に食べないか」
「お腹壊しちゃうわよっ!?」
鞄から取り出されたチョコレートやチョコのお菓子類…そんなに食べたら糖尿病になるんじゃ…
「…まあ、普通に近づけばいいか」
「え?ちょっ!優斗くん、もう少し慎重に───」
私が優斗くんに声をかけようとした時には、優斗は既に音を立てずにモドリスカンクの近くまで行っていて、ゆっくり手を伸ばしていた。
「よしよし、いい子だな」
「…すごい」
優斗くんはモドリスカンクの正面から目を見て頭を撫でて、警戒心を解かせた後にゆっくりと抱き抱える。
手馴れてる…モドリスカンクも心做しか凄く嬉しそう…
「…さて、ルンさんとレンくんに連絡しようか」
「……」
「唯?」
優斗くんに抱き抱えられて嬉しそうに擦り寄るモドリスカンクを見た私は″私もあんな感じで優斗くんに甘えたい″と少しだけ羨ましいと思いながら、見入ってしまった。
「…もしかして唯も触たい?」
「え!?違うわよっ!別に私は触りたいとかじゃなくて…」
「今なら落ち着いてるから触れると思うよ?」
じっと見入っていた私を見て触りたいと勘違いした優斗くんは、モドリスカンクがびっくりしない様にゆっくりと腕をこちらに傾ける。
「遠慮しないで触ってみたら?」
「……」
「…え?」
私はゆっくりと手を伸ばして触る、サラサラしていて綺麗な髪でで撫で心地がいい。
…もっと撫でていたい…そして私も撫でて欲しい…
「あの…唯」
「っ!?」
「…それ、俺の頭なんだけど…」
本当に無意識だった、気づいたら私は、モドリスカンクでは無くて優斗くんの頭を撫でていた。
「ち…違っ!?これは違うの優斗くんっ!!」
「っ!唯、そんな大きな声を出したら──────
優斗くんの腕の中に居たモドリスカンクが私の声に驚いてしまった様で思いっきりガスを吹き出す。
「…っ!待って!?」
優斗くんの腕から逃げ出したモドリスカンクに手を伸ばすが届かず逃げて行ってしまった。
「…ダメだ、この服のサイズじゃ追えない…」
「っ!!優斗くん、ゴメンなさい!私が大きな声を出さなければ…」
「いや、俺ももっと注意して置くべきだったよ、ごめん」
煙がなくなり、姿を表した小学生3年生くらいの優斗くんに謝罪する。
完全に私のせいだ…大きな声を上げなければ、あのままルンさんの元に返せたのに…
「っ!早く追いかけないと!」
「まって唯!こんな服じゃ追いかける事なんてでき───」
捕まえないとと思った私は焦って走り出した。
「きゃっ!」
「唯っ!」
走っている途中、下着がズレ落ちて足に引っかかって転びそうになった私の手を優斗くんが掴み自分の方へ引っ張った。
いつもの優斗くんなら、そのまま私を支える事だってできたはず…けど、今の優斗くんは小学3年生くらいの姿で小学5年生くらいの私を支えられず、そのまま私は優斗くんを押し倒す様にして一緒に倒れ込んだ。
「──────っ!」
″ちゅっ″と私と優斗くんの唇が重なる。
また…キス…しちゃった。
唇はしっかり重なっていて、お互いの鼻息が顔にあたる。
「…ッ!?」
左手を動かそうとすると″コリっ″とした突起に触れていて優斗くんの顔が歪む。
私が優斗を押し倒す様に倒れ込んだ時に私の左手は優斗くんの服をたくし上げて乳首を″コリっ″と触っていたらしい…そして右手は優斗くんのズボンの中で″何か″を触る。
「───んっ!?」
何かを触っていた右手を動かすと優斗くんは″ビクッ…″と身体を震わせた。
…これってもしかして…
「───…優斗くん…」
「───…唯、手を退けて」
優斗くんは身体を″ビクッ…″と震わせながら、私にそういってくる。
こんなの結城くんがララさんや西連寺さんに向かって転んだ時に起こる現象じゃない…ハレンチだわ…
「ゴ…ゴメンなさい」
「…いや、大丈夫」
謝りながら急いで私が離れると、私より少し小さな優斗くんはブカブカで乱れた服を直しながら立ち上がる。
…いつもは背が高くて私が見上げているのに今の優斗くんは私よりも小さい…なんか不思議な感じね。
