※この作品はR-18です。

ToLOVEる 生まれ変わった意味を探して   作:雪だるま2世

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Things entrusted to me~生まれ変わった理由~

 

 

朝比奈桜は最後のチャンスを掴まずに終わってしまった数日後。

 

『……』

「…あ…お兄さん…この前はごめんね…?お兄さんがせっかく助けてくれようとしてたのに…」

 

ぼーっと遠くを眺めてぐったりしていた朝比奈桜は、俺に気づいて謝罪する。

何時も俺が出てくると嬉しそうな反応をしていた朝比奈桜の面影がこの日はなかった。

 

『…謝らなくていい…それよりもどうした?』

「どうしたって…何が?」

『ぼーっとしているし、顔色が悪い』

「…そうかな?ぼくはふつうだよ…きっとお兄さんの気のせいじゃない…?』

 

俺は明らかに様子のおかしい朝比奈桜に聞くが、普通と返されてしまう。

 

(痣だらけでやせ細って皮と骨しかない朝比奈桜の身体…ぼーっとしていて顔色が悪い…朝食は───)

 

朝比奈桜の状態を確認して、頭の中で必死に考える。

 

『…っ!?まさか!栄養失調か!!』

 

朝比奈桜の病状が栄養不足のサインに似ている事から、朝比奈桜は栄養失調の可能性があると判断した俺は朝比奈桜の部屋を出て必死に周りに食べれそうな物がないかを探す。

冷蔵庫の中をすり抜けて確認するも食材は何も無く、棚や引き出しなどもすり抜けて確認したが、食べれる物は見つからない。

 

「さぁ!上がって!桜くん♡」

「お邪魔しまーす」

 

俺がキッチンで食べ物を探していると、朝比奈真夜に桜と呼ばれた男を連れて家に帰ってきた。

 

「なぁー真夜ちゃん、前みたいに今晩真夜ちゃんの相手をすれば、800万のシャンパン入れてくれるんだよな?」

「えぇ、もちろんよ、貴方を勝たせる為にシャンパンを入れてあげる」

 

桜くんと呼ばれた男の格好は、高級な黒色のスーツとその下に赤色のシャツを着ていた。

…コイツは…あぁ、そうだコイツだ…

 

───せんぱい、この男の人って…もしかしてせんぱいの記憶で見た時雨春馬って人の…

 

───あぁそれで、合ってるよ。このクズは時雨桜、春馬さんの兄で春馬さんと楓さんの人生をめちゃくちゃにした男だ。

 

俺の記憶を見たメアもコイツが時雨桜だと、気づいたらしい。

 

「なら、早くやっちゃおうよぜ?真夜ちゃん」

「…する前に見てほしいの物があるね」

『…桜くん?それに…見てほしい物だと…まさか!?』

 

朝比奈真夜が時雨桜に何を見せようとしているのか、何をしようとしているのか察した俺は、急いで朝比奈桜の元へ向かう。

 

「おっ!何!もしかしてプレゼントとか?」

「えぇ、最高のプレゼントよ?」

 

俺が壁をすり抜けて朝比奈桜の部屋に戻るよりも先に朝比奈真夜が部屋の扉を開けてしまった。

 

「…お母さん…」

「…え?何、このボロボロでガリガリなガキンチョ…もしかして真夜ちゃん…子供いた感じ?」

「この子供はね…私と桜くんの子よ?」

「…は?」

『ッ!?』

 

この時の俺は朝比奈真夜の言葉を聞いて、前世で桐生夏樹と初めて会った時と状況が重なった。

 

「ちょ…ウケる…何言ってんのさ…オレと真夜ちゃんの子供って」

「本当に貴方の子よ?」

 

前世と酷似しすぎた状況、そして朝比奈真夜が話せば話す程、俺が殺した母親の姿が朝比奈真夜に重なってしまう。

 

「5年前、今日みたいにワインを入れてあげるって言ってセックスしたでしょ?その時に授かったの」

「い…いや!その時、ゴム付けてたっしょ!ガキが出来るわけ───」

「コンドームの先端に小さな穴を開けたのよ」

「お…おい…嘘だろ…」

「本当よ?証拠もある」

 

朝比奈真夜が時雨桜に見せたのはDNA検査の結果用紙、そして記載された内容は99.9パーセント一致という文字。

 

