搾精都市神浜~魔法少女たちのエッチな短編集~ 作:黒蓮/クロハス
ホテルの一室。ベッドサイドのランプが落とされた橙色の灯りが、白いシーツの皺をやんわりと舐めていた。空調の唸りは控えめで、防音された壁の向こうから、廊下を歩く誰かの足音が遠く滲んでくる。それきり、室内に音はない。
おじさんは、バスローブの帯を緩く結び直した。シャワーは済ませてある。腹回りに緩んだ脂のラインも、薄くなりかけた頭頂部も、もはや隠す気はない。むしろ、これから来る相手に「いつもの自分」を提示するつもりで、ベッドの縁に腰を下ろし、片手をだらりと膝に預けた。指先は少しだけ汗ばんでいる。
慣れているはずだった。何度目かもう数えていない。なのに、待ち時間というものは、毎度この男に同じ熱を抱かせる。心臓のすぐ下のあたり、胃の上あたりに、ぬるい湯のような期待が溜まっていく。
——あの娘が、もうそろそろ来る。
壁にかけた時計の秒針が、こつ、こつ、と歩を進めている、ちょうどそのときだった。
扉の外で、軽い足音が止まる。
こん、こん。
ノックは二回。短く、迷いがない。
「おっちゃーん、開けてくれー」
扉越しでも、その声は明るい。営業の作り声というよりは、近所の路地で部活帰りに会ったクラスメートを呼ぶみたいな声だった。おじさんは小さく鼻で笑って、立ち上がる。
ドアノブを引く。
廊下の白い光を背負って立っていたのは、十咎ももこだった。
神浜市立大附属の制服。白いセーラーに赤いスカーフ、深紅のチェックのミニスカート。両腕には黒のアームカバー。高い位置で結んだ金色のポニーテールが、背中の上のほうでふわりと跳ねている。前髪の隙間から覗く瞳は、深い紫。少しだけ目尻を下げた、いたずらっぽい笑みが、廊下の冷たい光の下で、じわっと熱を帯びる。
「よっす、おっちゃん。今日もご指名どうもー」
「おう、ももこ。入れ」
「お邪魔しまーす」
ぺこりとも頭を下げず、ももこは肩で扉を押すようにして部屋に入ってきた。スカートの裾がふわりとめくれかけて、太腿の白さが一瞬、橙色の灯りに浮かぶ。すぐに裾は重力に従って戻り、太腿はまた制服の中へ仕舞われた。
「うっわ、エアコン効きすぎー。寒くないのかよ、その格好で」
「中は熱いんだよ、これからな」
「あー、はいはい。出ました出ました、十八番」
あははっ、と肩を揺らしてももこは笑う。背中のポニーテールが大きく弾んだ。靴を脱ぎ捨てて——揃えるのは申し訳程度——ベッドのほうへ歩み寄ってくる足取りには、客と嬢の距離感がまるでない。何度も同じ部屋でお互いを脱がせ合った男女の、慣れきった粗雑さがあった。
「あ、お水もらうな。喉カラカラなんだよ、来る前にスポドリ飲み干しちまってさ」
「好きにしろ」
ミニ冷蔵庫からペットボトルを引き抜いて、ももこはキャップを開けた。喉を反らせて、ごく、ごく、と二口。ポニーテールの根元のあたりが、嚥下に合わせて小さく上下する。空調の風が金色の毛先を撫でて、それが頬の横でちらちらと光った。
「ぷはー、生き返るー。んで、今日はどこから始める?」
「決まってんだろ、いつもどおり、まずはそこ座らせて舐めさせろ」
「ほんっと、始まりはこれだよなぁ、毎度毎度」
ペットボトルの口を指でとんとんと叩いて、ももこは肩を竦めた。呆れたような声色だが、紫の瞳の奥には隠す気もない興味と慣れと、ほんの少しの楽しみが浮かんでいる。
「ま、いいけどさー。アタシも、チンポ見ないと始まった気がしねえし」
「言うじゃねえか」
「事実だろ?」
ベッドの縁、おじさんが座っていたところに、ももこは隣り合うようにすとんと腰を下ろした。スカートの裾が薄く太腿に張り付く。膝の角度をくっつけるように揃えてから、わざとらしく片膝だけをこちらに寄せてくる。スカートの内側の影が、橙の光の中でふわりと深くなった。
おじさんは、その動きを見逃さない。すぐ横に座り直すと、片手をためらいなくももこの腰のラインに置いた。
「相変わらず細いな、ここ」
「腰だけはな。下はデカいって、いつも言うじゃん」
「言うな。だってデカいだろ」
「うっせえよ」
軽く肘で小突きながらも、ももこは身体をどけなかった。それどころか、おじさんの掌の動きを誘うように、上半身をほんのわずかに前へ倒す。制服のセーラーの胸元が、その傾きでゆるく持ち上がった。
手のひらは腰のラインから上へ滑る。セーラーの脇腹を撫で、肋骨の弧をなぞって、胸のふくらみの下側に到達した。指の腹で下からすくいあげるように、布越しの肉を持ち上げる。
「……ん」
短い呼気が、ももこの唇から漏れた。
「下からはずるいんだよ、下からは」
「ずりぃのが好きなんだろ、お前」
「うっせーって」
言いながら、ももこは両手をベッドにつき、上半身を斜めにおじさんへ預けた。胸の重みが布越しに男の手に乗ってくる。控えめではない、けれど巨乳というほどでもない。しっかりとした弾力をもった膨らみが、おじさんの手のひらを内側から押し返してきた。
「揉んでいいぞ、減るもんじゃねえし」
「言われなくても揉む」
布の上から、男の指は遠慮なく形を確かめにいった。下から、横から、頂点から。軽く指先を立てて表面を撫でると、布の薄さの向こう側で、小さく芯がこわばる気配が伝わってくる。乳首だ。下着の内側で、橙色の光の届かない暗がりで、それは早々と硬くなっていた。
「おっ、もう立ってんじゃねえか」
「アタシだって人間だぞ、おっちゃん。揉まれたらそうなるんだよ」
「そう怒んなって」
言いながら、おじさんの反対の手はももこの太腿に滑り落ちた。アームカバーの黒の下、肘から先のむき出しの肌はひんやりと滑らかで、そこからスカートの内側へ手を進めていくと、太腿の内側の体温が指先を出迎える。指は太腿の内側を撫で上げて、スカートの奥の暖かい影に入り込もうとした。
「あ、あー、待て待て、おっちゃん」
ももこの手が、男の手首を軽く押さえる。強くではない。止めるためではなく、間を作るための仕草だった。
「下はあとなー? 順番、順番。いっつもこれなんだよ。すぐ下行きたがる。手早すぎ」
「悪い悪い」
「アタシはまず、こっち先に楽しませろっつうの」
軽く眉をしかめて、ももこはおじさんのバスローブの帯に手を伸ばした。緩く結ばれていた帯紐は、ほんの一引きで、しゅるりと解ける。バスローブの前が、ぱさりと左右に開いた。
まず、ぼってりと張り出した中年の腹。続いて、その下に潜む、すでに半ばまで角度を上げかけている肉棒が、橙色の灯りの下に晒される。亀頭の先端は、もう薄っすらと濡れていた。
「うっわ、出てる出てる。早ぇんだよ」
「お前のスカート見てたらこうなんだよ」
「言い訳が雑」
ももこの指先が根元から先端へ、皮膚をなぞるように撫で上げた。爪は立てない。指の腹で血管の浮きを一本ずつ確かめるように、ゆっくりと往復する。先端のしずくが人差し指の腹に絡め取られて、ぬる、と糸を引いた。
「あー、これこれ♡ おっちゃんのこの先っぽから出るやつ、ちょっとしょっぱくて、いつも……」
言葉の途中で、ももこはベッドの上にぺたんと膝をつき、上半身をおじさんの股の間へ滑り込ませた。ポニーテールが肩越しに後ろへ流れる。紫の瞳が灯りの陰になって、いっそう深い色を帯びた。
「いただきまーす」
ちろり。
舌の先が、亀頭の裏側のしずくを、ひと舐めにした。
「……っ」
おじさんの腹の筋肉が、思わずきゅっと縮こまる。先走りのにじんだ亀頭の裏筋を、ももこの舌がもう一度、丁寧に往復した。
「ふふ、ここ弱いもんなー、相変わらず」
「お前が、それを覚えすぎなんだよ」
「覚えるよ、何回ヤってると思ってんの。仕込んだ弱点はちゃんと使う派なんだよ、アタシ」
舌は根元のほうから皮膚を押し広げるようにべろりと這い上がってくる。亀頭の裏筋に到達するとそこで停まり、舌先が小さく振動するみたいにぴちゃ、ぴちゃ、と細かく動いた。粘膜と粘膜が触れ合う湿った音が、橙色の灯りの下に透けて滲む。
唇が、ふわりと亀頭を含んだ。
奥までいきなりは入れない。先端だけをぬるい口腔の入り口でちゅぷ、ちゅぷ、と挟むように吸う。音は控えめ、けれど執拗。たっぷりと唾液をまとわせてから、ようやくポニーテールが前へ大きく傾いだ。
ずぷ、と一気に半ばまで。
「うぐっ……」
おじさんの喉が、勝手に小さく鳴った。
口腔の温度は想像していたよりずっと熱い。ももこの舌は咥え込んだ肉棒の裏側に密着して、ぐねぐねとうねるように動いている。喉の奥のほうから、唾液をたっぷり溜め込んだ粘膜がちんぽの先端を待ち構えていた。
「んっ、んむ……ん、ふっ……」
ももこの鼻先がおじさんの腹毛の生え際にぶつかる寸前まで沈み込んだ。そこからゆっくりと頭が上へ戻っていく。唇の輪は決して緩めない。亀頭のカリの段差で唇のふちがきゅっと引っかかる感触。それを楽しむように、ももこは何度か首の前後だけで往復した。
「……ぷはっ」
いったん口を離す。糸を引いた唾液が唇から肉棒の先端まで橋を架けて、そのままぷつ、と切れた。顎の先を手の甲でぬぐって、ももこは斜め上のおじさんを見上げた。
「ねぇ、これ、いつもより硬くね? なんかあったか」
「お前のポニテ見ると、こうなんだよ。たぶん」
「そういうとこだぞ、ほんと」
