※この作品はR-18です。

ToLOVEる 生まれ変わった意味を探して   作:雪だるま2世

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長いです。すみません。


Psycho Dive~記憶~

「…やっぱりそういう事だったんだな」

 

パソコンに映し出された映像によって、全てを知ってしまった。

 

「…俺は桐生夏海と共にこの世界に飛ばされた」

 

俺が死んだ後、次元接続装置は誤作動して俺と桐生夏海をこの世界に飛ばしてしまった。

 

「…それにしても敵とはいえ、元同僚を躊躇なく殺しちゃうなんてねェ…非情ね?」

「っ!南雲瑠偉!!言葉には───」

「九条先輩、止めないでください…事実ですから…」

 

南雲が言っていることは事実だ、俺は前世の最後に沢山の元同僚達を殺してしまった。

 

「でも、アタシも貴方と同じ立場なら、同じ事をしたわねェ…」

「……」

「でもね…貴方の一番のミスは、親友くんや後輩くん以外に頼れる仲間を作らなかった事よ…」

 

…仲間か…確かに俺は輝と駿以外に仲間を作らなかった。

 

「全てを一人で解決するには無理があるわ」

「…そうだな」

「クラウンを倒すなら、一人でやろうとせずに仲間を頼りなさい」

 

南雲は″二度と後悔したくなければね″と俺に向かってウィンクしながら言う。

…そうだな、俺一人じゃ…恐らく月城は倒せない。

前回は冬華教官が俺を助けてくれたから、月城と相打ちになった…もし、冬華教官の刀がなければ俺はあの時点で死んでいた。

 

「それで?答えは出たんでしょ?貴方が生まれ変わった理由がなんなのか」

「…あぁ、出たよ」

 

…答えは出た…俺の正体もこの世界に来た理由も…これなら辻褄が合う。

 

「…俺は″思念体″だ」

「「…っ!」」

 

沙姫さんと九条先輩は苦虫を噛み潰した様な顔をした。

…朝比奈桜の頃の夢を見た時、何故三人称だったのか。

何故…朝比奈桜の声が聞こえ身体が動かせなくなったのか。

それが全て、俺が″思念体″でこの身体を借りているという線で行くと全ての辻褄があってしまう。

 

「思念体ですの?」

「村雨せんぱいと一緒だよ、特定のレベル以上の知的生命体から生まれる精神エネルギー体…極度に精神エネルギーを消耗してしまえば、消えてしまうかもしれない存在…」

「…それが、優斗の正体なのか?」

「…はい」

 

ただ、恐らく俺は肉体なしでは村雨さんの様に長くは存在できないほど、″微弱な思念体″なんだ。

 

「死んで魂があの世に行く前に…俺は身体と一緒にこの世界に飛ばされた…その後、俺は朝比奈桜に出会ったんだ」

 

どうやって出会ったか分からない…どうして朝比奈桜の身体に宿る事になったかも…俺がこの身体を奪ったのか、それとも───

 

「…優斗、どうするつもりですの?」

「…朝比奈桜がまだこの身体の中で生きているなら、彼に身体を返したい」

「仮に生きてたとして、そもそもどうやって返すつもりかしらァ?」

「…方法はある」

 

本人が力を貸してくれさえすれば…だがな。

俺は南雲にそう言って返すと″やっぱり、そんな感じの力を持ってる宇宙人にいるのね?″と呟いた。

 

「…返すのか?そうしたら君はどうなる」

「…わかりません」

「分からないってそんなの危険すぎますわ!」

 

もし、朝比奈桜に身体を返せば…俺はきっと───

 

「沙姫さん、大丈夫ですよ。返すと言っても月城を倒してからです…朝比奈桜にもその趣旨を伝えます」

「…月城を倒すまでに器を見つけようってわけかしらァ?」

「…そんなところだ」

 

もし、朝比奈桜が生きていたら南雲の言った様に月城を殺すまでこの身体は借りて返すまでに別の器を見つける。

この場はそう言えば、沙姫さんと九条先輩と納得するだろう。

 

