※この作品はR-18です。

搾精都市神浜~魔法少女たちのエッチな短編集~   作:黒蓮/クロハス

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妄想鏡のウワサ♡柊ねむ ~きみの欲望 全部現実にしてあげる~

 本の匂いがする部屋だった。

 

 古い紙のインクと、乾いた埃と、どこかから漂うハーブティーの残り香。ホテルフェントホープの一角に設えられたねむの私室は、少女の寝室というよりも、老学者の書庫のような空気を纏っていた。

 

 壁一面の本棚には背表紙がぎっしりと詰め込まれ、机の上には書きかけの原稿用紙が扇状に散らばっている。万年筆が一本、蓋を外したまま原稿の海に沈んでいた。窓から差し込む午後の陽光が、空気中の埃の粒子をきらきらと照らしている。

 

 その光の中に、少女がいた。

 

 革張りの椅子に深く腰かけて、膝の上に本を広げている。薄い茶色の髪を両側で編み込んだ髪型——耳の脇でくるりとまとめられた小さな団子から、細い三つ編みが垂れている。紫色の瞳が本のページの上を滑っていた。華奢な手首が、ぺら、とページをめくる。また一枚。また一枚。瞬きすら惜しむように。

 

 柊ねむ。

 

 マギウスの翼を率いる三人の一角にして、ドッピュルシステムの開発者の一人。固有魔法「具現化」——ウワサを創り出す力を持つ少女。ネット上では天才作家と呼ばれ、書籍化の申し出をすべて黙殺するほどの人気を誇る、文系の天才。

 

 その天才は今、哲学書の上に視線を走らせながら、自分の書斎に連れてこられた男のことなど、まるで気にしていなかった。

 

 扉の前に立つ男の膝が、かすかに震えていた。

 

 二十代の後半——三十路を目前にした、痩せ型で平凡な青年。特徴がないこと自体が特徴のような、どこにでもいそうな男だった。黒羽根の少女に「実験協力者として来てほしい」と告げられ、半ば強引にこの部屋まで連れてこられたのだが——目の前の光景が、あまりにも予想の外だった。

 

 ——小さい。

 

 それが、最初の感想だった。

 

 椅子に座った少女の足は床に届いていない。つま先がぶらぶらと揺れている。三つ編みの毛先が原稿用紙の上に触れて、書きかけの文字を隠していた。瞳は本のページに据えられたまま、男の存在を認識しているのかすら怪しい。

 

 ——こんな子が、ドッピュルシステムの開発者?

 

 信じがたかった。だが、黒羽根たちの口から何度も聞いた名前。柊ねむ。マギウスのねむ様。ウワサを創り出す天才。

 

 沈黙が重い。

 

 男は声をかけるべきか迷い、唾を飲み込み、また迷い——結局、黙って立っていることしかできなかった。

 

 ぺら、と。ページがめくれた音が、静かな書斎に落ちた。

 

「——きみが、今回の被験者かい」

 

 ねむは本から目を上げなかった。視線はページの上を滑ったまま、声だけがまっすぐ男に向けられている。眠たげで、ゆったりとした、年齢にそぐわない落ち着きを含んだ声。

 

「黒羽根から聞いていると思うけど、今日きみに協力してもらうのは、僕が新しく開発したウワサの試運転だよ」

 

 ぱた、と本が閉じられた。ねむがようやく顔を上げる。

 

 紫色の瞳が、まっすぐに男を捉えた。値踏みするでもなく、興味を持つでもなく——ただ、そこに在るものを認識した、という程度の視線。本の登場人物を確認するときの目と、おそらく何も変わらない。

 

「名前は『妄想鏡のウワサ』。簡単に言えば、きみの頭の中にある性的な妄想を、すべて現実として具現化するウワサだよ」

 

 男が、息を詰めた。

 

「ど——どういう、意味ですか」

 

「言葉通りの意味だよ」

 

 ねむが椅子から滑り降りた。靴底が床に着く音が小さく響く。やはり小さい。立ち上がっても男の胸ほどの背丈しかない。

 

「きみが頭の中で想像したシチュエーション、空間、服装、行為——それがすべて、このウワサの空間内で物理的に再現される。どんな変態的な妄想であっても、ウワサは忠実に具現化する。むしろ変態的であればあるほど、物語としては面白くなるんだけどね」

 

 淡々と語っている。自作の小説のあらすじを読み上げるような平坦さで。「変態的な妄想」という単語が、天気予報の降水確率みたいな温度で口から出てくる。

 

 男は呆然と少女を見下ろしていた。言葉の意味は理解できる。だが、目の前の華奢な文学少女の唇からそれが発せられている現実が、脳の処理速度を超えていた。

 

「ああ、ちなみに」

 

 ねむが角帽に手を伸ばした。椅子の背にかけてあった黒い角帽を被り、紐の位置を直す。紐に埋め込まれた小さな宝石——ソウルジェムが、午後の光を受けてかすかに濁った色を見せていた。

 

「被験者は僕だから、きみの妄想の中では僕が相手役を務めることになる。こんな貧相な身体で申し訳ないけどね」

 

 視線を落として、自分の身体を一瞥する。体操着のモデルでもしているかのような素っ気なさで、華奢な肩と薄い胸の輪郭を確認して——すぐに興味を失ったように、目を男に戻した。

 

「ウワサの維持には大量の魔力が必要でね」

 

 ねむの細い指が、角帽の紐のソウルジェムに触れた。宝石がかすかに脈打つように明滅する。

 

「きみの精液を、僕のソウルジェムに魔力として還元させてもらう。灯花の研究によると、自発的な射精——つまり男が自分から気持ちよくなって出した精液のほうが、魔力の含有率が高いらしい。だから妄想鏡のウワサは、きみが最も自発的に射精したくなる状況を創り出すように設計してある」

 

 一息に説明を終えて、ねむが男の顔を見上げた。

 

「きみは好きなだけ妄想を楽しめる。僕は魔力を補充できる。……悪い話じゃないと思うけど」

 

 男は返事ができなかった。

 

 喉がからからに乾いている。目の前の少女が何を言っているのか、頭では理解しているのに、身体がまだ追いついていない。——性的な妄想を、全部具現化する。この少女が相手役になる。精液を魔力に変える。

 

 信じられない。信じられないのに——男の視線は、ねむの白い首筋に、三つ編みの毛先に、まっすぐな紫色の瞳に、吸い寄せられていた。

 

 ——綺麗だ。

 

 この子が、俺の妄想の中で——。

 

 思考の先を、頭が勝手に検閲した。想像してはいけない。こんな華奢な少女に。こんな小さな身体に。

 

 だが、想像した瞬間にはもう遅い。男の意識の片隅で、ウワサの歯車が噛み合う音が——したような気がした。

 

 ねむは、男の顔をじっと観察していた。

 

 紅潮した頬。泳ぐ視線。握り締められた拳。喉仏が上下する嚥下運動。——ねむの目には、男の内面で起きていることが、まるで開いた本のように読み取れていた。

 

「……むふっ」

 

 小さな笑い声がこぼれた。口元だけの、ニヒルな微笑。

 

「緊張しているようだね。安心していいよ、何も恥ずかしがることはない。きみの妄想がどんなに倒錯していても、僕は驚かない。物語を書く人間は、人間の欲望に対する耐性が高いんだ」

 

 そう言って——ねむが、右手の指を鳴らした。

 

 ぱちん。

 

 乾いた音が、書斎の空気を切り裂いた。

 

 直後。

 

 壁一面の本棚が、ゆらりと揺らめいた。

 

 本の背表紙がとろりと溶けるように滲み、壁に吸い込まれていく。机の上の原稿用紙が一枚ずつ宙に浮き上がり、蝶のように回転しながら消えていく。万年筆が、インク瓶が、ハーブティーのカップが、すべてが水面に落ちた絵の具のように輪郭を失い、空間に溶け出していた。

 

 床が揺れた。

 

 天井が遠ざかった。壁が、水面のように波打っている。現実の質感が剥がれ落ちて、その下から、別の世界のテクスチャが覗き始めている。

 

 ねむは揺らぐ空間の中心に立っていた。角帽の紐のソウルジェムだけが、濁った光を放ちながら確かに存在を主張している。三つ編みの毛先が、この世のものではない風に煽られて宙に踊っていた。

 

「さて、始めようか」

 

 声だけが、変わらない。書斎にいたときと寸分違わぬ温度の、眠たげでゆったりとした声。

 

「きみの頭の中、全部見せてもらうよ」

 

 溶けゆく空間の光が、ねむの瞳の上を流れて——その表情を、一瞬だけ淡く滲ませた。

 

「……どんな変態が出てくるか、僕も少し楽しみにしているんだ。——むふふっ」

 

 ねむの口元に浮かんだ笑みが、書斎の最後の残像とともに消えた。

 

 世界が、塗り替わる。

 

◇ ◇ ◇

 

 最初に戻ってきたのは、匂いだった。

 

 埃っぽい。乾いた土と、ゴムと、古い木材が混ざった匂い。鼻の奥にかすかに残る体育館の記憶——学校の、あの匂い。

 

 視界が晴れた。

 

 体育倉庫だった。

 

 薄暗い空間に、跳び箱が三段重ねで積まれている。その隣にロイター板。壁際にはボールかごが並び、天井近くの小さな窓から午後の日差しが斜めに差し込んでいた。光の柱の中を、埃の粒子がゆっくりと漂っている。床には青いマットが一枚、雑に広げられたまま放置されていた。

 

 ——体育倉庫。

 

 男は自分の足元を見下ろした。学校の上履きではなく、自分の靴を履いている。服も、さっきまでと同じ。三十路手前の大人の身体のまま、小学校の体育倉庫に立っている——その違和感が、これが妄想の具現化であることを否応なく突きつけていた。

 

「……ロリコンだね」

 

 声がした。

 

 男が顔を上げると——跳び箱の影から、ねむが歩み出てきた。

 

 服が、変わっていた。

 

 白い体操着。襟元と袖口に赤いラインが入った、どこにでもある学校指定のもの。裾から薄い腹がほんの少し覗いている。そして腰から下は——赤いブルマ。太腿の付け根できゅっと布が食い込んで、そこから先、すらりと白い脚が伸びていた。

 

 三つ編みはそのまま。眼鏡もそのまま。角帽だけが消えている。

 

 ねむは自分の格好を見下ろして、体操着の裾をつまみ、ブルマの布地を指で引っ張って確認した。それから——男を見た。

 

「まあ、知ってたよ。ブルマに体操着、体育倉庫。男の妄想の一ページ目をそのまま開いた感じだ」

 

 呆れた声だった。だが突き放す調子ではない。新人作家の原稿を読んだ編集者が「まあ、ベタだけど嫌いじゃないよ」と言うような——そういう温度。

 

「……でもロリコンにしてはわりと健全だね。もっと酷いのを想像していたんだけど。僕を鬼畜教師に輪姦させるとか、跳び箱の上で磔にするとか」

 

 ねむがマットの端に腰を下ろした。足を投げ出して、壁に背中を預ける。ブルマの裾から伸びた白い太腿が、マットの上にすらりと横たわった。膝の裏に薄い影が落ちている。

 

 男は動けなかった。

 

 体操着姿のねむが、目の前にいる。先ほどまで書斎で哲学書を読んでいた少女が——赤いブルマの中に華奢な腰を収めて、マットの上に座っている。眼鏡の奥の瞳は変わらず超然としているのに、その下の身体は、ブルマの布越しに白い肌の色を透かせていた。

 

 ——この格好は、俺が想像したから。

 

 恥ずかしさが、腹の底から湧き上がってきた。自分の頭の中を覗かれたのだ。こんな——こんなベタな妄想を。体育倉庫でブルマ姿の女の子と。三十路手前の男が、中身だけは立派な変態で。

 

 ねむは、男の顔を観察していた。

 

「顔が赤いね。自分の妄想が具現化されるのは恥ずかしいかい? ……むふっ♡ でもきみ、恥ずかしがりながら、目は僕の太腿から離れていないよ」

 

 男の視線が弾かれるように逸れた。——逸れたが、すぐに戻った。目が、勝手に。

 

 ねむの太腿は細くて白かった。体操着の裾から覗く腹は薄く、ブルマの布地が食い込んだ太腿の付け根に、柔らかそうな肌の窪みがある。膝小僧が丸くて、そこから足首まで一直線に伸びる脛の線が、午後の光に照らされて産毛をきらきらと光らせていた。

 

「……座ったら? 立ったままだと疲れるだろう」

 

 ねむが隣のマットを顎で示した。男はぎこちなく頷いて、ねむの正面に膝をついた。マットのゴムの匂いが鼻をつく。ねむの身体との距離が、一気に縮まった。

 

 体操着から、汗の匂いがした。

 

 ——いや、違う。

 

 ウワサの具現化だ。体操着のコットンの匂いと、その奥にある、少女の肌の匂い。体育の授業の後みたいな、ほんのり甘い汗と、もっと奥の——言葉にできない、柔らかい体温の匂い。

 

「……嗅いでみるかい?僕の体操着を」

 

 ねむの声が、頭上から降ってきた。見下ろされている。眼鏡の奥の瞳は呆れを含んでいたが、嫌悪は一片も混ざっていなかった。

 

