ToLOVEる 生まれ変わった意味を探して 作:雪だるま2世
今回は少し短めです。
「…ここは?」
私が目を開けると知らない場所で周りには、ダンボールの山が沢山ある。
身体を動かそうとするが、腕と足を縛られていて身動きは取れない。
隣で眠っている新井さんも同じ様に腕と足を縛られていた。
身体が縛られている…それに、どうしてこんな場所に…
「ッ!?そうだわ、私達は眠らされて…」
ここに来る前何があったか必死に思い出す。
トラックから出てきた女性に新井さんが謎のスプレーをかけられて眠らされて、そのまま私もあのスプレーを───
「…新井さんっ!?起きて!新井さん!!」
「んぅ───…え?ここは?」
隣で新井さんは目を覚ますと周りを見て″え?何処、ここ?″と困惑する。
「落ち着いて聞いてね、新井さん…私達は捕まったみたいだわ」
「…っ!捕まったってなんで!」
「…わからないわ」
あの女性は、新井さんを真っ先に眠らせていたわ…もし、クラウンやマスター・ネメシスが私を狙って誘拐を試みたなら、新井さんは必要ない…
…可能性としては、新井さんを拐う予定で近くにいた私はそのついで…
「…とりあえず、犯人が来る前に何とかしてミカドに連絡を────」
「連絡なんて出来ないわよ?」
奥の方から足を音を立てて姿を現す女性は、右手に血塗られたナタを持ち、左手には新井さんの携帯電話と私の通信機器を持っていた。
通信機器が取られてる…これじゃミカドに連絡する事もできないわ。
「こんな意味分からないことしないで解放してよ!」
「フフフフ…解放するわけないでしょ?貴方達はそのまま何も出来ずに苦しんで死ぬのよ」
新井さんの言葉を聞いて何かがおかしいのか、女性はニヤニヤと嘲笑う。
…組織の生き残りじゃない…容姿や見た目的にただの地球人の様な気がするわ…
「目的は…何?」
「そうね、強いて言うなら…全部、時雨優斗のせいよ」
「…え?」
私の質問に女性はそう返す。
時雨くんのせい?どうゆう事…?
女性から思ってもいなかった回答を聞いて私は困惑する。
「あのガキには苦しんで貰う!私が苦しんだ何倍も!道具の癖に幸せになるなんて絶対に許さない!!」
「…なんであなたが、優斗を知ってるの?」
「あぁ?まさか、何も知らないわけ?」
「…何も?」
新井さんの言葉に女性は髪を掻きむしりながら、私達を見る。
「私はね…時雨優斗の…チッ、なんでこんな時に…」
私達に何かを言いかけた女性の携帯電話がなり始めると女性が携帯を確認する。
…まさか、一人じゃない…仲間がいるの?
「…良かったわね…死ぬまで少しだけ時間が出来たわよ」
「…え?」
女性はそういうと倉庫の奥へ姿を消した。
◇
~優斗side~
ルンさんとレンくんのモドリスカンクを捕獲して返した日の次の日。
「…紗弥香、今日は休みなのか?」
「多分休みじゃない?メール送ったけど、紗弥香から連絡ないんだよねー」
俺の膝の上で抱き合う様な形で座る里紗は、俺の背中に腕を回して肩に顎を乗せて、携帯をいじっていた。
「…これ、恥ずかしいからやめない?」
「えーいいじゃん、ダーリンと私が仲良いのを皆に見せつけられてさー」
「…何も良くない」
周りの男子からは妬みの様な視線と掲示板の噂もあり″なんであんな奴に…″と言った小声も聞こえてくる。
…思ったより噂は広がっているみたいだな…このままだと、俺以外の皆にも…
「ねーダーリン♡このままさ…二人で教室抜け出して、またえっちな事する?」
「…しないよ」
「ちぇ…いいじゃん、減るもんないんだし」
そんな事してバレたら、次は反省文所じゃない…下手すれば退学だ…それに…俺はもう、そういう事はできない。
「あんたさ、なんか元気なくない?」
「…気のせいだよ、里紗」
「絶対ウソでしょ、普段のあんたなら───」
「籾岡さん!あなた教室で何をしてるのよ!!」
教室に入ってきた唯は、俺と里紗を見てこちらに近づいてくる。
「教室で風紀を乱す様な事は校則違反です!」
「いいじゃーん!元気がない優斗を励ましてるだけなんだからさ」
「励ますにしても他に方法があるわよ!」
