搾精都市神浜~魔法少女たちのエッチな短編集~ 作:黒蓮/クロハス
玉座の間に、女王の声だけが落ちた。
帳の奥は闇に沈んでいる。黄金の玉座も、その上に腰掛けているはずの影も、薄絹と暗がりのなかに溶けて輪郭を持たない。見えるのはたいまつの火に揺れる帳の裾と、その隙間から這い出してくる没薬の甘い香りだけだった。
「——ローマから、若い将校が来る」
声は低く、ゆったりとして、それでいて逆らうことを許さない響きを帯びている。女王クレオパトラ。プトレマイオス朝最後のファラオにして、カエサルとアントニウスを寝台の上で手玉に取った絶世の蠱惑。その声を生身で聞ける者は、この宮殿においても数えるほどしかいない。
「オクタウィアヌスの麾下じゃ。表向きは親善の使者だが、中身は密偵——我がエジプトの兵力を測りに来る犬よ」
ひざまずくエボニーの耳に、帳の奥から衣擦れの音が届いた。女王が身じろぎしたのか、あるいは誰かの肌を撫でたのか。判別はつかない。
「骨抜きにせよ、エボニー。お前の煙と、お前の身体、そして——私が仕込んだ秘術を、思う存分に使うがよい」
エボニーは頭を垂れたまま、声に一切の感情を乗せずに答えた。
「承知いたしました、女王様」
顔を上げる。紫の瞳には何も映っていない——映す必要がない。自分は道具だ。女王の命を遂行する刃であり、毒であり、蜜。それ以上でも以下でもない。
「必ずや、あの将校の精を根こそぎ搾り尽くしてご覧に入れます」
帳の奥から、くつくつと低い笑い声が漏れた。満足とも嘲りともつかぬ、女王だけに許された響き。
「——期待しておるぞよ」
エボニーは一礼して立ち上がり、玉座の間を辞した。
廊下に出ると、夜風が紺碧のマントを攫った。たいまつの炎が壁面のヒエログリフを照らし、鷹と蛇と蓮の意匠が橙色の光のなかでちらちらと揺れている。石の床は昼間の熱をまだ残していて、サンダルの革紐越しに足裏がぬるい。
風がマントの裾を翻すたび、その下のブラトップと露出した腹が一瞬だけ夜気に晒された。象牙色の布を留める鷹の翼のブローチが、たいまつの火を反射してちかりと瞬く。腰に巻いたシェンティの下には、薄い黒の下着と、細い紐だけで留めた白い腰布——それ以外に肌を隠すものはない。
これが自分の装束だった。戦場で纏う鎧ではない。寝台の上で纏う、蠱惑のための衣。
饗応の間まで、あと数十歩。エボニーは歩きながら、頭の中で今夜の手順を淡々と組み立てていた。煙で意識を溶かし、身体で搾り、精をソウルジェムに注ぐ。何度も繰り返してきた任務。何の変哲もない、いつもの夜——
——のはずだった。
---
饗応の間は、宮殿の離れに設えられた密室だった。
壁という壁に薄絹の帳が垂れている。幾重にも重なった半透明の布が、たいまつの灯りを柔らかく拡散させ、部屋全体をぼんやりとした琥珀色の光で満たしていた。床にはペルシャ絨毯が敷き詰められ、足を踏み入れると分厚い毛足が足首までを包み込む。奥の寝台には上質なリネンが幾重にも重ねられ、その傍らに果実酒の壺と銀の杯が並んでいた。壁際には香油壺が幾つも置かれ、すでに火を入れた香炉から没薬の煙が細く立ち昇っている。
エボニーは部屋の中央に立ち、一度だけ深く息を吸った。
没薬の甘さ。自分の煙の、かすかな苦み。たいまつの油脂が焦げる匂い。そのすべてを肺に染み込ませてから、ゆっくりと吐き出す。
——道具の顔を、整える。
唇の端にわずかな弧を描く。紫の瞳に蕩けるような光を宿す。首をほんの少しだけ傾け、マントの裾から覗く素肌の太腿に重心を移す。一連の所作は鏡の前で何百回と繰り返した、完璧な蠱惑の型。
扉の外から、兵士の足音と、もう一人分の靴音が近づいてくる。
エボニーは微笑んだ。胸の奥は、空洞のままで。
扉が開いた。
入ってきたのは、若い男だった。
鎧は脱いでいる。簡素なトゥニカに身を包んだ姿は、それでも軍人の骨格を隠しきれていなかった。引き締まった肩、まっすぐな背筋、歩くたびに腿の筋肉がトゥニカの下で動く輪郭——戦場で鍛えた身体だとわかる。だがその肉体に反して、顔はまだ青年と呼ぶにふさわしい若さを残していた。整った顎の線に剃り残しはなく、額にかかる栗色の前髪の下から覗く瞳は、警戒と緊張で硬く光っている。
部屋に一歩踏み入れた瞬間、青年の視線が壁の帳から天井へ、天井から寝台へ、寝台から香炉へと走った。異国の密室を値踏みしている。軍人の習慣だろう——空間を把握し、出口を確認し、脅威を測る。だがその視線が部屋の中央に立つエボニーを捉えた瞬間、ぴたりと止まった。
目が合った。
青年の喉仏が、こくりと上下した。
——この反応。何度見たことか。
エボニーは内心で小さく息をつきながら、優雅に腰を折った。マントの裾が絨毯の上を掃き、一礼の動作に合わせて胸元のブローチがちかりと光る。
「ようこそ、ローマの将校様」
声は甘く、低く、耳の奥に滑り込むように。
「今宵はこの私めが、精一杯のおもてなしをいたします。どうぞ、お寛ぎくださいませ♡」
青年は一瞬、返答に詰まった。唇が開きかけて、閉じる。それからようやく、絞り出すように——
「……あ、ああ。かたじけない」
声が硬い。目線の置き場に困っている。エボニーの露出した腹を見て、慌てて視線を上に逸らし、すると今度はブラトップの谷間が目に入って、さらに逸らす。結局たいまつの炎をじっと見つめることで落ち着きを保とうとしていた。
——女に免疫がない。
エボニーの読みは正しかった。ローマの貴族出身の若きエリート。家名に頼らず戦功で認められた将校。戦場では有能だろう。だが——こちらの戦場では赤子同然。
「長旅でお疲れでしょう。まずは喉を潤してくださいませ」
壁際の果実酒壺に歩み寄り、銀の杯に琥珀色の液体を注ぐ。果実の発酵した甘い香りが没薬の煙と混ざり合い、濃密な空気がさらに一層重くなった。
エボニーは杯を両手で捧げ持ち、青年の前に差し出した。指先が杯の縁にかかり、爪の先が銀の表面をかすかに叩く。
青年は一瞬ためらった。毒か——という疑念が瞳の奥をよぎったのが見えた。だがエボニーの微笑みと、差し出された細い指と、部屋を満たす甘い香りが、その警戒を押し流していく。
杯を受け取り、一口含んだ。
甘い。ぞっとするほど甘い。ナツメヤシと蜂蜜を漬け込んだ果実酒が喉を焼き、胃の底に熱い塊となって落ちていく。二口目を飲み下したとき、青年は自分の肩から力が抜けていくのを感じた。酒精のせいだけではない。この部屋の空気そのものが、身体の芯を緩ませにかかっている。
エボニーは青年の顔を見上げていた。杯を傾ける喉の動き、嚥下のたびに上下する喉仏、口元に残った果実酒の雫——それらを、品定めでもするかのように、冷静な目で観察している。
——そして。
将校の唇の端から、琥珀色の雫がひとつ、顎に向かって伝い落ちようとしていた。
エボニーの指が伸びた。
人差し指の腹で、その雫をそっと拭い取る。青年の顎に触れた指先は乾いていて、爪の先だけがひんやりと冷たかった。
青年の身体が強張った。
エボニーはその指を——果実酒の雫を載せた指を——自分の唇のあいだに含んだ。ぺろり、と舌が指の腹を舐め取る。紫の瞳が青年を見上げたまま、ゆっくりと。
「……美味しゅうございますわ♡ 将校様のお口に合いましたようで」
指を唇から引き抜く。唾液の糸がきらりと伸びて、切れた。
青年の顔が、耳の先まで紅く染まっていた。
杯を持つ手が震えている。たいまつの炎をじっと見つめていたはずの目が、もうエボニーの唇から離せなくなっている。さっき自分の顎に触れた指——その指を舐めた舌——その舌が動いた唇——。
視線が絡まった。逸らせない。逸らす気力すら、この甘い空気が奪い始めている。
エボニーは一歩だけ後ろに下がり、将校との距離を取り戻した。近づきすぎず、離れすぎず。獲物が自ら網に飛び込んでくるまでの、最適な間合い。
「将校様——」
首をわずかに傾げ、唇の端だけで微笑む。
「これより、おもてなしを始めさせていただきます。どうぞ——そちらの寝台にお掛けくださいませ」
