ToLOVEる 生まれ変わった意味を探して 作:雪だるま2世
紗弥香とティアーユ先生を助ける数分前。
「…ここが倉庫か」
「中々、大きいですわね」
俺達が倉庫にたどり着き、車を降りて周りを見渡していた。
「…正面は無理か…裏からなら入れそうか?」
正面はシャッターで閉じられていて扉はなく、中に入れそうもない。
…とりあえず、裏に回って裏口から…
「凛、ここは、なんの会社ですの?」
「…沙姫様…今、外にあった会社名をお調べしましたが、こんな会社存在しません」
「…え?」
…存在しない会社?なら、この倉庫は一体なんだ?何を集めているんだ…いや、今は紗弥香とティアーユ先生の安否が最優先だ、他の子とは考えるな。
「…とりあえず、裏に回りましょう」
「…わかりましたわ」
裏に周ると正面とは違いシャッターはなく、裏口と思わしき扉があった。
(…鍵が空いてる…誘拐犯の罠か…それとも、ただの素人か)
ゆっくり扉を開けて倉庫の中に入ると、中には大量のダンボールの棚が天井近くまで積まれている、そして倉庫内には、前世で何度も嗅いだことがある、嗚咽したくなる様な悪臭が漂っていた。
「うっ…なんですの…この匂い」
「ッ!大丈夫ですか!沙姫様!」
倉庫の中に入った沙姫さんは倉庫内の匂いを嗅いだ瞬間、口を抑えて床へ座り込む。
…この匂い…まさか、死体か?
「優斗?君は一体何を───っ!!?」
俺は近くにある″失敗作サンプル486号″と書かれたダンボールを開けると中には、髪と腕が歪な形に変わった死体が入っていた。
「…やっぱり、死体だったか」
「な…なんで死体が入ってますの!?」
「ここは倉庫なはずだろ!なんで死体なんて…」
「…ここは恐らく、ただの倉庫じゃない」
俺は死体の歪な形に変わった腕と髪を触る、刃の様に鋭く…まるでヤミや黒咲さんのトランスの様な形をしている。
「…実験体のサンプルの保管場所」
「なっ…待て!サンプルの保管場所だと!?まさか!これ全部死体なのか!!」
九条先輩は倉庫に積まれたダンボールを見渡して驚愕する。
…この字の書き方…あのお喋りなクズ野郎の仕業か。
「俺はこの字に見覚えがあります」
この字は、俺が前世の時に書類等でよく見た字に似ている。
「見覚え…まさか!あの月城って男ですの!」
「…えぇ、間違いなく月城の仕業でしょうね」
沙姫さんの言葉に俺はそう返す。
あのクズは目的の為なら、手段を選ばない。
「…恐らく、自身にトランス能力を植え付ける為に生きた人間にトランス能力を植え付ける実験をしていたんだと思います」
自分にトランスを安全に植え付ける為に、他の関係ない人間で実験する。
…どこまで人を弄ぶ気なのか知らないが、486号の意味が今まで実験を行ってきた人の数なら、最低でも486人が犠牲になっている。
「そんな…酷すぎますわ!」
「今のあの男は目的の為なら、非人道的な事でも何でもしますよ」
月城…あんたは何人の命を犠牲にトランス能力を手に入れた…なんでここまで力を求める…何があんたをそんなに駆り立てる?
「…紗弥香とティアーユ先生を探しましょう」
「あぁ、そうだな。この悪臭を嗅ぎ続けるのは、流石に辛い」
俺達は広い倉庫の中を走って探し回るが、ダンボール以外、人の気配すらない。
(クソっ…いくらなんでも広すぎる!)
このままだと、倉庫内にいる紗弥香とティアーユ先生を見つけ出すのに相当時間がかかる。
「優斗!このままじゃ、埒が明かない!手分けして探そう!」
「そうですわね!その方が早いですわ!!」
「ッ!?ダメだ!!」
あの女の他にも仲間がいるかもしれない…手分けして探すのはあまりにも危険すぎる。
それに…またあの時と同じ様な状況になるかもしれない。
───優斗、二手に分かれよう、その方が多くの人を救える!
───…危険だ、本部とも連絡が取れてない、俺達二人で行動した方が────
───危険かもしれないよ?でも僕達は自衛隊だから、みんなを助ける、君だって優華さんと約束したんだろ?