「…この服じゃ動くのがやっとだな」
「…そうね」
私より優斗くんの服は明らかにブカブカで動いただけでスボンは脱げていき歩くのにも時間がかかる。
『おや?優斗殿にそっくりなお子さんですね』
「ペケ、助かった。悪いけど少し手を貸して欲しいんだ、実は─────」
優斗くんに話しかけてきたペケちゃんに事情を話して私達の服のサイズを今の体型に合わせてもらった。
◇
~メアside~
マスター…最近、ぜんぜん連絡がない…どうしたんだろう。
「メア───っ!クレープだぞ───」
「わあ、ありがとうナナちゃん!」
わたしはナナちゃんに笑顔で差し出されたクレープを受け取り食べ始める。
───親友が言ってたんだ、きっかけ1つで人は変わる。善人から悪人へ…悪人から善人へ…ヤミが兵器から人として生きる事を決めた様に…黒咲さんも変わる事ができるんだ
───俺の親友が教えてくれたように、きっとナナも黒咲さんに新しい生き方を教えてくれる
マスターから連絡がない事が凄く怖くて、優斗せんぱいの言葉や行動が脳裏を過ぎる。
ナナちゃんと楽しく過ごして、マスターに会えない日が続くほど、優斗せんぱいに言われた言葉が、頭の中で大きくなっていくみたい…それに…どうしてこんなに先輩の事を考えちゃうんだろ。
───…わかった。それで黒咲さんがちゃんと考えてくれると約束してくれるなら、俺を好きにして構わない…
わたしの前で両手を広げて受け入れていた優斗せんぱいを思い出す。
もし…あの時、あのまま優斗せんぱいを襲っていたら…どうなってたんだろう…
───イクっ…♡またイッちゃいますぅ♡♡
───…モモ、俺も限界…中に出すよ
───んっ♡くだしゃい…♡優斗しゃんの精液…っ♡♡私にくだしゃい…♡♡
モモちゃんのお尻の穴に挿入されていた優斗せんぱいの大きなおちんちん。
パンパンと音を立ててピストンする度、オマンコから吹き出す潮と精液。
気持ちよさそうに喘いでいたモモちゃん。
───…──────っ!
───ひゃぁん♡ぁあぁぁあんっ───出てます♡私のお尻に…いっぱい出てますぅ♡♡
あの光景を見た時…モモちゃんがズルいって、わたしもせんぱいとヤリたいって心の底から思ってしまった。
…なんで、優斗せんぱいとそんな事シたいって思っちゃったんだろ…
(不安だよ、マスター…早く出てきてわたしを安心させてよ……)
わたしは感じた事のない感情に不安になる。
「何ニヤニヤしてんだ、お前…」
ナナちゃんはジュースを持ちながら″キャ───″と言いながら、頬を赤く染めたモモちゃんに言う。
…やっぱりモモちゃんばっかり…ズルいよ…
「ん?」
「…へ?」
突然前を通り過ぎた生き物がプシュゥゥゥとガスを吹き出して周りに充満していたガスが晴れると私たちの身体が縮んでいた。
「わ…私の胸がぺったんこに…っ」
「え…モモちゃん?」
幼くなったモモちゃんは自分の胸を触って唖然とする。
「あ!!モドリスカンクだ!」
「…モドリスカンク?」
「モドリスカンクが吹き出すガスを浴びると身体が小さくなっちゃうんだ!急いで捕まえないと!」
「え?ナナちゃん!?」
通りかかった生き物の正体に気づいたナナちゃんは私の手を掴んで走り出した。
◇
~唯side~
ぺケちゃんに優斗くんと私は服のサイズを合わせてもらった後、優斗くんはモドリスカンクの飼い主かもしれないレンくん達に電話をかけていた。
『す…すまない時雨!僕が玄関を開けた時に逃がしてしまったんだ!』
『もう!レンのバカっ!どうするのさ!!』
『イテッ!叩かなくてもいいだろ!』
ルンさんとレンくんの声は、電話越しなのに隣にいる私にまで聞こえてくる。
「…とりあえず、レンくんの家のモドリスカンクなんだな?」
『…あぁ、ウチのモドリンだ』
「大丈夫だ、ミスは誰にでもある。とりあえず、飼い主がわかってよかった…捕まえたら、また連絡する」
『わかった、助かるよ。時雨』
電話を切った優斗くんにペケちゃんは″私はあっちを探してきます″と言って私たちから離れていく。
