搾精都市神浜~魔法少女たちのエッチな短編集~ 作:黒蓮/クロハス
里見メディカルセンターの自動ドアが開いた瞬間、消毒液のかすかな匂いが鼻腔を擽った。一ヶ月前と同じ匂い。同じ白い廊下。同じ案内プレート。
でも、足取りは全然違っていた。
前回は鉛を飲んだみたいに重かった足が、今日は羽が生えたみたいに軽い。早足。ほとんど小走り。受付に保険証を出す手も震えていない——いや、震えてはいるのだが、その震えが恐怖からではなく、期待からだということを、青年は自覚していた。
泌尿器科の奥。廊下の突き当たり。控えめな案内プレート。
早漏改善クリニック。
胸ポケットに指を差し入れる。一ヶ月前にもらった予約カードがそこにある。財布ではなく、心臓の上に入れた。あの日からずっと。洗濯のたびにポケットから出して、また戻して。角が少し丸くなっている。
個室の待合室に通された。前回と同じ椅子。同じ壁掛け時計。秒針がカチカチと鳴っている。
一ヶ月。
たった一ヶ月なのに、あの日のことは毎日思い出した。
いろはの笑顔。皮を剥かれた亀頭に舌が触れた瞬間の衝撃。手コキで何度も暴発して、シャーレに精液が並んでいったこと。コンドーム越しでも脳が溶けたおまんこの感触。生ハメの射精チートデイで泣きながら腰を振ったこと。子宮口に精液を吸い上げられた、あの——。
——やめろ。思い出すな。ここで勃起したら終わりだ。
遅かった。ジーンズの中で、もうチンポが膨らみ始めていた。
あれから、生活は少し変わった。何かに前向きになれるようになった。夜、布団の中で「来月もあの人に会える」と思えるだけで、翌朝の目覚めが違う。大学の講義にも出られるようになったし、バイトの面接にも行った。
ただし。
早漏は——治っていなかった。
むしろ悪化している気がする。オナニーのとき、環さんのことを考えると秒で出る。フェラの感触を思い出しただけで射精する。おまんこを想像しようものなら、オナホールに入れた瞬間に終わる。あの日の前は二十秒くらい持っていたのに、今は十秒もたない。
——環さんのせいだ。環さんのおまんこが気持ちよすぎたせいだ。
そんなことを考えていたら、ドアが開いた。
「お待たせしました。どうぞ、こちらへ」
受付の女性に案内されて、診察室の白い扉の前に立つ。深呼吸をひとつ。扉を開けた。
◇ ◇ ◇
——いた。
デスクの前に立って、カルテに目を落としている。ピンク色のナース服。膝の少し上の丈で、ウエストがきゅっと絞られて裾が軽く広がっている。頭にナース帽。白い十字マーク。右側の一房が三つ編みになって胸元に垂れて、薄いピンクの前髪の下から——桃色の瞳。
環いろは。
一ヶ月前と、何も変わっていない。変わっていないのに、記憶の中の像より何倍も綺麗に見えた。
「おひさしぶり」
いろはがカルテから顔を上げて、にこりと笑った。
「元気だった?」
——声が、甘い。一ヶ月ぶりに聞くいろはの声は、記憶の中で何度も再生した音声よりもずっと生々しくて、柔らかくて、鼓膜から脊髄まで一直線に落ちてきた。
「あ——は、はい、元気、です……お、お久しぶり、です……っ」
噛んだ。声が裏返った。でもいろはは気にした様子もなく、ベッドの端を手で叩いて座るよう促す。
「今日も頑張ろうね。まず、この一ヶ月のことを聞かせてもらっていい?」
いろはがデスクの椅子に座り直して、カルテにペンを構えた。健康診断の問診みたいな雰囲気。でも、聞かれる内容は健康診断では絶対にない。
「おちんちんの調子、どうだった?」
——来た。
体温を測るような声色で、いろはの唇から「おちんちん」が出る。一ヶ月ぶりのその違和感に脳がバグる。ここはそういう場所だ。わかっている。わかっているのに慣れない。
「あ、あの……その……」
「うん」
「オ、オナニーのときに……その、環さんのことを、思い出すと……前より、早く出ちゃうようになっちゃって……」
顔が熱い。耳まで赤いのが自分でわかる。世界一恥ずかしい告白を、世界一綺麗なお姉さんにしている。
「ふふ」
いろはがペンを止めて、少し首を傾げた。前髪がさらりと揺れる。
「それは早漏が悪化したんじゃなくて、おちんちんが気持ちいいことを覚えたってことだよ」
カルテに何かを書き込みながら、穏やかに続ける。
「いいことだね。ちゃんと反応できてるってことだから」
——褒められた。オナニーで環さんのことを考えて秒で射精してしまうことを、いいことだと言われた。この人の価値観はどうなっているのか。いや、これが医療従事者としての正しい対応なのか。もうわからない。
「自宅でのトレーニングはやってくれた? 前回お渡ししたオナホール、使った?」
——練習用オナホール。前回の診療後に「自宅トレーニング用」として渡されたものだ。透明なケースに入った医療用のフォーム素材で、小さな冊子——射精コントロールのトレーニングメニュー付き——が同封されていた。受け取ったとき「これでお家でも練習してね♡」と言われて、帰り道にずっとそのことだけ考えていた。
「は、はい、使いました。でも……環さんのおまんこと全然違くて、オナホだと普通に三分くらい持つんですけど……」
しまった。環さんのおまんこ、と口走ってしまった。
いろはは表情を変えなかった。
「うん。そうだよね。オナホールはあくまで基礎トレーニング用だから」
ペンをくるりと回しながら、何でもないことのように。
「実際のおまんこは——もっと、いろいろ動くからね」
いろいろ動く。その六文字に込められた膨大な情報量。あの名器おまんこの、見えない手に亀頭を掴まれて、螺旋に揉みしだかれて、子宮口に吸い付かれて——あの「いろいろ」を、たった六文字で言い切った。
「射精の回数は? 一日何回くらいしてた?」
「に、二回か三回……多い日は、四回……」
「ちゃんと出してるんだね。溜めすぎると訓練に支障が出るから、いいペースだと思うよ」
完全に問診のテンションだった。心拍数を聞くのと同じ温度で、オナニーの頻度を褒めている。このクリニックの異常さを、改めて思い知らされる。
いろはがカルテを閉じて、立ち上がった。
「今日も前回みたいに、いろんなトレーニングをしていくからね。ちょっと新しいメニューも入れてみるよ」
「あ、新しい……?」
「うん。でも怖くないから。楽しいやつだよ」
楽しい。楽しい、という形容詞が何を意味するのか、この部屋では想像がつかない。
「が、がんばります……!」
青年はベッドの上で拳を握った。
「環さんのためにも、本気で早漏改善に取り組みます。どんな辛い訓練にも耐えてみせます……!」
声が上擦っている。でも、目は据わっていた。一ヶ月間、この日を待っていた目。あの笑顔に恥じない自分でありたいと思っていた目。
いろはがその真っ直ぐな視線を受けて——にこりと、笑った。
「うん。いっしょに頑張ろうね♡」
あの微笑み。底の知れない、けれど温かい。注射を怖がる子どもを安心させるような——一ヶ月間ずっと追いかけていた、いろはの笑顔。
第二回早漏改善クリニック。
開始。
◇ ◇ ◇
「じゃあ今日も、まずは計測からだね」
いろはが医療ワゴンからシルバーのストップウォッチを取り上げた。親指でカチカチとボタンを試し押しする。その手慣れた仕草を見るだけで、一ヶ月前の記憶が鮮明に蘇ってくる。
「前回と同じようにやるから、リラックスしてね」
前回と同じ。
前回——三・四秒。舌が亀頭に触れて、裏スジをクニクニと攻められて、バキュームで全部吸い上げられて、計測終了。開始から終了まで、三・四秒。レベル5。最重度。
あの衝撃は、一ヶ月経っても薄れていなかった。むしろ記憶の中で熟成されて、思い出すたびに強くなっている。
「おちんちん、見せてもらえるかな」
いろはが当たり前のように言った。
ベルトを外す。ボタンを外す。チャックを下ろす。一ヶ月前と同じ手順を、一ヶ月前よりずっと速くこなしている自分がいた。ジーンズを太腿まで下ろして、ボクサーパンツに手をかける。
パンツの中では、もうとっくに勃起していた。いろはの顔を見た瞬間から、ずっと硬くなっている。待合室で思い出し勃起した分と合わせて、チンポはもう限界近くまで張り詰めていた。
パンツを下ろす。
ぱつん。
チンポが跳ね上がった。仮性包茎。皮が亀頭の半分を覆ったまま、竿がびくびくと脈打っている。先端から我慢汁がとろりと滲んで、空気に触れた粘膜がひくりと震えた。
「うん。今日も元気だね」
いろはがスツールに座り直して、チンポの正面に顔を持ってきた。ナース帽の下の桃色の瞳が、まっすぐにチンポを見つめている。
「亀頭さんが出たそうにしてるね。先に皮を剥いちゃおっか」
いろはの左手が、チンポの根元にそっと触れた。
びくっ。
その指の温度だけで腰が跳ねる。一ヶ月ぶりの、自分の手以外の感触。いろはの細い指が竿に添えられて、もう片方の手の親指と人差し指が皮の縁にかかった。
にゅるっ。
ローションも使わずに、ゆっくりと皮を下へ引いていく。粘膜と皮膚の境界を指先の感覚だけで正確になぞりながら、一ミリずつ亀頭を露出させていった。何百本もの皮を剥いてきた手。迷いがない。
