※この作品はR-18です。

搾精都市神浜~魔法少女たちのエッチな短編集~   作:黒蓮/クロハス

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神カフェ♡和泉十六夜 ~楽園行き快楽共有セックス~

 神浜市、大東区。

 

 古い商店街を二本ほど抜けた先の、レンガ壁のビルの二階。一階はクリーニング店で、ガラス越しに回転するドラムが見える。その脇の、靴底が擦れて削れた狭い階段を上った先に、それはあった。

 

 ——神カフェ。

 

 看板は木製で、カフェにしてはやけに品のいい筆文字が躍っている。扉を押し開けると、珈琲の香りと、ほんのり甘いバニラの匂いが鼻先をくすぐった。

 

 店内は意外なほど落ち着いている。レンガ壁に合わせたダークブラウンの内装、カウンターの背面には銀のケトルやカップがずらりと並んで、暖色のダウンライトがそれぞれのテーブルに琥珀色の光を落としていた。窓際のソファ席は深い赤のレザー張りで、ゆったりと身体を沈められる大きさがある。

 

 平日の昼下がり、客は少ない。カウンターの奥で先輩らしきメイドがグラスを磨いているのが見えるだけで、ホール側には人の気配がなかった。

 

 青年は、階段を上りきったところで足が止まっていた。

 

 扉の前。片手にスマートフォンを握りしめて、画面に表示された地図と目の前の看板を三回見比べて、ようやく——ここだ、と腹を括った。

 

 太めの身体を扉の隙間にねじ込むようにして、店内に滑り込む。入った瞬間、珈琲の香りに混じって、どこかから甘い花のような香りが漂ってきた気がした。

 

 神浜搾精メイドカフェ——通称、神カフェ。

 

 ネットの掲示板で見つけた情報は、信じがたいものだった。大東区に新しくできたメイドカフェ。普通のメイドカフェとは違う。メイドが、する。全部。——その「全部」の意味を、青年は掲示板のスレッドを三周読み返して、ようやく文字通りに受け止めた。

 

 嘘だと思った。釣りだと思った。けれど書き込みの数と具体性が、冗談にしては異常だった。住所まで載っていた。電話番号もあった。意を決して予約の電話をかけたら、落ち着いた女の声が「かしこまりました」と応じた。それだけ。詐欺サイトの自動音声みたいな不自然さはなく、かといって風俗の受付みたいな慣れた感じでもなく、本当にカフェの予約を受けるような、事務的で丁寧な対応だった。

 

 ——で、来てしまった。

 

 いま、ここに立っている。

 

 心臓がうるさい。シャツの下の腹が汗で肌にへばりついている。太い指で眼鏡のブリッジを押し上げて、きょろきょろと店内を見回した。

 

 そのとき、カウンターの奥から足音が聞こえた。

 

 布の擦れる音。靴底が床板を叩く、規則正しい歩調。青年がそちらへ視線を向けた瞬間——

 

 息が、止まった。

 

 銀髪。

 

 肩の上で切り揃えられた、絹糸のような銀白の髪が、ダウンライトの光を弾いて淡く輝いている。その下に、切れ長の瞳。涼しげで、どこか尊大な光を宿した——けれどよく見れば睫毛が長く、目元には少女特有のやわらかさが残っている。

 

 紺と白のメイド服。

 

 フリルの縁取りが肩口と裾を飾り、ウエストのコルセットが細い胴をきゅっと絞っている。白いエプロンが前面を覆って、腰の後ろで結ばれたリボンが歩くたびにふわりと揺れた。スカートの丈は短い。白いニーハイソックスに包まれた脚が、スカートの裾からすらりと伸びていた。

 

 頭にはメイドのヘッドドレス。白いフリルの王冠が、銀髪の上にちょこんと乗っている。

 

 その少女が——カウンターの向こうから、青年の前まで歩いてきた。

 

 背筋が真っ直ぐ伸びている。堂々としていた。メイドの衣装を着ているのに、どこか軍人か貴族のような気配がある。歩幅が大きい。顎が上がっている。そして、青年の目の前で足を止めると——

 

「やぁ、ご主人。よく来たな」

 

 にっ、と笑った。

 

 笑顔は綺麗だった。けれど愛想笑いではない。もっとこう——戦場で味方を迎えるような、あるいは道場で門弟を受け入れるような。歓迎しているのは確かだが、対等以上の立場から降りてくる気がまるでない、そういう笑顔。

 

「ひ、フォッ——」

 

 青年の喉から、潰れた蛙のような声が出た。

 

 美少女。

 

 現実にいるのだ、こういう生き物が。画面の中のイラストや、コミケのコスプレイヤーとは次元が違う。生きている。呼吸している。銀の髪が、エアコンの微風にさらさらと揺れている。

 

「予約の客だな? ご主人の名前を聞いても?」

 

「あ、は、はいっ、よ、予約した——」

 

 名前を告げると、十七夜は小さく頷いた。手元のメモ帳に視線を落として、さらさらと何かを書き込む。左手でペンを走らせているのが見えた。

 

「確認した。本日担当するメイドは自分だ。名は、なぎたん——」

 

 一拍、間があった。

 

「——和泉十七夜、と言ったほうが正確か。ここでの源氏名はなぎたんだが、正直に言うと自分でもまだ馴染んでいない」

 

 青年は目を瞬かせた。メイドカフェの自己紹介にしては、あまりにも——率直だった。

 

「え、えっと……なぎたん、さん?」

 

「呼び捨てで構わん。ご主人に敬称で呼ばれると調子が狂う」

 

「な、なぎたん……」

 

「うむ」

 

 十七夜は満足そうに頷いて、青年をソファ席へ案内した。赤いレザーのソファに青年がどさりと腰を下ろすと、向かいではなく——隣に、十七夜が座った。

 

 近い。

 

 メイド服のフリルが青年の腕に触れる距離。十七夜の肩から、柔軟剤ともシャンプーともつかない、清潔で仄かに甘い香りが漂ってくる。

 

「ご主人、うちが誇る自慢のパフェを食すか? 自信作だ」

 

「あ、は、はい……」

 

「よし。少し待っていろ」

 

 十七夜が立ち上がってカウンターへ向かう。背中のリボンが揺れるのを、青年はぼうっと見送っていた。

 

 ——可愛い。

 

 メイド服が似合うとか似合わないとかいう次元ではない。この子は何を着ても絵になるだろう。けれどその中身は、メイドというよりは——武将? いや、学者? 口調が完全にそっちだった。「食せ」って。メイドカフェで「食せ」って言う子、初めて見た。

 

 パフェが運ばれてきた。グラスに盛られたフルーツとクリームの山が、青年の前に置かれる。十七夜はテーブルを挟んで再び青年の隣に座ると、腕を組んで、自分が作ったものを眺めた。

 

「さぁ、心置きなく食せ」

 

「い、いただきます……」

 

 スプーンを手に取る。パフェは普通に美味しかった。むしろかなり美味しかった。フルーツが新鮮で、クリームの甘さも上品で、バランスがいい。

 

「……美味しいです」

 

「そうか。それはよかった」

 

 十七夜の声に、初めて柔らかな色が混じった。口元がほんの少し緩んでいる。本気で嬉しそうだった。

 

「自分はまだ新人でな。先輩方に比べれば至らぬ点も多い。だが料理に関しては家で鍛えている。味だけは保証する」

 

「い、いえ、すごく美味しいです……なぎたんが作ったんですか?」

 

「無論だ。メイドたるもの、客に出す料理は自らの手で仕上げて当然だろう」

 

 当然のように言い放つ。その堂々とした態度に、青年は妙な安心感を覚えていた。

 

 ——なんだろう、この人。メイドなのにメイドっぽくない。偉そうだし、口調は硬いし、「ご主人様♡」みたいなテンションは皆無。なのに——

 

 ——なのに、すごく、いい。

 

 気がつけばパフェを半分ほど食べ終えていた。沈黙が流れる。青年がスプーンを止めて、もじもじとしている。聞きたいことがある。聞かなければならないことが。

 

「あ、あの……なぎたん」

 

「なんだ」

 

「ここって……その、普通のメイドカフェ、じゃないんですよね……?」

 

 十七夜は青年を見た。切れ長の瞳が、青年の顔を数秒、静かに観察している。

 

「ご主人は知った上で来たのだろう?」

 

「は、はい……ネットで……」

 

「ならば回りくどい言い方はしない。ここはメイドが搾精の奉仕をする店だ。性行為を含む、全般のな」

 

 青年の手から、スプーンが落ちた。

 

 からん、と乾いた音がテーブルに響く。

 

 知っていた。知った上で来た。けれど目の前の美少女の口から直接「性行為」という単語を聞くと、脳が処理を拒否する。

 

「せ、せせせ性行為——」

 

「そうだ。率直に言えば、セックスだ」

 

 十七夜は腕を組んだまま、さらりと言った。眉ひとつ動かない。

 

「うちは搾精メイドカフェだからな。パフェを食わせて終わりでは営業として成り立たん。ご主人が望むならば、この後自分が奉仕する」

 

「お、おおおお奉仕……」

 

 青年の顔が、耳の先まで真っ赤に染まった。目が泳いでいる。膝の上に置いた両手が小刻みに震えている。

 

 十七夜はその様子をじっと見つめていた。読心の固有魔法を使うまでもない。この男が何を考えているかなど、顔に全部書いてある。緊張。動揺。そして——期待。太い身体の奥で、男の本能がじりじりと熱を上げているのが、十七夜の目には手に取るように見えた。

 

「ご主人。ひとつ聞く」

 

「は、はいっ」

 

「女性経験は」

 

 青年は唇を噛んだ。視線が床に落ちる。数秒の沈黙のあと、蚊の鳴くような声で——

 

「……ないです」

 

「童貞か」

 

「はいぃ……」

 

 情けない声だった。身体を丸めて、消えてしまいたそうにしている。

 

 十七夜は、ふっ、と鼻から息を漏らした。

 

「気にするな。自分もこの仕事は今日が初めてだ」

 

「え?」

 

「神カフェ自体が新しい店でな。自分は先日入ったばかりの新人メイドだ。搾精の実務経験はない。つまりご主人が童貞なら、自分も——まぁ、似たようなものだ」

 

 青年は顔を上げた。

 

 十七夜の顔には、照れも気まずさもなかった。事実を事実として述べている、それだけの表情。けれどその率直さが、かえって青年の胸をじんわりと温かくさせた。

 