「この子は出来は悪いけど…私達の愛の結晶」

「…嘘だ…ありえねぇ…」

「だから、今桜くんが結婚しようとしてる女と別れて?」

「ッ!?なんでその事を知って!?」

「仕事が終わった桜くんのあとをついて行ったの」

「それって犯罪じゃねーか!!」

 

時雨桜は両手の拳を握りしめて大声で叫ぶ。

壁の薄いアパートだ、時雨桜の叫び声は隣の部屋にも聞こえていただろうな。

 

「ざっけんな!オレはアイツと結婚すんだよ!誰がテメェなんかと!!」

「いいの?桜くんに子供がいるって彼女さんやお店にバラしちゃおうかしら…」

「なっ!?」

「それにお店とは関係ない所で、こんな事やってるなんてバレたらホストやっていけないんじゃないのかしら?」

 

…もし、この時の俺が実体があって相手に触れる事ができたなら、俺はきっとこの二人を殺していた。

 

「あの女と別れて、私と結婚する…それ以外、桜くんに選択肢はないのよ?」

 

悪魔の様な笑みを浮かべて時雨桜に近づく朝比奈真夜。

 

「…ざけんな」

「なぁに?聞こえないわ?桜くん」

「ふざけんなァァァァァ!!!」

「キャッ!?」

 

時雨桜は急に叫びだし、朝比奈真夜を思いっきり殴り飛ばす。

 

「痛い…痛いじゃない…」

「オレは!お前なんかと結婚なんて死んでもゴメンなんだよ!クソ女!!」

「あぁそう!なら、この事はすべてバレしてやるわよ!!」

 

倒れた朝比奈真夜は、ポケットに入っていた携帯を取り出して何処かに電話をかけようとする。

 

「させると思ってんのか!クソアマ!!」

「キャッ!?痛いっ!辞めて!!」

 

時雨桜は激怒して倒れた朝比奈真夜に馬乗りになって殴りまくる。

 

「クソが!クソがァァァァ!!」

「……」

 

殴られ続けた朝比奈真夜は次第に動かなくなって行った。

 

「お母さんっ!」

『ダメだ!桜くん!逃げろ!このままだと君まで!』

「…あぁ!まだ残ってたなァ!目障りなガキが!!」

「…っ!」

 

俺の叫びは意味をなさず、時雨桜は朝比奈桜の顔を殴り飛ばす。

 

『ッ!桜くん!!』

「…うぅ」

「クソガキが!死ね!死ね!」

 

理性のタガが外れた時雨桜は朝比奈桜の腹部を何度も蹴り続ける。

女性の蹴りと違って男性の本気の蹴り…それを今の朝比奈桜が耐えられるはずない。

 

『…クソっ!』

 

俺は何度、時雨桜を止める為に手を伸ばしてもすり抜ける。

 

「…はぁ…はぁ…ハハハ…恨むんなら…お前を産んだ母親と…生まれてきた自分自身を恨むんだな」

「…ぅ…ぁ」

 

息が絶え絶えになるほど蹴り続けた時雨桜は朝比奈桜に笑いながら言う。

 

「ゴホッ…ゴホッ…グフッ…」

『桜くん!』

 

俺は口から吐血した朝比奈桜を見て、急いで朝比奈桜の元へ駆け寄る。

だが、朝比奈桜の身体に手を伸ばしても、俺の腕はすり抜けるだけ…

 

『…ッ!身体が…』

 

そして、俺の身体も既に限界が来ていた。

身体が薄くなり、人の形を保つことができず、魂だけの様な丸い人玉になる。

 

「…お兄さん…使っていいよ…僕の身体」

『は?何…言ってるんだ?』

 

朝比奈桜の言葉に俺は驚く。

 

「お兄さんが…ぼくの中に入れば…お兄さんは…もう一度生きられる…そんな気がするんだ…」

『ふざけるな!君の身体だ!君の人生だっ!!最後まで諦めずに───』

「でも…みれんがあるんでしょ?だから僕の身体、全部あげるよ、お兄さんに…」

『ッ!?何言って!!』

 