ふっと鼻を鳴らして笑いながら、ももこはまた口を寄せた。今度は最初から深い。一気に喉の奥へ亀頭の先を押しつけてから、頭の角度をわずかに変えて口腔の柔らかい部分にちんぽをこすりつけてくる。舌は咥え込んだ肉棒の根元あたりを、ねっとりと締め上げにかかっていた。
じゅぽっ、ちゅぷ、じゅるる。
粘膜の摩擦音が間隔をあけて連続する。一定のリズムではなく、ときおり強く吸い込んだり急に深く沈み込んだり、緩急を意図的に作ってくる。狙ってやっている。何度もこの男のちんぽを口で看取ってきた嬢の手管だった。
「……っ、こら、ももこ、それやばいって」
「やばいんだろ? 知ってる」
「絞るな、絞るな、まだ、もうちょい引っ張りたいんだよ」
「あー? でも、もうこの辺ピクついてんぞ?」
言いながら、ももこの指が肉棒の根元——玉のすぐ上あたりを軽くつねるように摘んだ。そこは確かに、すでに小さく脈を打っている。射精の前兆を覚えてしまった嬢の指は男よりも先に、男の限界を察知する。
「——出すなら、口にも出していいぞ?♡」
顔を上げて、ももこは紫の瞳でこちらを見上げた。唾液で濡れた唇が、橙の灯りを反射して、ぬらりと光っている。
「けど、今日アタシ、別のとこにも欲しい気分なんだよなー」
「……あ?」
「立ってさ、後ろから、ぶち込んでくれよ。一発目」
言うが早いか、ももこはちんぽから口を離してするりと立ち上がった。スカートの裾を両手で軽く払いながら、ベッドの脇のドレッサーへ歩み寄る。鏡台のすぐ前。両手を縁にぺたりとついて、スカートで隠れた腰をこちらに向けてぐいっと突き出してきた。
「ほら、来いよ」
鏡の中で紫の瞳が笑っていた。
おじさんはくぐもった声でひとつ唸ると、半開きのバスローブを完全に脱ぎ捨ててベッドから立ち上がった。
膝裏まで濡れた肉棒を握りしめながら、ももこの背中へ歩み寄る。チェックのミニスカートを両手でそっとまくり上げた。
——出てきたのは白いレースの薄い下着。
しかしそれより先に目を奪われたのは、その下着が包んでいる桃色の——いや、桃というには大きすぎるほど、しっかりとした双丘の存在感だった。
「うっわ、何見てんだよ、見すぎだから」
「いや、何度見ても、お前のここはな……」
「言うなって、ほんと」
ぴしゃりと、ももこは鏡越しに睨んできた。けれど頬は赤い。デカケツのことは本人もコンプレックスらしいと、おじさんは知っている。知っていて、毎回視線で確かめにいく。
下着の薄い布地を横にずらした。指で割り入れるようにぐ、と。下着のクロッチはすでにじっとりと色が濃くなっている。
「あー……お前、もう湿ってんじゃねえか」
「しゃぶってたら興奮しちまったんだから、しょうがねえだろ」
「正直でよろしい」
亀頭の先を濡れた割れ目に押し当てる。たっぷりとフェラで唾液をまとった先端は、すでに十分すぎるほど滑った。割れ目を上下に二度、三度なぞる。クリトリスのあたりをぬる、と擦った瞬間、ももこの腰が鏡台の縁を握る指ごとびくっと跳ね上がった。
「っ、焦らすなって」
「焦らしてねえよ、これは確認だ」
「確認はもういいから」
言葉の途中で、おじさんは腰をぐ、と前へ送り込んだ。
亀頭がぬぷ、と入り口を割り開く。
「——あぁっ……」
ももこの背中がしなやかに弓なりに反った。ポニーテールが跳ねるように肩の前へ流れて、金色の毛先が鏡台の天板の上にぱさりと広がる。
亀頭が入り口を抜け、奥のほうへ滑るように沈み込んでいく。粘膜は待ち構えていたみたいに、ぐねりとちんぽを締めつけてきた。フェラのときの口腔とはまた違う締まりだ。あれが「吸い上げる」だとしたら、ここは「巻き取る」。襞の一枚一枚が、奥へ奥へとちんぽを引きずり込もうとしている。
「うっぐ……ももこ、お前、相変わらず——」
「言うなよ、最後まで言うな」
鏡の中、ももこの紫の瞳が潤んでいる。けれど口元は笑っている。負けず嫌いと強がりの、それでもしっかりと感じている顔だった。
おじさんは奥まで挿し込んだまま、いったん動きを止めた。腰を密着させる。下腹部がももこの双丘にぱふん、と当たる。柔らかい。控えめなどではない。しっかりと弾力のある肉が、男の腹を押し返してくる。
「……ふー、これだよ、これ。この肉、たまらん」
「うっせ、揉むな揉むな、揉みながら腰振るのやめろ、変態」
「変態で結構」
言いながら、おじさんは両手でまくり上げたスカートの上から、ももこの双丘を鷲掴みにした。指がぐっと食い込む。沈む。すぐに向こうから肉が押し返してくる。掴んだまま、腰をゆっくりと前後に動かし始めた。
ぬちゅ、ぐちゅ、ぬちゅ。
最初のひと突きごとに、結合部から低い湿った音が漏れた。たっぷりと愛液をまとった襞がちんぽに絡みつき、引き抜くたびにねっとりと粘って引き止めてくる。鏡台の鏡には、男に背中から貫かれてポニーテールを震わせるももこの顔が、まっすぐに映っていた。
「あ、っ……んっ、あー、深い、深いって……♡」
「奥、好きだろ、お前」
「好きだけど、いきなりはずるいんだって……っ」
負けじと言い返す声が、途中で短く跳ねる。腰の角度を変えて、おじさんは奥のほうの一点を亀頭でぐりっと押し回した。鏡の中のももこの口元が、その瞬間だけ紫の瞳の鋭さを忘れてふにゃりと崩れる。
——いい顔しやがる。
心の中でひとつ呟いて、おじさんは腰のリズムを少しずつ上げていった。
パン、とまず一発、肌のぶつかる音が立つ。
パン、パン、と少しずつ感覚を詰めて。
やがて、ぱちゅん、ぱちゅん、ぱちゅん——と、ももこの双丘が男の腰を受け止めるたびに、肉と肉が押し合う湿った打撃音に変わっていく。
「あぁっ、っ、ん、んっ、それ、はやっ……ぇ、はやいって……っ」
「お前のここがな、勝手に締めてくんだよ」
「アタシのせいかよ、それぇ……っ」
鏡の中でポニーテールが大きく前後に揺れる。金色の束が波のように肩の上で踊る。紫の瞳はもう半分、潤みに濡れて焦点が合っていない。それでも口の端は、悔しげと楽しげをないまぜにして上がっていた。
奥をもう一段、深く突く。
その深さが、よくなかった。あるいは、よかった。
ぶ、ぅっ。
結合部から湿った空気の抜ける音が、ふいに鏡台の前の空気をひと撫でした。
——おっと。
ももこの背中が一瞬で強張った。
「……ちょ、ちょっと、おっちゃん。聞こえなかったことにしろ、今の」
「は? いま、なんか鳴ったか?」
「鳴ってない、鳴ってない! 絶対鳴ってないからな!」
慌てた声で、ももこが鏡の中で振り返る。頬はもう、橙色の灯りの下でもはっきりと赤く染まっていた。普段の勝気な顔が見事に崩れている。おじさんは思わず、にやりとした。
——こいつのこれが、たまらんのだよな。
心の中でひとり呟くと、おじさんは腰をわざと深くゆっくりと引き戻した。
ぬぷ、と亀頭のカリが入り口の縁を引っかけて、出口寸前で止める。襞が引き止めるようにねっとりと絡んでくる。それを振り切るようにして、ふたたびずん、と一気に最奥まで叩き込んだ。
ぶぶっ♡
「っ、待て、待てって、ば……っ」
「待たねえよ。今ので鳴った音、あれだな? お前のいつものやつ」
「言うなって言ってんだろうが——」
ももこが鏡越しに歯を剥いた。けれど次の突き上げが来た瞬間、その表情はまた崩れる。眉が下がり、唇が薄く開き、紫の瞳が橙色の灯りに溶けて潤んだ。
わざと、なのだ。
おじさんは、ももこの双丘を掴んだ手にもう一段ぐっと力を込めて、引き寄せながら腰を叩きつけにいった。腹と尻のぶつかる肉の振動を作り出し、結合部の隙間から空気を押し出す角度を狙う。
ぱちゅん、と打撃。
ぶぅ♡——と、結合部からまた湿った吐息のような音。
「あぁもうっ、わざとやってるだろ、絶対わざとやってる!」
「やってる」
「素直か!」
半泣きの声で「あははっ」と引き攣り気味にももこが笑った。本気の嫌悪ではない。負け惜しみと、それを楽しんでいる声色が、ぐちゃぐちゃに混ざっている。鏡の中、頬は赤いまま、けれど口の端がしっかりと持ち上がっていた。
「アタシのこの音、好きだよなー、ほんと変態」
「お前も嫌いじゃねえだろ、それ」
「うっせ、それはノーコメだ」
ノーコメ、と答えた瞬間、おじさんの腰がもう一段リズムを上げる。パン、パン、パン、と肌の打ち合う音が連続して、鏡台の天板を金色のポニーテールが跳ねるように撫でた。襞の締めつけが急に強まる。引き抜こうとすると、内側から吸い寄せるような力が亀頭にまとわりつく。
「ちょ、ちょっと、これ、ヤバい、ヤバいって……っ」
「お前のここ、もう絞ってきてんだろ」
「そっち、こそ……っ、根本、ピクピクしてんじゃ、ねぇか……っ」
お互いの限界が、お互いに筒抜けだった。何度も同じ部屋で身体を擦り合わせてきた男女の、隠せない察しの良さ。おじさんは奥歯を噛んで、こみ上げてくる射精感を一拍だけ抑えようとした。けれどそのつもりの一拍が、かえって粘膜の締めつけを意識させて逆効果になる。
「ももこ、出る」
「ん、出して、いいぞ……♡ どこに、する?」
「中だ」
「じゃ、来い、よ……っ、一発目、ぶち撒けてけ……っ♡」
言葉を最後まで言わせない。おじさんはももこの腰骨をがっちりと両手で掴み直すと、最後のひと突きを叩き込みながら、自分の下腹を双丘へ密着させた。亀頭の先が子宮口の縁に押し付けられる感触。そのまま動きを止め——
どびゅっ。
肉棒の根元から先端まで、ぐぐっと脈動が走り抜けた。
「っ、ぐ……」
息が短く詰まる。喉の奥から、声にならない呻きだけが漏れた。