壁際の香炉から、没薬の煙がひと筋、青年の足元へと這い寄っていた。まるで意志を持った蛇のように、絨毯の毛足を掻き分けながら。
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青年は寝台の縁に腰を下ろした。
リネンのシーツが冷たい。その冷たさが、果実酒で火照った身体にはむしろ心地よかった。だが落ち着こうとすればするほど、目の前の女が視界を占める。露出した腹の白さ、腰を巻くシェンティの裾から覗く太腿の線、鎖骨から胸元にかけてたいまつの光が描く陰影——どこを見ても、目の逃げ場がない。
エボニーは壁際に歩み寄っていた。
香油壺を一つ手に取り、蓋を外す。粘度のある液体を両手に掬い上げた。没薬の香りが——さっきまでの煙とは比べものにならないほど濃密に——部屋の空気に溶け出していく。
「将校様の前で失礼いたします」
声は蠱惑的なまま、まるで当然の身支度であるかのように。
「こうしませんと、肌が乾いて舞が映えませんので」
油を含んだ掌が、自らの首筋に触れた。鎖骨に沿って左右にゆっくりと撫で広げ、鎖骨のくぼみに溜まった油がとろりと胸元へ流れ落ちる。ブラトップの布の縁を濡らしながら、掌はさらに下へ——腹部の白い肌を撫で下ろしていく。へその周りを指の腹で円を描くように塗り込め、そのまま腰骨の張り出しを越え、シェンティの紐の際まで。
青年は息を止めていた。
エボニーの手が太腿の内側に滑り込む。膝の裏から腿の付け根に向かって、ゆっくりと。油が肌の上で膜を張り、たいまつの火を受けて金色に煌めいた。動くたびに光の筋が走り、消え、別の場所に生まれる。
——自分は今、何を見せられている。
青年の喉が渇いていた。さっき果実酒を飲んだばかりだというのに、唾を呑み込んでも呑み込んでも、口の中が乾いていく。
エボニーが振り返った。油で艶めく肌。紫の瞳が、たいまつの光のなかで琥珀色に溶けている。
「——では、舞わせていただきます」
香炉の煙が、濃くなった。
いつの間にか部屋の下半分が白い靄に沈んでいて、絨毯の模様が見えなくなっている。煙は床を這うだけではなかった。ゆるやかに立ち昇り、空気のなかをたゆたい、青年の膝を、腕を、鼻先をかすめていく。吸い込むたびに肺の奥が甘く痺れて、呼吸のひとつひとつが重くなっていく。
エボニーが舞い始めた。
両手を高く掲げ、掌を天井へ向けて開く。古代エジプトの壁画から抜け出たような、祈りにも似た所作。だがその腰が——緩やかに、粘りつくような弧を描いて揺れ始めた瞬間、祈りは祈りでなくなった。
腰が右に振れる。シェンティの裾が翻り、その下から黒い下着の縁がちらりと覗いた。左に振れる。たいまつの光が腰骨の張り出しに当たり、油を塗られた肌の上を金色の反射が滑り落ちた。
両手がゆっくりと下りてくる。頭上から肩へ、肩から脇腹を撫で下ろすように。自分の身体をなぞるその掌の動きが、目に見えない誰かの手を模しているようだった。指先が腹を這い、腰骨を越え、シェンティの紐にかかる——かと思えば、すっと離れて再び頭上へ。
焦らしている。意図的に。計算し尽くされた所作で。
くるり、と背を向けた。
マントが翻り、たいまつの灯りを遮って一瞬だけ影が走る。その影が晴れると——エボニーの背中が眼前にあった。肩甲骨の間を紺碧のマントが覆い、X字の拘束帯が胸と背中を交差して締めている。だがマントの下、腰から下は——シェンティの裾から覗く黒い下着が、腰のくびれと臀部の丸みをぴたりと包んでいた。香油で光る肌。たいまつの火に照らされて、ぬめるように煌めいている。
腰を落とした。
膝を開き、尻を突き出す。ゆっくりと、両手がシェンティの裾をつかみ、まくり上げていく。太腿が露わになり、臀部の下端が見え——薄い黒の下着が姿を現した。布地の下に、白い腰布の端がわずかに覗いている。
青年の鼓動が跳ね上がった。トゥニカの下で、自分の身体が反応しているのがわかる。制御できない。煙のせいだ。この甘い煙が、身体の芯を溶かしている。そう思いたかった。
エボニーの指が、下着の脇の紐にかかった。
振り返る。肩越しに青年を見つめる紫の瞳。唇の端が、微かに吊り上がった。
「将校様——少しだけ、身軽にさせていただきますね♡」
紐が解けた。するりと、黒い布が腿を滑り落ちて絨毯の上に落ちる。
今や白い腰布。ふんどし状の薄い一枚布が、細い紐だけで腰に留められている。たいまつの灯りが透ける布の向こうに、恥丘のなだらかな膨らみがうっすらと影を落としていた。
隠れている。まだ——ぎりぎりで、隠れている。
エボニーは再び舞い始めた。今度はさっきよりも大きく、腰をくねらせる。腰布の裾が太腿を掠めるたびに、布の端がふわりと翻る。その一瞬——白い布の隙間から、つるりと毛のない恥丘の肌がちらりと覗いて、消えた。
また。腰を右に振る。布がずれる。太腿の付け根に沿った肌の線が一瞬だけ——また、消える。
踊りが続くほどに、布の隙間から覗く肌の面積がわずかずつ増えていく。腰を深く落とすたびに、布の中央が恥丘に食い込み——そのかたちが、布越しにくっきりと浮かび上がった。
おまんこの、スジ。
薄い布の上に、縦に走る一本の線。布が肌に密着し、左右のふくらみに挟まれた溝を、白い腰布がそのまま写し取っている。
青年の目が——そこに、釘付けになっていた。
エボニーは気づいていた。正確には——気づかせるために、踊っていた。
不意に動きが止まった。
腰をくねらせる姿勢のまま、片手が腰布の端にかかる。指先が布の裾をつまみ——すい、と持ち上げた。ほんの一瞬。
腰布の下から——つるりとした恥丘が露わになった。毛の一本もない滑らかな丘が、香油を塗り込められた肌と同じ艶で光っている。おまんこのスジが、今度は布越しではなく——直に。たいまつの灯りに、一瞬だけ晒された。
すぐに布が落ちた。何事もなかったかのように、白い腰布がおまんこを覆い隠す。
エボニーが振り返った。
青年の顔を見て——唇の端が、にぃ、と弧を描いた。
嗤っている。完全に。将校の視線がどこに釘付けだったか、あの一瞬で目がどう見開かれたか、すべてを見透かした上で——楽しんでいる。
「見えましたか、将校様?♡」
声は蠱惑的で、かすかに弾んでいた。
「もう少し——よくご覧になりたい?」
答えを待たなかった。もう見えている。青年の瞳に燃える、否定しようのない欲望が。
くるり、と背を向けた。
腰を落とし、膝を開き、尻を突き出す。青年の目の前に——腰布で覆われた臀部が迫った。ふんどし状の布は臀裂に沿って食い込み、布の両端から臀部の丸みがはみ出している。そしてその布の脇から——
見えていた。
太腿の隙間から覗く白い布の脇に、おまんこのスジが丸見えだった。ぷくりと膨らんだ外唇の片側が布からはみ出し、つるりとした恥丘の肌がたいまつの灯りを受けてぬらりと光っている。
エボニーの指が、腰布の紐にかかった。
「将校様——よろしいですか♡」
許可を求めているのではなかった。もう答えを知っている顔だった。
紐が、するりと解ける。
白い布がはらりと床に落ちた。重力に従って、音もなく。
たいまつの灯りが、すべてを露わにした。
滑らかな丘。毛の一本もない恥丘が、没薬の香油を塗り込められた肌と同じ艶で、柔らかく光っていた。太腿の内側から臀裂にかけて、油と——それだけではない、別の潤いが、うっすらとした膜を張っている。
青年は呼吸を忘れた。
エボニーは背を向けたまま、ゆっくりと前屈した。膝を伸ばし、腰を折り、両手が床に近づいていく。その姿勢で——。
両手が、自らの臀裂に触れた。
人差し指と中指で、左右に。じわりと、割り開いていく。
ぷくりと閉じていたひだが、たいまつの光を受けて開いた。外側の唇が左右に分かれ、その奥から——桃色の、濡れた粘膜がのぞく。ひだの内側は外の肌よりもずっと鮮やかな赤みを帯びていて、蜜の膜がきらきらと光を弾いていた。じわりと染み出した透明な液が、ひだの合わせ目に溜まり、重力に負けて一筋、太腿の内側を伝い落ちていく。
「将校様」
顔だけが振り返る。逆さになった視界のなかで、紫の瞳がたいまつの光に揺れている。唇には蠱惑的な笑みが刻まれたまま。