確かに俺には沢山未練がある…でも他人の身体を使ってまで俺は生き返りたくない。

そう思った俺は朝比奈桜の提案を断ってこの状況をどう乗り越えるか考えようとした時だった。

 

「ッ!まだ生きてんのかよ!クソガキ!!」

 

朝比奈桜が生きていると悪くないった時雨桜は机に置いてあった灰皿を持って朝比奈桜の元へと近づいていく。

このままだと灰皿が朝比奈桜の頭に直撃する、そうなれば、今の朝比奈桜は間違いなく…

 

『……っ!』

 

俺は朝比奈桜の身体の中に憑依して灰皿を避ける。

 

「な…なんだよ!避けてんじゃねえよ、クソガキが!」

「…黙れクズ野郎!」

「…グフッ」

 

時雨桜を殴り飛ばした俺は目を閉じた。

 

 

◇

 

過去の俺が目を開けるとそこは今の俺が見ている様な暗闇の精神世界が広がっている。

 

『…っ!居た!!』

「……」

 

暗闇の中で朝比奈桜の形を保った魂の様な物が少しずつ消滅していく。

 

『ダメだ!君は生きるんだ!』

 

このままだとマズイと本能的に判断した俺は、暗闇に消えていく朝比奈桜のに必死に手を伸ばすが届かない。

 

「…ありがとう、最期まで、ぼくといてくれて…ぼくを心配してくれて…嬉しかった」

『最期じゃない!君は!幸せになっていない!!だから…俺の手を掴め!!!』

 

朝比奈桜の消えかている魂にあともう少しで手が届く…そんな時、謎の衝撃と共に俺の視界は真っ暗になり意識を現実世界へ戻される。

 

 

◇

 

 

「クソガキが!オレの顔を殴りやがって!!」

「……」

 

朝比奈桜は頭から血を流し、無言で床に倒れ込む。

時雨桜は朝比奈桜を殴ったと思われる血濡れた灰皿を右手に持っていた。

 

「やっと死んだかよ…これで─────ガハッ…」

 

時雨桜は急に口から血を吐き出した。

 

「…は?なんだ…これ…」

 

違和感を感じた時雨桜は手で腹部を触ると腹部を触った手には大量の血がついていた。

 

「…私は貴方が大好きなの」

「っ…お前…まだ生きて…」

 

朝比奈真夜は死んでおらず、時雨桜が朝比奈桜を殴っていた時に無言で立ち上がり、リビングから持ってきた包丁で時雨桜の腹部を後ろから刺していた。

 

「桜くんが私のモノにならないなら…もう貴方なんて…必要ないわ」

「…クソ女───グフッ…」

「…死ね…出来損ないのガキと一緒に…死ね!!」

 

時雨桜が全てを言い終わる前に包丁を抜いて今度は胸に突き刺した。

胸を包丁で貫かれた時雨桜は意識を失う様に倒れ込み…

 

「…死ね!死ね!死ね!!死ね─────」

 

朝比奈真夜は倒れた時雨桜の上に股がって何度も包丁を指し続けた。

 

「……」

「あんた…まだ生きてたわけ?」

 

フラフラと頭を抑えながら″俺″は立ちがる。

 

「あんたのせいで桜くんを振り向かせる事ができなかったじゃない」

「……」

「それどころか見なさいよ!私の桜くんは滅多刺しよ!!」

 

情緒不安定が不安定になった朝比奈真夜は死んだ時雨桜に指を指す。

 

「全部…全部!お前のせい!お前が出来損ないだから!お前が桜くんに認められなかったから!お前が───」

 

朝比奈真夜は狂ったように頭を掻きむしりながら″俺″に向かって叫ぶ

 

「お前なんて…おまえなんて産むんじゃなかった」

 

刃物を持った朝比奈真夜が俺にゆっくり近づいてくる。

 

「お前を産んだのは桜くんが私から離れないようにする為だったのに…」

「…っ」

 

朝比奈真夜の言葉を聞いた″俺″は頭を抑える。

 

「お前のせいだ!お前の…全て!お前のせいだ!!」

 

朝比奈真夜のこの言葉を聞いて俺は前世を思い出した。

…だが、朝比奈桜との記憶は思い出せなかった。

 

「止まれ!警察だ!」

「っ!急げ!あの子供を保護しろ!」

 