ぷるん、と亀頭が全部出た。
綺麗なピンク色。空気に触れて、ひくひくと脈打っている。先端からとろりと我慢汁が垂れて、いろはの指を伝い落ちた。
「ちゃんと洗ってきてくれたんだね。えらい」
いろはが亀頭を覗き込むように目を細めた。
「おちんちんもしっかり勃ってくれてるし、前回より元気かも」
——褒められている。仮性包茎の早漏チンポを。洗ってきたことを。勃っていることを。この人は、男のチンポのあらゆる状態を肯定してくれる。
「じゃあ、計測始めるね」
いろはの右手がストップウォッチを握り、左手がチンポの根元を軽くつまんだまま——顔を、近づけた。
吐息が亀頭にかかる距離。桃色の前髪の隙間から、舌先がちろりと覗いた。
べっ。
いろはが舌を出した。ピンク色の舌が、まっすぐに伸びて、チンポに向かって迫ってくる。
——この光景だけで射精できる。
前回もこうだった。舌が伸びてくるのを見ただけで、下腹に精液が準備される感覚があった。でも、今回は——。
青年は、腰を引かなかった。
一ヶ月間、ずっと考えていた。前回の検査で三・四秒で終わった原因。舌の刺激に耐えきれずに腰を逃がした——そこを追撃されて、詰んだ。逃げたから、追いかけられた。
なら、逃げなければいい。
お尻の穴にぐっと力を込めて——チンポを、突き出した。
快感に真っ向から向かっていく。逃げない。受け止める。怖い。でも、これが自分なりの答えだった。
カチ。ストップウォッチが押された。
いろはの舌先が、亀頭のカリに触れた。
ぬるり。
舌が尖った形のまま、亀頭の外縁に沿って時計回りに滑り始める。皮を剥かれたばかりの敏感な粘膜の上を、唾液の膜をまとった舌先がゆっくりと一周する。十二時の頂点から三時を過ぎ、カリの段差をなぞりながら、六時の方向へ——。
裏スジ。
ぴたり。
舌が止まった。亀頭裏の窪み。男にとって最も敏感な、チンポの泣き所のど真ん中に、舌の先端がぴったりと嵌まる。
くにっ。
くにくにっ。
ちろ、ちろ、ちろ——。
ピンポイントで、精密に、裏スジの一点だけを抉る。男の射精のメカニズムを暗記しているかのような、寸分の狂いもない舌使い。
前回は——ここで終わった。この刺激で脳から射精の予約が入って、腰が逃げて、追撃されて三・四秒。
今回、青年は腰を逃がさなかった。
歯を食いしばった。お尻の穴に全力で力を入れて、チンポをいろはの舌に押しつけた。裏スジをクニクニされる快感が、真正面から脊椎を駆け上がってくる。逃げ場はない。全部受け止めている。全部——。
いろはの舌が、一瞬だけ止まった。
「——ん」
ちいさく、チンポを咥えかけた口の中で声が漏れた。
「いいね、それが正解だよ」
少し——嬉しそうに聞こえた。
だが、それは罠だった。
青年がチンポを突き出したその瞬間を、いろはは最初から読んでいた。
すかさず、左手が動いた。
根元を軽くつまんでいた指が、きゅっと竿全体を握り込む。親指の腹が睾丸の裏に滑り込んで、軽く——本当に軽く、圧をかける。同時に、根元を握った指が皮を竿の付け根方向に引き寄せて、剥き出しの亀頭をさらに剥き出しに——逃げ場を、完全に潰した。
チンポが一気に充血した。亀頭がぱんぱんに膨らんで、表面の粘膜が薄く引き伸ばされる。裏スジの窪みが浅くなって、その分だけ舌先の圧が直接神経を叩くようになった。
空気が亀頭に触れるだけで射精に直結するような、超過敏状態。
たった一動作。根元を握っただけ。それだけで、青年のチンポは完全に丸裸にされた。勇気を出して突き出したチンポが、いろはの手の中で丸腰にされている。逃げないことを選んだ結果、逃げる選択肢ごと奪われた。
これが——何百本ものチンポを射精させてきたトレーナー環いろはの絶技だった。青年が一ヶ月かけて考えた作戦を、いろはは最初の一動作で上書きした。レベルが、違いすぎる。
そして。
まさに——今この瞬間に亀頭を咥えられたら全てが終わるという、そのタイミングで。
ぱくっ♡
いろはの唇がチンポを呑んだ。
(あ、詰んだ)
亀頭が口腔の中に吸い込まれる。舌が裏スジに貼りついたまま、唇がカリの段差を乗り越えて竿を含む。温かい。湿っている。そして——舌が、動き始めた。
ちろっ、ちろっ、ちろっ——。
裏スジを最優先に、舌先が上から下へ高速で往復する。電動のような精密さ。人間の舌とは思えない速度で、一番感じるポイントだけを正確に、正確に、正確に狙い打ち続ける。
ぐるっ♡
かと思えば舌が亀頭の先端に回り込んで、尿道口のまわりを円を描くようにぐるぐると舐め回す。ぐるぐる、ぐるぐる——亀頭の表面をくまなく舌でコーティングしながら、ちゅぱっ♡と軽く吸引。唇がきゅっと窄まって、亀頭全体に甘い圧がかかった。
男を最短最速で射精させるための、完璧な動作。
いろはが何年もかけて研鑽した——男を射精に導くための、最適解。
勇気を出してチンポを突き出したはいいが、とんでもない快感が返ってきた。逃げないと決めたせいで、全部真正面から受け止めてしまっている。腰を引いていた前回より、快感の純度が高い。混じりけなく、全量が脊椎を通って脳を灼いた。
射精感が——来る。
来た。
下腹の奥で堰が切れるような感覚。精液が尿道を駆け上がり始める。止められない。もう確定した。
チンポの震えを、いろはの舌が感じ取った。
——その瞬間、いろはは射精より先に動いた。
搾精モード。
じゅるっ♡
口腔全体で亀頭をバキュームする。頬がきゅっと窪んで、唇が竿に密着し、舌先が——硬く尖って鈴口をグリグリとこじ開けるような動きを始めた。尿道の入り口を舌でほじるような、ダイレクトすぎる刺激。
同時に、根元を握っていた手が動いた。
ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ——。
竿を高速で扱き上げながら、精嚢から込み上げる精液を先端まで送り届けるように、リズミカルに搾り上げる。口と手が完全に同期して、チンポの内側と外側から射精を引き出しにかかっていた。
じゅるっ♡ ちろちろちろっ♡ じゅるるっ♡
フェラの水音が静かな診察室に響く。湿った、生々しい、粘膜と粘膜が擦れ合う音。その音の中心で、チンポが降伏した。
「あっ——で、出ますっ、出っ——」
射精。
そこからの数秒が、天国だった。
通常の射精とは何もかもが違った。ドピュッ、ドピュッ、と脈動に合わせて精液を放つのではなく——ビッビッビッビッビッと、射精の脈動を無視して精液が吸い上げられていく。いろはの口が、尿道から直接精液を引き抜いている。自分で出しているのではなく、抜かれている。
尿道の中を精液が凄まじい速度で流れていく。管の内壁を精液が擦る刺激が、快感として脊椎を焼く。腰の中身が全部——精液も、精液じゃないものも、何もかも持っていかれるような、抜き取られるような射精。
「あ——あぁっ、ぅ、あ゙……っ——」
声にならない悲鳴。歯の根が震える。目尻に涙が滲む。
カチ。
ストップウォッチの停止音。
いろはの吸引が、ぴたりと止まった。
チンポの根元をキュッと握り直す。射精の勢いが堰き止められたように急停止して、尿道に残った最後の精液が——ちゅぽん♡ と口から亀頭を解放する瞬間に、一緒に引き抜かれた。
不思議なことが起きていた。
あれだけの勢いで吸い出されていた精液が、口が離れた瞬間にピタリと止まっている。震えるチンポの先端から、一滴も漏れ出さない。精液が尿道の途中で封じられたかのように、竿の内側に残っている感覚がある。
射精の快楽だけを最大出力で叩きつけながら、精液そのものは必要最低限だけ搾って、残りは次に取っておく。
いろはなりの——患者の金玉を思いやった搾精術。射精の回数が多い訓練で、序盤から精液を空にされてしまっては困る。だから、快楽は全力で与えるけれど、精液は節約する。精嚢のペース配分まで管理された、プロの技だった。
この凄まじいフェラテクニックでさえ、実はタイム測定用に規定された標準動作に過ぎない。いろはが本気で——全力全開のフェラ抜きをした場合、これとは比較にならない。しかしそれをやると男は皆瞬殺されてしまい、比較測定の意味をなさないのだ。この早漏青年がもしいろはの全力フェラを受けていたら、一撃で気絶させられていただろう。
いろはが口元を手の甲で軽く拭った。唇の端に残った精液を舌先でちろっと拭い取って、もう片方の手のストップウォッチに目を落とす。
「9秒7」
「…………え?」
「刺激開始から射精まで、九・七秒」
いろはがストップウォッチをデスクに置いて、にこりと笑った。
「すごい。前回より倍以上伸びてるね」
九・七秒。前回の三・四秒から三倍近く。
——でも九・七秒って、世間的にはどうなのだろう。フェラで十秒も持たないのは、やっぱり重度の早漏なのではないか。伸びたと言っても秒殺であることに変わりはないのではないか。
そんな疑問が頭をよぎったが、いろはの笑顔を見たら、全部どうでもよくなった。
