※この作品はR-18です。

搾精都市神浜~魔法少女たちのエッチな短編集~   作:黒蓮/クロハス

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早漏改善クリニック♡環いろは(22) ~超絶名器お姉さんと早漏改善トレーニング~

 夏の終わりの神浜は、まだ蝉が鳴いている。

 

 里見メディカルセンター。北養区の大通りに面した、白くて清潔な七階建ての総合病院。かつて里見灯花の父親が院長を務めていた施設だが、今は——灯花本人が、その椅子に座っている。

 

 十歳で大学を卒業し、十二歳で修士号を取得した天才少女。当時はその名を「マギウスの翼」という組織のリーダーとして轟かせていたが、あの騒動からもう七年以上が経つ。組織はとうに解散し、灯花はその頭脳を医療の最前線に注ぎ込む道を選んだ。父から病院を引き継ぎ、二十歳にして院長に就任——異例中の異例だが、この天才に関しては誰も驚かなかった。

 

 泌尿器科の奥に、ひっそりとした一角がある。

 

 早漏改善クリニック。

 

 里見メディカルセンターの正規診療科目として設置されたその部門は、一般の患者には少し入りづらい場所にある。廊下の突き当たり、ほかの診察室とは少し離れた位置に、控えめな案内プレートがかかっているだけ。受付も別。待合室も個室型で、ほかの患者と顔を合わせることがないよう設計されている。

 

 ——その待合室の椅子に、青年は座っていた。

 

 膝の上で握りしめた拳が汗で湿っている。

 

 十九歳。痩せ型で、どこにでもいそうな顔立ち。強いて特徴を挙げるなら、目つきがやや気弱で、猫背気味で、女の子と目を合わせるのが致命的に苦手だということくらいか。大学一年生。彼女いない歴イコール年齢。童貞。

 

 そして——重度の早漏。

 

 自覚したのは高校二年の夏だった。オナニーを覚えたのは人並みの時期だったが、触り始めてから射精までが異常に短い。タイマーで測ったことがある。最速で八秒。平均でも二十秒を切る。AVのような長時間のピストンなど夢のまた夢で、オナホールに入れた瞬間に果てたこともあった。

 

 チンポに自信がない。

 

 だから彼女もできない——と、青年は思い込んでいる。告白する勇気がないのをチンポのせいにしている自覚は、うっすらとあった。でも、仮に奇跡が起きて彼女ができたとして、その先に待っているのは初体験での秒殺射精と、女の子の幻滅した顔。そう想像するだけで胃が痛くなる。

 

 ネットの掲示板で、このクリニックの噂を見つけたのは先月のことだ。

 

 『神浜の里見メディカルセンターの早漏外来、ガチで効くらしい』

 『トレーナーが手取り足取り教えてくれる』

 『しかも若い女のトレーナーで、直接触ってくれるとかなんとか』

 

 最後の一行に、心臓が跳ねた。

 

 ——嘘だろ。そんな都合のいい話があるわけがない。

 

 と思いつつも、予約フォームに個人情報を打ち込む指は震えていた。どうせ実際に行ったら、白衣の中年の男性医師が出てきて、投薬治療の説明をされるだけだろう。あわよくば——の期待は、限りなくゼロに近いところに設定しておいた。期待しなければ、裏切られることもない。

 

 それでも予約を入れたのは、このまま一生早漏チンポを抱えて童貞のまま死ぬのが怖かったからだ。

 

 受付で保険証を出した。個室の待合室に通された。問診票を書いた。

 

 『射精までの平均時間』という欄に、震える字で『十〜二十秒』と書いた。ほかの患者の目がないのが救いだった。

 

 そして今、診察室に呼ばれるのを待っている。

 

 壁掛け時計の秒針が、やけに大きく聞こえる。

 

 ぱたん、とドアが開いた。

 

「お待たせしました。どうぞ、こちらへ」

 

 受付の女性に案内されて、廊下の奥の診察室へ向かう。白い扉の前で立ち止まり、一つ深呼吸をして——扉を開けた。

 

 カーテンで仕切られた、こぢんまりとした個室。ベッドが一台。小さなデスクと椅子。医療用のワゴンにはトレー、ティッシュの箱、透明なボトルが並んでいる。窓はなく、天井の照明が白い光を落としている。空調が静かに回っていて、消毒液とは違う、ほのかに甘い匂いがした。

 

 その部屋の中央に——彼女がいた。

 

 デスクの前に立って、カルテのようなものに目を落としている。ピンク色のナース服。膝の少し上までの丈で、ウエストがきゅっと絞られていて、裾が軽く広がっている。胸元のボタンが襟の近くまできちんと留められていて、それでも布地の下の柔らかな膨らみが隠しきれない。頭にはナース帽。白い十字のマークが入った、クラシカルなデザイン。

 

 髪は——薄いピンク。

 

 肩を少し過ぎるくらいの長さで、右側の一房が三つ編みになって前に垂れている。残りは自然に流れて、左の耳朶のあたりで軽く跳ねていた。前髪は眉の上で揃えられて、その下から覗く瞳が——桃色。淡く、透き通るような、不思議な色。

 

 ——綺麗だ。

 

 青年は扉を開けたまま、固まった。

 

 こちらを向いたその顔が、微笑んでいる。目尻がやわらかく下がって、小さな唇が弧を描いている。それだけで部屋の空気が数度あたたかくなったような錯覚を覚えた。

 

 二十代前半——だろうか。少女の面影をほんのり残しながら、身体の輪郭には確かな成熟がある。ナース服の袖から伸びる二の腕は白くて細いのに、手首にかけてのラインには女性特有のしなやかさがあって、指先は長く、爪はごく薄いピンクに塗られている。

 

 スカートの裾から覗く太腿は——目を逸らした。逸らさないと、もうその時点で負ける気がした。

 

「はじめまして」

 

 声が、甘い。甘いけれど、嫌味がない。春の陽だまりに似た、ふわりとした声。

 

「早漏改善トレーニング担当の環いろはです。今日からよろしくね」

 

 にこり。

 

 ——ナース服の美人のお姉さんが、目の前にいる。

 

 脳の処理が追いつかなかった。掲示板の噂が本当だったという事実と、想像の百倍かわいい人が出てきたという事実が同時に押し寄せてきて、思考回路がショートした。

 

「あ……あ、はい、よ、よろしく、お願い、します……」

 

 声が上擦った。のどに砂が詰まったみたいに掠れている。

 

「どうぞ座って? 緊張しちゃうよね、最初は」

 

 いろはがベッドの端を手で叩いて、座るよう促した。青年はぎこちないロボットのような動きでベッドに腰を下ろす。スプリングが軋んだ。

 

「問診票、見せてもらったよ」

 

 いろはがデスクの椅子に座り、カルテに挟まれた問診票をぺらりとめくる。

 

「えっと……射精までの時間が十秒から二十秒。包茎の自覚あり。性交経験なし」

 

 一つ一つ、事務的に、でも声のトーンは柔らかいまま読み上げていく。青年の顔が耳たぶまで真っ赤に染まった。自分で書いた文字を他人に——しかもこんな綺麗なお姉さんに——音読されるのは、想像の三倍恥ずかしい。

 

「おちんちんのことで悩んでるんだね」

 

 おちんちん。

 

 その単語が、いろはの唇から出た瞬間、青年は自分の膝を凝視した。穴があったら入りたい。入って二度と出てきたくない。

 

「大丈夫。恥ずかしいことなんてなにもないからね」

 

 いろはが椅子ごとすっと近づいてきて、青年の顔を覗き込んだ。甘い匂い——シャンプーか、ボディクリームか。ほのかな花の香り。近い。近すぎる。ピンクの瞳が、まっすぐにこちらを見ている。

 

「早漏は病気じゃないの。おちんちんが敏感すぎるだけ。だから、トレーニングで改善できるんだよ」

 

 笑顔。完璧な笑顔。注射を怖がる子どもを安心させるような、あの笑顔。でも——どこかに、ほんの微かな、底の見えなさがある。目は笑っているのに、その奥の温度が読めない。優しいのは確かだ。でもそれが「本心からの優しさ」なのか「プロとしての優しさ」なのかが分からない。

 

 その曖昧さが——なぜか、青年の股間に微かな熱を灯した。

 

「トレーニングの流れを説明するね」

 

 いろはがデスクに戻り、一枚のラミネートされた紙を取り出した。

 

「まず今日は、射精までの時間を測る検査をするよ。早漏がどれくらいの段階なのか、正確に把握するところから始めるの」

 

「は、はい……」

 

「そのあとは手を使ったトレーニング。射精しそうになったら止めて、落ち着いたらまた始めて——を繰り返して、おちんちんに我慢を覚えさせるんだよ」

 

「……手、というのは」

 

「私の手で、だよ?」

 

 にこり。

 

 青年の心臓が、一回だけ飛び跳ねた。

 

「段階が進んだら、もっと実践的なトレーニングもあるんだけど——それはまた追々ね」

 

 いろはがにこりと笑って、話を区切った。もっと実践的、というのが具体的に何を指すのか、青年には分からない。分からないけれど、いろはの笑顔の奥にある「何か」が気になって、胸の奥がざわついた。

 

「今日のところは、まず検査からだよ」

 

 いろはが立ち上がり、医療ワゴンからシルバーのストップウォッチを取り出した。親指でボタンをカチカチと試し押しする。その手つきが妙に手慣れている。何百回、何千回と同じ動作を繰り返してきた手つき。

 

「じゃあ——おちんちんを見せてもらえるかな」

 

 世界が止まった。

 

 ——いま、なんて言った?