朝比奈真夜が俺を包丁で刺そうとしたタイミングで警察が部屋に侵入してきて、俺は警察に保護された。

…此処から先は…覚えてる。

この後、俺は春馬さんに利用される為に拾われて…美柑やリト達と出会ったんだ…

 

「…これが俺と朝比奈桜の記憶」

「大丈夫?優斗せんぱい」

「…大丈夫だよ、メア」

 

俺とメアが見ていた記憶から元々居た真っ暗な空間に切り替わるとメアが俺に話しかけてくる。

俺は朝比奈桜を救えなかった…それどころか彼に貰ってしまった…この身体を…

 

『ひさしぶりだね…お兄さん』

「「ッ!?」」

 

後ろからさっき記憶で聞いていた声が聞こえてくる。

 

「…あぁ、久しぶりだね。桜くん」

 

俺とメアが振り返るとそこには11年前と同じ姿をした朝比奈桜が立っていた。

…やっぱり居たんだな、俺の中に…

 

「…生きてたんだな」

『…?生きてた?それは違うよ?お兄さん』

「…は?」

 

…桜くんは何を言っている?

 

「…君は何を言ってるんだ?だって…今こうして目の前に…」

『ぼくは生きてないよ…ぼくはたましいのかけら…

「…魂の欠片?」

 

生きていない?それに…魂の欠片だと?…嘘だろ?

 

「嘘じゃないよ、優斗せんぱい…朝比奈桜くんはもう既に死んじゃったんだよ…ここに居るのは魂の残滓…ただの記憶…」

「まって…記憶?じゃあ、何で朝比奈真夜を殴ろうとした時、この身体は動かなかった?」

「魂の残滓だった朝比奈桜くんが最後の力を使ってせんぱいの身体を止めた…違う?」

『せいかいだよ…赤毛のお姉さん』

 

桜くんはメアが言った言葉を正解だと笑顔で答える。

…待て、生きていないなら…俺は君にこの身体を…返せない…

 

『そうだよ、お兄さんはぼくに身体を返せない』

「ッ!」

 

俺の考えを分かっているかの様に朝比奈桜は言う。

 

『…それにお兄さんはその身体を返す必要ないんだよ?』

「……」

『その身体はもうお兄さんの物だから、最後までみれんが無いように使い切って欲しいんだ』

 

…未練が無いように使い切って欲しい…なら君にはなかったのか?

 

「…桜くんは満足だったのか?」

『…え?』

「桜くんは、あの人生で未練はなかったのか?」

 

朝比奈真夜にサンドバッグの様に虐待されて…人生を狂わされて…望んだ幸せを掴めずに時雨桜に殺された…それで本当に満足なのか?

 

『満足だよ…だってぼくには、最期までお兄さんがいてくれたもん』

「ッ!?」

『最後の一年間、お兄さんはぼくといてくれて…たくさんお話をしてくれた…なんどもぼくを助けてくれようとしてくれた』

 

俺は桜くんを助けようとしただけだ…実際は助ける事すらできなかった───

 

『それでも!すっごくうれしかった!』

「…!」

…ッ…そんな風にずっと笑っていて欲しかった。俺は君を救ってあげたかった…例え、それが俺のエゴでも…それで桜くんが笑って楽しい人生を過ごせるなら、それで───

 

『だから、お兄さんがぼくを助けてくれようとしてくれたみたいに…今度はぼくがお兄さんに何かしてあげたかったんだ』

「…それで桜くんの身体を?」

『そうだよ!もう一回生まれ変わってみれんがない人生をすごしてほしかった!』

 

…俺は優華さんや輝達だけじゃなくて…桜くんにも幸せになって欲しいって望まれていたのか?