「こちらをご覧になって♡ これが——今宵あなたを歓待する、私のすべてでございます」
指がさらに広げた。ひだの奥、小さな入り口が、ぱくぱくと微かに収縮しているのが見える。呼吸に合わせて——あるいは、呼吸とは別の何かに合わせて。内壁の粘膜がてらてらと光り、そのさらに奥は暗くて見えない。けれどそこが、熱いのだということだけは——青年の本能が、理屈を超えて理解していた。
トゥニカの下で、青年のものが痛いほどに硬くなっていた。布越しにその輪郭が浮き出ている。身体は正直だった。ローマの将校としての矜持も、異国への警戒も、貴族の血に刷り込まれた理性も——目の前の光景の前では、何の役にも立たない。
エボニーは身体を起こし、ゆっくりと振り返った。
正面から見るその姿は——腰布を失い、下半身をすべて露出した女が、油で光る肌にたいまつの金色を纏い、頭上にホルス冠を戴いて微笑んでいる——神殿の壁画が、そのまま肉体を持って降りてきたようだった。
煙が濃くなっている。部屋の空気そのものが、没薬と汗と、かすかに混じる蜜の匂いで飽和しつつあった。青年の呼吸は深く、遅くなっていた。煙を吸い込むたびに四肢の末端が熱くなり、頭の芯がとろとろと溶けていく。
エボニーが歩み寄ってくる。
一歩。また一歩。裸足のサンダルが絨毯を踏む、かすかな音。たいまつの炎が揺れ、その影が薄絹の帳を駆け抜けた。
「将校様——おもてなしの続きを、始めてもよろしゅうございますか♡」
寝台に腰掛けた青年の膝の前で、エボニーがゆっくりと膝をついた。
紫の瞳が、下から青年を見上げている。油で艶めく肌。浅い呼吸に合わせて上下するブラトップの谷間。そしてその視線の先——トゥニカの布を押し上げて隠しきれなくなっている、青年の硬直を。
エボニーの瞳に、一瞬だけ、道具ではない何かが過ぎった——ように見えたかもしれない。だがそれは煙の揺らぎだったのか、たいまつの光の悪戯だったのか。青年に判別できるはずもなかった。
細い指が、トゥニカの裾に伸びる。
---
布がまくり上げられた。
エボニーの指は手慣れていた。トゥニカの裾をたぐり、腰布の紐を解き、下帯ごと太腿の途中まで引き下ろす。一連の所作に躊躇いはなく、まるで神殿の供物の包みを解くような——淡々とした手つき。
露わになったものを見て、エボニーの指が止まった。
一瞬だけ。
太く、長く、怒張したそれが、たいまつの灯りの下で脈を打っていた。亀頭は赤黒く膨れ上がり、先端から透明な液が一滴、ゆっくりと尿道口から滲み出している。竿には血管の隆起が浮き出て、根元に向かうほど太さを増し——その全体が、若い男の体温をそのまま凝縮したかのように熱を放っていた。
——これほど、とは。
驚きを呑み込む。表に出さない。エボニーの唇は蠱惑的な弧を描いたまま、紫の瞳だけが一瞬だけ見開かれて、すぐに元の細さに戻った。
「ふふ……ずいぶんと逞しくていらっしゃいますね♡」
指の腹が、竿の側面に触れた。熱い。掌で感じる脈動が、どくん、どくんと規則正しい。
「ローマの男は、これほどまでに立派なのですね。お慰めする甲斐があるというものです♡」
エボニーは膝をついたまま、顔を近づけた。
吐息がチンポにかかる。それだけで青年の太腿がびくりと跳ねた。エボニーはその反応を紫の瞳で観察しながら——唇を、亀頭に寄せた。
ちゅ、と軽い口づけ。先端に触れただけの、羽のように柔い接触。だがその一点から、雷のような衝撃が青年の背骨を駆け上がった。腰がびくりと浮きかけて、必死に堪える。
「ん……♡」
舌先が伸びた。亀頭の表面を、ちろりとなぞる。先走りで濡れた尿道口のふちを舌の先がかすめ、塩気と青臭さが口の中に広がった。舌先はそのまま亀頭の丸みに沿って滑り、カリ首の溝をゆっくりと一周する。
青年の腹が引き攣った。拳がシーツを掴み、歯の隙間から引き攣った息が漏れている。
エボニーは舌を引き、今度は唇で亀頭を包んだ。唇の輪がカリ首にかかり——きゅ、と吸う。
じゅるっ。
短い吸引音。口のなかで亀頭が脈打ち、先走りがじわりと溢れるのが舌で感じ取れた。
青年の腰が浮きかけた。太腿が震え、腹の奥がぎゅっと絞り上がっていく——
「っ、う——出、る——」
声が裏返っていた。亀頭を含まれただけで。それだけで——この青年は、もう限界だった。
「まだ、ですよ♡」
エボニーが口を離した。唇と亀頭のあいだに唾液の糸が一本伸びて、きらりと切れる。紫の瞳が下から青年を見上げている。
——女を知らない身体。
蠱惑的な笑みの奥で、エボニーは冷静に査定していた。これほどの巨根を持ちながら、口に含まれただけで果てかける。女の口も膣も知らない、生娘同然の身体。搾り甲斐がある——と同時に、あまりに早い。もう少し、慣らしてからでないと本番がもたない。
「もう少しだけ——味わわせてくださいませ♡」
細い指が竿の根元をきゅ、と握り、射精の衝動を堰き止めた。青年の腰がびくんと跳ねて、くぐもった呻きが漏れる。
——これも、任務。
エボニーは身体を翻した。
青年の前で、くるりと背を向ける。四つん這いの姿勢を取りながら——寝台の縁に座った青年の脚のあいだに、上体を割り込ませていく。腰を高く掲げ、膝を開き、自らの顔を青年の股間へと沈めていく。
「こちらの方が——将校様にも、お楽しみいただけますでしょう♡」
前屈フェラの体勢。
青年の目の前に、エボニーの尻が突き出された。高く掲げられた腰、左右に割れた臀裂、その奥に——さっきのダンスで見せつけられたおまんこが、今度は手の届く距離で丸見えになっていた。ひだは微かに開いていて、桃色の粘膜が蜜で濡れている。香油と愛液が混ざり合って、太腿の付け根を光らせていた。
目を逸らせない。逸らすことを、煙に侵された身体が許さない。
——その光景の下方で、エボニーの舌が動いた。
今度は——容赦がなかった。
カリ首の溝に舌を這わせ、裏側の筋を根元に向かってゆっくりと舐め上げる。唾液の膜が竿の表面に広がり、たいまつの光を反射してぬるりと光った。舌の先端が血管の隆起をひとつずつ辿り、竿の全体をたっぷりと唾液で濡らしていく。
「ん……ちゅ……れろ……♡」
水音が部屋に落ちた。没薬の煙と、たいまつの爆ぜる音と、舌がチンポの表面を滑る湿った音だけが、密室を満たしている。
「将校様、もうずいぶんとお感じのようで」
エボニーが顔を上げ、肩越しに振り返った。唇が唾液で光っている。その唇で微笑みながら——視線は青年の顔ではなく、自分が高く掲げた腰の向こうにある、青年の視線の先を見ていた。
「こちらも……こんなに溢れております♡」
腰をくねらせる。おまんこのひだが微かに開閉し、蜜の糸がきらりと垂れた。青年に見せつけるように——いや、これは見せつけるという行為ですらない。道具が、もっとも効率的な方法で獲物の理性を削っているだけ。
エボニーは向き直り、口を大きく開いた。
一気に、咥え込む。
ずぶり、と亀頭が唇の奥に呑まれた。口腔の熱さと湿り気がチンポを包み、舌が亀頭の裏側にぴったりと貼りつく。そのまま——頭を沈めていく。竿が舌の上を滑り、口蓋をかすめ、喉の入り口に亀頭の先端がこつんと突き当たった。
止まらなかった。
喉が開く。嚥下の逆をやるように、喉の筋肉が弛緩して、チンポを奥へと受け入れていく。ごりゅ、と喉壁が亀頭を締めつけた瞬間、青年の背筋が弓なりに——いや、電撃でも受けたように跳ねた。
「ぐ——っ!」
声にならない声が漏れた。喉の奥。チンポの先端が、喉の粘膜に密着している。頬がすぼまり、口腔全体がチンポに吸いつくような陰圧が生まれた。バキューム。女王直伝の、吸引。
じゅるるるっ——
吸い上げる音が響いた。エボニーの頬がさらにすぼまり、口の中の圧力が上がる。舌がチンポの裏筋を押しつけながら、亀頭を喉の奥で転がすように嚥下の動きを繰り返す。咥え込んだまま、頭をゆっくりと前後に動かし始めた。
ちゅぶっ。ずちゅっ。じゅぷっ。
引き抜くたびに唾液の泡が唇の端から零れ、押し込むたびに喉の奥でごりゅっと鳴る。一往復ごとに水音の質が変わっていく。唾液と先走りが混ざり合い、泡立ち、粘度を増して——より卑猥な、より生々しい音へと。