…あの子、モドリンっていうのね…
「まったく、ルンさんたら、あんな危険な生き物まだペットにしていたなんて…!」
「…危険かもしれないけど、ルンさんとレンくんの二人は優しいから、無責任に手放す事が出来なかったんじゃないかな?」
「……」
「それに二人ともモドリンなんて、名前までつけて世話をしていたくらいだ…安全に飼う為に飼い方とか調べていたはずだよ」
優斗くんはそう言って二人のフォローをする。
…優しい…か…あなたの方が何倍も優しいわよ…
「……」
「どうかした?」
「別に…ただ、優斗くんはルンさん達のフォローをするのねって思っただけよ」
二人が少しだけ羨ましい…優斗くんにフォローされて、優しいって言われて…なんだか少しだけ腹が立つ…そしてそんな事で嫉妬している自分自身にも嫌気をさしてしまう。
「…それしても、レンくんのケータイの番号知ってたのね」
「え?あぁ…それなら前に沙姫さんの別荘に行った時に番号を交換したんだ」
優斗くんは″男友達少ないからね…こうゆう所で増やしておかないと…″と言いながら遠い目をする。
…確かに優斗くんには、男の子の友達が少ない気がする…それに最近は、なんだが周りの男の子や他のクラスの男の子もなんだが″噂が何とか″って言って優斗くんを目の敵にしているみたいだし…
「…いた」
「…え?いたって何が───あっ!!」
優斗くんが見ている方を見ると茂みから、モドリスカンクが顔を出した後、そのまま歩道に飛び出した。
「…大丈夫、怖くないからおいで…」
モドリスカンクに優斗くんはゆっくり手を伸ばす、恐る恐る優斗くんに近づいたが、私の顔を見た途端に怯えた様に走り出した。
「なんで!私の顔を見て逃げ出すのよっ!」
「…モドリスカンクがどうかは知らないけど、スカンクは音や急な動きに敏感で追い詰められる事も苦手なんだ」
「え?」
「基本的に争いを避ける動物だからね…一度、唯が大きな声を出した事で敵って判断したんだと思うよ」
私と優斗くん走りながら、話していると優斗くんは″もっと早く教えておけばよかったね″と言って私を追い越してモドリスカンクと距離を詰める。
そっか、だから優斗くんは音も立てずにゆっくり近づいていたのね…
「…壁の上に登ったか」
モドリスカンクは足場の狭い塀の上に上り慎重に歩いて逃げているが、時々片足を滑らせて落ちそうになっていた。
「…落ちたら怪我じゃすまない高さだな」
「ゆ…優斗くん!まさか登るつもり!?あ…危ないわよ!!」
「大丈夫だよ、これくらいなら慣れてる。それにモドリンが怪我して帰ったら、ルンさんが悲しむし、レンくんは優しいから、逃がしてしまった自分自身を恨むはずだ…そんな想いは絶対にさせたくない」
優斗くんはそう言って塀の上から降りれなくなっているモドリスカンクを助ける為に塀をのぼり始めた。
あれ…?この姿…どこかで……
◇
「んっ…ぅ──────…」
小学五年生の私はランドセルを地面において頑張って木に登ろうとした。
「きゃっ…ダ…ダメだわ登れない」
「ミャ───ミャ─────」
下にいる私に助けを求めて泣いている猫ちゃんを助けようと何度も何度も木に登ろうとしても、私は登る事ができなかった…
「お…お願い!手を貸してよ!すぐそこだから…」
「ネコー?知るかよそんなの、いっつもエラソーな事言ってんだから、委員長が何とかすれば─?」
「…めんどくせーから委員長なんてほっといてうちでゲームしようぜー」
「あ…」
汗だくになりながら、近くの公園でやっと遊んでいたクラスメイトの男の子達に声をかけても、冷たい言葉をかけられてそのまま私の元から去ってしまう。
「…っ」
もし、あの時、もう少しだけ学校でクラスメイトの男の子に優しく注意したり嫌われる様な事をしていなければ、助けてくれたのかな…と今なら思う。
優斗くんと出会うまでの私は自分が思った正しい事が全てで…どんな些細な事でも″校則違反よ!″と言って注意し続けたから…
(い…いいわよ!!こうなったら意地でも私が登って助けるんだから!!)