いろはが精液をシャーレに吐き出す。今日の一杯目。白い液体がステンレスの底に広がって、ラベルシールが貼られ、ワゴンの上に置かれた。
「腰を逃がさなかったの、えらかったよ。前回よりずっと良くなってる」
「……ほ、本当ですか」
「うん。あの姿勢のほうが、おちんちんにとっても正解なの。ちゃんと自分で考えてきたんだね」
——見抜かれていた。腰を突き出す作戦が、いろはの想定内だったことは分かっている。読まれた上で、根元を握られて、詰まされた。でも——「正解だよ」と言ってもらえた。それだけで太腿の付け根が痛いのも、目尻の涙も、報われた。
「じゃあ——次のトレーニング、始めようか」
いろはが立ち上がって、スカートの中に手を入れた。
「次は、実際のセックスに合わせた前戯のトレーニングをするよ」
セックス。前戯。
その二つの単語が、いろはの唇から体温を測るような温度で放たれた。
いろはの手がスカートの中で動いて——薄いピンクのショーツが、太腿を伝って滑り落ちてきた。片脚ずつ引き抜いて、くるりと丸めてワゴンの上に置く。前回と同じ、事務的な手つき。パンツを脱ぐという行為が、この人にとっては手袋を外すのと同じ日常動作なのだと、改めて思い知らされた。
「今日は『鏡返し』っていう訓練をするよ」
「か、鏡返し……?」
「うん。ベッドに仰向けになって」
言われるがままに横たわる。天井のLED照明が目に入って、白い光に瞬きした。
次の瞬間——視界が、ピンクに染まった。
いろはがベッドに膝をついて、青年の身体を跨いでいく。ナース服のスカートが視界の両側を覆い隠して、太腿が左右から迫ってきて——シックスナインの体勢。いろはの上半身が青年の下半身の上に、いろはの下半身が青年の顔の上に。
目の前に——おまんこがあった。
薄いピンクの、ぴったり閉じた縦のスジ。ナース服のスカートの裾がめくれ上がった奥に、スカートの中の暗がりに浮かぶように、それがあった。陰毛はほとんどない。少し澄ましたような、いろはの見た目そのままの、清楚な割れ目。
前回、このおまんこに人生を変えられた。
記憶が一気にフラッシュバックする。あの名器の感触。コンドーム越しでも脳が溶けた膣壁の蠕動。生で入れた瞬間の、じわぁぁと芯まで染みてくる甘い快感。子宮口に精液を吸い上げられた射精チートデイの桃源郷——。
チンポが、一瞬で限界まで勃起した。
いろはのおまんこを見ただけで射精してもおかしくないほど、あの超名器の快感が脳に刻み込まれている。条件反射。パブロフの犬ならぬ、パブロフのチンポ。
「鏡返しっていうのはね」
おまんこの向こう側から——正確にはお尻の向こう側から、いろはの声が聞こえた。
まるで、おまんこと会話しているみたいだった。目の前のピンク色のスジが喋っているように錯覚する。
「私のおまんこを舌や指で触ってみて。そしたら私が、同じ気持ちよさをおちんちんに返してあげるから」
「お、おまんこを……舌で……」
「うん。舌で触ったら、お口で返すね。指で触ったら、手で返すよ」
いろはが淡々と説明する。視線の先に見えるのは、いろはの白い太腿と、その合流点に鎮座するおまんこだけ。その光景に向かって、トレーニングメニューが告げられている。
「自分がおちんちんでされたら気持ちいいことを、おまんこにもしてあげられるようになる練習だよ。女の子といっしょに気持ちよくなるために、大事なこと」
医療行為。これは医療行為だ。リハビリの一種だ。セックスのリハビリ。——そう自分に言い聞かせても、目の前のおまんこは少しも事務的に見えてくれなかった。
「じゃあ、やってみよっか。好きなところから触っていいよ」
好きなところから。
青年は顔を真っ赤にしたまま、恐る恐る首を持ち上げた。いろはのおまんこが、数センチ先にある。この距離で見ると、閉じた花弁の合わせ目にうっすらと潤みがあるのが分かる。さっきのフェラで少し興奮したのか、それとも——。
舌を、伸ばした。
舌先が、おまんこのスジの下端——クリトリスのフードに触れた。
ぷにっ。
柔らかい。温かい。想像していたよりずっと小さくて、繊細で、触れただけで壊れそうな儚さがある。舌先で軽く押すと、フードの下に隠れた小さな粒がかすかに主張した。
——その直後。
ちゅぷっ♡
いろはの口が、青年の亀頭を含んだ。
「ひっ——!」
快感の声が上がった。舌がクリトリスから離れる。
するといろはのフェラも——ぴたりと止まった。
「ね。やめたら、こっちもやめるよ」
おまんこの向こうからの声。悪戯っぽさは微塵もない、トレーナーとしての事実の告知。
「お、おまんこ舐めてるあいだ、ずっとフェラされるってことですか……」
「うん。気持ちいいを、お互いに送り合うの。それが鏡返し」
——無理では。
環さんのおまんこを舐めながら、環さんにチンポをしゃぶられるなんて。片方だけでも正気を保てないのに、両方同時にやれと。
でも——やるしかなかった。
もう一度、舌を伸ばす。クリトリスに触れる。
ちゅ、と吸い付いた。
鏡返し。
いろはの口がチンポを含んで、同じ圧で亀頭を吸い返す。ちゅぷ♡と唇が窄まって、カリの裏側を舌がぬるりとなぞった。
「ん、ぅ——っ」
いろはのおまんこに送った刺激が、チンポに正確にコピーされて返ってくる。まるでおまんこを通して自分のチンポを舐めているような——圧も速度もリズムも、完璧に鏡写し。
いろはの鏡返しテクニックが、あまりにも自然で正確だった。
舌をクリトリスに押し付ける強さを変えると、フェラの強さも変わる。速く舐めれば速く舐め返される。ゆっくり吸えばゆっくり吸い返される。完全連動。自分の行為が即座にフィードバックとして返ってくる。
射精の寸前までクリに吸い付いた。限界が来て——舌を離す。
いろはのフェラも止まった。
「はぁっ、はぁっ……」
荒い呼吸。危なかった。あと一秒クリを吸っていたら、フェラで射精していた。でもクリを離せばフェラも止まる。自分の射精感を、自分のクンニで制御できる。
——これが、鏡返しの訓練の仕組みか。
「ね。上手にできてるよ」
おまんこの向こうから、穏やかな声。
「次は指で触ってみて」
舌の代わりに、指を伸ばした。人差し指の腹で、クリトリスに触れる。
鏡返し。いろはのフェラが、手コキに変わった。
ぐにっ♡
ローションもなしに、唾液で濡れた掌が亀頭を包み込む。指の腹が竿に絡みついて、クリトリスを指で刺激するのと同じリズムで、チンポを揉み始めた。
クリの表面を指先でくるくると回す。いろはの手がチンポの亀頭をくるくると回す。
クリの下側——根本の部分に指が触れた瞬間。
ぐりっ♡
「ぅあっ——!」
チンポの裏スジを、手でグリグリと押し込まれた。男の最も感じるポイントを知り尽くした指が、クリの根本への刺激と完全に対応する形で、裏スジの一点を——。
慌てて指を離した。射精しなかったのが不思議なくらいの衝撃だった。指がクリから離れると、いろはの手コキもぴたりと止まる。
「ね。女の子の気持ちいいところ、分かるでしょ?」
余裕の声がおまんこの向こうから聞こえる。呼吸一つ乱れていない。
——分かった。痛いほど分かった。クリの根本があれだけ敏感だということは、裏スジのあそこがあれだけ敏感だということ。女の子の弱点と男の弱点が、鏡のように対応している。
「じゃあ次ね。おまんこに指を入れてみて。第二関節くらいまで。お腹側の壁を、手招きするみたいに優しく触ってね」
射精をどうにか堪えながら、言われた通りに指を伸ばした。
いろはのおまんこのスジに指先が触れる。閉じた花弁を左右にそっと押し広げると、中からとろりと愛液が滲み出してきた。温かい。ぬるぬるしている。指が膣口の入り口に吸い込まれるように沈んでいく。
ぬぷ、と第二関節まで入った。
柔らかい。膣壁が指をきゅっと包み込んで、体温より少し高い温度で指の腹を濡らしている。お腹側の壁を手招きするように——くい、くい、と指先を曲げる。
ぬるぬるの膣壁をしばらく探っていると——少し質感の違う箇所に触れた。周囲よりわずかにザラついていて、ぷっくりと膨らんでいる。
Gスポット。
「んっ♡」
いろはが——声を上げた。
小さく。でも、はっきりと。
あの穏やかなポーカーフェイスの奥から、甘い吐息が溢れた。今日初めて聞く、いろはの——トレーナーではない、女の子としての声。
——環さんを、感じさせることができた。
胸の奥が熱くなった。タイム測定で秒殺され、手コキで暴発し続けた自分が、いろはに「んっ♡」と言わせた。たった一声。でも、それが途方もなく嬉しかった。
その喜びも、束の間だった。
鏡返し。Gスポットへの刺激の分のフィードバックが、手コキとなってチンポを襲った。
ぐにゅぐにゅぐにゅっ♡
亀頭全体を手のひらで包み込んで、揉み洗いするような刺激。前回の手コキトレーニングで幾度となく暴発させられた、あの——ぐりゅぐりゅの亀頭揉み。射精に直結する男の弱点を知り尽くした動作が、Gスポット刺激の返しとして正確に返ってきた。
射精感が爆発した。
「あっ、ダメ——」
叫んだが、精液は待ってくれなかった。
びゅくっ——!