あの時、俺は判断を間違えた…その結果、親友が死んだ。
…俺は二度も同じ過ちをしたくない。
「…だが、このままだと、新井紗弥香とティアーユ先生を見つけ出すのが遅くなるぞ?」
俺は震えた手を握りしめる。
九条先輩の言葉は最もだ…分かれて探せば効率は上がる…でも、もし二人に何かあったら…俺は死ぬほど後悔する…
「一緒に探しましょう。その方が安全で───」
「…優斗、怯えなくても…怖がらなくても…大丈夫ですわ…わたくしたちは死にませんもの」
沙姫さんが俺の震えた手を優しく握る。
沙姫さんの暖かい手のおかげで俺の手の震えが収まっていく。
「優斗、わたくしと凛を信じて」
「ッ!?」
沙姫さんの言葉は、さっきの匿名メールにも書いてあった言葉…
───優斗、僕を信じてくれ
俺が輝に過去を打ち明けた時、輝に言われた言葉…
沙姫さんの真っ直ぐな目が…その言葉が…あの時の輝と重なった。
…マイペースさもだが…こんな所も輝に似てるんだな。
「…わかりました、別れて探しましょう…ただ、せめて沙姫さんと九条先輩は二人で行動してください」
「わかりましたわ」
「それと九条先輩、これを持って行ってください」
俺はデダイヤルから冬華教官の刀を取り出して、九条先輩に渡す。
「少し重いかもしれませんが、今の九条先輩なら扱えると思います」
「ッ!?これは君に取って大切な刀だろ!!」
冬華教官の形見だけど、俺にとっては…
「…はい、でも俺にとっては、その刀以上に沙姫さんと九条先輩が大切なんです」
「「!?」」
二度も同じ判断をして、二人が死んでしまったら、俺はもう二度とあの世にいる冬華教官に顔向けできない。
「っ…こんな時に君は何を───」
「…死なないでください」
「───…あぁ、言われなくてもわかっている。これ以上、君に重りは背負わせない」
九条先輩は刀を受け取り笑顔で微笑む。
「君も死ぬなよ、優斗」
「…わかってます」
俺は九条先輩に刀を渡した後、全力で倉庫駆け回る。
(何処にいるんだ、紗弥香!ティアーユ先生!)
沙姫さんと九条先輩と別れてから少し経つが誰も見つからない。
(…ッ!今の声!!)
少し離れたところから紗弥香の″きゃっ!?″という声が聞こえてくる。
(…間に合え!間に合ってくれ!!)
俺はダンボールを飛び越え、紗弥香の声が聞こえた方へトップスピードで駆け抜ける。
「ッ!居た!!」
「…っ!?やだ…!来ないで…いやぁぁぁぁぁぁ───」
目の前に見える女がナタを持って紗弥香に近き紗弥香は悲鳴を上げる。
(…今なら間に合う!!)
ナタを振り上げた女を見たティアーユ先生は、紗弥香を守る様に覆いかぶさるが、女は容赦なくナタを振り下ろした。
「…させるかよ」
「…え?」
女がティアーユ先生を斬る前に俺はナタを持っていた女の腕を掴む。
…何とか間に合った。
「優斗!」
「時雨くん!」
俺は女が持っていたナタを叩き落としてから距離をとる。
…やっぱり、見たことがある…何処だ…どこで会った?