唯は里紗を俺から引き離すと″ちぇー良いとこだったのにさー″と不貞腐れた様に自分の席へ戻って行った。
「唯、ありがとう、助かったよ」
「優斗くん!あなたももう少し……優斗くん、昨日から元気がないみたいだけど、どうかしたの?」
「大丈夫、なんでもないよ」
「優斗くんの大丈夫は信用出来ないわ」
心配そうに俺のおでこを触る唯は″熱はないわね…″と言って手を離す。
…昔の唯なら、こんな事″ハレンチだわ!″って言っていただろうな。
「本当に大丈夫だよ、唯」
「…何かあるなら私にも教えてね」
「…え?」
「私だって優斗くんの力になりたいもの…」
「…ありがとう」
出来るものなら、今すぐに話したい…でも話せばきっと皆は心配する。
「…そんな顔でありがとうって言われたら───」
「…唯、顔赤いけど、大丈夫?」
「っ!大丈夫よ!」
俺の顔を見て何を妄想したのか唯の顔は赤くなった。
…唯の妄想の中の俺はどうなっているんだか…
「そ…それより!ちょ…ちょっと、優斗くんに訊きたんだけど…」
唯は誤魔化す様に話題を変える。
「結城くんのお父さんの仕事場…子供の頃から、よく行ってたりしてたの?」
「…そうだね、小学生の頃から色々と手伝ったりしてたけど」
「…あの神社はよく通ってた?」
「うん、ついてきた美柑を連れて帰りに神社で遊んでたね」
今もそんな変わらないが美柑はリトよりも俺にヒヨコの様に頑なについてきてた。
今思えば、美柑はあれくらいの時期から俺の事を好きでいてくれたんだよな。
「変わらないのね、昔から…あなたは人に限らず誰かを助けようと手を伸ばす」
「…え?」
「そんなあなただから、私は好きになったの」
「…知ってるよ、前に唯が教えてくれたから…」
出来れば、唯の想いにも応えてあげたい…美柑に襲われてハーレムを作ると決めたから、応える事はできる。
けど昨日、朝比奈桜の過去を少し思い出してしまった俺には、そのハーレムになる資格がないと思ってしまった
(…俺は───を″返さないといけないから″)
そう思った時、机に置いてあった携帯電話からメール着信音がする。
「…メール来てるわ、見た方がいいんじゃない?」
「…そうだね」
俺はメールを確認するために携帯電話を開く。
…月城の件も早く終わらせないといけない…俺には、あまり時間が残されていないかもしれないから…
「…は?」
「…?どうしたの?優斗くん」
携帯を開き内容を確認した俺が驚くと唯は心配そうに俺を見る。
(なんだ…これ…)
見知らぬメールアドレスから″取り返しがつかなくなる前に、今すぐ助けに行くんだ″と書かれたメッセージの後に位置情報の写真と紗弥香とティアーユ先生の写真が送られてきた。
隠し撮りした様に取られている二人の写真は腕と足が縛られていて、二人の前に誘拐犯と思わしき女性の姿が写っていた。
…っ!こいつ!俺達を轢き殺そうとしたあの女か!!
「…唯、悪い…早退する」
「…は?え?まだ学校始まったばっかよ!?って…優斗くん!!?」
俺は唯にそう言って教室を飛び出して、すぐに紗弥香に電話をかけるが繋がらない。
(クソッ!!なんなんだ!この女っ!なんで俺達を狙う!!)
それに一体誰だ?俺にメールを送ってきた奴は…
「もしもし!御門先生!!」
『優斗くん、どうかしたのかしら?』
ティアーユ先生の安否確認の為、御門先生に電話をかける。
「ティアーユ先生はいますか!」
『…それが、昨日の夜から帰ってきていないの…連絡を送っても返事もない…私も今、彩南町を必死に探しているのだけど…』
「…っ!?」
『…もしかして、何か知っているの?』
「俺に来たメールをすぐに送ります、今すぐ見てください!」
俺は御門先生との電話を切って御門先生にメールを送る。
(位置情報的が示している場所は倉庫か…この場所まで行くには距離的に車が必要だ…もしくはヤミのトランスで飛ばしてもらうか…)
状況的にヤミを探す暇はない…となると目的地に向かいながらタクシーを見つけるか?
いや、まて…これは罠じゃないのか?誘い出されている場合だってあるんだぞ?