 

『うん!もちろん!!』

 

桜くんは俺に向かって子供らしい無邪気な笑顔で言う。

 

『それにお兄さんに身体をあげて良かったって思ってるんだ!』

「…それは、何で…」

『だって!お兄さんはその身体でたくさんの人を笑顔にして、たくさんの人を助けてた…』

「…桜くん」

『だから、僕の身体をお兄さんにあげたのは、まちがいじゃなかったよ』

 

無邪気に笑う桜くんの身体が光り始める。

 

『そろそろ時間だね』

「…消えるのか?」

『違うよ、帰るんだよ』

 

桜くんがそういうと下半身から少しずつ消滅光の粒子となって消滅していく。

 

『ぼくを助けようとしてくれてありがとう、お兄さん』

「っ…桜くん!」

 

消えかけているというのに、俺を安心させる様に笑顔で言い続ける。

…俺も伝えよう…きっとこれが最後だから…

 

「…桜くんのおかげで俺は皆と出会えた…もう一度心から笑う事が出来た…この身体で今度こそ、大切な人達を守ることができた」

 

消えていく桜くんに俺は必死に想いを伝える。

…桜くんが俺に身体をくれたから、俺は皆と出会えた…もう一度やり直すことができたんだ…

 

「ありがとう」

 

俺は桜くんに笑顔でありがとうと感謝を伝えた。

 

『ありがとう…そんな言葉、お母さんにも言われなかったなぁ…」

 

笑っていた桜くん目から、一筋の涙がこぼれ落ちる。

 

『…お兄さん…今度はお兄さんが幸せになる番だよ!だから…いっぱい幸せになってね!』

「…あぁ、わかった」

 

桜くんは俺の返事を聞いて満足そうに消えていった…

 

「ありがとう…桜くん、俺は君の事をもう絶対に忘れない」

 

桜くんが消えた瞬間、真っ暗な空間に亀裂が入り、全てが終わったと言わんばかりに空間は消滅した。

 

 

◇

 

「……」

 

目を開けるとそこは精神世界ではなく…精神世界に行く前に居たメアの部屋だった。

 

「…メア」

「何、せんぱい…」

「…桜くんは幸せだったのかな?」

 

俺は目の前に居たメアに思わず聞いてしまう。

…こんな事をメアに聞いても…意味ないのにな…

 

「うーん、朝比奈桜くんが幸せだったかわたしもわからないけど…少なくとも、優斗せんぱいと一緒に居た一年間は幸せだったと思うよ?」

 

メアは″だから───″と言って俺に近づいてくる。

 

「せんぱいが、そんな辛そうな顔する必要ないと思うよ?」

「でも───」

「優斗せんぱいは朝比奈桜くんの為に最善を尽くしてた…もし、今のせんぱいが朝比奈桜くんの為にできる事があるとしたら…それは───ちゅっ♡」

 

俺の首に手を回したメアはそのまま引き寄せて俺の唇にキスをする。

 

「───…朝比奈桜くんの分まで幸せになる事だよ」

 

優しいソフトタッチなキス…まるで俺がナナを落ち着かせる為にしたキスみたいな…

 

「…そうだな、俺は桜くんの分まで幸せになる。」

 

託された人達の為にも…幸せになって欲しいと願ってくれた人達の為にも…俺は…幸せになる。

 

「ありがとう、メア。おかげでやっと未来に向かって歩けそうだ」

「そっか…じゃあもういいよね?せんぱい」

「…?」

 

…じゃあもういいよね?それってどういう意味だ?

メアの言葉の意味がわからず、俺は首を傾げる。

考えている俺の事など、お構いなしと言わんばかりにメアは告げた。

 

「もうハーレムの事とかえっちぃ事で迷わないね」

「……」

「たくさんえっちぃ事ができるね!せんぱい♡」

 

…嘘だろ?まさか、メアまで俺のハーレムに入るつもりか?

 

「…メア、とりあえず…夜ご飯食べない?」

「えー別に夜ご飯なんて食べなくても───っ!もしかして!わたしとこれから、たくさんえっちぃ事をするから英気を養う為に…素敵!」

「…ほら、もう20時だし早く買い物に行くよ」

 

素敵とか言ってる場合じゃない…早く帰らないと美柑に…

 

「あ!買い物行かなくても大丈夫だよ!せんぱい♡」

「…何故?」

「わたしがもう買ってきてるから!!」

 

メアはそう言って笑顔で冷蔵庫を開ける。

…なるほどな、最初からこうなる事を想定して食材を買ってきてたな?