 

「脱いでもらっていい? 下だけで大丈夫だよ」

 

「あ、あの、ぜ、全部、ですか……」

 

「うん。ズボンと下着。上はそのままでいいから」

 

 いろはの声は、あくまで穏やかだ。体温を測りますねと言うのと同じテンションで、おちんちんを見せてくださいと言っている。

 

 青年の指が震えた。ベルトのバックルに手をかけて、金具が噛み合わずにかちゃかちゃと鳴る。

 

「ゆっくりでいいからね」

 

 ベルトが外れた。ボタンを外す。チャックを下ろす。ジーンズが腿のあたりまでずり落ちて、黒いボクサーパンツが露わになった。

 

 ——ここから先が、地獄だ。

 

 パンツの中では、もうとっくに勃起していた。いろはの色気に当てられて、会話の途中からずっと硬くなっている。仮性包茎の皮が亀頭に張りついたまま、布地を内側から押し上げて、先端がじわりと湿っている。

 

「ご、ごめんなさい……もう、その、立っちゃってて……」

 

「大丈夫だよ。むしろ勃起してくれてるほうが測りやすいから」

 

 いろはがしゃがんだ。

 

 ベッドに座った青年の正面に、ピンクのナース帽が来る。見下ろすと、いろはの顔がちょうど股間の高さにあった。薄いピンクの前髪の隙間から覗く瞳が、パンツの膨らみをじっと見ている。

 

 ——この構図で平静を保てる男がいたら、それは聖人か死人だ。

 

「じゃあ、下ろすね」

 

 いろはの指がパンツのウエストにかかった。ひんやりした指先が腰骨に触れて、びくりと腹筋が引き攣る。ゆっくりと、布地が引き下ろされていく。

 

 ぱつん。

 

 限界まで引っ張られたゴムの縁を乗り越えて、チンポが跳ね上がった。

 

 仮性包茎。皮が亀頭の半分を覆ったまま、血管の浮いた竿がびくびくと脈打っている。先端のすき間から我慢汁が糸を引いて滲み出していて、空気に触れた瞬間にひくりと震えた。

 

 サイズは——平均か、それよりやや小さいくらい。太さもない。いかにも自信のなさそうな、情けないチンポだった。仮性包茎の皮がだぶついて亀頭を覆い隠しているせいで、勃起しているのに、どこか頼りなく見える。

 

 青年は両手で顔を覆った。

 

「す、すみません……こんな、その、立派じゃなくて……」

 

「ふふ。なにを謝ってるの」

 

 いろはの声に、かすかな笑みが混じった。からかっているのではなく、本当におかしそうに笑っている。

 

「おちんちんに立派もそうじゃないもないよ。大事なのはコントロールできるかどうかだから」

 

 ナース帽の下の桃色の瞳が、チンポをまっすぐに見つめている。品定めするような視線ではなく、患部を確認する医療従事者の目。でも——その目がこんなに綺麗な女性のものであるというだけで、青年のチンポは一段階硬くなり、我慢汁がつぅっと竿を伝い落ちた。

 

「元気なおちんちんだね」

 

 いろはがにこりと笑った。

 

「じゃあ、計測を始めようか」

 

 いろはの右手がストップウォッチを握り、左手が——青年のチンポに伸びた。

 

 ひやり。

 

 指先が竿の根元に触れた瞬間、全身に電流が走った。いろはの体温は見た目通りに温かいのに、緊張で火照った青年のチンポにはその指がひんやりと感じられて、触れられた場所から鳥肌が広がっていく。

 

「ちょっと持つだけだからね。暴発しないように」

 

 人差し指と親指で、チンポの根元をそっとつまむ。きゅ、と軽く圧迫するだけの簡素な握り方。それだけで竿が跳ねた。

 

 ——触られてる。女の人に。チンポを。生まれて初めて。

 

 その事実だけで涙が出そうだった。

 

「じゃあ、お口でするね」

 

「く、口……っ?」

 

「うん。射精までの時間は、口腔刺激で計測するんだよ」

 

 声が震えた。口——つまりフェラだ。この美人のお姉さんが。僕のチンポを。咥えてくれる。

 

 脳の理解が追いつくより先に、いろはの顔がチンポに近づいていた。

 

 桃色の前髪が竿に触れそうな距離。吐息が亀頭の先に当たって、皮の隙間から覗く粘膜がひくりと収縮する。いろはの吐く息は甘くてあたたかくて、チンポが呼吸に合わせてぴくぴくと脈打った。

 

 ——目が合った。

 

 下から覗き込むような角度。ナース帽の下の桃色の瞳が、チンポ越しに青年を見上げている。唇が——わずかに開いた。薄いピンク色の唇の隙間から、舌先がちろりと覗く。

 

 その光景だけで、もう射精しそうだった。

 

 下腹の奥がきゅうっと引き攣って、尿道の入り口がひくつく。我慢汁がとろりと溢れて、亀頭の先端を伝い落ちていく。

 

「リラックスしてね」

 

 注射を怖がる子どもを安心させる——あの微笑みだった。

 

 いろはの左手がチンポの根元を軽くつまんだまま、右手の親指がストップウォッチのボタンに乗る。

 

 舌が、伸びた。

 

 ぺろ、と亀頭の先端を一舐め。ほんの一瞬。唾液の膜が亀頭にかかって、空気が触れたところが急にひやりとした。

 

「ひぅっ——」

 

 声が裏返った。たった一舐め。それだけで腰が浮きかけた。

 

 いろはの舌先が——仮性包茎の皮と亀頭の隙間に、するりと差し込まれた。

 

 ぬるり。

 

 温かくて、湿っていて、驚くほど柔らかい。皮を押し上げるように、亀頭のまわりを時計回りにゆっくりと一周する。皮の下に溜まった恥垢ごと舐め取るような、丁寧で、それでいて容赦のない舌使い。亀頭の表面を覆っていた皮膜がぺろりと剥がされて、敏感な粘膜がいろはの唾液に直接晒される。

 

 カチ。

 

 ストップウォッチが押された。計測開始。

 

「ふ——っ、あ、ちょ、た、環さっ——」

 

 声にならない。舌が止まらない。亀頭を一周したいろはの舌先が、ちょうど六時の位置——裏筋のど真ん中で、ぴたりと停止した。

 

 チンポの泣き所。男にとって最も敏感な、亀頭裏の窪み。そこに舌の先端がぴったり嵌まって——くにっ、くにっ、と小さく、ピンポイントで抉る。

 

「——っっっ」

 

 息が止まった。

 

 脳天から爪先まで、白い雷が貫いた。全身の毛穴が開いて、鳥肌が津波のように広がっていく。裏筋を舌先で弾かれるたびに、尿道の奥から熱い塊がせり上がってくるのが分かる。

 

 くにっ。

 

 くにくにっ。

 

 ——正確だった。恐ろしいほどに。

 

 舌が裏筋を刺激する圧力も、角度も、リズムも、すべてが完璧に男の射精中枢を狙い撃ちにしている。まるで男の身体の設計図を暗記しているかのような。数え切れないほどのチンポを舐めてきた舌だけが到達できる、そんな妙技だった。

 

 反射的に腰を引こうとした。逃げなければ終わる。一秒後には終わる。

 

 だが、いろはの左手が竿の根元をつまんだまま、微動だにしない。力を入れているようには見えないのに、腰が動かない。魔法のような拘束力で、チンポがいろはの舌の射程から一ミリも逃げられなかった。

 

 そして。

 

 亀頭がぶるっと膨らんだのを、いろはの舌が感じ取った——その瞬間。

 

 ぱくっ。

 

 チンポが、口に呑まれた。

 

 亀頭から竿の半ばまでを一気に含んで、頬がきゅっと窪む。唇がチンポの胴を締めつけて、舌が亀頭の裏側に貼りつき——

 

 ずぢゅうぅぅぅっ♡

 

 吸った。

 

 バキュームだった。掃除機のような、という比喩がまるで冗談に聞こえないほどの吸引力。チンポの先端からまるごと精液を吸い上げるような、口腔全体を使った容赦のない搾精。

 

 ——先回り。

 

 射精が来ると分かって、逃がさないように口で封じた。それが瞬時に、呼吸するような自然さで行われた。男を射精させることに慣れすぎた身体の、無意識の反射。

 

「んぶっ——あっ、イッ、で、出るっ、出ますっ——!!」

 

 叫んだ。

 

 叫んだときにはもう遅かった。

 

 びゅるるるるっ——

 

 精液が、噴き出した。

 

 チンポが痙攣して、尿道を白濁が駆け上がって、いろはの口の中にぶちまけられる。一射。二射。三射。下腹の奥が引き攣るたびに次の波が押し寄せて、止められない。止まらない。精液の量が自分でも驚くほど多くて、口の中がいっぱいになっていくのが竿越しに伝わってきた。

 

 カチ。

 

 ストップウォッチの停止音。

 

 ——だが、いろはの口は離れなかった。

 

 射精が終わるまで、一射ごとに脈動するチンポのリズムに合わせて、唇の締めつけと舌の圧が微妙に変化する。びゅくっと精液が飛び出す瞬間にきゅっと吸い、合間にはぬるりと舌が亀頭を撫でて、次の射出を促す。

 

 搾り取られている。

 

 一滴残らず、吸い出されている。

 

 それが医療行為の延長線上にあるとは到底思えないほど、甘くて、残酷で、気持ちよかった。

 

「ひっ、ぅ、あ、あ……っ」

 

 歯の根が震えた。ガチガチと歯が鳴って、それが止められない。目の奥が熱くなって、睫毛に涙が滲んだ。気持ちよすぎて泣いている。生まれて初めて、自分の手以外のもので射精した。それがこんなに——こんなに、気持ちいいなんて。

 

 最後の一滴まで吐き出して、チンポがびくんと跳ねるのを最後に——いろはの唇が、ゆっくりと離れた。

 

 ちゅぽ。

 

 名残惜しそうな小さな音を立てて、チンポが口腔から解放される。唾液と精液が混じった糸が、いろはの下唇と亀頭の先を一瞬だけ繋いで、ぷつりと切れた。

 

 いろはが顔を上げた。

 

 口元を手の甲で軽く拭いながら、もう片方の手に握ったストップウォッチに目を落とす。液晶の表示を確認して——わずかに眉を動かした。

 

「三秒四」

 

「…………え?」

 

「刺激を開始してから射精まで、三・四秒。うん——」

 

 いろはがストップウォッチをデスクに置いて、カルテになにかを書き込んだ。

 

「レベル5だね」

 

「れ、レベル5って……」

 

「早漏の重症度を五段階で評価するんだけど、レベル5は最重度。刺激開始から五秒以内に射精してしまう段階だよ」

 

 最重度。

 

