ToLOVEる 生まれ変わった意味を探して 作:雪だるま2世
ゆっくり読んでください。
「え───では、次の問題を…黒咲!ちょっと解いてみてくれ」
授業中、メアを呼ぶ先生の声が教室に響くが誰も反応しない…
反応するわけない…だってメアは……
「ん?っと、黒咲芽亜は休みか……」
今日は学校を休んでいる…いや、もしかしたらもう来ないかもしれない…
「黒咲さん、風邪?ナナちゃん」
「え?あ…さ…さあ、あたしもわかんないや」
きっと…メアはもう来ない…だってあたしはメアの──────
~回想~
昨日───
「メア…なのか…?」
「ッ!?ナナ!!」
メアの髪に掴まれていたユウトがあたしの名前を呼ぶ。
…なんでユウトもいるんだよ…いや、それよりも…
「な…何だよ、そのカッコ…まるで…」
あたしの脳裏にヤミの姿が過ぎる。
…いや、これは、まるでじゃない…
「それ…トランス…!?」
あたしの中でメアの姿が完全にヤミに重なった。
…何で…何でメアが…トランスを使えるんだよっ!あたしが知ってる中でトランス能力を使えるのは、ヤミと優斗を苦しめ続けたあの男…クラウンだけ…
「そ…そうだよ、これがわたしの本当の姿…わたしは黒咲芽亜じゃない…ヤミお姉ちゃん…″金色の闇″のデータを元に創られた───」
「…っ!黒咲さん───っ!?」
ユウトがメアを静止しようとしたが、何かに気づいたメアがユウトの口を髪で塞ぐ。
「第2世代トランス兵器、メアなの」
「兵器…?メアが…?」
あたしにとってこれ以上にない衝撃の真実だった。
ヤミのデータを元にってことは、クラウンが創ったのか?
「……」
「ナナちゃん…もう…終わりにしよ…?」
「お…終わりって…何を…っ」
「″友達ごっこ″」
…え…友達…ごっこ?
ごっこって…あたしは本気でメアを…
「だって、そうでしょ?わたしはマスターの命令で地球人のフリをしていただけだもん」
地球人のフリ…友達ごっこ…
あたしの中のメアとの思い出にヒビが入る音が聞こえる。
「兵器と人が心から通じ合えるわけないもんね……」
メアとの思い出の全てが音を立てて崩れていった。
◇
~優斗side~
学校が終わり、俺達は家へと帰宅した。
昨日、黒咲さんに友達ごっこと言われたナナは、事情を知らない美柑の前では普通にしていた。
「……っ」
黒咲さんの″友達ごっこ″という言葉は、間違いなく本心じゃない。
「優斗さん…」
「…モモ…ナナは?」
俺はナナの部屋に向かう為、部屋から出るとナナの部屋から転送されてきたモモと出会う。
「帰宅してから部屋に閉じこもったままです…学校では、事情を知らないお姉様やクラスメイトの方には、普通に接していましたけど…」
「…落ち込まないわけないな」
「……」
俺があの時、黒咲さんを止めていればよかった。
もしくはあの宇宙人共をすぐに無力化していれば、状況は変わっていた。
「美柑さんとヤミさんの関係があったから…私……期待していたのかもしれません。私も優斗さんと同じ様にナナが…メアさんの心を変える″きっかけ″になるんじゃないかと…」
「……」
「こんな事なら…メアさんの正体がわかった時点で二人を引き離しておけばよかった……」
壁に寄っ掛かりながら座り込むモモは後悔したように呟いた。
「…そんな事ない…黒咲さんはナナのおかげで間違いなく変わっていたよ」
「…優斗さん」
「それにモモが責任を感じる必要はないよ、俺がモモに言ったんだ″ナナが黒咲さんを変えるきっかけになる″ってね」
「…っ…優斗さん…」
俺は落ち込むモモの頭を手を置いて優しく撫でる。
「ナナと話しに行ってくる」
「…はい…信じてます、優斗さんがナナとメアさんを暗闇から救ってくれるって…」
モモにそう言った俺は、装置を起動させて屋根裏へと移動する。
ララさんと似ている様なメタリックな内装をした空間、ナナの部屋はこの先にある。
扉を開けて中に入るとナナの部屋には、バスケットゴールとバスケットボール、漫画やぬいぐるみと言ったナナらしい物が沢山置かれていて、その奥に映し鏡の様な紫色のゲートがある。
(…この先だな)
紫色のゲートに潜ると空間を周囲の景色が一変した。
先程までいたナナの部屋ではなく、どこまでも続く美しい青空に…遠くに見える山々…生い茂った広い草原には、沢山の動物達がいる。
「…圧巻だな」
どこまでも広がる美しい景色を見て思わず声が漏れる。
「…感想を言ってる場合じゃないか、早くナナを見つけないと…」
「グルル…」
ナナを探そうと歩き出した瞬間、後ろから何かの気配と唸り声が聞こえてくる。
唸り声の方を見ると獲物を見つけたと言わんばかりのドラゴンが俺を見ていた。
…丁度いい…このコに道案内をしてもらうか。
「…俺は餌じゃない」
「グルル…ぐァァァァ───」
「俺は…ナナを探してる」
「───…?」
俺を食べようとして大きく口を開くドラゴンに向けて冷静に言う。
ドラゴンは俺の声を聞いて、食べようと大きく開いた口を閉じる。
「君の友達は落ち込んで泣いているだろ?」
「……」
「…助けたいんだ。もう一度、友達と仲直りさせてあげたい…だから、どこにいるか教えてくれ」
「…がぅっ!」
俺の言葉を聞いたドラゴンは″乗れ″と言わんばかりに俺に背を向ける。
「ありがとう、助かるよ。ドラゴンくん」
背に乗って背中を掴んだ瞬間、ドラゴンは勢いよく走り出した。
俺を乗せたドラゴンは広い草原を全力で駆け抜ける。気づいた時には草原を抜けていて、白い花が広がる丘の上の展望台まで辿り着いていた。
「っ……え?ドラ助?何でココに?」
「がうっ!!」(連れてきた!)