女の顔を見た瞬間、何故か身体がビクッと震えた。
「どうやってここがわかったわけ?」
「…さあな?それよりあんたは誰だ」
「…は?」
女は俺の言葉を聞いてありえないと言った表情で俺を見ていた。
「…まさか、私を忘れたわけ?」
「……」
「酷い話ね、生みの親を忘れるなんて」
「え…優斗の生みの親?ってことは、まさか…優斗のお母さん?」
女の″生みの親″という言葉を聞いた紗弥香は困惑する。
生みの親…そういう事か…だから俺はこの女を知っていたんだ。
「…朝比奈真夜」
「えぇ、やっと思い出した?出来損ない」
…まさかこいつが朝比奈真夜だったとはな…
───…そうか、あれから11年だしね…確かに忘れたままだと…もしもお母さんに出会ってしまった時が大変だからね
あの時、天馬さんが言ってた意味はこういう事か…この女はあの時には既に釈放されていた。
「…あの時のトラックの運転手もあんただな?」
「そうよ、最初はトラックで桃色の髪の小娘を轢き殺して絶望させてやろうと思ったわ!」
…やっぱり、あの時のトラックの運転手もこいつだったのか。
「あんたが桃色の髪の子娘と赤毛の小娘を庇って飛び出てきたから、そのまま轢き殺そうとしたら″優斗″なんて知らない名前で金髪の小娘に呼ばれていて、人違いだと思って最初はびっくりしたわよ」
…そうか、俺の名前が桜から優斗に変わった事を知らなかったからあの時、去り際に俺とヤミを見ていたのか。
「俺が児童相談所に向かったあの日、俺を付けていたのもあんただな?」
「えぇ!そうよ!あの日はあんたに撒かれたけど、もしかしたらと思ってあの児童相談所に行ったら、中からあんたが出てきたのを見て確信した!あんたが朝比奈桜だってね!!」
あの日、俺が改札を出てこの女が戸惑っていたのは、″児童相談所とは真逆の方向に向かったから″か。
俺が撒いた後も児童相談所にいると目星をつけて向かった結果、中から出てきた俺を見つけたと…
「学校帰りに信号無視して轢き殺そうとしたのも…」
「えぇ!私よ!それに、あんたの噂を掲示板に書き込んだのも私よ」
「…何?」
「クラウンって奴から聞いたのよ!タイムレインズの事件の事…そしてそれを学校の掲示板に書き込み、噂が流れれば、あんたを見る人が殺意や悪意を持つだろうからってね!!」
…この倉庫の時点で薄々感じていたが、朝比奈真夜の事まで、月城が関与してるのかよ。
「…なんで俺を狙う?」
「決まってるでしょ?あんたを産んで私は不幸になった!私の全てを奪ったあんたが幸せになろうとしてんなら!あんたの大切な物を全力でぶっ壊して、あんたも殺す!!」
…不幸か。それはあんたの元で生まれた″朝比奈桜″もそうだよ。
「不幸って時雨くんがあなたに何を───」
「コイツはね!桜さんを引き止める為に産んだのよ!なのに!この役立たずは桜さんを引き止めるどころか、こいつを見た桜さんが激怒してわたしのことまで殺そうとしてきたのよ!」
時雨桜にとって朝比奈真夜と朝比奈桜の存在は邪魔でしか無かったんだろう。
自分の息子だという証拠を消す為に朝比奈桜を殺そうとした。
「そんなの、自分が選ばれなかったからって、ただの八つ当たりでしょ!」
「うるさい!黙れ!黙れぇ!」
紗弥香の言葉を聞いて、朝比奈真夜は頭を掻きむしりながら叫ぶ。
「お願いだから!これ以上、優斗を巻き込まないでよ!」
「私が産んだ道具よ!どうするかは私の自由!」
「優斗は!道具じゃない!!」
「さっきからうるさいわね!このガキが!そんなに死にたいなら、お望み通りあんたから殺すわよ!」
朝比奈真夜は内ポケットから拳銃を取り出して、紗弥香に向かって構えた。
…こいつ、拳銃も持ってたのか…
朝比奈真夜との距離は大して離れていない。これなら…
「死ね!クソアマ!」
「…クソアマはお前だよ、朝比奈真夜」
「ッ!!?」
俺は朝比奈真夜に向かって突き進み、銃を持っていた手を蹴って弾丸の軌道をそらす。
(このまま一気に畳み掛ける!!)
俺はそのまま右手を拳に変えて、顔面に向かって殴り掛かる。
『お兄さん!やめて!お母さんをけがさせないで!!』
右の拳で朝比奈真夜を殴り飛ばそうとした時、声が聞こえたと同時に…
「…なっ!?」
朝比奈真夜の目の前で俺の右腕は石の様に固まって、動かせなくなる。
身体が動かない!それに…今の声は…まさか!?
「…はっ!ビビったわけ?やっぱり出来損ないね!!」
「…ぐっ!」
朝比奈真夜は銃のグリップで俺の頭を殴る。
…ガードができない!いや、それどころか身体を動かせない!!
「優斗!」
「時雨くん!!」
「動いてんじゃないわよ!!」
殴られた俺を見て紗弥香とティアーユ先生が俺の元に駆け寄ろうとするが、朝比奈真夜は二人に向けて銃を構える。
「来たらダメだ、二人とも逃げ…っ───ぁぁああぁぁあぁ!!?」
「ッ!優斗!ねぇ!どうしたの!!」
突然、頭が痛くなり視界が真っ白になる。
───お兄さんは、誰?
───…雨宮優斗…君は?