 その言葉が、ずしりと腹の底に落ちた。知っていた。自分が重症だということは知っていた。でも、専門のトレーナーに数値で突きつけられると——来るものがある。

 

 青年は唇を噛んで、俯いた。

 

 情けない。掲示板の書き込みに背中を押されて、ここまで来て、検査の結果が最重症。しかもこんな綺麗な人の口に三秒で射精して。穴があったら入りたいどころの話じゃない。このまま地面に沈みたい。

 

「……すみません」

 

「なんで謝るの」

 

 いろはの声が、やわらかかった。

 

 顔を上げると、ストップウォッチをしまったいろはが、医療用のシャーレを手にしていた。小さなステンレスの皿。それを唇に近づけて——口の中に溜まっていた精液を、とろりとシャーレに吐き出す。

 

 白い液体がぬるりとシャーレの底に広がった。量が多い。自分で出したのに、他人の器に移された途端にその量の多さが生々しく迫ってくる。

 

 ——飲んでくれるんじゃないんだ。

 

 ほんの少しだけ、期待していた。こんな綺麗なお姉さんに精液を飲んでもらえたら、と。でもそれは素人の妄想だ。いろはの行為はあくまで医療行為であって、精液の回収は検体の採取なのだ——と、青年は自分に言い聞かせた。

 

 いろはがシャーレにラベルシールを貼って、ワゴンの上に丁寧に置いた。

 

「レベル5は確かに重症だけど——治らないわけじゃないからね」

 

 いろはが青年の正面にしゃがんで、目線を合わせた。下から覗き込むような姿勢。少し首を傾げて、前髪がさらりと揺れる。

 

「いっしょに早漏改善、頑張っていこうね♡」

 

 ——その笑顔に、嘘はないように見えた。

 

 底の知れなさは、まだある。でも、頑張ろうねと言ってくれたその声の温度は本物だった。少なくとも、青年はそう信じたかった。

 

「……はいっ。お、お願い、します……っ」

 

 泣きそうな顔で頷く青年の目尻を、いろはの指が一本、そっと拭った。

 

「うん。泣かなくて大丈夫だよ」

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「じゃあ、トレーニングに入っていくね」

 

 いろはが医療ワゴンから透明なボトルを取り上げた。ラベルには『医療用潤滑剤』と印字されている。キャップを開けると、ローションが容器の口でとろりと光った。

 

「まず、包茎を綺麗にしてあげるところからだね」

 

「む、剥く、んですか……」

 

「うん。皮が被ったままだと正確なトレーニングができないから」

 

 いろはがベッドの横のスツールに座り直して、青年のチンポに手を伸ばした。左手の人差し指と中指で竿を軽く挟み、右手の指先にローションを少量垂らす。

 

 とろり。

 

 透明な液体が指の腹を伝って、亀頭の先に落ちた。体温でぬるまったローションが、仮性包茎の皮と粘膜の隙間にじわりと染み込んでいく。

 

「力抜いてね。ちょっとぬるぬるするけど、痛くはしないから」

 

 いろはの右手の親指と人差し指が、亀頭を覆う皮のへりにそっと触れた。皮膚と粘膜の境界。男にとって二番目に敏感な場所。ローションの膜を介して指が滑り込み——ゆっくりと、皮を下に引いていく。

 

 にゅるっ。

 

「っ、あ——」

 

 声が出た。

 

 皮が剥けていく。ローションに濡れた指が粘膜の上をなぞるたびに、チンポの芯が疼く。いろはの指は一切の迷いがなく、皮の癒着を丁寧にほどきながら、ミリ単位で亀頭を露出させていった。

 

 ぷるん、と亀頭の先端が完全に剥き出しになった。

 

 空気に触れた粘膜が——冷たい。

 

 剥きたての亀頭は綺麗なピンク色をしていて、まだ外の空気に慣れていない新生児のように、びくびくと脈打っている。表面がぬるぬるのローションで覆われて、照明の光をてらてらと反射していた。

 

「ふふ、綺麗なピンク色」

 

 いろはが感心したように呟いた。剥いた手をそのまま竿に添えて、亀頭を空気に慣らすように軽く転がす。それだけで腰が跳ねた。

 

「ひゃっ——た、環さん、それ、敏感すぎて——」

 

「うん。剥きたてだから、空気に触れるだけでも刺激が強いよね」

 

 分かっている。分かっていてやっている。いろはの声は穏やかなのに、指は止まらない。亀頭の先端を指の腹でくるりと一撫でして、ようやく手を離した。

 

「よし。じゃあ、トレーニングの説明をするね」

 

 いろはがローションのボトルを手に取り、今度はたっぷりと左手の掌に注いだ。右手もその上に重ねて、両手の指の間でぬちゃぬちゃとローションを馴染ませていく。

 

 その音。

 

 ぬちゅ、ぬちゃ、くちゅ。

 

 手のひら同士がローションを絡ませる水音が、静かな診察室に生々しく響いた。いろはの白い指の隙間を、透明の粘液が糸を引いて垂れる。

 

 ——見ているだけで勃起する。

 

 すでに限界まで硬くなっているはずのチンポが、さらに一段階膨らんだ。血管が浮き上がって、先端から我慢汁がぽたりと太腿に落ちた。

 

「手コキでのトレーニングだよ。私がおちんちんを触って、射精しそうになったらストップって言ってね。そしたら手を止めるから。落ち着いたらまた再開して——それを繰り返すの」

 

「は、はい……」

 

「大事なのは、射精しそうな感覚を自分で捉えること。その感覚が分かるようになれば、コントロールもできるようになるからね」

 

 理屈は分かる。分かるけれど——さっきの検査で三・四秒しか持たなかった男が、手コキの途中で「ストップ」を宣言できるとは到底思えなかった。

 

「じゃあ——いくよ」

 

 ローションでてらてらに光るいろはの両手が、チンポを包み込んだ。

 

 ぐにゅ。

 

「ぅ、あっ——」

 

 声が出た。

 

 温かい。柔らかい。ローションの膜を介して伝わるいろはの体温が、チンポ全体をじんわりと包んでいる。十本の指が竿に絡みついて、掌の丘が亀頭の傘を覆う。人の手に触られるチンポ。生まれて初めての手コキ。その事実が脳を灼いた。

 

 いろはの手が——動いた。

 

 ぐりゅ♡

 

 亀頭を、揉んだ。

 

 上下に扱くのではない。掌の中心に亀頭を収めて、五本の指で——ぐりゅっ、ぐりゅっ、と回転させるように揉み洗う。まるで泥だらけの果実を掌で丁寧に磨くような手つき。指の腹が亀頭の溝をなぞり、爪先が尿道口のすぐ横を掠め、手のひらの温度がカリ首を這い回る。

 

 ——想像の何百倍も、気持ちいい。

 

 自分の手では絶対にできない角度、できない圧、できないリズム。チンポのどこをどう触れば男が壊れるか知り尽くした手。何百本、何千本のチンポを扱ってきた指先だけが纏う、この異常な手慣れ。

 

 ぐりゅっ、ぐりゅっ、ぐりゅりゅっ♡

 

 ローションの水音が卑猥に弾ける。いろはの指がチンポを転がすたびに、透明な粘液が泡立って、ぬちゃぬちゃと淫靡な音を立てた。

 

 射精感が——津波のように、来た。

 

 さっきのフェラとは質の違う、じわじわと下腹を焦がすような熱ではなく、一瞬で全身を呑み込む大波。睾丸の底から精液がせり上がってきて、尿道がひくつき、亀頭がぶるぶると震え始める。

 

「す、ストッ——」

 

 叫んだ。

 

 叫んだつもりだった。だが口から出たのは「ス」の子音と、掠れた吐息だけだった。

 

 びゅるっ!

 

 間に合わなかった。

 

 いろはの手の中で、チンポが暴発した。精液が勢いよく飛び出して、いろはの手の甲を白く汚す。二射目がいろはのナース服の袖口に降りかかり、三射目が指の隙間をすり抜けて青年の太腿に落ちた。

 

 いろはの手はぴたりと止まっていた。ストップの声が聞こえた瞬間に反応していた——だが、精液は止まらなかった。チンポが勝手に痙攣して、言うことをきかない。

 

「あ——ご、ごめ、ごめんなさいっ、止まんな、止まらなくて——」

 

 パニックだった。情けなさと快感がぐちゃぐちゃに混ざって、言葉がまとまらない。射精が止まるまでの数秒間が、永遠のように長かった。

 

 最後の一滴が尿道から搾り出されて、チンポがびくんと跳ねて——ようやく、嵐が過ぎた。

 

 いろはの手が、精液にまみれている。ローションと白濁が入り混じって、指の間を糸を引きながら垂れていく。ナース服の袖にも飛沫が点々と付着して、ピンクの布地を斑に汚していた。

 

「…………」

 

 沈黙が、痛い。

 

 青年は俯いた。顔が火を吹くように熱い。目尻が滲む。

 

「ご、ごめんなさい……僕、ストップって言おうとしたのに、間に合わなくて……」

 

「ふふ」

 

 予想に反して——いろはは笑っていた。

 

 精液に汚れた手をティッシュで拭きながら、困った、というよりは「やっぱりね」とでも言いたげな穏やかな微笑み。

 

「大丈夫。おちんちんがびっくりしちゃっただけだよね」

 

 ——優しい。優しすぎて、逆に刺さる。

 

「最初から上手くいく人なんていないから。もう一回やってみようね」

 

 いろはがシャーレに飛び散った精液を丁寧に回収して、ワゴンの上に置いた。手を消毒用のウェットティッシュで拭き直し、再びローションのボトルに手を伸ばす。

 

「ま、待ってください……まだ、チンポが……敏感で……」

 

「うん。でもね——」

 

 いろはが青年の目を見た。にこりと笑って、でもその目はどこか真剣だった。

 

「早漏のトレーニングって、敏感なときにやるから意味があるの。休憩して落ち着いたら、それは普段と同じ状態に戻っただけ。射精直後の、いちばん辛いタイミングで我慢する練習をしないと、改善にはつながらないんだよ」

 

 ——正論だ。反論の余地がない。

 