「…連れてきた?誰を───」
「乗せてくれてありがとう…ドラ助くん」
「ッ!?ユウト!!なんでココに───」
「連れてきてもらった、ナナのお友達に」
ドラ助くんの背中から飛び降りた俺を見てナナは″ドラ助が連れてきた!?″と驚愕する。
…目の端が赤いな。さっきまで泣いてたのか…
「がうっ!!」(主のコト!ゲンキニシテ!!)
「あぁ…わかってるよ、ドラ助くん。後は任せてくれ」
「…え?なんで…?ドラ助が言ってる事がわかるんだ?」
ドラ助くんと俺を見てナナは″ユウトは動物の言葉は分からないはずだろ…″と困惑している。
…ちゃんとは分からない。でも、なんとなくはわかる。
「ナナ、話したい事があるんだ」
「…何だよ」
「…いや、でも話をする前に謝罪からかな」
「…謝る?一体何を…」
「黒咲さんの事、黙っていてごめん」
「……」
俺はナナに向かって頭を下げて謝罪する。
ずっとナナに隠してきた事、黒咲さんの秘密を俺達は友達だったナナには一切伝えなかった。
「モモから聞いたよ…ユウトも知ってるって……あたし…心配してたんだ。メアのヤツ″お姉ちゃんがいる″って言いながら、一人で暮らしてたり…ユウトみたいに何か人には言えない理由があるんだろうなって…」
ナナの黒咲さんに対する思い。
「″今は話してくれなくてももっと仲良くなったら相談してくれるかな″とか″相談されたらなんて答えようかな″とか考えて…」
拳を強く握りしめたナナは俺に背を向ける。
「まさか、その″お姉ちゃん″がヤミの事なんてさ…何にも知らずにバカみたいだな、あたし」
「……」
「あ…あたし…真剣だったのに…友達だって思ってたのに…メアにとってはただのお芝居だった…」
お芝居なんかじゃない…黒咲さんは中には、最後までナナとの思い出があった…それを彼女は怖いという理由で切り離しただけだ。
「…それは違うよ、ナナ」
「…違う?何が違うんだよ!!!」
「はっきり言われたんだぞ!″友達ごっこはもう終わり″だって!!メアは…あたしの事なんて、何とも思ってなかったんだ!!」
「…違う、黒咲さんは最後までナナの事を思って───」
「違くない!違くないんだよ!!もういいよ!!どーだっていい!!あたしなんて!どーだって!!」
俺は見ていられなかった。目の前でナナが壊れそうな程、泣きじゃくる姿を───
「全部…っ!全部!どーだって───んむっ!!?」
「っ───…」
俺はナナの言葉を遮る様に抱き寄せてキスをする。
…この身体は俺の身体じゃない…こういう事はもうしないって決めていたのに…
「んっ───…あ…え?ユ…ユウト─────!?」
「っ─────────…」
抱きしめていたナナが一度は離れようとしたが、強く抱き締めて逃がさない様にもう一度キスをする。
「───…落ち着いた?」
「───…うん…っ」
「ナナは黒咲さんが背負っている物を一緒に背負いたいって思う?」
「…思う…悩みとか言って欲しい…メアの助けになりたい…」
「背負っている物がどれだけ重くても?」
「…決まってるだろ!!背負っている物が重くても…一緒に背負って解決したい!!」
…答えは出た。
「…そうかなら、二人は何時かなれるかもしれないね…」
「…なれる?何に──」
「″親友″に」
俺の背負っている物がどんなに重くても、輝とリトは嫌がらずに背負ってくれた。
「…親友?」
「あぁ、それにな?友達や親友同士なら、ぶつからなきゃ伝わらない事だってある」
「ぶつかる…」
「俺は輝とリトとぶつかった、だから自分の想いを言えて…今、此処に居られてる」
輝に関しては色々あって死ぬ程ぶつかった。
輝とリトがいなければ、俺の人生は間違いなく途中で終わっていた。
「それに…黒咲さんの″心″は兵器と人との間で一人孤独に迷っているだけだ」
「迷ってる?メアが…」
「黒咲さんは″人として生きる″という選択肢を作った″きっかけ″を与えたのは間違いなくナナだ」
「…あたしが?」
黒咲さんの感覚が流れた時に確信した。黒咲さんは間違いなく人として生きたいと揺らいでいた。
「だから、ぶつかればいい、そして、隠し事の無くなった黒咲さんを思いっきり、支えてあげればいい…」
俺はナナの顔から流れる涙をそっと拭き取る。
「勇気をだして…次は芝居じゃない…本当の友達になる為に…」
「…っ」
そう言って俺は、ナナが泣き止むまで、思いっきり抱きしめた。
「…ナナは、もう大丈夫だな」
ナナが風呂に入った事を確認した俺は、玄関に向かって歩き出す。
(…こんな時に何だ?)