エボニーの腰が揺れていた。
フェラに集中しながら、尻を左右にゆっくりとくねらせている。その動きに合わせて、おまんこから透明な蜜がとろりと垂れ、太腿の内側を伝い落ちていく。量が、多い。ダンスのときとは明らかに違う粘度の、本気の愛液。
——煙のせいだ。
エボニーは自分に言い聞かせていた。この饗応の間に満ちた催淫の煙を、自分もずっと吸い続けている。耐性はある。あるはず——だが、口で奉仕するたびに、将校のチンポが喉の奥で脈打つたびに——おまんこの奥が、きゅっ、と疼く。
煙の、副作用。それ以上の意味はない。
——だが。
太腿を伝い落ちる本気汁の量が、その言い訳を裏切っていた。
「じゅぶ……んぅ……ちゅぱ……じゅるるる……っ♡」
水音が加速する。エボニーの頭の動きが速くなり、喉の奥でチンポを締めつけるバキュームの圧が一段階上がった。ごりゅっ、ごりゅっ、と喉壁が亀頭を扱く音が、水音の合間に混じる。
青年はもう声すら出せなかった。寝台のシーツを両手で掴み、歯を食いしばり、目を固く閉じている。腹の奥から——精液が持ち上がってくる気配。下腹が引き攣り、睾丸がきゅっと縮み上がる。
——耐えなければ。こんなところで。こんな、異国の女の口のなかで——
その矜持は、三秒ともたなかった。
「う、ぐ……っ、出——っ」
声が途切れた。腰が跳ねた。制御を離れた身体が、寝台の上で痙攣する。
びゅるっ——
精液がエボニーの喉の奥に迸った。
一発目の衝撃が喉壁を叩き、二発目が舌の上を滑り、三発目が——エボニーは口を離さなかった。射精の脈動に合わせて喉を鳴らし、一滴もこぼさず嚥下していく。ごくり、ごくり、と喉仏が上下するたび、チンポが口のなかでどくんと脈打ち、残った精液を押し出す。
射精の瞬間——エボニーの下腹に、ずん、と熱が落ちた。
チンポの脈動が喉の粘膜越しに伝わり、精液の匂いが鼻腔に充満する。煙で昂ぶった身体が、その刺激を快感として拾い上げてしまう。
太腿がぴくりと震えた。おまんこの奥が、ぎゅうっと絞られるように収縮する。一瞬だけ——エボニーの瞳が揺れた。紫の虹彩のなかで、何かが溶けかけて、すぐに凍りつく。
表情は、崩さない。
ちゅぽん、と音を立ててチンポを口から離した。唇と亀頭のあいだに、唾液と精液が混ざった白い糸がきらりと伸びて、ぷつんと切れる。
エボニーは身体を起こし、青年の方を振り返った。口元を手の甲で拭い、唇の端から垂れた一筋の白濁を指先ですくう。その指を、ぺろりと舐め取った。
「……美味しゅうございます♡」
声は蠱惑的なまま。吐息ひとつ乱れていないように聞こえる——だが、よく見れば鎖骨のあたりがわずかに上下していた。
「将校様の精は、とても濃く、芳醇で……」
胸元に手を入れ、ブラトップの布の奥からソウルジェムを取り出した。紫色の宝石が、たいまつの灯りを受けて鈍く光っている。どこか曇った色——濁りが、ジェムの内部に沈んでいた。
エボニーは口腔に残った精液を、ジェムの上にとろりと垂らした。白濁が紫色の表面を伝い落ち、染み込むように吸い込まれていく。
ソウルジェムが、輝きを取り戻した。濁りが晴れ、透き通った紫が内側から光を放つ。精液を糧にして——浄化されていく。
エボニーはジェムを胸元にしまい、青年を見下ろした。
寝台の上で放心している将校。荒い息。弛緩した四肢。精液の残滓がトゥニカの裾を汚している。だがその股間では——射精したばかりのチンポが、まだ完全には萎えていなかった。煙が若い肉体を内側から焚きつけ、回復を急かしている。
「さて——」
エボニーが微笑んだ。道具の笑み。完璧に制御された、蠱惑の型。
「まだ終わりではございません、これより——本番の搾精に移ります」
香炉の煙が、また一段、濃くなった。
---
エボニーの手が、青年の胸を押した。
それだけで青年は寝台の上に仰向けに倒れた。抵抗する力が残っていない。射精の余韻がまだ四肢に痺れを残し、頭の芯は煙に蕩けて、自分の身体がどこからどこまでなのかすら曖昧になりかけている。
視界を、影が覆った。
エボニーが寝台に膝を乗せ、青年の腰を跨いでいく。紺碧のマントが左右に垂れて帳のように揺れ、その隙間から——油で光る腹、ブラトップに包まれた小ぶりな胸、ホルス冠を戴いた顔が、たいまつの逆光のなかに浮かぶ。
下を見た。
エボニーの手が、再び硬さを取り戻しつつあるチンポを掴んでいた。細い指が竿を支え、切っ先を自らのおまんこの入り口へとあてがう。
にちっ……。
亀頭の先端が、濡れたひだに触れた。蜜を纏った粘膜同士が押しつけ合い、粘着質な音を立てる。まだ入っていない。ひだの合わせ目に亀頭の先端が食い込み、左右のひだが押し広げられかけて——そこで止まっている。
「はぁ……っ」
エボニーの吐息が落ちた。
——これは、任務。
腰を、沈めた。
ずぷ、と亀頭がひだの奥に呑まれた。
狭い。きつい。膣口が亀頭のカリ首に引っかかるように締まり、そこを乗り越えた瞬間に——内側の熱さが、一気にチンポを包み込んだ。ひだだった膣壁が亀頭にまとわりつき、吸い寄せるように奥へと導いていく。
さらに沈む。竿が膣の中を進んでいく。にゅるにゅると粘液の音を立てながら、ひだの一枚一枚がチンポの表面を撫で、カリ首の段差が膣壁を押し広げながら通過していく。
奥まで、届いた。
こつん、と何かに突き当たる感触。子宮口。亀頭の先端が、その小さな唇に口づけるように押しつけられていた。
青年の口から、くぐもった呻きが漏れた。視界が白く明滅する。フェラとは質が違う。喉の締めつけが線の快感だったとするなら——これは面の快感だった。膣壁の全面がチンポを包み、全面が同時に圧をかけてくる。
「はぁ……っ、将校様の、これ……」
エボニーの声が、わずかに掠れていた。
「やはり太く……とても深くまで届いております……♡」
煙が——効いている。
この饗応の間に充満した催淫の煙を、ずっと吸い続けている。耐性があるとはいえ——膣壁にチンポが密着した瞬間、身体の奥底で何かが疼いた。煙で過敏になった神経が、挿入の衝撃をそのまま快感に変換してしまう。
エボニーの息が、一瞬止まった。
——これは、任務……。
唇を引き結んで、その疼きを押し殺す。紫の瞳に揺らぎはない。道具の顔を、手放さない。
「さあ——女王直伝の搾精の秘術、ご堪能くださいませ……♡」
腰が動き始めた。
上下ではなかった。最初の動きは、前後のうねり。腰を前に倒し、起こし、倒し——その波のなかで、膣壁が意志を持ったように蠕動した。
ぬちゅ……ぐちゅ……にゅるり。
締め上げて——解く。解いて——また締める。その波が、根元から亀頭に向かって這い上がっていく。まるで膣の内側に無数の指があって、一本ずつ順番にチンポを握っては離しているかのような。亀頭をひだが包み、カリ首をきゅうっと絞り、竿の中腹を蠕動が揉みしだき、根元では膣口がぱくぱくと吸いつく。チンポの全体を——万遍なく、しかし容赦なく、別々のリズムで責め立てている。
青年の背中が跳ねた。両手がシーツを掴み、拳が白くなるほど握り込んでいる。歯の隙間から引き攣った息が漏れ、顎が震えている。
——何だ、これは。
今まで感じたことのない種類の快感だった。フェラの吸引は一方向の圧力だった。これは全方位。しかも一定ではない。波のように強まり、弱まり、予測できないリズムで——押し寄せてくる。
エボニーの腰が、上下に動き始めた。蠕動に加えて、ピストンが加わる。持ち上げた腰が頂点に達するとき膣口だけがカリ首を咥え込み、落とすとき膣壁の全面がチンポを呑み込む。一往復ごとに、ぐちゅっ、ぬちゅっ、と白く泡立った愛液が結合部から溢れ出した。
激しい動きに、ブラトップが揺れる。象牙色の布を留めている鷹の翼のブローチ——その金具に、動くたびに負荷がかかっていた。止め具が軋み、布の繊維が引き攣れる。
ぱちん。
乾いた音がした。ブローチの留め具が弾け、金色の鷹の翼が寝台のリネンの上に転がっていく。象牙色の布が左右に割れ——エボニーの胸が零れ出た。