 優しいだけのトレーナーではないのだと、このとき初めて気づいた。笑顔の奥に、確かな信念がある。早漏を治すという目的のために、必要なことは容赦なくやる。それがいろはのプロとしての厳しさなのだと——。

 

「は……はいっ」

 

 覚悟を決めた。決めるしかなかった。

 

「頑張ろうね」

 

 いろはの手に、再びローションが光る。

 

 ぬちゃっ。

 

 射精直後のチンポに、容赦なく手が巻きついた。

 

「ひぃっ——!」

 

 悲鳴が出た。

 

 敏感すぎる。射精した直後の亀頭は全身の神経が集結したような状態で、ローションの指が触れるだけで視界が白く弾ける。

 

 ぐりゅ♡ ぐりゅ♡ ぐりゅりゅっ♡

 

 亀頭揉み。さっきと同じ手つき。でも射精後の粘膜には、その刺激が何倍にも増幅されて襲いかかる。快感というよりも痛みに近い衝撃が尿道を走り、腰が跳ね上がり、反射的にいろはの手首を掴んで——

 

「——っ、ストッ、ストップ! ストップです!」

 

 今度は叫べた。射精直後だったからこそ、射精の大波が来る前に声を出す猶予があった。

 

 ぴたり。

 

 いろはの手が、嘘みたいに止まった。指一本動かさず、チンポを握ったまま完全に静止する。心臓が胸を殴りつけるような鼓動。荒い呼吸。剥き出しの亀頭が脈打って、いろはの掌の中でひくつく。

 

「頑張って」

 

 いろはの目が、まっすぐにこちらを見ていた。

 

 励ましの声。でもその瞳は——射精するな、と命じているようにも見えた。

 

 チンポが震えている。射精したがっている。睾丸がきゅっと引き上がって、尿道の奥を精液が行ったり来たりしているのが分かる。あと一押しで溢れる。指一本触れられたら終わる。

 

 青年は歯を食いしばった。奥歯がぎりぎりと鳴る。ベッドのシーツを両手で掴んで、全身の力をチンポの根元に集中させた。

 

 ——堪えろ。暴発するな。堪えろ。

 

 十秒。二十秒。三十秒——。

 

 じわじわと、射精感が引いていく。まだ危うい。まだチンポは震えている。でも、崖っぷちから一歩だけ後退した。

 

「……っ、大丈夫、です……もう、大丈夫……」

 

「ん。よく頑張ったね」

 

 いろはが微笑んだ。

 

 そして——手が、動いた。

 

 ぐりゅっ♡

 

「ひぅっ——!?」

 

 ——容赦がない。

 

 十秒の猶予もなかった。亀頭を包む掌がぬるりと回転して、カリ首の溝を親指の腹がきゅうっと撫で上げる。桶の底から水をすくい上げるみたいに、いとも簡単に射精感をこみ上げさせてくる。

 

 二回。三回。ぐりゅぐりゅと揉むだけで、もう限界が来た。

 

「ストッ——ストップ!」

 

 ぴたり。

 

 いろはの手が止まる。チンポがびくんびくんと暴れて、先走り汁が糸を引いて垂れた。

 

 ——頑張れ。堪えるんだ。

 

 目を瞑った。歯を食いしばった。こめかみの血管が浮き上がるほど力を込めて、射精を押しとどめようとした。

 

 いろはの目が、じっと見ている。

 

 桃色の瞳。穏やかで、優しくて、底の見えない瞳。頑張ってねと言いたげで——でも、あなたは射精する、とも言っている気がする。

 

 それが——引き金になった。

 

 びゅくっ。

 

「あっ——だ、ダメ、出ちゃっ——」

 

 暴発。

 

 いろはの手は止まったまま。指一本動いていない。それなのにチンポが勝手に果てた。精液がぴゅるっと飛んで、いろはの指の間を伝い落ちる。ストップをかけた姿勢のまま、いろはが射精を見届けている。

 

「ん——惜しかったね」

 

 いろはの声に、責めるニュアンスは一切ない。

 

「でもちゃんとストップは言えたもんね。それだけで進歩だよ」

 

 ——慰められている。それが余計に情けなくて、泣きたくなった。

 

 いろはが精液を手際よくシャーレに移す。二つ目のシャーレ。ラベルを貼って、ワゴンに並べる。

 

 その後も、訓練は続いた。

 

 いろはがローションの手でチンポを握る。ぐりゅぐりゅと亀頭を揉む。射精感が込み上げる。青年がストップと叫ぶ。いろはの手が止まる。堪える。堪える。堪え——きれずに、暴発する。

 

 三度目の暴発は、ストップの声を上げて五秒後だった。いろはの手は完全に離れていたのに、亀頭の周りに残ったローションの感触と、目の前にしゃがんでいるいろはの吐息だけで、チンポが勝手に果てた。

 

 四度目は——ストップを言う前に終わった。いろはの手がぐりゅっと亀頭を一揉みした瞬間に、反射的に射精した。自分でも信じられなかった。

 

「もう一回やろうね」

 

 いろはが四つ目のシャーレにラベルを貼りながら言った。

 

 五度目。いろはの手が触れて、三回揉まれて、ストップと叫んで、手が離れて——今度は十五秒間、堪えた。チンポはびくびくと暴れて、先走り汁がだらだらと垂れていたけれど、射精はしなかった。

 

 いろはの手が再び触れる。ぐりゅっ、と一回。

 

 暴発した。

 

 シャーレ五つ目。

 

「——はい。今日の手コキトレーニングは、ここまでにしようか」

 

 いろはがシャーレをワゴンに並べた。五つのステンレス皿が、白い精液を湛えて整列している。一つ目から五つ目まで、量は回を重ねるごとに減っていたが、それでも最後の一つにもそれなりの量が溜まっていた。

 

「お疲れさま。よく頑張ったね」

 

「……頑張った、って……僕、全部暴発してるじゃないですか……」

 

 声が震えた。情けなさで喉が詰まる。五回挑戦して五回とも暴発。改善どころか、最後の方はいろはの手が触れた瞬間に射精していた。

 

「ストップが言えるようになっただけで大進歩だよ。最初は声も出なかったでしょ?」

 

 ——確かに。一回目は「ス」の子音しか出なかった。

 

「射精をコントロールする第一歩は、射精が来る感覚を自分で認識すること。今日のトレーニングで、その感覚は掴めたと思うよ」

 

 いろはがカルテにさらさらとペンを走らせている。その横顔が——穏やかだった。患者の経過に満足している医療従事者の顔。汚れたナース服の袖は替えの腕カバーで覆われていて、作業感のある所帯じみた仕草が、逆に妙な色気を醸し出していた。

 

「じゃあ——次のステップに進もうか」

 

「次……ですか?」

 

「うん。ここからが本番だよ」

 

 いろはが立ち上がって、医療ワゴンの下段から何かを取り出した。

 

 小さな箱。中から出てきたのは——コンドーム。ただし、見たことのないパッケージだった。医療用の無機質なデザインで、『早漏改善トレーニング用 医療グレードコンドーム 厚型-01』と印刷されている。

 

「次のトレーニングでは、女性器を使うの」

 

 青年の頭が、一瞬だけ真っ白になった。

 

「じょ、女性器——って……」

 

「うん。私の身体を使って、トレーニングするよ」

 

 ——セックス。

 

 その単語が脳裏で爆発した。セックスだ。この人と。この美人のお姉さんと。セックス。童貞卒業。いま「私の身体を使って」と言った。嘘だろ。掲示板の噂は全部本当だったのか。あわよくば看護婦さんとセックスできるという——あの噂が——。

 

「あ、でも、コンドームは必ずつけるからね」

 

 いろはがコンドームの箱を振ってみせた。

 

「これは市販のものよりずっと厚く作られてるの。女性器からの刺激を和らげて、射精を遅らせる仕組み。トレーニングの段階に合わせてゴムの厚みを薄くしていくんだけど、今日はいちばん厚いのから始めるね」

 

 説明を聞いている。聞いているはずなのに、言葉が右から左に流れていく。頭の中をぐるぐる回っているのは——セックスできる。童貞を卒業できる。この人と。

 

 ——ナマじゃないんだ。

 

 チンポが正直だった。ゴムをつけるという言葉に、一瞬だけ勃起が萎えかけた。バカだと思った。こんな綺麗な人とセックスできるだけで奇跡なのに、ナマがよかったなんて——贅沢にもほどがある。

 

 でも、いろはの顔を見た瞬間に、邪な考えは消えた。

 

 真剣な目をしていた。トレーニングのことを本気で考えてくれている目。この人は僕の早漏を治そうとしてくれている。ただの風俗嬢じゃない。医療従事者として、プロとして。

 

 ——この人の真剣さに、応えなきゃ。

 

「……お願い、します」

 

 青年が真っ直ぐにいろはを見て言った。声はまだ震えていたけれど、さっきまでとは質が違う。覚悟の震えだった。

 

「うん。じゃあ、準備するね」

 

 いろはがコンドームの個包装を開けた。銀色のフィルムから取り出されたそれは、市販品とは明らかに違う。分厚い。ゴムの壁が目視でわかるほど肉厚で、先端のリザーバーも大きく設計されている。

 

「ベッドに仰向けになって」

 

 青年が指示通りに横たわると、いろはがベッドの横に立った。手袋をしていない素手で、コンドームを丸めたまま亀頭の先に当てる。

 

「ちょっとだけきついかもしれないけど、我慢してね」

 

 するり。

 

 ゴムが竿を滑り降りていく。厚みのある膜がチンポ全体を覆って、先端から根元まで隙間なく密着した。たしかに圧迫感がある。チンポの感覚が一枚の壁越しに遠くなったような——これなら、多少は耐えられるかもしれないと思った。

 

「トレーニングは、騎乗位で行うよ。私が上から動きをコントロールするから、あなたはそのまま寝ていてね」

 

「は、はい……」

 

 いろはがスカートの裾に手をかけた。

 

 両手をスカートの中に入れて——下着を、下ろした。

 

 薄いピンクのショーツ。布面積の少ない、それでいてフリルやレースの飾り気はない、シンプルなデザイン。いろはが片脚ずつ引き抜いて、くるりと丸めてワゴンの上に置いた。その動作が妙に事務的で、日常の一部のように淡々としている。パンツを脱ぐという行為が、この人にとっては聴診器を当てるのと同じ業務なのだと思い知らされた。