「優斗!お待ちなさい!」
俺が校門を出ようとした時、後ろから沙姫さんに声をかけられる。
「…沙姫さん?すみません、今は時間が───」
「それはわかっている!だから君は私達に連絡したのだろう?」
「…は?連絡?」
「すぐに天条院家の車が到着しますわ!」
沙姫さんの言葉と共に正門に黒塗りの高級車が止まる。
…連絡って何の話だ?俺は沙姫さんと九条先輩にに連絡なんてしていない…いや、今はそれよりも…
「行きますわよ!優斗!!」
「ありがとうございます」
俺が沙姫さんと九条先輩と一緒に車に乗り込むと、沙姫さんは運転手に目的地を言って走り出す。
「…なんで、目的地まで知ってるんですか?」
「何を言っているんだ?君がメールで″同じクラスの新井紗弥香と教員のティアーユ先生が誘拐されました、場所はここです、手を貸してください″っという内容と位置情報を君が送ってきたんじゃないか」
九条先輩はそう言って、俺に携帯電話を見せてくる。
…確かに俺のメールアドレスから来ている。でも、俺はこんなメールを送っていない…
「…俺はそんなメールは送ってないです」
「ッ!?じゃあ誰が!!」
「…分かりません」
俺に来たメールに沙姫さんと九条先輩に来た俺を偽造したメール…罠の可能性が高くなってきたが、もしこの情報が本当なら…紗弥香とティアーユ先生は…
「こうなってくると、誘い出されている可能性が高いがどうする?」
「……」
…紗弥香には、電話が繋がらない…ティアーユ先生は行方不明…知らないメールアドレスなのが気になった…
それにあのメールの写真は本物で間違いないと思うが罠じゃないという確信は持てない。
「…またメール…ッ!?」
先程と同じメールアドレスから送られてきたのは″優斗、僕を信じてくれ″というたった一文。
(…───)
″僕を信じてくれ″お前が俺に言った言葉だよな…
俺は前世でこの言葉を言われた事がある、あいつからこの言葉を聞いた時…俺はあいつを信じるって決めた。
(…お前はどこかにいるのか?)
居るはずが無いのに…何故か居るんじゃないかと思ってしまう懐かしさ…
「…優斗?どうしますの?」
「…行きましょう」
「罠かもしれないぞ?」
「…罠の可能性はありますが、俺はこのメールの相手を信じます」
罠だろうがなんだろうが、手掛かりがこれしかない為、行くしかない…
「わたくしは優斗の判断を信じますわ!」
「君がそういうなら、仮に罠だったとしても、君から学んだ技術で私も戦う」
「…ありがとうございます」
罠の可能性が消えた訳じゃない…でもメールの言葉を信じてみよう…
(…二人とも無事でいてくれ…)
◇
~ティアーユside~
私達を誘拐した女性は、誰かと連絡する為に倉庫の奥へ姿を消した。
…今なら逃げられる!
「…新井さん、私のポケットに入っているナイフを取り出せるかしら」
「…え?ナイフですか?」
カバンや通信機器は取られたけど、ポケットに入っていた時雨くんからもらったナイフは取られていなかった。
…恐らく衣服の中までは、持ち物を確認しなかったんだわ。
「…先生、ナイフなんとか取れました」
「ありがとう…これなら、なんとか外せるわ」
新井さんからナイフを受け取り、私の腕と足を縛っていた縄を切る。
「新井さん、後ろを向いて…」
私は新井さんの腕と足を縛っていたロープも切って立ち上がる。
…これで、逃げられる!
「彼女が来る前に早く逃げましょう!」
「ティアーユ先生、逃げるって何処に?周りはダンボールの山だし、まずここが何処かも分かりませんよ?」
新井さんの言う通り周りには、荷物の山しかなく、窓も高い位置にあって私達では登れない。
「…とりあえず、出口を探しましょう」
「わかりました」
私と新井さんは足音を立てないように出口を探す。
少し歩いても、出口は見えず、奥の方までびっしり積み上げられた荷物の山しかない。
「…ここって倉庫ですか?」
「多分そうね、それも埃も被っていないから、使われているはずよ」
「でも、ティアーユ先生、使われているはずなら、なんで平日なのに作業員が誰もいないんですか?」
「…え?」
「…それにすごい変な匂いがしますよ?」
…確かにそうだわ、今日は平日なのになんで誰もいない、なんで使われていないの?
…それにこの悪臭は何?まるで死体の様なこの匂い。
「あ…あのダンボール、空いてる…失敗作?」
「新井さん、今は出口を探した方が───」
「…きゃっ!?」
「新井さん?」
新井さんが開けられていたダンボールの中を見て悲鳴を上げる。
私は悲鳴を上げた新井さんに近寄りダンボールの中を見る。
「なっ!これって!?」
実験失敗と書かれたダンボールの中には、腕や髪が歪な形をした地球人の死体があった。
…これは何?なんで、腕や髪が″トランスの様な形″に変わっているの?
「ティ…ティアーユ先生…こっちにもあります」
新井さんが見ていた別のダンボールの中には、先程の様に腕や髪が歪に形をした宇宙人の死体があった。
…何、これ…なんで、宇宙人の死体まであるの?