 ——なぎたんも、初めてなんだ。

 

「じゃ、じゃあ、お互い初めて同士……?」

 

「厳密には異なるが、大筋ではそうなるな。ご主人は初めての客、自分は初めてのメイド。まぁ、一蓮托生というやつだ」

 

 一蓮托生。メイドカフェで聞く言葉ではない。

 

 青年は思わず、小さく笑った。

 

 その笑顔を見て、十七夜も——ほんの少しだけ、口の端を持ち上げた。

 

「緊張しているようだな、ご主人。だがまぁ心配するな」

 

 十七夜はすっと背筋を伸ばして、胸の前でメイド服のスカートの裾をちょこんとつまんだ。ぎこちないカーテシー。練習したのだろうが、どう見ても軍人の敬礼のほうが似合う所作だった。

 

「——なぎたんにお任せ、だぞっ! ご主人」

 

 にっ、と笑う。

 

 決め台詞のつもりらしかった。先輩に教わったのか、メイドカフェのマニュアルに書いてあったのか。内容は可愛いのに、声も表情も堂々としすぎていて、まるで出陣の挨拶だった。

 

 ——なんだこの人、最高か。

 

「は、はい……!」

 

「では——始める前に、ひとつおまじないをかけよう」

 

「おまじない?」

 

 十七夜がソファの上で向き直った。膝と膝が触れる。青年の太い膝と、ニーハイソックスに包まれた十七夜の細い膝が。

 

 十七夜の顔が、近づいてくる。

 

「動くなよ、ご主人」

 

 銀の髪が、青年の頬を掠めた。シャンプーの匂い。吐息の温度。切れ長の瞳がすぐ目の前にあって、そのまつ毛の一本一本まで数えられそうな距離で——

 

 唇が、重なった。

 

 ふ、と。

 

 最初はただ触れただけだった。十七夜の唇は薄くて、乾いていて、けれどほんのりと温かい。押し付けるのではなく、置くように。少年の——いや、青年の唇の上に、そっと乗せるように。

 

 青年の全身が石になった。

 

 キスをされている。

 

 美少女メイドに。

 

 生まれて初めて。

 

 心臓が耳の奥で爆発していた。唇に触れている感触以外の情報が、脳から全部吹き飛んでいる。目は見開いたまま。まばたきすら忘れている。

 

 十七夜の唇が、わずかに動いた。角度を変えて、もう一度——今度は少しだけ深く。青年の下唇を挟むように吸って、ちゅ、と小さな音を立てた。

 

 その瞬間、青年の身体に——熱が流れ込んできた。

 

 唇を通して。

 

 粘膜から粘膜へ。

 

 最初はかすかな痺れだった。唇の表面がぴりぴりと痺れて、その痺れが舌の付け根まで降りてきて——そこから一気に、喉を通って、胸の奥まで落ちていった。温かい。温かくて、甘くて、身体の内側がとろりと溶け出すような感覚。

 

「っ——?」

 

 青年の目が見開かれた。これはただのキスじゃない。何かが——身体の中に入ってきている。

 

 十七夜が唇を離した。

 

 銀色の糸が、二人の唇の間で一瞬だけ光って、ぷつりと切れた。

 

「おまじない完了だ」

 

 十七夜は平然と言った。唇の端を指先で拭って、ソファの背もたれに身体を預ける。

 

「い、今の——」

 

「自分の固有魔法だ。読心の応用でな、互いの感覚を共有する術をかけた。簡単に言えば——ご主人が感じている快感を、自分も感じることができる。逆もまた然りだ」

 

「ま、魔法……?」

 

 青年はきょとんとしている。魔法。魔法少女。その単語に現実感がまるでない。メイドカフェの演出だろうか、と頭の片隅で考えている。唇に残っている痺れと、身体の芯でくすぶっている熱が、ただのキスの余韻にしてはおかしいと——本能のどこかが警告を鳴らしているのだが、思考がそこまで追いつかない。

 

「信じなくても構わん。じきに分かる」

 

 十七夜はそう言って、ソファから立ち上がった。青年の正面に回って、まっすぐに見下ろす。

 

「さて、ご主人。おまじないもかけた。あとは——」

 

 メイド服のスカートが、ふわりと揺れた。

 

「服を脱げ。全部だ」

 

 堂々と、命令した。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 ソファの上に、裸の男が座っている。

 

 シャツもズボンも下着も、脱いだ服は十七夜が手際よく畳んでソファの端に積んでくれた。メイドとしては正しい振る舞いなのだろうが、自分の下着を美少女に畳まれるというのは、なかなかに精神にくるものがある。

 

 青年は両手で股間を隠そうとして——隠しきれていなかった。

 

 指の隙間から、勃起したチンポがびくんと脈打って天を向いている。パフェを食べていた頃から、いや、十七夜の顔を初めて見た瞬間からずっと硬くなっていた。キスのあとはもう限界で、亀頭は赤黒く膨らんで、先端から透明な液が糸を引いている。

 

 十七夜は青年の正面に立ったまま、その股間を——観察していた。

 

 恥じらいはない。嫌悪もない。まるで初めて見る料理の盛り付けを検分するような、真剣で冷静な目つき。

 

「ふむ」

 

 短く唸った。

 

「なるほど、これが勃起したチンポか。実物は初めて見るが——思っていたより、熱を持っているな」

 

「みっ、見ないでそんなにじっくり……」

 

「なぜだ。これから口に含むものだろう。よく見ておかねば仕事にならん」

 

 口に含む。

 

 その言葉が脳に届いた瞬間、チンポがびくんっと一際大きく跳ねた。先走りの雫がぷるんと震えて、一筋、太腿を伝い落ちる。

 

「お、おおお口に——フェラ、してくれるんですか……?」

 

「無論だ。搾精の基本はまず口からと先輩に教わった。ご主人の精液の味と量を把握してからでないと、本番の段取りが立てられんからな」

 

 段取り。精液の味と量を把握。

 

 どこまでも事務的だった。けれどその事務的な態度が、逆に——青年の興奮を煽り立てる。こんな美少女が、自分のチンポの「段取り」を真剣に考えている。その事実だけで頭がおかしくなりそうだった。

 

 十七夜がソファの前に膝をついた。

 

 フリルのスカートがふわりと広がって、カーペットの上に白い花が咲いたように見えた。青年の開いた両膝の間に、銀髪の少女がすとんと収まる。ダウンライトが十七夜の頭上から光を落として、銀の髪が白金に輝いた。

 

 ヘッドドレスのフリルが、青年の太腿に触れた。

 

「では、始める」

 

 十七夜の左手が、青年のチンポの根元を掴んだ。

 

「っ——」

 

 電撃。

 

 細い指が竿を握った瞬間、青年の腰が跳ねた。ただ握られただけ。それだけで全身の毛穴という毛穴が開いて、鳥肌が背中から二の腕まで駆け上がった。

 

 十七夜の手は冷たかった。ひんやりとした指先が、火のように熱い肉棒に巻きつく。その温度差が、焼けた鉄を水に浸けたときのように——じゅう、と神経を灼いた。

 

「ほう」

 

 十七夜が呟いた。チンポを握ったまま、目を細めている。

 

「——なるほど。これがチンポの感覚か」

 

「え?」

 

「さっきかけた魔法だ。ご主人が感じている快感が、自分にも流れ込んでくる。握られただけでこれほどか……ふむ、たしかに、下腹のあたりがじんと熱い」

 

 快楽共有。

 

 キスのときの「おまじない」が——本当に効いている。青年がチンポを握られて感じた快感が、そのまま十七夜の身体にも流れ込んでいるのだ。

 

 信じられなかった。けれど十七夜の反応は演技には見えない。あの冷静な瞳の奥に、かすかな驚きと好奇心が浮かんでいる。

 

「興味深いな。では——」

 

 十七夜は顔を近づけた。

 

 青年のチンポの先端に、十七夜の唇が——近い。吐息がかかる。亀頭の表面に、十七夜の温かい息が触れるたびに、先走りの液がぷるぷると震えた。

 

 唇が、開く。

 

 薄い唇の隙間から、小さな舌先がちろりと覗いた。

 

 その舌が、亀頭の先端に——触れた。

 

「ひぅっ——」

 

 青年の喉から、もはや言語ですらない音が漏れた。

 

 ちろ。

 

 舌の先端が、亀頭のてっぺんを舐めた。尿道口の周りを、ほんの一瞬だけ撫でるように。温かくて、やわらかくて、ぬるりとした粘膜の感触。手のひらともティッシュとも次元の違う、生き物の舌が性器に触れるという圧倒的な刺激。

 

「ふむ……ここか」

 

 十七夜の声が、チンポのすぐ近くで響いた。まるで独り言のように——分析している。

 

「亀頭の先端……尿道口の縁に沿って、特に強い信号が来るな。なるほど、ここが敏感なのか」

 

 舌先が、尿道口の周りをくるくると円を描いた。

 

「ひっ、あっ、あああっ——」

 

 青年の腰が浮いた。背中がソファの背もたれに押し付けられ、両手がレザーの表面を掻きむしる。目の前が明滅している。

 

 十七夜は初めてのフェラだった。テクニックなど知らない。けれど——快楽共有の魔法が、全てを補っていた。

 

 青年のチンポに舌を当てるたびに、その部位がどれほどの快感を生んでいるかが、十七夜自身の身体にリアルタイムで伝わってくる。尿道口の右の縁を舐めたとき、信号が強い。左を舐めると、やや弱い。裏筋に沿って舌を下ろすと——どん、と重い快感が腹の底から突き上げてくる。

 

 まるで地図を描くように、十七夜は青年のチンポの「快感の地形」を舌先で読み取っていく。

 

「ここがこうなっているのか……」

 

 ちゅぷ、と亀頭を唇で包んだ。

 

 青年の全身が弓なりに跳ねた。

 

「ぁあああっ——なっ、なぎたん、それっ——!」

 

 口の中。

 

 十七夜の口の中に、チンポの先端が入っている。唇が亀頭のカリの段差に引っかかって、きゅっと締まる。舌の表面が、亀頭の裏側を——裏筋の付け根を——ぬるぬると舐め回している。

 

 温かくて、ぬるくて、狭い。唇のリングが竿を締め、舌が亀頭を転がし、口蓋の柔らかい粘膜が上面を圧迫する。三方向から同時に包まれる感触に、青年の思考回路はとっくにショートしていた。