 

 ——でも。

 

 薄いピンクの布地が太腿を滑り落ちていく瞬間、その下から覗いた肌の白さに、青年の心臓が止まりかけた。

 

 いろはがスカートを腰のあたりまでたくし上げる。白い太腿が根元まで露わになって——

 

 おまんこ。

 

 薄いピンク色の、小さな割れ目。閉じた花弁のように慎ましく、その表面はうっすらと潤んでいた。陰毛はほとんどなく、少しだけ澄ましたような——いろはの見た目そのままの、清楚なおまんこだった。

 

 綺麗、という言葉では足りない。これが今から自分のチンポを呑み込むのだという事実が、信じられなかった。

 

 いろはがベッドに膝をつき、青年の腰を跨いだ。しゃがみ騎乗の体勢。膝を開いて、スカートの奥からチンポに向かって腰を下ろしていく。左手がチンポの竿を掴んで、角度を調整し、右手でおまんこの入り口を広げる。

 

「じゃあ、入れていくね」

 

 声は、いつも通り穏やかだった。

 

 亀頭の先端が、おまんこの入り口に触れた。

 

 コンドーム越しなのに——熱い。

 

 分厚いゴムの壁を貫いて、いろはの膣口から放たれる熱が、亀頭の粘膜にじんわりと染みてくる。それだけで背筋を電流が駆け上がった。

 

「力抜いてね。ゆっくり入れるから」

 

 いろはの腰が、沈んでいく。

 

 ぬ、ぷ——。

 

 亀頭が、膣に呑まれた。

 

 コンドームのゴムが膣壁に押されて亀頭に密着し、その奥から——温度が、来た。分厚いゴムを突き抜けて、いろはの膣内の熱がチンポの芯に直接語りかけてくるような、とんでもない温度。

 

「あ——あ、ああっ——」

 

 声が漏れた。

 

 まだ亀頭しか入っていない。それなのに、もう快感が脳幹まで到達している。

 

 いろはの腰がさらに沈む。

 

 ずぷ、ずぷ、ずぷ——。

 

 チンポが、膣の奥へと吸い込まれていく。

 

 コンドームの厚みが嘘みたいだった。膣壁がゴムごとチンポを締めつけて、四方八方からぷりぷりの膣肉が押し寄せてくる。亀頭を包む熱い圧力。竿を絞り上げる柔らかな万力。コンドーム越しなのに——いや、コンドーム越しだからこそ、膣の締めつけの強さが直接的に伝わってくる。ゴムが薄く引き伸ばされるほどの圧で、チンポのかたちに沿って膣肉がぴったりと貼りつく。

 

 そして——奥まで入った瞬間。

 

 とん。

 

 亀頭の先端が、何かに触れた。

 

 子宮口。

 

 コンドーム越しでも分かる、小さくて硬い突起。そこにチンポの先がちょうど届いたとき——

 

 プシュ。

 

 膣内の空気が微かに抜けた。子宮口とチンポの間の空間が潰れて、膣壁がチンポに真空パックのように密着した。

 

 ——ぁ。

 

 声にならなかった。

 

 密着した膣肉の奥から、じわぁぁ、と。チンポの芯まで沁みてくる温かさ。絶頂の予感をそのまま液体にしたような、甘くて重い快感が、亀頭から竿を伝って尿道の奥まで、ゆっくりと、でも確実に浸食してくる。

 

 外見は湖面のように静かなおまんこだった。いろはの表情にも変化はない。穏やかな微笑みを浮かべたまま、腰を下ろしきった姿勢で、青年のチンポを根元まで呑み込んでいる。

 

 でも——中は。

 

 おまんこの中は灼熱だった。

 

 膣肉がチンポを四方から締めつけながら、小さく脈打っている。ゴムの上からでも分かるほどの蠕動。亀頭のまわりを、目に見えない指がぎゅっと掴んで、くちゅくちゅと揉むような感触。それが亀頭だけでなく、竿の全長にわたって行われている。上下の摩擦ではなく、横方向に——渦を巻くように、螺旋を描くように、チンポを搾っていく。

 

 それがまるで事務的に、当たり前の作業のように、淡々と行われていた。

 

 ——世界屈指の超上級者用おまんこ。

 

 そんな素人立ち入り禁止の名器に、何も知らない童貞早漏チンポが飲み込まれたのだ。

 

 チンポが溶ける。脳が溶ける。ゴムをつけている意味が、まるでない。散々振った強炭酸のコーラにメントスを放り込んだようなものだ。

 

 化学反応のように——必然的に——チンポが、噴いた。

 

「イッ——イ、イグっ、で、出る出る出るっ——!!」

 

 一擦りもしていなかった。

 

 いろはが腰を下ろして、チンポが根元まで呑み込まれた——それだけ。ピストンは一回もしていない。入っただけ。入れた瞬間に射精した。

 

 びゅるっ、びゅくくっ、びゅるるるっ——

 

 コンドームの中で精液が爆発した。リザーバーが一瞬で膨らんで、余剰の精液がゴムの内壁を白く染めていく。射精が止まらない。腰が跳ねる。両手がシーツを掻きむしる。視界が明滅して、いろはの顔が涙で歪む。

 

「イグッ、イグゥッ、出る、まだ出る、止まんないっ——!」

 

 絶叫を繰り返しながら、青年は膣内で——正確にはコンドーム越しの膣内で——射精し続けた。七回。八回。九回。下腹が引き攣るたびに新しい精液が搾り出されて、コンドームのリザーバーが見る見るうちに膨張していく。

 

 いろはの表情が、かすかに曇った。

 

 ——このままでは、この子が壊れる。

 

 ゆっくりとチンポを抜きにかかる。腰を持ち上げて、膣壁から竿を引き抜いていく——が、膨らんだコンドームの精液溜まりが膣壁に引っかかった。

 

「んっ——」

 

 いろはの唇から、小さな吐息が漏れた。

 

 膨張したゴムの塊が膣口を押し広げて、なかなか抜けない。抜こうとするたびにゴムが膣壁を擦り、その振動がチンポに伝わって、青年の射精をさらに煽る。

 

「あっ、あっ、ダメ、ダメダメ、まだ出てっ——」

 

 抜けない。射精が止まらない。抜こうとすればするほど刺激が走り、刺激が走ればコンドームがさらに膨らみ、膨らめばさらに抜けなくなる——地獄のループだった。

 

 いろはが片手で青年の腰を押さえつけ、もう片方の手でコンドームの根元を摘まみながら、慎重に、慎重に腰を持ち上げていく。

 

 ずぽっ。

 

 ようやく、チンポが膣から解放された。

 

 コンドームが——信じられない姿をしていた。

 

 先端のリザーバーが、赤ん坊のこぶし大に膨らんでいる。ゴムの中で白濁がたぷたぷと揺れて、重力に引かれて垂れ下がっていた。チンポに装着されたまま、まるで水風船のようにぶら下がっている。

 

 いろはがコンドームの根元をつまんで、慎重にチンポから外した。

 

「……こんなに出たんだね」

 

 いろはが、パンパンに膨らんだコンドームを自分の顔の横で摘まんでみせた。

 

 にこり。

 

 精液の重みでゴムがぐにゃりと垂れ下がって、透明な膜の向こうで白濁がとろとろと揺れている。その隣に——いろはの微笑み。桃色の瞳と、薄いピンクの髪と、ナース帽と。赤ん坊のこぶし大に膨れた精液袋を自分の頬のすぐ横にぶら下げているのに、表情は穏やかなまま。そのギャップが、背筋に甘い痺れを走らせた。

 

 青年のチンポは——まだ勃っていた。

 

 いろはのおまんこの残り香が亀頭にまとわりついている。コンドームを外された剥き出しのチンポに、膣の熱とぬめりの記憶が焼きついて離れない。精液をぶちまけたばかりだというのに、その感触を追い求めるように、チンポはびんびんに屹立したままだった。

 

「とりあえず十回ピストンできるまで、頑張ってみようか」

 

「じゅ……十回……」

 

 果てしない数字に聞こえた。さっきは入れた瞬間に射精した。一回もピストンしていない。ゼロ回から十回へ。それは青年にとって、地球から月までの距離に等しかった。

 

「大丈夫。コンドームもあるし、ゆっくりいこうね」

 

 いろはが新しいコンドームの個包装を破く。青年のチンポに慣れた手つきで装着して——再び、ベッドに膝をついた。

 

 スカートをたくし上げる。白い太腿が開いて、その奥の薄いピンクの割れ目が見える。さっきチンポを呑み込んだおまんこ。あの凄まじい名器が、また青年のチンポを待っている。

 

 いろはが腰を跨いで、片手でチンポを掴み、おまんこの入り口に導いた。

 

「じゃあ、入れていくよ」

 

 腰が沈む。

 

 ずぷ——。

 

 二度目の挿入。コンドーム越しに、膣壁がチンポを呑み込んでいく。

 

 ——分かっていたはずなのに。

 

 さっき一度味わったはずの快感が、二度目はもっと鮮明だった。初回の衝撃で麻痺していた感覚が戻ったせいか、膣の中の情報量が倍になって脳に流れ込んでくる。

 

 ぷりぷりの膣肉がゴムごとチンポに吸いつく。亀頭の先端が膣の奥へ進むたびに、左右の壁が交互にチンポを押し返してくる。まるで見えない手が亀頭を掴んで——きゅっと握って、くちゅっと揉んで、そしてまた奥へ引き込む。

 

 亀頭を掴む圧力が、一定ではなかった。

 

 きゅ、きゅきゅ、きゅ——とリズミカルに、膣肉が自発的に収縮を繰り返している。チンポが動いていないのに、膣の方から揉みにきている。それだけじゃない。上下の締めつけとは別に、横方向の——ぬるりと渦を巻くような螺旋の動きが、亀頭を包み込んでいた。

 

 二方向の刺激が同時に。しかもゴム越しに。

 

 ——この人のおまんこ、おかしい。

 

 とん。

 