玄関の扉を開けた瞬間、俺のズボンのポケットに入っていた携帯電話の着信音が鳴る。
南雲からか…出来れば後にして欲しいんだが…
「…もしもし」
『グーテンモルゲン!』
「…今は夜なんだから、グーテンアーペントだろ」
『あら、ドイツ語知ってたのねェ?』
外を歩きながら俺が南雲に向かって訂正する。
グーテンモルゲンはドイツ語でおはようと言う意味でグーテンアーペントはこんばんは…今の状況なら、後者が正しい事になる。
「…何の用だ?今は少し忙しいんだが…」
『あら?そんな冷たい事言っていいのかしらァ?せっかく貴方の探し物…遺骨が見つかったのにィ~」
「ッ!?」
南雲の言葉を聞いた俺は歩みを止めた。
…見つかった…か…やっぱり存在したんだな…
『刀の近くに確かに会ったわよ…まあ、見つかったのは12年前だけどねェ?』
「12年前…」
『えぇ、でもちゃんと見つかって遺骨も確認したわ…彼の名前は雨宮優斗だそうよ?』
「…そうか」
俺は南雲に誰のかは言わずに遺体、もしくは遺骨を探して欲しいと依頼した。
雨宮優斗…この名前を南雲が言った時点で本当に見つかったという事になる。
『不思議ねぇ?当時の写真を見たけど~余りにも貴方にそっくりだわァ~』
「……」
…なんか言い方が随分とわざとらしいな?コイツ誰かから前世の俺の話でも聞いたか?
「それは遺骨を確認してから話す…それより何処にある?」
『…はぁ、せっかちねェ…良いわ、教えてあげる。場所は────────────よ?』
…もう少ししつこく聞いてくると思っていたが、随分と呆気なく引いたな?やっぱり、誰かに俺の前世を聞いたのか?
「…明日の放課後に行く…時間を空けといてくれ…」
『急すぎよォォ!もう少し時間を開けて───』
「…そんな時間はもう無い」
俺は南雲にそう言ってから電話を切る。
「……」
…今は考えるな…今はナナと黒咲さんの問題が優先だ。
俺は自分自身にそう言い聞かせて黒咲さんを探しに走り出した。
◇
~メアside~
「……」
わたしは前にナナちゃんのお友達を紹介してもらった河川敷で座って暗い街を見る。
───もう、終わりにしよ…?友達ごっこ……
あの時、わたしの言葉を聞いたナナちゃんはとても辛そうだった…でも…
(これで…良かったんだよね、マスター……わたしとナナちゃんの生きる道は違うんだから…)
…闘いの世界、それがわたしの道…
もともとナナちゃんとは、ヤミお姉ちゃんを宇宙に連れ戻すまでの関係…終わらせるのがちょっと早まっただけ。
(………………そのはずなのに、何でこんなに気分が重たいの………?)
あの時のナナちゃんの顔を思い出すだけでなんでこんなに辛いの?