───桜…
俺の目の前には幼い朝比奈桜が居て、幼い朝比奈桜は俺に話しかけていた。
…これは昨日…幼くなった時に見た俺と朝比奈桜の一部の記憶…
───お兄さんは、なんでぼくをたすけようとするの?
───…君が昔の俺に似ていたから…
───にてるの?お兄さんとぼくが?
───…あぁ、だから助けたいんだ
…あぁ…そうだ。俺は…何としても君を助けたかった…
ボロボロになった君を助けたかった…俺の様な苦しみを味わう君に幸せになって欲しかった。
───お兄さんはおばけなの?
─── …分からない…けど、これだけは言える。今は君にしか見えない
この時の俺は、人や物に触れることができなかった。
実体はあるし、朝比奈桜には見えているのに何も触れない…まるで一年前の″村雨さんの様″に…
───これだけしか教えていないのにここまでできるなんて…桜くん!すごいね!少し教えただけでここまでできちゃうなんて!
───えへへ…お兄さんのおかげだね!
───私は何もしていないよ!桜くんが…?桜くん、どこを見て…
児童相談所で天馬さんに色々とテストを受けている朝比奈桜の横にいた俺を見て、朝比奈桜は笑顔で笑う。
…そうだったな…俺が隣で文字の書き方やボールの投げ方とか教えたんだったな。
───天馬透に助けを求めろ…もう、時間がない…チャンスは今しかないんだ
───…やっぱりムリだよ…お母さんに捕まって欲しくない…
少しずつ思い出して行く朝比奈桜との記憶…ただ、どうしても肝心な場面を思い出せない。
「あら?頭なんて抱えて…昔の事でも思い出しちゃったかしら?」
「…っ…黙れ!」
こんなクズでも…君にとっては大切なお母さんなのか?
嘲笑うように俺を見る朝比奈真夜を俺は、動かせない身体で睨むことしかできない。
「何よ、その目は!それに黙れですって!!生みの親に対して使えもしない道具がそんな言葉使ってんじゃないわよ!!!」
「…朝比奈桜は道具じゃない…人間だ」
「黙れ!黙れクソガキ!!死ねばいい!あんたみたいな出来損ないは死ねばいいのよ!!
怒り狂った朝比奈真夜が銃を俺に向ける。
「ダメっ!やめて!!」
「っ!?時雨くん!!」
朝比奈真夜はそのまま銃のトリガーに指をかけて引き金を弾き銃声が鳴り響く。
「…っぁぁああぁっ!?」
…はずだった…″確かに銃声は聞こえた″が、朝比奈真夜が持つ銃声ではなかった。
そして朝比奈真夜の持っていた銃は、どこからか放たれた″別の弾丸″に貫かれる。
「痛いっ!痛いじゃないの!!何よ!今のは何なのよ!!」
「…気を取られていていいのか?」
「ッ!?いつの間にっ───」
朝比奈真夜が狼狽えていると、朝比奈真夜の背後を取ってた九条先輩が刀の鞘で朝比奈真夜を殴って気絶させる。
「優斗!大丈夫ですの!」
「…えぇ…何とか…」
朝比奈真夜が気絶した瞬間、九条先輩と一緒にいた沙姫が駆け寄ってくる。
「っ!頭から血が出てるわ!今すぐミカドに連絡を───」
…朝比奈真夜の銃を貫いた弾丸とあの銃声は…もしかしてスナイパーライフルか?
周りを見渡すと天井近くに弾丸で貫かれたと思われる窓があった。
まさか…あの小さな窓にある遠くのビルから的確に銃だけを撃ち抜いた?