 亀頭が子宮口に届いた。コンドーム越しの硬い突起。その瞬間——膣内の空気がプシュッと抜けて、膣壁がゴムごとチンポに真空密着した。

 

 ぴっったり。

 

 亀頭を掴んでいた見えない手がさらにぎゅっと力を込めて、くちゅくちゅと揉む感触が倍速になる。子宮口がチンポの先端にぴとりとくっついて、微かに吸うような蠕動を始めた。

 

 チンポの芯まで、じわぁぁぁ——と。

 

 絶頂の温度がそのまま液体になったような、甘くて重くて逃げ場のない快感が、亀頭から竿を伝って尿道の内壁を這い上がってくる。一度目よりも遥かに鮮明に。ゴムの壁がまるでないかのように。

 

「——っ、あ——」

 

 射精感が、来た。津波ではなく、地鳴りのように。足元から全身を揺さぶる重低音の快感が、睾丸の底から精液を押し上げていく。

 

 いろはの腰が、持ち上がった。

 

「いーちっ」

 

 カウントの声と同時に、膣壁がチンポの竿をずるりと滑り上がる。亀頭が引き抜かれていく——のに、膣肉が追いかけてきた。見えない手が亀頭を掴んだまま、抜けまいとするように膣口まで付いてくる。

 

 ずりゅっ。

 

 亀頭が膣口のきわまで引き出された瞬間、いろはの腰がまた沈む。

 

 ずぷぷっ。

 

 一気に根元まで。子宮口にとんっと当たって、プシュッと密着。膣肉が歓迎するように蠕動して——

 

「ストッ——ストップ! 出る、もう出ますっ——!」

 

 一往復。たった一回のピストンで、限界を超えた。

 

「にーいっ」

 

 いろはの腰は止まらなかった。

 

 カウントを続けながら、容赦なくチンポを膣口まで引き上げ、再び根元まで沈める。トレーナーとしての厳しさ。十回に到達するまでは止めないという無言の意志が、いろはの腰の動きに表れていた。

 

 ——だが、二往復目の途中で。

 

 びゅるるっ。

 

 青年のチンポが果てた。

 

 コンドームの中で精液が暴発して、射精の衝撃でチンポがびくびくと暴れる。腰が跳ねて、いろはの体重ごと持ち上がりかけた。

 

「あぁっ、ダメ、出てるっ、出てるのにっ——」

 

 射精しながらの絶叫。いろはがゆっくりと腰を持ち上げて、膨らんだコンドームごとチンポを抜き取る。今度は一度目より手際がよかった。

 

 パンパンに膨らんだゴムを外して、ワゴンの上のトレーにぽとりと落とす。

 

 ——その後も、おまんこでのトレーニングは続いた。

 

 三回目。二往復で射精。四回目。やはり二往復。五回目は一往復に逆戻りした。

 

 ベッドサイドのトレーの上に、パンパンに膨らんだコンドームがすでに五つ、水風船のように並んでいる。どれもこれも精液でずっしりと重く、ゴムが透けて中身の白さが見えていた。

 

 それでも——青年はまだ、いろはのおまんこの中を二回以上往復することができないでいた。

 

 いろはの表情に、初めて困惑の色が浮かんだ。

 

 頬に手を当てて、小さく首を傾げる。「んー……」と、考え込むような吐息。その仕草がやけに可愛くて、場違いにどきりとした。

 

「——ねえ」

 

 いろはが、青年の耳元に顔を寄せた。

 

 吐息が耳朶をくすぐる距離。シャンプーの甘い香りが鼻腔を満たして、青年の心臓が跳ねた。

 

「本当はダメなんだけどね」

 

 声が、ささやきに変わった。

 

「——三回ピストンできたら、ゴムなしでさせてあげる」

 

 脳が、爆発した。

 

「な、ナマ——っ!?」

 

「しーっ。大きい声出さないで」

 

 いろはが人差し指を唇に当てた。内緒だよ、というジェスチャー。桃色の瞳が、いたずらっぽく笑っている。

 

「おちんちんにご褒美を用意してあげるの。頑張った先にいいことがあるって分かったら、我慢できるようになるかもしれないでしょ?」

 

 ——生。ナマ。コンドームなし。この人のおまんこに、生のチンポを入れられる。

 

 青年の目が血走った。

 

 チンポが、今までで一番硬く勃ち上がった。亀頭が紫色に鬱血するほどの怒張。我慢汁ではなく、もはや先走りの精液がだらだらと垂れている。

 

「じゃあ——最後の挑戦ね」

 

 いろはが新しいコンドームを装着した。青年の腰を跨いで、しゃがみ騎乗の姿勢をとる。

 

 チンポをおまんこの入り口に当てて——沈めていく。

 

 ずぷ——。

 

 三度目の挿入。膣壁がゴムごとチンポを呑み込む。あの見えない手が亀頭を掴んで、ぎゅっと揉んで、奥へ奥へと引きずり込んでいく。

 

 とん、と子宮口に触れた。プシュッと密着。じわぁぁと染みてくる甘い快感——それがまた、一段階強くなっていた。三度目の挿入で、膣がチンポの形を覚えたのか。ゴムの凹凸に沿って膣肉がぴったりと張りつき、刺激の精度が上がっている。

 

 ——先走り汁がコンドームの中に噴き出した。まだ射精ではない。でも脳は射精の予約を入れたがっている。

 

 いろはの腰が、持ち上がる。

 

「いーちっ♡」

 

 ずるっ——亀頭が引き上げられていく。膣肉の見えない手がしがみつくように追いかけてくる。チンポの長さいっぱいを使ったロングストローク。亀頭が膣口のきわまで来て——いろはの腰が沈む。

 

 ずぷぷぷっ。

 

 一気に子宮口までタッチ。とんっと当たった衝撃で、目の前に火花が散った。

 

「あ——っ、あぁっ——」

 

 一往復。全身が痺れている。射精感がもう喉元まで来ている。でもここで出したら、生ハメはない。

 

 ——堪えろ。三回。たった三回。それで生のおまんこに入れる。

 

 青年は自分の左の太腿を、右手の爪で思いきりつねった。皮膚に爪が食い込む。血が滲む。痛い。でもその痛みが、射精感を一瞬だけ押し戻した。

 

「にーいっ♡」

 

 いろはの腰が再び浮いて、沈む。

 

 ずるっ——ずぷぷっ。

 

 二往復目。チンポの全長を膣壁が舐め上げて、亀頭を子宮口に押しつける。プシュッと密着。じわぁぁと快感が染みてくる。全身の毛穴から精液が噴き出しそうだった。

 

 指が——太腿の肉にめりこんでいる。爪の跡が赤く腫れて、皮膚が半月型に裂けかけていた。痛みで快感を相殺する。原始的で馬鹿げた方法。でも他に手段がなかった。

 

 ——生ハメ。生ハメ。あと一回。あと一回堪えれば。

 

「さんっ♡」

 

 いろはの掛け声とともに、腰が沈んだ。

 

 三度目の子宮口タッチ。

 

 とんっ。

 

 ——限界だった。

 

 脳が射精の命令を下した。精液が尿道を駆け上がってきた。あと一秒で噴き出す。

 

 青年は——太腿のつねりではなく、下唇を噛んだ。

 

 歯が唇の肉を裂いた。鉄の味が口内に広がる。痛みが脳幹を焼いて、射精のシグナルが一瞬だけ途切れた。

 

 その隙に——いろはの腰が、持ち上がった。

 

 ずぽっ。

 

 チンポが膣から引き抜かれた。

 

 亀頭が空気に触れた瞬間、おまんこの残り香がべっとりとまとわりついて射精を促してくる。チンポがぴくんぴくんと上下に暴れて、コンドームの中で先走り汁がぐちゃぐちゃに泡立っている。

 

 射精させろ。出させろ。もう無理だ。

 

 チンポがそう叫んでいる。

 

 青年は両手でチンポの根元を握りしめた。親指で尿道を圧迫して、物理的に射精を堰き止める。全身が震えている。歯がガチガチ鳴っている。額から汗が滴り落ちて、シーツに染みを作った。

 

 五秒。十秒。十五秒——。

 

 チンポの脈動が、少しずつ、ほんの少しずつ穏やかになっていく。射精感が引き潮のように後退して——ギリギリのギリギリで、あと一ミリのところで。

 

 堪えた。

 

「……っは——っは——っ……」

 

 呼吸が荒い。心臓が壊れそうなほどに暴れている。

 

 でも——出ていない。コンドームの中に新しい精液は溜まっていない。

 

 三回ピストン。達成。

 

「——がんばったね♡」

 

 いろはが、笑っていた。

 

 さっきまでの穏やかな微笑みとは少し違う——本当に嬉しそうな、目尻が柔らかく下がった笑顔。桃色の瞳が潤んで見えるのは、汗で霞んだ青年の視界のせいか。

 

 生ハメの権利を手に入れた。

 

 だが青年の意識は、それよりも——いろはの笑顔に釘付けだった。がんばったね、と言ってもらえた。この人に。それだけで、太腿の傷も唇の血の味も、全部報われた気がした。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「じゃあ——がんばったおちんちんに、ご褒美をあげようね」

 

 いろはがコンドームを外した。

 

 精液で内側がぐちょぐちょに汚れたゴムを、つまんでトレーに落とす。剥き出しになったチンポが、診察室の空気に直接晒された。

 

「射精チートデイ、って知ってる?」

 

「ちーと、でい……?」

 

「ダイエットにチートデイがあるでしょ? たまには好きなものを食べていい日。それと同じ。おちんちんにも、我慢しなくていい日を作ってあげるの」

 

 いろはが青年の目をまっすぐに見た。

 

「何回出してもいい。我慢しなくていい。好きなだけ射精していい。——そうやって思いきり気持ちよくなることで、『自分はちゃんと気持ちよくなれるんだ』っておちんちんに自信をつけさせるの」

 

 ——好きなだけ射精していい。

 

 その言葉が、乾いた砂地に水が染み込むように、青年の脳に沁みた。今日ここに来てからずっと、射精は「失敗」だった。暴発。早漏。レベル五。情けない。恥ずかしい。ごめんなさい——。その射精を、いまから肯定してもらえる。

 

「それでね」

 