指がいろはのおまんこに入ったまま、チンポが真上に向かって精液を噴き上げた。一射。二射。いろはの手の中で暴発して、白濁が指の隙間から溢れて太腿に垂れ落ちる。
「あ——ぁ、う……っ」
射精の余韻でびくびくと痙攣しながら、いろはのお尻にしがみつく。白い尻肉に額を押し付けて、ふうふうと浅い息を繰り返した。いろはの身体の匂い——シャンプーと、汗と、もっと奥にあるかすかな甘い匂いが、鼻腔を満たしている。
「出ちゃったね」
おまんこの向こうから、穏やかな声。
「……大丈夫だよ。次は頑張ろうね」
責めない。絶対に責めない。いろはは射精を失敗と呼ばない。この人はいつもそうだ。「大丈夫」と「頑張ろう」だけで、男のチンポの尊厳を守ってくれる。
◇ ◇ ◇
再勃起を待って、訓練が再開された。
シックスナインの体勢のまま。目の前にいろはのおまんこ。下半身にはいろはの口と手。さっきの射精でチンポは一度萎えかけたが、いろはが軽く手で触れるだけで——あっけないほどすぐに勃ち上がった。
青年はクリトリスに舌を伸ばし、いろはが鏡返しでチンポを口に含む。
今度は、少しだけ——ほんの少しだけ、感覚が掴めてきていた。
クリを強く吸いすぎると、チンポへのフィードバックも強くなって射精に近づく。だから、自分の限界を感じたらクリから舌を離せばいい。離せばフェラも止まる。呼吸を整えて、またクリに戻る。
自分の射精感を、クンニのペースで制御する。
舌がクリを舐める。いろはの口がチンポを舐め返す。チンポの快感が脳に昇ると、反射的にクリを吸う力が強くなる。するとフェラも強くなって——止める。離す。呼吸。また触れる。
「ちょっとしたコツがあるんだけどね」
おまんこの向こうから、いろはの声。
「おまんこから気持ちいいを吸い込んで、おちんちんから出してあげるイメージ」
「き、気持ちいいを……吸い込んで……?」
「うん。二人でいっしょに、気持ちいいをくるくる回してあげるの。ちょっとしたおまじないだよ」
おまじない。そう言ったいろはの声には、微かな——本当に微かな、いたずらっぽい響きがあった。
「二人で回せば回すほど、大きくなっていくから」
一拍の間。
「——いっしょに沢山回しちゃお♡」
くるくる。環さんと。気持ちいいを、くるくる回す。
そのイメージが——興奮を加速させた。
クリトリスに必死で吸い付きながら、もう片方の手の指で膣穴を刺激する。鏡返しで、チンポの先端を吸われながら竿を手が扱き上げる。口と手の両方からの刺激。快楽の密度が段違いに上がった。
——くるくる。
いろはの言った「気持ちいいをくるくる回す」が、ほんの少しだけ実感として分かりかけていた。
気持ちいいが、二人の身体をくるくると循環している。
限界が近い。
いろはのおまんこに顔を埋めた。
スカートの中に頭を突っ込むように。視界がいろはの太腿とお尻で埋め尽くされて、鼻腔がおまんこの匂いで充満する。チンポの芯に響くような甘い匂い。
「ぅ、ぅぅ——っ」
呻くような声が、いろはのおまんこに吐きかけられる。温かい吐息がおまんこの粘膜に当たって、いろはの太腿がかすかに震えた。
射精が来る。頭が真っ白にチカチカと明滅する。おまんこの匂いに脳を浸されて、おまんこの温度に顔を包まれて、その中で——。
「ふっ——あ゙っ——」
びゅくっ、びゅるるっ——。
いろはのおまんこに顔を埋めたまま、二度目の射精。精液がいろはの口の中で暴発して、精液が飲み込まれていく。
そして——射精の快感にもがく最中、青年は無意識に、顔をさらに深く埋めた。
おまんこを通り過ぎて、さらに奥——いろはのお尻に顔が沈む。鼻先が尾骶骨の窪みをなぞり、唇が——。
ちゅっ。
いろはのお尻の穴に、吸い付いた。
完全に無意識だった。射精の快感に溺れて、目の前にある温かい肉に本能で縋りついた結果、口がたまたまそこに密着しただけ。
いろはの身体が——ぴくっ、と跳ねた。
今日二度目の、いろはの反応。
「——っ」
声にならない息が漏れた。
一瞬の沈黙。青年はまだ気づいていない。射精の余韻でお尻に顔を埋めたまま、ふうふう息を吐いている。
いろはが——苦笑した。
見えないけれど、おまんこの向こうで苦笑しているのが、空気で分かった。呆れたような、でも怒っていない、困ったような吐息。
そして——律儀に。
鏡返し。
いろはの手が、青年のお尻に伸びた。
「ひぇっ——!?」
臀部の谷間に細い指が滑り込む。肛門の縁を指先がなぞって——ぬるり、と先走りと唾液で濡れた人差し指が、第一関節まで入った。
直腸の奥——前立腺に、指の腹がぴたりと触れる。
クイッ。
「あ゙っ——!?」
クイッ。
「あ゙あ゙っ——っ!?」
前立腺を指で手招きするように刺激された。男が男として持つ最も隠された弱点を、何の躊躇いもなく、正確に押されている。
射精が——加速した。
おさまりかけていた射精感が再点火して、下腹の奥から新しい精液がこみ上げる。前立腺からチンポに向かって、精液とは別の——もっと深い、身体の芯から搾り出されるような快楽が流し込まれてきた。
「ひっ、あ、ぅあ゙っ——環さ、おしり、おしりの——っ」
びゅるっ、びゅくくっ——。
追加射精。さっきの射精の残りと混ざり合って、ぐちゃぐちゃの精液がいろはの手を汚す。前立腺を押されるたびに腰がびくんびくんと跳ねて、その振動でいろはのお尻に顔がさらに埋まる。
極楽だった。
いろはのおまんこの匂いに包まれながら、いろはのお尻に顔を埋めて、いろはの指に前立腺を押されて射精している。五感のすべてがいろはで満たされた、この世で最も贅沢な射精。
長い長い射精の波がようやく引いて——青年はいろはのお尻から顔を離した。
酸素を求めて、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す。視界がぼやけている。天井のLED照明が二重に見える。
いろはがシックスナインの体勢を解いて、ゆっくりと青年の横に降りた。精液にまみれた手をウェットティッシュで拭きながら、青年を見下ろしている。
「……お尻の穴に吸い付いたの、鏡返しで返しちゃったけど。びっくりした?」
「す、すみませんっ……! 無意識で……気づいたらお尻に……本当にごめんなさい——」
「ふふ。大丈夫だよ」
いろはの頬がほんの少し赤い——ように見えた。照明のせいかもしれない。でも、耳朶のあたりがわずかに上気しているのは、見間違いではなかった。
「同時に絶頂するのは、今回はまだできなかったね」
シャーレに精液を回収しながら、いろはがカルテに何かを書き込む。
「でも焦らなくて大丈夫だよ。女の子と気持ちいいを回せる感覚、掴めたでしょ?」
「は、はい……なんとなく、分かりかけた、気がします……」
「うん。それが大事なの」
いろはがペンを置いて、にこりと微笑んだ。
「気持ちいいを二人でくるくるする練習、またしようね♡」
その笑顔は——いつもの「底の知れない」笑顔と少しだけ違って見えた。底が知れないのは同じだけれど、その奥にある何かが、ほんのわずかだけ——温かくなっていた。
気のせいかもしれない。でも、青年はそう感じた。
◇ ◇ ◇
「次は、おまんこを使った挿入トレーニングだよ」
——来た。
その言葉だけで、全身の毛穴が開いた。
前回。分厚い医療用コンドームをつけても三回のピストンすらままならなかった、いろはのおまんこ。入れた瞬間に射精した。膣壁の見えない手に亀頭を掴まれて、螺旋に揉まれて、子宮口に吸い付かれて——ゴムの鎧がまるで意味をなさなかった、あの名器。
あのおまんこに、また入れる。
戦慄と歓喜が同時に背筋を走った。
「今日は亀頭を集中的に鍛える練習をするよ」
いろはが医療ワゴンの下段に手を伸ばした。取り出したのは——箱ではなかった。