「優斗!私の声、聞こえてる!」
「優斗!しっかりしろ!!大丈夫か!!」
一瞬でもタイミングが遅れる、もしくは狙いが外れれば、俺か朝比奈真夜が死んでいた。
…あの距離からスナイパーライフルで銃だけを撃ち抜くなんて俺でも無理だ…それに…そんな事出来る奴を…俺は一人しか知らない。
「優斗!優斗!私の声、聞こえる!」
「……」
「っ!時雨くん!!」
俺の肩をつかみながら叫ぶ紗弥香に身を預ける様に俺は意識を失った。
◇
優斗達がいる倉庫から遠く離れたビルの屋上にスナイパーライフルを構えた村雨静?の姿があった。
「……」
村雨静?のスコープに写っていたのは、九条凛によって気絶させられる朝比奈真夜の姿。
それを見た村雨静はニヤッと笑みを浮かべて満足そうにスナイパーライフルを仕舞い始める。
「優斗とティアを助けてくれた事には感謝しますが…あなたは何者ですか?」
「……っ!」
片付けたスナイパーライフルが入ったケースを背負って、ビルの屋上から去ろうとした村雨静?に屋上に降り立ったヤミが話しかける。
村雨静?にとっては想定外の人物だった様で驚いていた。
「…それに何故、このメールを古手川唯や籾岡里紗等、優斗に関わりのある人間全員に送ったのですか?」
「…っ!!?」
ヤミは古手川唯の携帯電話の画面を村雨静?に向かって見せる。
内容は″同じクラスの新井紗弥香と教員のティアーユ先生が誘拐されました、場所はここです、手を貸してください″と天条院沙姫と九条凛に送った文章だった。
「…まさか、間違えて送ったのですか?」
「……」
村雨静?は古手川唯に送られたメールの文章を読んで目を丸くしていて、それを見たヤミがまさかと言った感じで聞いてくる。
「…仮に間違って送ったんだとしてもドクターミカドの診療所からバイオロイドを奪い、優斗に関わりのある人物に接触していたあなたはいくら何でも怪しすぎる」
ヤミは複数の髪をトランスで刃に変え、村雨静?へと構える。
「とりあえず、全て吐いてもらいますよ」
ヤミは村雨静?で斬りかかろうと動き出す。
「…なっ!?」
村雨静?は懐から二丁のリボルバーを取り出しすと一瞬で構えてトリガーを弾き、ヤミがトランスで髪から刃に変えた部分を的確に撃ち抜いた。
「…早撃ちですか…それも狙いも的確ですね…」
「……」
「ですが、リボルバーの装弾数は6発…二丁合わせても12発です…リロード中、あなたは何もできない」
ヤミの言葉を聞いた村雨静?は″それはどうかな?″と言う様に笑みを浮かべた。
「…なんかムカつきますね、その顔…」
「……」
「それに…私だけに集中していていいのですか?」
「…?」
村雨静?がヤミの言葉を不思議そうに聞いている村雨静?の後ろからモモが姿を表す。
「キャノンフラワー!!」
モモの腕に巻きついたキャノンフラワーが村雨静?に向かって拳大の種子を砲弾の様に発射する。
「……」
「…っ!撃ち落とした!?」
村雨静?はキャノンフラワーを見ても驚く事はなく、冷静に種子をリボルバーで撃ち落とす。
「…今です!」
村雨静?がリボルバーの弾丸をキャノンフラワーの種子を撃ち落とす事に全て使い切ったのを確信したヤミは腕をトランスで刃に変えて突きの姿勢を取る。
「……っ!?」
ヤミが腕を刃に変えて突きをしてくるのを見た村雨静?は一瞬驚いた表情をした後、何故か嬉しそうに笑みを浮かべる。
(…この突きに対してリロードをするつもりですか…舐められたものですね)
リロードが間に合うと判断したのか、二丁あるリボルバーをクルクルと回しながらリロードを始める。
「ッ!リロードが早い!!このままだとヤミさんが!!」
ありえないリロードの速さにモモは驚く。
ヤミの刃が村雨静?の身体に届く前にリボルバー二丁を両方共にリロードを終えた村雨静?は再びヤミのトランスに変えた刃に向かってトリガーを弾く。
「チェックメ───くっ!?」
「……」
ヤミの刃に弾丸が当たり刃の軌道が逸れる。
それを見た村雨静?はそのままヤミの刃に変わっていない方の腕を掴み後ろで拘束した。
「まさか防がれるとは…ですが、これで捕まえたつもりですか?舐めないでください」
ヤミは髪を拳に変えて村雨静を殴り飛ばす。
「今です!モモ!!」
「はい!」
再び、キャノンフラワーの種子が殴り飛ばされた村雨静?に襲い掛かるが、村雨静?は冷静に体勢を立て直して再び、キャノンフラワーの種子を全てを打ち落とす。
「っ!マズイ!?」
キャノンフラワーの種子が全て撃ち落とされたモモまでの射線がガラ空きになる。
(このままだと!撃たれる!!)