「辛そうだね、黒咲さん」
「ッ!?優斗せんぱい?」
わたしが声がする方を向くと、優斗せんぱいは気配もなく私の背後に経っていた。
…全然、気づかなかった…せんぱいは何時からわたしの背後に…それにどうしてここが…
「黒咲さんが家にいなかったから…もしかしたらここに居るんじゃないかって思ったんだ」
「…それでなんの用、今はせんぱいでも話したく───」
「ナナに友達ごっこった時のナナを顔を思い出して胸が痛いんでしょ?」
「……っ」
優斗せんぱいはわたしの心を見透かした様にそう言ってくる。
「…けど、黒咲さんに友達ごっこって言われたナナはもっと胸が痛く…辛い想いをしただろうね」
「…ッ…せんぱいは…何が言いたいの…」
…そんなの…わかってるよ…でも、これが正解…兵器と人が心から通じ合えるわけがない…
「通じ合えるよ。兵器だろうが…人であろうが…動物であろうが…心から通じ合える」
「そんな事、できるわけないじゃん…」
「黒咲さんの姉であるヤミは美柑と心から通じ合えているのに?」
「…そんなのヤミお姉ちゃんが殺し屋に戻ったら、美柑ちゃんとの関係なんて簡単に終わっちゃうよ」
″それはどうかな?″と言いながら、優斗せんぱいはわたしの隣に座る。
「美柑なら、きっとヤミが殺し屋に戻っても、何時ものヤミに戻るまでぶつかって、手を伸ばし続けると思うよ」
「…無理だよ。美柑ちゃんの力じゃヤミお姉ちゃんを止められない」
ヤミお姉ちゃんと美柑ちゃんの実力は歴然…美柑ちゃんに止められるわけがない。
下手したら殺し屋に戻ったヤミお姉ちゃんが美柑ちゃんを殺すかもしれない…
「美柑は絶対に諦めない…ヤミが止まるまでぶつかり続けて、きっとヤミを止める」
「…なんでそんな事、言えるの?」
断言する優斗せんぱいに疑問を持ったわたしは
「…俺にも居たんだよ。俺は″お前は友達じゃない″って何度も言ったのに何度もぶつかってきて俺の考えを変えた…正義を変えたバカが…」
「いるわけないじゃん…そんな人…」
「居たんだよ…どうしようもないバカがね」
優斗せんぱいは何処か懐かしそうに笑顔で夜空を見上げる。
「黒咲さんはナナに向かって酷い言葉を言った…でも、あいつみたいにナナは必ず此処に来るよ」
「っ!来るわけないッ!!ナナちゃんが来たとしても!わたしは───」
「黒咲さんは既にナナに変わるきっかけを与えられている…後はそのきっかけを掴むだけなんだよ」
わたしは立ち上がってせんぱいの言葉を否定すると、優斗せんぱいはわたしの言葉を遮るように言葉を被せ真っ直ぐな瞳でわたしを見た。
「俺も最初は怖かった…でもきっかけを掴んで…変わる事ができて良かったって思ってる」
「与えられてなんかいない!掴む気もないよ!!」
立ち上がるせんぱいにわたしは距離を取る。
怖がってない…わたしはナナちゃんにきっかけなんて与えられてない…わたしは変わらないっ!
「いや、黒咲さんは───メアはナナから差し伸べられたきっかけを必ず掴むよ」
「うるさいっ!うるさいよ!せんぱい!!」
微笑みながら近づいてくる優斗せんぱいは今のわたしには猛毒だった。
…やめてよ…そんな顔でわたしを見ないで!近づいて来ないでよっ!!これ以上…わたしを惑わせないで…わたしを変えようとしないでっ!!!
「メアの中で答えは出てるはずだ…もう目を逸らさずに前を見ろ…与えられたきっかけを手放すな!」
「うるさいっ!もう静かにしてよっ!!」
頭がぐちゃぐちゃになって混乱したわたしは目をつぶって叫び、髪先が優斗せんぱいに向けて飛んでいく。
◇
わたしが目を開けると前に一度だけ見た事がある軍事施設の訓練所にいた。
ここって…もしかして優斗せんぱいの精神世界?そっか…わたしの髪先がせんぱいに触れたから…
『さあ模擬戦だ、優斗くん!お互いに全力で行こうか!』
『…そうか』
『ちょっ!?いきなり容赦ないね!!?」』
目の前に二人の男性が現れる。
片方は緑色の迷彩服を来た20代くらいの男性、もう片方は少し成長した優斗せんぱい…緑色の迷彩服を来た男性が合図を出した瞬間、優斗せんぱいが木刀で攻撃を仕掛けた。
…確かこの人って前に優斗せんぱいの記憶で見た…虹崎輝って人だ…
『…どうした?そんなものか?』
『なるほどね…こんなに早いのか…』
『…これで終わると思ったか?』
『…っ!?』
虹崎輝は優斗せんぱいの木刀を自身が持っていた木刀で何とか防ぐ。
そんな虹崎輝を見た優斗せんぱいは更に連撃を仕掛けた。
…この人、防ぐのが精一杯で反撃できてない…これだとすぐに負けちゃう。
優斗せんぱいと虹崎輝の剣技の差は歴然で虹崎輝に勝ち目はなかった。
『…チェックメイト』
『なるほど、それが優斗の切り札…戦国教官直伝の突きか…』
今の突き…なにっ!?
