ToLOVEる 生まれ変わった意味を探して 作:雪だるま2世
グッズは売ってなかったけど、等身大パネルが凄かったのと無事にサイン会の抽選券貰えて良かったです。
ナナちゃん達と別れて家に帰ったわたしは、ソファーに座ってクッションを抱きしめながら、今日の事を考えていた。
───お兄さん!やめて!お母さんをけがさせないで!!
───身体が動かない!それに…今の声は…まさか!?
優斗せんぱいの記憶を見たわたしは、昨日の午前中に優斗せんぱいの身体に何が起きたのかも知ってしまった。
…優斗せんぱいは身体の真実を知りたくて…わたしを頼ろうと屋上まで探しに来た…
(でも…もし、真実が優斗せんぱいの予想通りのものだったら、優斗せんぱいは必ず朝比奈桜くんに身体を返すっていう…そうなったら、優斗せんぱいはどうなるの?)
…いや、優斗せんぱいの事だから、わかっているんだろう…今の優斗せんぱいが身体を返した場合どうなるか。
(優斗せんぱいは絶対に死なせない…わたしを人に変えようとしたんだから…わたしにこんな想いを抱かせたその責任を取って欲しい…)
明日の放課後…優斗せんぱいは遺骨の───から───を回収し───を解析して…どうして自分がこの世界に来たかを確認してから、全てを決めるはず…
『メア…』
「…マスター」
考え事をしているわたしに二週間近く姿を消していたマスターが現れる。
…今はマスターとは、会いたくなかったなぁ
「…マスター、あの…わたし…ナナちゃんと───」
『何も言うな…全てわかっている…』
マスターはわたしの言葉を遮ってニヤリと笑った。
『お前がここでの暮らしを通して、金色の闇の″心″を理解しつつある事は、むしろ歓迎する…同じ運命を持つ者として我らはわかりあわねばならないのだから』
「…そっか」
今回のナナちゃんの件をもし、マスターに関係を断ち切れと言われていても、きっとわたしは命令に背いたと思う。
…だってわたしは掴んでしまったから…
『…?うれしくないのか?』
「…ナナちゃんとの関係を認めて貰えたのは嬉しいよ、マスター」
『なら、もう少し喜べ───』
「でもね、マスターに断られても…私はきっと刃向かってでもナナちゃんと友達になると思う」
『…何?』
私の言葉を聞いたマスターは信じられない物を見た様な顔をして驚いた。
『…クククッ…まさか、時雨優斗はメアの考えまで変えたのか?』
「完全には変わってない…でも、それも一つの道だってわかった…だから、わたしが明日やる事もマスターに何を言われても辞めないよ」
『…明日やることか?」
マスターは″何をするつもりだ?″とわたしに聞いてニヤニヤと笑う。
「優斗せんぱいを″この世界で起きた過去から救い出す″」
私の力で優斗せんぱいが今世の過去と向き合うチャンスを与える。
『クククッ…何をするつもりか知らんが、しばらく好きな様にやってみるといい』
マスターはわたしにそう言って姿を消した。
…優斗せんぱい…散々人を救ってきて…自分だけ幸せになれないまま死ぬとか、わたしもみんなも絶対に許さないよ。
◇
~優斗side~
ナナとメアの二人が仲直りして本物の友達となった次の日の放課後。
「…ここか」
昨日、南雲に全然の俺の遺骨が見つかったと連絡が来た時に教えられた場所───死体安置所の目の前に居た。
…今日で全てがわかる。俺がどうしてこの世界に生まれ変わったのか…俺が死んだ後、何があったのか。
「待ってましたよ?優斗せんぱい」
「…メア」
死体安置所の中に入ると先回りして俺を待ち伏せをしていたのか、メアが壁に背をつけて外から入ってきた俺を見ていた。
…なんでメアが此処に…あぁ、俺の記憶を見た時に南雲との会話の内容も一緒に見たのか。
「…余計な記憶まで見られたか」
「わたしを見ただけでそこまで察するなんて…流石だね、優斗せんぱい」
壁から離れたメアは、俺にゆっくりと近づいてくる。
…まさか、待ち伏せされるとはな。
「…それで、なんで沙姫さんと九条先輩まで此処に?」
「わたくしと凛は後悔しない為にここにいますの」
「あぁ、沙姫様の言った通りだ…私達は後悔したくない」
失うか…南雲がなんか話したな?