モモを倒す絶好のチャンスを無駄にするように村雨静?は何故か向けていたリボルバーを降ろす
「……」
「…え?」
どう避けるか考えていたモモはそれを見て驚いた。
自信を殺す絶好のチャンスで何故それを無下にするのかと…
(おかしいわ、今の状況なら、ヤミさんを殺す事は出来たはず…なのに、さっきから刃や種子しか狙ってない…)
そして、何故かヤミの刃やキャノンフラワーの種子しか狙わないのを見て、モモは疑問を感じる。
「…強いですね」
「…そうですね、ヤミさん」
「戦争なら、私達は既に殺されている」
「……」
ヤミとモモは目の前にいる強者を見て、明らかに自分達よりも強いと確信する。
「…?…っ!?」
村雨静?は何かの気配を感じ取ったのか、屋上から逃亡しようと図るが判断が少し遅かった。
「念力集中!!」
「…ッ!!」
屋上の扉から現れた本物の村雨静が偽物を念力で拘束する。
「何とか間に合いましたね!皆さん!?」
「…助かりました、村雨静」
″えっへんっ!″と村雨静は笑顔で言う。
「スナイパーライフルを背負っていたのにここまで手間取るとは思いませんでしたよ?」
「……」
「…さあ、聞かせてもらいましょうか、あなたが誰なのか?目的は何なのか?」
「……」
念力により動けなくなっている村雨静?にモモは問いただす。
村雨静?はこんな状況なのに何故かニヤッと笑っていた。
「悪いっすけど、それは無理な話しっすね」
「…ふえ?」
謎の声と共に四人の間に四角い何かが投げ込まれる。
「ッ!?これは!スモークグレネード!!」
四角い何か…スモークグレネードから出た白い煙で、四人の視界は塞がれる。
「お静さん!念力は解かないでください!!」
「はい!わかって───ふぐっ!?」
「お静さん!?」
モモの声に反応した村雨静の言葉は、まるで意識が途切れたかの様に途中でプツリと途絶えてしまう。
「金色さん、さっきの突きは良い突きでした…けど、まだ本気の自分達には届かないっすよ」
煙が晴れる前、どこからか聞こえてくる声。
「…っ…逃げられましたか…」
煙が晴れ、ヤミが周りを見渡すと意識を失った村雨静と自分のと同じように周りを見渡すモモの姿しかなかった。
「まさか、仲間がいるとは思いませんでしたね、ヤミさん」
「…はい。恐らくもう一人の仲間は、ドクターミカドの診療所から無くなったもう一体のバイオロイドでしょう」
ヤミは一言″油断しましたね″と言って髪をトランスで手に変えて村雨静の身体を掴む。
「とりあえず、村雨静を連れて優斗達の元へ向かいましょう」
「…そうですね」
ヤミの言葉にモモはそう返すと二人は優斗達がいる倉庫へ向かって飛び立った。
◇
~???side~
「何、無茶してるんすっか!その身体は調整中って言ったはずすよ?」
「……」
「それに…全員にメール送信するってどんなミスしてるんすか!だから機械関連は、──がやるって言ったすよ!」
アジトにしている建物まで逃亡した─は、─から説教を受けている。
「とりあえず、調整しますからそこに立ってくださいっす」
「……」
金色のヤミさんの突き、確かにビーチの時に使っていたけど、中々早かったね。
…まあ、優斗にはまだ届かないけど。
「金色さんに感心してないで、早く立ってくださいっす」
「……」
──が悪いとはいえ、当たりが強いなぁ。
…一応…先輩なんだけど。
「まあ、でも狙撃の腕はさすがっす。あの距離から一瞬しかないタイミングで銃だけを撃ち抜くなんて普通できないっすから…」
「……」
──はそう言いながらパソコンを使ってバイオロイドの調整をする。
やっぱり─はすごいなぁ、機会なんてさっぱりわからない。
「これで話せるようにはなったはずっす」
「…やっと話せるんだね」
長かった…いくら─が機会に詳しいとはいえ、宇宙の技術を理解するまで時間がかなりかかった。
「会うっすか?先輩に」
「いや、まだだよ。僕達の存在は月城総司令にとってはイレギュラーだ。時が来るまで今まで見たいに影から優斗を見守るよ」
「…わかったっす」
─は悲しそうに返事をする。
会いたい気持ちはわかる。──だって…僕だって優斗に会いたいのは山々だ。
「今度こそ、優斗が背負っている物を最後まで一緒に背追い抜く」
だから、その時まで感動の再会は取っておこう…優斗。
引越し等終わったので、少しずつペースを戻していきます。完結は絶対させるので、よろしくお願いします。