目にも止まらぬ早さの突きで決着をつけた優斗せんぱいは模擬戦で倒れた虹崎輝の元へ向かう。
あんな早い突き今まで見た事ない…
『…君、強くない?』
『この程度の力で全ての人を救えるって、思ってるのか?』
『力だけじゃない、優しさが誰かを救うことだってある』
『戦場ではそういう甘い奴から死んでいく、優しさなんて、なんの意味もない』
『戦う力だけじゃ救えない命がある、それに力に囚われていたら、いつか必ず限界が来る』
『…何?』
『誰かを救うためには、手を差し伸べる優しさも必要なんだ』
虹崎輝は立ち上がり、優斗せんぱいを見る。
『君もいつかわかる日が来る』
『………』
虹崎輝は真っ直ぐな瞳で優斗せんぱいを見る。
…何だか、すっごく眩しい人…それに昔の優斗せんぱいってこんな感じの人だったんだ…
今の優斗せんぱいとは想像がつかない程、過去のせんぱいは冷たい目をしていた。
それから、模擬戦が終わった優斗せんぱいが寮の自分の部屋に戻ると、虹崎輝が″今日から同室だけどよろしく!優斗くん!″と言ってせんぱいの部屋に居たり、鳩サブレの話とか意味の分からない話でせんぱいを困らせていた。
『おはよう!優斗!』
『…最悪な目覚めだ』
同室になった次の日の朝、優斗せんぱいが目を覚ますと目の前には虹崎輝の姿があった。
『ほら!早く着替えて!一緒に朝食を食べに行くよ!!』
『…?何でお前と朝食を食べないといけない…』
『え?友達なんだから当たり前だろ?』
虹崎輝はさも当然の様に言う。
その言葉を聞いた優斗せんぱいは″は?″と言った後、心の底から嫌そうな顔をして言う。
『…お前と友達になった覚えもなければ、なるつもりもない』
『え?』
『…俺には友達は必要ない、それにお前はただの同僚だ…だからこれ以上、俺に絡むな』
今の優斗せんぱいからは考えられないくらい、わたしがナナちゃんに言った言葉よりも心を抉る言葉を言う。
『必要ないか、それはちょっと寂しよ…で?どうやったら友達になってくれるのかな?』
『…お前、話聞いてたか?』
『俺には友達は必要ない、だから絡むな…でしょ?』
『…聞いてたなら…』
『君のその考えを僕が変えるから大丈夫さ!』
『…お前…頭イカれてるのか?』
虹崎輝の言葉を聞いた優斗せんぱいは明らかに引いていた。
…この人、なんか凄い…普通、あそこまで言われたら、心折れたりすると思うんだけど…
『あ!そうだ!今日も模擬戦をしよう!!』
『…は?』
『それで僕が勝ったら友達になってもらうよ』
…この人、正気なの?
昨日の闘いで実力の差は歴然だったのに懲りずに模擬戦で勝ったらって…
『…わかった、その代わり負けたら、諦めろ』
『あぁ!わかった、それでいいよ!』
優斗せんぱいの条件を飲み、二人は再び訓練所に向かった。
…勝てるわけないじゃん…これで優斗せんぱいに負けて友達になる事が出来ずに───あれ?でも、前に見た優斗せんぱいの記憶では、二人は背中を合わせて一緒に戦っていたはず…まさか、勝つの?
『…リボルバーだと?』
『あぁ、僕はこっちの方が得意でね。もちろん弾丸はゴム弾だから安心していいよ?』
虹崎輝は優斗せんぱいに向かって二丁のリボルバーをクルクルと回してホルスターにしまいながら言う。
『…舐めるなよ、リボルバーを構えない挙句、この距離ならリボルバーよりも木刀の方が早い』
『それはどうかな?やってみないと分からないだろ?』
優斗せんぱいは腰に付けた木刀に手を置いて、虹崎輝はホルスターにしまったリボルバーに触れる。
『それじゃあ、お互いに全力で行こう!優斗!!』
虹崎輝の合図と共にお互いが動き出した。
『ッ!?』
優斗せんぱいが木刀で虹崎輝を斬るよりも前に虹崎輝がリボルバーを構えて発砲する。
…ウソっ!早いっ!
『あー躱されちゃったか』
『…お前、昨日は全力を出さなかったな?』
『まさか、ちゃんと全力を出してたよ』
ゴム弾をギリギリで躱した優斗せんぱいを見た虹崎輝はニヤリと笑う。
『確かにナイフや剣技では君には勝てない…でも、早撃ちや狙撃の技術なら優斗に勝てる可能性があるって昨日の模擬戦で確信した』
『…ちっ』
優斗せんぱいは虹崎輝を見ながら舌打ちをする。
…この人、強かったんだ。
『さあ!君は勝てるかな!全力の僕に!』
『…舐めるなよ!虹崎!!』
近くにあった障害物を利用してゴム弾を防ぎながら、優斗せんぱいは攻撃するが、虹崎輝も発砲したら引いてを繰り返す。
これが本当に地球人同士の戦い?それに全然、模擬戦にも見えない。
『おっと、弾切れだ』
弾切れになった虹崎輝は障害物に隠れる事もせずにリロードをしようとする。
…っ!この人、正気?障害物に隠れずにリロードを…これじゃ狙ってくださいって言ってる様な。
『…舐められたもんだな!』
その隙を優斗せんぱいは逃すはずもなかった。
せんぱいは突きの姿勢に入り、思いっきり地面を踏み込む。
…あれ?せんぱいの突き、さっき見たよりも鋭くて速い気がする。
『チェック…っ!?』
突きをした優斗せんぱいを見た虹崎輝は、ニヤリと笑い、目に見えない程のスピードでリボルバーをリロードをする。
ウソ!まさか、間に合うの!?