「まあ、実験だからね。存分に嗅ぐといいよ」

 

 許可だった。突き放しているようで——どこまでも受け入れている。

 

 男の理性が、もう一段、溶けた。

 

 気がつけば、ねむの足の間にいた。マットに仰向けに寝転がったねむの、開かれた太腿の間に、男が顔を寄せていた。

 

 ブルマの股間が、目の前にあった。

 

 赤い布が、ねむの股の付け根にぴったりと張りついている。布越しに、割れ目の線がうっすらと浮かんでいた。体操着の裾がめくれて、薄い下腹が露わになっている。おへその下から恥丘にかけての、なだらかな傾斜。

 

 男は顔を近づけた。ブルマの布地に、鼻先が触れる。

 

 匂いが変わった。

 

 体操着の汗とは質の違う、もっと密やかな匂い。布越しに伝わる体温と、かすかな湿り気。ブルマの布地はさらさらとした素材のはずなのに、股の部分だけが——微かに、しっとりとしていた。

 

「……きみ、ブルマの匂いを嗅いでいるね。しかもかなり深く」

 

 ねむの声が、平坦に降ってくる。

 

「人類の歴史上、この光景がどれほど繰り返されてきたか想像すると、いっそ壮大だよ。男子の性欲というのは、文明を支える原始的な燃料のひとつだね。……まあ、嗅ぎたいだけ嗅ぐといい」

 

 深く、吸い込んだ。

 

 ブルマに鼻を押し当てて、奥の匂いを吸い上げる。布の向こうで、ねむのおまんこが脈打っているのが、鼻先に伝わる温度の変化で分かった。呼吸のたびに布が男の鼻に密着して、離れて、また密着する。甘い。ほんの少しだけ酸味を帯びた、生き物の匂い。

 

 指が、ブルマの裾にかかった。

 

 赤い布を横にずらす。ぴとっ、と張りついていた布が、かすかな抵抗の後にぺりっと剥がれた。

 

 おまんこが、露わになった。

 

 男の呼吸が止まった。

 

 ——初めて見る。

 

 画面の向こう側でしか見たことのないものが、生身の温度を持って、目の前に在った。

 

 薄い陰毛——というより産毛に近い、透き通るような細い毛が、恥丘のなだらかな丘にまばらに散っている。その下に、小ぶりの陰唇が、花弁のようにそっと閉じていた。色は薄いピンク。夕焼けの前の空みたいな、淡くて透明感のある色。

 

 閉じた花弁の頂点に、クリトリスの膨らみがほんの少しだけ顔を覗かせている。小指の先ほどの、控えめな突起。そしてその膨らみの下から——透明な雫が一粒、滲み出していた。つう、と糸を引いて、花弁の隙間を伝い、太腿の白い肌に吸い込まれていく。

 

「……そんなにまじまじと見なくてもいいんだけど」

 

 ねむの声が、わずかに——ほんのわずかに、普段より高かった。

 

「きみ、本物のおまんこを見るのは初めてかい?」

 

 男は頷いた。声が出なかった。目が離せない。ブルマを横にずらした指が震えている。

 

「童貞だとは聞いていたけど、おまんこ未経験までとはね。……まあ、だからこそ妄想の純度が高いのかもしれない。灯花が喜びそうなデータだ」

 

 ねむの声は平坦に戻っていた。——いや、平坦に戻していた。眼鏡の奥の瞳は相変わらず本のページを眺めるような涼しさを保っているのに、男が至近距離でおまんこを観察し続けていることへの反応が、太腿の筋肉のかすかな緊張に——そしてクリトリスの膨らみが、見つめられるたびにほんの少しだけ脈打っているところに——漏れ出ていた。

 

 男の指が、おまんこに触れた。

 

 人差し指で、閉じた花弁を——そっと、左右に開く。

 

 中の粘膜が、光を受けて艶やかに濡れていた。外側の淡いピンクよりもずっと鮮やかな——赤みの強いピンクが、愛液の膜を纏っててらてらと光っている。襞の一つ一つが小さくうねって、奥へ奥へと招くような形をしていた。

 

 指先に伝わる熱。生きている肉の温度。脈打つように、きゅう、と粘膜が収縮した。指で開かれたことへの、ねむの身体が見せた無意識の反応。

 

「……そんなに広げなくても見えると思うけど。きみ、観察が丁寧だね」

 

 ねむは仰向けのまま天井を見ていた。声は落ち着いているのに、頬がうっすらと色づいている。眼鏡がかすかにずれて、レンズの縁から瞳が覗いていた。

 

「——実験を、続けようか。見るだけじゃなくて」

 

 男は、ブルマをずらしたまま——おまんこに、顔を寄せた。

 

 舌先が、花弁に触れた。

 

 ねむの腹が、ぴくりと震えた。

 

 塩気と甘さが混ざった味。愛液がとろりと舌に絡んで、粘膜の表面を滑っていく。男は花弁の内側をゆっくりと舐め上げた。下から上へ——クリトリスに向かって、舌の平たい面で、丁寧に。

 

「……んっ」

 

 小さな声が、ねむの喉から漏れた。

 

 すぐに唇を引き結ぶ。何事もなかったかのように、天井を見つめ直す。——だが、男の舌が花弁の内側を舐め上げた瞬間、喉の奥からまた、かすかな音が漏れそうになって、噛み殺された。

 

「舌が入ったね。……まあ、下手だけど、悪くはないよ」

 

 息が、わずかに乱れていた。声だけは平坦を保っているのに、呼吸のリズムが——さっきまでと違う。

 

「クリトリスはもう少し上だよ。……そう、そこ」

 

 指導するような口調だった。しかし男の舌がクリトリスの膨らみに触れた瞬間、ねむの太腿がぴくりと閉じかけて——すぐに、意志の力でこじ開けられた。

 

 ブルマを横にずらしたまま、男はねむのおまんこを舐め続けた。

 

 舌先でクリトリスの包皮をめくるように上下させると、ねむの腹筋が一瞬だけ引き攣る。花弁の内側を舌で掬うと、透明な愛液がとろりと増える。膣口の縁を舌先でなぞると、ねむの踵がマットを搔いた。

 

 その全てを——ねむは、観察者の声で実況していた。

 

「……舌の動きが少し速くなったね。焦る気持ちは分かるけど、クリトリスは繊細な器官だから、もう少しゆっくりの方が効率がいいよ。……ん。そう、その速度」

 

 声は涼しい。だが太腿の内側に浮いた鳥肌と、マットの上で所在なさげに握られた指先が——ねむの身体が、舌の動きに反応していることを、男の目に晒していた。

 

「……むふっ♡ きみ、初めてにしてはまあまあだね。六十点くらいかな。卒業試験の合格ラインには足りないけど、追試を受ければなんとか——」

 

 言葉の途中で、男の舌がクリトリスを直接吸い上げた。

 

「——っ」

 

 ねむの背中が、ほんの少しだけ浮いた。

 

 一瞬。声が詰まって、再開する。

 

「……追試を受ければ、なんとかなるかもしれない。——以上、中間評価だよ」

 

 何事もなかったように締めくくった。だが眼鏡のレンズが——午後の光を受けて白く曇っていた。ねむの吐息が、レンズの表面を、かすかに湿らせている。

 

---

 

 ねむが身体を起こした。

 

 マットの上で仰向けになっていた身体をすっと立て直して、体操着の裾を引っ張り、乱れたブルマの位置を直す。——直すが、横にずらされた股布はそのままだった。ずらされた隙間から覗くおまんこが、クンニの後の愛液でてらてらと光っている。

 

 ねむは眼鏡を指で押し上げて、男を見下ろした。男はマットの上に座り込んだまま、荒い息を吐いている。ズボンの前面が、見て見ぬふりのできない形に膨らんでいた。

 

「……さて。ずいぶん立派な反応だね」

 

 ねむの視線が、男の股間を一瞥した。品定めするでもなく、興味深い文献の一節を見つけたような目。

 

「いつまでもクンニだけでは実験が進まない。次の工程に移ろうか」

 

 ねむがマットの上に膝をついた。男の正面に——男の太腿を跨ぐように、小さな身体を移動させる。

 

「初めてなんだろう? 僕が上に乗る方が安全だよ。きみに変な動きをされて怪我でもしては困るからね」

 

 事務的だった。手順書を読み上げるような口調で、ねむは男のベルトに手をかけた。細い指がバックルを外し、ジッパーを下ろす。布地の下から——男のチンポが、ほとんど弾かれるように飛び出した。

 

 硬い。赤黒く充血して、血管が浮いている。先端から透明な先走りがだらだらと垂れて、竿を伝い落ちていた。三十年近く女性の身体に触れたことのない男の、溜まりに溜まった欲望が、そのまま形になったような硬さ。

 

 ねむの瞳が、一瞬だけ——ほんの一瞬だけ——見開かれた。

 

「……意外だね」

 

 呟いた。

 

「きみの外見から推測していたサイズより、だいぶ太い。統計的に、痩せ型の男性のチンポは細長い傾向があるんだけど——個体差というのは面白いものだ」

 

 すぐに平静に戻る。だが最初の一瞬——あの「意外だね」の声色にだけは、作り物ではない驚きが混ざっていた。

 

 ねむが腰を浮かせた。

 

 男の太腿の上で、小さな身体が持ち上がる。ブルマの横にずらされた隙間から、愛液で濡れたおまんこが、男のチンポの真上に——。

 

 細い指が、男の竿を掴んだ。

 

 ひやりとした指先。華奢な手は男のチンポの太さに対して明らかに小さくて、握りきれず、指の隙間から竿の肉がむにっとはみ出していた。

 

「それじゃあ、始めるよ」

 

 ねむが亀頭を自分のおまんこの入り口に当てがった。

 

 ぬるり、と。愛液が亀頭を包む。花弁が、先端に触れてかすかに開いた。

 

 温かい。濡れている。亀頭が花弁の隙間にはまり込んで、膣口の縁がきゅっと先端を咥え込む。

 

 ねむの腰が、沈んだ。

 

 ずぷっ——。

 

 男の視界が、白く弾けた。

 

 声が出なかった。出そうとしたのに、喉が引き攣って音にならない。代わりに全身の筋肉が一斉に硬直して、指がマットを掴んだ。

 

 ——中に、入っている。

 

 亀頭が膣壁に包まれている。灼熱の肉が四方八方から押し寄せて、先端を圧し潰すようにきゅうきゅうと締め付けている。濡れた粘膜が亀頭の表面を舐め回して、カリの段差をぐにゅりと乗り越える感触が、背骨を貫いた。

 

 ——ブルマの隙間から、チンポが消えていく。

 

 赤い布の端と白い肌の境目で、男の竿がゆっくりとねむの中に呑み込まれていく。ブルマをずらした隙間は狭くて、結合部が布に半分隠されている。見えるところと見えないところの境目が、どうしようもなくいやらしかった。

 

 根元まで。

 

 ねむの腰が、男の太腿に着いた。全部、入った。

 

「ん」

 

 ねむの喉から、短い声が漏れた。吐息ひとつ。それだけ。

 

「入ったね。……うん、なかなかの存在感だ」

 

 眼鏡を押し上げる。瞳は涼しいままだったが、声のトーンが——ほんの半音だけ、下がっていた。

 

「きみのチンポ、思ったより太いな。膣壁がかなり押し広げられてる。……これは、少し驚いた」

 

 超然と語っている。自分の膣壁の状態を、まるで読み上げているテキストの誤字を見つけたくらいの温度で報告している。その口元は涼しいのに——ねむの太腿が、男の腰の上でかすかに震えていた。

 

 男は、動けなかった。

 

 動いたら、終わる。

 

 それが分かっていた。童貞の身体は、この刺激に耐えるようにできていない。膣壁が竿を包む圧力だけで、精液がせり上がってきている。下腹がぎゅうっと引き攣って、射精の衝動が竿の奥から頭のてっぺんまで駆け上がってくる。

 

 ——まだだ。まだ出すな。もう少しだけこの中に——。

 

「動くよ」

 

 ねむが、腰を持ち上げた。

 

 ずるり——と。膣壁が竿を絞り上げながら、亀頭が奥から入り口へ引き戻されていく。粘膜のひだが一枚一枚、カリの裏を擦り上げて、ぬちゅっ、と卑猥な音を立てた。

 

 そして——落ちる。

 

 ずぷっ。

 

 ねむの腰が落ちた。竿が一息に最奥まで呑み直される。亀頭の先に、丸い壁がこつんと触れた。子宮口。柔らかくて温かい壁が、亀頭の先端にぷにりと押し返してくる。

 

「——っ、ぅ……」

 

 男の声が漏れた。情けない、引き攣った声。

 

「ペニスが膣内で大暴れしているね」

 

 ねむの声が、上から降ってくる。騎乗位で男を見下ろすねむの顔は、額に薄い汗を浮かべていたが、口元は変わらず超然としていた。

 

「びくびく脈打って、カリが膣壁に引っかかるたびにぐっと太くなるのが分かるよ。童貞を卒業できたのがよっぽど嬉しかったのかな? ……可愛い反応だ♡」

 