二発目。
びゅくっ、びゅくびゅくっ。
最奥に押し当てた亀頭から、白濁が勢いよく吐き出されていく。たっぷりと我慢した分、量も勢いも遠慮がない。子宮口に直接ぶつかる熱の塊を、ももこの内壁がきゅう、と締めつけて受け止めた。
「あ、ぁ……熱、ぃ……♡♡」
ももこの背中がしなりと反って、ポニーテールの根元がぴくぴくと痙攣する。鏡台の縁を握る指の関節が、白くなるほど力んでいた。
「うっわ、来てる来てる、いっぱい来てる……っ♡ 相変わらず量、おかしいって、これぇ……っ」
「黙ってろ、まだ、出てる」
三発目、四発目。脈動の間隔が緩やかに広がっていく。最後の一押しを亀頭の先で奥へ塗り込めるように、おじさんは腰を細かく揺らした。
やがて、脈打つ間隔がゆるやかに途切れる。
ふー、と長い息を、おじさんは初めて吐いた。
奥にしっかりと押し付けたまま、抜かない。引き抜けば結合部から白い液がこぼれてしまう。それは惜しい。あとでバスルームに移動するまで、できるだけ留めておきたかった。
「……はー、相変わらず、すげぇ出すなあんた」
「お前のここが、出させる」
「人のせいに、すんなって……」
額に汗を滲ませて、ももこは鏡の中で苦笑した。紫の瞳の焦点は、まだほんの少し、ぼんやりとしている。けれど口元には、もう負けず嫌いの色が戻っていた。
「ま、いいけどさ。まだ一発目だろ? 風呂、入ろうぜ。汗かいたし、流してから次いこ」
「……ああ」
「抜くぞー、こぼれるからな、タオル取って」
ベッドサイドに畳んであったバスタオルを、おじさんが慌てて引き寄せる。それを受け取ったももこが、鏡台に手をついたまま、ゆっくりと腰を引いた。
ずるり、と肉棒が抜ける。
抜けた瞬間、結合部からたっぷりと白い液体が溢れて内腿を伝い落ちた。ももこは慣れた手つきでタオルをそこに当てて、垂れ落ちる前に拭い取る。指先で軽く尻を持ち上げる仕草が、慣れすぎていていっそ事務的だった。
「ったく、これだから一発目の中出しはなー」
「文句言うな」
「言ってねえよ、誇ってんの、誇ってんの」
からからと笑って、ももこはタオルで結合部を押さえたまま、バスルームのほうへ歩き出した。チェックのスカートはまくれ上がったまま、腰の上で皺になっている。白いセーラーの裾が腰のラインで揺れて、その下からタオルを当てた手と、白く張りのある太腿のラインが覗く。
おじさんは、その背中を、ベッドサイドからしばらく眺めていた。
——一発目で、ここまで搾り取られたのは、何回目だったか。
半萎えになった肉棒を握り直して、ふー、ともう一度息を吐く。
まだ、夜は始まったばかりだった。
◇ ◇ ◇
バスルームの扉を抜けると、空気の質量が変わる。
外の空調の乾いた冷気から、湿った暖気の中へ。湯気はまだうっすらとしか立っていない。けれど床に張られたエアマットの白さと、シャワーブースの脇に置かれたボディソープのボトル群が、これから始まる時間の輪郭をはっきりと示していた。
ホテルのバスルームというより、ソープランドの個室を意識した内装だった。床は広く、防水の白いマットが敷かれ、その上にゆったりと寝そべれるサイズのエアマットが配置されている。脇には小ぶりなプラスチックの椅子と、洗面器。シャワーヘッドはフレキシブルに動くタイプで、お湯の温度はすでに用意されている。
先に入っていたももこが、シャワーで自分の身体を流し終えたところだった。
全裸で、こちらに背を向けている。脱ぎ捨てられた制服とアームカバーは、扉の脇のかごに几帳面に畳まれて入れられていた。けれど、本当におじさんの目を奪ったのは——畳まれた制服でも、流れる湯気でもなかった。
ほどかれた、髪の束だった。
「……」
ポニーテールが、ない。
高い位置で結ばれていた金色の束は、いつの間にか解かれて、背中の半ばまで、緩やかな波を描きながら垂れ下がっていた。湯にうっすらと濡れた毛先が、肩甲骨の上で内側にカールしている。前髪も湿っていて、湿気を含んだ重みでわずかに表情を伏せ気味にしていた。
ももこが、振り返る。
長い金色の髪が、首の動きに遅れて肩の上を流れた。湯気越しの紫の瞳。湯に火照った頬。少しだけ伏せ気味の睫毛。
——別人だ。
反射的に、おじさんはそう思った。
いや、別人ではない。十咎ももこ、その人だ。けれど髪を下ろした瞬間に、いつものさっぱりとした姉御の輪郭が、ふっと消える。代わりに立ち現れるのは、深窓の令嬢——いや、令嬢の格好を借りた、悪役のほう。男を誘うことを知っている、あのタイプの。
本人もそれを意識している節がある。立ち姿が、心持ち腰を引いて、上目遣い気味になっていた。普段は腰に手を当てて仁王立ちするくせに、いまは片手を浴室の壁に軽く添えて、もう片方の手は鎖骨のあたりを、なにげなく撫でている。
「……どした? なんかついてる?」
声色は、いつものももこだった。ガサツで、軽口で、まったく令嬢ではない。けれど見た目とのギャップが、かえって致命的に目に効く。
「いや。髪、下ろしてるとな……」
「あー、これ?」
ももこは、ふわりと自分の髪の毛先をひと房つまんで、軽く持ち上げた。指先から金色がさらりとこぼれて、湯気の中で淡く光る。
「邪魔だからさ、結んでると洗いにくいし。降ろしてるだけ。……なに? 好きなのか、こういうの」
「好きだ。すげえ好きだ」
「即答かよ」
くすっと笑って、ももこは肩をすくめた。けれど笑う動作と一緒に肩の上の金色の束が大きく揺れて、その揺れ幅が、いつものポニーテールの硬質な弾みとは違う。やわらかく、たっぷりと波打つ。
「ま、好きならいいけどさ。ほら、入れよ。シャワー、温度ちょうどいいから」
「……おう」
返事が、わずかに遅れた。おじさんは自分でもそれを自覚しながら、バスローブを脱ぎ捨てて浴室のタイルに足を踏み入れた。湿った暖気が肌にまとわりつく。ボディソープと、ほんのりと湯の塩素の混ざった匂い。それを、ももこの肌から立ち上る湯気の香りが上塗りしていた。
ももこがシャワーヘッドを取って、こちらに向ける。
「先に流してやるよ。さっきの、まだ垂れてるだろ?」
「……すまん」
「いいって、アタシも仕込まれてる側だ」
ぬるめの湯が、おじさんの胸から腹、腰へと流れる。ももこの指先がボディソープを取って泡を立てた。両手で大きく泡を作って、おじさんの胸板に乗せてくる。指の腹で円を描きながら、肩、脇、腹回り、腰へと丁寧に泡をすべらせていく。
泡は、すぐに肉棒の周辺へ降りてきた。
いまだ完全には萎えきっていない肉棒を、ももこの片手が、泡ごと優しく握る。先端、根元、玉袋。ぬるりと滑る指で、洗うふりをしながら、しっかりと愛撫している。
「ふぅん、まだ硬いんだ♡ やる気だな、おっちゃん」
「……人に洗わせて、こんなふうにされたら、誰だってこうなる」
「言い訳が雑なんだって、毎回」
くすくすと笑いながら、ももこは反対の手をおじさんの背中に回す。肩甲骨のあたりに泡を塗りつけて、ゆっくりと撫で下ろす。胸の前を撫でていた手と、背中を撫でる手が、おじさんを軽く挟むように、自分の身体に引き寄せた。
胸が、密着する。
泡まみれの胸の弾力が、おじさんの腹のあたりに、たぷん、と当たった。柔らかく、けれど芯のある重み。湯気と泡で滑る肌どうしが、こすれ合うときの感触は、衣類越しの愛撫とはまったく違う。直接の体温が、泡の薄い膜を通じて、ぴたりと伝わってくる。
「アタシも洗ってよ、おっちゃん」
「……喜んで」
「ふふ、素直」
ボディソープを、おじさんの掌に追加で受ける。両手で泡立ててから、まずは目の前に立つ女体の、肩から腕へと泡を伸ばした。アームカバーで隠れていた腕の白さ。鎖骨の浅い窪み。湯気の粒が肌の上で滑るのを、泡の膜越しに撫でる。
そして、胸へ。
泡の上から、両手で下から包み込む。控えめな大きさの、しかし芯のしっかりとした膨らみが、男の手のひらにすっぽりと収まる。先端の小さく硬い突起は、泡の中でもはっきりと指の腹に当たった。意図的にそこを指の間で挟んで、軽くこする。
「あっ……ちょ、洗うだけって、言ったろ……」
「洗ってるよ、ちゃんと」
「絶対嘘」
軽く睨んでくる紫の瞳の奥は、けれどすでに焦点が緩み始めていた。
胸を解放した手は、そのまま腰のラインを撫で下ろし、太腿の付け根のほうへ滑っていく。ももこは抵抗しない。ただ片足をわずかに横へずらして、男の手が触れやすい角度を作った。誘っている。誘いながら、口では「洗うだけだろ」と文句を言う。それが、悪友同士のお約束だった。
指先が、薄い茂みの奥へ届く。一発目を中で受け止めた直後のおまんこは、まだ熱を持って柔らかかった。シャワーで一度流したはずなのに、内側からじんわりと湧き出てくる粘度のある液で、入り口は早くもぬめっている。
「あー……これ、洗ってもキリないだろ。中、まだ残ってるんだから」
「中も、洗うか?」
「指、入れんなよ? 絶対、また興奮するから、アタシも、おっちゃんも」
言いながら、ももこの腰がほんの少しだけ前へ突き出された。要するに、入れて欲しいということだった。
「悪友」のお約束は、こういうふうに崩れていく。
おじさんの中指の先が、つるりと割れ目に滑り込んだ。ぬるい湯と、ねっとりとした粘液が、第二関節までを難なく受け入れる。中をかき出すように指を動かすと、白っぽい液が泡と一緒に、太腿の内側を伝って流れ落ちた。