余計な事をしてくれたな、南雲。
「それと、まだこれを返していなかったからな」
「…刀」
「君にとって大切な物だろ?」
「ありがとうございます」
俺は九条先輩から冬華教官の形見である刀を受け取る。
「…着いてくる気?」
「もちろん、ついて行くよ」
「わたくし達も行きますわ」
俺がメアと沙姫さんを見て言うと、二人は本気で着いてくる様だった。
「……」
「着いてくるなって言われても行くけどね!」
メアは俺に向かって笑顔でピースをする。
…メアに関しては俺が何をしようとしているのか、わかっているだろうな。
「…わかったよ」
「ありがとう、せんぱい」
「ちょっと!あなた!何故、優斗の腕に抱きついてますの!」
メアは笑顔で俺の腕に抱きついてくる。
…ここ死体安置所なんだが?
「メア、ここでは離れてくれ」
「…いいじゃん、これくらい」
メアは俺に聞こえるくらいの声で″わたしだって後悔したくないもん″と小さく呟いた。
「…貴方達ねェ?ココが何処か分かってるのかしらァ?」
奥の方から姿を表した南雲はメアが俺の腕に抱きついてるのを見て″デートスポットじゃないのよ?と俺に向かって言う。
「あ!せんぱいの記憶に出てきた、オカマのおじさんだ!」
「誰がおじさんですってェェェェェ!!!!」
「…南雲、此処が何処かわかってるのか?」
南雲はメアにおじさんと言われて、大声を出してブチ切れる。
…おじさんぐらいで怒るなよ。
「ナニよ!この失礼な子ォ!!」
「…黒咲芽亜、付き添いだ」
「付き添いって!貴方なに考えて───」
「…南雲、時間がないから早く案内してくれ」
色々と説明すれば長くなる…そう判断した俺は南雲の言葉を遮る様に言う。
「あぁ、もう!わかったわよ!!」
「ありがと!オカマのおじさん!」
「そこの小娘ェ!次、アタシをおじさんって言ったら、貴方がここで眠ることになるわよォ!!」
三十過ぎてるのだから、十分おじさんだろ…それを言ったら俺も精神年齢はおじさんな気がするが…
「…ふぅ…ほら、こっちよ着いてきなさい?」
切り替える様に息を吐いた南雲は、俺とメアの前を歩き目的の部屋まで案内を始めた。
「…着いたわよ」
「随分厳重に保管されてるんだね?」
「まあ、見つかった遺骨が色々と問題でねェ」
南雲はメアの疑問に答えながら、ポケットからカードキーを取り出して機械へ通した。
「……」
「これが…せんぱいの…」
部屋の真ん中に置かれた遺骨。
頭の遺骨の眉間には弾丸の後の様な物がしっかりと残されていた。
…これが、俺の遺骨……
「はい、これ、12年前の遺体の写真よ?」
「……」
「沙姫ちゃんと凛ちゃんから貴方の事は全て聞いたわ…これから貴方が何をするか、アタシには分からないけど″返すならちゃんと皆に話しなさいね″」
「…わかってる」
南雲は12年前の写真には、暗い瞳でぐったりと倒れいる俺が写っていた。
「…遺品は何処にある」
「探し物はこれでしょ?」
俺に言われるのが分かった様に前世で俺が持っていたスマホを渡してくる。
…違う。俺が探しているのは、これじゃない。
「オカマおじさん、違うよ…せんぱいが探してるのは迷彩服の方だよ」
「誰がおじさん───迷彩服ですって?」
「…メアの言った通りだ。俺が探してるのは、スマホじゃない迷彩服だ」
「なんで迷彩服なのよ…まあいいわ、今持ってこさせるから…」
南雲は部下に声をかけると、部下は急いで部屋を飛び出した。
「優斗、君はなんで迷彩服を探しているんだ?」
「優斗せんぱいの迷彩服には、小型のカメラが着いてたんだよ」
「…カメラですの?」
「確認したいんだよね。せんぱいは自分が死んだ後に何があったのか…桐生夏海がどうなったのか」
俺の記憶を見て、俺の考えもわかっているメアが九条先輩の疑問に答えている。
…まさか、俺の記憶を全部見られたのか?