 いろはが立ち上がった。

 

 ナース服のボタンに——手をかけた。

 

 襟元のボタンを、ひとつ。

 

「今日は特別に、ゴムなしでいいよ」

 

 ふたつ。

 

「私の身体、全部使っていいからね」

 

 みっつ。よっつ。いつつ——。

 

 ボタンが全部外れて、ナース服の前がはだけた。その下に——白い肌。胸の谷間を覆うシンプルな薄ピンクのブラジャー。腹部はきめ細かく、臍のくぼみが照明に淡い影を落としている。

 

 いろはがナース服を肩から滑り落とした。ピンクの布地がベッドの端に落ちる。ナース帽だけは頭に残したまま——ブラのホックに手を回す。

 

 ぱちん。

 

 ブラが外れて、おっぱいが零れ出した。

 

 大きくはない。でも、形がいい。重力に従ってほんの少しだけ垂れる柔らかさと、先端がつんと上を向く張り。乳首は薄い桜色で、こぢんまりとしていて——空気に触れた瞬間に、きゅっと小さく硬くなった。

 

 ナース帽だけ被った全裸のいろはが、ベッドの上に仰向けに横たわった。

 

 大きく脚を開く。

 

 太腿の奥に——おまんこ。さっきまでコンドーム越しにチンポを呑んでいた、あの名器が。薄いピンクの花弁がわずかに開いて、奥の濡れた粘膜がてらりと光っていた。

 

「さあ、おいで」

 

 手招き。桃色の瞳が、笑っていた。

 

 青年の全身に、電気が走った。

 

 ——我慢しなくていい。好きなだけ出していい。この人のおまんこに。生で。

 

 身体が勝手に動いた。ベッドに這い上がり、いろはの身体に覆い被さる。両手がシーツに沈んで、いろはの顔が真下に来た。薄いピンクの髪がシーツに広がって、ナース帽が少しずれている。桃色の瞳が、至近距離で青年を見上げていた。

 

 チンポが——おまんこの入り口に触れた。

 

 生。

 

 ゴムがない。何もない。亀頭の粘膜と、いろはのおまんこの粘膜が、直接、触れている。

 

 ——ぬるり。

 

 その瞬間に、分かった。

 

 今まで味わってきた全ての快感が、前座だったのだと。

 

 コンドーム越しに感じていた熱——あれは、本物の十分の一だった。いろはの膣口から伝わる温度が、ゴムという壁を失って、亀頭の粘膜に直接注ぎ込まれる。熱い。甘い。とろけるように濃密な温度が、亀頭の表面を舐め回して、尿道の中にまで沁み込んでくる。

 

 まだ先端しか触れていない。

 

 それだけで——もう、射精感がある。

 

 でも、いい。今日は出していい。我慢しなくていい。

 

 青年は腰を押し込んだ。

 

 ずぷ——ずぷぷぷぷっ。

 

 チンポが、生のまま、いろはのおまんこに呑まれていく。

 

 ——っっっっ。

 

 声が出なかった。

 

 ゴムがない。膣壁の感触が、全部、生で来る。

 

 ぷりぷりの膣肉が亀頭に直接吸いつく。薄いピンク色の膣壁が——いろはの髪の色と同じ、淡い桃色の粘膜が——チンポの表面にぴったり貼りついて、ぬるぬるの愛液を介して肉と肉が密着する。

 

 コンドーム越しに感じていた「見えない手」が、生では「見えない口」になった。

 

 亀頭を、口で含むように。唇で挟み、舌で転がし、喉の奥で吸い込むように——膣肉が亀頭を咥え込んでいる。くちゅ、くちゅ、とリズミカルに。まるで亀頭専用の口腔がおまんこの中にもう一つあるみたいに、チンポの先端を丸ごと呑んで、クチュクチュと揉みしだいている。

 

 そして——奥へ進むたびに、快感の質が変わった。

 

 膣口のきわは、きゅっと締まる快感。竿の中ほどは、ぬちゅぬちゅと絡みつく快感。奥に進むほど、膣肉の温度が上がっていく。粘膜が薄くなって、その下を走る血管の脈動が直接チンポに伝わってくる。いろはの心臓の鼓動を、チンポで聞いているような錯覚。

 

 そして——子宮口に、触れた。

 

 とん。

 

 ゴムなしの亀頭が、子宮口に直接触れた瞬間——

 

 プシュ。

 

 膣内の空気が抜けた。膣壁がチンポに真空密着して、ぷりぷりの膣肉がチンポのあらゆる凹凸に沿ってぴったりと張りついた。

 

 じわぁぁぁぁぁ——。

 

 来た。

 

 コンドーム越しに感じたあの「絶頂の温度をそのまま液体にしたような快感」が——ゴムという防壁を失って、生の粘膜に直接流し込まれた。チンポの芯に。尿道の壁に。亀頭の一番敏感な裏筋に。毛細血管の一本一本に。骨の髄に。

 

 甘い。重い。温かい。そして——絶対に逃げられない。

 

 見えない口が亀頭を咥えたまま、ぎゅうっと力を込めた。くちゅくちゅと揉む動きが、生の粘膜同士では摩擦の質がまるで違う。ゴム越しの「圧」ではなく、粘膜が粘膜を直接舐め回す「蠕動」。亀頭のカリ首の溝に沿って膣壁のひだが入り込み、括れた部分を指で撫でるように、精密に、丁寧に、一ミリも残さず刺激していく。

 

 それに加えて——螺旋。

 

 膣肉全体が渦を巻くように動いていた。上下のピストンによる摩擦に加えて、横方向にゆっくりと回転する圧力。チンポが膣壁のねじれに巻き込まれて、亀頭がくるりくるりと別方向から揉み上げられる。

 

 それが——静かに行われていた。

 

 暴力的な快感ではない。丁寧で、精密で、ある意味事務的ですらある。いろはのおまんこは、チンポを追い立てるのではなく、チンポの中身をそっくり吸い出すように、甘く、温かく、ゆっくりと——でも確実に、射精の底まで手を伸ばしてくる。

 

 抗う余地がなかった。チンポが膣に入った瞬間から、脳に射精の予約が入っていた。あとはただ、いろはのおまんこが定めたタイミングで、定められた量の精液を搾り取られるだけ。

 

「——っ、あ、あ、イク、イグッ、出る、出ますっ、環さんっ、中に、中に出ますっ——!!」

 

 叫んだ。

 

 叫びながら——腰が、動いていた。我慢しなくていい。だから身体が勝手にそうした。チンポをいろはの子宮口に押しつけて、下腹に力を込めて——

 

 びゅるるるるるっ——

 

 射精。

 

 生の精液が、生のおまんこの中に、噴き出した。

 

 コンドームの中に閉じ込められていたときとは——何もかもが違った。精液が尿道を駆け上がって亀頭から飛び出す瞬間、膣壁がきゅうっとチンポを締めつけて、射出の勢いごと受け止める。そして子宮口が——尿道口にぴとりとくっついて、精液を吸い上げるように蠕動した。

 

 ずじゅ、ずじゅ、ずじゅじゅ——。

 

 吸われている。子宮口に精液を吸い出されている。一射ごとに、チンポの脈動に合わせて子宮口がきゅっきゅっとリズミカルに収縮して、精液が噴き出すたびにじゅうっと吸い取る。

 

 出すのではなく——抜かれている。

 

 快感が、止まらない。射精しているのに快感が減衰しない。普通なら射精の最中に少しずつ快感が引いていくのに、いろはのおまんこは射精するチンポに追い打ちをかけるように膣肉を蠕動させて、一射ごとに快感を上乗せしてくる。

 

 一射目が気持ちいい。二射目がもっと気持ちいい。三射目がさらに気持ちいい——射精のたびに快感が加速していく。

 

 暴れたチンポにお説教するみたいに、容赦がなかった。

 

「あっ、あっ、あっ、止まっ、止まんないっ、気持ちいい、気持ちいいっ、中に、全部出てっ——」

 

 泣いていた。

 

 気持ちよすぎて泣いていた。女の人の子宮に精液を注いでいるという事実が、快感をさらに煽る。童貞が、中出しをしている。この綺麗なお姉さんの子宮に。種付けをしている。生きている女の人の身体の中で、自分の精液が、受け入れられている。

 

 涙も鼻水もぐちゃぐちゃだった。視界がぼやけて、目の前のいろはの顔が水彩画のように滲んでいる。でもその中で、桃色の瞳だけがはっきり見えた。穏やかに、優しく、青年を見上げている。

 

 射精が収まってもチンポはまるで萎えなかった。いろはのおまんこの中に漬かったままの亀頭が、膣壁の蠕動に揺すられて、すぐに次の射精感をこみ上げさせてくる。

 

 抜かなかった。抜けなかった。

 

 そのままピストンを始めた。

 

 ずちゅ、ずちゅ、ずぷっ——。

 

 自分の精液でぬるぬるになった膣内を、生のチンポが掻き回す。さっき出したばかりの精液が潤滑剤になって、チンポと膣壁の間でくちゅくちゅと泡立つ。腰を引くたびに膣口からとろりと精液が溢れ出して、シーツに白い染みを作った。

 

 込み上げるままに射精した。二度目。ピストンの途中で、何の前触れもなく精液が噴き出した。腰が止まらない。射精しながら腰を振っている。出しながら動いている。

 

 いろはのおっぱいに顔を埋めた。

 

 柔らかい。温かい。薄い桜色の乳首が唇に触れて、吸いついた。むしゃぶりつくように。赤ん坊が母親の乳房に縋るように、いろはの胸に顔を押しつけて、ちゅうちゅうと乳首を吸いながら、下半身は獣のように腰を振り続けている。

 

 射精チートデイ。

 

 これが、その本質だった。我慢の鎖が外れた早漏チンポが、いろはの名器おまんこの中で、本能のままに射精を繰り返す。桃源郷。極楽浄土。この世にこんなに気持ちいいことがあったのかと、全身の細胞が叫んでいた。

 

 ひとしきり射精を繰り返して——青年はチンポを引き抜いた。精液にまみれた亀頭が膣口から滑り出て、ぬちゃりと淫靡な音を立てる。

 

「つ、次は——後ろから、いい、ですか……」

 