「あ、っ……それ、本気で洗うやつじゃん……っ」
「お前が中もって言ったんだろ」
「ニュアンス、汲めって……っ」
軽口を交わしながら、けれど指の動きは止まらない。ももこの肩が、おじさんの胸板にぐったりと預けられて、長い金髪が湯気と泡の中で湿った束を作った。シャワーから絶え間なく流れ落ちるお湯が、ふたりの肌の上で混ざり合う体液と泡を絶えず洗い流していく。
しばらく、無言で指の動きと湯の音だけが浴室を満たした。
やがて、ももこがふいに身体を離す。
「——よし、シックスナイン、しよーぜ」
「……唐突だな」
「思いついたから。アタシ、上な。下になるのはおっちゃん」
「了解」
拒否権はない。あるはずもない。
ももこに肩を押されるかたちで、おじさんはエアマットの上に仰向けに横たわった。空気を含んだマットが、背中をふんわりと受け止める。湿気をたっぷり吸ったマットの表面は、ほんのり温かく、滑りも悪くない。
ももこが、おじさんの上に跨ってきた。逆向きで。
膝立ちのまま腰を低く沈めると、湯と愛液で濡れたおまんこが、おじさんの顔のすぐ上に降りてくる。長く下ろした金髪が、おじさんの腹のあたりを撫でて、その先で半勃ちに戻りつつあった肉棒へと触れた。湿った金色の毛先が亀頭の先をくすぐる。
「ほら、おっちゃん、お互いさまだぞ♡」
言うが早いか、ももこの唇が肉棒の先端を含んだ。同時に、おじさんの目の前におまんこがぐっと近づく。
そして、見せつけるように。
ももこの両手の指が、自分のおまんこの縁にかかった。
くぱぁ、と。
指で左右に、ゆっくりと開く。
湯気の中で、薄紅色の粘膜が、ぬらりと光った。一発目を受け止めたときの白い余韻が、入り口の奥のほうにかすかに残っている。それを、見せつけるみたいに、ももこは開いて止めた。
「——ほら。よく見ろよ、お客さん。一発目、たっぷり受け取った跡」
「……」
「言葉、出ねえか?」
「……うるせえ」
言葉が出なかったのは、本当だった。
くぱぁと開かれた粘膜の、内側のひだの一枚一枚。シャワーで洗ってもなお残る薄い濁り。入り口がひくひくと小さく収縮するのを、おじさんは至近距離で凝視した。鼻先に届く湯気と、奥のほうから滲んでくる、まだ湯では落としきれない雌の匂い。
——勘弁してくれ。
そう言いたかったのに、口は別の動きを選んだ。
舌が、開かれた粘膜の入り口に、ぴたりと押し付けられた。
「ひゃっ、んっ……」
ももこの背中がびくんと跳ねる。咥えていた肉棒を、危うく口から滑り落とすところだった。けれどすぐに咥え直して、報復のように奥まで深く飲み込んでくる。
お互いの口と性器が、同時に攻め合う。
じゅぷ、ぴちゃ、ちゅぱ、ぴちゃ。
二種類の湿った音が、エアマットの上で重なった。湯気の白さに包まれた狭い空間で、ふたりの呼吸とお湯の落ちる音と、粘膜のすり合わせる音だけが、互いを追い立てるように繰り返される。
しばらくして、ももこが口を離した。
「——ね、おっちゃん、次、パイズリ、しよーぜ」
「いきなりメニュー進行が早ぇな、お前」
「だっておっちゃんのこれ、もう完全復活してんじゃん。見せたい、アタシ」
言いながら、ももこは身体を起こして向きを変えた。今度はおじさんの腰の上に、正面から跨る。けれど挿入はしない。膝立ちのまま、上半身を前に倒して、自分の胸の谷間で、おじさんの肉棒を挟みにいった。
たぷん、と。
左右の柔らかい膨らみが、肉棒の左右からぴたりと寄せられる。控えめな大きさのはずなのに、寄せられると意外なほどしっかりと、ちんぽを包み込んでくる。シャワーの湯と泡で滑る肌の上を、肉棒が前後に動くたびに、ぬるん、ぬるんと滑った。
「うっひょ、これ、見えてる? おっちゃんの先っぽ、谷間からひょっこりしてんの」
「……見えてる」
「かわいいなー、こいつ」
ももこは胸を両手で外側から押さえて、谷間の圧をぐっと深めた。先端だけが、谷間の上から赤くてらてらと顔を出している。それを目掛けて、ももこが舌を伸ばした。
ちろり。
亀頭の先を、ぺろ、と一舐めする。
そして、ぱくり。
胸の谷間で根元から先端までを挟んだまま、唇で亀頭の先端だけを、ちゅぷ、ちゅぷ、と吸い始めた。
「うっぐ……これ、はやい、はやいって……」
「もうイきそうか?」
「お前、これ、はめるんじゃ、なかったのかよ……っ」
「はめる、その前に。一発、口で出させようかなって」
胸の圧と、唇の吸引と、舌の絡みつき。三つの感覚が同時に襲ってくる。下からは胸の柔肉が肉棒の根元と中ほどを締め付け、上からは唇が亀頭のカリの段差を執拗に吸い上げる。さらに、舌の先が亀頭の先端の小さな穴を、ぴちゃぴちゃと舐めくすぐった。
「あー、っ、ももこ、それ、本気のやつ……っ」
「うん、本気のやつ♡ ほら、出していいぞ、アタシの胸と口、両方に、いっぱい♡」
胸の上下動が、ぐっと速まる。同時に、口での吸引も強くなった。亀頭の先を、唇でぴたりと密閉して、舌で押し上げるように刺激しながら、頬を凹ませて吸う。バキューム。それが、亀頭の段差にぴったりと噛み合って、抜けなくなる。
限界が、ぐっと迫り上がった。
「出る、ぞ、ももこ、本気で、出る——」
「ん、来い、口に、ちょうだい——♡♡」
ももこが、亀頭を深く咥え込み直した瞬間。
肉棒の根元から、勢いよく脈動が突き上げてきた。
どびゅっ、びゅるるっ、びゅくっ。
「んむっ……ん、んっ、んくっ、ん——」
口の中に、勢いよく白濁が放たれる。一発目で大量に出したはずなのに、二発目もまた、まったく遠慮のない量だった。ももこは咥え込んだまま、喉の奥で受け止めて、こく、こく、と二度に分けて嚥下する。胸の谷間に挟まれた肉棒の根元が、嚥下のたびにきゅっと締めつけられた。
「んく……ん、ふぁ……」
最後の一滴を吸い出すように、唇を亀頭にぴったりと吸着させたまま、ももこはゆっくりと顔を上げた。
ちゅぽっ、と亀頭から唇が外れる。
糸を引いた唾液と精液が、唇の端から胸の谷間へと垂れた。ももこは舌の先で、それを器用にすくい取って、見せつけるようにこくりと飲み込んだ。
「——っは、二発目、これも結構な量だな、おっちゃん」
「……お前が、絞るからだろ」
「そりゃそうだ、絞るためにやってるんだから」
にしし、と歯を見せてももこが笑った。湯気の中、長く下ろした金髪が湿って肩の前に垂れ、白い肌に張り付いている。胸の谷間にはこぼれ落ちた精液の白い筋が、まだ薄く残っていた。
「でもさ、おっちゃん。二発出したくらいで、終わりじゃないだろ?」
「……当然だ」
「だよなー。アタシもまだ、満足してねぇ」
言いながら、ももこは身体をゆっくりと持ち上げて、そのまま、おじさんの腰の上に跨り直した。膝を両脇に開いて、ぺたりと屈み込む。すでに半勃ち以上に復活している肉棒の真上に、自分の腰を据える。
「三回戦、いくぞ。アタシ主導な」
「……望むところだ」
「うっし。んじゃ、いただきまーす」
ももこの右手が、肉棒の根元を握って、垂直に立てた。腰を、ゆっくりと沈めていく。
ぬぷ、と亀頭が入り口に呑み込まれる。湯と精液と愛液で潤滑しきった粘膜は、ほとんど抵抗なく、ちんぽを最奥まで一気に飲み込んでいった。
「あ、ぁ……♡ これ、これだ、これがいいんだよなー♡」
ももこは深く座り込んだまま、目を細めて長く息を吐く。湯気の中、長い金髪がさらりと背中の上で揺れた。
「動くぞ、しっかり見ておけよ」
言うが早いか、腰がゆっくりと上下に動き始めた。
膝を支点にして、双丘ごと腰を持ち上げる。亀頭が抜ける寸前まで上がってから、自重で一気に落としてくる。湿ったマットの上に、ぱちゅん、と肉のぶつかる音が立った。湯気で濡れた金髪が、上下動のたびに肩の上で大きく波打つ。
「あっ、ん……っ、これ、いい、奥、当たる……っ」
「お前、上手いな」
「慣れてんだよ、誰のせいだと、思ってる」
額に汗を浮かべて、ももこが鼻で笑った。腰の上下のリズムが、徐々に速まっていく。最初はゆっくりと深く沈める動作だったのが、やがて短いストロークで連続して跳ねるようになる。マットの空気が押し出されて、ぷしゅっと脇から漏れる音が間に挟まった。
おじさんの視点からは、長い金髪を揺らしながら自分の上で跳ねるももこの上半身がよく見える。湯気で濡れた肌、揺れる小ぶりな胸、汗の粒、紫の瞳。普段ポニテで束ねてしまえば見えない金色の波が、跳ねるたびに首筋から背中へと流れる。
——ほんとに、別人だな、これ。
心の中でひとつ呟いて、おじさんは下から両手を伸ばす。揺れる胸を下から掬い上げて、軽く揉み込みながら、突き上げのタイミングを合わせていった。
ぱちゅん。ぱちゅん。
「あぁっ、っ、合わせ、合わせるな、アタシが主導って、言って——」
「合わせちゃ悪いか?」
「悪い、悪い、けど、いい、けど……っ」
言葉が、矛盾しながら漏れる。ももこは負けじと腰の動きを速めて、自分のペースを取り返そうとした。けれど下からの突き上げと、自分の落下が偶然噛み合ったとき、ぐっと深い角度で奥が貫かれる。そのたびに金髪を揺らして、紫の瞳を細める。
ふいに、ももこが腰を浮かせて、向きを変えた。
「——背面、いくぞ」
「お、いいのか」
「ちょっと角度、変えたい」
肉棒は抜かないまま、器用に膝を入れ替えて、おじさんに背を向ける形で跨り直す。背面騎乗位。長く下ろした金髪が、ふわりとおじさんの腹の上に流れて、毛先が肌をくすぐった。