 可愛い。そう言われた瞬間、男の下腹がぎゅうっと収縮した。

 

 ——呆れられている。見下されている。ベタな妄想を一蹴され、クンニは六十点だと採点され、チンポの暴れっぷりを実況されている。

 

 なのに。

 

 ねむに煽られるたびに、チンポが硬くなる。呆れた目で見られるたびに、射精欲求が跳ね上がる。嫌悪されているのではない。拒絶されているのでもない。ねむの声には、呆れの中に——どこか楽しそうな響きが混ざっていて、それが「否定されていない」という安心になって、男の快感を底上げしていた。

 

 ねむの腰が、再び動き始めた。今度はさっきより速い。

 

 ぱんっ、ぱんっ——。

 

 小さな尻が男の太腿に当たるたびに、ブルマの布地がぱちんと弾ける。ずらされた隙間から結合部が覗いて、隠れて、また覗く。男の竿が愛液でてかてかに光りながら出入りするのが、赤い布の端から断片的に見えた。

 

 限界だった。

 

「……出ます」

 

 掠れた声で言った。

 

「ん? もう出るのかい。早いね」

 

 ねむの腰が止まらない。止めてくれない。竿を根元まで呑み込んだまま、小さく腰を揺すって、子宮口を亀頭に押し当ててくる。

 

「……まあ、童貞だもんね。仕方ないよ。好きなだけ出していいよ」

 

 許可だった。

 

 ——許可された。

 

 出していい。この中に。ねむの中に。ブルマをずらした隙間の奥の、この灼熱の膣壁の中に——。

 

 びゅるっ——。

 

 精液が、噴き出した。

 

 下腹がぎゅうぅっと収縮して、竿の奥から熱い塊がせり上がって、亀頭の先端からねむの子宮に——ぶちまけられた。

 

「あ——っ、あ、ぁ……!」

 

 男の声が裏返った。腰が勝手に跳ねて、ねむの中で竿がびくびくと脈打つ。一射。二射。三射。精液が送り込まれるたびに、膣壁がきゅるりと締まって、射精に応えるように——あるいは搾り取るように——竿を絞った。

 

「……んっ」

 

 ねむの喉から、短い音が漏れた。すぐに飲み込んだ。

 

「ん、いま絶頂したね」

 

 ねむは、男の顔を見下ろしていた。射精の痙攣に目を白黒させている男を、眼鏡の奥から、涼しい瞳で。

 

「なかなかの量だ。子宮の入り口がどくどく言ってるよ。……うん、ソウルジェムが少し明るくなった」

 

 角帽の紐の宝石が——確かに、わずかに輝きを増していた。射精の前よりも、透明度が上がっている。精液が魔力に変換された証。

 

 男は目を閉じた。射精の余韻が全身を痺れさせている。気持ちよすぎて、意識が遠い。チンポはまだねむの中に埋まっていて、余韻のびくつきに合わせて膣壁がきゅっきゅっと応えていた。

 

 ——終わった。

 

 そう思った。

 

 だが——チンポが、萎えなかった。

 

 射精の直後にもかかわらず、竿はぱんぱんに張り詰めたまま、ねむの膣壁に包まれてびくびくと脈打ち続けている。普通なら萎えるはずだ。賢者タイムが来るはずだ。なのに、勃起が——収まらない。

 

「あれ、まだ硬いね」

 

 ねむの声が、頭上から落ちてきた。

 

「ウワサの効果だよ。この空間にいる限り、きみは何度でも射精できる。不応期もない。精液も枯れない」

 

 淡々と説明している。まるで自作小説の設定解説でもするように。

 

「都合がいいだろう? 僕にとっても、きみにとっても」

 

 ねむの腰が、動き始めた。

 

 射精直後の過敏な竿を包んだまま——今度は、さっきよりも速く、深く。

 

「っ——! ま、待っ——」

 

「待たないよ。搾り取るのが実験の目的なんだから」

 

 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ——。

 

 ねむの小さな尻が、男の太腿にリズミカルにぶつかる。ブルマの裾が太腿の動きに合わせて揺れて、体操着の裾がめくれて薄い腹が覗いた。腹の上をうっすらと汗が伝っている。

 

 射精直後の亀頭が——過敏なそこが——膣壁にぐちゅっと擦り上げられるたびに、男の視界が明滅した。気持ちいいのか痛いのか分からない。分からないまま、快感だけが加速度的に積み上がっていく。

 

 ——また、来る。

 

「出る……っ、また……っ」

 

「どうぞ」

 

 びゅくっ——。

 

 二発目。さっきより少ない。でも膣壁はきっちりと受け止めて、きゅるりと搾り上げた。

 

 ねむの腰は止まらない。

 

「二発目。……うん、さっきより濃いね。きみ、気持ちよくなればなるほど精液が濃くなるタイプか。灯花の仮説を裏付ける良いデータだ」

 

 三発目が——二発目の余韻が消える前に——やってきた。

 

 どぴゅっ。

 

 少ない。もう量がない。なのに射精の快感だけは変わらない。下腹がぎゅうぅっと収縮するたびに、空っぽの竿から精液の残りかすが搾り出される。

 

「三発目。……ソウルジェムの輝度が明らかに上がったよ。きみの精液、魔力の含有率がなかなか高いね」

 

 ねむが宝石を指で撫でた。確かに、宝石は最初の濁った色から——透き通った、薄い紫の輝きに変わり始めていた。精液が注がれるたびに、宝石が浄化されていく。

 

 男は、マットの上に崩れ落ちた。四肢の力が全部抜けている。目の前で星が散っている。

 

 ねむは男の上に跨ったまま、眼鏡を押し上げた。チンポはまだ膣内に埋まっている。萎える気配がない。ウワサの空間が、男の身体に無限の精力を強制している。

 

「三発。まあ、初回としては合格だよ。小学生に童貞卒業させてもらって三回射精——出だしとしては、ずいぶん素直な仕上がりだ」

 

 ねむがチンポを膣から引き抜いた。ずるり、と。結合部から精液がとろりと溢れて、ブルマの布地に白い染みを作った。

 

「……でも、きみの頭の中にはまだ続きがあるみたいだね」

 

 ねむが男の顔を覗き込んだ。眼鏡の奥の瞳が、男の内面を——まだ終わっていない妄想の続きを——読み取っている。

 

「次はどんなベタな妄想が出てくるのか、少し楽しみだよ」

 

 空間が、また揺らぎ始めた。

 

 体育倉庫の壁が溶ける。マットが消える。跳び箱が光の粒子に分解されて、虚空に吸い込まれていく。ねむの体操着が、布地の繊維一本一本からほどけるように——消え始めた。

 

 次の層が、来る。

 

◇ ◇ ◇

 

 畳の匂いだった。

 

 い草の青っぽい香りと、陽に焼けた木の温もり。どこかで鳥が鳴いている。すずめだろうか。チチチ、と短い声が、障子の向こうから聞こえていた。

 

 男は布団の上にいた。

 

 清潔な白い敷布団が、六畳の和室いっぱいに広げられている。掛け布団はなく、枕だけがぽつんと置かれていた。障子から漏れる朝の光が柔らかくて、部屋全体がぼんやりとした乳白色に包まれている。

 

 朝の和室。

 

 ——俺の、妄想?

 

 体育倉庫とは空気がまるで違う。薄暗さも埃っぽさもない。静かで、温かくて、どこか懐かしい。実家の、あの部屋に似ている——いや、実家にこんな和室はなかった。これは「理想の朝」だ。男がどこかで見て、覚えて、頭の中に溜め込んでいた「温かい朝」の原風景。

 

 そして。

 

 身体が、小さくなっていた。

 

 男は自分の手を見下ろした。指が短い。手のひらが小さい。太腿が細くなって、パジャマの裾が余って足首まで垂れている。腰の位置が低い。目線が低い。——子供の身体だった。

 

 意識は大人のまま。三十路手前の男の思考と記憶をそっくり抱えたまま、身体だけが小学生の少年に縮んでいる。手を握って、開いて——この乖離感が、甘い眩暈のように脳を揺らした。

 

 股間に手を伸ばした。パジャマのズボン越しに、小さなおちんちんが——ぴんと硬く立っていた。大人の時とは比べものにならないほど小さい。でも皮を被ったまま勃起した幼いチンポは、子供特有の不思議な硬さで、パジャマの薄い布地をぐいっと押し上げていた。

 

「——おはよう」

 

 声がした。

 

 振り返ると——ねむが、布団の隣に座っていた。

 

 白いキャミソール。

 

 体操着もブルマも消えて、透けるように薄い純白のキャミソールだけが、ねむの細い身体を覆っていた。肩紐は華奢な肩にかろうじて引っかかっていて、鎖骨の線がくっきりと浮かんでいる。胸元は浅く——というより、胸そのものが薄いから、キャミソールが身体に沿って真っ直ぐに落ちていた。腰から下は白のショーツだけ。太腿が剥き出しで、畳の上に投げ出されている。

 

 薄い茶色の三つ編みが、華奢な肩から白いキャミソールの上に垂れていた。編み込みの団子も、いつものまま。寝起きを思わせる素肌の白さと、薄布の純白の対比が、どこか生活感のある色気を滲ませている。眼鏡はそのまま。レンズが障子からの朝日を受けて、柔らかく光っていた。

 

 ねむは自分の姿を見下ろし、少年になった男を見て、もう一度自分を見て——一瞬、表情が止まった。

 

「……なるほど」

 

 低い声で呟いた。

 

「僕がママで、きみが息子。しかもきみ、身体が子供になっているね」

 

 少年の姿の男を、じっと観察する。視線が上から下へ走って、パジャマの裾からはみ出た小さな足の指先で止まった。

 

「ロリコンどころかママっ子のショタコンか。ブルマ、体育倉庫と来て、次が小学生ママと中年の息子。……きみの妄想、エスカレーションの仕方が教科書から逸脱し始めたね」

 

 口調は呆れている。だが声のトーンに、体育倉庫にはなかった色が一滴、混ざっていた。

 

「……むふふっ。面白い想像力だ」

 

 感心。知的好奇心。ねむはこの倒錯を「面白い物語の展開」として受け取っている。

 

 そして。

 

 ねむの口が——唇が、ウワサに操られたように、勝手に動いた。

 

「いい子にしてた?」

 

 柔らかい声だった。ねむ自身の口調とは明らかに異なる、甘くて温かい、母親の声。ねむの喉から出ているのに、ねむの言葉ではない。ウワサが男の妄想を具現化して、ねむの口を借りて発話させている。

 

 ねむ自身は一拍遅れて、自分の口から出た言葉を認識した。眉がかすかに動く。

 

「……ウワサに操られてママのセリフが出たね。なるほど、このシチュエーションではそうなるか。僕の身体を使った即興劇というわけだ。——面白い」

 

 少年は——布団の上から、ねむを見上げていた。

 

 子供の目線から見るねむは、大人の時よりもずっと大きい。白いキャミソールが朝日を透かして、中の肌がうっすらと映っている。薄茶の三つ編みが肩から胸元へ垂れて、眼鏡の奥の紫色の瞳が、こちらを見下ろしていた。

 

 朝の和室。白い布団。キャミソールの女の子。

 

 ——ママ。

 

 その単語が、少年の身体の奥で、予想もしなかった熱を帯びた。大人の意識は「これはウワサの演出だ」と理解しているのに、子供に縮んだ身体のほうが——骨の髄から、その単語に反応していた。

 

 少年は、ねむの膝に頭を乗せた。

 

 白い太腿の上に頬を預ける。子供の頭は軽くて、ねむの太腿にすっぽりと収まった。太腿の肌は朝の空気に冷えていて、頬に触れる温度がひんやりとして——でもすぐに、少年の体温で温まっていく。

 

 キャミソールの胸元が、目の前にあった。

 

 薄い。布地が身体に貼りついていて、胸の膨らみはほとんどない。でもその平坦さの中に——乳首だけが、うっすらとした丸い影として浮かんでいた。朝の空気に触れて、きゅっと硬くなった小さな突起が、白い布地を内側からちょん、と押し上げている。

 

 少年は、キャミソールの裾を掴んだ。小さな手で、布地を引っ張る。ねむの顔を見上げながら。

 

 ねむは——少年を見下ろしていた。

 

 瞳に、複雑な光が浮かんでいた。呆れと、好奇心と、そしてもうひとつ——名前のつかない何か。

 

「……僕の胸で申し訳ないけどね」

 

 ねむは自分でキャミソールの肩紐をずらした。細い指が布地を引いて、鎖骨を越え、肩から腕へ滑り落とす。白い布がするりと下がって——薄い胸が、朝日の中に露わになった。

 

 小さい。本当に小さい。膨らみと呼べるような曲線はほとんどなく、胸郭の上にうっすらとした丘がある程度。でもそのてっぺんに——薄い桜色の乳首が、朝の光を浴びてきゅっと尖っていた。乳輪も小さくて、色が淡くて、産毛がほんのわずかに光っている。

 

「ほら。好きなだけ吸っていいよ」

 

 少年は、吸い付いた。

 

 口が勝手に開いて、乳首を含んだ。小さな唇が乳輪ごと咥え込んで、きゅっと吸引する。

 

