※この作品はR-18です。

ToLOVEる 生まれ変わった意味を探して   作:雪だるま2世

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Cloning experiment~後悔と罪~

『…なんで助けを求めない』

「…たすけてっていったら、おかあさんがつかまちゃう…そんなのイヤだよ…」

 

部屋の角に体育座りで座る少年に20代後半くらいの男が話しかける。

 

『…このままだと、君はあの母親に殺される。助けを求めれば、君は助かる…だから…』

「ムリだよ…ぼくにはムリだ…」

 

体育座りで顔をうずめる少年はただ泣く事しかできなかった。

 

「…だってぼくには…おかあさんしか…いないんだ…」

『……』

「…お兄さんみたいにぼくはつよくないよ」

 

泣きじゃくる少年を無言で見つめる男は、少年に近づき語りかける。

 

『…近々君と母親が行く場所に、君を助けてくれる人が必ずいる。勇気を出して助けを求めろ』

「…ムリだよ」

 

男の言葉にムリだと言って少年はうずくまってしまった。

 

『…頼む…俺にも、もう時間が無いんだ…それにきっと、それが君が幸せを掴むなる最後のチャンスだ…』

「え?時間がない?お兄さん…それってどうゆう…」

 

少年にそう告げると男の姿が光の粒子となって消えていく。

 

「まってよ!お兄さん!時間がないってどうゆうこと?」

「執拗いっ!執拗いっ!何なの!?あの天馬とかいう男っ!!」

「っ!?」

 

少年の言葉を遮るように怒りながら家に帰ってきた少年の母親は、拳を机に叩きつけながら叫び出す。

 

「あーっ!もうっ!もうっ!めんどくさいっ!行ってやるわよっ!行けばいいんでしょっ!」

 

机を殴り終わった母親は、少年に近づいている。

何度も机に叩きつけた拳は赤く染っていて、それを見た少年は殴られると思って身構える。

 

「…明日、行く場所で変な事言ったらわかってるでしょうね?」

「…っ」

「こんな感じの殴る蹴るだけじゃ済まないわよ」

「…ゴホッ…ゴホッ…ごめん…なさい…」

 

母親の暴力に耐える事しかできない少年。

その光景を先程まで少年に話しかけていた男は、少年が殴られているのを見ている事しかできない。

 

『…クソっ』

 

今にも消えかかっている男は、少年を助ける事すらできない無力な自分自身と殴っている母親を見て憎む様に左拳を握りしめていた。

 

 

◇

 

…俺はあの時、朝比奈桜が殴られている所を見ていることしか出来なかった…

 

「…クソ」

 

俺が目を覚ますと見知った天井で、何度もカウンセリングでお世話になった保健室だって事がわかる。

 

「起きたかしら?優斗くん」

「…はい」

 

医療用カーテンを勢い良く開けた御門先生が、呆れた様な目で俺を見る。

 

「あなたが気絶した後、倉庫に駆けつけたヤミちゃん達がそのままここまで運び込んだのよ」

「…そうか、俺は気絶したのか」

 

朝比奈真夜が気絶した後、俺も気絶したのか。

それに気絶して御門先生の雰囲気を見るに目覚めるまでそんなに時間も経っていないし、重症じゃないな…重症じゃないならいいか?

 

「今、重症じゃないならいいかって思ったでしょ?」

「……」

「あなたはねえ?重症じゃないとはいえ、何回も好きな人が運ばれてくるこっちの身にもなりなさい。心配で他の生徒の治療に集中できないわ」

「…すみませ───っ!?」

 

謝ろうとすると頭中から声が聞こえてくる。

 

───みれんがあるんでしょ?全部───お兄さんに───…

 

っ!この記憶だ…きっとこれが…

俺は痛む頭を手で抑えて必死に思い出そうとするが、聞こえてくるのは、この言葉だけだった。

…クソっどうすれば思い出せる!