 

「ん——」

 

 十七夜が、亀頭を含んだまま吸った。

 

 じゅる、と。

 

 頬を窄めて、真空を作るように——ちゅうっ、と吸い上げた。亀頭の全表面に陰圧がかかって、先端から何かを引きずり出されるような感覚。

 

「ぅあっ——や、やばっ——なぎたん、気持ちよすぎ——」

 

 青年の目尻に涙が滲んでいた。腹筋が痙攣するように引き攣って、太腿が小刻みに震えている。

 

 十七夜は口を離さない。

 

 吸いながら——舌を動かしている。裏筋の根元から亀頭の先端へ、舌先をゆっくりと押し上げていく。途中、カリの段差のすぐ下にある窪みを舌先で弾くと——

 

「ふぐっ——!」

 

 青年の腰が大きく跳ねて、チンポが十七夜の口の奥に突き込まれた。

 

「——っ」

 

 十七夜の眉が寄った。喉の奥を突かれて、反射的に涙が一筋、頬を伝い落ちる。けれど口は離さなかった。片手で青年の腰を押さえつけて、もう片方の手で竿の根元を握り直す。

 

「ん……んぅ……」

 

 鼻からゆっくりと息を吸って、体勢を整えた。自分の中に流れ込んでくるチンポの快感を、データとして処理する。いま、舌で弾いた場所——カリのすぐ下、裏筋との境目——ここが、おそらくこのチンポの最大感度ポイント。

 

 見つけた。

 

 十七夜の瞳に、狩人の光が宿った。

 

 そこを——集中的に攻め始めた。

 

 舌先をカリの裏の窪みに押し当てて、くるくると円を描くように刺激しながら、唇で亀頭全体を密閉して、じゅるるっ♡と吸い上げる。

 

「ひぃっ——! あっ、あっ、あっ、だめっ——なぎたん、そこ、そこやばいっ——!」

 

 青年の声が裏返った。

 

 十七夜にも分かっていた。自分の身体に流れ込んでくる快感の波が、急激に大きくなっている。下腹の奥から熱い塊がせり上がってくるような——見知らぬ感覚。これが、射精の前兆。男の身体の中で精液が持ち上がっていく感覚を、十七夜は自分のものとして感知していた。

 

 ——近いな。

 

 冷静に判断した。あと数秒、このまま吸い続ければイク。

 

 ——だが。

 

 唇の圧力を、すっと緩めた。

 

 舌先を窪みから外して、亀頭の側面を軽くなぞるだけに切り替える。刺激の強度を、一気に三分の一まで落とした。

 

「えっ——? あっ、ぅう……」

 

 青年が困惑の声を上げた。もう少しで——もう少しで絶頂だったのに。あと一押しで壊れそうだった快感の山が、すうっと遠ざかっていく。

 

「な、なぎたん……なんで止め——」

 

 ちゅぷ、と十七夜が口を離した。亀頭が唇の輪から抜けて、ぬるりと唾液の糸を引く。先走りと唾液が混じった透明な液が、十七夜の薄い唇からチンポの先端まで橋を架けて、ゆらゆらと揺れた。

 

「止めてはいない。調整しただけだ」

 

 十七夜は、チンポを握ったまま涼しい顔で言った。口元が唾液と先走りで濡れているのに、表情は研究者のそれだった。

 

「ご主人の射精感覚が自分にも届く以上、絶頂の寸前がどこかは手に取るように分かる。あまり早く出されると、自分がチンポの快感を学ぶ時間が足りなくなるからな。もう少しだけ付き合ってもらう」

 

「そ、そんな……」

 

 青年は泣きそうな顔をした。睾丸が引き攣って、精液がすぐそこまで来ているのに出してもらえない。チンポはびくびくと痙攣して、先端から透明な液をだらだらと零し続けている。

 

「ほら、まだだ。もう少し——」

 

 十七夜が再び口を開けて、亀頭を含み直した。

 

 今度はゆっくりだった。唇で亀頭をやさしく包んで、舌の表面でぬるぬると全体を撫でていく。強い刺激は与えない。ぎりぎり射精に届かない絶妙な圧力で——寸止め。

 

「ぅうぅ……なぎたん……おねがい、出させて……」

 

 青年が懇願した。両手がソファの肘掛けを握りしめて、指の関節が白くなっている。涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだった。

 

 十七夜は口を離さないまま、上目遣いに青年を見た。

 

 切れ長の瞳が、ダウンライトの光を受けて琥珀色に光る。涙の跡が残った頬。唾液で光る唇。チンポを咥えたメイド少女が、真っ直ぐに青年を見上げている。

 

 ——その目が、ほんの少しだけ、笑っていた。

 

 ちゅぽ、と口を離す。

 

「よし。もう十分学んだ。——出していいぞ、ご主人」

 

 許可。

 

 待ちに待った許可だった。

 

「自分もそろそろ、射精の快楽とやらを味わわせてもらおう♡」

 

 十七夜の口元に、かすかな期待の色が浮かんだ。——のを、青年は見逃さなかった。あの冷静な十七夜が、チンポの快楽を通して「射精」に興味を持っている。

 

 再び、口が開く。

 

 今度は容赦がなかった。

 

 亀頭を深く咥え込んで、カリの裏の窪みに舌先を突き立てながら——裏筋を舌の腹で圧迫し、同時にじゅるるるっ♡と凄まじい吸引力で吸い上げる。

 

 最適解。

 

 快楽共有で学び取った、このチンポの全感度マップを——一度に、全部、叩いた。

 

「あっ——ぁああああっ——!」

 

 青年の背中がソファから浮き上がった。

 

 来る。来る来る来る。腹の底から、精液が、噴き上がってくる。睾丸がきゅうっと引き攣って、尿道の奥から熱い塊が凄まじい速度でせり上がってきて——

 

「出るっ——なぎたんっ——出るぅっ——!」

 

 十七夜は口を離さなかった。

 

 びゅるっ——

 

 最初の一発が、十七夜の舌の上に撃ち出された。

 

 どろりとした熱い液体が、舌の表面を叩いて、口蓋まで跳ね返る。ぶるるっ、と二発目。三発目。チンポが口の中でびくびくと痙攣して、精液を吐き出し続ける。

 

「ん——んんっ——」

 

 十七夜の眉が跳ね上がった。

 

 来た。

 

 青年の射精の快感が、快楽共有を通じて十七夜の身体に雪崩れ込んできた。下腹の奥を鉄の杭で打たれたような——瞬間的で、暴力的な快楽の爆発。女の身体で味わう絶頂とはまるで質が違う。持続時間は短い。けれどその一瞬に凝縮された快感の密度が凄まじい。雷に打たれたように、全身の神経が一斉に発火した。

 

「——っ!」

 

 十七夜の身体が、小さく震えた。

 

 口の中にまだ精液が溜まっている。びゅく、びゅく、と脈打つチンポから、最後の数滴がとろりと舌の上に絞り出される。

 

 青年はソファの背もたれに全体重を預けて、だらりと崩れ落ちていた。目は虚ろで、口は半開きで、全身の力が抜けている。射精の余韻がまだ身体の芯で燻っていた。

 

 十七夜は、ゆっくりとチンポを口から引き抜いた。

 

 ちゅぽん、と粘度の高い音が立つ。唇と亀頭の間に、精液と唾液の混じった白濁の糸が何本も架かって、ゆらゆらと伸びた。

 

 口を閉じた十七夜が——こくり、と喉を鳴らした。

 

 飲んだ。

 

 青年がぼんやりと見ている前で、十七夜は口の中の精液を嚥下して、軽く唇を舐めた。

 

「……ふむ」

 

 十七夜は短く息を吐いた。頬がうっすらと赤い。本人はそれに気づいていないのか、気づいていて無視しているのか——声だけはいつもの涼しさを保っている。

 

「なるほどな。女の絶頂とは違い、瞬間的に増幅される快感が一気に弾ける仕組みか。持続は短いが……この凝縮感は、なかなかクセになるな」

 

 分析。まだ分析している。頬が赤いのに。

 

「男どもが射精に夢中になるわけだ」

 

 分析を口にしながら、十七夜はチンポから手を離さなかった。根元を握ったまま、亀頭の先端を覗き込んでいる。尿道口の周りに、まだ白い精液がとろりと残っていた。

 

「ふむ……まだ残っているな」

 

 唇を寄せた。

 

 ——じゅっ♡

 

 尿道口に唇を密着させて、残った精液を吸い出した。

 

「ぎぃっ——!?」

 

 青年の全身がびくんと跳ね上がった。ソファの肘掛けを掴んだ指が軋む。射精直後のチンポは——感度が、壊れている。亀頭の全表面が過敏に膨れ上がって、触れるだけで痛みに近い快感が走る。そこを、吸われた。尿道の奥に残った最後の一滴を啜り上げるように——

 

「やっ——やめっ——なぎたんっ、いま無理っ——!」

 

 悲鳴だった。快感が強すぎて声帯が裏返り、少女のような叫びが喉の奥から飛び出した。腰を引こうとするが十七夜の手が根元を押さえていて逃げられない。

 

 ちゅる、と舌先が尿道口の縁をなぞった。精液の残滓をひと舐めして、ちゅぅ♡ともう一度吸う。

 

「ひぃぃっ——あっ——あああっ——」

 

 目が白黒していた。白目を剥きかけて、戻して、また剥きかけて。視界が明滅する中で、涙がぼろぼろと頬を伝い落ちている。身体が自分のものではないように痙攣して、腹筋がびくびくと引き攣るたびに、ソファのレザーが汗で鳴った。

 

 十七夜の眉が、くい、と上がった。

 

 青年の絶叫と同時に、快楽共有を通じて凄まじい信号が流れ込んできたのだ。射精の快感とは別種の——鋭くて、細くて、神経を直接針で抉るような過敏の痛覚と快楽の境界線上の刺激。下腹がきゅうっと絞られるような感覚に、十七夜は思わず太腿をぎゅっと閉じた。

 

「——なるほど、確かにこれは強烈だな」

 

 ちゅぽ、と口を離す。唇の端に白い雫がひとつ残って、舌先がそれを攫った。

 

「絶頂の直後に攻められる辛さは、男も女も変わらんか。いや——女の場合はクリトリスで同じことをされると似たような反応になるが、この鋭さはまた独特だな」

 