「…とりあえず、今日は解散しましょう」

「え?どうしてですの?」

「…もう18時半ですよ。これ以上はここにも迷惑がかかります」

「それもそうだな…優斗、頼むから私達が知らない所で変な事だけはしないでくれ」

「…わかってますよ」

 

…きっとこの後、メアに頼む内容を聞いたら、二人もついて行くっていうだろうな。

 

「優斗の遺骨と遺品はどうしますの?」

「…遺品は出来れば、返して貰いたいです」

 

特にスマホと犬のストラップは返して欲しい。

スマホには、輝と駿との思い出が沢山入ってる…犬のストラップは優華さんに貰った大切な宝物だ。

 

「…俺の遺骨は燃やしてください」

「…何故かしら?貴方の体でしょ?」

「月城に俺の遺骨があるのがバレたら、この遺骨を使って俺のクローンとか作られる可能性も無くはない」

「確かに…君の偽物が出てきたら…私達じゃ勝てないな…」

 

…俺の遺骨は全て燃やさないとダメだ。

月城に悪用されて俺のクローンなんて生まれたら、地獄そのものになる。

 

「でも、この遺骨はここに保管されてましてよ?勝手に燃やしては…」

「沙姫ちゃん、そこはアタシの部下と今の天条院家の力を使えば簡単に燃やせるでしょ」

「…南雲瑠偉、あなたに天条院家の力は使えなくてよ?」

「そこはお嬢様の方から劉我様にお願いして頂戴よォ!」

 

南雲は沙姫さんにお尻を振りながら言う。

…まさか、コイツ…天条院家でもこのテンションなのか?

 

「わかりましたわ。優斗の為ですもの、お父様に掛け合いますわ!」

「よろしくお願いします、沙姫さん」

 

俺は沙姫さんに頭を下げる。

 

「優斗、私達に何も言わずに身体返したりするのは───」

「…もちろん、言われなくてもわかってますよ」

 

外に出て解散する前に九条先輩は俺に釘をさしてくる。

俺の返事を聞いて安心したのか、沙姫さんと九条先輩は黒塗りの高級車に乗り込んだ。

 

「…嘘つき」

「メア、嘘も方便ってことわざもあるよ」

 

この後、俺がメアに何を頼むのか、メアは気づいているのだろう。

 

「…メア、朝比奈桜に会う為に力を貸してくれ」

「身体を返すつもりでしょ?それはダメだよ」

 

俺の言葉にメアが反対する。

 

「本当はせんぱいだって身体を返せばどうなるか、わかってるよね?」

「……」

 

何となく、わかっている…俺がこの身体を手放せばどうなるか。

 

「優斗せんぱいの身体は朝比奈桜くんの身体があったからここまで生きてこれた…バイオロイドの身体じゃ、せんぱいは生きられない」

「……」

「朝比奈桜くんの身体は完全に優斗せんぱいに適合してる…まるで本当のせんぱいの身体みたいに…」

 

普通の思念体なら、御門先生が俺の治療をした時点で気づいていただろう。

だが、俺の治療した時に御門先生は気付けなかった…それはおそらくこの身体が完全に俺に適合しているから…そしてその理由は恐らく…

 

───チェックメイトにはまだ早いぞ、冬華教官

 

───…やっと元の姿に戻ったか?優斗

 

───あぁそうだ、今から俺は時雨優斗じゃない、雨宮優斗としてあんたと戦う

 

あの時、RPGの世界での冬華教官と戦いで俺が前世の姿に戻った時に身体が完全に適合したんだろう。

 

「せんぱいは絶対に朝比奈桜くんに…身体は返せないよ…だって朝比奈桜くんはきっともう───」

「…きっともう?」

「それに美柑ちゃん達とえっちぃ事しちゃったでしょ?」

「……」

 

メアの冷たい視線が俺に向けられる。

…痛いところを突いてくるな…この真相を知らなかった、美柑達に襲われたとはいえ、俺は美柑達と体を重ねている。その責任は絶対に取りたい…でも───

 

「…メア、俺は誰かの人生を奪ってまで、幸せになりたくない」

「……」

「それに返すと言っても今じゃない…月城を殺してからだ。返すまでに俺が朝比奈桜の身体なしで生きれる方法を探せばいい」

 