 

───…へぇ、これが時雨せんぱいの精神世界なんだぁ

 

───それはね、時雨せんぱい、私達の心が今繋がっているからなんだよ?

 

───ウソ、まさか、時雨せんぱいの精神世界から締め出されたの?

 

───…大したものですね…第2世代のトランス能力、生体との物流号、精神の接続まで可能とは…まあ、優斗には締め出されてしまったようですが…

 

…黒咲さんの能力、あれで俺は一瞬だけ朝比奈桜の記憶を見た。

 

(あの能力を使えば…全てを思い出せるのか?)

 

…可能性はある。精神世界ならもしかしたら…

 

「…頭、まだ痛む?」

「…少しだけ痛みます」

「おかしいわね、痛み止めは効いてるはずなのに…」

 

止まらない頭痛…この頭痛はきっと痛み止めじゃ収まらない。

 

「…俺はどれくらい気絶してましたか?」

「四時間よ。銃のグリップで殴られたみたいだけど意外と早く起きたわね」

 

四時間か…随分気絶していたな。今は何時だ?もしまだ学校なら黒咲さんに会えるかもしれない。

 

「今さっきチャイムが鳴って放課後になったわよ」

「エスパーですか。俺の心を読まないでください」

「フフ…わかるわよ。あなたの事ならなんでも…もちろん体の隅々もね?」

 

御門先生はそう言って俺の身体をいやらしい目つきで俺を見る。

…もう俺にはそういう事はできないんだけどな。

 

「優斗!」

「目を覚ましましたか優斗さん!大丈夫ですか!」

「あぁ、少し痛むけど問題ないよ」

 

紗弥香を先頭にヤミ、モモ、村雨さんの順に保健室に入ってくる。

 

「…朝比奈真夜は…どうなった?」

「今回、あの倉庫で発見された死体に宇宙人、ましてや行方不明になった王族の死体もあった事もあり、一度銀河警察が身柄を拘束をしました。事情聴取をされた後に地球の警察に送り届けられると思います」

 

俺の質問に対してモモが答える。

…あの巨大な倉庫に大量の死体がサンプルとして保管されていたんだ…そうなっても仕方がないか…

 

「ヤミやモモを呼んでくれたのは御門先生ですか?」

「…それが、私がモモちゃんに連絡した時には、既にヤミちゃんと一緒に倉庫に向かっていたのよ」

 

…え?…は?既に倉庫に向かっていたってどういう事だ?

 

「本来は天条院沙姫と九条凛にだけ送るつもりだった犯人がメールを間違えて全員に送信した様で、送られてきて焦った古手川唯からメールを見せられました」

 

ヤミはそう言って唯の携帯を見せてくる。

…確かに、沙姫さんと九条先輩に送られてきたメールと同じ文章だな…間違えて送るって事あるか?

 

「…そういえば、沙姫さんと九条先輩は?」

「あの二人なら一緒に保健室に向かっている途中、南雲瑠偉が学校に来て、二人を捕まえて何処かへ連れて行ってしまいました」

「…南雲が?」

 

南雲がわざわざ学校まで来たのか?…劉我さんが二人を連れてこいと指示でも出したのか?

 

「それと先程、銀河警察から正式にクラウンを銀河中で最高ランクの犯罪者として、指名手配犯する事が確定したと連絡がありました」

「…は?」

 

モモの言葉を聞いた俺は驚きのあまり声を出してしまった。

…月城は既に指名手配されているものだと思っていた。

 

「…何で今まで指名手配されてなかったの?」

「私を作り上げた組織″エデン″が壊滅した時、クラウンは死んだとされていました…それにあの時の老人の姿をしたクラウンと今のクラウンでは姿が違いましたから…」

 

エデン…ティアーユ先生がトランスの研究していた組織の名前か。

 

「ソルゲムにいた時は…?」

「ソルゲムの時は基本的にケイズや他の部下を使って暗躍していたから、ボスの正体は不明でだったのよ」

 

御門先生は″まあ、そのケイズもクラウンに始末されてしまったみたいけどね″と言いながら紅茶を飲む。

 