「……んっ」

 

 ねむの肩が、びくりと震えた。声を噛み殺す。

 

 乳首は硬かった。小さな突起が少年の舌の上で転がって、吸われるたびにさらに硬くなる。ちゅう、ちゅう、と少年の口が乳首を吸い上げるたびに、ねむの呼吸がかすかに乱れた。

 

 そして——乳首から、何かが滲み出した。

 

 甘い。ほんの微量の、温かくて甘い液体が、少年の舌にじわりと広がった。母乳ではない。ウワサが具現化した魔力液。乳首の先端から滲むそれは透明に近い乳白色で、舌に触れた瞬間に——ほわん、と脳の奥が痺れるような甘さが広がっていく。

 

「……おや。出ているね」

 

 ねむが自分の胸を見下ろした。少年の口に含まれた乳首の根元から、微かに白い液がこぼれている。

 

「ウワサの具現化で母乳まで再現するとは。僕の物語は細部まで手を抜かないようだ」

 

 感心した声だった。自分の乳首から液体が滲み出しているという異常な事態を、まるで自作小説の伏線回収を確認するみたいに眺めている。

 

 少年は夢中で吸い続けた。ちゅぷ、ちゅぷ、と小さな水音を立てながら、乳首に吸い付いて、舌で転がして、また吸う。吸うたびに甘い液が口に広がって、それを嚥下するたびに身体の芯がじんわりと温まった。

 

 ——ママのおっぱい。

 

 大人の意識がその言葉を馬鹿にしようとする。だが子供の身体が拒絶する。ママのおっぱいは温かくて甘くて、吸い付いていると安心して、離れたくなくて、もっと欲しくて——。

 

 ねむの手が動いた。

 

 少年の頭を撫でている左手はそのまま——右手が、布団の上を滑って、少年のパジャマの裾に伸びた。

 

 小さな指が、パジャマのズボンの中に入った。

 

 少年のおちんちんに、ねむの指が触れた。

 

「ひっ——」

 

 少年の腰が跳ねた。乳首を咥えたまま、全身がびくりと震える。

 

 小さい。子供のチンポは、ねむの細い指でもすっぽりと包めるほどに小さかった。でも硬い。皮を被ったまま上を向いて、脈打つように熱を発していた。

 

「きみのおちんちん、小さくなっているね」

 

 ねむの声が、頭上から降ってくる。乳首を吸われながら——右手では少年のチンポを包みながら——声だけは、あの超然とした温度のまま。

 

「でもこんなに硬い。子供の身体は正直だ。ママのおっぱいを吸いながら勃起するなんて、なかなか倒錯が深いよ」

 

 ねむの指が動き始めた。

 

 右手の親指と人差し指で、少年の小さな竿をそっと摘まむ。皮を被ったまま、根元から先端へ、ゆっくりと——上に扱く。

 

 にゅる、と。先走りが亀頭を濡らして、ねむの指を滑らせた。

 

「んっ……ぁっ」

 

 少年の声が漏れた。乳首を咥えたまま、くぐもった甘い声。子供の声帯から出る、大人とは質が異なる、高くて細い悲鳴。

 

 ねむの指は丁寧だった。力を入れず、皮を剥かず、被ったままの状態で——指の腹で竿の表面をさする。竿が小さいぶん、ねむの指の動きがそのまま全体に伝わる。一往復ごとに先走りが増えて、ぬるぬると指の間を滑った。

 

 上下の刺激が同時に来ていた。

 

 口では乳首を吸っている。甘い魔力液が舌に染み込むたびに、脳の奥がとろけるような幸福感に浸される。同時に、下半身では——ねむの指がチンポを扱いている。快感の回路が上と下で二本走って、おなかの真ん中でぐちゃぐちゃに絡み合っていた。

 

「授乳しながら手コキ。母子の倒錯プレイとしては定番の構成だけど、妄想としての完成度は悪くない」

 

 ねむは左手で少年の頭を撫でながら、右手のストロークを少しだけ速めた。

 

「きみのおちんちん、小さいのに先走りがすごいね。この量だと、もうすぐ射精するだろう」

 

 ——そう言われた瞬間に、来た。

 

 下腹がきゅっと引き攣って、小さなおちんちんの奥から何かがせり上がって——。

 

 ぴゅっ。

 

 ぴゅっ、ぴゅっ。

 

 射精した。

 

 大人の時とはまるで違った。勢いが弱い。量が少ない。でも出ている。小さなチンポの先端から、子供特有の薄くて透明に近い精液が、ぴゅっぴゅっと弾丸のように飛んだ。ねむの指の間をすり抜けて、白い布団の上に細い線を引く。

 

「ん。出たね」

 

 ねむの指がチンポの根元をきゅっと握って、射精の脈動を指先で感じていた。

 

「量は少ないけど、ちゃんと濃いよ。子供の身体でも精液は精液だ。ソウルジェムの反応も……うん、しっかり検出されている」

 

 少年は乳首を咥えたまま、びくびくと震えていた。射精の余韻で全身が痙攣している。口の中にねむの乳首があって、甘い液がまだ舌の上に残っていて——おちんちんからは精液を出したばかりで——上も下もぐちゃぐちゃで、頭が真っ白だった。

 

「……おちんちんから手ぇはなして……」

 

 乳首を吐き出して、掠れた声で訴えた。子供の声で。射精直後の過敏なチンポを、ねむの指がまだ握っている。触れているだけで電流が走るのに、離してくれない。

 

「もう出ないよぉ……」

 

 泣きそうだった。大人の意識が子供の声帯で悲鳴を上げている。この乖離が——情けなさが——どうしようもなくいやらしかった。

 

 ねむの指が、ようやくチンポから離れた。

 

 ——かと思った。

 

 ねむの顔が、降りてきた。

 

 少年のおちんちんに向かって、ねむが身体を屈めていく。薄茶の三つ編みが肩から滑って、少年の太腿にさらりと触れた。眼鏡のレンズが、射精直後のチンポの表面に映っている。

 

 ねむの唇が、開いた。

 

 ぱくり——と。

 

 射精直後の、まだ精液の雫がぽたりと垂れている小さなチンポを——ねむの口が、まるごと包み込んだ。

 

「ひゃあぁっ——!?」

 

 少年の背中が、布団から跳ね上がった。全身の毛穴が一斉に開いて、鳥肌がぶわっと走る。

 

 射精直後の亀頭に——舌が。ねむの舌が、直接触れている。

 

「んっ……ちゅぷ」

 

 ねむの頬がきゅうっと窄まった。バキュームするように、チンポ全体を口の中で吸い上げる。小さなチンポはねむの口にすっぽりと収まっていて、根元から先端まで、舌と唇と口蓋に——残らず包まれていた。

 

 過敏な亀頭を、舌先がくるくると嬲る。皮の下に舌を潜り込ませて、カリの裏を、ちろちろと撫で上げる。

 

「やっ——やぁっ、ねむママ、それだめっ——!」

 

 少年が身を捩った。布団の上で身体をよじり、ねむの頭を小さな手で押し返そうとする。でも力が入らない。子供の腕力では、ねむの頭をびくとも動かせなかった。

 

 ねむの口が離れた。

 

 唇と亀頭の間に唾液の糸がきらりと引いて——ぷつんと切れる。

 

「逃げないの」

 

 冷静な声だった。

 

「まだ終わってないよ。ママがきれいにしてあげるから、じっとしていなさい」

 

 母親の声と、ねむの声が、溶け合っていた。ウワサに操られた「ママのセリフ」と、ねむ自身の「超然とした分析」が——境界が曖昧になって、どちらがどちらか分からなくなり始めている。

 

 ねむは再びチンポを口に含んだ。

 

 今度は容赦がなかった。じゅるるっ、と下品な吸引音を立てて、小さなチンポを口の奥まで吸い込む。舌の平たい面で竿の裏筋を圧しながら、唇を締めて根元を搾り上げる。

 

「んぐ……じゅる、ちゅぷっ♡」

 

 音が卑猥だった。小さなチンポ一本を相手にしているのに、ねむの口が鳴らす水音は——大人の男を相手にしているかのような、粘っこくて生々しい音。唾液が溢れて、少年の恥毛のない白い肌を伝い落ちていく。

 

「もうやだっ……出ない、もう出ないよぉ……っ」

 

 少年が泣き声で訴えた。さっき射精したばかりだ。もう何も残っていないはずだ。なのにねむの舌が亀頭を嬲るたびに、空っぽのはずのおちんちんの奥から——何かがせり上がってくる。

 

 ねむがちゅぽ、と口を離した。唾液でてかてかのチンポが朝日に照らされて光っている。

 

「出ないわけないだろう? こんなにおちんちんを固くして」

 

 右手が伸びて、少年の陰嚢に触れた。小さな金玉を、指の腹でそっと持ち上げる。ころん、と柔らかくて温かい二つの玉が、ねむの指先に転がった。

 

「睾丸の中にまだたっぷり入っているよ。……ほら、ここ。触ると分かるだろう? 左のほうがすこし重いね」

 

 眼鏡の奥の瞳が、金玉を観察している。作家が取材対象を観察するような、冷静で好奇心に満ちた目で——子供の睾丸を、指で量っている。

 

「ママの言うことを聞きなさい」

 

 声のトーンが、切り替わった。ウワサの声か、ねむの声か、もう判別がつかない。

 

「全部出し切るまで、僕の口からきみのおちんちんは離さないよ」

 

 ねむが再びチンポを口に含んだ。

 

 じゅるるるっ——。

 

 容赦のないバキュームフェラが再開した。小さなチンポが口の中で弄ばれている。舌が亀頭をぐるりと一周して、先端の裂け目を舌先でちょんと突いて、きゅうっと頬で吸い上げる。

 

 少年の腰が跳ねた。布団の上で身体が暴れる。でも逃げられない。ねむの左手が少年の腰を押さえていて、フェラから逃れることを許さない。

 

「やぁっ——やだやだぁっ——ねむママぁ——!」

 

 拒否の言葉なのに、声は甘く上擦って、おちんちんはねむの口の中でびくびくと脈打って——。

 

 ぴゅるっ。

 

 二発目。口の中で射精した。

 

 少年のおちんちんが、ねむの舌の上で脈動する。薄い精液が、舌の上に——一射、二射。量は少ない。大人の射精とは比べものにならない、子供の精通みたいな僅かな量。

 

 ねむの喉が動いた。

 

 ごくり。

 

 飲み込んだ。表情ひとつ変えず、精液を嚥下した。

 

「ん。いい子だ」

 

 チンポを咥えたまま、くぐもった声で褒めた。舌が亀頭の裏を撫でながら——射精の余韻で痙攣するチンポを、口の中で優しく転がしている。

 

「……でもまだ出るでしょう?」

 

 ちゅぽ、と口を離す。唾液と精液が混ざった糸が、唇とチンポの間にきらりと引いた。

 

「睾丸を触ればわかるよ。まだ残ってる」

 

 右手が再び金玉に伸びて、ころんと転がす。品定めするように。重さを量るように。

 

「もう一回。これで最後にしてあげるから」

 

 三度、口が降りてきた。

 

 ぱくり。じゅるるるっ——。

 

 少年はもう抵抗していなかった。布団の上でぐったりと四肢を投げ出して、ねむの口に小さなチンポを預けている。泣いていた。声を上げて泣いているのではなく、目の端から涙がつう、と流れていた。気持ちいいのか辛いのか分からない。両方だった。おちんちんの奥から精液を無理やり引きずり出される感覚と、ねむの舌に包まれる快感が、子供の小さな身体には過剰すぎて——ただ、涙が出た。

 

 ぴゅっ——。

 

 三発目。もう飛ばない。ちょろりと、先端から精液が滲み出ただけだった。それでもねむの舌が丁寧に掬い取って、ごくん、と飲み込んだ。

 

 ねむの口がチンポから離れた。

 

 唇についた精液と唾液の混合物を、舌先でぺろりと拭う。朝日に照らされたねむの口元に、かすかに白い光が残っていた。

 

 少年を見下ろして、笑った。ニヒルな、でもどこか穏やかな笑み。

 

「きみの睾丸、ようやく軽くなったね。全部ぶっこ抜いてあげたよ」

 

 右手がまた金玉に触れて、ころんと転がす。さっきより明らかにしぼんで柔らかくなった陰嚢を、確認するように。

 

「ママのフェラ、どうだった?」

 

 少年は答えられなかった。布団の上に倒れたまま、ひくひくと肩を震わせている。目が赤い。鼻が赤い。でも——おちんちんは、まだ硬かった。

 

 ウワサの空間が、少年の身体に子供の回復力を強制している。搾り尽くされたはずの睾丸が、もう次の精液を作り始めていた。

 

---

 

 ねむは眼鏡を押し上げて、少年の股間を見下ろした。搾り尽くしたはずのチンポが、もう上を向いている。小さくて、赤くて、唾液と精液でぬるぬるに光っていて——それでもぴんと硬い。

 

「……子供の回復力は恐ろしいね」

 

 嘆息するように呟いた。それから——ねむの手がキャミソールの裾を掴んで、するりと頭の上に引き抜いた。白い布が宙を舞って、布団の隅に落ちる。

 