銀色の個包装がミシン目で連なった、長い帯状のコンドーム束。ぞろぞろと引き出される銀色の連なりが、照明の光を反射してきらきらと光っている。マシンガンの薬莢ベルトのようだった。
「コンドームは前回より少し薄いのから始めて、射精するたびに、もっと薄いのに交換していくね」
いろはが連装帯の先端をピリッと破いて、一枚目のコンドームを取り出す。前回の「厚型-01」ほどではないが、まだ市販品より明らかに肉厚なゴム。手慣れた指でフィルムを裂いて、リング状に丸まったゴムを指先に載せた。
「早漏が暴発しちゃうタイミングって、おちんちんをおまんこに入れる瞬間が一番多いの」
いろはが青年のチンポにコンドームを被せながら、説明を続ける。ゴムが亀頭を覆い、竿を滑り降りていく。指先だけで正確に装着する手つきは、もはや職人の域だった。
「だから、入れる瞬間を何度も繰り返して、おちんちんに慣れてもらうの。奥まで入れないで、亀頭だけ入れたり出したりするからね」
「き、亀頭だけ……」
「うん。先っぽに意識を集中してね」
いろはがベッドの横のスツールから立ち上がり、青年をベッドに仰向けに寝かせた。スカートをたくし上げて、ガニ股のしゃがみ騎乗位で青年の腰を跨ぐ。
白い太腿が左右に開いて、その合流点に——さっきのシックスナインの刺激で十分に濡れたおまんこが、チンポの真上に降りてきた。
いろはの手がおまんこの花弁に指を添えて、くぱっ、と左右に開いて見せた。
閉じていた割れ目の奥に、濡れた粘膜がてらりと光る。薄いピンク色の膣肉が愛液に潤んで、膣口がぽっかりと小さく開いている。
「ちゃんと濡れてるから、大丈夫だよ」
確認。これからここに入る、という視覚的な宣告。コンドーム越しのチンポが、入りたそうにびくびくと跳ねた。
「挿れる前に、よく馴染ませておこうね」
いろはの手がチンポの竿を掴んで、コンドームを被った先端をおまんこにあてがった。
くちゅ。
亀頭がおまんこの表面に触れた。ゴム越しなのに——膣口から放たれる熱が、先端にじんわりと染みてくる。
くちゅ、くちゅ——。
いろはが手首を揺らして、チンポの先端をおまんこのスジに沿って上下に擦り合わせる。クリトリスの脇を通過するたびにいろはの太腿がかすかに震えて、膣口を通過するたびにチンポの先端がぬるりと吸い込まれかける。
その刺激だけで、もう射精しそうだった。
「じゃあ、始めるね」
いろはの腰が——沈み始めた。
ぬ、ぷ——。
亀頭が、膣口をくぐった。
——来た。
ゴム越しに、あの感触が戻ってくる。膣壁がコンドームごと亀頭に吸い付いて、四方から温かい膣肉が押し寄せる。尿道の奥までじゅわぁと染み込んでくる甘い熱。見えない透明の手が亀頭をきゅっと掴んで、くちゅ、と揉む感触。
一ヶ月間、毎日思い出していた感覚。記憶の中で何度も再生した感覚。でも実物は——記憶の百倍、強い。
「もう、出ます——っ」
亀頭しか入っていない。それなのに、もう限界だった。
だがいろはは奥まで沈めなかった。亀頭部分だけを膣に含んだまま、小刻みにくちゅくちゅと動かす。亀頭を膣口のリングで咥えて、浅く浅く、きゅぽきゅぽと出し入れする。
「先っぽに意識を集中してね」
無理だった。先っぽに意識を集中したら最後、そこが世界で一番気持ちいい場所にいることが鮮明になるだけだった。
いろはがチンポを先端ギリギリまで引き抜いて、もう一度亀頭だけ沈める。抜いて、入れて。抜いて、入れて。膣口の最も締まるリングがカリの段差をくぽくぽと往復するたびに、射精のスイッチが何度も何度もオンオフを繰り返す。
——いろはのおまんこに慣れるわけがなかった。
「無理ですっ、もう射精ちゃいますっ——」
びゅるっ——。
コンドームの先端が精液で膨らんだ。亀頭がいろはのおまんこの目前でぶるぶると痙攣して、ゴムの中に白濁を吐き出していく。
「大丈夫。コンドーム、まだまだあるからね」
いろはがパンパンに膨らんだゴムをチンポから外して、ワゴンのトレーにぽとりと落とした。精液にまみれた手でチンポの竿を軽く握り、数回しごいて再勃起を促す。萎えかけたチンポが、いろはの手の中であっさりと硬さを取り戻した。
ピリッ。
連装帯から二枚目のコンドームが破かれる。
「さっきよりゴムがちょっと薄くなってるからね。おまんこの感触が、もう少し分かるようになるよ」
新しいゴムが装着される。確かに——さっきより薄い。ゴムの壁の向こう側にある膣肉の輪郭が、より鮮明に伝わってきそうだった。
「頑張ろうね」
いろはが再び跨って、おまんこにチンポを導く。
ぬぷっ♡
亀頭が膣口に呑まれる。二枚目のゴム越しに、一枚目よりクリアになった膣壁の感触が伝わってくる。温度が高い。膣肉の蠕動の一つ一つが、さっきより解像度を上げて亀頭に届いている。
「あ——っ、やっぱ、無理——っ」
暴発。二発目。
「大丈夫だよ。次のゴム付けるね。頑張ろう」
ピリッ。三枚目。
平然と——マシンガンの弾倉を交換するように、いろはが連装帯からコンドームを破いてチンポにセットする。その動作に一切の迷いがない。何十発でも何百発でも、この束が尽きるまで続ける準備ができている手つきだった。
ぬぷっ♡
三枚目の膣内。ゴムがまた薄くなっている。膣壁のヒダの凹凸が、亀頭の表面に押し絵のように転写されてくる。見えない手の輪郭が、さっきより——鮮明。
暴発。
ピリッ。四枚目。
暴発。
ピリッ。五枚目。
「あっ、あっ——もう——っ」
暴発。
ピリッ。
◇ ◇ ◇
何発目かも分からなくなっていた。
しゃがみ騎乗位のいろはが、淡々と亀頭を膣口に出し入れしている。抜いて、入れて。くぽっ、くぽっ、と膣口のリングがカリを越えるたびに、チンポが降参するように精液を吐く。
いろはの手元には、連装帯の使いかけの束。最初のほうの分厚い銀色のパッケージは使い切られて、残りは明らかに薄くなっている。ミシン目から透けて見えるゴムの輪郭が、初期のものと比べて繊細だった。
周囲には使用済みコンドームが無数に散乱していた。パンパンに膨らんだもの、半分だけ溜まったもの、ほんの少しだけ白く濁ったもの——大きさも量もまちまちのゴムの残骸が、シーツの上やトレーの中に散らばって、訓練の凄まじさを物語っている。
何度やってもいろはのおまんこの感触には慣れない。ゴムが薄くなるたびに快感の解像度が上がって、慣れるどころか鮮明になっていく。膣壁の見えない手が、回を重ねるごとにチンポの弱点を正確に捉えてくる。
——でも。
最初の頃より、亀頭が膣口をくぐる瞬間のパニックは、ほんの少しだけ減った気がした。射精するまでの間にチンポの先端で感じ取れる情報量が、確実に増えている。膣壁がどう動いているか。熱がどこから来ているか。あの見えない手が、どの角度から亀頭を掴んでいるか。射精してしまうのは変わらないけれど、射精するまでの景色が——ほんの少しだけ、見えるようになっていた。
「じゃあ、亀頭の訓練はこれで最後にするね」
いろはが、連装帯の残りをワゴンに置いた。
「お疲れ様でした」
最後の一回。
いろはが、今度は亀頭だけでなく——チンポを、おまんこの奥まで沈めた。
ずぷぷぷっ——。
膣壁が竿の全長を呑み込んでいく。亀頭が膣の奥を進み、途中の膣肉のうねりを一つ一つ乗り越えて——。
とん。
子宮口に、触れた。
コンドーム越しでも分かる、小さくて硬い突起。亀頭の先端がそこにちょうど届いたとき——。
プシュ。
膣内の空気が微かに抜けて、膣壁がゴムごとチンポに真空密着した。じわぁぁと、芯まで染みてくる甘い温かさ。
子宮口が——チンポの先端に、チュ♡と吸い付いた。
よく頑張りました♡と言うように。おちんちんへのキス。
びゅくっ♡
反射的に、チンポがそれに応えた。今日何度目かも分からない精液を、コンドームの中に吐き出す。子宮口がゴム越しに亀頭を吸うたびに、ぴゅっ、ぴゅっ、と小さく精液が搾り出されていった。