「今回、倉庫の死体から検出されたナノマシンが優斗さんが切断したクラウンの右腕から検出された物と同じだったことで、朝比奈真夜の証言等で正式に生きていると判断されたそうです」

「…そうか」

「安心できませんか?」

 

モモが俺を見て心配そうに聞いてくる。

 

「…安心まではできないな。その程度であのクズは捕まる様な奴じゃないから…」

「優斗さんがそう言うなら、そうなんでしょうね」

 

…正直言えば、月城を指名手配した所でまた得意な変装をして銀河警察を掻い潜るから、きっと意味はない。

 

「ただ、今回の新井さんとティアーユ先生の誘拐は朝比奈真夜の独断での犯行だったようです」

「…何?」

「ホントはクラウンから、もう少し噂を流して時間を置いてからと言われていたようですが…それに耐えられなかった朝比奈真夜が単独で誘拐し、そのまま殺す予定だったと…」

 

…噂を流して時間を置くだと?あの男は何を考えている?

 

「それと優斗、私達は村雨静のバイオロイドに会いました」

「…バイオロイド?」

「ドクターミカドの診療所から消えたバイオロイドです」

 

…診療所から消えたバイオロイドか。

 

───私もないわ、ただ関係ないとは思うのだけど、昨日、優斗くんとのデートから帰ってきた時に気づいたの、お静ちゃんの予備の人工体…バイオロイドが無くなっていたのよ。

 

前に御門先生がそんな事を言っていたな。

 

「何故か知りませんが、そのバイオロイドはスナイパーライフルで優斗を助けたみたいです」

「っ!?」

 

スナイパーライフル…朝比奈真夜の銃を的確に撃ち抜いたスナイパーはそいつか…

 

「バイオロイドと交戦しましたが、スナイパーライフルを背負って戦っていたにも関わらず、私とモモの二人では止めれず、村雨静が来てやっと拘束する事に成功しました」

「…捕まえたバイオロイドから何か聞いたか?」

「それが…色々と聞く前に…別の仲間が助けが来てしまって…」

「…逃げられました」

 

…別の仲間…もう一体のバイオロイドか?

 

「でも!あの私の偽物は、この前に学校でララさんと春菜さんと一緒にいた私の偽物だと思います!」

「…この前?」

「はい!この前、ララさんと春菜さんと一緒に学校の廊下を歩いていました!」

 

この前、ララさんと西連寺さんと学校の廊下で歩いていた?

 

───…お前は誰だ?

 

───………

 

…まさか、三年の教室近くですれ違ったあの村雨さんか?やっぱり、あれは村雨さんじゃなかったのか…

 

「…そのバイオロイドは何の武器で戦っていた?」

「リボルバーです。敵ながら見事な早撃ちとリボルバーをクルクルと遊ばせながら、ありえない速度でリロードをしていました」

「…っ」

 

リボルバー…見事な早撃ち…クルクルと遊ばせながら、ありえない速度のリロード…まさか…

 

───リロードタイムがこんなにも伊吹を!!

 

───…輝、お前、何言ってるんだ?

 

───僕のリロードはレボリューションだ!!

 

───輝先輩!それダメなやつっす!!

 

リボルバーでガンプレイをしながらありえない速度でドヤ顔をしながらリロードをするバカの顔を…

 

───フフ…どうかな?

 

───なんでその早撃ちで全弾的に命中させられるんだ、お前…

 

───中々の腕前だろ、優斗

 

───…その早撃ち、冬華教官もできないぞ?どこで学んだんだ?

 

───セブン○レブン

 

───…悪い、聞き間違いかも知れないから、もう一度言ってくれ?

 

───セ○ンイレブン

 

───……

 

───ちょっ!輝先輩!!優斗先輩にバッ○・トゥ・○・フューチャーのネタが通じてないっすよ!落ち着いて優斗先輩!刀を鞘から抜かぬいて輝先輩を斬りかかろうとしないでください!輝先輩が死ぬっすよ!!