「迷彩服と他の遺品も持ってきました!」
「ありがとう、もう戻っていいわよ」
南雲の部下が、12年前に見つかった遺品を全て持ってくる。
「……っ」
迷彩服に手を伸ばそうとした時、俺にとって命以上に大切な物が目に入った。
───優斗!7歳の誕生日おめでとう!
───ありがとう、優華さん
それは、俺の誕生日の日に優華さんがくれた犬のストラップ。
貰ってから何年も経っている為、少しボロボロになっていたが、どこへどんな任務に行く時も俺は肌に離さず持っていた大切な宝物…
「…ちゃんと残ってたんだな」
俺は12年経ってボロボロになってしまった犬のストラップを手に取り眺める。
もう見つからないと思って諦めていた…優華さんからの思い出…
「良かったね…せんぱい…」
メアが俺に優しく声をかける。
「…それは、犬のストラップか?」
「そうだよ、九条先輩。このストラップは優斗せんぱいにとって大切な宝物…」
…この優華さんとの記憶もメアに見られていたのか。
(これが見つかって嬉しいが…今はこっちが優先だ)
俺は今度こそ、迷彩服を手を取って胸ポケットに入っていた小型カメラを取り出した。
…電源はつかないか…さすがに12年も使われなければ、内部のバッテリーも壊れるよな。
「そんな所に小型カメラが入ってたのねェ?」
「…あぁ、まあな…SDカードは無事か」
俺は小型カメラの中のSDカードを取り出す。
果たしてデータは壊れていないかどうか…
「…パソコンあるか?」
「あるわよ」
…仮に壊れていてもできるところまで復元すればいい。
俺は南雲から渡されたパソコンにSDカード差し込み、データを読み取らせる。
「…見れるみたいだな」
「優斗、わたくし達も見ても宜しくて?」
「…沙姫さん達にとっては辛い映像になりますよ」
「そのくらい私も沙姫様も覚悟はできている」
「わたくし達だって知りたいですもの!」
沙姫さんと九条先輩の言葉を聞いた俺は″わかりました″と言ってこの場でパソコンのEnterキーを押してデータを再生した。
◇
何処かの研究所、今ここでは警報が鳴り響いていた。
『侵入者!侵入者!!総員警戒せよ!!』
「……」
『侵入者の名は!特殊部隊ハウンズ所属の雨宮優斗!!』
鳴り響く警報、それでも黒い迷彩服着た男は歩き続ける。
『雨宮優斗と接触次第!始末しろ!!』
そんな警報を聞いても黒い迷彩服の男───雨宮優斗は止まらなかった。
「止まれ!雨宮」
「…止まれと言われて止まると思うか?」
雨宮優斗の前に立ち塞がるのは、迷彩服を着た4人の男女。
4人は銃を雨宮優斗に向けていた。
「雨宮准尉!今なら引き返せます!だから───」
「……」
女が雨宮優斗を止める為に声をかけるが、雨宮優斗は歩みを止めない。
「…何故、月城に従う」
「そんなの決まっているだろ!総司令官だからだ!!」
男の言葉を聞いた雨宮優斗は、ため息を吐いてから問いかける。
「…総司令官の命令なら、どんな実験をしても見逃すのか?」
「これも日本の為です!武器人間が出来れば!どんな国でも対抗できます!!」
女の言葉を聞いた雨宮優斗は″…そうか″と冷たく興味をなくした様な声色で言う。
「…お前らは月城が何をしてるのか知っていて従っているんだな?」
「そうだ!我々は全てを知っていて月城総司令の指示に従っているんだ!雨宮優斗!貴様がそれ以上、動くなら!今すぐに貴様を───」
男が言い終わる前に雨宮優斗は男に向けて銃を構えて発砲する。
雨宮優斗は月城の部下とはいえ、計画に対して何も知らなければ生かすつもりだった。だが、彼らは全てを知っていて月城秋良の指示に従っていた。
「なっ!?キサマ───」
「……」
仲間の男が死んだのを見た3人はすぐに構えた銃のトリガーを弾こうとしたが、その時にはもう遅かった。
「…グフッ……っ」