小ぶりだが形の良い乳房。香油を塗られた肌がたいまつの灯りを受けて滑らかに光り、頂の乳首が硬く尖っている。腰を振るたびに胸がふるふると揺れ、その揺れに合わせて乳首の先端が光の粒を散らした。
エボニーは一瞬だけ胸元に手をやりかけた。反射的な——ほんの一瞬の仕草。だがすぐに手を下ろし、何事もなかったかのように腰を動かし続ける。
「……構いません。このほうが、動きやすいので♡」
声に乱れはない。あくまで任務の顔。けれど——露わになった胸が、腰の動きに合わせて将校の目の前で揺れ続けているという事実は、どんな言葉よりも雄弁だった。
脳裏に、声が響いた。
——よいかエボニー。
女王の声。あの帳の奥から聞いた、あの声。
——締めて、解いて、また締める——その波が男を狂わせるのじゃ。
記憶のなかの光景が蘇る。玉座の間の奥、女王の私室。少年奴隷の上に跨がったクレオパトラが、ゆっくりと腰を揺らしていた。少年の身体は半分ほどもない小さなもので、女王の豊かな腰の下に埋もれるようにして喘いでいた。
——精は搾るものじゃ。与えられるのを待つのではなく——こちらから、根こそぎ奪い取るのよ。
少年が射精した。びくびくと痙攣する小さな身体を見下ろしながら、クレオパトラはゆっくりとチンポを引き抜いた。膣口から白い精液がとろりと垂れ、女王はそれを指ですくい、自らの頬に塗りつけた。
——これが、私の美容の秘訣じゃ。若い男の精は格別でな……♡
エボニーの膣が、きゅう、と締まった。
記憶と現実が重なり、蠕動の波が一瞬だけ乱れる。これも任務。これも——私の役目。女王から受け継いだ技を、女王の命令で行使しているだけ。それ以上の意味は——
「どうですか……っ♡」
声を、将校に向けて紡ぐ。
「締め付けて……今度は緩めて……また、きゅっ、と……っ♡ 将校様のおちんぽ、中でどくどく震えておりますよ……?」
膣壁が波打つ。締めて——解いて——奥では子宮口が亀頭の先端に吸いつくように密着し、ちゅ、ちゅ、と小さな音を立てている。チンポが膣の中で脈打つたび、その振動がエボニーの身体にも反響して——おまんこの奥がじんわりと熱くなっていく。
煙で昂ぶった神経が、チンポの脈動を敏感に拾ってしまう。膣壁に伝わる熱が快感に変わり、下腹を甘く這い上がっていく。
青年は耐えていた。歯を食いしばり、首筋に血管を浮かべ、必死に。だが膣壁の蠕動は容赦がなかった。逃げ場がない。チンポのどこを動かしても、膣がそれを追いかけて絡みつき、締め上げ、搾り取ろうとしてくる。
「遠慮なさらず……いっぱい、出してくださっていいのです♡」
エボニーが身を屈めた。露わになった胸が青年の胸に触れそうになる距離。紫の瞳が間近で青年を覗き込み、唇が耳元に寄せられる。
「それが——女王様のご命令……ですから……っ♡」
その囁きが、青年の最後の理性を砕いた。
腰が跳ねた。膣の奥で——精液が噴き出す。
びゅくっ、びゅるっ——
エボニーの蠕動が射精を出迎えた。膣壁が波打ちながら精液を搾り取り、子宮口が亀頭に吸いついて一滴も逃さない。噴き出す白濁を、膣の内側が残らず呑み込んでいく。
子宮口を精液が叩く衝撃——煙で過敏になった身体が、それを快感として拾い上げてしまった。
腰がびくんと跳ねた。
一瞬だけ。紫の瞳が蕩けた。唇が開き、声にならない吐息が漏れかけて——エボニーはすぐに目を伏せ、唇を噛んだ。荒くなりかけた呼吸を、三度の吸気で整え直す。
——副作用。煙の、副作用。
エボニーはくるりと身体を翻した。
チンポを膣に咥えたまま——背面騎乗位へ。将校に背を向ける形で、改めてチンポを奥まで呑み直す。にゅるり、と白濁と愛液が混ざった粘液がチンポを伝い、シーツの上にぽたぽたと滴り落ちた。
この体位にした理由をエボニーは意識していない。将校の顔が見えない位置に——自分の表情が読まれない位置に、逃げたのだということを。
青年の視界が変わった。
さっきまでの正面騎乗位では、エボニーの顔と胸が見えていた。今は——背中と、腰と、そしてその下。
結合部が、丸見えだった。
エボニーのおまんこが、チンポを咥え込んでいる。桃色のひだが竿に巻きついて、上下するたびにひだの裏側が裏返り、ぬるぬると光る粘膜がチンポを滑っていく。引き抜くとき——おまんこのひだがチンポに引きずられて外にめくれ、淫らな花が開くように肉が捲れ上がる。押し込むとき——めくれた肉が内側にたくし込まれ、ぐちゅっと白い泡を噛みながら根元まで呑み込まれていく。
精液がはみ出していた。さっき中に出された白濁が、抜き差しのたびに結合部から押し出されて泡立ち、チンポの根元を白く汚している。その白と、エボニーの愛液の透明と、香油の金色が混ざり合って——結合部は、ぐちゃぐちゃの輝きを放っていた。
「ここが……よく見えるでしょう、将校様……♡」
エボニーが肩越しに振り返った。紫の瞳が、青年の視線の先を正確に読んでいる。
「将校様の逞しいおちんぽを——私のおまんこがどうやって咥えているか……♡」
腰の動きが加速した。
尻が将校の腹に叩きつけられ、ぱんっ、ぱんっ、と乾いた音が響く。その合間にぐちゅっ、ぬちゅっ、と水音が絡み——二つの音が交互に、やがて同時に重なって、部屋の空気を震わせた。
蠕動は止まっていない。打ちつけながら、膣壁は内側でチンポを搾り続けている。叩くリズムと蠕動のリズムがずれるたびに、予測できない快感の波が——
青年の腹が引き攣った。
「出——っ」
申告する暇もなかった。エボニーの腰が深く沈み、子宮口がカリ首を吸い込むように密着した瞬間——精液が迸った。
びゅるるっ、びゅくっ、どぷっ——
子宮口の奥に直接注ぎ込まれる白濁。射精の脈動に合わせて膣壁がぎゅうぎゅうと絞り、残った精液を根元から搾り出していく。
子宮の奥を精液が満たしていく。その熱が——催淫の波となって、エボニーの身体を内側から揺さぶった。
腰がびくんと跳ねた。今度は——一瞬では収まらなかった。びくっ、びくっ、と二度、三度。太腿が痙攣し、爪先がシーツを掻いた。唇が開いて、息が——
——止めろ。
エボニーは歯を食いしばった。目を伏せ、乱れた前髪がホルス冠の縁にかかる。肩が上下している。鎖骨のあたりが汗で光り、背筋に一筋、汗の線が走って腰のくぼみに溜まっていた。
絶頂の一歩手前。そこで、踏みとどまった。
エボニーは射精後も腰を止めなかった。ぬめった精液がチンポと膣壁のあいだで泡立ち、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる。余韻の精液を、蠕動で搾り尽くすように。
「まだ……まだです……♡」
声が微かに震えていた。それに気づいているのはエボニー自身だけ。
「精液、もう少しいただけそう……♡ 煙を——もう少しだけ、足しますね」
チンポから腰を上げた。ずるり、と膣から引き抜かれるチンポの先端から、白濁がとろりと糸を引く。エボニーの太腿の内側を精液と愛液が混ざった液体が流れ落ち、シーツに染みを広げていった。
立ち上がる。足元がかすかにふらついたのを——青年は見逃さなかった。
マントの裾が、歩くたびに太腿を掠める。腰から下は裸のまま。精液で汚れた太腿を拭うこともなく、ただ淡々と——次の手順へ移行する、道具の足取りで。
「将校様——お立ちくださいませ」
声は蠱惑のまま。揺らぎはない。
「次は、立った姿勢でのおもてなしをいたします♡」
---
絨毯の上に、二つの影が立っていた。
青年はトゥニカを脱がされていた。いつの間に——エボニーの指が、寝台から立ち上がらせる流れのなかで布をたぐり上げ、頭の上から引き抜いていった。鎧を解かれた身体が、たいまつの灯りの下に晒される。引き締まった胸板、腹筋の溝、腰骨の張り出し。戦場で鍛えた若い肢体だが、線の細さがまだ残っている。そして腰から下——精液と愛液でぬるぬると光るチンポが、煙に煽られて再び硬く屹立していた。
エボニーが正面から青年に歩み寄った。
首に腕を回す。密着する。胸がぺたりと青年の胸板に押しつけられ、香油と汗が混ざった肌が、肌を滑った。顔を上げる——エボニーの方がわずかに背が低い。見上げる紫の瞳が、たいまつの逆光のなかで琥珀色に燃えている。