 

俺はヤミの言葉を聞いて、人が分からないネタをいいながらドヤ顔をするムカつく親友を思い浮かべる。

 

(…いや、まさかな)

 

…あいつならスナイパーライフルを背負いながら、ヤミとモモを相手にする事ができるし、機械類全般がダメだからメールを誤送信する事も有り得るだろう…だが、輝の可能性は絶対にありえない。

 

「…でも、なんであのタイミングに他の仲間が助けに来られたんですかね?」

「その理由なら簡単だよ…紗弥香、携帯を貸してほしい」

「え?うん」

 

違和感を感じた紗弥香の携帯を借りて、携帯に着いたストラップの裏を見る。

 

「…これは?」

「…小型発振器、恐らく俺と関わりがある人間には全員着いているはずだ」

 

恐らく沙姫さん、九条先輩の二人にも何処かに着いているはず…

 

「っ!まさか!古手川唯の携帯にも!!」

 

ヤミが持っていた唯の携帯の猫のキーホルダーにも同じものが着いていた。

 

「あぁ…その発信機で交戦していたのが別の仲間に知られたんだ」

「…っ!私が古手川唯の携帯を持っていかなければ…」

 

…??そういえば、ちょっと待て…なんでヤミが唯の携帯を持っているんだ?

 

「ヤミ…そういえば、何で唯の携帯持ってるの?」

「…別に古手川唯からメールを見せられた時に、焦ってそのまま持っていたとかじゃありませんから…今の今まで返し忘れたとかじゃありませんから…」

 

…焦って持って行ったんですね?今まで返すの忘れてたんですね?

そして断言出来る。今、唯は携帯がなくて絶対に困っている。

 

「なんで私やヤミさんには何も付いていないのでしょう?」

「ヤミとモモみたいに宇宙人相手にある程度、戦える人には発信機をつけなくても良いと判断したんだろうな」

 

後は発信機をつける際、ヤミ達にはバレるリスクが高いと判断して無闇な接触はやめたんだろうな。

 

「まるで誰が犯人か心当たりがあるみたいな言い方ね、優斗くん?」

「…俺ならそうするってだけですよ」

 

あいつや俺なら、きっとはそうする。けど、生きてるはずがない…あいつは死んだんだ。

 

「とりあえず、優斗くんは帰って絶対安静よ」

「…はい、わかりました」

 

御門先生の言葉に俺は、保健室のベッドから起き上がりながら答える。

 

「じゃあ!丁度いいし!一緒に帰ろ!」

「ごめん、紗弥香。まだ少しだけ学校に用があるんだ」

 

紗弥香には申し訳ないが、直ぐにでも失った記憶を見る為に黒咲さんに出来るだけ早く会う必要があるがいる…

 

「優斗さん、すみませんが携帯を貸してくれませんか?」

「…?いいけど、なんで?」

「天条院さんから聞きました匿名のメールが送られてきたと…だから、お姉様に逆探知できないか頼みに行きますので、少しの間だけ貸してほしいんです」

 

なるほど、ララさんに逆探知してもらうのか。

 

「…わかった、いいよ」

「ありがとうございます」

 

俺はモモに携帯を渡すとモモは直ぐに保健室を後にして走ってララさんの元に向かっていく。

 

「…私も古手川唯に携帯を返しに行きます」

「うん、絶対にそれがいいよ」

 

さすがにずっと唯の携帯を持っていて悪いと思ったのか、ヤミも唯に携帯を返す為に保健室を飛び出した。

 

「…そういえば、ティアーユ先生は?」

「…倉庫の死体を見てからティアは元気がないのよ…きっと自分の研究のせいでたくさんの被害者を出したって思ってるのかもしれないわね」

 

たくさんの被害者…あの倉庫の中身を知ってしまったらそう思うのも無理はない。

 

「丁度、他に用事もあるので…ティアーユ先生と少し話してきます」

「わかったわ、優斗くん、ティアをお願いね」

 