「…敢えて心臓は外してやった」
「…っ」
まだ、会話の余地がある…そう判断した女の急所はわざと外した。
「…答えろ、月城と桐生夏樹はどこにいる」
「…この先…地下一階…に…」
女性は雨宮優斗の質問に指を指して答えた。
雨宮優斗は女が指を指した方を見る、女から見た雨宮優斗の目は光が点っていない真っ暗で冷たい目…
「…どうして…雨宮准尉…」
雨宮優斗に撃たれた女性は周りで銃殺された仲間の三人を見ながら、雨宮優斗に問いかける。
「仲間…だった…じゃないですか…」
「…仲間だと?お前らが最初に裏切ったんだろ?」
雨宮優斗の何処までも冷たい目漆黒な目が女性を貫く。
「クソみたいな実験の為だけに、お前らは月城の命令で仲間の死体を集めた…本来なら家族に届けるはずの遺体をだ」
「っ…でも…皆、本望なはず…死んでも尚…国の為に…」
「本望だと?残された遺族の元に帰る事も見送られる事もできず…死んでも尚、戦わされて地獄を味わえと?」
女の本望という言葉は聞いた雨宮優斗は心底失望した様な顔をした。
「…お前らみたいな奴らは仲間じゃない…敵だ」
雨宮優斗はそう切り捨てて刀で女性の首を斬り飛ばした。
「……」
月城の部下とはいえ、元は同じ職場の仲間…それでも、雨宮優斗は止まらなかった…
「っ!居たぞ!雨宮優斗だ!!」
「今すぐ殺───…ガハァ…」
発砲音を聞きつけて走ってきた集団に向かって雨宮優斗は刀で突きをする。
その突きは銃を構えた男の心臓を貫き、男は絶命する。
「…なっ!雨宮、貴様───…」
隣で胸を突かれて死んだ仲間を見た男は雨宮優斗を殺そうと動いたが、その時には既に雨宮優斗に身体を綺麗に斬られていた。
「お…おい!雨宮!ちょっと待てよ…」
「……」
「話せばわかるってな?」
「…悪いが、お前らは全員殺す」
「ひぃっ───」
雨宮優斗の刃が月城の部下に…元仲間達に向けられた。
「……」
研究所内に悲鳴と発砲音、返り血が飛び交う地獄。
雨宮優斗が通り過ぎた道には、元同僚達と研究員の死体と血で埋め尽くされていく。
それでも雨宮優斗は止まらない…村の女の子は惨殺され…後輩を自爆へ追い込まれ…自身の手で親友を殺した雨宮優斗にとって…
「…俺はもう止まれない」
月城秋良と桐生夏樹がいる場所に向けて突き進む。邪魔な障害を…研究内容を知っている者達を全て排除しながら…
「っ!戦国冬華!?」
誰ががそう呟いた。自分達に向けられた雨宮優斗の殺意が…刀を持ちゆっくりと敵に向かって歩く姿が…国家反逆をした戦国冬華の姿と酷似する。
「化け物がァァァァァ!!」
雨宮優斗には勝てない…そうわかっていても…
「ァァァァァァァァ」
月城秋良の部下達も止まれなかった…仲間を犠牲にし…非人道的な事をしてでも、この計画の成功を願う…それが正義だと信じていたから…
「雨宮ァァァァァァァァァァ───」
「…死ね」
雨宮優斗は容赦なく斬り、月城秋良の部下を絶命させる。
「…サブコントロールルームか」
月城秋良と桐生夏樹の場所まで向かっていた雨宮優斗にサブコントロールルームと書かれたプレートが目に入る。
「……」
ここなら、月城達がやろうとしている次元接続装置を起動を止めれるかもしれない、そう思った雨宮優斗は扉を開けて部屋へと入る。
「…ッ!?誰!!?」
「……」
「あなた…っ!?雨宮優斗!!」
サブコントロールルームに入った雨宮優斗は機会を操作している桐生夏海を見つける。
「なんで…ここに…ここに来るまでいたあなたの同僚達はどうしたの!!」
「…全員殺した」
「仲間なんじゃないわけ?」
「…あんなクズ共は仲間じゃない」
「…そう言って、駿も殺したの?」
「……」
桐生夏海の憎しみと怒りが宿った瞳が雨宮優斗を貫く。
「月城から聞いた!あなたが駿を騙して家族事殺したって!」
「……」