「これが——女王直伝、極めの体位」
左足を床についたまま。
右足が——ゆっくりと持ち上がっていった。
太腿が腰の高さを過ぎ、胸の高さを過ぎ、さらに上へ。膝が伸び、爪先が天井に向かって伸びていく。脚がY字に開き——足先が、青年の肩の上にまで届いた。足首の金のアンクレットが、たいまつの灯りをちかりと弾く。
人間の身体が取れる角度ではなかった。魔法少女の強化された筋肉と靭帯だけが許す、人外の柔軟性。片足で全体重を支えながら、もう一方の脚を垂直に掲げ切る——その姿勢で、エボニーは微笑んでいた。
「ファラオの搾精……すべての精を、根こそぎ絞り尽くす秘儀にございます……♡」
掲げた脚と軸足のあいだで、おまんこが完全に露出していた。ひだは濡れそぼって開き、内側の桃色の粘膜がたいまつの光をぬらりと反射している。さっきまでの精液がまだ奥から染み出していて、ひだの合わせ目を白く汚していた。
その姿勢のまま——腰をチンポに押しつけた。
亀頭がひだに触れる。にちゅ、と粘膜同士が密着し——エボニーが軸足のつま先で立ち上がるようにして、腰の角度を調整する。今までとは違う角度。Y字に開いた脚のあいだで、おまんこの入り口がチンポの真上に位置した。
腰を、落とす。
ずぷり。
入った瞬間、青年の喉から声が漏れた。
——深い。
騎乗位のときとは、圧が違った。Y字バランスの姿勢でおまんこの角度が変わり、チンポの先端が膣壁の——今まで触れなかった場所を、えぐるように押し上げている。蠕動ではない。体位そのものの重力と角度が、物理的にチンポを膣の奥へと押し込んでいる。
エボニーの息が詰まった。
——深い。深すぎる。
子宮口にチンポが当たっている。それだけではない。Y字バランスの角度で、亀頭の先端が子宮口のすぐ脇——膣壁のもっとも薄い、もっとも敏感な場所を擦っている。将校がわずかに腰を揺らすだけで、その場所が圧迫され、ずきん、と甘い痛みに近い衝撃が腹の奥に走った。
煙が容赦なく追い打ちをかけてくる。
もう何刻も吸い続けた催淫の靄が、身体の奥底まで染み渡っている。チンポが膣壁の敏感な場所を擦るたびに、煙で灼かれた神経が甘い痺れを全身に走らせる。
呼吸が乱れ始めた。
エボニーは腰を前後に動かした。片足で全体重を支えながら、膣でチンポを搾る——強化された身体でも、この体位は余裕を許さなかった。腰を揺らすたび、掲げた足が震える。太腿の筋肉がぴくぴくと引きつり、汗がその表面を伝い落ちていく。香油と汗が混ざり合い、たいまつの灯りを受けてぬるぬると光る肌が、動くたびに金色の反射を散らした。
「将校様……っ」
声が揺れた。
「足が震えておりますよ……? まだまだ、これからでございますの——」
——あっ。
声が漏れた。
素の声。仕事の声ではない。計算された蠱惑でもない。膣壁の敏感な場所をチンポの先端がこすり上げた瞬間、喉の奥から勝手に飛び出した——ただの、女の声。
エボニーの瞳が揺れた。紫の虹彩のなかで、何かが砕けるような音がした。すぐに唇を噛む。強く——下唇に歯の跡が残るほど。
「……し、失礼いたしました」
声が掠れている。取り繕おうとしているのに、うまく制御できない。唇の端がわずかに震え、鎖骨のあたりで呼吸が引っかかっている。
「なんでも、ございません……続けます……っ」
——だが青年の目には見えていた。
この女の仮面に、初めて走った亀裂を。
さっきまでの完璧な蠱惑——計算された微笑み、揺るぎない敬語、道具としての冷徹な所作。それらすべてが、たった一声の「あっ」で罅割れた。噛み締めた唇の震え。取り繕う声の裏にある、隠しきれない息遣い。
青年は——自分でも意識しないまま、手を伸ばしていた。エボニーの腰に手を回そうとして——
エボニーの手が、その手首を掴んだ。
細い指。だがその握力は、魔法少女の身体が持つ力そのものだった。青年の手を、優しく、しかし確実に外す。
「ふふ……手を出しては、いけませ……んっ……♡」
声が途切れた。腰を動かすたび、Y字の角度でチンポが膣壁の敏感な場所をこすり——そのたびに、声の端に甘い湿りが滲む。
「これは——私の、任務……ですからっ……」
任務。その言葉を口にするたびに、その言葉がどこか空洞になっていく。自分でもわかっている。今の声は——今の吐息は——任務の道具から出る音ではない。
だが立ち止まれなかった。立ち止まったら、認めてしまう。この疼きが、この熱が、煙の副作用などではなく——自分自身の快感であることを。
エボニーは腰を動かし続けた。Y字バランスの姿勢で、軸足の爪先が絨毯の毛足を掻く。掲げた脚は震えを増し、足首のアンクレットがかちゃかちゃと鳴る。腰を前に突き出すたびに——ぐちゅっ、ぬちゅっ、と泡立った水音が結合部から響き、精液と愛液の混合物が太腿を伝って絨毯を汚していった。
青年の腹が引き攣った。
立ち姿勢での快感は、寝台の上とはまた質が違った。重力がすべてを下に——チンポの根元に——集中させる。エボニーの膣壁がY字の角度で竿を斜めに圧迫し、その圧が亀頭を膣壁に押しつけたまま離さない。逃げ場がない。上にも下にも、横にも。
「う——っ」
青年の膝が笑った。太腿が震え、立っていること自体が限界に近づいている。
「出る……出る……っ」
声が裏返った。立った姿勢のまま、下腹の奥から精液がせり上がってくる。止められない。止まらない。
エボニーは腰を深く落とした。子宮口でカリ首を咥え込み、膣壁の蠕動が——最後のひと搾りを加える。
びゅるっ、びゅくっ——
精液が、開かれた膣の奥に迸った。立ち姿勢の射精は、寝台の上とは脈動の強さが違う。腹筋が痙攣し、背中が強張り、腰が前にのめりながら——白濁がエボニーの子宮口を叩いた。
精液はY字に開かれた太腿を白く伝い落ちていった。膣の中に収まりきらない量が結合部から溢れ、エボニーの軸足を伝い、絨毯の上に白い筋を引く。
精液が子宮口を穿った——催淫に蝕まれ尽くした身体は、もうその衝撃を受け止める余力を残していなかった。
膝ががくりと折れかけた。
将校の肩に——縋りついていた。両手が将校の首に回り、顔が肩口に埋まる。荒い息が、将校の鎖骨を打つ。
絶頂の一歩手前。
波が来ている。おまんこの奥で、何かが弾けようとしている。あと少し——あと一押しで——
——だめ。
エボニーは歯を食いしばり、両手で将校の肩を押して身体を離した。掲げていた足をゆっくりと下ろす。足裏が絨毯に触れたとき、膝の震えが止まらなかった。
微笑もうとした。
唇が——震えている。
呼吸を整える。整わない。胸が上下し、鎖骨が浮き沈みし、汗が首筋から胸の谷間へと流れ落ちていく。紫の瞳は——まだ蕩けきってはいない。だがその奥で、何かがぎりぎりと軋んでいた。
——こんな。任務でこんなに感じるなんて。
内心が、焦りで塗りつぶされていく。
——早く終わらせなければ。煙を足して、速やかに搾り切る——
「……素晴らしい射精でした、将校様」
声は平静を装っていた。だがその平静は、薄氷の上に立つようなものだと——エボニー自身が、いちばんよく知っていた。
「では——煙を、足しますね」
エボニーは香炉に歩み寄った。
足取りが速い。いつもの優雅な所作ではなく——逃げるような、足取り。
たいまつの灯りがエボニーの背中を照らしている。紺碧のマントの下、汗と香油で光る裸の肢体。太腿の内側を伝い落ちる白濁。X字の拘束帯が肩甲骨の間を交差し、その結び目に——さっきから繰り返された激しい動きの負荷が蓄積していた。
香炉の前で、エボニーは手を伸ばした。
蓋の取っ手に指をかける。その指が——震えていた。
——早く。早くこの任務を終わらせなければ。煙を足して搾り切る。そうすれば——この疼きも収まるはず。
焦りが、手元を狂わせた。
蓋を掴む指に力が入りすぎた。少しだけ開けるつもりだった。ほんの隙間——煙を一筋だけ追加する、それだけのはずだった。だが震える指が蓋を大きく跳ね上げてしまい——
濃厚な煙が、一気に噴き出した。