 冷静に分析しているが、その声がわずかに——ほんのわずかに上擦っていた。太腿をぴたりと閉じたまま、自分の身体に残る余波を処理している。

 

「ご主人、大丈夫か?」

 

 青年はぜえぜえと肩で息をしながら、涙と汗でぐしゃぐしゃの顔を十七夜に向けた。

 

「は、はい……生きてます……ぎりぎり……」

 

「よかった。初手で壊れられては困る」

 

 十七夜は口元を手の甲で拭った。白い精液が、メイド服の袖口にわずかに付着している。

 

「——味は、塩気が強いな。不味くはない」

 

 独り言のように呟いて、十七夜はソファの横に膝をついたまま、青年の虚脱した顔を見上げた。

 

 切れ長の瞳が——まだ、好奇心で光っている。

 

「さて、ご主人。精液の味と量は把握した。が——まだ、お互い学ぶべきことがある」

 

「ま、まだ……?」

 

「自分はご主人のチンポについて学んだ。だが逆がまだだ。ご主人は女の身体について何を知っている?」

 

 青年は口をぱくぱくさせた。

 

「お、おおお女の身体……」

 

「よかろう、その反応が答えだ。——ということで、次は自分の番だ。ご主人、六十九という体位を知っているか?」

 

「ろ、ろくじゅうきゅう——シックスナインですかぁ……!?」

 

「知っているなら話が早い。お互い同時に学習できて効率がいい。ご主人はおまんこの勉強、自分はチンポのさらなる分析。一石二鳥だろう♡」

 

 十七夜は立ち上がって、ソファの上のスペースを見定めた。

 

「ご主人、横になれ。自分が上に乗る」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 赤いレザーのソファに、青年が仰向けに横たわった。

 

 幅はぎりぎり一人分。太めの身体がソファの端から少しはみ出しかけて、青年が身じろぎするたびにレザーがきゅっきゅっと鳴った。頭はソファの肘掛けに乗せている。視界には天井のダウンライトと——その光に縁取られた、十七夜のシルエット。

 

 十七夜はソファの端に立ったまま、スカートの裾をつまんでふわりと持ち上げた。白いニーハイソックスの上の、素肌の太腿が現れる。その奥——スカートの影から、白い下着がちらりと覗いた。

 

「では、乗るぞ」

 

 片脚を上げて、青年の身体を跨いだ。

 

 膝がソファのレザーに沈む。メイド服のスカートが青年の胸の上にふわりと広がって、フリルの裾が鎖骨をくすぐった。十七夜は青年の身体の上を——頭のほうから足のほうへ——膝で移動していく。

 

 と。

 

 視界が、暗くなった。

 

 十七夜のスカートの中に、青年の顔が潜り込んでいた。白い布地の天蓋。ニーハイソックスに包まれた太腿が左右に並んで、その奥——

 

「さぁ、女性器のお勉強の時間だ」

 

 頭上から十七夜の声が降ってくる。

 

 ぱさ、と布の擦れる音。十七夜が自分の下着を横にずらしたのだろう。スカートの暗がりの中に——それが現れた。

 

 おまんこ。

 

 すぐ目の前に。手を伸ばせば届く距離に。

 

 薄い桃色の襞が、ダウンライトの逆光の中でほんのり湿って光っている。整った形をしていた。左右の襞がやわらかく閉じていて、割れ目の上のほうに小さなピンク色の粒が——クリトリスの先端が、フードの下からわずかに顔を覗かせている。

 

 匂いが、鼻を打った。

 

 花のような、どこか甘酸っぱい。女の身体から立ち上る、温かくて湿った香り。フェラの間もうっすら漂っていたそれが、至近距離では明確な輪郭を持って鼻腔に流れ込んでくる。

 

「——っ」

 

 青年の喉が引き攣った。声にならない。現実のおまんこを目の当たりにして、思考が完全にフリーズしていた。

 

「どうした、ご主人。固まっているぞ。——説明するから聞け」

 

 頭上の十七夜は至って冷静だった。腰を少し下げて、青年の顔におまんこを近づけながら——自分の左手の指先で、性器の各部位を示していく。

 

「まずここ、これがクリトリスだ。この突起が女の感覚の中枢でな、男でいうところの亀頭に相当する。その下のここが尿道。そしてここが——膣口」

 

 指先が膣口に触れた瞬間、ぷくり、と粘液が指に絡んだ。愛液がすでに滲み出しているのだった。

 

「先ほどのフェラで、ご主人の快感が自分にも流れ込んでいたからな。チンポへの奉仕をしている間に、自分の身体もそれなりに反応している」

 

 さらりと言った。恥ずかしがる気配がまるでない。

 

「では実習だ。まずクリトリスに触れてみろ」

 

「は、はいっ——」

 

 震える指が、伸びた。人差し指の腹が——恐る恐る、クリトリスの突起に触れる。

 

 瞬間。

 

「っ——ぁ」

 

 青年の口から、小さな喘ぎが漏れた。

 

 ——自分の声なのに。

 

 指先が触れたのは十七夜のクリトリスだった。なのに、快感が——青年自身の身体にも走った。快楽共有。十七夜のクリトリスに触れたことで十七夜が感じた快感が、そのまま青年の身体に流れ込んできたのだ。

 

 それは、チンポの快感とはまるで違うものだった。

 

 チンポを握られたときの快感は、局所的で鋭くて、表面を電気が走るような刺激だった。けれどこれは——身体の芯から、じわぁぁっと溶けるように広がっていく。下腹の奥、金玉の裏のあたりに、存在しないはずの器官が熱を帯びて脈動するような。重くて、甘くて、鈍いのに凄まじく深い。

 

「フォォッ——!? な、なんだこれ——!?」

 

 青年が目を剥いた。指一本触れただけで、腰から下が溶けるような快感に襲われている。

 

「ふっ——どうだ、それが女が感じている快感だ」

 

 十七夜の声に、わずかな得意げな色が混じった。

 

「男の感覚とは質が違うだろう。クリトリスの快感は、瞬間的な鋭さより持続的な深度に特徴がある。——そしてそれを、ご主人の脳は男の回路で受け取っているわけだ。処理が追いつかんのも無理はない」

 

 処理が追いつかないどころではなかった。存在しない器官から送られてくる快感信号を、男の脳がどう解釈していいか分からず——快楽だけが意味不明な洪水のように全身を浸していく。

 

 衝撃がようやく収まりかけて、青年はぜえぜえと肩で息をついた。

 

「す、すごい……女の人って、こんなの感じてるんですか……」

 

「これでもまだ表面を撫でただけだぞ。——落ち着いたなら、もう少し踏み込んでみろ」

 

 青年は唾を飲み込んで、再び指を伸ばした。今度はクリトリスの周囲を、ゆっくりと円を描くようになぞる。

 

 じわぁ、と快感の波がまた押し寄せてきた。けれど今度は不意打ちではない。来ると分かっていれば耐えられる——いや、耐えるというより、味わえる。男のチンポの快感とはまるで異なる、ぬるい蜜の中に全身を浸すような幸福感。

 

 ——すごい。すごいぞこれ。

 

 指が夢中になっていた。クリトリスの右側を撫でると、左側より快感が強い。フードの上からこすると鈍く響いて、フードをそっと剥いて直接触れると——

 

「——ッ」

 

 十七夜の身体がぴくんと震えた。青年の顔の上で、太腿が一瞬きゅっと閉じかけて、すぐに戻る。

 

「ふむ——そこは、確かに強い」

 

 声を平静に保とうとしている。けれど息が、さっきより浅い。

 

「ご主人、そのまま吸ってみろ。唇で包んで、舌先で弾くようにだ」

 

「す、吸う……っ」

 

 青年は顔を持ち上げて、十七夜のクリトリスに唇を近づけた。

 

 鼻先が襞に触れた。温かい。濡れている。匂いが頭の中を満たして、本能が理性を押しのけていく。唇を開けて、小さな突起を——吸った。

 

 ちゅ♡

 

「——ふっ」

 

 十七夜の吐息が、頭上で揺れた。

 

 舌先で、クリトリスをちろちろと弾く。吸いながら。唇の輪で根元を締めて、舌先を裏側に潜り込ませるようにして——くるくると転がした。

 

 快楽共有が、青年に正解を教え続けている。自分がやった愛撫に対して、十七夜が感じた快感がリアルタイムで流れ込んでくるのだ。舌をこう動かすと快感が強い。角度をこう変えると弱まる。吸う力を強くすると——鋭くなる。

 

 答え合わせをしながら攻略するゲームのようだった。

 

「膣にも指を入れてみろ」

 

 十七夜の声が、わずかに掠れていた。

 

「天井側——上のほうの壁を指の腹で擦ると、そこにも感じる場所がある」

 

 青年は左手の中指を、膣口に当てた。愛液でぬるぬるに濡れた入り口に、指がずるりと沈んでいく。

 

 中が——熱い。

 

 指を包み込む膣壁のやわらかさと温度に驚きながら、言われた通り上側の壁を探った。指の腹を天井に押し当てて、ゆっくりと擦る。

 

 ——ざらざらした場所があった。

 

 周囲の粘膜とは明らかに違う、少しだけざらついた肉の隆起。そこを指の腹でぐりっと擦った瞬間——

 

「ぅあっ——!」

 

 声を上げたのは青年のほうだった。

 

 快楽共有で流れ込んできた快感に、腰がガクンと跳ねた。クリトリスとは別種の——もっと奥の、内臓の芯をぐっと掴まれるような快楽。子宮を持たない男の身体が、子宮で感じるような深い悦びを無理やり翻訳して受け取っている。

 

「そこだ」

 

 十七夜が短く言った。

 

「そこを押しながら、クリトリスも同時に——やれ」

 

 青年はもはや無我夢中だった。右手の指でクリトリスの裏筋——小さな突起の付け根と、その下の粘膜の繋ぎ目——を舌で舐め上げながら、左手の中指でGスポットをぐりぐりと擦る。

 

 二点同時攻撃。

 

 快楽共有で流れ込んでくる快感が、もはや波ではなかった。津波。下腹の奥全体がじゅわぁぁっと蕩ける甘い熱に浸されて、目の奥がちかちかと白く明滅する。男の快感にはない持続性と深度が脳の容量を食い潰していく。

 

「ここは……? ここをこうすると……?」

 