「駿がなんでこんなクズに憧れていたか…全然理解できない!」
「……」
「雨宮優斗!あなたは悪魔!駿が憧れていた正義のヒーローなんかじゃない!!」
「…俺はそんな者になったつもりはない」
優斗の言葉を聞いた桐生夏海は銃を構える。
「…素人が当てられるのか?」
「この距離なら!私でも当てられる!!」
桐生夏海は銃のトリガーに指をかけた瞬間…
「…っ」
「…覚えとけ、この距離なら銃よりも刀の方が早い」
雨宮優斗が桐生夏海の銃を奪い刀を首に突きつけた。
「…事が終わるまで、しばらくここにいるんだな」
「っ!何を───…」
雨宮優斗は桐生夏海を気絶させた。
雨宮優斗の最後のミス…それは、桐生夏海を殺さなかった事…いや、殺せなかった事。
「…輝…駿」
雨宮優斗の自分のスマホのアルバムにあった写真を見る。
そこには、雨宮優斗、虹崎輝、晴野駿の3人が海で笑う姿。
「…全てが終わっても、仮に桐生夏海が生きていたとしても───」
桐生夏海は研究に参加してしまっている。もし、全てが明らかになってしまった時、彼女はその罪から逃げられない。
そして───
「…お前が言ってた様な事は、俺にはできなかったよ…輝」
───悪人だろうと一人一人に死んだら、悲しむ家族がいるんだ、生きてて欲しいと思う人がいるんだよ、君にだっているだろ?
───優斗、きっかけ1つで人は変わるんだ、善人から悪人へ、悪人から善人へ、ボクたちは悪人を善人に変わるきっかけを与えてあげないかい
虹崎輝が言っていた言葉は、この時の心が壊れた雨宮優斗には、届かなかった。
「…すまない」
雨宮優斗は死んだ親友と後輩に向かって自身が桐生夏海を止められなかった事を…元仲間を殺してしまっている現状に謝ってから、機械を操作し始める。
「チッ…次元接続装置を止める事は出来ないか」
機械を操作しても止まらない事がわかった雨宮優斗は、別のシステムを弄り始めた。
「…座標と時間軸は弄れるな」
座標と時間軸のシステムを弄った雨宮優斗は、月城秋良の元に行く為に再び歩き出す。
「…駿の為にも、お前は生きろ」
サブコントロールルームを出る前に気絶した桐生夏海に独り言の様に呟いた。
部屋を出た雨宮優斗は地下に向かう為、敵を更に殺し続けて、そして遂にたどり着いた地下の扉を開けた。
中には、プラグがつけられ、死体の入ったカプセル型のポットが並んでいた。
「…貴様」
「…久しぶりだな、俺が誰か覚えてるか?桐生夏樹」
部屋の中央に置いてある巨大な装置の前にいた桐生夏樹が雨宮優斗の存在に気づく。
「侵入者が…覚えているかだと?貴様と会うのは初めてだ」
「23年前、俺は金に目が眩んだ哀れなクズ女とあんたに会いに行ったぞ?」
「…23年前…金に目が眩んだ女…っ!?貴様!まさか!?」
桐生夏樹は驚いた様に雨宮優斗を見る。
「…俺はあんたが殺したくて仕方なかった、あんたの息子だよ」
「…まさか、あの女のガキが生きていたとはな?」
雨宮優斗は桐生夏樹に向かって銃を構えた。
その銃口は桐生夏樹の眉間を狙っていた。
「ここに来るまでにいた奴らはどうした?」
「…全員殺した、研究に関わってるヤツらは全員殺す、こんなものが外に漏れれば、日本は確実に終わる」
黒い迷彩服にこびり付いた返り血が、ここに来るまでどれほど地獄だったかを物語っていた。
「…まさかお前らクズ共が、死体なんて集めて、武器人間なんてくだらない兵器を作ってるとはな?」
雨宮優斗はカプセルの中に入っていた死体を見て言う。
死体は手足が武器となっていて、体の至る所に縫い目があった。
「…ふざけてんのか?死体なんて使ってこんなもん作りやがって!!」
「死体だと?何を言っているんだ貴様は?その段階はもう終わった」
桐生夏樹は理解できないと言った表情を浮かべ雨宮優斗を見る。
「…は?」