『……』
『……』
優斗せんぱいの木刀が当たる前に虹崎輝のリボルバーが優斗せんぱいを捕らえたが、引き金を引く前に、せんぱいの寸止めした木刀が虹崎輝の喉を捉えていた。
『…負けちゃったか』
リボルバーを手放して両手をあげる虹崎輝。
『前回の突きのスピードを見て間に合うって思ったんだけどなぁ?』
『……』
虹崎輝は笑顔で残念と言って優斗せんぱいを見た。
『…まて、一つ聞かせろ。何故、リロードが間に合うって判断できた』
『優斗の突きは確かに早いよ。でも″戦国教官程じゃない″あの速さならまだ僕の目で捉えられる、だから賭けに出た』
虹崎輝は″優斗の突きも戦国教官と同じで使う度に成長していくんだね″と爽やかな笑顔で言う。
…そっか、だからさっき前よりも速いって思ったんだ。
『まあ、でも負けは負けだね″今日は諦めるよ″』
『…は?今日はだと?』
『そう、今日はだよ。君は負けたら諦めろとしか言わなかっただろ?』
『…屁理屈だろ』
『金輪際関わるなと指定しなかった君が悪いよ』
『……』
『僕は優斗が変わるきっかけを与えたいし、君と友達になりたい、だから絶対に諦めないよ』
″何度でもぶつかるから覚悟して″と言って立ち去る虹崎輝を優斗せんぱいはつまらなそうな目で見ていた。
『…面倒な奴に目をつけられたな』
それから、虹崎輝は優斗せんぱいの事を一切諦める事なく、毎日ぶつかり続けた。
なんで…この人は諦めないの?
『…っ!』
『チェックメイトにはならなかったね?』
虹崎輝は優斗せんぱいと友達になる為に何度も優斗せんぱいに挑戦し続けたある日、お互いの武器がお互いの攻撃に寄って弾かれる。
『…お前、近接格闘もできたのか』
『一応、特殊部隊ハウンズ所属だからね?』
武器が無くなった二人は近接格闘で戦い始めるが、近接格闘はお互いに互角でキリがない。
『消灯時間だ…残念だけど時間切れだね、優斗』
『…ステイルメイト』
『なんだい、それは…?』
『…チェスで言う、引き分けだ』
引き分け、優斗せんぱいも虹崎輝もお互いに戦うのをやめて落ちた武器を拾った。
『また、明日も挑むから覚悟して───』
『…もういい、俺の負けだ』
木刀を拾った優斗せんぱいは虹崎輝に言う。
『…執拗い過ぎだ』
『っ!じゃあ!』
『…友達って事でいい』
諦めた様に呟く優斗せんぱいに虹崎輝はガッツポーズで喜ぶ。
『じゃあ!早速、今度の休日遊びに行こう!』
『…嫌だ』
『どこ行こうか!色々と優斗とやってみたい事があるんだよね!』
『…話を聞け』
『よしっ!サッカーをしよう!!』
『……』
優斗せんぱいは話を聞かない虹崎輝を見て頭を抱えて後悔する。
それから、虹崎輝は優斗せんぱいの外出届けを勝手に出して休日に外に連れ出したり、せんぱいにとって初めてな事を沢山経験させた。
優斗せんぱいも途中から悪い気はせず、むしろ楽しんでいた様に見える。
『優斗、そろそろ聞かせてくれないかな?』
『…何を』
たくさんの思い出は時間が過ぎ去っていきとある海での出来事。
『優斗の過去だよ、君は眠っている時、夢で過去にうなされているみたいだからね』
『…聞いてどうなる』
『僕は優斗を助けたい』
この記憶と″もう一つの記憶″が特に鮮明に記憶に残ってるみたい。
優斗せんぱいにとって特に思い出として残っているのか、とても景色がはっきりしている。
『…俺を助けたいだと?なんで俺のためにそこまでする』
『決まってるだろ、親友だからだ』
『…お前よくそんな恥ずかしいこと言えるな』
『伝えたいことは伝えておかないと、後悔してからじゃ遅いだろ?』
『………』
『優斗が何を背負っているか、知りたいんだ』
優斗せんぱいにとって過去は地獄みたいで苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
『君が背負っている物を僕にも半分背負わせてもらうよ』
『背負えば、地獄を見ることになる、最悪、死ぬぞ?』
優斗せんぱいが虹崎輝を見つめて″地獄を見る″死ぬぞ″その言葉を聞いても虹崎輝の意思は変わらなかった。
『君と地獄まで相乗りする覚悟なら、もうできてる』
『……』
『一人より、二人で背負えば少しは楽になるはずだ、それに僕は簡単に死なないよ』
『………』
『だから、教えて欲しい』
『…俺の過去は…優しさや友情だけでどうにかなるような───』
『優斗、僕を信じてくれ』
虹のように輝く真っ直ぐな瞳か優斗せんぱいの心の鎖を壊していった。
…そっか…せんぱいが言っていたバカって…
『わかった、お前を信じる』
『ありがとう、優斗』
『俺の親友って言うなら…絶対に死ぬなよ、″輝″』
『優斗、僕の事を初めて名前で呼んでくれたね』
(…この人なんだ、この人が優斗せんぱいに変わるきっかけを与えた…親友なんだ…)
海でせんぱいの抱えていた過去を半分背負って、親友になった人、せんぱいにとってこれ以上にない掛け替えのない存在…
(え?この記憶…なんでせんぱいのクラウンがいるの?)