 上半身が裸になった。薄い胸が朝日に晒される。さっき少年に吸われた乳首が、まだほんのり赤く腫れていた。

 

 次にショーツ。白い布を太腿から滑り落として、足首で蹴る。

 

 ねむが、裸で、少年の前にいた。眼鏡だけを残して。

 

「いいよ。ママのおまんこでも搾ってあげる」

 

 少年を布団の上に押し倒した。小さな身体が仰向けにぽすんと沈む。ねむがその上に跨る。第1層の騎乗位と同じ構図——だが相手が子供の身体に縮んでいるぶん、ねむの身体のほうが大きく見えた。ねむが少年を覆い被さるように腰を落としていく。

 

 細い指が、少年の小さなチンポを掴んだ。先端をおまんこの入り口に当てがう。

 

 にゅるっ——。

 

 入った。

 

 少年の喉から声が漏れた。甘い、切ない、子供の声。

 

「あ……っ、ねむ、ママ……っ」

 

 小さなチンポが、ねむの膣に呑み込まれていく。サイズが違う。大人の時とは比べものにならないほど短い竿は、膣の奥まで届かない。入り口のいちばん狭い部分だけで——きゅう、と密着する。

 

 その密着感が、逆に、凄まじかった。

 

 膣口がチンポの全周にぴったりと吸い付いて、亀頭を包み込んでいる。大人の竿なら奥に逃げる余裕があるのに、子供のチンポは短いぶん、膣口の締め付けから逃げ場がない。きゅうきゅうと吸いつかれて、亀頭の表面を粘膜がぐにゅりと撫で回す。

 

「……うん。小さいから膣の入り口だけで完結するね。これはこれで、密着感が独特だ」

 

 ねむが腰をゆっくりと動かし始めた。前後ではなく——腰を小さく回すような動き。チンポを膣口で銜え込んだまま、ぐるりと肉壁を擦り合わせる。

 

 少年の腰が跳ねた。

 

「あっ——あぁっ——ねむママぁ……っ!」

 

 子供の全身が震えている。小さな手がねむの太腿にしがみついて、爪が白い肌に食い込んだ。ねむは少年の頭に手を伸ばして——髪を、撫でた。

 

 優しく。

 

「……がんばりなさい」

 

 声が、温かかった。ウワサに操られた声なのか、ねむ自身の声なのか——もう分からない。でも、温かかった。

 

 ぴゅっ——。

 

 少年が射精した。ねむの膣口の中で、小さなチンポがびくびくと痙攣する。精液は少ない。でも膣壁がきゅるりと締まって、一滴残らず搾り取った。

 

「ん……っ」

 

 ねむの眉が、かすかに寄った。射精の脈動が膣口に直接伝わって——入り口だけで繋がっているぶん、子宮には届かないのに、膣壁の感覚だけはダイレクトに来る。

 

 ねむの腰は止まらなかった。射精の余韻が消えないうちに、また回し始める。

 

「まだだよ。もっと出せるでしょう?」

 

 少年は泣きながら、また射精した。そしてまた。そしてまた。

 

 ぴゅっ。ぴゅるっ。ぴゅ——。

 

 三発。四発。五発目には、もう精液が出なかった。空撃ちだった。射精の快感だけが走って、チンポは痙攣するのに何も出ない。からっぽの射精。それでもねむの膣壁は締まり続けて、存在しない精液を搾ろうとしていた。

 

「ママ……ねむママ……もうだめ……っ」

 

 少年が、ねむの胸に顔を埋めた。薄い胸に額を押しつけて、小さな身体を丸ごと預けるように。抱きついた。しがみついた。ママ、ママ、と繰り返しながら。

 

 ねむの手が、少年の頭を抱え込んだ。

 

 華奢な腕が、小さな身体を包む。

 

「……なるほど」

 

 呟いた。声が——わずかに、揺れていた。

 

「『ママ』と呼ばれると、僕の身体の奥がきゅっとなるね。膣壁が勝手に締まる。……不思議な感覚だ。物語の登場人物になった気分だよ」

 

 だがねむの右手は——少年の背中を撫でていた。優しく。丁寧に。小さな肩甲骨の線を指先でなぞって、汗ばんだ首筋をそっと撫でて。手つきだけが——声よりもずっと——本物の母親みたいに温かかった。

 

「なかなか味わい深い物語の展開だったよ」

 

 ねむが少年のチンポから腰を上げた。ずるり、と小さなチンポが膣口から抜ける。結合部から透明な愛液がとろりと糸を引いた。

 

 少年はねむの胸にしがみついたまま、ぐったりと動かなくなっていた。目を閉じている。寝息が——聞こえる。子供の身体の限界を超えて搾り尽くされた少年が、ねむの胸の上で、すうすうと眠りに落ちていた。

 

 ねむは、その寝顔を見下ろした。

 

 瞳に、さっきまでの呆れも感心もなかった。名前のつかない表情。少年の寝顔を——数秒。数秒だけ、じっと見つめて。

 

 それから——自分の右手を見た。少年の背中を撫でていた手。指先に、子供の体温が残っている。

 

「……面白い実験だったよ」

 

 静かに、呟いた。声の温度が——ほんの少しだけ、下がっていた。冷えたのではない。沈んだのだ。何かを飲み込むように。何かに蓋をするように。

 

 ねむは小さく息を吐いて、目を伏せた。一拍。子供の体温を指先から振り払うように、ゆっくりと手を握り、開く。

 

 顔を上げたときには、表情が元に戻っていた。

 

 超然とした、柊ねむの顔に。

 

 和室が——溶け始めた。

 

 障子が光に透けて消えていく。畳がほどけて、い草の一本一本が光の粒子になって宙に散る。布団が沈んで、朝日が遠ざかる。少年の身体が——ぐにゃりと歪んで、引き伸ばされて、大人の輪郭を取り戻していく。

 

 世界が暗くなった。

 

 朝の温もりが消えて、代わりに——冷たい闇が、四方から押し寄せてきた。

 

 少年の姿が消えた。

 

 男の姿も——消えた。

 

 闇の中に、ねむだけがいた。裸のまま。重力を失って、宙に浮かんでいる。

 

 そして——闇の底から、何かが蠢き始めた。

 

 半透明の、ぬらりとした何か。光を帯びて、脈打って、無数に枝分かれしながら——ねむの白い裸体に向かって、触手が這い上がってくる。

 

◇ ◇ ◇

 

 暗闇に、ねむの身体だけが浮かんでいた。

 

 上も下もない空間だった。重力がない。方向がない。果ても壁もなく、どこまでも暗い闇が広がっている。その中に——裸のねむが、仰向けに漂っていた。白い肌が、暗闇の中で蒼白く浮かんでいる。薄茶の三つ編みが重力を失って、水中の海藻みたいにゆらゆらと宙に踊っていた。

 

 眼鏡のレンズが——闇の中で、自ら光を放つ触手の明滅を反射している。素肌ひとつで漂う身体に、それだけが涼しく光っていた。

 

 触手は、どこから生えているのか分からなかった。

 

 闇の底から。あるいは闇そのものから。半透明の紫がかった肉が、無数に枝分かれしながら、ねむの裸体に向かってゆっくりと伸びている。一本一本が腕ほどの太さで、表面はぬるりと濡れていて、内側から淡い光を発していた。脈動するたびに光が強くなって、弱くなって——心臓の鼓動みたいに、規則正しく明滅している。

 

 ねむは宙に浮いたまま、それを見下ろしていた。

 

「……なるほど、触手か」

 

 声は変わらなかった。暗闇の中でも——朝の和室にいた時と寸分違わぬ温度の、眠たげでゆったりとした声。

 

「ブルマ、ママプレイと来て、次が触手。きみ、エスカレーションの仕方がなかなか律儀だね。変態の階段を一段ずつ丁寧に昇っている」

 

 触手が、ねむの足首に巻きついた。

 

 ぬるり。温かくて、湿っていて、筋肉の収縮で締まったり緩んだりする。生き物の感触。触手の表面はなめらかに見えて、よく見ると——微細な吸盤が、びっしりと並んでいた。吸盤がねむの足首の肌にちゅぷちゅぷと吸い付いて、ほんのわずかに皮膚を引っ張る。

 

 もう一本が、反対の足首に。

 

 ぐいっ、と左右に引かれた。ねむの脚が大の字に広げられる。暗闇の中で——白い裸体が、磔のような形に拘束された。

 

「拘束か。……自由を奪っておいて、なお犯す。物語の構図としては王道だね。きみ、意外と文脈を読む力があるじゃないか」

 

 呆れている。でもその声に——体育倉庫の時とは違う響きが混ざっていた。感心。知的好奇心。触手の設計に、作家として興味を惹かれている。

 

 触手が増えた。

 

 足首の二本に加えて、手首にも一本ずつ。合計四本が四肢を固定して、ねむの身体を闇の中に十字形に広げている。そして五本目が——太腿の内側を、ゆっくりと這い上がってきた。

 

 吸盤が太腿の肌に吸い付きながら、膝の裏を通って、内腿を通って、股間へ向かう。温かい。触手の表面温度はねむの体温より少し高くて、肌に触れたところからじんわりと熱が染み込んでいく。

 

「触手一本一本がきみのチンポの感覚に直結しているんだね?」

 

 ねむの声が、闇に響いた。

 

 そうだった。男の身体は消えている。男の意識は——触手そのものに宿っていた。一本のチンポが数十本の触手に分裂して、すべてが男の感覚に直結している。触手がねむの肌に触れるたびに——チンポで触れているのと同じ感触が、男の意識に流れ込む。

 

「つまりきみは今、数十本のチンポで僕を同時に触っている感覚か」

 

 ねむは足首の拘束の中で、小さく身じろぎした。触手の締め付けを確認するように。

 

「……相当な変態だね。でもまあ、物語としては面白い。触手モノは古典だけど、『自分自身が触手になる』というのは一捻り効いている」

 

 六本目の触手が——ねむの首筋に巻きついた。

 

 柔らかく、締めすぎず。頸動脈の拍動を触手の吸盤が吸い取るように感じ取っていた。ねむの心拍が、触手を通じて——男の意識に伝わる。規則正しい鼓動。まだ落ち着いている。まだ乱れていない。

 

 七本目が胸に伸びた。薄い胸の上を横切って、乳首にたどり着く。先端が細く枝分かれして、蛇の舌みたいに——乳首の周囲をちろちろと撫で始めた。

 

「……んっ」

 

 ねむの呼吸が、わずかに深くなった。

 

「乳首への刺激は、さっきのママプレイで感度が上がっているね。……きみの触手、なかなかいいところを突いてくる」

 

 八本目が、反対側の乳首に。九本目が腹を這い、十本目が背中をなぞる。

 

 触手の愛撫は——丁寧だった。性急ではなく、一本ずつ、ねむの身体の表面を探るように。首筋の産毛を舐め、鎖骨のくぼみに吸い付き、脇腹をくすぐり、腰骨の上を滑る。ねむの裸体の地図を——一インチずつ作成するように。

 

「……触手が多い。数えるのが面倒になってきたよ。十本は超えたかな」

 

 ねむの声は保たれていた。だが——身体のほうが、少しずつ反応し始めていた。触手が肌を這うたびに、腹筋がぴくりと引き攣る。乳首に絡みついた触手が吸盤を脈動させると、呼吸のリズムがほんの少し速くなる。

 

 そして——太腿の内側を這っていた触手の先端が、おまんこに到達した。

 

 花弁に、触手の先端が触れた。

 

 ぬるり。温かくて、滑らかで、じっとりと湿った先端が——花弁を左右に押し開いて、膣口の縁を舐めるように一周した。

 

「……っ」

 

 ねむの腰が、かすかに震えた。

 

 同時に——背後から、もう一本の触手が尻の谷間を這い上がっていた。アナルの皺に先端が触れて、くるくると円を描くように撫で始める。

 

 そして口元——首筋に巻きついていた触手の枝が、ねむの唇の前まで伸びてきた。先端がぷにりと唇に触れて、開くのを待っている。

 

 三本が同時に——三つの穴の入り口で、待機していた。

 

「三穴同時か。……きみ、段取りがいいね」

 

 ねむは触手の先端を唇で感じながら、口の端で笑った。

 

「ブルマでは膣だけ、ママプレイでも膣と口。ここに来て全部同時。物語の構成としては正しいエスカレーションだよ。——でもきみ、これを全部のチンポで同時に感じるんだろう? 頭がおかしくならないか——」

 

 言い終わる前に——三本が、同時に入った。

 

 おまんこ。

 

 ずぷっ——と。触手が膣壁を押し広げて、奥へ奥へとぬるぬると滑り込んでいく。チンポとは質の違う感触。人間の竿のような硬さはなくて、代わりに——柔軟に形を変えながら、膣壁のひだの一つ一つに吸い付いて、粘膜を内側から撫で回していた。先端が子宮口に到達して、とんとん、とノックするように軽く叩く。

 

 アナル。

 

 にゅるっ——と。括約筋を押し開いて、触手が直腸に侵入する。排出器官に逆にねじ込まれていく背徳感。ぬるぬると滑る触手の表面が、腸壁を内側から膨らませながら、ゆっくりと奥へ進んでいく。