白い奔流。香炉の口から溢れ出た煙は、もはや一筋などという量ではなかった。部屋の空気を塗り替えるかのように膨張し、エボニーの顔面を——正面から、直撃した。
「——ッッ!?」
咳き込んだ。反射的に息を吸い込んで——それが致命的だった。濃縮された没薬の煙が、肺の隅々にまで一息で浸透していく。
「けほ……っ、あ、な、に……これ……っ……!」
身体が震え始めた。
違う。今までの煙とは、濃度が桁違いに違う。細く薄く漂わせていたはずの煙を、原液のまま——全身に浴びた。肌の表面がぞわりと粟立ち、指先から、爪先から、頭のてっぺんから——全身の神経が、一斉に発火するような感覚。
ソウルジェムが明滅した。紫色の光が不規則に瞬き、消え、また灯る。胸元で暴れるようにちかちかと脈打っている。
同時に——青年も濃い煙を浴びていた。
部屋に充満した白い靄のなかで、青年の身体にも変化が起きている。弛緩しかけていたチンポが、みるみるうちに硬さを取り戻していく。さっきまでとは比べ物にならない硬度。血管が浮き上がり、亀頭が赤黒く膨れ上がり——痛みすら覚えるほどの怒張が、煙に焚きつけられて屹立した。
エボニーの瞳から、冷静さが溶け落ちていった。
紫の虹彩のなかに、今まで抑え込んでいたものが——浮かび上がってくる。熱に浮かされた、蕩けた光。道具の仮面の下に隠していた——一人の雌の、剥き出しの眼。
——催淫が、暴走していた。
煙の濃度が臨界を超えた。微かな副作用——耐性の範囲——そんな言い訳が通じる次元ではもうなかった。原液同然の煙を肺いっぱいに吸い込んだ身体は、肌に触れる空気すらが快感に変わる。全身の神経が剥き出しのまま発火し、頭の芯から爪先まで——灼熱の媚薬が、理性もろとも焼き尽くしていた。
「あ……ああ……」
声が変わっていた。
さっきまでの蠱惑的な丁寧語は、もうどこにもない。喉から漏れるのは——形を失いかけた、生の声。
「将校様……すごい、硬く、なって……おまんこ、疼く……疼いてしまい……っ……♡」
顔が——変わった。
それまでの仮面が、音を立てて剥がれ落ちていくのが見えた。冷徹な仕事人の表情が消え、頬が紅潮し、口元がだらしなく緩み——唇の端から、涎が一筋垂れた。紫の瞳はとろとろに蕩けて焦点が合わず、たいまつの灯りを受けて濡れた光を放っている。
一人の雌の顔が——露わになっていた。
「ダメ……っ、我慢できない……入れる……入っちゃう……あ、ああああっ♡♡」
エボニーは青年に飛びかかった。
押し倒す。将校の身体が寝台の上に叩きつけられ、リネンのシーツがばさりと跳ねた。エボニーが跨る。腰を振り上げ、チンポの位置を探り——自分で掴んで、おまんこに——
ずぶっ。
根元まで、一息で呑み込んだ。
さっきまでの搾精とはまるで違った。計算された蠕動も、膣壁の意識的な締め付けも、何もない。本能のまま——腰を打ちつけている。ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ、と尻が将校の腹を叩く音が部屋に響き渡り、その合間にぐちゅぐちゅ、ぬちゃぬちゃ、と泡立った水音が絡みつく。
激しい動きが、最後の拘束を引き裂いた。
ぶちり。
肩のX字拘束帯が——千切れた。繊維が断裂する音が、水音のなかに混じる。それを繋ぎ止めにしていた紺碧のマントが、両肩からずるりと滑り落ちていく。重い布が寝台の縁を越え、絨毯の上に広がった。
エボニーの身体に残るものは——もう、ほとんどなかった。
頭のホルス冠。首を巡るウセク襟とチョーカー。両手首の金のバングル。両足首のアンクレット。サンダルの革紐。それだけ。
裸だった。
香油と汗と精液と愛液で光る裸体に、金色の装飾品だけが残っている。たいまつの灯りが全身を照らし、動くたびに金属がちかちかと光を散らした。ホルス冠の鷹が頭上で鈍い金色を放ち——神官の冠を戴いた裸の女が、男の上で腰を振り乱している。
おまんこから泡立った愛液が飛び散っていた。結合部は白い泡と透明な蜜でぐちゃぐちゃに光り、抜き差しのたびに粘液の糸が幾筋も伸びては切れる。
「イクッ、イクイクイクッ♡♡」
叫んでいた。喘ぎ声ですらない。獣の叫び。
「将校様、将校様ぅっ、もっと、もっと奥ぅっ♡♡ 子宮にチンポ当たってるぅっ、あ、ああああっ♡♡」
敬語の残骸すら消えていた。嬌声と喘ぎだけが、煙の充満した饗応の間に木霊する。膣壁は蠕動を忘れ、ただ痙攣的にチンポを締めつけている。搾精の技術ではない。快感に翻弄された肉が、勝手に収縮しているだけ。
青年も——もう、耐えることをやめていた。
煙が若い身体を内側から焼いていた。理性の殻が炭化し、その下から——本能が、剥き出しのまま這い出してくる。
手が伸びた。エボニーの腰を掴む。さっきは外された手が、今度は——女の腰骨にしっかりと指を食い込ませていた。エボニーはその手を払わなかった。払う余裕がなかった。払う理由を、もう思い出せなかった。
「う……俺も……もう……っ」
エボニーが身を屈めた。額が将校の額にぶつかる距離。蕩けた紫の瞳が、煙に焼かれた青年の瞳を——至近距離で覗き込む。
「来てっ♡♡」
涎が青年の頬に落ちた。
「来てるっ、将校様もイクんだっ♡♡ 一緒に、一緒にイこっ♡♡」
腰が打ちつけられる。ぱんぱんぱんぱんっ——リズムが崩壊して、ただ速く、ただ深く、ただ強く。
「出して、中に出してぇっ♡♡ 種、種ちょうだいぃっ♡♡♡」
——脳裏に、声が響いた。
女王の声。
——ふふ……やっと素直になれたのか、エボニー?
意識の底を、クレオパトラの笑みが横切る。玉座の奥の闇から覗く、あの尊大で妖艶な眼差し。
——これがお前の本当の姿じゃ。道具などではない……ただの、牡を求める牝の獣よ。
外側から——煙が、仮面を剥いだ。
内側から——女王の言葉が、最後の芯を砕いた。
エボニーの瞳から、最後の理性の光が消えた。
同時に——腰を、叩きつけた。
青年の腰が跳ねた。エボニーの腰が沈んだ。子宮口がカリ首を呑み込み、膣壁がチンポの全面に吸いつき——二つの身体が、根元まで密着した。
びゅるるるっ——
精液が噴き出した。子宮口を直撃する白濁の奔流。一発、二発、三発——途切れない。青年の腹筋が痙攣し、腰が勝手に跳ね上がり、射精の脈動がチンポを通じてエボニーの膣壁を叩き続ける。
精液が子宮口を叩いた——その衝撃が、煙に灼かれた身体を丸ごと貫いた。
エボニーのアクメが、将校の射精と同時に弾けた。
膣壁がびくんと痙攣する。その痙攣がチンポを締め上げ、締め上げが将校の射精をさらに搾り出す。搾り出された精液がまた子宮口を叩き、その衝撃がまた膣壁を痙攣させ——
快感の連鎖。
終わらない。始まりも終わりもわからない。どちらが搾っているのか、どちらが搾られているのか——その境界が、煙のなかに溶け落ちていた。
エボニーは大きく仰け反った。
背中が弓なりに——いや。弓とか弧とか、そんな形容が追いつかない。身体の中心から何かが爆ぜて、四肢が勝手にのけ反っていた。頭が後ろに落ち、ホルス冠が頭上でがちゃりと鳴る。口が開いた。舌が突き出され、涎がだらりと顎を伝い、涙が目尻から溢れて頬を濡らしていく。
紫の瞳から——ハイライトが消えていた。
たいまつの灯りを反射していたはずの光が失せ、蕩けた紫色だけが、虚空を見つめている。その頭上で、ホルス冠だけが鈍い金色を放っていた。神官の冠を戴いた裸体が、痙攣している。汗と香油と精液と涙にまみれた肌が、たいまつの炎に照らされて——神聖と淫蕩が、極限で重なり合っていた。
「あ……ああああ……しぬ……しんじゃう……♡♡」
声は嬌声ですらなかった。喉が勝手に震えて漏れ出す、壊れた楽器の音。
「おまんこ、壊れちゃうぅ……♡♡」
膣が痙攣し続けている。チンポを締めつけ、緩み、また締めつけ——射精の最後の一滴までを搾り取るように。精液が膣から溢れ出していた。結合部から白濁が押し出され、泡立ち、太腿を伝い、シーツを汚していく。
青年の身体も限界を超えていた。射精が——終わらない。こんなに長く出し続けたことはない。腹の底が空になるまで搾り取られている。視界が白く飛び、耳の奥で自分の心臓の音だけがどくどくと鳴っている。