 指の角度を変えるたびに、快感のフィードバックが変わる。面白くて、気持ちよくて、止められなかった。

 

「フォォッ——ここ気持ちいい……!」

 

 自分で自分を愛撫しているような錯覚。十七夜のおまんこを攻略しているのに、快感を受け取っているのは自分。相手を気持ちよくすることと自分が気持ちよくなることが完全に重なっている。

 

「——ふ、ぅ……なかなか、筋がいいな、ご主人……」

 

 十七夜の声が、明らかに乱れ始めていた。息の合間に言葉を挟み込むような——呼吸に支配されかけた声。

 

 と。

 

 青年の股間に、温かいものが触れた。

 

 十七夜の唇が——再び、チンポに。

 

 いつの間にか勃起が戻っていたチンポを、十七夜は上体を屈めて口に含んだ。六十九の体勢。青年がおまんこを舐めている間に、十七夜もチンポを再開している。

 

 ずちゅ、と湿った音が響いた。

 

「んっ……ぐ——」

 

 さっきのフェラで学習した快感マップを、今度は最初から全力で叩いてきた。裏筋の根元を舌で圧迫しながら、亀頭を口蓋に押し付けるように吸い上げる。カリの裏の窪みに舌先を差し込んで、ぐりぐりと抉る。

 

「ひぃっ——なぎた——ん、ちょっ——」

 

 おまんこの快感とチンポの快感が同時に来る。

 

 男の快感と女の快感が、混線していた。舌先でクリトリスを弾くたびに下腹の芯がとろけて、同時にチンポを吸われる鋭い快感が尿道を駆け上がっていく。二種類の快楽が交差して、干渉して、脳がどちらの信号を処理していいのか分からなくなっている。

 

「ふむ——ご主人のチンポ、もう限界が近いな」

 

 十七夜がチンポから口を離して、冷静に——いや、冷静を装って言った。唇が唾液と先走りで光っている。

 

「またチンポのほうが先にイキそうだ。——どちらが先にイカせられるか、競争と行きたかったが」

 

「む、無理です……なぎたんのフェラすごすぎて……」

 

「仕方ないな。では先に出せ」

 

 再びチンポを咥えた。今度は深い。亀頭だけでなく、竿の半分ほどまで一気に飲み込んで——

 

 じゅるるるっ♡

 

 喉の入り口の粘膜が竿を締め、舌の全面が裏筋を圧迫し、唇のリングが根元近くまで下りて密閉する。その状態で、頬を窄めて——全力で吸った。

 

「あっ——あああっ——出る——なぎたん出るっ——!」

 

 びゅるっ——

 

 二度目の射精が、十七夜の口の中で弾けた。一発目より勢いは弱い。けれど量は十分あった。チンポがびくびくと震えて、精液を吐き出す。

 

 十七夜は口を離さない。精液を口の中に溜めながら——吸い続けている。尿道に残った最後の一滴まで啜り上げるように。

 

「んぅ——んっ——」

 

 さっき学んだばかりの追い吸いを、今度は射精の最中から途切れなくやっている。発射と吸引が同時。精液を吐き出しながら吸い上げられる矛盾した刺激に、青年の視界が明滅した。

 

 こくん、と十七夜の喉が動く。二回目の嚥下。

 

「——ふぅ」

 

 息を吐いて、チンポを口から離した。唇の端から白い雫が一筋垂れて、十七夜の顎を伝い落ちる。

 

「やはり射精の快感はクセになるな——さて、次は自分の番だ。ご主人、続けろ。自分の方もイクぞ」

 

 射精で震えている青年の顔に、ぐい、とおまんこを押し付けてきた。

 

「女の絶頂、しかと味わえ」

 

 有無を言わせなかった。

 

 射精の余韻で全身が痺れている。けれど目の前に——いや、もはや口元に十七夜のおまんこが密着していて、愛液が唇を濡らしている。甘酸っぱい匂いが脳を満たして、本能が理性を上書きした。

 

 青年は、おまんこに思いっきり吸い付いた。

 

 くちゅっ♡

 

 クリトリスを唇で包んで、舌先を突起の裏に潜り込ませて——ちゅうぅっ♡と全力で吸い上げながら、左手の中指はGスポットをぐりぐりと擦り続ける。

 

「——ッ」

 

 十七夜の背中が、ぴんと反った。

 

 銀色の髪がさらりと揺れる。青年の上に跨った体勢のまま、頭を仰け反らせて——白い喉が、ダウンライトの光に晒された。

 

「ッ——イク」

 

 短く、鋭く。

 

 十七夜の身体が、ぶるっ、と震えた。太腿がソファの上できゅっと締まって、膣壁が青年の指をぎゅうぅっと締め付ける。おまんこ全体が脈打つように収縮して、ぬるりと温かい液が青年の口元に溢れ出た。

 

 同時に——快楽共有が、女の絶頂を青年の脳に叩き込んだ。

 

 腰の奥から。

 

 子宮がある場所——男の身体にはないはずの場所から——凄まじい熱を帯びた快感がせり上がってきた。射精の快感が雷なら、これは噴火だった。溶岩のように重くて熱い快楽が、身体の芯からゆっくりと、しかし抗いようのない力で全身に広がっていく。

 

 長い。

 

 射精の快感は一瞬で弾けて消えた。けれどこの快感は——終わらない。波が引いてはまた押し寄せて、引いてはまた。余震のように身体を何度も何度も揺さぶり続ける。

 

「むうぅぅぅぅーーー!」

 

 おまんこに吸い付いたまま、青年がくぐもった絶叫を上げた。目を見開いて、白目を剥きかけて、それでも口は離せなかった。クリトリスに吸い付いた唇がびくびくと震えて、その振動がさらに十七夜の絶頂を煽り、煽られた十七夜の快感がさらに青年に跳ね返ってくる——快楽のフィードバックループ。

 

 十七夜は歯を食いしばっていた。

 

 右手がソファの肘掛けを掴んで、白い指が革に食い込んでいる。切れ長の瞳が見開かれて、普段は涼しげなまぶたがびくびくと痙攣している。けれど——崩れない。声を荒げない。絶頂の波に身体を震わせながらも、歯を食いしばって、和泉十七夜としての矜持を保っている。

 

 やがて、波が——ゆっくりと、引いていった。

 

 十七夜は深く息を吐いた。肩が上下している。前髪が汗で額に張り付いて、ヘッドドレスが少しだけずれている。

 

「——どうだ、これが女の絶頂だ。気持ちよかったか、ご主人」

 

 まだ余裕がある。声は掠れているが、口調は崩れていない。

 

 対して青年は。

 

 十七夜がゆっくりと腰を持ち上げて、青年の顔の上から退くと——

 

 そこには。

 

 顔中を十七夜の愛液でてらてらに濡らして、白目を剥いて、だらしなく口を開けた男がいた。両手はだらんとソファの脇に落ちて、全身が微かに痙攣している。表情は——幸せそうだった。恐ろしく幸せそうだった。涙と愛液と涎が混じった顔で、ぴくぴくと唇を震わせながら、何か言おうとしている。

 

「ご主人? 聞こえているか?」

 

「……はふ……ぁ……」

 

 言葉になっていなかった。

 

 十七夜は腰に手を当てて、その壊れた顔を見下ろした。自分が感じた絶頂は確かに強烈だったが、まだ意識を保てる範囲だった。けれど青年は——男の脳で女の絶頂を処理した。持続的で深い快楽の波を、瞬間的な処理に慣れた男の回路で受け止めてしまったのだ。容量を超えている。脳がオーバーヒートを起こしたのだろう。

 

「ふむ——やりすぎたか? いや、自分はただ普通にイッただけだが」

 

 小首を傾げて、しばし青年の顔を眺めた。

 

 数十秒。

 

 青年の目に、少しずつ焦点が戻ってきた。ぼんやりと天井を見上げて——十七夜の顔を認識して——口元が、へにゃりと緩んだ。

 

「……すごかった……」

 

「うむ。それはよかった」

 

「なぎたんの……おまんこ……すごかった……」

 

「感想は嬉しいが、もう少し語彙を増やせ、ご主人」

 

 呆れたように言いながらも、十七夜の口元には——ほんの微かに、満足そうな笑みが浮かんでいた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「いよいよ合体だな、ご主人」

 

 十七夜はソファの上に腰を下ろすと、堂々と両脚を左右に開いた。

 

 メイド服のスカートが太腿の上にたくし上がって、その奥——さっきまで青年の舌が這い回っていたおまんこが、惜しげもなく晒される。愛液でてらてらと光った薄桃色の襞が、呼吸に合わせてひくひくと蠢いていた。左手の指先が割れ目に触れて、ぐい、と左右に押し開く。

 

 くぱぁ。

 

 膣口が、ぽっかりと開いた。内壁の薄い桃色の粘膜が覗いて、奥から透明な愛液がとろりと溢れ出す。さっきの絶頂の余韻で、おまんこは十分以上にほぐれていた。

 

「交尾の準備は万端だ。——ほら、おいで♡」

 

 誘うように言った。声はいつもの尊大な調子だが、最後に付いた「おいで」が——十七夜なりの、不器用な歓迎の印だった。

 

 青年は、ソファの上で身体を起こしていた。

 

 目の前にある光景を——処理しきれずにいた。

 

 美少女メイドが。銀髪の、切れ長の瞳の、信じられないほど綺麗な女の子が。ソファの上で脚を開いて、おまんこをくぱぁして、自分を待っている。

 

 ——ここに入れていい。

 

 ——この子と、交尾できる。

 

 チンポが限界だった。二度射精したはずなのに、もう完全に勃起が戻っている。亀頭は充血で赤黒く膨れ上がって、先走りが止めどなく溢れていた。

 

「なっ、なぎたん……ほんとに……いいんですか……」

 

「何度も言わせるな。自分の仕事だ。それに——」

 

 十七夜は一瞬だけ視線を逸らして、小さく息を吐いた。

 

「——正直に言えば、自分も興味がある。チンポを入れたらどう感じるのか、試してみたい」

 

 仕事への探究心。本人はそのつもりだろう。けれどその言葉が青年の心臓を掴んで、ぎゅうっと握り潰した。

 

 震える膝でソファの上を這って、十七夜の開いた脚の間に身体を滑り込ませた。正常位の体勢。十七夜の太腿が青年の腰の横に添えられて、ニーハイソックスのレースの縁が素肌にくすぐったい。

 