 

 口。

 

 唇の間に触手が滑り込んだ。舌の上を這って、奥へ。喉の手前で止まって——舌と絡み合うように、口腔の中でうねり始めた。ねむの舌が触手に巻きつかれて、唾液がじゅるりと溢れる。

 

 そしてクリトリスに——極細の触手が一本、するりと巻きついた。震動するように細かく脈動して、クリトリスの包皮越しにぶるぶると振動を送り込む。

 

「——く……っ、ん゙、ぅ……っ」

 

 歯を食いしばった隙間から、堪えきれない声が漏れた。ねむの全身が、一瞬だけ強張る。

 

 四箇所から同時に刺激が入っている。おまんこの触手が膣壁を撫で回し、アナルの触手が腸壁を押し広げ、口の触手が舌を絡め取り、クリトリスの触手が振動を送り込んでいる。四つの快感が——腹の中心でぐちゃぐちゃに絡み合って、ねむの背骨を駆け上がっていた。

 

 男の意識の側では——全能感が爆発していた。

 

 数十本の触手が、すべて自分のチンポの延長。ねむの膣壁に触れている感触も、腸壁の締め付けも、舌の温かさも、クリトリスの脈動も——全部が同時に、男の快感として流れ込んでくる。何十人もの自分が、ねむを同時に犯している。ねむの身体の穴という穴を、すべて自分の肉で埋め尽くしている。

 

 その全能感の中で——ねむの声が聞こえた。

 

「……ん、ぅ……。四箇所同時は……なかなか、処理が追いつかないね……っ」

 

 触手を口から吐き出して——唾液の糸を引きながら——ねむが喋った。口の触手は一旦退いて、ねむの頬の横で待機している。

 

「おまんこの触手は膣壁を撫でているだけで、まだ突いてはいないね。アナルのほうは……ん、直腸の壁を押し広げている。排出器官に何かが入ってくる感覚は独特だ。延々と排泄が続いているような……倒錯的な快感がある……っ」

 

「クリトリスの触手は……っ、ちょうど芯の根元を震わせてくる、ね。ここを抉られると……っ、僕の膣が、勝手に……っ、奥の触手まで一緒に締めつけてしまう……っ」

 

 言葉は続いていた。だが——語尾が、乱れ始めていた。息継ぎの位置がずれる。超然とした文語のリズムが、わずかに崩れ始めている。

 

 触手が、速度を上げた。

 

 おまんこの触手がピストンを始めた。膣壁の中で前後に動きながら、子宮口をぐりぐりと押し込む。アナルの触手も同調して、腸壁の中でうねりを増した。クリトリスの振動が、一段強くなる。

 

 口に触手が戻ってきた。唇を割って舌に巻きつき、今度は——喉の奥まで滑り込む。ねむの喉がこくりと動いた。嚥下反射。触手が喉を擦るたびに、涙腺が刺激されて目尻が潤む。

 

「——ん、んぅ……っ」

 

 くぐもった声。口を塞がれている。喋れない。実況が、物理的に封じられている。

 

 その間も——身体は反応し続けていた。膣壁が触手をきゅうきゅうと締め付ける。アナルが痙攣的に収縮する。太腿がぴくぴくと震える。白い肌のあちこちに鳥肌が浮いて、乳首が硬く尖っている。

 

 口の触手がずるりと退いた。唾液が糸を引いて、ねむの顎を伝い落ちる。

 

「……はぁっ……はぁ……っ」

 

 荒い息。一拍。二拍。呼吸を整えて——。

 

「っ……子宮口に到達した、ね。これは……っ、生理的反応として……っ、膣壁が勝手に——」

 

 触手が一際太くなった。おまんこの中で膨張して、膣壁を内側から圧し広げる。同時にクリトリスの振動が最大になり、アナルの触手が奥でぐるりと回転した。

 

「——っ♡」

 

 ねむの顔が歪んだ。瞳が大きく見開かれて、唇が震えて——だが、次の瞬間にはもう表情を取り繕っていた。眉間の皺を消して、唇を引き結んで。

 

「……身体が勝手に……っ。困ったな、僕の意志とは無関係に、こっちの身体は正直だ……っ」

 

 声に——亀裂が入り始めていた。涼しいはずの文語に、熱が混ざる。語尾の制御が効かなくなって、息が言葉を追い越し始めている。

 

 触手の動きが、さらに激しくなった。

 

 おまんこの中で触手が暴れている。膣壁を擦り上げ、子宮口を押し広げにかかる。アナルの触手と膣内の触手が、薄い壁一枚を隔てて並走して——ねむの内側を、二本の肉で挟み込むようにぐちゅぐちゅと蠕動していた。

 

 クリトリスの触手がぶるぶると震える。振動が骨盤に伝わって、腰が——ねむの意志とは無関係に、くねりと動いた。

 

「……ふ、ぅ……っ、あ……っ」

 

 堪えていた息が、甘く崩れた。ねむの喉から出る音が、快感に押し出された生の音に変わり始めている。

 

 眼鏡の奥の瞳が、触手の光を受けて潤んでいた。レンズ越しでも隠しきれないほどに——焦点が、わずかに揺らいでいる。

 

「……まあ、いい」

 

 ねむは一つ、震える息を吐いた。瞼を閉じて、開く。

 

「……続けよう」

 

 声は平坦に戻していた。だが瞳の湿度だけは戻らない。闇の中で、ねむの瞳が——剥き出しのまま、触手の動きを映し続けていた。

 

 触手たちは——ねむの強がりなど意に介さず、その身体を責め続けている。

 

---

 

 触手の速度が上がった。

 

 じわじわとではなく——一段。はっきりと、ギアが切り替わった。

 

 おまんこの触手がピストンの幅を広げた。膣口のきわまで引き抜いて——ずぷっ、と最奥まで叩き込む。子宮口を押し潰すように亀頭部分が膨らんで、ぐりぐりと子宮口をこじ開けにかかる。膣壁が悲鳴のように締まって、触手を搾り上げるのに——触手は構わず、さらに奥を目指す。

 

 アナルの触手も同期して、ストロークが深くなった。直腸の壁を内側からぐにゅりと押し広げるたびに、ねむの下腹がほんの少しだけ膨らむのが見える。おまんこの触手とアナルの触手が、薄い壁一枚を隔てて——同じリズムで、ねむの内側を交互に圧迫していた。壁の両面から同時に揉まれて、ねむの腸と膣が同時にきゅうきゅうと締まる。

 

 クリトリスの振動が——もう振動ではなかった。極細の触手が包皮の下に潜り込んで、剥き出しの陰核に直接巻きついている。陰核の根元—を、触手がぐりぐりと圧し上げていた。

 

 ねむの口が開いた。実況を再開しようとしている。

 

「……ぁっ、僕の膣壁が……っ、子宮口を押されて……っ、いや、これは……っ」

 

 言葉が途切れた。

 

「……芯の根元を弄られると……っ、腰の奥が、ひとりでに引き攣れて……っ、それが膣の中まで、波みたいに伝わって……っ」

 

 触手がさらに太くなった。

 

 おまんこの触手が、膣壁の限界まで膨張した。子宮口にめり込むように先端が押し込まれて——子宮口の縁が、ちゅぷ、と触手の先端を咥え込んだ。

 

 同時に。

 

 クリトリスの触手が、陰核を締め上げるようにぎゅっと絞った。

 

 アナルの触手が、腸壁の奥で——ぐるんっ、と大きく回転した。

 

 三箇所の刺激が、同じ瞬間に——最大値に達した。

 

「……………………っ♡♡」

 

 ねむの口が、開いたまま凍りついた。

 

 声が出ない。

 

 目が見開かれている。瞳が、焦点を失って虚空を見つめている。唇が震えて、喉が引き攣って——でも音にならない。身体だけが反応している。膣壁がぎゅうぅっと痙攣して触手を締め上げ、アナルが収縮し、全身の筋肉が一斉に強張って——。

 

 ねむが、絶頂した。

 

 声なき絶頂。身体が暗闇の中でびくんびくんと跳ねている。触手に拘束された四肢が痙攣して、指先が握り締められ、爪先が丸まっている。白い肌に汗が浮いて、触手の発光を反射してきらきらと光った。

 

 三秒。

 

 永遠のような三秒が過ぎた。

 

「…………っ……はぁ……っ、はぁ……っ」

 

 呼吸が戻ってきた。震える吐息。肺が動く音が聞こえそうなほどの、深い呼吸。

 

 ねむの瞳に焦点が戻った。ゆっくりと——暗闇と、自分を拘束する触手と、自分の裸体を認識し直す。

 

「……失礼」

 

 掠れた声だった。

 

「いまのは……っ、言葉が出なかった」

 

 息が荒い。でも——構文は崩れていない。文語の骨格が、まだ残っている。

 

「……こんなの、僕の小説でも書いたことないよ……っ」

 

 制御を離れた三秒間を、ねむは言葉で塗り直していた。声が途切れかけて——途切れなかった。喉から漏れそうになった生の音を、文語の構文が、すんでのところで掬い上げる。

 

 触手は——ねむの絶頂を気にしていなかった。

 

 速度を落とさず、ねむの身体を犯し続けている。絶頂で過敏になった膣壁を容赦なく擦り上げ、アナルの奥でうねり、クリトリスを震わせ続けている。

 

「……っ、まだ続くのかい……っ。きみの精力、触手になっても底なしだね……っ」

 

 ねむは喘いでいた。

 

「おまんこの触手が……っ、さっきより太い……っ。子宮口の内側にまで入ってきている……っ。これは……っ」

 

 声が途切れかけて——持ち直す。

 

「……うん……っ♡ なかなかの……っ、なかなかの刺激だよ……っ。僕の身体が二回目の絶頂に向かっているのが……っ、自分で分かる……っ」

 

 自分の絶頂を予告している。冷静に。震える声で。

 

 触手が——一斉に、速度を最大に引き上げた。

 

 おまんこ。アナル。口に再び侵入した触手。クリトリス。胸の乳首に絡みつく二本。首筋を締める一本。太腿を這い回る無数の細い触手。

 

 すべてが同時に——最大出力で——ねむの身体を責め立てた。

 

 ねむの実況が——加速した。

 

「っ、子宮口の中に……っ♡ 直接注がれたら……っ、僕は——……っ♡」

 

 言いかけて、ねむが口をつぐんだ。続きを——自分の口が紡ごうとした続きを、寸前で飲み込む。言葉が速い。息が追いつかない。実況しようとする意志と、実況を妨げる快感が——ねむの喉の中で激突していた。

 

「変態だね……っ♡ ここまで変態だと、もう呆れを通り越して……っ、僕は……っ♡」

 

 触手の全スリットが——同時に、脈動した。

 

 射精の予兆。男の意識が、数十本の触手を通じて——一斉に沸騰する。

 

「ん……っ♡♡」

 

 ねむの声が甘くなった。

 

「……僕も感心するよ……っ♡」

 

 触手が——射精した。

 

 全スリットから。同時に。

 

 どびゅるるッ——ごぷっ、ぶびゅぶびゅっ——。

 

 一本ではない。数十本が、ねむの全身でいっせいに脈を打つ。おまんこの触手が子宮の中に直接精液を注ぎ込んだ。子宮口の内側で触手が膨らんで、精液が子宮壁にびちゃびちゃと叩きつけられる。膣内の触手も同時に射精して、膣壁が精液で満たされていく。溢れた白濁が膣口から押し出されて、ねむの太腿を伝い落ちた。

 

 アナルの触手が腸内で射精した。腸壁に精液が塗りたくられて、ぐちゅぐちゅと音を立てる。排出器官に逆流する精液の圧力が、ねむの下腹をじんわりと内側から押し広げていた。

 

 口の触手が喉の奥で射精した。ねむが嚥下する——飲み込む。喉がこくり、こくりと動いて、口の端から飲みきれない精液がとろりとこぼれ落ちた。

 

 体表の触手が——ねむの肌の上で射精した。首筋に。胸に。腹に。太腿に。白い精液が暗闇の中でねむの白い肌を汚していく。触手の発光に照らされて——精液がとろとろと光っていた。

 

 ねむは精液まみれだった。

 

 中も外も。上も下も。三つの穴から精液を注がれ、肌の上を白い液体が流れ落ちていく。暗闇の中で、触手の光に照らされた精液まみれの少女が——宙に浮かんでいた。

 

 触手が射精した瞬間——ねむも、絶頂していた。

 

 二度目。さっきより長い。身体がびくんびくんと何度も跳ねて、膣壁が触手を搾り上げ、アナルが痙攣的に締まり、全身が痙攣の波に飲み込まれていた。

 

 その最中で——ねむの口が、動いた。

 

「……ん……っ♡♡」

 

 息を吸って。

 

「すごい量だね……っ♡ 僕の身体中、きみの精液だらけだ……っ」

 

 精液まみれの身体で。絶頂の痙攣が残る声で。涙と唾液と精液が入り混じった顔で——それでもなお。

 

「……子宮の中が……っ、あったかいよ……っ♡」

 

 言葉が、続いていた。精液まみれの喉から、震えながら、それでも。

 