 

「逃がさないよ、せんぱい♡」

 

俺がメアの家に来た時点で詰みだった。

…とりあえず、腹減ったし…夜ご飯作るか。

…逃げようとしてもメアに捕まるのが落ちだろうから…俺は考えるのをやめた。

 

「…それにしてもこの食材。もしかして、シチューの材料?」

「フフ…正解ー!さっすが優斗せんぱい!」

 

いや、シチューのルーまであるし、さすがにこれは誰でもわかるだろ…

 

「はい!エプロンだよ!」

「…何故、エプロンが二つあるんだ?」

「え?決まってるじゃん…わたしも作るからだよ?」

 

俺に黒いエプロンを渡したメアは、ピンク色のエプロンを身につける。

…え?メアって料理とかしないんじゃ…

 

「優斗せんぱい″私にも″料理を教えてよ」

 

″私にも″という言葉が何処か引っかかったが、俺はそれよりも…

 

「意外だね…料理に興味はないって思ってた」

「…別に、やってみたいって思っただけだよ」

 

…他にも理由が絶対あるだろうが、メアが地球の文化に興味を持ってくれたならそれでいいか。

 

「ほら!そんな事より、まずは何をすればいいの?せんぱい」

「そうだね…じゃあ、野菜の皮むきをして切ってみようか」

 

メアの部屋の家具選びの時に買った調理器具からメアにピーラーとじゃがいもを渡す。

 

「これ!どう使えばいいの?」

「ん?あーこれは───」

 

俺はメアにピーラーと包丁の使い方を教えながら一緒に野菜を切っていく。

…なんだ?この感じ…何か…凄く懐かしい…

 

───…カレンちゃん、今から一緒にパンを作らない?

 

───え?

 

───美味しいパンの作り方知ってるからさ

 

───ホントに!?

 

…あぁ…そうだったな…俺はカレンちゃんにも…いや、カレンちゃんだけじゃない…

 

───私も優兄と一緒に料理を作りたい!

 

───急だね、なんかあった?

 

───優兄と料理がしたいからできるようになりたい

 

───美柑は右利きだから、野菜を着る時は左手を猫の手にして───

 

───切れたよ!優兄!!

 

───すごいね、美柑。俺よりもセンスあるよ

 

急に料理を作りたいと言い出した美柑にもこうやって教えたんだったな。

…美柑の喜ぶ顔が、あの時のカレンちゃんと重なって…俺は今度こそ守り抜くって決めたんだった…

 

「……」

「…せんぱいはやっぱり、重ねてたんだ…美柑ちゃんとカレンちゃんって子を…」

 

俺の記憶を見たメアは気づいた…俺が美柑をカレンちゃんと重ねていた事を…

 

「カレンちゃんを守り抜けなかった分、美柑ちゃんを幸せにする…守り抜く…せんぱいはそう決めたでしょ?だから、アゼンダの時にせんぱいはあんなに怒ってた…ちがう?」

「……」

「…いいなぁ…美柑ちゃんは愛されてるなぁー」

 

心の底から羨ましいそうにメアは言う。

…確かに重ねてた…でも今は──────

 

「確かに俺は美柑をカレンちゃんと重ねてた…でも、今は違う…」

 

いつの間にか美柑に対する感情が変わっていた…いつからかカレンちゃんの面影を見なくなった…そして、いつの間にか───

 

「美柑は俺の大好きな人だ」

 

美柑は大切な…大好きな人になっていた…俺はいつの間にか美柑に恋をしていたんだ。

 

「他のみんなは?」

「他の皆にも、美柑と同じ感情を抱いてる」

「…じゃあ、わたしは?」

 

野菜を切っていたメアの手が止まり、不安そうな目で俺に問いかける。

…俺がメアをどう思っているか?

メアは最近出会ったばっかりで最初は謎の多い子だと思ってた…でも、違った。

ヤミと一緒で普通の女の子でナナと楽しく笑っていて…俺が桜くんとの過去と向き合う為の力を貸してくれた…

 

「…好きだよ、メアの事も」

「ホント?」

「今のが嘘をついた様に見えるなら、トランス能力で確認してみるか?」

 

俺は″メアなら俺の感情を見るのなんて朝飯前だろ?″と言いながら、切った野菜を鍋に入れる。

 

「…わたしも…せんぱいの事が好き…」

「……」

「優斗せんぱいは、わたしに新しい生き方を教えてくれた…孤独だったわたしをせんぱいが暗闇から救い出してくれた」

 