目の前に、ももこの背中と、双丘が広がる。
——絶景だな、これは。
白く湿った背中の中央には、汗の粒が浮いている。湯気と汗で湿った金髪は背筋を覆って、ふたつに分かれた毛束が腰のラインで遊んでいる。そして、その下にどん、と存在感を放つのが、男の腹の上に乗ったしっかりとした双丘。
「ほら、いくぞ」
ももこの腰が、再びゆっくりと上下を始めた。
今度は、見える。
双丘が、ぱちゅん、と男の腹に叩きつけられる瞬間が、おじさんの真下から完全に丸見えだった。落ちてくるたびに、肉が震える。ぶるん、と弾みが波打って、衝撃が結合部の周辺を中心に広がっていく。
バスンッ。バスンッ。
最初はぱちゅんと湿った音だったのが、上下動の幅が大きくなるにつれて、もっと低く重い打撃音に変わっていく。湯と愛液で潤った双丘が、男の腰の骨にしっかりと叩きつけられる音。マットの空気がそのたびにきしんで鳴いた。
「あぁっ、これ、これがいい♡ ぁ、深、っ、深ぁ……っ♡」
「お前のケツ、上から見ても、すげえな……」
「あー、もう、見るな、言うな……っ」
ももこの片手が、後ろに伸びてきて、おじさんの太腿のあたりを軽く叩いた。けれど止める力ではない。むしろリズムを刻むみたいに、ぱしっ、ぱしっ、と肌を打つ。長く下ろした金髪が腰の動きに合わせて大きく波打って、毛先がおじさんの腹の上を撫でた。
そして、また、あの音がやってきた。
ぶぅぅっ♡
深く沈み込んだ瞬間、結合部からたっぷりと、湿った空気の抜ける音が浴室に響いた。湯気で湿度の高い空気の中、その音はいつもより一段、湿り気と存在感を増していた。
「……あ」
ももこの背中が、わかりやすく強張る。
「いまの、聞こえてないからな」
「無理だ、それは。だってめっちゃ鳴ったぞ、いま」
「鳴ってないって言ったろ!」
ぐつぐつと喉で笑うおじさんの太腿を、ももこが後ろ手でぺしぺしと叩く。けれど腰の動きは止まらない。止められない。むしろ羞恥のせいか、内側の締めつけがぐっと強くなって、亀頭のカリにきゅう、と絡みついてきた。
——こいつ、本気で、これで興奮してるな。
おじさんは下から腰を突き上げて、わざとさっきと同じ深い角度を狙う。
ぶっ♡ ぶぶっ♡
今度は連続で鳴った。
「あぁもうっ、わざとだろ、さっきから絶対わざとだろ!」
「悪友だからな、お互いの好きなとこは、よく分かってる」
「変態の悪友はいらねぇんだよ、こっちは……っ」
文句を言いながら、ももこは腰の上下を速めていく。長い金髪が背中で大きく揺れて、双丘の打ちつけのリズムが連続する。バスンッ、バスンッ、バスンッ——肉と肉のぶつかる重い音が、湯気の中で響いた。
おじさんの限界が、また近づいてくる。
二発目を口で抜いてもらったばかりだというのに、ももこの背中の景色と、双丘の弾みと、結合部から漏れる空気の音が、容赦なく追い詰めてきた。
「ももこ、また、出る」
「ん、来い、ぃ……っ♡ こっちも、もう、いきそぉ……っ♡」
「中で、いいんだな」
「あったり、まえだ……っ♡ ぶち撒けて、けっ……♡♡」
ももこが背中を反らせる。背筋が大きくしなって、長い金髪が後ろに流れた。腰の上下動が止まり、代わりに、結合部に体重を載せたまま、双丘を細かく上下に揺らす動きに変わる。亀頭の先が、最奥に押し付けられたまま、こすられ続ける。
おじさんは下から両手で双丘を鷲掴みにすると、最後の一突きを下から打ち込んだ。
ばちゅん、と双丘が腹に叩きつけられる。
その瞬間、結合部からまた、ぶぶぅっ♡と空気が抜けて——同時に、肉棒の根元から、爆ぜるような脈動が突き抜けた。
どびゅっ、びゅるるるっ、びゅくっ、びゅくっ。
「っ、ぐ……っ」
息が短く詰まる。喉の奥から、声にならない呻きだけが漏れた。三発目とは思えない量と勢いの白濁が、ももこの最奥に向かって叩き込まれていく。
「あ、ぁっ、来てる、来てる、いっぱい——♡♡」
ももこの背中が小刻みに震え始めた。腰が、ぴくぴくと跳ねる。長い金髪の毛先が、肩甲骨の上で痙攣のように細かく揺れた。
「あぁっ、ぁぁ——」
声が、長く尾を引く。普段の勝気な声色とは違う、ほとんど呼吸そのものに近い、震えるような声。理性の輪郭が一瞬ぼやけて、紫の瞳の焦点がどこか遠くに溶けていく。
絶頂、だった。
締めつけが、内側からきつくなる。脈打つ肉棒を、襞の一枚一枚が必死で握りしめて、奥へ奥へと精液を引き込もうとした。どびゅ、どびゅ、と最後の数発が、その力に押し出されるように吐き出されていく。
やがて、脈動が緩やかに途切れた。
ももこは、おじさんの腹の上に、後ろからどさりと倒れ込むようにして体重を預けた。長い金髪が、おじさんの胸から首筋にかけて、さらりと広がる。湯気の中、ふたりの呼吸だけが、しばらくバスルームを満たした。
「……はー、相変わらず、量、おかしいって、これ」
「お前のせいだ、お前の」
「またそれかよ、ほんとに人のせいに、すんなって……」
言いながら、ももこの声には力がない。背中越しに伝わってくる体温の高さと、まだ続いている細かな身震いが、絶頂の余韻をまだ引きずっていることを伝えてくる。
しばらくの間、ふたりはそのままだった。
シャワーから絶え間なく落ちるお湯の音だけが、浴室の壁に反響している。エアマットの空気は、ふたり分の体重でほどよく沈んでいた。湯気は変わらず白い。けれどその密度は、行為前よりも明らかに濃くなっていた。
「……出るか、ベッドに」
「うん、移動」
「髪、結び直すわ。アタシ、長いの落ち着かねえし」
「えー、もうちょい見ていたかったがな」
「やだよ。バスルームの中だけ、ってことにしとけ。あんま味占めると、毎回ねだられそうだし」
ばっさりと言って、ももこは脱衣場に置いておいたヘアゴムを取りに身体を起こす。両腕を頭の後ろへ持ち上げて、湿った金色の束を一気に高い位置で束ね直していく動作は、何度も繰り返してきた手慣れたものだった。
しゅるり、と一巻き。
きゅっと結び目が締まる。
たったそれだけの所作で、肩の前に流れていた金色の波が、後頭部の高い位置にぴょこんと跳ね上がった。毛先がふわっと宙に舞って、湿気を孕んだまま背中の上で揺れる。湯に濡れた前髪も指でさっと撫で上げて整えられた。
——戻った。
いつものももこだ。さっぱりとした姉御の輪郭が、その一動作で完全に取り戻されていた。さっきまでの令嬢めいた誘いの気配は、ヘアゴム一本でいともあっさりと拭い去られている。
「な? これがアタシの定位置」
「……そういうもんかね」
「そういうもんなんだよ。じゃ、ベッドな」
にっと歯を見せて、ももこはバスタオルを身体に巻きつけながら、先にバスルームを出ていった。
おじさんはその背中をしばらく眺めてから、自分も濡れた身体を雑に拭って、ゆっくりとバスルームを後にした。
◇ ◇ ◇
バスタオルを巻き付けただけのももこが、ベッドに先に倒れ込んだ。
部屋の橙色の灯りが、湿ったままの肌の上で柔らかく滑る。後頭部の高い位置でふたたび結ばれた金色のポニーテールが、シーツに肩をつけるたびに枕の上で軽やかに跳ねた。湯上がりの上気と、束ね直されたいつもの輪郭。バスルームの中で見せていた令嬢めいた気配は、もうどこにもなかった。代わりに戻ってきているのは、何度もこの男のちんぽを受け止めてきた、いつものももこだった。
「ふー、ベッドの方が落ち着くわー」
「マットも悪くないだろ」
「悪くはねえけど、空気入りのは慣れねえんだよ。普通のベッドのほうが、アタシの腰に優しい」
言いながら、ももこはバスタオルをするりと外して、無造作に枕元へ放った。隠す気はもうない。仰向けに伸びをして、両腕を頭の上で組む。胸が斜め上に持ち上がり、汗の粒が鎖骨の窪みに溜まっていた。
「で、四回戦どうする?」
「決まってんだろ。バックだ」
「即答かよ。さっきも背面でケツ見てただろ、まだ足りねえのか」
「足りねえ。あれは、上から見るやつだ。今度はちゃんと、後ろから腰打ち付けてえんだよ」
「変態」
ふっと笑って、ももこは身体を反転させた。高い位置のポニーテールが肩越しに大きく揺れて、結び目から流れ出た金色の束がシーツの上をふわりと撫でる。膝を立てて、腰を高く突き出す体勢。両手はシーツに伏せられ、背中はゆるやかに反って、双丘がこちらにまっすぐ向けられた。
——絶景だ、毎度。
画像なら、何枚撮っても飽きない構図だった。
白く張りのある双丘の真ん中に、小さく薄紅色のすぼまり。その下に、すでに一発と二発を受け止めて潤んでいるおまんこ。湯で洗い流したはずの白い余韻が入り口の周りにかすかにまだ残っていて、橙の灯りの下で、ぬらりと光を反射している。
肉棒は、再び完全に芯を取り戻していた。
おじさんは膝立ちになって、ももこの背後に近寄る。両手で、双丘を下から掬い上げるように掴んだ。指がぐっと食い込む。掴むたびに改めて思い知る、しっかりとした肉の弾力。
「ほら、入れるぞ」
「来い、よ」
亀頭の先を入り口に押し当てる。一発目をたっぷり受け止めたおまんこは、もはや抵抗らしい抵抗もない。ぬぷ、と一気に最奥までを呑み込まれた。湯と精液と愛液で潤滑しきった襞が、待ってましたとばかりに巻きついてくる。
「ぁ、っ、これ、もう、深いやつ、そのまま、いくやつ……っ」
「いくぞ」
短く宣言して、おじさんは腰を引き、すぐに叩きつけた。
パンッ。