 触手が、ゆっくりと引いていった。

 

 おまんこから。アナルから。口から。一本ずつ、ねむの身体から抜けていく。ずるり、ずるり、と。抜けるたびに穴の奥から精液がとろりと溢れて、暗闇の中を白い糸になって落ちていった。

 

 ねむは宙に浮いたまま——全身が精液にまみれた姿で——ゆっくりと目を閉じた。

 

 呼吸を整えている。荒い息が、少しずつ落ち着いていく。

 

「……むふっ」

 

 目を開けた。

 

 眼鏡の奥の瞳が——暗闇の中で、静かに光っていた。

 

「……なかなか、面白い物語だったよ」

 

 声は——もう、震えていなかった。

 

「きみの変態性は、正直に言って僕の想定を超えていた。ブルマ、ママプレイ、触手——三層かけてきみの妄想に付き合ったけど、僕を壊すには至らなかった。……でもまあ、きみの精液のおかげでソウルジェムはだいぶ潤ったよ」

 

 精液まみれの身体で——淡々と、総括している。

 

「さて」

 

 ねむが、闇の向こうに視線を向けた。

 

「きみの頭の中に——まだ続きがあるんだね」

 

 闇が、溶け始めた。

 

 触手の光が薄れていく。暗闇の密度が下がって、代わりに——柔らかな光が、どこからか差し込んできた。温かい光。人工の光ではなく、窓から漏れる自然光のような——。

 

「最後に何が来るのか、僕も少し興味がある」

 

 ねむの精液まみれの肌から——白い液体が、光の粒子に変わって消えていく。身体が清められていく。裸体が、触手の痕跡を一つずつ失って——元の、白くてなめらかな肌に戻っていく。

 

「……ちゃんと見届けてあげるよ。きみの妄想の、最後の一ページまで」

 

 闇が消えた。

 

 光が——ねむの裸体を包んだ。

 

◇ ◇ ◇

 

 本の匂いがした。

 

 最初の部屋と、同じ匂い。古い紙のインクと、乾いた埃と、どこかから漂うハーブティーの残り香。

 

 ねむの書斎だった。——いや、書斎とほぼ同じだが、少し違う。本棚はある。原稿用紙も散らばっている。でも机の位置が違う。壁の色が少し暖かい。そして部屋の中央に——ベッドがあった。シーツの白い、清潔なベッド。

 

 書斎と寝室を足して二で割ったような空間。現実のねむの部屋に限りなく近い——でも現実ではない。ウワサが創り出した、最後の部屋。

 

 窓があった。だが窓の外は見えない。白い光が差し込んでいるだけで、景色がない。時間の概念が希薄な空間。朝なのか夜なのか、分からない。分からないまま——穏やかな光が、部屋全体を柔らかく照らしていた。

 

 ベッドの上に、ねむがいた。

 

 魔法少女衣装。

 

 アカデミックドレスの深い紺色が、白いシーツの上で映えていた。角帽が薄茶の髪の上に載っていて、金色のタッセルが肩にかかっている。ドレスの裾から伸びた細い脚が、シーツの上に投げ出されていた。

 

 眼鏡はない。魔法少女の姿のときは、いつもそうだ。素顔の紫色の瞳が、ベッドの隣に立つ男を見上げている。

 

 男だった。

 

 三十路手前の、痩せ型で平凡な青年。ショタでも触手でもない、最初にねむの書斎に連れてこられた時の——そのままの姿。普通の身体。普通のチンポ一本。

 

 ねむは男を見上げて——微かに、目を細めた。

 

「……なるほど」

 

 呟いた。声は落ち着いていた。触手パートの荒い息は消えて、最初の書斎にいた時と同じ——眠たげで、ゆったりとした温度に戻っている。

 

「あれだけの変態を経て、最後に"普通"を選ぶ」

 

 ねむがベッドの上で身体を起こした。アカデミックドレスの裾が、シーツの上でさらりと広がる。

 

「ブルマ、ママプレイ、触手と来て、最後は——ただの子作りセックス。これが一番倒錯しているかもしれないよ。エスカレーションの果てに、原点に戻るというのは」

 

 ねむの口元に、笑みが浮かんでいた。煽りのない、からかいのない——この四層を通じて初めて見せる、静かな微笑。

 

「いいよ」

 

 柔らかな声だった。

 

「全部受け止めてあげる。きみの妄想、最初から最後まで、全部僕が引き受けた。……最後くらい、好きにしなさい」

 

 男の手が伸びた。

 

 震えていた。ねむの衣装に——角帽に、指が触れる。角帽をそっと持ち上げて、ベッドの横に置いた。金色のタッセルがさらりと揺れて、枕の横に落ちる。

 

 角帽の下から現れたのは、薄い茶色に編み込まれた髪。耳の脇の小さな団子も、垂れた三つ編みも、いつものまま。

 

 次に、アカデミックドレスの留め具。首元の小さな金具をひとつ外す。指が震えていて、なかなか外れない。ねむは何も言わず、男の指先を見つめていた。ふたつ目。みっつ目。よっつ目。留め具がひとつ外れるたびに、紺色の布地の隙間から——白い肌が覗いていく。

 

 ドレスがはだけた。肩から滑り落ちて、ねむの細い腕が露出する。鎖骨。薄い胸。ウエストの細さ。ドレスが腰まで落ちて——さらに、太腿まで。

 

 ねむは黙って、脱がされていた。

 

 自分からは動かない。男の手に任せている。いつもなら「ずいぶん手つきが拙いね」くらいは言うはずなのに——何も言わず、ただ紫の瞳で、男の顔を見上げていた。

 

 ドレスが足元に落ちた。下着はない。ねむの華奢な身体が、シーツの白の上に——裸で横たわっていた。

 

 男が、ねむの横に腰を下ろした。

 

 ベッドのスプリングがきし、と鳴った。二人の体重を受けて。

 

 ——ここには触手もない。ショタ化もない。ブルマもキャミソールもない。ただの男と少女がベッドの上にいるだけ。

 

 ねむの身体が、男の目の前にあった。

 

 華奢で、薄くて、小さい。さっきまで触手に全身を犯され尽くしたはずの身体が——ウワサの力で完全に元通りになっている。白くてなめらかな肌。小さな乳首。薄い陰毛の下の、淡いピンクのおまんこ。

 

 男が——ねむの身体をうつ伏せにした。

 

 ねむは抵抗しなかった。されるがままに身体を翻して、ベッドの上に四つん這いになる。

 

「バックか。……いいよ」

 

 短い言葉だった。煽りのない、許可の声。

 

 男がねむの背後に膝をついた。チンポが——普通の、人間のチンポが、ねむの尻の谷間に触れた。一本。ただの一本。触手の全能感は消えて、自分の身体ひとつで——この少女の中に入る。

 

 亀頭をおまんこに当てがった。

 

 花弁が——開いた。

 

 ずぷっ。

 

 入った。

 

 膣壁が竿を迎え入れて、ぎゅうっと包み込む。温かくて、滑らかで、きつくて——触手で犯された後だというのに、ねむのおまんこは、最初から男のために用意されていたかのように、チンポの形にぴったりと吸い付いてきた。

 

「……ん……っ」

 

 ねむの肩が、かすかに揺れた。声は小さい。

 

 男は腰を動かし始めた。ゆっくりと。触手の激しさとは対照的に——丁寧に、一往復ずつ、ねむの奥を確かめるように。

 

 ぬち……ぱん……ぬち……。

 

 肌のぶつかる音に、結合部の湿った音が一拍ずつ絡む。ベッドのスプリングが、リズムに合わせてきし、きし、と鳴った。本棚の本が、かすかに振動している。

 

 ウワサ空間の力が、男の身体を支えていた。射精しても萎えない。食事も水分も必要ない。ただねむだけを見て、ねむの中に精液を注ぎ続ける——それだけのために、この空間は設計されている。

 

「……ん、いま絶頂したね」

 

 ねむの声が、背中越しに聞こえた。男が最初の射精をした直後だった。

 

「……でもまだだよ。ほら、きみのチンポ、まだ硬いじゃないか」

 

 穏やかな声。確認だった。男のチンポが萎えていないことを、膣壁で感じ取って、報告している。

 

 男は腰を止めなかった。射精しながら——動き続けた。

 

 びゅくっ、びゅくっ——。

 

 精液が膣内に注がれるたびに、ねむの膣壁がきゅるりと締まる。受け止めるように。柔らかく。

 

 三発目の射精の後で、男はねむの身体をひっくり返した。

 

 仰向けに。

 

 ねむの顔が見える。素顔の——眼鏡のない、紫の瞳。汗がうっすらと浮いた額。薄茶の三つ編みがシーツの上に投げ出されている。瞳が、まっすぐに男を見上げていた。

 

 男がねむの両脚を持ち上げた。

 

 膝の裏に手をかけて、ぐっと押し込む。ねむの細い脚がたたまれて——身体がくの字に折り曲げられた。剥き出しの爪先が、男の肩の横で、きゅっと丸まる。

 

 種付けプレス。

 

 ねむの小さな身体が、男の下で——さらに小さく見えた。体格差が明白だった。華奢な肩。薄い胸。男の体重を受け止めるには脆すぎる骨格。それが今、男の身体の下に折りたたまれている。

 

「この体位は……っ」

 

 ねむの声が——揺れた。膝を胸まで押し込まれた姿勢では、チンポの角度が変わる。膣の天井を擦りながら——亀頭が、まっすぐ子宮口に突き刺さる。

 

「子宮に直接当たるね……っ♡」

 

 男が腰を振った。

 

 ぱんっ——。

 

 深い。バックの時とは比べものにならないほど深く、子宮口にチンポが叩きつけられた。ねむの身体がベッドに沈み込んで、スプリングが悲鳴を上げる。

 

「……っ♡ きみ、本当に僕を孕ませたいのかい」

 

 声が途切れかけて——持ち直す。瞳が潤んでいる。でも構文は崩れない。

 

「むふっ……。いいよ。全部注いで」

 

 ねむの手が——男の背中に回った。

 

 華奢な腕が、男の身体を抱え込む。引き寄せるように。もっと近くに。もっと深くに。

 

「全部僕が受け止めるから」

 

 どびゅっ——ぶびゅるるっ。

 

 射精した。種付けプレスの姿勢で——子宮口に亀頭を密着させたまま、精液がねむの子宮に直接噴き込まれた。逃げ場のない深さに、重い塊が叩き込まれる。

 

 ねむの腕に、力が入った。男の背中を抱く華奢な腕が——射精のたびに、ぎゅっと締まる。

 

「ん……っ♡♡」

 

 男は射精しながら——腰を止めなかった。ウワサの空間が精力を無限に供給し続けている。射精が終わる前に次のピストンが始まって、子宮口に精液を叩き込み続ける。

 

 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ——。

 

 何度も。何度も。

 

 ねむは一度も折れなかった。一度も弱音を吐かなかった。ただ——男の背中に腕を回したまま、射精のたびにぎゅっと抱きしめて。時折、男の耳元で——ほとんど息だけの声で、言った。

 

「……まだだよ」

 

「……もっと」

 

「……全部、出していいから」

 

---

 

 一日目が、終わった。

 

 終わった、という感覚があっただけで——窓の外に時間はなかった。光は変わらず柔らかいまま、部屋を照らし続けている。時計もない。日没もない。ただ、ねむの身体に注がれた精液の量だけが、時間の経過を示していた。

 

 何十回射精したのか、もう覚えていない。

 

 バック。種付けプレス。正常位。騎乗位。側位。対面座位。体位を変えるたびに膣壁の当たる場所が変わって、新しい快感が走った。でも変わらないのは——ねむの声だった。

 

「……ん、いま絶頂したね」

 

 同じ言葉が、少しずつ温度を変えながら——繰り返された。

 

 第1層で射精をカウントしていた時の涼しさは、もうない。代わりに——穏やかで、温かくて、男の射精を確認することが——どこか嬉しそうな声色。

 

「……まだ硬いね。きみのチンポ、本当に元気だ」

 

 感心だった。いや——信頼に近い何か。きみはまだ出せる。だから出していい。僕が受け止めるから。

 

 二日目。

 

 ねむは男の上に跨っていた。騎乗位。男は仰向けで、ねむの顔を見上げている。

 

 ねむの顔が——変わっていた。

 

 ただ——まっすぐに、男を見ている。

 

 男の顔を。男の目を。男のことだけを。

 

「何十回目だろうね」

 

 ねむがゆっくりと腰を動かしながら、呟いた。

 

「数えるのをやめたよ。……でもきみはまだ、元気だ」

 

 腰の動きは丁寧だった。搾り取る騎乗位ではない。繋がったまま——ゆっくりと腰を揺らして、お互いの感覚を確かめ合うような動き。

 

 ぬちゃ、ぬちゃ——と粘った音が、肌のぶつかる音より大きいくらいだった。注がれ続けた精液が、腰の動きのたびにかき混ぜられている。ベッドのスプリングがきし、きし、と鳴る。本棚の本が、微かに震えている。

 

 どぴゅっ——。

 

 射精した。何十回目かの。もう驚きも焦りもない。当然のように精液が子宮に注がれて、当然のようにねむの膣壁がきゅるりと受け止めて、当然のようにチンポは萎えず——次の射精に向けて、また腰が動き始めた。