朝比奈桜に身体を返すまでに必ず俺が生きれる方法を見つけ出す。

きっと何か方法はあるはず…

 

「…優斗せんぱいがなんでも言う事を聞いてくれるなら、今世の過去と向き合う為に力は貸してあげる…

「…何でも?」

「そうだよ、優斗せんぱいが何でも言う事を聞くんだよ」

 

…メアに一体どんな命令をさせられるんだか、想像できないが…これを聞かないとメアは納得しないか。

 

「…わかった、その条件を飲むよ」

「約束だからね、せんぱい…あ、でも優斗せんぱいが生きれる方法がないのに朝比奈桜くんに身体を返えして死んじゃうなら話は別だよ」

「…わかってるよ」

「じゃあ、とりあえず人がいない場所…わたしの家に行こっか」

「…え?別に他の場所でも───」

「いいから!行こっ!先輩!!」

 

メアは無理やり俺の手を引いて走り出した。

 

「じゃあ、始めるよ」

 

メアの部屋について早速お互いに向かい合う。

…別にメアの部屋じゃなくても良かっただろ。

 

「わたしの事、せんぱいの精神世界から追い出さないでね」

「わかってるよ」

 

メアは髪先を俺に向けて笑顔で言う。

 

「このサイコダイブが終わったら沢山───してね♡」

「…?待て、今なんて───」

 

メアからとんでもない事を言われた気がしたが気の所為か?

 

◇

 

メアの能力、サイコダイブで俺とメアは俺の精神世界へとやってきた。

 

「……」

「優斗せんぱい…」

 

黒いバトルドレスを着たメアが俺に話しかけてくる。

前に来た時と変わらない俺の精神世界…蘇ってくる優華さんや輝と駿との楽しかった思い出。

…でも、俺の用がある場所は此処じゃない。

 

「…行こう、メア」

「わかった…」

 

メアのサイコダイブで更に記憶の奥へと進んでいく。

前世で俺が死んだ時の記憶が過ぎ去った瞬間、俺の精神世界が急に真っ暗になった。

 

(ここは、アパートか?)

 

俺とメアの目の前に広がるアパートの一室。

そこには、幼くボロボロの朝比奈桜が部屋の端でうずくまって泣いていた。

 

「…お母さん…どうして…」

 

───…これは朝比奈桜の記憶か?

 

───多分、そうだよ、優斗せんぱい。朝比奈桜くんの過去の記憶だと思う。

 

部屋に響くすすり泣く声、その声は本来なら誰にも届かないはずだった。

 

『…大丈夫か?』

「…え?」

 

朝比奈桜の前に20代後半の男が現れた。だが、その姿は少し薄く、目を話せば直ぐにでも消えてしまいそうな程だった。

…っ…コイツは…俺か。

 

「お兄さん…誰?」

『…雨宮優斗…君は?』

「桜…」

 

朝比奈桜は目の前に現れた俺に驚きはするが怯える事なく名前を問いかけ、俺はそれに答えていた。

 

『桜くん、君はなぜ…そんなボロボロで泣いているんだ?』

「…ぼくが悪いんだ…ぼくが悪いことをしたからお母さんはぼくをぶったんだ」

 

俺の質問に弱々しく答えた朝比奈桜は、膝を抱えて再びすすり泣く。

 

『…どんな悪い事をした?』

「ごはんをこぼして、お母さんにけられて…吐いちゃった…お母さんがくれたのに…」

 

朝比奈桜は目の前の生ゴミの袋を指さす。

そのゴミ袋は明らかに人が食べれる様な物ではなかった。

 

『…虐待か…それにしてもこんな物を子供に…クズが…』

「ぎゃくたい?…え?お兄さん、どうしてそんな怖い顔を───」

『…今すぐに警察に行くぞ』

「っ!ちがう!お母さんは悪くない!ぼくが!!」

 

俺の言葉を聞いた朝比奈桜は必死に俺に向かって弁明をする。

朝比奈桜の弁明を聞いても俺の瞳の色は真っ黒で変わらない。

…研究所に侵入していた時の俺の目だ…恐らく、あの時の俺が朝比奈真夜と出会っていれば、間違いなく殺していた。

 