「ここまで来た褒美だ、貴様の知らないことを教えてやろう、死体を使った武器人間は失敗に終わった、そんな肉体ではダークネスを耐えられない」
「まて、死体じゃないだと?何を言ってる!記録には全て死体を使ったと!!」
桐生夏樹の言葉に雨宮優斗は困惑する。
優斗の見ていたカプセル内にある死体は間違いなく人の形をしていた。
雨宮優斗はこのカプセルの中にあるのが死体じゃないのなら、なんだ?と必死に考えて最悪な答えを導き出す。
「貴様は何も分かっていないな、映画の様な死体では意味が無い、本物を作り上げるには、生きた人間で完成させるべきだ」
「…まさか、ここにあるのは!?」
「全て生きた人間だ、心臓も動きも意識もあったが、ナノマシンと装着した武器に耐えられなった」
雨宮優斗は信じられないと言った顔をする。
「最初は孤児のガキを使ったが幼い体には、武器を装着した時点で耐えられず死亡した」
「…は?」
「自衛隊やスポーツ選手の様な肉体を鍛えた人間でも実験したが、今の人間にはナノマシンに適合することができなかった」
桐生夏樹は淡々と話す、まるで何も無かったかのように。
「散々実験させて、結論が出た、ダークネスやナノマシンを耐える肉体を作るには、一から人間を作るしかないが、この世界の技術ではそれが不可能だ」
桐生夏樹は後ろの巨大な機械を撫でる。
「その為に夏海達にこの装置を作らせた、次元接続装置、別世界に繋げる為の扉をなァッ!!!」
桐生夏樹は高らかに笑う、その目に映っていたのは狂気そのもの。
そして雨宮優斗は気づいた。
───なんか、歪曲空間の応用で次元の裂け目を作るとか、なんとかで、
───海外の海に落ちた、隕石に未知のエネルギーがあったらしいんっす、それを使って次元の裂け目を作って、別世界に繋ぐって言ってます!
桐生夏樹が別の世界に行って何をしようとしているのか。
「今まで集めた研究成果と遺伝子情報はここにある!これを持ち別世界の技術を使い完成させる!!」
桐生夏樹はアタッシュケースを持ち上げ、雨宮優斗に見せつける。
「ふざけてんじゃねえぞ!!そんな物、俺が全てぶっ壊す!!」
「そんなことをさせると思うか」
「───ッ!!?」
雨宮優斗が桐生夏樹に叫んだ途端、銃声が鳴り響く、銃声を聞いた雨宮優斗は左に避けるが、避けることができず、弾丸は右胸を貫いた。
「許さない、あなただけは絶対に…」
「…お前」
雨宮優斗を撃った人物が姿を表す。
少し前に気絶させたはずの桐生夏海がそこに立っていた。
「…桐生夏海っ!」
「駿を殺したあなたを私は絶対に許さない!殺す!殺してやる!!」
桐生夏海は雨宮優斗を憎み、恨む様に再びトリガーを弾く。
普段の雨宮優斗なら、問題なく避けるもしくは、銃を撃たれる前に撃返していた。
だが、雨宮優斗はここに来るまで、沢山の人間を殺して進み続けた。
その半数以上は雨宮優斗と同じ自衛隊、幾ら雨宮優斗が強くても連戦を続ければ疲弊する。
「…クソッ!」
既に身体も精神も限界だった雨宮優斗は近くにあった物陰に身を隠すが、桐生夏海が撃った2発の内1発の弾丸は優斗の腹部を貫いた。
「ハハハ───…いい気味だねぇ~優斗くん!」
「っ!月城…」
撃たれた雨宮優斗を見て、月城秋良は嬉しそうに笑いながら姿を表す。
月城秋良は今まで自分の邪魔をしてきた雨宮優斗の姿が嬉しくて仕方がない様子だった。
「笑っていないで装置を起動しろ、月城」
「言われなくてもわかってるよ~夏樹くん」
桐生夏樹に言われると月城秋良は近くにあった椅子に座り、装置を操作すると巨大な機械が音を立てて動き出す。
「あれ、なんで?」
「どうした?」
「座標と時間軸がずれてる…おかしいなー?このままだと目標地点じゃない場所と時間に飛ばされる」
「なに?」
装置を操作していた月城秋良が焦る、それを見た桐生夏樹はアタッシュケースを床に起き、月城秋良の元へ向かう。