猫ちゃんがいる木に戻ってきた私はランドセルを下ろして再び登りだした。
「うっ───あっ!?」
あと少しで猫ちゃんの元に辿り着くという時に私は足を滑らせて木から落ちる。
「危ないっ!」
「…え?」
私が地面に強打しそうになった時、一人の男の子が私を抱えて助けてくれた。
「…大丈夫?」
「え…うん…ありがとう…」
「なら、良かった」
小さい女の子を連れた男の子は私を立たせて木の上にいる猫ちゃんを見る。
「あの子を助けたかったの?」
「…え?うん」
「美柑ちゃん、ちょっと待ってて」
「のぼるの?ゆう兄、あぶないよ?」
「…大丈夫」
女の子にゆう兄と呼ばれた男の子は持っていた荷物を下ろしてから木に登り始めた。
(誰だろう…見た事のない男子…他所の学校の生徒……
?)
今思えば、子供ではありえないスピードで木を登っていく男の子はすぐに降りれなくなっていた猫ちゃんの元に辿り着きゆっくりと抱き抱えた。
「…もう大丈夫だよ」
「にゃー」
「ゆう兄!すごーい!!」
猫を抱き抱えて飛び降りてくる男の子に女の子が駆け寄る。
「これ、君の猫?」
「ち…違うわっ」
「…違うんだ、そうなると首輪もつけてるし迷い猫かな?」
「さ…さっき、あっちで迷い猫捜しの貼り紙を見たわ。多分、その子だと思う…」
「そうか、ありがとう。行ってみるよ」
「ありがとう、お姉ちゃん」
男の子は女の子に″猫をお家に返してあげたら、リトくんが待ってるだろうから、家に帰ろうか″と言いながら女の子の頭を撫でる。
「…君、優しいんだね?」
「え?」
女の子と手を繋ぎながら歩き出した男の子が私に振り返った。
「自分の猫じゃないのに汗だくになりながら助けてたみたいだから…」
「…優しくなんか…」
「いや、優しいよ…俺と違って…」
私にそういった男の子の顔が一瞬曇る。
「…ありがとう」
「ッ!?」
「猫に変わってお礼しておくね」
すぐに笑顔でお礼を言った男の子は女の子と一緒に神社から去っていった。
(…あんな男のコも…いるんだ…)
今まで出会った事のない優しい男の子に私は内心で驚いた。
(私が…優しい…かぁ…)
″女の癖に偉そう″って言われるだけで優しいなんていままで言われた事なかった。
(…お礼…言えなかったな…)
◇
思い出した…あの時、私は木に落ちそうになって優しい男の子に助けらた…ッ!!あの時いた女の子、確か男の子の事をゆう兄って…まさか!あの二人って…っ!!
「もう、大丈夫だよ」
「ッ!?」
優斗が言った言葉…そしてモドリスカンクを抱き抱えて助けた姿が過去の優しい男の子と重なる。
…やっぱりあの時の男の子は優斗くんだ!
「ゆ…優斗くん!!」
「ん?唯どうし───っ!?」
私が優斗くんに声をかけた瞬間、抱き抱えていたモドリスカンクがガスを噴射する。
私のバカっ!なんで大きな声を出して───っ!!?