まず一発。湿気のないベッドの上では、肌のぶつかる音が、バスルームよりも明瞭に響いた。乾いた打撃音と、その下に潜む湿った結合部の音とが、二重奏のように重なる。
パン、パン、パン。
リズムが、すぐに連続に変わる。
双丘が、男の腰を打ち返すたびに、ぶるん、と弾みが走る。表面の脂肪が振動して、波紋のように外側へ広がっていくのが、橙色の灯りの下からよく見えた。何度叩きつけても、双丘は男の腰を弾き返してくる。底のない弾力。
「あぁっ、ん、っ、これ、これだよ、これがいい、ぃ……っ」
「お前のケツが、勝手に弾き返してくんだよ」
「言うな、その言い方、ぁっ……」
ももこの腕がシーツの上で力なく崩れて、肩が低く落ちる。けれど腰は、しっかりと高く保たれたままだった。負けず嫌いの腰だった。へたり込んでしまえば楽になるのを承知の上で、わざと角度を維持して、男の打ちつけを受け続ける。
ポニーテールが、突き上げのリズムごとに、シーツの上を箒で掃くみたいに大きく往復した。湯気の余韻のせいか、毛先がしっとりと湿って、ところどころ束になって肌に張り付いている。普段ならビシッと跳ねる結び目が、今は突くたびに重たげに右へ左へ揺れていた。
——別の女みたいだ、本当に。
おじさんは、その背中を、少しの間だけ眺めた。
眺めたあと、視線は自然と——薄紅色の小さなすぼまりへ降りていった。
双丘を打ちつけるたびに、そこも一緒に震えている。挿入の衝撃で、内側からひくひくと収縮しているのが、よく見えた。一発挿入されるたびに、すぼまりが小さく開いては閉じる。誘っているわけではない。けれど、結果として誘っているようにも見える。
——ここ、もしかして。
悪い好奇心が、おじさんの中で、ゆっくりと頭をもたげた。
「なあ、ももこ」
「なに、ぁっ、しゃべる、余裕ねえって……っ」
「ここ、入れさせろ」
おじさんは、突き上げを止めないまま、片手を双丘の谷間に滑らせた。親指の腹で、薄紅色のすぼまりを、ぬるりと撫でる。湯と愛液と、抜けてきた白濁が混ざって、その辺りはすでにじっとり湿っていた。
ももこの背中が、ぴたりと止まる。
「……は?」
「ケツの方、入れさせろ」
「いやいやいや、待て、待て、それは、ちょっと」
ももこが半分振り返ろうとして、繋がったままの腰の位置を見失って慌てる。後頭部のポニーテールが、振り向きの動作で大きく弾んだ。紫の瞳が、肩越しにこちらを睨んでくる。けれどその睨みには、いつもの鋭さが半分しかなかった。
「お前、急に何言い出してんの。アナルって、お前」
「だってこれ、さっきから、ずっと、こっち見ろよって誘ってきてんじゃねえか」
「誘ってねえし! 誘ってねえからな!」
「でも、すぼまりが、勝手に、ひくついてんだぞ、ここ」
親指の腹で、もう一度、薄紅色の縁をくるりとなぞる。すぼまりは、おじさんの指先の動きを追うようにして、内側から小さく窄まり、ふっと弛緩した。本人の意思とは関係のない反応だった。
「し、知らねぇよ、それは、勝手にやってるだけだろ……」
「な? 入れさせろよ。一回だけ。お前のここ、絶対気持ちいいぞ、これ」
「絶対の根拠がねえだろ」
「直感だ」
「直感でアナル決めんなよ」
ぼやきながらも、ももこの腰は逃げなかった。逃げる気がないことを、本人もどこかで認めている節があった。長い付き合いの男に「やってみたい」と言われた瞬間に、頭ごなしに却下するほど、ももこは頑固ではない。むしろ——
「……ま、いっぺんくらい、いいけどさ」
「お、いいのか」
「条件、一個。痛かったら、すぐ抜くこと」
「了解」
「あと、ローション、ちゃんと使えよな。アタシ、ケツの穴が裂けたら、明日から派遣される側として支障が出る」
「分かった分かった」
ベッドサイドの引き出しに、用意のいい備品が入っていた。ホテル側がご丁寧に、というか、こういう客のために用意しているのだろう。透明のローションのボトルを、おじさんは引っ張り出した。
いったん、おまんこから肉棒を引き抜く。
ずるり、と粘膜が剥がれる感触。抜いた瞬間、結合部から白濁と愛液の混ざった液体が、太腿の内側にとろりと流れ落ちた。それはそれで惜しい眺めだった。
「うっわ、こぼれた」
「あとで拭くから、いま動くなって」
ローションを、肉棒にたっぷりと塗る。手のひらでぬるぬると馴染ませてから、もう一度ボトルを傾けて、ももこの双丘の谷間に直接たらりと垂らした。冷たい透明な液が、薄紅色のすぼまりの上に乗って、内腿のほうへゆっくりと垂れていく。
「ひゃっ、冷たい、これ、冷たいって!」
「我慢しろ、潤滑だ」
「言い方が雑!」
文句を言うももこの背中を撫でつけるようにして、おじさんは指でローションを伸ばし広げる。中指の腹で、すぼまりの縁をくるくるとなぞった。湯で洗い流したばかりの肌は、ローションを弾かずによく馴染んだ。指先を、軽く押し当ててみる。
ぐ、と。
第一関節までが、思ったよりすんなりと飲み込まれた。
「ぁ、っ……あ、入って、る……っ、指、入って、る……」
「狭いな、やっぱ。けど、思ったより、柔らかい」
「あんま、解説するな、恥ずかしいだろ……っ」
ももこの声色に、いつもの軽口の力がなかった。普段なら「変態が」と笑い返すところで、語尾が震えて消えていく。ポニーテールの根元のうなじが、振り返らなくても赤くなっているのが分かった。
指を、ゆっくりと出し入れする。ローションが内側まで染み込むように、何度か往復させた。狭い。けれど想像していたほどガチガチではない。何度かに一度、内側で本人の意思とは関係のない収縮が起きて、指をきつく締め付けてくる。
「もう一本、入れるぞ」
「えー、まだ、慣れてねえって……っ」
「慣れてからじゃ、夜が明ける」
中指と人差し指を揃えて、ゆっくりと挿入する。さっきよりは抵抗があった。けれど、第二関節までを、ローションの助けで難なく飲み込まれていった。ふた本の指を中で軽く広げるように動かすと、ももこの腰が、びくっと跳ねる。
「ぁ、んっ、それ、それは、変、っ、変な感じ、する……」
「変な感じ、悪い感じか」
「分かんねぇよ、初めてなんだから……っ」
ポニーテールの先が、シーツの上で右に左にぐしゃぐしゃと波打っていく。両手はシーツを掴んだまま、ぎゅっと握りしめている。普段の負けず嫌いの強がりは、もうほとんど見当たらなかった。代わりにあるのは、未知の感覚に向き合う戸惑いと、それを打ち消そうとする興味の混ざった顔だった。
——これは、こっちも、覚悟しなくちゃな。
おじさんは、自分の中の興奮が、想像していたよりずっと深いことを自覚した。
指を引き抜く。
亀頭の先を、ローションでてらてらと光るすぼまりに、押し当てる。
「いくぞ、ゆっくり、いくから」
「うん……ゆっくり、頼む、ぞ」
久しぶりの敬意のこもった「頼む」だった。ぶっきらぼうな短い言葉だったけれど、その短さが、本人の緊張を逆に伝えてくる。おじさんは、一拍だけ呼吸を整えた。
そして、腰を、ぐ、と前へ送る。
ぬぷ、と、亀頭の先がすぼまりの中心に押し込まれた。
最初の数ミリは、抵抗があった。けれどローションのおかげで、亀頭のいちばん太いカリの部分が、ぬるりと内側へ滑り込んだ瞬間——
ぶぶぅぅぅっっ♡♡
すぼまりから、盛大に空気の抜ける、湿った下品な音が、橙色の灯りの下に、思いきり響き渡った。
部屋の空気が、一瞬で、止まった。
……。
おじさんは、亀頭を半ばまで沈めたまま動きを止めた。ももこもシーツを握りしめたまま、ぴくりとも動かなかった。ポニーテールの揺れも止まり、剥き出しのうなじの色が、見る間にじわっと赤く染まっていく。耳の縁まではっきりと色が変わっていた。
「……」
「……」
「……いま、の、聞こえなかったよな?」
「いや、聞こえた。完璧に」
「は、はぁ? お前、なに、聞いてんだ、変態」
「鼓膜にダイレクトだったぞ、いまの。なんなら、廊下まで聞こえてんじゃねえか」
「やめろ、想像させるな!」
ぐしゃっと、ももこが顔をシーツに突っ伏した。ポニーテールがシーツに叩きつけられて、毛先が枕のあたりに乱暴に投げ出される。背中がはっきりと震えていた。羞恥のせいなのか、笑いを堪えているせいなのか、両方なのかは、本人もよく分かっていなさそうだった。
「これさー、おっちゃん、これさー」
「どした」
「これじゃあ、尻ナラじゃん。いや、もう、おまんこじゃないんだから、ただのオナラじゃん、これ……っ」
「言われてみれば、そうだな」
「そうだなじゃねえよ! 最悪だよ!」
「いや、最高だ、こっちは」
げらげらと、おじさんは肩を揺らして笑った。亀頭はももこのすぼまりに半分埋まったまま、ぴくりとも引かない。むしろ笑いの振動が腰から伝わって、内部で小さく脈動している。それをももこの内壁が戸惑ったように、ぎゅう、と締めつけてきた。
「ったく、おっちゃんの、変態」
「悪友の、特権だ」
「特権じゃねえだろ、それは」
ぼやきながらも、ももこの背中はもう逃げなかった。シーツに突っ伏した顔をゆっくりと上げて、頬に張りついた毛先を雑に払いのける。肩越しに振り返ったその紫の瞳には、羞恥の名残と、それを上回るほどの奇妙な好奇心が浮かんでいた。
「もう、入れちまったんだから、最後までやれよ」
「望むところだ」
おじさんは、止めていた腰を、ゆっくりと前へ進めた。