 

「……注がれて、嬉しいよ」

 

 ねむの声が——どこまでも穏やかだった。

 

 三日目。

 

 体位を何度変えたか分からない。正常位で何回射精して、バックで何回射精して、騎乗位で何回射精したか。個々の射精の区切りが——もう溶けていた。ひたすら繋がっていた。入れて、出して、また入れて。精液が膣内に溜まっていく。溢れて、太腿を伝って、シーツに染みを作って——それでも子宮はまだ受け入れ続けている。

 

 ただ——ねむと繋がっている時間だけが、永遠のように引き伸ばされている。

 

 三日目の——いつか。

 

 正常位で繋がったまま、男はねむの顔を見下ろしていた。

 

 ねむの瞼が——とろん、と落ちかけた。

 

 最初、男は気づかなかった。ピストンを続けていた。膣壁がきゅうきゅうと竿を締め付ける感触は変わらない。でも——ねむの腕の力が、すこしだけ緩んだ。男の背中を抱いていた華奢な腕が、力を失うようにずるりと下がった。

 

「……ねむ?」

 

 返事がなかった。

 

 男が腰を止めて、ねむの顔を覗き込んだ。

 

 紫色の瞳が——閉じていた。

 

 長い睫毛が頬に影を落としている。唇が薄く開いて、そこから——すう、すう、と。小さな寝息が、漏れていた。

 

 ねむが、眠っていた。

 

 チンポを膣に入れたまま。男の体重を受けたまま。三日間——ずっと冷静に実況し続けて、一度も折れず、一度も弱音を吐かなかった少女が——そのまま、意識を手放していた。

 

 男は動けなかった。

 

 眠っているねむの顔を、見下ろしていた。

 

 素顔の、さらに奥。

 

 言葉もなく、分析も実況もない——ただ眠っている少女が、そこにいた。

 

 呼吸に合わせて、薄い胸がかすかに上下している。薄茶の三つ編みがシーツの上に投げ出されて、汗で額に貼りついた後れ毛が、寝息のたびにふわりと揺れる。口元の力が完全に抜けていて——眉間の皺もなくて——起きている時には絶対に見せない、無防備な顔。

 

 男の胸の上に——いつの間にか、ねむの頭が乗っていた。結合したまま。チンポは膣の中で半勃ちのまま温められていて、射精の残り香が膣壁にじんわりと染み込んでいる。男の心臓の音が、ねむの耳に——直接、伝わっているはずだった。

 

 男は手を伸ばした。

 

 ねむの髪に触れた。薄い茶色の後れ毛を、そっと梳く。汗で少しだけ湿った髪が、指の間をさらさらと流れていく。

 

 眠っている。この男の腕の中で。言葉を手放して、いちばん柔らかい腹を、無防備に晒して。

 

 三日三晩、男のすべての妄想を受け入れ続けた少女が——最後に、男の胸の上で、すうすうと寝息を立てている。喘ぎでも実況でもない、ただの寝息を。

 

 男は、ねむの髪を撫で続けた。長い時間——時計のない部屋で、永遠か一瞬か分からない時間——ねむの寝息だけを聞きながら。

 

---

 

 ねむの瞼が、開いた。

 

 瞳が、ぼんやりと——男の顔を映した。

 

「…………」

 

 数秒。焦点が合うまでに、三秒かかった。

 

 唇の端が、持ち上がった。

 

「寝落ちしたのかい、僕が」

 

 掠れた声だった。眠りから覚めたばかりの、温かくて柔らかい声。

 

「……物語の途中で意識を飛ばすなんて。不覚だよ」

 

 叱責ではなかった。自分を叱っているようで——声は穏やかで、どこか安心した色を帯びていた。ねむ自身が、自分が眠れたことに——少し驚いて、少し安堵している。

 

「……どれくらい寝ていた?」

 

「わからない」

 

 男の声は、掠れていた。ずっと黙っていたから。ねむが眠っている間、一言も発さなかった。

 

「そう。きみも分からないか」

 

 ねむは男の胸から頭を上げて、自分の身体を見下ろした。

 

 ——そして、目が止まった。

 

 お腹が、膨らんでいた。

 

 薄くて平坦だったはずのねむの腹が——明らかに、丸く膨らんでいる。妊婦のように。白い肌の下で、丸い輪郭が盛り上がって、おへそがほんの少しだけ押し出されていた。

 

 妊娠なのか、それとも三日三晩注ぎ込まれ続けた精液が溜まりすぎているのか。——ウワサの空間の中では、現実の区別がつかない。

 

 ねむは自分のお腹に、手を当てた。

 

 膨らみを——細い指で、そっと撫でる。

 

「……僕のお腹、ずいぶん膨らんだね」

 

 声が——揺れなかった。震えなかった。でもいつもの超然ともまた違う。もっと——柔らかい温度。

 

「きみの精子でいっぱいだ。妊娠しているのか、精液が溜まりすぎているのか、正直わからないけど」

 

 指先が、お腹の丸みを辿っている。上から下へ。おへそを中心に、小さな円を描くように。

 

「どちらにしても、きみのせいだよ」

 

 笑っていた。声の中に——嫌悪も呆れもなかった。

 

 男の手が、ねむの腹に——重なった。

 

 ねむの手の上に、男の手が乗る。膨らんだお腹を、二人の手で——触れている。

 

 ねむは男の手を見下ろした。それから——男の顔を。

 

 何も言わなかった。

 

 何も言わない代わりに——ねむの指が、男の指の間に、するりと滑り込んだ。膨らんだお腹の上で、指を絡めた。

 

 静かだった。本棚の本。散らばった原稿。窓のない窓から差す光。二人の呼吸だけが、部屋を満たしている。

 

「……最後に、しようか」

 

 ねむが言った。

 

 男が頷いた。

 

 正常位。ねむが仰向けになって、男がその上に覆いかぶさる。膨らんだお腹を潰さないように——男が腕で身体を支えて、ゆっくりとチンポを入れた。

 

 ずぷ、と。もう何十回繰り返したか分からない挿入。でもこの一回は——最後だと、お互いが分かっていた。

 

 ゆっくりと腰を動かした。

 

 ずちゅ……ぬちゅ……。

 

 三日分の精液を孕んだ結合部が、静かなピストンでも湿った音を立てる。ねむの膣壁が、竿を柔らかく包んでいた。搾り取る力はない。ただ——温かく、穏やかに、男のチンポを歓迎している。

 

 ねむの瞳が、男の瞳を見つめていた。

 

 紫色の瞳。素顔の——裸の瞳。三日三晩の行為を経て、何層もの妄想を潜り抜けて——今、この瞬間のねむの目には、分析も実況も煽りも呆れもなかった。

 

 ただ——見ている。男を。

 

「……ん……っ♡♡」

 

 ねむの声が、漏れた。小さく。甘く。最後の♡が——この作品を通じて、いちばん柔らかかった。

 

 男の射精が、来た。

 

 最後の一発。下腹がぎゅうっと収縮して——竿の奥から、熱い塊がせり上がって——亀頭の先端から、ねむの子宮に——。

 

 びゅるる——っ。

 

 静かな射精だった。注ぎ込む。ゆっくりと、丁寧に、最後の一滴まで。ねむの子宮口がちゅう、と吸い上げて、精液を残らず受け止めた。

 

 ねむの腕が、男を抱きしめた。

 

 今までのどの抱擁よりも——静かで、強かった。華奢な腕が男の首に回って、引き寄せて。ねむの唇が、男の耳元に触れた。

 

「ん……っ♡♡」

 

 息を吸って。

 

「……最後の、射精だね」

 

 囁くような声。

 

「……うん。あったかい」

 

 呼吸がひとつ。

 

「……きみの精液、全部僕の中だ。子宮があったかいよ。……ありがとう」

 

 ねむは。男の背中に腕を回したまま——膨らんだお腹を男の体温で温めながら——目を閉じた。

 

 最後の射精の余韻が、二人の身体の隅々まで染み渡っていく。ねむの膣壁がチンポを優しく包んだまま、きゅう、きゅう、と——子守唄みたいに、ゆっくりと脈打っていた。

 

 窓のない窓から差す光が——少しだけ、明るくなった気がした。

 

◇ ◇ ◇

 

 本の匂いがした。

 

 三度目の——同じ匂い。古い紙のインクと、乾いた埃と、ハーブティーの残り香。今度は本物だった。ウワサの具現化ではない、本物の書斎。

 

 世界が、元に戻っていた。

 

 壁一面の本棚。背表紙がぎっしりと詰め込まれている。机の上には書きかけの原稿用紙が扇状に散らばって、万年筆が蓋を外したまま転がっていた。角帽が椅子の背にかけてある。金色のタッセルが、微かに揺れた。——この部屋に、最初に来た時とまったく同じ光景。

 

 ねむの身体は完全に元通りだった。

 

 腹ボテも消えている。精液も。傷一つない。髪型も元通り。薄い茶色の髪がきちんと編み込まれて、団子と三つ編みが、いつもの位置に戻っている。

 

 超然とした、柊ねむの顔が、戻っていた。

 

 ねむは魔法少女服のまま。何事もなかったかのような手つき。三日三晩、あらゆる体位で犯され続けた身体が——嘘みたいに涼しい顔で、日常の所作を再生していた。

 

 男は床に倒れていた。

 

 ぐったりと。四肢を投げ出して、天井を見上げている。ウワサの空間では無限の精力が与えられていたが——現実に戻った途端、その反動が全身に押し寄せていた。筋肉が鉛みたいに重い。指一本動かすのがやっとだった。

 

 ねむが角帽を手に取った。椅子の背から外して、頭に載せる。紐の位置を直す。紐に埋め込まれたソウルジェムが——。

 

 まばゆく、輝いていた。

 

 最初に見た時の、あの濁った色が嘘のように。透き通った紫色の宝石が、窓からの光を受けて、部屋中にプリズムのような虹を散らしている。

 

「……うん。ソウルジェムがぴかぴかだ」

 

 ねむが宝石を指先で撫でた。満足そうに——でもあくまで「実験結果に対する満足」の温度で。

 

「ウワサの維持に使った魔力を差し引いても、お釣りが来るよ。協力に感謝する」

 

 ねむは机に向かって、何かを書き始めた。

 

 万年筆のペン先が、原稿用紙の上を走る。さらさらと。迷いのない筆致。実験メモではなかった。——文体が違う。物語の筆致だ。あの三日三晩を——小説のネタとして、書き留めている。

 

「きみの妄想、なかなか面白い題材だったよ」

 

 万年筆を走らせながら、男のほうを見もせずに言った。

 

「——小説のネタにさせてもらうからね。フィクションとして」

 

 ぺら、と原稿用紙をめくる。

 

「むふふ」

 

 笑い声が漏れた。ねむの口癖の、あのニヒルな笑い。書きたいことが溢れている時の——作家の笑みだった。

 

 男は床に倒れたまま、ねむの背中を見ていた。

 

 角帽。三つ編み。アカデミックドレス。万年筆。——最初にこの部屋に連れてこられた時と、何も変わっていない。あの華奢な文学少女が、同じ椅子に座って、同じ姿勢で、原稿用紙に向かっている。

 

 まるで何もなかったみたいに。

 

 でも——ソウルジェムだけが、輝いていた。

 

「……また、実験してもらえますか」

 

 掠れた声で、言った。喉がからからだったが——言わずにはいられなかった。

 

 ねむのペンが、止まった。

 

 振り返らない。背中を向けたまま、数秒の間が空いた。

 

「体力をつけることだね」

 

 平坦な声だった。

 

「三日三晩も付き合える体力があるなら、考えてあげるよ」

 

 ぺら。原稿用紙をめくる音。万年筆が再び走り始める。

 

 それから——ぼそりと、付け加えた。

 

「……次はどんな変態妄想を見せてくれるのか」

 

 ペンが止まった。

 

 ねむが——ほんの少しだけ、肩越しに振り返った。

 

 角帽のつばが落とす影が、ねむの目元にかかっていた。口元だけが見える。その口元に——ほんの微かな笑みが浮かんでいる。

 

「僕も少し楽しみにしている。……むふふっ」

 

 笑みの正体は、見えなかった。帽子の影が、紫色の瞳を——最後まで隠していたから。

 

 ねむは前を向いた。

 

 万年筆が走る音だけが、書斎に響いた。さらさら、さらさら。規則正しく、迷いなく。積まれた本の隙間から午後の陽光が差し込んで、埃の粒子が光の中をゆっくりと漂っている。

 

 男は床に倒れたまま——ねむの背中を、見つめ続けていた。

 

 三つ編みの毛先が、原稿用紙の上に触れている。さっきまでその髪を——指で梳いて、乱して、汗で額に貼りつかせていた。今はまた、きちんと編み込まれている。何事もなかったように。

 

 でも。

 

 ソウルジェムが——窓からの光を受けて、部屋中に虹を散らし続けていた。

 

 あれが現実だった証。

 

 あの三日三晩が——夢でも妄想でもなく、確かに、この少女の身体の上で起きた出来事だったという、唯一の証。

 

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