俺はそう言って皆と別れて保健室を後にする。

 

 

◇

 

(黒咲さんを探すよりも先にティアーユ先生の方が優先だな)

 

俺がティアーユ先生を探し初めて数分、ヤミがよく本を読んでいる中庭に行くとそこにはベンチに座り、落ち込んでいるティアーユ先生が居た。

…ここに居たか、やっぱりヤミと似てるな。

 

「ここにいたんですね。ティアーユ先生」

「…時雨くん」

 

俺は学校の中庭のベンチに座るティアーユ先生に話しかける。

 

「…怪我は大丈夫?」

「俺はもう大丈夫ですよ。それよりも今はティアーユ先生の方こそ大丈夫ですか?」

「え?」

「倉庫を見てから元気がないと御門先生に聞きましたよ」

 

ティアーユ先生は″そう、ミカドが…″と言って俺から目線を逸らす。

 

「自分が研究に加担して成功したせいで沢山の人が死んだ…そう思ってますか?」

「っ!?」

 

図星だったティアーユ先生は目を大きく見開いた。

…やっぱり…そう思っていたか。

 

「ティアーユ先生のせいじゃないですよ」

「…違うの、時雨くん。私のせいなの…」

 

ティアーユ先生は罪悪感に押しつぶされそうな表情を浮かべる。

 

「私がマーレ先生の願いの為に一緒にクローン実験を成功させてしまったから…」

「…え?」

 

マーレ・エスターテの願い?クローン実験?何の話だ?

俺は聞いた事のない話に困惑する。

 

「マーレ先生には、彼氏さんが居たみたいなの…その人をクローンとして生き返らせる。それがマーレ先生の願いだった」

「…彼氏をクローンとして生き返らせる」

 

…クローンとして…だと?

 

「マーレ先生は何度か彼氏さんを生き返らせようとクローン実験に力を入れていたわ…でも上手くいかなかった…」

「…上手くいかなかった?」

「えぇ、ナノマシンに肉体が耐えられずにコアが無くなり消滅する肉体…もしくは耐えられたとしても彼氏さんは言葉を発することなく、機械音や壊れた様に叫ぶことしかできなかったらしいわ」

 

消滅する肉体に機械音…叫ぶ事しかできないか…

 

───遺伝子情報から意志を持ったクローンの生成には成功したけど、コアが破壊されたら肉体が消滅する失敗作

 

俺は以前、沙姫さんの別荘で月城が言っていた言葉を思い出す。

 

「マーレ先生に頼まれた私はマーレ先生の願いを叶える為に研究に参加して…そして見つけ出してしまった、クローンを生み出す方法を…」

 

マーレ・エスターテは自分一人の力でどうする事もできなくなったから、教え子で優秀だったティアーユ先生に力を借りたのか。

 

「遺伝子データとナノマシンを上手く融合させる事でクローンを作れる事がわかった私は最初の段階として″イヴ″を生み出した…」

 

…そういう経緯でヤミが生まれたのか。

 

「イヴのデータはその後、生き返らせるマーレ先生の彼氏さんに使う予定けど、クラウンは私達を裏切って…私達は殺されそうになったわ」

 

マーレ・エスターテの彼氏に使う予定だったか。

 

───彼はね?イヴちゃんを作る前に作ったトランス兵器なんだぁ~

 

───そしてご覧の通り、ナノマシンに耐えらなくて、意志は無くなるし、トランスしたら腕が戻らなくなってしまってね?