「ハハハっ!」
「…貴様の仕業か、雨宮優斗」
「ここに来る前にサブコントロールルームで座標と時間軸をいじってやったよ!いくら月城でも、直すのに時間がかかるよなぁ!」
雨宮優斗は腹部の出血を手で抑えながら、狂った様に笑う。
「夏樹くん、やられたね?でも時間があれば、このくらい───」
「これもやるよ!プレゼントだ!!」
隠れている場所から雨宮優斗は爆弾をなげた。
投げらた爆弾はアタッシュケースの近くへ落ちる。
「ッ!?夏樹くん!早くケースを…」
「…もう遅い!!」
雨宮優斗は迷彩服の内ポケットからスイッチを出してボタンを押す。
ボタンを押した瞬間、アタッシュケースに落ちた爆弾は爆発してアタッシュケースがあった一体を吹き飛ばす。
この爆弾は、晴野駿が生きていた頃、雨宮優斗に教えたスイッチ式の爆弾であり威力は相当な物…
「クッソがァ!貴様よくも研究成果を!」
「ッ!?まずいなァ~今の爆発でシステムがおかしくなった!このままだと───ッ!?」
「いい加減くたばれよ!クズ野郎!!」
月城秋良がそう言った機械を操作した瞬間、雨宮優斗は物陰から姿を表し、隙ができた桐生夏樹と月城秋良に向かって銃のトリガーを弾く。
「ッ!!」
「……」
2発の弾丸は桐生夏樹と月城秋良の心臓を貫いた、二人はその場に力なく倒れ込む。
「お父さんっ!?雨宮優斗ォォォオオオ!お前は苦しんで死ねぇぇぇっ!!!」
桐生夏海は雨宮優斗に向かって再度、トリガーを弾く、弾丸は腹部を貫き、雨宮優斗は床へと倒れる。
倒れた雨宮優斗は桐生夏樹の方を見ると二人は倒れたまま動かった。
「………」
雨宮優斗は自分の身体を見て理解した、死ぬことを…そして…
「…優華さんとあいつらがいる場所には行けないな」
懐から雨宮優華に貰った犬のストラップを握りしめ、あの世に───地獄に行く覚悟を決めた雨宮優斗は目を閉じた。
「死ね!死ね!死ね!!死ねぇぇぇぇっ!!」
桐生夏海は雨宮優斗に近づいて、弾切れになるまでトリガーを弾く、雨宮優斗は何発も弾丸をその身に受け続ける。
「…グフッ」
口から血を吹き出して、身体は弾痕だらけで、それでも死ぬ事ができず…
「死ねぇぇぇぇ!雨宮優斗ォォ───っ!!」
桐生夏樹が撃った最後の1発の弾丸が、雨宮優斗の眉間を貫き、雨宮優斗は死亡した。
「お父さん!!」
桐生夏海が桐生夏樹に声をかけた瞬間、装置が起動し、倒れていた桐生夏樹と男はその場から姿を消した事を…そして…
「っ!次元接続装置が!」
何も操作していない次元接続装置が再び動き出す。
「なんで!?まさか!壊れたの!?」
桐生夏海は機械を操作するが、次元接続装置は止まらない。
「せめて、時間軸と座標だけでも───」
雨宮優斗が弄った時間軸と座標の設定を桐生夏海は戻そうと操作するが間に合わず、次元接続装置は光り出す。
「間に合わ───っ!?」
起動した次元接続装置の光は桐生夏海───だけじゃなくて死亡した雨宮優斗の身体をも飲み込んだ。
次元接続装置に光に包まれた雨宮優斗の遺体は別の世界の山奥へ飛ばされた。
だが、雨宮優斗がもっていた刀は、雨宮優斗の遺体が山奥へ落ちたと同時に山から落ちていく。
「…今、この辺で光らなかった?」
「え?気のせいじゃない?」
「絶対光ったよ!この辺で───きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあ──────っ!!!」
「どうしたの───っ!うそっ!これまさか!し…死体っ!?」
そして、近くにいた二人の登山客が雨宮優斗の遺体を見つけて通報した事により、雨宮優斗の警察によって遺体は回収された。
長くなるので分けます。
ちなみに今朝、自転車盗まれて萎えながらToLOVEるのPOPUPに行きました。