ぬぷ、ぬぷ、と亀頭の段差を内側へ送り込んでいく。おまんこの襞が「巻き取る」感触だとしたら、こちらは「絞り上げる」だった。入り口の括約筋が、亀頭のカリの段差にぴったりと噛み合って、引き抜けば抜くほど引き止めてくる。
「あ、っ、ぁ……変な、感じ、これ、本気で、変な感じ……」
「悪くは、ねえだろ」
「悪くは、ない、けどぉ……」
奥まで沈めた肉棒を、おじさんはゆっくりと前後させ始めた。激しくは動かない。ローションをよく馴染ませながら、最初は短いストロークで、慎重に。徐々に振り幅を広げていく。
ローションと、ピストンの摩擦音と、すぼまりの周りでときどき漏れる空気の音とが、断続的に重なる。
ぶ、ぷ。ぶぶっ。
アナルからの空気漏れは、おまんこの膣ナラとは少し違った。もう少し短く、乾き気味の音。けれど湿ったローションのおかげで、完全に乾いた音にはならない。中途半端でなんとも形容しがたい湿った音が、リズム不在でふいに鳴る。
「あぁっ、ちょ、これ、止まらない、止まらないって!」
「気持ちは分かるが、止めようがねえだろ、それは」
「うっせー! うっせー!」
半泣きで叫びながらも、ももこの腰は逃げない。むしろシーツを握る指の力が、徐々に強くなっていた。ポニーテールが背中の上で振り子のように振り回されて、汗の粒が剥き出しのうなじを伝う。突き上げのリズムが速まるにつれて、ももこの呼吸も浅く乱れていった。
おじさんは、片手を双丘の谷間から滑らせて、空っぽになった女おまんこのほうへ持っていった。中指を、二発分の白濁がまだ滲んでいるその割れ目に、ぬぷりと差し込む。アナルにちんぽ、おまんこに指。同時に、内側から二箇所の壁を圧迫した。
「ひぃっ、それ、両方、両方は、ずるい……っ」
「特別サービスだ」
「サービス過剰、だっつうの……っ」
おまんこに挿し込んだ指を、亀頭の動きに合わせて出し入れする。薄い壁の向こう側で、肉棒と指とが、互いの存在を確かめ合うようにこすれた。ふたつの粘膜の隙間を、亀頭がぐりぐりと押し広げていく。
ももこの呼吸が、急速に乱れた。
「あ、っ、これ、来る、来る、変な感じ、変なのが、来てる……っ」
「イけそうか」
「分かんねぇ、けど、なんか、来てる……っ」
「なら、こっちも、いくぞ」
おじさんは、おまんこに挿し込んだ指でクリトリスのあたりを下から押し上げながら、アナルへの突き上げのリズムを最後の追い込みに上げた。狭い括約筋に亀頭のカリが何度も擦れる。ローションと二発分の漏れた精液が混ざって、結合部はぐちゃぐちゃに濡れていた。
「ももこ、出すぞ、ケツに、出すからな」
「あ、ぁ、来い、来い、ケツ、ケツに、いっぱいぃ……っ♡」
腰を最奥まで叩き込んで、密着させる。
その瞬間、肉棒の根元から、四発目の脈動が突き上がった。
どびゅっ、びゅるるるっ、びゅくっ、びゅくびゅくっ。
狭い括約筋の奥で、白濁が勢いよく解き放たれた。普段のおまんことはまったく違う、絞り上げるような圧力の中で、肉棒の先から最後の精液までを搾り取られていく。ももこの背中が、四発目の絶頂に同期して、大きくしなった。
「あぁっ、ぁ、来てる、出てる、ケツに、ケツに、出てるぅ……っ♡♡」
ポニーテールがシーツの上で激しく波打つ。脈動の合間に、おまんこに挿し込んでいた指の周りで、内壁が小刻みに収縮した。クリトリスからの刺激と、アナルへの中出しが同時に来て、ももこの理性は——いつもの負けず嫌いの強がりは——一瞬、白く飛んだ。
「あ、ぁぁ——」
長く尾を引く声が、シーツの上に落ちる。
やがて、脈動が緩やかに途切れた。
ふー、と、おじさんは深く息を吐く。
亀頭をゆっくりと引き抜くと、すぼまりの縁から、薄く濁った白い液が、とろりと垂れた。それを見て、また悪い気分が湧き上がる。けれど、さすがに、もうこれ以上は焦らさない方がいい予感があった。
「ったく、本気で出しやがって」
ももこが、シーツに突っ伏したまま、こもった声で言った。
ポニーテールの根元から汗の粒がうなじを伝い落ちる。シーツに片頬を押しつけたままの横顔は、まだ真っ赤だった。耳まで赤い。けれどその声色にはどこか満足げな響きがあった。本人は決して認めないだろうけれど。
「ま、悪くなかったろ?」
「最悪だった。あの音が、本気で最悪だった」
「中身の話だよ」
「中身、は……まあ、悪くは、なかった、かもな」
ぴょこんと跳ねたポニーテールを肩越しに揺らして、ももこはこちらを見上げた。
紫の瞳には、いつもの負けず嫌いの輝きが半分くらい戻っていた。けれど残りの半分には、新しく開けてしまった扉に対する戸惑いと興味と、ほんの少しの開き直りが、ぐちゃぐちゃに混ざって浮かんでいた。
「で、四発目だぞ、おっちゃん。さすがに、もう、終わりか?」
「冗談言うな。まだ、足りねえ」
「だよなー。アタシも、まだ、足りねえ」
あはは、と肩で笑って、ももこはようやく身体を起こした。
ぴんと跳ねたポニーテールが、シーツの上で軽く弾む。
夜は、まだ続く。
◇ ◇ ◇
ベッドに転がっていたももこが、自分から仰向けになった。
両膝を立てて、軽く左右に開く。シーツに無造作に投げ出された両腕。汗の粒が浮く首筋。橙色の灯りが、上気した肌の起伏を柔らかく照らした。アナル中出しの余韻でぼんやりしていた紫の瞳が、ゆっくりとこちらに焦点を結び直す。
「五回戦、ラストで、いいよな」
「言われなくても、ラストにする気だ」
「決めとこーぜ。これで終わり。アタシも、明日ちゃんと歩けるくらいで、勘弁してくれよ」
「努力する」
「努力じゃ、足んねえって……」
苦笑しながらも、ももこは両膝をさらに深く折り曲げて、自分の胸のほうへ引き寄せていった。膝が胸に近づくほど、腰が浮き、双丘が斜め上に持ち上がる。さっきまで二発目と四発目を受け止めていた割れ目と、その上のすぼまりが、橙の灯りの下に堂々と差し出された。
——種付けプレスの構図だ。
言葉にしなくても、お互い分かっていた。何度もやってきた体位ではない。けれど、五回戦の締めくくりに、おじさんがこの形を選びたがるのを、ももこは知っている。知っていて、自分から構図を作りにいった。
「上から、思いきり、来い」
「言うじゃねえか」
「アタシも、下から、迎え撃つから」
くすりと笑った口元に、いつもの負けず嫌いが戻っていた。アナルの羞恥でいったん白く飛んでいた強がりが、最後の一戦のために、本人の中で立て直されていた。
おじさんは、両手をももこの膝裏に差し込む。
そのまま体重を前へ預けて、ぐっと膝を胸のほうへ押し込んでいった。腰が浮き、双丘が天井のほうへ向かう。膝立ちになったおじさんの真下に、ももこの結合部がまっすぐ晒される構図——上から肉棒を真下へ叩き込む、種付けプレスの完成形だった。
亀頭の先を、入り口へ押し当てる。
アナルから抜いたばかりの肉棒は、ローションと愛液と精液とでぐちゃぐちゃに濡れていた。それが、ぬぷりと一気に最奥まで沈んでいく。何度も受け入れてきた粘膜は、もう抵抗らしい抵抗を見せない。ただ、入ってきた塊を奥のほうへ吸い込もうとしてくる。
「ぁ、っ……♡ これ、これだよ、これ、いつもの、奥の感じぃ……っ♡」
「ほら、迎え撃つんじゃねえのか」
「はー、はいはい、迎え撃つよ……」
ももこの両足が、おじさんの肩の上にかかる。膝のあたりを抱え込まれた格好で、上半身は枕に押し付けられたままだった。汗で湿った前髪の隙間から、紫の瞳が真上のおじさんを見上げてくる。
——画像なら、撮りたくなる構図だな、これは。
心の中でひとつ呟いて、おじさんは腰を叩きつけ始めた。
ぱちゅんっ。
まず一発、肌のぶつかる音が高く響く。真上から真下への打ち込みは、これまでのバックや騎乗位とはまた違う角度で、子宮口の縁にダイレクトに亀頭をぶつけてくる。ももこの背中が、シーツの上で短く跳ねた。
「あぁっ、深、っ、いきなり、深いぃ……っ」
「お前のここがな、もう全部受け入れる気でいやがる」
「だって、ぇ……五回戦、めだぞ、もう、開きっぱなしだ、ぁ……っ」
文句ではなく、観察だった。何度も同じ男のちんぽを受け入れて、もう抵抗の力を半分以上手放した粘膜の状態を、本人がいちばんよく分かっている。それを承知で、ももこは下から腰を浮かせて、亀頭の打ちつけを下から迎えにいった。
ぱちゅんっ、ぱちゅんっ、ぱちゅんっ。
上から落とすちんぽと、下から迎えるおまんこ。リズムがぴたりと噛み合う瞬間、結合部に走る衝撃が、ふたり同時に背筋を貫いた。汗の飛沫が、シーツの上に小さな染みを散らしていく。
「あぁっ、ん、っ、おっちゃん、これ、これ、本気のやつ、本気のやつぅ……っ」
「お前も、本気で、迎えにきてんだろ」
「当たり、まえ、だぁ……っ、ラスト、なんだから、ぁ……っ」
額に汗の粒を散らして、ももこが歯を食いしばる。けれど唇の隙間から漏れる声は、半分以上が、もう言葉の形をなしていなかった。喘ぎとも呻きともつかない、湿った吐息の連続。それが上下動のリズムに合わせて、こま切れに、絶え間なく漏れる。
おじさんの腰の動きが、徐々に加速していく。
ばちゅんっ。ばちゅんっ。ばちゅんっ。
単純な打撃音が、空気そのものを叩いていた。橙色の灯りの下、汗まみれの腹と、汗まみれの双丘とが、上下に激しくぶつかり合う。シーツの皺が深く刻まれて、敷布団の角が押し下げられる。種付けプレスの体位は、男の体重がそのまま打撃の威力に変わる構図だった。