 チンポの先端を、おまんこの入り口に——当てた。

 

 ぬるり。

 

 亀頭に愛液が絡む。先走りと愛液が混じり合って、結合部がぬるぬると滑った。入り口を探して、亀頭を上下にこすりつける。襞の合間を滑るたびに、ぐちゅ、ぐちゅ、と水音が立つ。

 

 十七夜が首を持ち上げた。

 

 二人の視線が、自分たちの性器に——結合部に、集まった。青年のチンポが十七夜のおまんこに押し当てられている、その場所を。二人で見つめている。

 

「——そこだ」

 

 十七夜が小さく言った。亀頭の先端が、ちょうど膣口の縁に引っかかった瞬間を、快楽共有で感じ取ったのだろう。

 

「そこが入り口だ。ゆっくりで構わん——ただし、性器を擦り合わせれば当然、両方の快感が一度に来る。腰を抜かさないよう、しっかり意識を保てよ」

 

 警告。けれど十七夜自身の声にも——ほんの微かに、期待の震えが混じっていた。

 

 青年は、腰を前に押し出した。

 

 亀頭が、膣口の縁を——割り開いて——

 

 ずぷ、と。

 

 沈んだ。

 

「————っっっ」

 

 声が出なかった。

 

 声を出すという機能が、脳から消えた。

 

 亀頭を包み込んだ膣壁の感触。温かくて、ぬるくて、やわらかくて、ぎゅっと締まる。それだけなら六十九のとき指で経験していた。けれどチンポで感じるそれは——指の感触とは次元が違った。

 

 亀頭の全表面に、粘膜が吸い付いている。

 

 びっしりと。隙間なく。ひだのひとつひとつが亀頭の輪郭を舐め回すように蠢いて、カリの段差に引っかかった入り口の筋肉がきゅうっと締め上げてくる。

 

 チンポの快感——は当然、凄まじかった。

 

 けれどそれだけではない。

 

 金玉の裏のあたりに——おまんこの快感が来た。

 

 チンポが押し入ってくる感触。内壁が押し広げられて、亀頭の硬い膨らみが膣の入り口をぐぐっと押し開いていく感覚が、快楽共有を通して流れ込んでくる。自分で自分に挿入しているような——犯しながら犯されている、意味の分からない二重の快楽。

 

「ぁ——ぁああ——」

 

 ようやく声が漏れた。もはや言葉ではない。ただの音だった。

 

 十七夜も——声を震わせていた。

 

「ッ——これが、女の性器にチンポを入れる快感か」

 

 歯の隙間から絞り出すように呟く。顎がわずかに上がって、白い喉がダウンライトに照らされた。切れ長の瞳が見開かれて、まぶたが痙攣している。

 

「自分の性器ながら——凄まじい、感触だな……っ」

 

 冷静を保とうとしている。分析しようとしている。けれど声が、もう平坦ではなかった。語尾がかすかに跳ねて、息の合間に言葉をねじ込んでいる。

 

 ——十七夜にも来ている。青年がチンポで感じている快感が、快楽共有を通じて十七夜の身体に流れ込んでいるのだ。初めての挿入の、圧倒的な快楽。童貞のチンポが初めておまんこに包まれた、あの——世界が変わるような衝撃を、十七夜もリアルタイムで味わっている。

 

 青年は腰を進めた。

 

 ず、ず、と。少しずつ。

 

 チンポが十七夜の中へ沈んでいく。膣壁がぬちゅぬちゅと音を立てて亀頭を飲み込んでいく。途中で一段きつくなる場所があった。そこを亀頭が押し開くと、ぬるんっ、と奥の空間へ滑り込む。

 

「あ——おく——奥が——」

 

 亀頭の先端に、何かが触れた。

 

 こつん、と。固いような、やわらかいような。ぷにっとした壁が亀頭を押し返してくる。

 

「……うん、そこだ」

 

 十七夜の声が、さっきより低かった。

 

「そこが子宮の入り口だ——ご主人も、感じるだろう」

 

 感じている。

 

 快楽共有を通して、子宮口に亀頭が触れた感覚が——男の身体の、存在しないはずの場所に響いていた。臍の奥、膀胱の裏あたりに、ぐん、と重い圧がかかる感覚。チンポの快感とはまるで別の信号が、身体の深部を揺さぶる。

 

 そして子宮口が——亀頭に、吸い付いた。

 

 ぷく、と。まるで口づけするように、子宮口の先端が亀頭の先端にすぽっとはまり込んで、ちゅう、と吸引した。

 

「ぅわっ——」

 

 青年の全身が震えた。チンポと子宮口が吸い付く感触を、両方の性器から同時に味わわされている。亀頭が吸われる鋭い快感と、子宮口がチンポに吸い付く深い充足感が、脳の中でぐちゃぐちゃに混じり合って——もうわけがわからない。

 

 全部入った。

 

 下腹と下腹がぴたりと密着している。チンポの根元まで十七夜の中に埋まって、結合部から溢れた愛液と先走りが二人の肌を繋いでいた。

 

「っ——は、ぁ——」

 

 青年は動けなかった。動いたら、終わる。確信があった。一回でも腰を引いたら、もう射精を止められない。おまんこの中の感触が凄まじすぎて、挿入しただけで限界の淵にいる。

 

 十七夜にはそれが分かっていた。快楽共有を通して、青年のチンポが今にも発射しそうなのが手に取るように伝わっている。

 

「——動かしてみろ、と言いたいところだが」

 

 十七夜の声は掠れている。自分もかなり来ているのだろう。けれどまだ、言葉を選ぶ余裕がある。

 

「もうチンポのほうが限界か? 一度出しておくか?」

 

 青年はがくがくと頷いた。声を出す余裕もなかった。唇が震えている。額から汗がぼたぼたと落ちて、十七夜の白い腹の上にぽつぽつと染みを作る。

 

「よし——出せ」

 

 許可が下りた瞬間、青年の腰が勝手に動いた。

 

 本能だった。亀頭を子宮口に押し付けて——ぐっ、と。腰の奥の筋肉が痙攣するように収縮して、精液が尿道を駆け上がっていく。

 

 びゅるるっ——

 

 三度目の射精が、十七夜の子宮口に直接叩きつけられた。

 

「っ——ああああぁぁっ——!」

 

 青年が絶叫した。

 

 初めての交尾。初めての中出し。初めての——種付け。

 

 膣の中で精液を吐き出す感覚は、口の中に出したときとは比べものにならなかった。亀頭を包む粘膜が、射精の痙攣に合わせてきゅうきゅうと蠕動して、精液を吸い出すように搾ってくる。子宮口がチンポの先端に吸い付いたまま、吐き出された精液を一滴残らず飲み込んでいく。

 

 びゅくっ、びゅくっ、と脈打つたびに、亀頭の全周を粘膜が締め付ける。口の中に出したときは快感のピークが一瞬で過ぎ去ったが、おまんこの中では——射精のたびに膣壁が反応して、快感を持続させてくる。出しているのに、まだ搾られている。精液を注ぎ込みながら、さらに搾り取られていく。

 

「ぁ——あっ——なぎた——」

 

 十七夜の名前を呼ぼうとした声が、途中でひび割れた。

 

 十七夜は——息を詰めていた。

 

 チンポが子宮口に精液を撃ち込む感覚が、快楽共有を通して十七夜の身体にも流れ込んでいた。膣の中で弾ける精液の衝撃、亀頭が痙攣するたびに走る射精の稲妻——男の絶頂を、自分のおまんこに受けながら同時に追体験している。

 

「これが——女の中に出す快感か——」

 

 声が震えていた。もう平坦ではない。歯を食いしばっても隠しきれない震えが、言葉の端々に滲んでいる。

 

 切れ長の瞳が潤んで、まぶたが何度も痙攣した。頬が赤い。額に汗が滲んで、前髪が張り付いている。

 

 けれど——崩れない。ここまでの快感を受けてなお、十七夜は歯を食いしばって、自分を保っている。

 

 青年は射精の余韻の中で——ぼんやりと、十七夜の顔を見上げていた。

 

 快感に頬を染めて、息を乱して、それでも崩れまいと歯を食いしばっている銀髪の少女。目尻に光るものが浮かんでいるのに、視線だけは揺らがない。

 

 ——綺麗だ。

 

 綺麗で、強くて、不器用で。

 

 この快楽と性の悦びを、自分だけではなく十七夜と共有できている。同じ快感を同時に味わって、同じ衝撃に震えて——その事実が、たまらなく嬉しくて、愛おしくて、仕方がなかった。

 

 チンポは——まだ、十七夜の中にいる。

 

 射精の後もチンポは萎えなかった。おまんこの中でびくびくと脈打って、最後の精液をとろりと吐き出している。

 

「……なぎたん」

 

「なんだ、ご主人」

 

「気持ちよかった……なぎたんの中、すごく……」

 

「——うむ。自分も、嫌いではなかった」

 

 小さく、ぽつりと。

 

 十七夜にしては——ずいぶん素直な言葉だった。

 

 一発目の中出しの余韻が落ち着いても、チンポはまだびんびんに勃起したまま、十七夜の中に埋まっていた。

 

 抜かない。抜けない。抜きたくない。

 

 おまんこの内壁が、射精で注ぎ込まれた精液でぬるぬるになって、チンポの表面を甘く撫でている。膣壁のひだが余韻の痙攣でびくびくと蠢いて、亀頭を飲み込んだ子宮口がまだきゅっきゅっと吸い付いてくる。動かなくても気持ちいい。挿入したまま、ただ繋がっているだけで、じんわりとした快感が途切れない。

 

 青年がおずおずと腰を動かした。

 

 ず、と。ほんの少しだけ引いて——ぬ、と押し込む。

 

 ずちゅ。

 

 精液がたっぷりと溜まったおまんこの中で、チンポが動く。濃厚な潤滑の中を、亀頭がぬるぬると膣壁を擦っていく感触。引くとき、カリの段差が膣壁のひだに引っかかって、ぞりぞりと掻き出すような摩擦。押し込むとき、亀頭が精液の海を押しのけて子宮口にこつんと当たる衝撃。

 

 ゆっくりと。ゆっくりと。初めてのピストン。

 

「ん——」

 

 十七夜が、小さく声を漏らした。

 