「…まさか、ここの倉庫にある荷物は全て死体なの?」
「うっ…」
「っ!新井さん…大丈夫…大丈夫だから…」
私の言葉と悪臭で死体の山を想像してしまったのか、新井さんは口を抑えて床に座り込む、私は新井さんが落ち着くように背中を摩る。
…無理もないわ、こんな悪臭に死体を見て普通でいられるわけがない。
「…ここは危険だわ、落ち着いたらすぐに───」
「逃がすわけないでしょ?」
「「ッ!」」
倉庫の奥から姿を表した女性。右手には血塗られたナタを持っていた。
「あ?あぁーもしかして、中身見ちゃったの?」
「うっ…これ…なんなのよ!」
「さあ?詳しくは知らないけど、失敗作の死体を大量に集めている倉庫よ」
女性は新井さんの言葉に淡々と答える。
…失敗作の死体を大量に集めている…なんで、そんな事を…
「意味わかんない…なんで、そんな!!」
「ここって給料いいのよ?よく分からない宇宙船みたいなところから、荷物をここの倉庫に運ぶだけで1日30万貰えるの」
「…給料…って…何でそんなこと知って…」
「は?馬鹿なのあんた、なんで知ってるかって捕まるまでここで働いてたからに決まってるじゃない」
″捕まるまで働いていた″?彼女は一度警察か何かに捕まっているの?
「働いていたって…こんな怪しい場所で?」
「こんな死骸の山を運ぶだけで一日30万よ?最高な仕事じゃない!月に900万も手に入れば、ホストクラブに使い放題よ!」
「そんなの!イカれているわ!」
「…は?私がイカれてるなら、この死骸の山を集めている″クラウン″って奴の方が頭イカれてるでしょ」
「ッ!?」
この場に出てくるはずのない人物の名前を聞いた私は困惑する。
な…なんで…彼の名前が出てくるの!?まさか、ここにあるの全部…
「″移植実験″に失敗したサンプルを残しておきたいとか言って、トラックで倉庫まで運ばせる異常者より私の方がマシよ」
「じゃあ、まさか…ここにあるの全部…」
クラウンの実験体…でも…何をしようとしていたの?時雨くんが言っていた力が欲しいだけなら、トランス兵器を作る理由はもうなかったはず…なのになんで、腕や髪が歪になった地球人と宇宙人の死体がこんなに…
───″移植実験″に失敗したサンプルを残しておきたいとか言って、トラックで倉庫まで運ばせる異常者より私の方がマシよ
───今の月城──クラウンは″トランス能力を使う事ができます″
───…どうやってトランス能力を手に入れたか俺には分かりませんが、今のクラウンの目的は″トランス兵器の量産じゃない″おそらく″力を手に入れる事だと思います″
私は先程、女性に言われた言葉と時雨くんの言葉を思い出す。
腕や髪が歪な形になった地球人と宇宙人の死体…まさか、自身の身体にトランス能力を植え付ける為に…ここまでの人達を犠牲にしたの?
───マーレ君が見込んだだけはあるよ、やっぱりティアーユくんは天才だね~ティアーユくんのお陰で完成したよ…最高のトランス兵器イヴちゃんがね
───ずっと創り出せなかった~私の野望への一歩がようやく踏み出せたんだ~ありがとう~ティアーユくん~
───でも~イヴちゃんが完成しちゃったからね~ティアーユくん~…君のせいでこれから沢山の人が死ぬことになるよ~
クラウンに監禁する前に言われた言葉、そして周りにあるナノマシンに耐えられるはずがない身体に無理やり、トランスを植え付けられた人達の死体。
…もしかして、私がプロジェクトに加担してトランス計画が成功したから…ここまでの人達が犠牲になったの?
「…私が実験に…加担したから?…成功したから?」
私がマーレ先生の誘いを受けて、トランスプロジェクトに参加して、イヴを産まなければ…ここまでの被害を出さなかったの?
「…何ブツブツ言ってんのよ?頭でもイカれたわけ?」
「イカれてるのはあなたでしょ!!」
「チッ…さっきからうるさいガキね!そんなに死にたいなら、あんたから殺してやるよ!」
女性は近くに置いてあったダンボールにナタを振りかざすと、中に入っていた死体が床へとこぼれ落ちた。
「あんたもダンボールの中の死体と仲良く暮らしなさい!!」
「…っ!?やだ…!来ないで…いやぁぁぁぁぁぁ───」
女性は新井さんに近づき、ナタを振りかぶる。
…罪滅ぼしには、ならないけど…せめて、私が犠牲になれば…
「ッ!?ティアーユ先生!!」
新井さんを抱きしめて、庇うようにナタをもった女性に背を向ける。
…ごめんね、イヴ…出来れば、あなたと仲直りをして…制服姿を見たかった…でも私にそんな資格…なかったみたいだわ。
私は目を閉じてこれから来る痛みと死への覚悟を決める。
「…させるかよ」
「…え?」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえて、声がする方を向くとナタを持っていた女性の手を掴む時雨くんの姿があった。
長くなりそうなので、半分に分けました。
お気に入りや感想などよろしくお願いします。
誤字報告、本当にありがとうございます。