 

イヴの前のトランス兵器…あぁ…そうか。やっぱりそういう事か…

あの時のクローンはマーレ・エスターテが作った物だったのか。

 

「私がマーレ先生の研究を手伝わなければ…こんな事には…」

「…仮にティアーユ先生が研究を手伝っていなくても、マーレ・エスターテも月城も手段を選ばず研究をしていたはずです…下手したらもっと被害は大きくなっていたかもしれません」

 

遅かれ早かれ、あの二人はきっとトランス兵器を生み出していただろう。

寧ろ…ヤミを産んだのがティアーユ先生で良かったまである。

 

「それにヤミを産んだ事だけは、後悔しないでください」

「…っ!」

「俺と後輩はヤミに救われた。あなたがヤミを産んでくれたから、俺はここまでこれたんだ」

 

ヤミには沢山助けられた。

もし、ヤミがいなければ間違いなく俺は沙姫さんのプライベートビーチの時に壊れていたはずだ。

 

「確かに…ヤミを産んだ結果たくさんの被害が出たかもしれない…けど、俺と後輩はヤミに救われた。それにこれからもきっとヤミは、どこかにいる誰かを助けますよ」

 

ヤミが居たから俺はここまで来れたんだ。

…だからこそ、ヤミを産んだ事だけは後悔して欲しくない。

 

「だから、ティアーユ先生せいじゃないですよ」

「…時雨くん」

「…それにティアーユ先生のせいなら、俺のせいにもなりますよ」

「…それは違うわ!」

「違くないですよ。前世の俺が月城を殺せなかった…それに彼女の人生を壊して復讐鬼に変えてしまったから…」

「…え?彼女?」

「とりあえず、ティアーユ先生のせいじゃない」

 

そう言ってティアーユ先生に近づいた俺は、ティアーユ先生の頭に手を置いて優しい撫でる。

 

「っ!と…時雨くん!?」

「…すみません、なんか撫でたくなって…嫌でしたよね」

「別に嫌ってわけじゃなくて…あっ…」

 

ティアーユ先生は離れていく俺の手を名残惜しそうに見る。

…撫でられたかったのか?

 

「…もしまだ、ティアーユ先生が自分のせいだと思うなら、過去を悔やむより…これ以上の月城が被害を出さない様に一緒に考えましょう」

「…時雨くん」

「過去は変えれませんが未来は変えられる…俺達でこれ以上、月城の研究で被害が出ない様に出来るだけ早く蹴りればいい」

「えぇ…そうね、ありがとう、時雨くん」

 

ティアーユ先生は何時もみたいな優しい笑顔でお礼を言う。

…良かった、少しだけ吹っ切れた見たいだな。

 

「…泣いているより、そうやって笑顔でいるが素敵ですよ?」

「…ッ!?」

 

俺の言葉を聞いたティアーユ先生の顔が一気に赤くなる。

 

「もう大丈夫そうですね、ティアーユ先生」

「…え?」

「黒咲さんにも用事があるので俺はそろそろ行きますね」

 

俺はそう言ってティアーユ先生に背を向けて歩き出す。

…もう、居ないかもしれないが…一応探してみるか

 

「まっ…待って!?」

「…はい?」

 

ベンチから急いで立ち上がったティアーユ先生は俺の腕を掴んで引き止めた。

 

「その…えっと…ゆ…優斗くんって呼んでもいいかしら?」

 

…なんだ、そんなことか。

 

「はい、良いですよ。寧ろ優斗って呼ばれる方が俺は嬉しいです」

「わ…わかったわ!その…また…明日…ゆ…優斗くん…」

「はい、さようなら、ティアーユ先生」

 

ティアーユ先生は俺の名前を呼ぶのに顔を赤くして身体を震わせながら言う。

…何だ、この人可愛すぎないか?

 

(もう時間もないし、探すとするか)

 

放課後になってかなり時間が経つから黒咲さんがいるか分からないが、いなかったらまた明日にすればいい。

 

(…まあ、会えたとしても黒咲さんが力を貸してくれるかどうかだけど)

 

俺は黒咲さんを探す為に学校内に向かって歩き出した。




次回、えっちぃ要素が少しあると思います。期待しない程度にお楽しみに。

お気に入り、感想、誤字報告ありがとうございます。とても嬉しいです。

ちなみに皆様は10月8日のToLOVEるの20周年のやつ行きますか?
ちなみに私は行きたいです。
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