——もう、ほとんど出ない。何度も射精して、精嚢が空に近づいている。それでもチンポは子宮口の吸引に応えようとして、空回りするように痙攣を繰り返した。
いろはがゆっくりとチンポを引き抜く。最後のコンドームを外して、トレーに落とした。
「亀頭のトレーニング、おわりだよ。たくさん頑張ったね」
にこり。
トレーの上に並んだ使用済みコンドームの山を一瞥して、いろはがカルテに何かを書き込んだ。その山の数を数える気にはなれなかった。数えたら、たぶん泣く。
◇ ◇ ◇
「今日最後の練習だよ」
いろはが医療ワゴンの奥から、小さな箱を取り出した。
「だいぶ慣れてきたみたいだし、ちょっと上のトレーニングに挑戦してみよっか」
慣れてきた。慣れてきた、と言われたが、さっきのコンドームの山は何だったのかという疑問は呑み込んだ。
「大丈夫。怖くないからね」
その「怖くないからね」が毎回怖い。
「——オーバースピードトレーニングって、知ってる?」
「お、オーバースピード……?」
「陸上の選手がやるトレーニングでね。身体につけたゴムチューブをバイクとかで引っ張ってもらって、自分の限界を超えるスピードで走る練習があるの。自分にこんなに速く走れるんだって体感させることで、脳と身体にその感覚をインプットするトレーニングだよ」
いろはが箱の蓋を開けた。中には——突起の付いたゴムリングのような、見慣れない器具が入っていた。指先でつまみ上げると、柔らかいシリコン素材の輪が照明に光った。
「それをおちんちんでやるの。射精せずにこんなに長くセックスできるんだって感覚を、おちんちんに覚えてもらうんだよ」
「射精せずに、長く……?」
「うん。これを睾丸の根元に装着して、ここのツボを押さえると、射精を一時的にブロックできるんだよ」
「そ、それがあれば……早漏改善訓練、いらないんじゃ……」
「ううん。これはトレーニングでしか使えないの」
いろはが人差し指を立てた。
「二つ理由があってね。一つ目は、射精をブロックしたまま快感を受け続けるのって、すごく……大変なの。やってみれば分かるよ」
大変。その形容詞のあとの一拍の間が、妙に意味深だった。
「二つ目は、ブロックを解除した瞬間に溜まった分が一気に出ちゃうから、普段のセックスで使うとむしろ早漏が悪化しちゃうの。だからあくまで訓練用」
——なるほど。溜めて溜めて一気に出たら、それは早漏の逆方向に振り切れるだけだ。根本的な解決にならない。
いろはが器具を手にして、青年の股間にしゃがみ込んだ。
「じゃあ、付けるね」
細い指がチンポの根元をそっと持ち上げて、睾丸の裏側にゴムリングを滑り込ませる。突起の部分を会陰部の特定の位置に合わせて——ぴたり、と押し当てた。
ぐっ。
「っ——」
奇妙な感覚。チンポの根元に蓋をされたような、出口が塞がれたような。精液の通り道がどこかで遮断された気配。なのに——チンポ自体の感度はむしろ上がっている。亀頭の先端が空気の流れにすら反応して、ひくひくと震えた。
「この訓練は射精の心配がないから、ゴムを付けないで挿入するね」
——ゴムなし。生。ナマ。
「生の粘膜同士のほうが、わたしも気持ちいいから」
その一言で、チンポが限界まで勃起した。竿の血管が浮き上がって、亀頭が紫色に鬱血するほどの怒張。器具で射精が封じられているせいか、チンポが普段以上に敏感に膨れ上がっている。
「いっしょに沢山気持ちよくなっちゃお♡」
いろはが立ち上がった。
ナース服のボタンに、手をかけた。
ひとつ。
ふたつ。
みっつ。よっつ——全部外れて、ナース服の前がはだけた。白い肌。薄ピンクのブラジャー。腹部のきめ細かな肌。
ナース服を肩から滑り落とす。ブラのホックに手を回して——ぱちん。
おっぱいが零れ出した。大きくはない。でも形がいい。乳首は薄い桜色で、空気に触れた瞬間にきゅっと硬くなった。
ナース帽だけを頭に残した、全裸のいろは。
前回の射精チートデイで見たはずの姿。見たはずなのに——胸が、締め付けられるように痛い。
「勝手に射精しちゃうことはないから、バックで好きなだけ動いてみて?」
いろはがベッドの上で四つん這いになった。
白い背中が青年の前に晒される。腰のくびれから尻にかけてのなめらかなライン。ナース帽が少し傾いで、薄いピンクの後ろ髪がうなじを撫でている。丸い尻の谷間の奥に——おまんこ。薄いピンクの割れ目が、愛液でてらてらと光っていた。
いろはの手が後ろに伸びて、おまんこの花弁をくぱぁと左右に広げた。中の濡れた粘膜が露わになって、膣口がぽっかりと開いている。
「さあ、おいで」
——辛抱たまらなかった。
青年がいろはのお尻に飛びつくように這い寄る。チンポを片手で掴んで、おまんこの入り口にあてがった。先端が膣口に触れた瞬間——生の粘膜と生の粘膜が触れ合った瞬間——全身に電流が走った。
一気に押し込む。
ずぶぶぶぶっ——。
チンポが、生のまま、いろはのおまんこに呑まれていく。
ゴムがない。前回の射精チートデイで味わった——あの、生の膣壁の感触が、全部戻ってくる。コンドーム越しに感じていた「見えない手」は、生では「見えない口」になる。亀頭を唇で挟み、舌で転がし、喉の奥で吸い込むように——膣肉が亀頭を丸ごと咥え込んでいる。くちゅ、くちゅ、とリズミカルに。
ぷりぷりの膣肉が亀頭に直接吸い付く。薄いピンク色の膣壁がチンポの表面にぴったりと貼りついて、愛液を介して肉と肉が密着する。膣口のきわでキュッと締まり、竿の中ほどではぬちゅぬちゅと絡みつき、奥に進むほど膣肉の温度が上がっていく。
そして——子宮口に、触れた。
とん。
プシュッ。
空気が抜けて、膣壁が真空密着。じわぁぁぁぁ——と、チンポの芯まで染みてくる、甘くて重くて逃げ場のない快感。
一突きで射精感が爆発した。
脳が射精の命令を下す。精液が尿道を駆け上がる——。
——出ない。
チンポの根元で精液が堰き止められたように、射精の解放が来ない。精液が尿道の途中まで上がって、そこで行き止まりになっている。射精しかけたチンポが宙ぶらりんの状態で、快感だけが脳に叩きつけられ続けている。
射精寸前の——一番気持ちいい状態のまま、止まっている。
「う、うわ——っ」
戸惑いの声が漏れた。出そうなのに出ない。射精のスイッチが入ったのに、出口が塞がれている。快感の圧力だけが内側から膨れ上がっていく。
いろはのおまんこは、そんな青年の戸惑いを知ってか知らずか——容赦なく蠕動を続けていた。ヒクヒクと膣壁が煽って、子宮口がチンポの先端にきゅぅっと吸い付いて、見えない手が亀頭をくちゅくちゅと揉み続ける。
脳からひっきりなしに射精命令が下される。チンポからも射精要求信号が送られ続ける。なのに、出ない。
快楽だけが、積み上がっていく。
「うわっ、うわっ——!」
腰が勝手に動き始めた。いろはのおまんこに促されるように、チンポが前後に動く。
——いろはの生おまんこを、射精せずにピストンしている。
前回は入れた瞬間に射精した。ゴム越しでも二往復が限界だった。なのに今——生のチンポで、何度も何度も出し入れしている。
ずちゅっ、ずちゅっ、ずぷっ——。
ピストンのたびに膣壁がチンポを締め上げて、愛液と先走りが泡立つ。子宮口に亀頭がぶつかるたびにとんっと衝撃が走り、膣奥の真空密着がチンポを吸い込んで離さない。
あっという間に次の射精感がこみ上げた。でも出ない。次の次の射精感も来た。出ない。快楽が折り重なって、層になって、行き場のない射精感がチンポの中でぐるぐると渦を巻いている。
受けている快楽が——未知の領域に達した。
下半身全体が溶けてしまったような感覚。チンポの輪郭が分からない。どこからがチンポでどこからがおまんこなのか、境界が曖昧になっている。
「あ、あ——っ、環さっ、すごっ、すごいっ——出ないのに、気持ちいいっ——」
射精を求めて我武者羅にいろはの尻にチンポを叩きつける。
ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ——。
腰が暴走している。理性では止められない。チンポが勝手にいろはのおまんこを求めて暴れている。
いろはのおまんこもピストンに応えるように蠕動を強めていた——が。
何かが、いつもと違った。
いろはの呼吸が、ほんの少し深くなっている。
普段、いろはの呼吸はトレーニング中でも乱れない。どれだけ激しくチンポが膣の中で暴れても、穏やかな微笑みのまま一定のリズムを保っている。それがプロのトレーナーとしてのいろはの在り方だった。
でも今——鼻から吸う息が、いつもより少しだけ長い。
青年は快楽で気づく余裕がなかった。でも——チンポは、気づいていた。
おまんこの膣壁の収縮パターンが、さっきまでと変わっている。いつもの「静かに丁寧に精密に」の蠕動に、別の波が混じり始めている。事務的な収縮の合間に、ときどき——不規則に、ぎゅっと強い収縮が走る。コントロールされた動きの中に、コントロールされていない何かが滲み出し始めていた。
いろはの名器は「チンポの反応に応じて膣が応答する」仕組みだ。通常なら数秒で終わる挿入が、器具のせいで分単位に引き伸ばされている。射精しないチンポが延々と暴れ続けることで——膣壁が、「かつてない持続的な刺激」を受けている。
今まで、いろはのおまんこがこれほど長時間チンポを挿入されたまま活動し続けたことは——おそらく、なかった。どんな絶倫のおじさんでも、いろはの名器の前では数回のピストンで果ててしまう。長時間のセックスそのものが、いろはにとって未知の領域。
——だが、青年にそんなことを考える余裕はなかった。
あまりの快感に脳がオーバーヒートして、後ろに倒れ込んだ。
ずぽっ、とチンポがおまんこから抜ける。射精できないチンポが空中でびくびくと暴れて、亀頭に膣の残り香がべっとりとまとわりついている。
「もうちょっと頑張ろ♡」
いろはがお尻を向けたまま、青年の上に移動した。倒れた青年を跨いで——しゃがみ背面騎乗位の体勢をとる。
チンポに手を添えて、おまんこの入り口に導く。
ぬぷぷっ♡
再挿入。
今度は——いろはが動く番だった。
青年から見えるのは、いろはの背中と、お尻と、結合部。薄いピンクの後ろ髪が、動くたびにさらさらと揺れている。
スパンッ。
いろはの腰が、落ちた。
スパンッ、スパンッ、スパンッ——。
青年のピストンとは、比較にならなかった。深く。正確で。速い。チンポの根元から先端ギリギリまで、竿の長さを余すことなく使ったロングストローク。一往復ごとに膣壁がチンポの全長を舐め上げて、奥まで入ったタイミングでキュッと膣全体を締め上げる。
子宮口に亀頭が到達すると——クルクルと八の字に腰を回した。子宮口が亀頭の先端をくるくると撫で回す。とんでもない快感が竿を伝って脊椎に直撃する。
かと思えばチンポの先端だけを膣に含んで、入り口の最も締まる膣肉のリングで、カリの段差をクポクポと何度も往復させる。さっきの亀頭トレーニングをいろはのおまんこが自発的に再現しているような、多彩で飽きさせない刺激。
——プロの搾精だった。
「出させてっ……出させてくださいっ……」
青年が泣き叫ぶように懇願した。射精できない快感が限界を突破していた。出したい。出したい。出させてくれ。チンポが泣いている。精液が行き場を失って暴れている。
「もうちょっと。あと三分だけ頑張ろうね」
「さ、三分——っ!? む、無理です、無理ですっ——」
三分。百八十秒。射精寸前のこの状態で、あと三分いろはのおまんこの中にいろと。ガクガクと首を振る青年。
いろはが少し考えるように首を傾げて——。
背面騎乗位のまま、上半身だけ振り返った。
桃色の瞳が、青年を見下ろしている。
「本当はダメなんだけどね」
あの——前回も聞いた、魔法の前置き。
「あと三分頑張ったら——特別に、生のまま中に出していいよ」
生中出し。
いろはの子宮に。
青年が言葉に詰まった。チンポが、器具で射精を封じられているにもかかわらず——びくん、と一際大きく跳ねた。
いろはがにこりと微笑む。
そしてピストンを—加速させた。
スパンッ、スパンッ、スパンッスパンッスパンッ——。
速い。さっきまでとは次元が違った。長いストロークはそのままに、子宮口にチンポを叩きつけるリズムが倍速になる。膣壁が竿を締め上げるタイミングも正確に速まって、一往復ごとに亀頭が受ける快感の密度が跳ね上がっていく。
青年の快楽の悲鳴が診察室に響き渡った。
「あ゙っ——あ゙あ゙っ——っ、む、無理っ、無理ですっ——」
無理だった。三分なんて到底持たない——はずなのに、射精が来ない。何度も何度もチンポが射精の予約を入れるのに、精液が出口で堰き止められて、快感だけが上澄みのように積み上がっていく。
残り二分。
いろはの腰のキレが——増していた。
ピストンが速くなっただけではない。膣壁の蠕動が、さっきまでとは質が変わっている。いつもの「コントロールされた搾精」——静かに丁寧に精密に行われていた蠕動の合間に、ときどきぎゅっと強い収縮が走る。膣壁が自律的に強くなっている。チンポの動きに応答する反射ではなく、膣が——勝手に動いている。
いろはの吐息が、甘くなっていた。
ほんの少し。ほんの少しだけ、鼻から抜ける息に——声の成分が混じっている。「ん」ではない。「は」に近い。かすかな、かすかな、吐息の変質。
残り一分。
いろはの太腿が震えていた。
しゃがみ騎乗位の姿勢を支える太腿が、筋力の限界ではなく——別の理由で、小刻みに痙攣している。腰の動きに、プロとしての計算だけでは説明できない熱が混じり始めていた。
いろはのおまんこが、チンポに応え続けたことで——自分自身の快楽のリズムに巻き込まれ始めている。
普段は数秒で終わる挿入が、器具のせいで何分も続いている。いろはの名器は相手の反応に応じて膣が応答する仕組みだが、その応答が繰り返されるうちに——フィードバックのループが回りすぎて、膣壁が自分で自分を刺激する循環に入っていた。
青年は気づいていない。気づく余裕がない。でも——チンポは知っていた。おまんこの震え方が変わっている。いつもの「搾る」ではなく、おまんこ自身が「求めている」震え方。
三分が——終わろうとしていた。
チンポに蓄積された快感は、とうに限界を突破している。射精を何度も何度も堰き止められた精液が、尿道の中で行き場を失って暴れている。身体中の快楽という快楽が下腹に集中して、もう一滴でも溢れたら全部が決壊する——そんな、ダムの天端すれすれの水位。
「——わたしも、イけそう」
いろはの声が聞こえた。
背面騎乗位のまま、振り返らずに——。
いつもの穏やかなトーン。でもその中に、今まで一度も聞いたことのない響きが混じっていた。掠れ。声の芯が、ほんのわずかに揺れている。
「いっしょにイこうね♡」
——環さんといっしょにイける。
いっしょに。
失神寸前の意識に、その言葉が点滴のように沁み込んできた。今日一日ずっと射精させられ続けて、搾り取られ続けて、もう意識の輪郭すら曖昧なのに——「いっしょにイこう」という一言だけが、くっきりと脳に焼きついた。
いろはのピストンが——最高潮に達した。
スパンッ——と一際深く腰が沈む。チンポが膣の最奥に叩き込まれて、子宮口に亀頭が——ぶつかった。
ごんっ。
「あっ♡」
いろはの口から——声が溢れた。
小さな喘ぎ声。鏡返しの訓練中にGスポットを押されたときの「んっ♡」より——ずっと、甘い。ずっと深い。トレーナーの仮面を透過して漏れ出した、女の子の声。
そして——いろはのおまんこが、絶頂した。
チンポが、それを理解するのに一秒もかからなかった。
膣壁が—動きが変わった。
今日一日ずっと味わってきた「静かに丁寧に精密に」の蠕動が、一切のリミッターを外した。
ぎゅうぅぅっ——♥♥♥!