「おねがいっ!やめて!!」

『ダメだ、母親が来る前に此処から警察に───っ!?』

 

俺は朝比奈桜の手を掴もうと手を伸ばすが、朝比奈桜の手を掴むどころかすり抜けてしまった

 

『…どうなってる…っ!?そうか…そういう事か…』

 

手がすり抜けた事に驚いた俺は、自分の手や身体を見つめて何かに気づく。

 

『…終わったのか』

 

───…生前の最後に何があったのか、俺はこの時に思い出したんだのか。

 

───そうみたいだね、優斗せんぱい。

 

終わった…その意味は死んだという事、今の自身のみがなんなのかだいたい察したんだろう。

 

『とりあえず、君は今すぐ警察に───』

「…あれ?お兄さん?」

 

俺の身体は朝比奈桜に全てを伝える前に消えてしまった。それは、まるで″存在が安定していない様に″…

 

「あぁ、もう!イライラするわねぇ!!」

「…お母さん」

「あの女!私の愛しの人にベタベタと!!」

 

豪華で派手めな服を着た朝比奈真夜は怒り狂った様に部屋へと帰ってくる。

 

「…あんた、まだ食べ終わってなかったわけ?」

「っ!?ごめんさない!」

「ごめんなさいじゃないわよぉ!あんたみたいな道具まで私をイラつかせて!!」

 

朝比奈真夜は必死で謝る朝比奈桜にビンタをして腹を蹴るなどの暴力でストレスを発散していく。

…クズが…仮に母親でも、なんで君はこんな奴を…

 

『チッ…あのクズ女』

 

中を舞う光の塊は朝比奈真夜の暴力を見て舌打ちをする。

その瞬間″此処はもう終わり″と言わんばかりに映し出されていた記憶は全て消えて真っ暗になる。

 

───これが、俺と朝比奈桜の出会いか…。

 

───そうみたいだね、優斗せんぱい…次も見る?

 

───…もちろん見る。まだ真実はわかってない。

 

───わかった

 

メアの言葉と共に更に深い暗闇へと進んでいく。

 

『……』

「…あ!お兄さん」

 

朝比奈桜と初めて出会ってから少し経った日、朝比奈桜は俺を見ても何も驚く事はなかった。

 

『何で、助けを求めないんだ?』

「もとめる?」

「…助けてって誰かに言わないんだ?」

「…だって、お母さんが捕まっちゃうもん」

 

ボロボロになって尚、朝比奈桜は″お母さんに捕まって欲しくない″と言い続ける。

 

『…君の母親は、君を殺すつもりかもしれないよ?』

「そんなことないよ…ぼくが良い子になれば、きっと好きになってくれる』

 

朝比奈桜の目はありえもしない希望を抱いていた。

俺はそれを見て盛大にため息を着く。

 

『…馬鹿なのか?』

「お兄さんバカはダメだよ!」

 

そんな俺をダメだと指摘する朝比奈桜を見て俺は頭を抑える。

 

「お兄さんは、なんでぼくをたすけようとするの?」

『…君が昔の俺に似ていたから…』

 

母親から暴力を振るわれてボロボロになった姿がどうしても昔の俺と重なってしまった。

…俺の様になって欲しくなかった。母親を殺して、姉の様な大切な人が死んで絶望して、戦いの道に進んだ俺の様には…

 

「にてるの?お兄さんとぼくが?」

『…あぁ、だから助けたいんだ』

 

だから、この時の俺は何としてでも君を救いたかったんだ。

 

『…君はどうしたい』

「お母さんと幸せに暮らしたい」

『…それは難しい、さっきも君に暴力を加えていただろ?』

「ぼうりょく?」

『…殴ったり、蹴ったりしていただろ?』

 

俺は朝比奈桜が言葉の意味を理解出来るように言い直しながら、無理だという事を伝えていく。

 

『…これがもっと酷くなっていけば、君は死んでしまうんだ』

「お兄さん、大丈夫だよ。お母さんはほんとうは優しいから…」

『……』

 

何処までも母親を信じてやまない朝比奈桜を見て、どうすればこの子を救えるか俺は必死に考える。

 