メアは赤面しながら″好きにならないわけないじゃん…″と小さく呟いた。

 

「…だから、わたしもせんぱいのハーレムに入れてよ」

 

野菜を入れた鍋が沸騰しているのを二人で見ながら、独り言の様にメアは呟いた。

 

「メアがハーレムで良いなら、俺は何も言わないよ」

「…っ!じゃあ!」

「…俺は構わない」

 

俺がそう言った瞬間、ぱっと笑顔になったメアが横から抱きついてくる。

 

「…危なっ!?メア、今は火が着いてるから…」

「だーいすき!せんぱい♡」

 

首に手を回して抱きついてきたメアは俺の頬へキスをする。

…ダメだ、全く話を聞いてない。

 

「…ちなみに後ルーを入れてかき混ぜれば完成なんだけど、入れてみる?」

「え?わたしが入れていいのー!」

 

メアは嬉しそうにシチューのルーを入れながらかき混ぜる。

…結局、野菜の皮むきと切り方しか教えてないな…まあ、いいか。

 

「わぁーこれがヤミお姉ちゃんが食べてたシチュー…素敵!」

 

完成したシチューとパンを俺とメアでテーブルに並べて席へと着くとメアは目を輝かせながら言う。

…確かに前にヤミとデートした時に作ったけど…一体何処まで俺の記憶を見たんだ?まさか、美柑達と身体を重ねた所も見たんじゃ…

 

「いただきまーす!」

「…いただきます」

 

…多分見られてるな…これ以上考えるのは、辞めておこう…何も食べてないに胃が痛くなる。

美味しそうにシチューとパンを食べるメアを見ながら、俺は考えるのをやめた。

 

「ごちそうさま、おいしかったよ、せんぱい」

「…そうか、それは良かった」

「わたし、そろそろ″デザート″が食べたいなーせんぱい」

 

…デザートね…ディナーの次はデザートですか。

 

「…食べたい物は?」

「わたしは優斗せんぱいが食べたいなー♡」

 

そう言ってメアは黒いバトルドレスを脱ぎ始めた。

 

「あ!でもせんぱいがわたしを食べるのもいいかも…素敵!」

「……」

「あ!そうだ!せんぱい、さっき約束したなんでも言う聞いてくれる話覚えてるよね?」

「…覚えてる」

 

この一時間後、俺はあの時、メアに力を借りるとはいえこんな約束をしなければ良かったと後悔した。

 

「わたしの事…たくさんぺろぺろしていっぱいえっちぃ事をしてよ、優斗せんぱい♡」




余談ですが、もし朝比奈桜が母親から解放されていれば、優斗は成仏していました。
ただその場合、朝比奈桜は優斗と同じ様な道を辿ることになるので時雨春馬の計画に巻き込まれてタイムレインズ辺りで詰んでるかもしれないですね。
まあ、そうなったら場合、クラウンが好き放題やっているので、今頃物語的には地獄絵図です。

次回R18です。
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 ある時、着せ恋が漫画やアニメとしてある男が五条新菜に転生していた!?▼ 転生前に神様のような人に会っていた気がするが...?▼ 着せ恋の世界の両親が亡くなったことで生まれた歪な独占欲と欲望が合わさり、杜撰なハーレム計画を立てる。▼ 与えられた(貰った)記憶がないまま”転生特典”を無自覚に行使してハーレムを作る!!▼ ↑作者がヤりたいようにやるためと、ストー…


総合評価:3132/評価:8.55/連載:27話/更新日時:2026年10月20日(火) 21:45 小説情報

アストレア・ファミリアの盾使い(作者:ナカタカナ)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

 【最強】と【最凶】が黒龍に敗れて訪れた暗黒期。死の七日間と呼ばれる大抗争の一年前・・・正義の眷属【アストレア・ファミリア】はギルドより依頼(クエスト)を要請された。オラリオを離れ海を渡った先にある、廃都に眠る宝の調査と回収。▼ 誰もいないはずの孤島にいたのは一人の少年。▼ 「お姉さんは誰?」▼ 「私はアリーゼ・ローヴェル! あなたは?」▼ 「僕はギャラハッ…


総合評価:2746/評価:8.68/連載:25話/更新日時:2026年09月15日(火) 21:44 小説情報


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