 快楽共有がフル稼働している。チンポの快感とおまんこの快感が、二人の身体を同時に揺さぶっていた。青年が腰を引けば、チンポが擦られる快感と膣壁が擦られる快感が同時に来る。押し込めば、亀頭が子宮口を叩く衝撃とそれを受ける充足感が同時に来る。

 

 片方だけでも凄まじいのに——両方。

 

 交尾しながら、同時に交尾されている。犯しながら犯されている。男女の快感が混線して、干渉して、増幅し合って——本来ひとりの人間が体験するはずの快楽の天井を、とっくに突き破っている。

 

 二人の身体は、急速に学習していた。

 

 お互いのどこを突けば気持ちいいのか、どこを締め付ければ気持ちいいのか——快楽共有のフィードバックで如実に分かる。青年が腰の角度を変えるたびに、おまんこのどの壁を擦ったときに最大の快感が来るかを、リアルタイムで感じ取れる。十七夜もまた、おまんこの筋肉の締め方を変えるたびに、チンポのどこを締めれば青年が一番感じるかを、自分の身体で理解していく。

 

 凄まじい速度で——セックスが最適化されていく。

 

 まるで何年も一緒に寝てきた恋人同士のように、お互いの身体の一番気持ちいい場所を、一番気持ちいい角度で、一番気持ちいい速度で擦り合わせる。

 

 十七夜が身体を起こした。

 

 正常位の体勢から、青年の腰の上に跨り直す。チンポを抜かないまま——するりと身体を入れ替えて、対面座位の形に移行した。

 

 ソファの上に座った青年の膝の上に、十七夜が向かい合う形で跨っている。メイド服のスカートが二人の結合部を覆い隠して、その下でチンポはおまんこの奥深くまで刺さったまま。

 

 近い。

 

 正面から、十七夜の顔が——すぐそこにある。

 

 銀の髪。汗で額に張り付いた前髪。ずれかけたヘッドドレス。ダウンライトの逆光を受けて、輪郭が淡く光っている。

 

 切れ長の瞳が、青年の目を——まっすぐに、見た。

 

「ご主人。——おっぱい、吸うか?」

 

 十七夜の手が、メイド服の胸元にかかった。コルセットの上の布地をぐい、と引き下ろす。白いエプロンを横にずらして、紺色の布地の下から——

 

 ぷるん。

 

 白い乳房がこぼれ出た。

 

 大きすぎず、小さすぎない。十七夜の引き締まった身体に見合った、けれど確かに柔らかさを湛えた膨らみ。ダウンライトの琥珀色の光を受けて、白い肌がほんのりと蜂蜜色に染まっている。頂点の乳首は淡い薄桃色で、すでに小さく尖っていた。

 

 青年は——もう、言葉を探す余裕もなかった。

 

 顔を埋めた。

 

 十七夜の胸に、顔を押し付けて——乳首に、吸い付いた。

 

 ちゅう♡

 

「——ッ」

 

 十七夜の肩がびくんと跳ねた。

 

 乳首を吸われた快感が、快楽共有を通じて青年にも流れ込んでくる。乳首と結合部の快感が同時に身体を駆け巡って、十七夜の全身を——ようやく、明確に揺さぶり始めた。

 

「ん——ぅ——」

 

 十七夜の腰が、動いた。

 

 青年のチンポに跨った体勢のまま、腰をゆっくりと前後に揺する。チンポが膣の中でぐりぐりと角度を変えて、膣壁のあらゆる場所を順番にこすり上げていく。

 

 おまんこ。チンポ。乳首。

 

 三点の快感が同時に全身を駆け巡って——さすがの十七夜が、頭を仰け反らせた。銀の髪がさらりと背中に流れて、白い喉がダウンライトに晒される。メイド服の胸元がはだけて、汗に濡れた乳房が青年の顔の前で揺れていた。

 

「ふっ——ぁ——」

 

 声が漏れた。抑えようとして、抑えきれなかった。切れ長の瞳がとろりと潤んで、いつもの鋭さが溶け始めている。

 

「ご主人——今度は、同時にイクぞ」

 

 掠れた声で言った。命令ではない。もっと切実な——懇願に近い何か。

 

「同時に——?」

 

「お互いの絶頂感が見えている状態なら、合わせられるはずだ。——自分ひとりでイクより……二人のほうが、きっと——」

 

 言葉が途切れた。腰の動きが速くなっている。快楽の波が十七夜の冷静さを削り取っていく。

 

 けれど——青年は分かった。

 

 快楽共有を通して、十七夜の絶頂がどこまで迫っているかが如実に伝わってくるのだ。逆もまた然り。チンポの射精感覚も、おまんこの絶頂感覚も、二人の間に壁はない。

 

 普通なら童貞には絶対に不可能な同時絶頂が——この状態なら、狙える。

 

 何より——この凄まじい快楽を、なぎたんと一緒に。同時に。同じ瞬間に。

 

 その思いが、何よりも強かった。

 

「——合わせよう、なぎたん」

 

 青年の声が、初めて震えなかった。

 

 十七夜がチンポの動きを止めた。止めてから——ゆっくりと、腰を落とす。チンポの根元まで深く飲み込んで、子宮口に亀頭を密着させた状態で——ぎゅ、と膣壁を締める。

 

「ぅっ——」

 

 青年が歯を食いしばる。反射で射精しそうになるのを、腹筋に力を入れて堪えた。

 

 十七夜が膣を緩めた。

 

 青年が浅く腰を突き上げた。亀頭が子宮口を叩いて——十七夜の背中がびくりと反る。

 

 突いて、止めて。締めて、緩めて。

 

 快楽共有がなせる絶妙な調整。相手の絶頂がどこまで来ているかを感じ取りながら、チンポとおまんこで会話をしている。言葉なんかよりずっと正確に——快感の波の高さを擦り合わせていく。

 

 上っていく。

 

 一歩ずつ。確かめながら。二人の絶頂が足並みを揃えて、同じ階段を——一段、また一段と登っていく。

 

 ——もうすぐだ。

 

 青年のチンポの中で、精液がせり上がり始めていた。同時に——十七夜のおまんこの奥で、子宮の入り口がきゅうきゅうと痙攣し始めている。快楽共有を通して、その両方が——二人のどちらにも、同時に感じ取れている。

 

「——イク」

 

 十七夜が言った。

 

「イクイクイクッ——♡♡」

 

 声が、壊れた。

 

 あの冷静な十七夜の声が——抑制を失って、生のままの叫びになった。

 

 同じ瞬間——

 

「イク——なぎたん——イクっ——!」

 

 青年の腰が跳ねた。

 

 びゅるるるっ——

 

 四度目の射精が十七夜の子宮口に叩き込まれると同時に——十七夜のおまんこが絶頂の痙攣を起こした。

 

 チンポとおまんこの同時絶頂。

 

 両方の性器で、同時に。

 

 射精の稲妻が尿道を駆け上がるのと——おまんこの奥から噴火するような絶頂の熱波が押し寄せるのと——完全に、同じ瞬間。

 

 ふたつの快感が——ひとつになった。

 

「————ッッッ」

 

 もう声すら出なかった。

 

 二人の口が、同時に開いていた。何か叫ぼうとして——声にならなかった。快楽が、音を超えていた。射精と絶頂が同時に発火して、快楽共有のフィードバックがお互いの快感を無限にバウンスさせて——男の快感と女の快感が完全に溶け合って、もはやどちらがどちらの絶頂なのか分からない。

 

 区別がなかった。

 

 チンポで感じているのか、おまんこで感じているのか。射精しているのかイッているのか。自分の快感なのか相手の快感なのか。全部が混じって、全部が溶けて、全部がひとつの巨大な快楽の塊になって——二人の身体を同時に貫いた。

 

 十七夜が——青年の顔を、両手で掴んだ。

 

 引き寄せた。

 

 唇が、重なった。

 

 深い。最初のキスとは比べものにならない——十七夜のほうから、舌を差し入れてきた。青年の口の中に、熱い舌が滑り込んでくる。青年も応えるように舌を絡ませた。

 

 ちゅ、ちゅる、と。

 

 唾液が混じり合う湿った音がソファの上に響いた。舌と舌が絡み合って、吸い合って、お互いの口腔をまさぐり合う。絶頂の痙攣で身体がびくびく震えながら——口だけは離さない。離せない。

 

 二人が完全にひとかたまりになっていた。

 

 対面座位で抱き合って、チンポをおまんこの最奥に突き刺したまま、ディープキスで舌を絡ませて。下半身は結合部から精液と愛液が溢れ出して太腿を伝い落ち、上半身はメイド服越しに密着して、青年の裸の胸に十七夜のはだけた乳房が押し潰されている。

 

 快楽の波は——まだ続いていた。

 

 射精の痙攣はもう終わっているのに、おまんこの絶頂の余波が快楽共有を通じて何度も何度も二人の身体を揺さぶり続けている。キスをしているから声は出ない。出ない代わりに——喉の奥で、くぐもった嗚咽のような音を互いに漏らしながら、唇を押し付け合っている。

 

 やがて——ゆっくりと。

 

 波が、引いた。

 

 十七夜の唇が、とろりと離れた。銀色の唾液の糸が二人の唇の間に架かって、ぷつりと切れる。

 

 十七夜は——息を荒げていた。

 

 肩で呼吸をしている。前髪が汗で額に貼り付いて、ヘッドドレスは完全にずれて銀髪の上で斜めに傾いている。メイド服の胸元ははだけたまま。切れ長の瞳は潤んで、焦点が合うまでに数秒かかった。

 

 頬は赤い。唇も赤い。唾液と涙で顔中が濡れている。

 

 ——それでも。

 

「——ッは」

 

 十七夜は、笑った。

 

 口の端を持ち上げて——息を切らしながら、にっ、と。

 

「……なかなか、やるじゃないか……ご主人……」

 

 青年は——十七夜の腰に腕を回したまま、ぼろぼろに泣いていた。

 

 悲しいのではない。快楽で泣いているのでもない。ただ——この凄まじい快感を、この美しい人と一緒に味わえたことが、嬉しかった。嬉しくて仕方がなかった。

 

「なぎたん……すき……」

 

 口が勝手に動いていた。

 

 十七夜は一瞬だけ目を瞬かせて——ふっ、と鼻から息を漏らした。

 

「——それはメイドへのサービスか、ご主人」

 

「ほんき……」

 

「そうか」

 

 短く答えて、十七夜は青年の頭にぽん、と手を置いた。

 

「——悪くない響きだ」

 