「あぁ、もう!なんで私を見てくれないのよ!」

 

俺がどう救うか考えているとアパートの扉が開き朝比奈真夜が帰ってくる。

 

「っ!お兄さん!お母さんが帰ってきた!早く隠れて!!」

『……』

「お兄さん!行ったらダメ!」

 

思い出してきた…俺はこの時、朝比奈桜に俺が見えるなら、朝比奈真夜にも俺が見えるんじゃないか…幽霊として朝比奈真夜の前に出れば驚いて逃げるかもしれない…そう考えたんだ。

 

『…っ』

「…え?」

 

朝比奈真夜の前に立ち、視界入っても朝比奈真夜は反応を示さずに俺をすり抜けて朝比奈桜の元に行く。

 

「あんたが!全部あんたが悪いのよ!桜さんはあんたのせいで振り向いてくれないの!!」

「…うっ…ごめんなさいっ!ごめんなさい!お母さん!」

 

朝比奈桜をストレスの捌け口として殴る朝比奈真夜の前に俺はもう一度立つが、朝比奈真夜は俺にはなんの反応も示さなかった。

 

『…チッ、これじゃあ俺は本当に何も出来ない』

 

俺は無力な自分に思わず舌打ちをしてしまった。

そうだったな、俺は何も出来なかった…ありとあらゆる手を使ったが、朝比奈真夜に対しては何も意味がなかったんだった。

そしてまた、映し出されていた記憶は真っ暗となって消えてしまう。

 

───ッ…無力だな、俺は…

 

───仕方ないよ、せんぱいは思念体なんだもん

 

───…それでも救いたかった。

 

───優斗せんぱい…

 

───…メア、行こう。次の記憶を見に…

 

───…わかったよ

 

次の記憶を見る為に俺とメアは再び真っ暗な暗闇の奥へ歩き出す。

 

「僕も聞いていい!」

『…いいよ』

 

日に日にボロボロになっていく朝比奈桜を俺は見ることしかできていない…

これは…俺と朝比奈桜が出会って数ヶ月くらいの時か…

 

「お兄さんはおばけなの?」

『おばけかどうかは分からない…けど、これだけは言える。今は君にしか見えない』

 

俺は朝比奈桜を助ける為に色々と試した。

朝比奈真夜を邪魔しようとしたり、助ける為にアパートの隣人の前に姿を現しても一切反応がなかった。

本当に打つ手なしで詰みな状況…それでも諦めるつもりは全くなかったが…

 

「じゃあ、みれんっていうのはある?」

『…未練なんて言葉、よく知ってるな』

「お母さんがこの前、見てたテレビで言ってたんだ!おばけはこの世にみれんがあると生まれるってっ!」

 

朝比奈桜の言葉を聞いた俺は思わず″俺はお化け扱いか…まあ、お化けだろうけど″と静かに呟く。

 

『未練ならたくさんあるよ」

「どんなみれん?」

『…大切な人達を救えなかった』

 

無邪気な笑顔で聞いてくる朝比奈桜に俺はそう返す。

生まれ変わってもずっと後悔して俺は過去に囚われていた…何度も過去をやり直したいと…

 

「すくえなかった?」

『…まあ、俺にも色々あったんだよ』

 

この時の俺はこんな子供に俺の過去の話をしても混乱させるだけと思い過去に何があったかは話さなかった。

 

「そっか…じゃあ!お兄さんはおばけだね!」

『…そうかもしれないな』

 

朝比奈桜は″おばけってホントにいるんだね!″と笑顔になる。

 

「生まれ変わったら何がしたい?」

『…学校に行ってみたい』

 

″過去をやり直したい″と言う事は言わずに学校に行きたいと言った。

 

───あーいけないんだーせんぱい、桜くんに嘘ついたんだー

 

───別に嘘じゃない…輝から、学校の話を何度も聞いていたから憧れはすごいあった

 

あのバカに耳にタコができるくらい聞かされていたからな。

 

「学校って?」

『6歳から行く教育施設…て言うと分かりづらいな…勉強する所だよ』

「…べんきょう」

『あぁ、色んな事を知る事ができて楽しい場所らしい』

「お兄さんは行ったことないの?」

『…ない、だから行ってみたいんだ』

 