優斗せんぱいの総司令官月城秋良。
この男はわたし達を作った男で間違いなくて…優斗せんぱいの記憶にも憎しみがこもっていた。
そして、そこからの優斗せんぱいの記憶は地獄そのものだった。
優斗せんぱいが任務中に村で出会った女の子がクラウンの功績の為に惨殺され…
優斗せんぱいを慕う、後輩が出来たけど、クラウンが背後で後輩さんを死に追いやり、死亡…
『ごめん、優斗、しくじったよ…』
『嘘だろ、おい、しっかりしろ、輝!!』
優斗せんぱいの記憶に鮮明に刻まれた後悔。
『優斗…最後に…頼みが…あるんだ…』
『喋るな!今、たすけ────』
『頭のいい、君なら…わかるだろ?もう僕は…助からない』
わたしの目の前には、虹崎輝は優斗せんぱいに拳銃のトリガーをこちらへ向けて渡している姿。
…え…?まさか…ウソ…
『僕を…楽にしてくれ、僕を…この苦痛から…救って欲しい』
『…ッ!』
優斗せんぱいは拳銃を受け取り、虹崎輝に向けて構える姿。
…銃を持った優斗せんぱいの手は震えていてた、恐怖ではなく悲しみと後悔で…
『優斗…1つだけ…伝えたいことが…あるんだ』
致命傷を受けても尚、虹崎輝は絶望せずに虹のように輝いた真っ直ぐな目で優斗せんぱいに微笑んだ。
『君と…出会えて…良かった、君と過ごした…日々は…最高の思い出だよ…』
虹崎輝は続ける、激痛に苛まれてもその言葉を伝えようと笑顔で…
全部、伝わってくる…せんぱいの後悔が…光り輝いていた、この人との思い出が…
『ありがとう』
優斗せんぱいはトリガーに指をかけた、そして引き金を引く前に伝えた…今まで照れくさくて、伝えられなかった優斗せんぱいの本音を…
『お前が居たから、俺は壊れなかった、お前のおかげでここまで来れたんだ…ありがとう、輝』
優斗せんぱいはトリガーを引く、放たれた弾丸は虹崎輝の眉間を貫通した。
『輝、一人は寂しいよ…』
落ちた薬莢の音と雨の音が辺りに響き渡る、つぶ濡れになりながら、優斗せんぱいは一人叫ぶ。
『居たぞ!』
『殺せ!逃がすな!』
『ァァァァァァァァァァ!!』
その声で近づいてきた敵兵を殺そうと刀を振るうがせんぱいは殺す直前で立ち止まり敵を無力化させる。
理由は虹崎輝が優斗せんぱいに言った言葉…
───悪人だろうと一人一人に死んだら、悲しむ家族がいるんだ、生きてて欲しいと思う人がいるんだよ、君にだっているだろ?
───優斗、きっかけ1つで人は変わるんだ、善人から悪人へ、悪人から善人へ、ボクたちは悪人を善人に変わるきっかけを与えてあげないかい?
この言葉や今まで虹崎輝に言われた言葉が怒りに狂った優斗せんぱいのストッパーになっていた。
(こんな…想いをして…それでも壊れずに優斗せんぱいは最後まで戦ったんだ…)
優斗せんぱいのほとんどの記憶がわたしの中に流れ込む…
───…見つかった…か…やっぱり存在したんだな…
そして、南雲瑠偉って人に優斗せんぱいの遺骨を発見させて、これからせんぱいが何をしようとしていたかもわかってしまった。
(そっか、だから昨日、せんぱいは抵抗したんだね)
このまま行けば、せんぱいは───
◇
~優斗side~
「ほとんど見ちゃった、せんぱいの記憶…」
「…そうか」
メアと一緒に俺も自分の過去を見ていた。
…抵抗してまた、俺の精神世界から追い出す事も出来たかもしれない…でも、見せるべきだと判断した。
「俺の人生は、輝がきっかけをくれたお陰で変わる事が出来た」
「…そうみたいだね」
「メアにとってナナは俺にとっての輝の様な親友に必ずなる…だから」
俺は手を伸ばしメアの頭に手を置いて頭を撫でる。
「…俺の様に失うな」
「……」
俺がメアに教えられるのはここまでだ…後は…
「メア!!」
ナナが必ずメアを変えてくれる。
「ここにいたのか!」
「…本当に来たんだね、ナナちゃん」
向き合う覚悟を決めたメアがナナを見る。
「…後は任せた、ナナ」
俺の役割はもうおしまいだ…
◇
~メアside~
ナナちゃんに気を取られている間、気づいたら優斗せんぱいが気配を消してわたしの前から消えていた。
「どうして、ココがわかったの?ナナちゃん」
「前にメアに紹介した友達のマリモッタは鼻が利くんだ!前にメアと遊んだ時の匂いを覚えていたから…手伝ってもらったんだよ」