 ぜえぜえと息をつきながら、二人は対面座位のまましばらく動けなかった。チンポはまだおまんこの中に入ったままで、結合部からとろりと精液が垂れている。

 

 やがて——お互い身体を離して、ソファの上に並んで仰向けに寝転がった。

 

 天井のダウンライトが、琥珀色の光を二人の汗まみれの身体に落としている。

 

 ぜえ、ぜえ、と息をつく青年の横で、十七夜も肩を上下させながら天井を見つめていた。

 

 と。

 

 十七夜の視線が、ちらりと横に動いた。

 

 青年の股間。

 

 射精したばかりなのに——チンポは、もうまた立ち始めていた。おまんこの感触を思い出したのだろう。半勃起の竿がびくん、と跳ねて、少しずつ硬さを取り戻していく。

 

 十七夜はそれを見て——にやり、と笑った。

 

「まだヤリ足りなさそうだな、ご主人。——自分もだ」

 

 横たわったまま、十七夜が青年のほうに身体を向けた。切れ長の瞳に、さっきまでの分析者の光はもうない。代わりに宿っているのは——純粋な、欲望の熱。

 

「まだまだいくぞ♡」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 バックの体勢で、十七夜がソファの肘掛けに両手をついている。

 

 メイド服のスカートがめくり上がって、白い尻が丸出しになっていた。ニーハイソックスに包まれた膝がレザーに沈み込み、すらりと伸びた背中が琥珀色の光の下でうっすらと汗に濡れている。

 

 青年は十七夜の後ろに跨って、チンポをおまんこに突き刺したまま——腰を打ち付けていた。

 

 ぱん、ぱん、ぱん。

 

 肉がぶつかり合う乾いた音がリズミカルに響く。青年の下腹が十七夜の白い尻にぶつかるたびに、柔肉がぷるんと波打って、結合部から精液混じりの愛液がぐちゅぐちゅと泡立った。

 

 バックは——青年にとって、一番「自分で自分を犯している」感覚が強い体位だった。

 

 チンポがおまんこの中を掻き回す快感と、おまんこがチンポに掻き回される快感。前から突いているのに後ろから突かれている感覚。腰を振るたびに、犯す側と犯される側が交互に入れ替わる。

 

 チンポの快感だけでも充分すぎるのに——快楽共有で届くおまんこの快感が、腰の奥をどろどろに蕩かしていく。背骨の付け根から熱い蜜が滲み出すように広がっていく快楽に、青年の腰は溶けそうだった。

 

「ふ——ぅん——ッ——」

 

 十七夜は肘掛けに爪を立てて耐えていた。背後から突かれるたびに銀の髪が揺れて、白い項がびくびくと震えている。声を抑えようとしているのに——ピストンの衝撃で、ん、ん、と断続的な吐息が口の端から漏れ続けていた。

 

「なぎたん——イきそ——」

 

「——自分もだ、来い♡」

 

 びゅるっ——

 

 五度目の同時絶頂。青年が精液を子宮口に叩き込むと同時に、十七夜のおまんこがぎゅうぅっと締まって、二人の声が重なった。

 

 

 ——背面騎乗位。

 

 今度は十七夜が青年に背を向けて、チンポに跨っている。

 

 青年はソファに仰向けに沈んで、目の前にある光景に——もう声も出なかった。

 

 十七夜の腰が動いている。上下ではない。前後に——ぐりんぐりんと、円を描くように腰を回している。チンポがおまんこの中でぐるぐると角度を変えて、膣壁のあらゆる場所をまんべんなく擦り上げていく。

 

 十七夜の腰使いが——回を重ねるごとに凄まじくなっていた。

 

 快楽共有で、チンポの一番感じる裏筋の部分と、おまんこの一番感じる膣天井の部分が——的確に擦り合わされている。もう偶然ではない。完全に計算された軌道で、最大快感を引き出す角度と速度に最適化されたピストン。

 

 十七夜が腰を落とすたびに、ぐちゅ、と濃厚な水音が立つ。もはや何度目か分からない中出しの精液がおまんこからぶくぶくと泡立って、結合部を白く汚している。

 

 二人とも涎が止まらなかった。

 

 青年は仰向けのまま口を半開きにして、とろとろと涎を顎から垂らしている。十七夜も——背を向けた体勢のまま、結合部を凝視していた。チンポがおまんこを出入りする場所を、肩越しに振り返って——食い入るように見つめている。

 

 もっとも気持ちいい速度を探り合っている。もっとも気持ちいい角度を擦り合わせている。もっとも気持ちいい締め付けを調整している。

 

 二人の性器が会話していた。言葉もなく。ただ快感のフィードバックだけを頼りに——

 

「——イクぞ♡」

 

「——イク——ッ!」

 

 六度目の同時絶頂。

 

 

 その後も、二人は止まらなかった。

 

 同時絶頂の快楽に——完全に、病みつきになっていた。

 

 対面座位で向かい合って絶頂。正常位に戻って絶頂。側位で抱き合いながら絶頂。ソファのどこに身体があるのか分からないくらい体位を変えながら、一回ごとに同時に果てて、果てたらまた繋ぎ直して、また同時に果てる。

 

 快楽共有のおかげで、何度やっても同時絶頂のタイミングがぴたりと合う。もはや二人の身体は完全に同期していた。絶頂の階段を二人で手を繋いで登っていくような——あの充実感が、何よりもたまらなかった。

 

 どれくらいの時間が経ったのか——もう分からなくなっていた。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 青年のチンポから精液が出なくなる頃には——ソファの上は、凄惨なことになっていた。

 

 赤いレザーの表面が汗と愛液と精液でてらてらと光っている。ソファの脇のカーペットにも白い染みが点々と落ちていた。空気は重く、甘酸っぱい体液の匂いと汗の匂いが絡み合って、二人のいる空間をねっとりと満たしている。

 

 十七夜は——仰向けに倒れ伏していた。

 

 ソファの上に大の字になって、メイド服は精液でべとべとに汚れている。紺色の布地に白濁の染みがいくつも重なって、エプロンは半分ほどずり落ちて、コルセットの紐はだるだるに緩んでいた。ヘッドドレスはとっくにどこかへ飛んでいる。

 

 スカートの下——開いた太腿の間から、大量の中出し精液がとろとろと溢れ出していた。おまんこの入り口から白い液がぷくりと泡立って、垂れて、太腿の内側を伝い落ちて、ソファの上に小さな水溜りを作っている。

 

 十七夜は——満足そうだった。

 

 天井を見上げる切れ長の瞳は蕩けるように潤んで、いつもの鋭さはすっかり丸くなっている。唇は半開きで、荒い息が漏れ続けている。頬は火照って桃色に染まり、額には汗の粒が光っていた。

 

「——ご主人」

 

 掠れた声で呼んだ。

 

「お互い、勉強になったな。——よければ、また来てくれ」

 

 そう言って、だるそうに首を回して青年のほうを見た。

 

 青年は。

 

 ソファの上で——完全に、白目を剥いて失神していた。

 

 口は半開きで、涎が顎を伝って首まで流れている。目は虚ろに天井を向いて、瞳孔が開き切っている。全身の力が抜けて、ぐったりとソファに沈み込んだまま、ぴくりとも動かない。

 

 ただし——物凄く幸せそうだった。

 

 失神しているのに、口元が緩んでいる。白目を剥いているのに、唇がへにゃりと笑みの形を作っている。人間の表情筋は意識を失ってもなお、幸福の記憶を刻んだまま弛緩するのだと——十七夜はこの瞬間、初めて知った。

 

「……ご主人?」

 

 返事がない。

 

「ご主人、起きろ。帰りの支度がまだだぞ」

 

 返事がない。

 

 十七夜は身体を起こそうとして——腰に力が入らなかった。自分の太腿も小刻みに震えている。立ち上がれない。ソファの縁を掴んで、なんとか上体だけ起こした。

 

 青年は——ぴくりとも動かない。

 

 十七夜はしばらく青年の幸せそうな顔を見下ろしていた。呼吸はしている。心臓も動いている。ただ——脳が完全にシャットダウンしている。快楽の過剰摂取で意識が飛んだのだろう。男の脳で受けきれない量の快楽を、何度も何度も浴びせ続けた結果。

 

「…………」

 

 十七夜は、ゆっくりと息を吐いた。

 

 それから——自分のメイド服の状態を見下ろした。精液まみれ。ぐしゃぐしゃ。股間からはまだ精液が垂れている。ヘッドドレスはソファの下に落ちていた。

 

 立ち上がった。

 

 膝がガクガクと笑ったが、意地で踏みとどまった。和泉十七夜は、膝を折らない。たとえ何発中出しされた後でも。

 

 カウンターの奥の扉をノックした。

 

「…………店長」

 

 扉の向こうから、先輩メイドの声が返ってきた。

 

「はーい、どうしたのなぎたん。初接客お疲れ様ー。……って、すごい匂い。大丈夫?」

 

「すまない。——やりすぎた」

 

 十七夜は、カウンター越しに店長のほうを向いた。精液で汚れたメイド服。乱れた銀髪。頬はまだ赤い。けれど表情はいつもの涼しさを取り戻しかけていた。

 

「客が失神した。起きる気配がない」

 

「ええっ!?」

 

「快楽共有の魔法を使ったのだが——自分の絶頂をそのまま共有していたら、男の脳の許容量を超えてしまったらしい。呼吸と心拍は正常だ。問題ないと思うが——」

 

「問題あるよ!? お客さん失神させちゃダメでしょ!?」

 

「…………そうか」

 

 十七夜は目を伏せた。

 

 反省しているのかいないのか分からない表情で——けれど、ほんの一瞬だけ。口の端が、くい、と上がった。

 

「——すまない、店長。ドジなメイドで」

 

 カウンターの向こうで先輩メイドが頭を抱えている。十七夜は涼しい顔で——いや、頬にまだ残る赤みは隠しきれていなかったが——精液で汚れたエプロンの裾を軽く払って、ソファのほうを振り返った。

 

 幸せそうに失神している青年の寝顔が、琥珀色のダウンライトに照らされている。

 

 十七夜は——ほんの少しだけ、目を細めた。

 

「……まぁ、初めてにしては上出来だろう。お互いにな」

 

 誰に言うでもなく呟いて、和泉十七夜は落ちたヘッドドレスを拾い上げ、ずれた銀髪の上に載せ直した。

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