大学…高校…小学校…なんでもいい、俺は一度だけでいいから行って学校に行って学んでみたかった

 

「いった事ないのにどうして楽しい場所ってわかるの?」

『親友が教えてくれたんだ』

「…親友?」

『…一番の友達だよ』

 

この時の俺が思い出したのは、学校の話をする輝の顔…すごく楽しそうに話す輝の顔を見て俺は学校に行く事に憧れを持ったんだ。

 

『勉強に運動会やプールに林間旅行…もっと大きくなれば、体育祭や文化祭に修学旅行っていう楽しい事を皆でやる場所なんだ』

「何かわからないけど、すっごく楽しそう!」

 

朝比奈桜は俺の話を熱心に聞き嬉しそうな顔をする。

 

「お兄さん!学校に行けばぼくにも親友ができるかな!」

『あぁ、きっとできるよ』

「そっか!行きたいなぁ」

『義務教育だからね、普通なら誰でも行ける』

「ぼくでも?」

『もちろん』

 

目を輝かせた朝比奈桜は″早く行ってみたい!″と笑顔で笑う。

 

「あれ?でも、ふつうならいけるなら、なんでお兄さんは学校に行けなかったの?」

『…俺は普通じゃなかったからね』

 

母親を殺し、協会に優華さんと神父様に育てられ…冬華教官に戦いを教わり悪党を散々殺してきた俺に義務教育なんて受けられるわけない。

 

「そうだ!行けなかったんなら!次はお兄さんもぼくと一緒に行けばいいんだよ!」

『…は?』

 

朝比奈桜の思わぬ提案に俺は思わず疑問の声が出てしまう。

 

『…桜くん、俺は大人だ。それに俺が行ったら騒ぎに───』

「大丈夫だよ!お兄さんはぼくにしか見えないんでしょ!なら、学校に行ってもお兄さんを見える人はいないよ!!」

 

俺の姿が朝比奈桜にだけしか見えないなら、俺は彼について行けば、俺も学校には行ける。

どんな事をしているか実際にこの目で見る事ができる。

…まあ、最悪この時の幽霊の俺なら、一人で見に行くという選択肢もあるが、見に行っている間に朝比奈桜に何かあったら俺はまた後悔する。

 

『…まあ、確かに』

「それにぼくも!お兄さんと行きたい!!」

 

朝比奈桜のキラキラと輝いた目を見た俺も思わず笑みが出てしまった。

 

『…フッ…悪くないかもな…それに君が幸せそうに学校に通うことができるなら俺は″満足″だ』

「じゃあ!学校に一緒に行こうね!お兄さん!!」

 

もし、朝比奈桜が母親から解放されて、幸せに学校に通える姿が見れるなら俺は本当に満足だった。

全てを見せ終わったのか、俺とメアが見ていた記憶は再び真っ暗な空間へと戻った。

 

───…そんなに学校通いたかったんだ

 

───…輝がいつも楽しそうに学校の話をしてたんだよ…別に憧れてもいいだろ

 

───せんぱいって子どもっぽい所あるよねー

 

───…次、行くよ

 

───あ、逃げた!

 

歩き出す俺を″待ってよーせんぱい!″と言いながらメアは走ってくる。

そしてそのまま俺達はまた暗闇の奥へと進んで行った。

 

「こぼすなって言ってんでしょ!!なんで!なんで!言われた事ができないのよ!!」

「いたいっ!ごめんないっ!ごめんなさいっ!お母さん、ゆるして───」

「気安く母親と呼ぶなァァァァァ───」

 

俺とメアが先程まで見ていた記憶以上に朝比奈桜は激しい暴力を受けている。

 

「あんたみたいなゴミに朝食を食わせてやってるのに吐くしこぼすし…あんた!喧嘩売ってるわけっ!!」

「ごめん…なさい…」

 

身体はガリガリで傷と痣だらけ、一部の痣は骨が折れているんじゃないかと言うくらいドス黒い色をしていた。

 

「私が帰ってくるまでに片付けておきなさい!帰ってきても片付いてなかったらわかってんでしょうね!!」

「…っ」

 