「あぁ、っ、来てる、これ、また、来そ、ぉ……っ」
「俺もだ、もう、無理、保たねぇ」
「五発目、中、中で、いいから、ぁ……っ♡」
「分かってる」
「子宮、子宮の中、いっぱい、ぶち撒けて、けっ……♡♡♡」
ももこの両手が、シーツを引きちぎる勢いで握りしめられる。両足の指先が、ぎゅっとカールして、おじさんの肩の上で小刻みに痙攣した。腰が下から自然と持ち上がって、亀頭のいちばん深い位置を求めて、自分から角度を合わせにくる。
——こいつ、いつも最後だけは、本気で迎えにくるんだよな。
心の中でひとつ呟いて、おじさんも最後の追い込みに腰を振り抜いた。
ばちゅんっ、ばちゅんっ、ばちゅんっ、ぱちゅん——
最後のひと突きを、最奥まで深く突き入れる。亀頭の先が、子宮口の縁にぴたりと密着した。下からも、ももこの腰が同じタイミングで持ち上がる。お互いの最深部が、ぴったりと噛み合った瞬間。
ぐっと、動きが止まる。
そして、爆ぜた。
どびゅっ、びゅるるるるっ、びゅくっ、びゅくびゅくっ。
「っ、ぐ……ッ」
おじさんの喉から、声にならない呻きが漏れる。
肉棒の根元から、これまでで最も強烈な脈動が突き抜けていった。一発目から四発目までで、もう出すものはないはずだった。なのに、五発目の精液は、量も勢いも遜色なく、ももこの最奥に向かって叩き込まれていく。
「あぁッ、あ、あぁ——ッ」
ももこの背中が、ベッドから浮き上がるほどに反り返った。
声が、初めて、長く尾を引いた。
いつもの軽口と強がりがすべて剥がれ落ちた、純粋な喘ぎだけの声。喉から絞り出されるような、けれど震えるように高い、絶頂の声。両足の指先が肩の上で硬直し、両腕がシーツを掴んで離さない。子宮口にぶつかる白濁を、内壁の奥の奥で受け止める瞬間、ももこの理性は完全に白く飛んでいた。
脈動が、続く。
二発目の脈、三発目の脈、四発目の脈。
その合間に、ももこの内壁が、痙攣のように何度も収縮した。襞の一枚一枚が、肉棒に絡みついて、最後の一滴まで搾り取ろうとしてくる。脳裏に走る快感の波が、おじさんの腰の動きを断続的に痙攣させた。
「あ、ぁ……熱、ぃ……♡♡ いっぱぃ、来てる……っ♡♡」
ぽろり、と紫の瞳から、汗ともつかない雫が一粒、こめかみへと落ちた。普段なら絶対に見せない、緩みきった、本気の余韻の顔。
やがて、脈動が緩やかに途切れる。
けれど、おじさんは、抜かなかった。
まだ、足りないものがあった。
「ももこ、まだだ」
「……は?」
「お前の口にも、最後、出させろ」
言うが早いか、おじさんは脈動の余韻を残したままの肉棒を、ぐっと最奥から引き抜いた。ずるり、と粘膜が剥がれる感触。抜けた瞬間、結合部からたっぷりの白濁が、シーツの上にとろりと溢れ出る。
肩から両足を下ろして、おじさんはももこの胸の上のあたりに膝立ちで跨り直した。仰向けになったままのももこの顔の真上に、ローションと精液と愛液でぐちゃぐちゃに濡れた肉棒の先端が降りてくる。
「うっそだろ、いま中で出したばっかじゃん」
「まだ、出る、口、開けろ」
「いやいや、待て、待て、これ、汚ねぇだろ……」
「いいから、開けろ」
言いながら、おじさんは亀頭の先を、ももこの唇に押し当てた。文句を言いながらも、ももこは口を開ける。さっきまで子宮の縁を叩いていた亀頭が、舌の上にぬるりと乗った。
その瞬間。
最後の脈動が、ぴくり、と肉棒の根元で跳ねた。
どびゅっ、びゅるっ、どぴゅっ。
「んむっ、ぐ、ん、んくっ……」
絞り取るような勢いで、残り滓の白濁が、ももこの口の中に吐き出された。中出しのあとの、本来ならもう絞り出せないはずの量が、ぴゅるぴゅると追加で押し出されてくる。ももこは慌てて唇で亀頭の根元を吸着して、こぼれないようにしっかりと咥え込む。
「ん、っ、ん……ふぁ……」
ももこの頬が、亀頭の先端を押し包むように凹む。
バキューム。
最後の一滴までを吸い出そうとする、本職の技だった。射精の余韻でひりつく尿道の中身を、舌の先と頬の内側の吸引とで、しっかりと絞り出していく。ぬるい白濁が、ももこの口腔の奥のほうに、こく、こく、と二度に分けて飲み込まれていった。
「んく……ふぁ、ぁ……」
ようやく、ももこの唇が亀頭から離れる。
ちゅぽっ、と湿った音。
糸を引いた唾液と精液が、唇の端から顎へとひと筋垂れた。けれどそれを、ももこは舌の先で器用にすくい取って、見せつけるようにこくりと飲み込む。
「……ぷはー、これで、終わり、にしてくれよぉ……」
「ああ、終わりだ。お疲れさん」
「お疲れ、じゃねえって、ほんとに……」
言いながら、ももこはぐったりと枕に頭を預けた。両腕がシーツの上に投げ出される。胸が大きく上下して、息を整えるのに必死だった。汗の粒が、額から首筋、鎖骨の窪みへと流れ落ちていく。
おじさんも、半萎えに戻りつつある肉棒を握ったまま、ももこの隣にどさりと倒れ込んだ。マットレスがふたり分の体重で深く沈む。汗まみれの肌と、汗まみれの肌とが、湿った音を立てて触れ合った。
しばらく、ふたりの呼吸の音だけが、橙色の灯りの下に響いていた。
空調の唸りも、廊下の足音も、もう耳に入らない。互いの心拍が、肌越しに伝わってくる。ももこの胸の弾みが、おじさんの腕に乗って、ゆっくりと上下していた。汗ばんだ髪の根元から、湯上がりとはまた違う種類の、熱の匂いが立ちのぼっている。
「……はー、五回も出した男が、まだ生きてんの、すごいよな」
「お前のおまんこが、絞り出してくるからだろ」
「またそれかよ。いつもいつも、人のせい」
「事実だ」
「事実かもなー」
ふへ、とももこが力なく笑った。
笑いの振動で、隣り合った肌どうしが、わずかに揺れる。
しばらくの間、ふたりはそのままだった。
言葉もなく、ただ汗と精液で湿ったシーツの上で、橙色の灯りに浸っているだけの時間。事後の余韻、というには、あまりに事務的で、あまりに親密だった。客と嬢の関係に、こんな空気は似合わない。けれど悪友の関係には、たぶん、これで合っている。
◇ ◇ ◇
時計の秒針が、こつ、こつ、と歩を進めていく。
やがて、ももこがゆっくりと身体を起こした。
「——シャワー、もう一回、浴びてくる」
「……俺は、もう、ベッドから動けねえ」
「動けなくていいよ。アタシだけ、軽く流してくる」
「……すまん」
「謝んなって、アタシだって浄化させてもらってる側なんだから」
軽く笑って、ももこはベッドから降りた。シーツに広がった白濁の染みを一瞥して、けれど特に何も言わずに、そのままバスルームへと歩いていく。後頭部のポニーテールが、汗で湿気を含んでくたりと垂れ下がっていた。それでも結び目はほどかれない。バスルームの中だけ、と本人が言ったとおりだった。
水音が、控えめに響く。
おじさんは、シーツの上に仰向けに寝転んだまま、天井をぼんやりと見上げていた。もう何度目になるか分からないこの天井を、いつもこのタイミングで眺める。指名のあとの余韻、というやつだった。
——五回も出して、まだもうちょい、いけそうな気がしてんだから、そりゃ、また指名しちまうよな。
心の中でひとり呟いて、おじさんは小さく笑った。
しばらくして、ももこが戻ってきた。
軽くシャワーを浴びて、汗と精液を流し落としたももこは、もう制服の準備に取りかかっていた。下着を着けて、白いセーラーをかぶり、赤いスカーフを結び直す。チェックのミニスカートを履いて、黒のアームカバーを腕に通していく。
最後に、髪を結び直す。
濡れて重さのあった金色の束が、もう一度高い位置でぴょこんと跳ね上がった。ヘアゴムをきゅっと締めて、毛先をぱさりと払う。鏡台の前で、軽く前髪を整えると——もう、いつもの十咎ももこに戻っていた。
部屋に来たときと、ほとんど同じ姿。
違うのは、頬にうっすらと残る上気と、瞳の奥のほんの少しの満足だけ。
「——ん、おっちゃん、行くわ」
「おう」
「次もまた指名してくれよなー♡ おっちゃんの精液、アタシのソウルジェムにめっちゃ効くんだ♡」
「分かってる、放っとけ」
「ふふ、了解」
ベッドの脇に立ったももこが、こちらを見下ろした。
紫の瞳が、ふと、いたずらっぽく細められる。
「アタシも、悪くなかったよ♡ 今日のセックス」
「……そうかい」
「うん。また、なんか変なリクエストあったら、言えよ。考えてやるから」
「変なリクエスト前提で予告しやがって」
「あったろ、今日も。一個」
にししっと笑って、ももこは軽く片手を上げた。
「じゃ、またな」
「……またな」
扉が開く。廊下の白い光が、橙色の部屋の中に細く差し込んで、ももこのシルエットを輪郭だけ抜いた。後頭部のポニーテールがぴょこんと揺れて、扉の向こう側へと消えていく。
扉が、ぱたりと閉じる。
部屋に、ふたたび橙色の灯りだけが残った。
空調の唸りが、控えめに鳴っている。シーツに残った白濁の染みと、汗の匂いと、ベッドサイドの飲みかけのペットボトル。それらが、いまさっきまでここにあった時間の痕跡を、しんと静かに証言していた。
おじさんは、天井を見上げたまま、ふー、と長い息をついた。
次の指名のことを考えるのは、もう少しあとでいい。
いまは、ただ、五回も搾り取られた身体の重さに、しばらく身を任せていたかった。
——あいつ、本当に、明日もちゃんと働けるのかね。
心の中でひとつ呟いて、おじさんは小さく笑う。
橙色の灯りが、まだ少しだけ、シーツの上で揺れていた。