そういうナナちゃん隣には、ぴょんぴょんと飛び跳ねるピンク色のモフモフの生き物がいた。
「…てっ!そうじゃない!」
ナナちゃんはマリモッタをデダイヤルに戻した後、わたしを見る。
その瞳は優斗せんぱいの記憶で見た、虹崎輝と同じ様に虹のように輝いた真っ直ぐな目だった。
「話があるんだ、聞いてくれ」
「……」
ゆっくりとわたしに近づくナナちゃん。
「あたしさ、メアに友達ごっこって言われてすっごい辛かった」
「……」
「…でも、メアにそんな事を言われても!あたしはメアを嫌いになってなれないっ!」
「……」
「メアが背負っている物をあたしも一緒に背負いたいっ!もう一度、メアと学校に行きたい!メアと一緒にたくさん色んな事をして笑いたい!!」
″一緒に背負う″この言葉がどれほど嬉しい事か、優斗せんぱいの記憶を見た後なら分かる。
「今度こそ、お芝居なんかじゃない!あたしはメアと本当の友達になりたいっ!」
「…ナナちゃんは人間でわたしは兵器だよ?」
「兵器とか人間とか…肩書きなんかどーでもいいんだ!」
ゆっくりと私の元まで近づいてきたナナちゃんは、わたしを抱きしめる。
「大事なのは…あたし達の気持ちだろ!!」
優斗せんぱいの言った通り、わたしの中でとっくに答えは出ていた。
「……メア、もう一度…あたしと友達になってくれ…」
「……」
「決めたんだ、メアと友達になるって!だから、ここで断られても…どれだけメアに友達じゃないって言われても、あたしは諦めない!何度だってメアにぶつかりに行くからな!!」
…本当だね、せんぱい…わたしがどれだけ酷いことを言っても…友達ごっこって言ってもナナちゃんは優斗せんぱいの親友さんみたいにぶつかってくるんだね。
「ナナちゃん、わたし…自分が兵器だっていうマスターの教えは曲げられないかもしれないよ?この街にだって…いつまでいられるかわからない……それでもいいの?」
「言ったろ!関係ないって、あたしには人間も兵器だって関係ない…メアはメアだ」
ナナちゃんの言葉によってわたしの心は溶かされていく。
「それにもし、メアのマスターの命令がメアが危険な目似合うなら…あたしがメアを救う!メアの考えを変えるきっかけをあたしが必ず与える!!」
わたしを抱きしめていたナナちゃんは、一度離れて手を差し出した。
…今、ナナちゃんが差し伸べてくれた手を掴まなかったら、わたしは一生後悔するんだろうな。
優斗せんぱいのせいだよ…せんぱいとナナちゃんに出会わなければこんな想いしなかったよ…
「ずるいよ…そんな風に言われたら…断る理由がないじゃない…」
わたしの負けだよ…ナナちゃん。
美しく広がる星空の下でわたしはナナちゃんの手を掴んだ。
「…無事に終わったな」
「そうですね、優斗さん」
離れてわたし達を見ていた優斗せんぱいとヤミお姉ちゃんとモモちゃんが近づいてくる。
…優斗せんぱい、そんな所に居たんだ。
「…あれ?そのおじさん達」
「少しイタズラが過ぎるようなので、片付けておきました」
昨日、わたしを襲ったおじさん達はヤミお姉ちゃんによって気絶させられたらしく、適当に投げ捨てられていた。
「…お姉ちゃん…わかったよ。人と触れ合いその温もりを知って欲しいって意味が…」
「……」
優斗せんぱいの記憶を見て…ナナちゃんの言葉を聞いてわかった。
「…このまちは平和すぎるね…」
「…はい」
「闘いもない…血の匂いもしない」
わたしはナナちゃんを見る。
「いるのはきっかけを与えてくれるお人好しな変な人達と…」
そして、隣に居た優斗せんぱいを見て言う。
「わたし達、兵器を人に変えようとするお人好しなせんぱい」
「…そうですね」
わたしの言葉を聞いた優斗せんぱいは無言で目をそらす。
「こんな幸せな場所にわたし達がいるのは、おかしいよね」
「…はい」
「…なのに…″ずっとここに居たい″って思えてくるの…」
「…同感です」
私の言葉を聞いたヤミお姉ちゃんが頷く。
「厄介だね」
「えぇ…厄介ですよ…この彩南は…」
わたし決めたよ、優斗せんぱい…
ヤミお姉ちゃんの言葉を聴き終わった後、わたしはもう一度優斗せんぱいを見る。
…次はわたしの番、例えマスターに止められても、今せんぱいが抱えている問題を一緒に解決するから…
(わたしが優斗せんぱいを力になる番だから…)
…優斗せんぱいは絶対に死なせない。