殴る蹴るの暴力によって床に倒れた朝比奈桜に朝比奈真夜は脅す様に言う。

 

「朝食の処理もしっかりしなさいよっ!」

「…はい」

 

朝食と言っても先程と何ら変わらない生ゴミの山…そして朝比奈真夜に言われた通り、朝食や床の掃除をする朝比奈桜が今生きているのですら、奇跡なんじゃないかと思うほどにボロボロだった。

 

『…なんで助けを求めない』

 

…この記憶は…そうか、この記憶があの時の───

掃除が終わり部屋の角で泣いていた朝比奈桜に俺が話しかける。

 

「…たすけてっていったら、おかあさんがつかまちゃう…そんなのイヤだよ…」

 

外の世界を知らない朝比奈桜にとって母親は絶対的な存在だった。

 

『…このままだと、君はあの母親に殺される。助けを求めれば、君は助かる…だから…』

「ムリだよ…ぼくにはムリだ…だってぼくには…おかあさんしか…いないんだ…」

『…』

「…お兄さんみたいにぼくはつよくないよ」

 

泣きじゃくる朝比奈桜を俺は無言で見つめる。

 

『…近々君と母親が行く場所に、君を助けてくれる人が必ずいる。勇気を出して助けを求めろ』

「…ムリだよ」

 

俺の言葉に無理だと言って朝比奈桜はうずくまる。

…それでもこの時の俺は諦めなかった。

 

『…頼む…俺にも、もう時間が無いんだ…それにきっと、それが君が幸せを掴むなる最後のチャンスだ…』

「え?時間がない?お兄さん…それってどうゆう…」

 

俺は朝比奈桜に言うと光の粒子となって消えていく。

…俺は村雨さんと違って思念体として不完全で不安定な存在だった…それでも俺は朝比奈桜を助けたくて必死に人の形を保って彼に接してきた。

…でも、それは精神エネルギーを使い続ける…この時俺の精神エネルギーは限界に近づいていた。

 

「まってよ!お兄さん!時間がないってどうゆうこと?」

「執拗いっ!執拗いっ!何なの!?あの天馬とかいう男っ!!」

「っ!?」

 

朝比奈桜の言葉を遮るように怒りながら家に帰ってきた朝比奈真夜は、拳を机に叩きつけながら叫び出す。

 

「あーっ!もうっ!もうっ!めんどくさいっ!行ってやるわよっ!行けばいいんでしょっ!」

 

朝比奈真夜は、怯えた朝比奈桜に近づく。

何度も机に叩きつけた拳は赤く染っていて、それを見た朝比奈桜は殴られると思って身構えていた。

 

「…明日、行く場所で変な事言ったらわかってるでしょうね?」

「…っ」

「こんな感じの殴る蹴るだけじゃ済まないわよ」

「…ゴホッ…ゴホッ…ごめん…なさい…」

 

朝比奈真夜の暴力に耐えることしかできない朝比奈桜、俺はその姿を見て…

 

『…クソっ』

 

無力な自分自身と左拳を握りしめる事しかできなかった。

そして、訪れた。朝比奈桜にとって最大のチャンス。

「君が朝比奈桜くんだね」

「…はい」

 

天馬さんの前に緊張した様子で朝比奈桜は座っていた。

朝比奈真夜はついて行こうとしたようだが、他の職員に別室に連れていかれて別室で待機をしている。

 

「緊張しているみたいだね、よし!まずは色々と遊んでみようか!」

「…え?遊ぶ?」

 

怪我について聞かれると思っていた朝比奈桜は天馬さんの言葉を聞いて驚く。

…違う、緊張しているんじゃない、朝比奈桜は怯えていたんだ。

朝比奈桜にとって物心が着いてからの初めて外と初めて話す人、怯えないわけがない。

 

「…遊ぶ」

「そうだなー!まずはひらがなを書いてみようか!!」

「…ひらがな?」

「…もしかして知らない?」

「うん」

 

朝比奈桜がひらがなを知らないという事に天馬さんは″ …っ、これは…″と呟く。

 