「ぐっ!?」
「優斗くん───っ!」
優斗くんは小さくなった事によって塀から足を滑らせて落下する。
「…相変わらず、無茶をしますね。優斗」
私の目の前に翼を広げて飛んでいたヤミちゃんがブカブカの服で落下していた優斗くんを支える。
…ヤミちゃんが間に合ってよかった…あのまま落ちてたら、きっと大怪我だった…
「大丈夫ですか、優───っ!!?」
地面に降り立ったヤミちゃんは優斗くんの姿を見て、驚いている。
「優斗さ───ん」
「優兄!大丈夫───…えっ!!?」
優斗くんとヤミちゃんの元に服を抑えながら走って向かう美柑ちゃん達も優斗くんの姿を見て固まってしまった。
「どうしたの、皆…っ!?」
私も優斗くんの元へ駆け寄るとそこには幼稚園児ぐらいの男の子がいた。
…え?なんでこんな───
「…優斗ですよね?なんで…そんなにボロボロなんですか」
ヤミちゃんが指摘した通り、優斗くんはボロボロだった、手足やズレた服の間から見える肌は痣と傷だらけで見ているだけで痛々しい。
「…ボロボロ?あぁ…そうか、この時の俺は───ッ!?」
優斗くんが何かを話そうとした瞬間、突然頭を抑え出す。
「うぐっ…───あぁああぁあぁあああぁああぁああぁあぁあぁああぁぁああぁあぁあ───…」
「優兄!!」
「ユウトっ!?」
「せんぱい!?」
両手で頭を抑え出して叫び出す優斗くんにびっくりしたモドリスカンクはナナさんの元に逃げだした。
何っ!?何が起きてるの!!
「……はぁ…はぁ……はぁ…はぁ」
「優斗くん!大丈夫なの!?」
「優斗さん!今すぐ御門先生の所に行きましょう!」
「…いや、もう大丈夫…」
頭を抑えていた優斗くんはすぐに息を整えて何事も無かった様に立ち上がった。
「大丈夫って!そんなわけ───」
「…本当に大丈夫だよ″ただ少し思い出しただけだから″とりあえず、ルンさんとレンくんの元に行こう」
「お…おい!ユウト!?」
美柑ちゃん達に背を向けた優斗くんは歩き出す、私側からだけ一瞬見えた優斗くんの顔は酷く辛そうで…少し前の様などこかに消えてしまいそうな顔をしていた。
「よかった───モドリン♡」
ルンさんの家に向かった私達は、モドリスカンクを返すとルンさん″はおかえり″と言って嬉しそうに抱きしめる。
「ありがとう!みんな!!」
「時雨、すまないな、迷惑をかけて…」
「…気にしなくていい」
モドリスカンクはルンさん達に返したが、最近忙しくなっているルンさんのアイドルの仕事の都合上、ナナちゃんのデダイヤルで預かる事になった。
「全く…人騒がせなんだから…」
「ね───」
「……」
そんな皆の会話にも優斗くんはあまり交わらず、遠くから成り行きを見届ける。
「優兄、本当に大丈夫?なんか変だよ?」
美柑ちゃんも優斗くんの様子がおかしい事に気づいている…いや、ここにいる皆もきっと…
「…大丈夫だよ、美柑」
「でも───」
「…本当に大丈夫だ」
その後、最後まで優斗くんは聞かれた事にだけ答えて会話にほぼ交わる事は無かった。
◇
~紗弥香side~
「優斗とのデートどうしよっかな?」
日が沈みかけている帰り道、私は優斗と約束したデートでどこに行こうかと考えていた。
「あら、新井さん?」
「ティアーユ先生?」
歩いていると最近学校に来た新任のティアーユ先生と出会う。
…ティアーユ先生の家、この辺なのかな?
「どうしたのこんな時間に…もう日が沈むから早く帰らないと危ないわ」
「あ、はい!直ぐに帰ります!」
「何かあったら、危ないから近くまで送っていくわ」
「え、でも悪いですよ」
「大丈夫よ、ミカドの診療所もそっち方面───」
「…あの」
私とティアーユ先生が話していると近くに止まったトラックの運転手の女性が話しかけてくる。
「どうかしま──────っ!!?」
私が女性の方を向いた瞬間、謎のスプレーをかけれて視界がぐわんと揺れ動く。
「新井さ───っ!!」
倒れた私は意識が朦朧とする中、ティアーユ先生を見ると、ティアーユ先生も女性に同じスプレーをかけられていた。
「…ゆう…と」
意識が朦朧とする中、鞄から携帯電話を取り出そうとしたが、その前に私の意識はプツンと切れた。
大変遅くなりました。引越し作業やらなんやで忙しく書けていませんでした。
まだ、しばらく忙しくなるのでペースはこのくらいか、もう少し遅くなるかもしれませんがよろしくお願いします。
お気に入りや感想、誤字報告等本当にありがとうございます。