やがて——精液の脈動が、ゆっくりと間遠になった。
びくっ……びくっ……。
チンポが膣のなかで、最後の痙攣を繰り返す。エボニーの膣壁もそれに合わせるように、ぎゅう……ぎゅう……と緩やかに収縮しては弛緩する。
エボニーは仰け反った姿勢のまま、ゆっくりと身体を戻した。前に倒れ込むように——青年の胸の上に、崩れ落ちる。
汗ばんだ肌と肌が貼りつく。エボニーの浅い呼吸が青年の胸板を打ち、心臓の鼓動が二つ重なって聞こえた。
——終わった。
そう思ったのは、青年だけだった。
エボニーの腰が——また、動いた。
「まだ……」
声は掠れていた。喉が嗄れている。でも——腰は止まらない。ぐちゅ、ぐちゅ、と精液まみれの結合部がゆっくりと、しかし確実に前後に動き始める。
「まだ足りない……もっと……もっと欲しいの……♡」
蕩けた紫の瞳が、至近距離から青年を見上げた。涙の跡が頬にてらてらと光っている。涎が唇の端に残っている。ハイライトは——少しだけ戻っていたが、その奥にある熱は一切冷めていなかった。
「将校様……お願い……♡」
青年の身体が動いた。
煙に灼かれた本能が、もはや許可を求めなかった。両手がエボニーの肩を掴み、身体を引き剥がし——
ひっくり返す。
エボニーが寝台の上に背中から落ちた。驚く暇もなく——青年がその上に覆い被さっていた。エボニーの脚を掴み、押し開き、膝裏を自分の肩に乗せて——
ずぶりっ。
一息で、根元まで突き入れた。
「ひぁああああっ♡♡」
エボニーの背中が寝台の上で跳ねた。種付けプレスの体勢——全体重がエボニーの腰に乗り、チンポが今までで最も深い角度で子宮口を抉る。
「それ、それ、奥すぎるっ♡♡ 子宮口抉れてるぅっ♡♡」
青年の腰が叩きつけられる。ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ——さっきまでエボニーが刻んでいたリズムよりも荒く、重く、若い肉体の全力がチンポに乗っている。
「すご、すごいっ♡♡ 将校様のチンポ、もっと、もっとおくまでぇっ♡♡」
エボニーの両手が青年の背中にしがみついた。爪が肌に食い込み、赤い線が走る。両脚は将校の肩の上で大きく開かれ、足首のアンクレットがぶつかり合ってかちゃかちゃと鳴っていた。
体位が変わった。青年がエボニーの身体を引き起こし、対面座位に。エボニーが将校の腰に跨がり、脚を巻きつけ、腕を首に回して——互いの顔がぶつかるほど密着した姿勢で、腰を動かす。
ぐちゅっ、ぬちゅっ、にゅるにゅる——
精液と愛液がぐちゃぐちゃに混ざり合った水音が、密着した身体の隙間から溢れる。エボニーの胸が青年の胸板に潰され、乳首が擦れるたびに甘い声が漏れた。
再び騎乗位に。エボニーが将校を押し倒し、跨がり、腰を振る。今度は最初から全力だった。搾精の技術も蠕動もなく——ただ、快感を貪るために。
煙の充満した饗応の間で、二人は体位を変え続けた。
たいまつの炎が短くなっていく。何本目かの火が消え、部屋が少しずつ暗くなる。だが手を伸ばして新しいたいまつに火を移す者はいない。二つの影は闇のなかでも絡み合い続け、水音と嬌声と、男の低い呻きだけが——夜の底を埋めていった。
薄絹の帳が揺れている。
帳越しに——絡み合い続ける二人のシルエットが、最後のたいまつの灯りに浮かんでいた。重なり、離れ、また重なる。影が一つになり、二つに分かれ、再び溶け合う。
たいまつがまた一本消えた。煙だけが、部屋の隅々に漂い続けている。
夜は——まだ、明けない。
---
朝陽が、帳の隙間から差し込んでいた。
白い光が、饗応の間の惨状を照らし出す。
床に散乱した衣装。千切れたX字の拘束帯が絨毯の上に横たわり、外れた鷹の翼のブローチがその隣で金色の光を鈍く弾いている。紺碧のマントは泥のように広がって、その上に白い腰布の残骸が一枚。転がった果実酒の壺。とうに消えた香炉の残り火。ペルシャ絨毯には幾つもの染みが——精液と愛液と汗と果実酒が混ざった染みが、昨夜の軌跡を地図のように描いていた。
寝台の上に、青年将校が横たわっていた。
ぐったりと——生気を吸い取られたかのような抜け殻の顔。目は半開きで、天井の何処でもない一点を見つめている。全身にキスマークと引っ掻き傷が残っていた。首筋、胸板、腹、太腿の内側——昨夜の激しさを、生身に刻み込まれた紋様のように。
だが口元は——だらしなく、緩んでいた。どこか満たされた、夢を見ているような表情で。
エボニーの姿は、すでになかった。
◇ ◇ ◇
玉座の間。
エボニーは膝をついていた。
衣装は整えてある——千切れた拘束帯の代わりに予備の紐で応急処置を施し、壊れたブラトップは布を巻き直してどうにか胸を覆っている。マントは回収して肩にかけたが、止め具が壊れているせいで歩くたびにずり落ちそうになった。
足取りは——ふらついていた。太腿の内側がまだ疼いている。膝には力が入りきらず、頬にはまだ——紅潮の残滓が消えていない。
胸元のソウルジェムは、かつてないほど輝いていた。透き通った紫色の光が布越しにも滲み出して、周囲の空気を淡く染めている。一晩分の精を——根こそぎ吸い込んだジェムの、満ち足りた光。
エボニーはそれを見下ろして——耳まで、真っ赤になった。
昨夜の自分の姿が、脳裏に蘇る。涎を垂らし、涙を流し、舌を突き出して——「種ちょうだい」と叫んでいた自分。あの声は。あの顔は。あの——
「……任務は、完了いたしました」
声が上擦っていた。膝をついたまま頭を垂れ、帳の奥を見上げることができない。顔が熱い。耳の先まで赤い。完璧な道具の顔は——もう、どう取り繕っても戻ってこなかった。
帳の奥から、笑い声が響いた。
くつくつと。低く、ゆったりと。すべてを見透かした、女王だけに許された笑い。
それだけだった。言葉はない。姿も見せない。ただ——満足げな笑い声だけが、玉座の間に長く長く尾を引いて消えていった。
エボニーは立ち上がり、一礼して——逃げるように、玉座の間を後にした。
◇ ◇ ◇
数日後。
砂漠を、一行が往く。
馬の蹄が砂を蹴り、乾いた風が外套の裾を攫う。太陽はすでに高く、砂の地平線が白い陽炎に揺らめいている。ローマへの帰路。アレクサンドリアの白い城壁は、もうずいぶんと後方に霞んでいた。
青年将校は馬上で揺られながら、一度だけ振り返った。
遠くに霞むアレクサンドリアの方角。灯台の影すらもう見えない。あの街の、あの宮殿の、あの饗応の間は——砂漠の向こうに消えていく。
「隊長。アレクサンドリアはいかがでしたか」
隣を行く部下が聞いた。若い副官。人懐こい笑顔で、世間話のつもりで口にした言葉。
青年将校は前を向いたまま、しばらく沈黙した。
乾いた唇が動く。
「……エジプトは——恐ろしい国だ」
声は低く、硬かった。だがその顔には——部下が首を傾げるような、どこか夢見心地の色が浮かんでいた。
不意に——砂漠の風が、向きを変えた。
南からの風。アレクサンドリアの方角からの風。その風のなかに——微かに紛れていた。
没薬の、甘い香り。
そして——煙に似た、かすかな苦み。
青年の身体が反応した。
馬上で、ぴくりと。
股間に、熱が走った。あの夜と同じ種類の、抗いがたい脈動。チンポがトゥニカの下で硬さを帯び始め——青年は顔をしかめて、手綱を強く握り直した。
——一度嵌まった魅了の煙は、完全には抜けない。
あの女が、そう言っていた。いつだったか。夜のどこかで。耳元で。蕩けた声で——いや、あれは冷たい声だったか。もう思い出せない。仕事の顔と、あの壊れた顔が、頭のなかでぐちゃぐちゃに混ざっている。
部下に聞こえないよう、馬上で密かに呟いた。
「……あの女……もう一度——」
言いかけて、口を閉じる。
「——いや、何でもない」
手綱を引いて、馬を前に向けた。ローマまで、まだ遠い。砂漠の熱気が外套の下に篭もり、汗が首筋を伝い落ちていく。
だが青年の鼻腔には——いつまでも、没薬の香りが残っていた。
完全に骨抜きにされた男の後ろ姿が、砂漠の陽炎のなかに揺らめきながら——遠ざかっていった。