「よし!とりあえず、鉛筆を持ってみようか!」

「…えんぴつ」

『…それだ』

 

怯えていた朝比奈桜を見ていられなかった俺は天馬さんの後ろから上半身のみ形を保った状態で出てきて朝比奈桜の前に置いてあった鉛筆に指を指す。

 

「っ!お兄さん!!」

「お兄さんかぁ!もしかして私が若く見えるのかな?嬉しいことを言ってくれるなぁ!」

 

天馬さんは自分の事をお兄さんと呼ばれたと勘違いして、朝比奈桜の目線が天馬さんの後ろの本来なら何も無い壁を見ていたことに気づかない。

 

『その緑の細いやつだ』

「えんぴつってこれ?」

『…そうだ』

「あぁ、そうだよ!桜くん!持ち方は分かるかな?」

 

″これがえんぴつ″と眺めていた朝比奈桜に天馬さん持ち方がわかるかと確認する。

 

「…分からない」

「そうか…なら、私が教えるよ」

「…っ!」

「…すまない、痛かったか」

 

天馬さんはそう言って朝比奈桜に鉛筆の持ち方を教えていくが、朝比奈桜の手にできた痣に触れてしまい、朝比奈桜は天馬さんに更に怯えていてしまう。

 

『…この指の形を作れ』

「うん」

『…そのまま持ってばいい』

「わかった」

「…桜くん?あれ?すごいよ!しっかり持てているじゃないか」

 

俺から持ち方を教わった朝比奈桜はぎこちない手だが、上手に鉛筆を持っていた。

そこから、ひらがなの書き方や算数の問題が始まっていく。

 

「これだけしか教えていないのにここまでできるなんて…桜くん!すごいね!少し教えただけでここまでできちゃうなんて!

「えへへ…お兄さんのおかげだね!」

「私は何もしていないよ!桜くんが…?桜くん、どこを見て…」

 

朝比奈桜は天馬さんに足し算が出来て褒められ、嬉しそうにヒントを出した俺を見て笑う。

 

「…これが勉強!たのしいね!お兄さん!!」

『…そうだな』

「そう!これが勉強だよ!桜くんも来年になったら───」

 

朝比奈桜は俺を見て話しかけているのに天馬さんは気づかずに話す。

そして、緊張もほぐれたと感じた天馬さんは本題に入った。

 

「桜くんその傷どうしたの?」

「…ころびました」

「…転んだだけじゃそんな大怪我には、ならないんじゃないかな?」

「ころんだんです」

 

天馬さんの言葉に朝比奈桜は頑なに転んだと主張する。

 

『…桜くん、此処しかないんだ…君が幸せになる方法は…』

「……」

「…桜くん、お母さんには言わないだから安心して本当の事を言ってくれ、このままだと君は不幸に───

「お兄さん、ぼくは今、幸せだよ?」

 

この朝比奈桜の言葉は間違いなく俺に向けられたもの…

 

『…何を───』

「ここまで生きてこれたのは、お母さんのおかげだし、生きてこれたからお兄さんにも会えたそれだけでぼくは″満足″だよ」

「満足か…桜くんの母親はね───」

「お母さんは悪くない…ぼくがころんだだけ」

 

天馬さんに視線を戻した朝比奈桜は母親は悪くない…転んだだけだと言う。

そして母親は悪くないと言う一点張りは10分ほど続いてしまった。

 

「…桜くん」

「お母さんはなにも悪くない!」

「…そうだね、お母さんは何も悪くないよ…そろそろ、お母さんの元へ戻ろうか」

『…っ』

 

朝比奈桜の母親は悪くないの一点張りにこれ以上何も引き出せないと判断したのか朝比奈桜を朝比奈真夜のいる別室へと帰してしまう。

 

『…クソっ』

 

朝比奈桜は最後のチャンスを掴まずに終わってしまった。

そして…ついに運命の日がやってくる。

 

そしてその運命の日に俺はこの世界に生まれ変わった答えがある。




長くなるので分けます。

誤字報告とお気に入りありがとうございます。
そして私は盗まれた自転車を諦めて新しい自転車を買います。

追記です。
次回の投稿の時にタグを追加します。よろしくお願いします。
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