 声が震えている。でも目は据わっていた。さっきまでの気弱な童貞の目ではない。快感に酩酊して、もっとくれと求める雄の目。

 

「ん——いいよ」

 

 いろはが身体を反転させた。四つん這い。ナース帽が少し傾いだまま、白い背中が青年の前に晒される。腰のくびれから尻にかけてのラインが、照明の光を受けてなめらかに輝いていた。丸い尻の谷間の奥に、薄いピンクのおまんこが覗いている。精液と愛液でぐちょぐちょに濡れて、蕩けた膣口がわずかに開いている。

 

 青年はいろはの腰を掴んだ。チンポを——突き入れた。

 

 ずぶりっ。

 

 一気に。根元まで。

 

 正常位とは角度が違った。バックから入れたチンポは、膣壁の上面をえぐるように突き進んで、亀頭が——勢いよく子宮口にぶつかった。

 

 ごんっ。

 

「あんっ♡」

 

 いろはの口から——声が漏れた。

 

 初めて聞いた。今日この部屋に入ってから、ずっと穏やかに微笑んでいたいろはが。あの底の知れない笑みの奥から、初めて甘い声が溢れた。

 

 その一声が——ガソリンだった。

 

 青年の腰が暴走した。

 

 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ——

 

 いろはの尻にチンポを叩きつける。子宮口に亀頭がぶつかるたびに、脳天を突き抜ける白い衝撃。目の前が真っ白に灼けて、何も考えられない。ただ腰を振る。振って、振って、精液が込み上げるたびに注ぎ込む。

 

 数回ピストンするたびに射精した。止まらない。出しても出しても次が来る。いろはのおまんこが射精するたびにチンポを締めつけて蠕動させて、「まだ出せるでしょ」とでも言うように次の精液をこみ上げさせてくる。

 

 一発出すたびに、お返しのようにおまんこが搾精を加速した。子宮口が尿道口に吸いついて、亀頭をクルクルと擦りながら精液をじゅうじゅうと吸い上げる。暴れたチンポを諌めるように、一切の容赦なく。

 

「あ、っ、あ——すご、すごいっ、環さんの、中、すごすぎっ——」

 

 もはや敬語も崩壊していた。目が虚ろに泳いで、涎が顎から垂れている。でも腰は止まらない。チンポが勝手に動いている。いろはのおまんこに支配されたチンポが、もはや青年の意思とは無関係に、射精と挿入を繰り返している。

 

 一生射精していられると思った。

 

 この世界にはこのおまんこしかなくて、このチンポはこのおまんこのためだけに存在していて、射精とは呼吸と同じくらい自然な営みなのだと——そう錯覚するほどの快楽が、全身を浸していた。

 

 だが——永遠は、来ない。

 

 腰の動きが鈍った。筋肉が限界を訴えている。何度射精しても萎えなかったチンポが、ようやく最後の一発を予感させるように、ずしりと重い射精感を下腹に溜め始めた。

 

 青年はいろはの尻を両手で掴んだ。指が白い肌にめり込む。チンポを、今日一番深く——膣の最奥に突き刺した。子宮口に亀頭を押しつけて、動きを止めた。

 

 金玉の底から、ひねり出すように。

 

 最後の一発。

 

 びゅ——くっ、びゅるっ、びゅるるるるっ——。

 

 太く、重い射精だった。精液の量はとうに枯渇しかけているはずなのに、子宮口の吸引がチンポの奥の奥から最後の一滴まで搾り取ろうとする。尿道の内壁を精液が這い上がっていく感覚が、一射ごとに背骨を揺さぶった。

 

 射精が途切れてもチンポが震え続けた。腰がびくびくと痙攣して、力が入らない。

 

 ——伸びた。

 

 青年はそのまま前に倒れ込んで、いろはの背中につっぷした。肌と肌が密着する。いろはの背中は汗で薄く濡れていて、温かくて、心臓の鼓動が背骨越しに伝わってきた。

 

「…………ありが、とう、ございま……した……」

 

 掠れた声が、いろはの肩甲骨のあいだに吐き出された。

 

 意識が、遠くなっていく。

 

 いろはが青年の身体をそっと横にずらして、ベッドに寝かせた。シーツは汗と精液でぐしょぐしょだった。青年のチンポはようやく萎えかけていて、先端から精液の残滓がとろりと垂れている。

 

 いろはは青年が眠ったのを確認してから、静かに立ち上がった。

 

 ワゴンの上に並んだトレーに目をやる。シャーレに溜まった精液。パンパンに膨らんだコンドームの山。今日一日で採取した検体の数々を、いろはは手慣れた動作で専用の保管容器に移し替え、ラベルを貼っていく。夕方の集荷便で、七階の院長室に届けられる。

 

 灯花からは「泌尿器科の研究データとして使う」と説明されていた。いろはは素直にそれを信じている。早漏改善の研究に自分の仕事が役立つのなら嬉しい——そういう子だった。昔から。

 

 本当の行き先を、いろはは知らない。精液に含まれた生命力を魔力に変換するドッピュルシステム——かつて魔法少女を救うために開発された、搾精の仕組み。早漏改善クリニックは、その供給源のひとつに過ぎなかった。

 

 保管容器の蓋を閉めて——いろはは、自分のおまんこに手を当てた。

 

 膣口から溢れかけている大量の精液。本来ならこれも回収するべきなのだけれど。

 

 手のひらに、淡い光が灯った。ソウルジェムの輝き。

 

 いろはのおまんこの奥で、注ぎ込まれた精液が静かに吸収されていく。ドッピュルシステムの恩恵を、自分の身体で直接受け取る。灯花に報告する必要のない、トレーナーのささやかな役得。

 

 ふぅ♡

 

 いろはが小さく息を吐いた。満足げに目を細める。唇の端がほんの少しだけ上がっている——トレーナーの顔でも、医療従事者の顔でもない、一人の女の子の顔だった。

 

 それはベッドで眠りかけている青年には、見えなかった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 目を覚ましたとき、診察室の照明が少し暗くなっていた。

 

 何分——いや、何十分眠っていたのか。ベッドのシーツは新しいものに替えられていて、青年の身体にはタオルケットがかけられていた。下半身はきれいに拭き取られている。

 

 身体を起こすと、全身が軋んだ。腰が痛い。太腿がつっている。下唇にかさぶたができていて、舌で触れるとぴりりと沁みた。

 

「あ、起きたね」

 

 デスクの向こうから、声が聞こえた。

 

 いろはが座っていた。ナース服をきちんと着直して、ナース帽も正しい位置に戻っている。カルテに何かを書き込んでいた手を止めて、こちらを向いた。

 

 ——さっきまで全裸で自分の下にいた人と同じ人物だとは、到底思えない。

 

 あのぐちゃぐちゃの、精液まみれの、汗で濡れた肌の——あの姿が嘘みたいに、ピンクのナース服はぱりっとしていて、髪は整えられて、頬にはうっすらとパウダーが乗っていた。何事もなかったかのような、完璧なプロの顔。

 

「お疲れさまでした。今日の結果をまとめるね」

 

 いろはがカルテを持って、ベッドの横に来た。

 

「まず検査。口腔刺激で三・四秒。重症度レベル五」

 

「…………はい」

 

「手コキトレーニング。五回中五回暴発。ただしストップの宣言は後半から安定」

 

「…………はい」

 

「挿入トレーニング。最初は挿入即射精だったけど、最後には三回のピストンに耐えられたね」

 

 いろはが顔を上げて、にこりと笑った。

 

「初日としては、すごく頑張ったと思うよ」

 

 ——初日。

 

 その言葉が、意味をもって脳に届くまで数秒かかった。

 

「初日……って、ことは……」

 

「うん。次回の予約、取っていこうか」

 

 いろはがデスクに戻り、卓上のタブレットを操作し始めた。スケジュール表らしきものが画面に映っている。

 

「来週の同じ曜日で大丈夫? 今日の結果を見るかぎり、週一回のペースがちょうどいいと思うんだけど」

 

 ——来週も来ていい。

 

 ——この人に、また会える。

 

 ——この人のおまんこに、また——。

 

「い、行きます。来週も、来ます。絶対に」

 

 声がひっくり返った。食い気味だった。恥ずかしいくらい即答だった。

 

「ふふ。じゃあ来週の——ここに、入れておくね」

 

 いろはがタブレットに予約を入力して、小さなカードを一枚プリントした。次回の日時が印字されたそれを、青年に差し出す。

 

「着替えたら、受付でお会計してね。お疲れさまでした」

 

 にこり。

 

 あの笑顔。底が知れないけれど温かい、いろはの笑顔。

 

 青年は予約カードを、財布ではなく——胸ポケットに入れた。心臓の上。お守りみたいに。

 

「あ、ありがとうございました……! 環さん、来週も、よろしくお願いします……!」

 

 何度もお辞儀をしながら、ぎこちなく服を着て、ぎこちなくドアに向かう。ドアノブに手をかけたところで振り返ると、いろはがデスクの向こうから小さく手を振っていた。

 

「またね」

 

 ——またね。

 

 その二文字が、世界で一番甘い言葉に聞こえた。

 

 廊下を歩く。受付で会計を済ませる。自動ドアをくぐって、夏の終わりの神浜に出た。蝉が鳴いている。午前中と同じ街なのに、全部が違って見えた。

 

 股間がまだ疼いている。太腿の傷が引き攣る。下唇のかさぶたがぴりぴりする。全身が、今日あったことの証拠を叫んでいる。

 

 ——あの人のおまんこは、やばい。

 

 早漏が治る気がしない。むしろ悪化している気がする。でも、そんなことはどうでもよかった。来週もあの部屋に行ける。あの笑顔に会える。あのおまんこに——。

 

 青年は胸ポケットの予約カードを指先で確かめながら、帰り道を歩いた。足取りは来たときよりずっと軽くて、でもチンポはまだ、いろはのおまんこの残り香を覚えている。ジーンズの中でかすかに疼いて、帰るまでに一回抜かないとまずいかもしれないと思いながら——それでも、顔はにやけていた。

 

 里見メディカルセンター、早漏改善クリニック。

 

 中毒患者が、一人増えた。

 

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