膣壁全体が痙攣するように収縮して、チンポを四方八方から締め上げる。万力だった。柔らかい肉でできた万力が、亀頭から根元まで一ミリの隙間もなく絞り上げている。
見えない手が——見えない「両手」になった。
亀頭を鷲掴みにして、ぐりゅぐりゅっ♡と力いっぱい揉みしだく。さっきまでの控えめな「くちゅくちゅ」ではない。膣肉全体が捩れるように亀頭に絡みついて、指先で搾るようにこね回している。
子宮口が——チンポの先端にかぶりつくように吸い付いた。精液が来てもいないのに、搾精の吸引運動をフルスロットルで回している。じゅうぅぅっ♡と真空のような吸引力が亀頭の先端を引っ張って、尿道の中身ごと引き抜こうとする。
螺旋蠕動が倍速になった。膣肉全体がチンポを渦に巻き込んで、上下の摩擦と横方向のねじれが同時に襲いかかる。チンポが膣の渦の中心でぐるぐると翻弄される。
——ただでさえ神の領域にあった名器が、絶頂というブーストを受けて到達した場所。
人間が受けていいレベルの快感ではなかった。
いろはのおまんこが叫んでいた。膣壁のすべてが快楽に震えて、その震えがそのままチンポに伝導して、チンポもまた震え返す。フィードバックのループが際限なく回って、おまんこの絶頂がチンポの快感を増幅し、チンポの快感がおまんこの絶頂をさらに深くする。
鏡返し——ではない。
もっと根源的な、肉と肉が直接共鳴する、二つの性器が同じ周波数で振動する——。
パチン。
射精を堰き止めていた器具が、外された。
いろはの指が、会陰部のゴムリングをそっと引き抜いた。ダムの水門が開く。
——全部が、噴き出した。
びゅるるるるるっ——!!
今までの人生で最も激烈な射精。
精液が尿道を駆け上がる速度が、通常の何倍にもなっている。何分もの間、行き場を失って溜まり続けた精液が、堰を切ったダムのように一斉に放流される。チンポが暴発——いや、チンポが爆発した。股間そのものが爆発したような衝撃が骨盤を突き抜けて、脊椎を駆け上がって、脳天を突き破った。
精液がいろはの子宮に叩きつけられた。
いろはの子宮を突き破るんじゃないかという勢いで——凝縮された白濁が、子宮口を押し広げて膣奥に噴き上がる。一射。二射。三射。止まらない。通常の射精の倍以上の量が、倍以上の速度で、いろはの子宮壁に打ちつけられていく。
いろはの子宮が——それを飲んだ。
絶頂中の子宮口が搾精のフルスロットルを維持したまま、溢れんばかりの精液を吸い上げていく。射精の勢いと搾精の吸引力がぶつかり合って、互いを増幅し合う。精液が噴き出すたびに子宮口がきゅうっと吸い、吸われるたびに次の射精が絞り出される。
「あ゙——あ゙あ゙あ゙っ——っ、か、環さっ——出てっ、全部出てっ——止まんないっ——!」
叫んでいた。泣いていた。涙と涎と汗がぐちゃぐちゃに混ざった顔で、腰をびくびくと痙攣させながら、いろはの子宮に全てを注ぎ込んでいる。
精液がまだ出ている。もう空のはずの精嚢から、最後の一滴まで搾り出すように、子宮口の吸引がチンポの奥の奥に手を伸ばしてくる。尿道の壁を精液の最後尾が這い上がっていく感覚が背骨を揺さぶって、射精が終わりかけてもなお快感が途切れない。
長い。
長い射精だった。
金玉の底から、身体の芯から、全部の精液を——全部の快楽を——絞り出されるような。
最後の痙攣が終わったとき、青年は目を開けていた。でも何も見えていなかった。天井の照明が白い光の塊としてぼんやり浮かんでいるだけで、輪郭がない。音もない。世界が白くて温かい綿に包まれているような、そんな感覚だけがあった。
意識が——遠のいていく。
沈んでいく。いろはのおまんこの温かさに包まれたまま、沈んでいく。気持ちいい。気持ちいい以外の感情がない。今日一日の全ての訓練の、全ての快感の、全ての射精の記憶が溶け合って、一つの温かい光になって——。
眠るように、気絶した。
◇ ◇ ◇
いろはは、しばらく動けなかった。
青年の上にしゃがんだまま、チンポを膣に繋いだまま、荒い呼吸を繰り返している。太腿が震えている。背筋に薄く汗が浮いて、ナース帽が斜めにずれていた。
頬が——上気していた。いつもの完璧なポーカーフェイスの肌が、耳朶から首筋にかけて薄桃色に染まっている。
ゆっくりと、チンポを膣から引き抜いた。
ずるっ——と亀頭が膣口を抜ける瞬間、膣壁がまだ名残惜しそうにチンポを追いかけて、ぬちゅりと粘膜同士が離れた。膣口から白濁がとろりと溢れ出して、青年の竿を伝い落ちる。
いろはがベッドの横に降りて、気絶した青年を横向きに寝かせた。タオルケットをかけて、汗で額に貼りついた前髪をそっと横に流す。
青年の額に——チュッ、と小さなキス。
「よく頑張りました♡」
ささやくような声。青年には聞こえていない。
いろはは青年が眠っているのを確認してから、自分のおまんこに手を当てた。膣口から溢れかけている大量の精液。手のひらに淡い光が灯って——ソウルジェムの輝き。注ぎ込まれた精液が、おまんこの奥で静かに吸収されていく。
いつもの作業。いつもの手順。
でも——今日は、吸収にいつもより時間がかかった。量が多い。蓄積された射精の分だけ、精液の量が桁違いだった。
全てを吸収し終えて、いろはは自分の手のひらを見つめた。
何かを考えている。
いつもなら「ふぅ♡」と満足げに目を細めて、すぐにカルテの整理に戻るのに——今日は、自分の手のひらを、数秒間じっと見つめていた。
さっきの——最後の瞬間。
わたしも、イけそう、と言った。言ったのは事実だ。患者の射精を促すための声かけ——トレーナーとしてのテクニック——。
——のはずだった。
でも。
あの瞬間、膣壁が自分の意思とは無関係に——本当に。
いろはは首を振った。薄いピンクの髪がさらりと揺れる。
ナース服を拾い上げて、袖に腕を通す。ボタンを一つずつ留めていく。ブラのホックを留め直して、ナース帽の位置を正す。鏡は見ない。見なくても分かる。頬がまだ熱い。
完璧なプロの顔に戻るまで、いつもより少しだけ時間がかかった。
◇ ◇ ◇
目を覚ましたとき、シーツは新しくなっていた。
タオルケットがかけられている。下半身は綺麗に拭き取られている。前回と同じだ。身体を起こすと、全身が軋んだ。腰が痛い。太腿がつっている。チンポが——まだ、かすかに余韻で震えている。
「あ、起きたね」
デスクの向こうから、声が聞こえた。
いろはが座っていた。ナース服をきちんと着直して、ナース帽も正しい位置に。カルテに何かを書き込んでいた手を止めて、こちらを向いた。
さっきまで全裸で自分の上に跨っていた人と同じ人物だとは、到底思えない。何事もなかったかのような、完璧なプロの顔。
——でも。
耳朶のあたりが、ほんのわずかに赤くないだろうか。首筋に残った汗の痕が、まだ乾ききっていないように見えるのは、気のせいだろうか。
「お疲れさまでした。今日の結果をまとめるね」
いろはがボードを手にして、ベッドの横に来た。
「まず、早漏タイム測定——九・七秒でした。前回の三倍近く記録を更新できたね。すごい」
「は、はい……」
「鏡返し訓練では、女の子と気持ちいいを共感する感覚を掴めたね。おまんこを触りながらおちんちんへの返しを受けて、女の子の弱点とおちんちんの弱点の対応関係を体験できました」
いろはがボードにチェックマークを入れる。
「気持ちいいを二人でくるくる回す練習、またしようね♡」
「は、はい……またお願いします……」
「亀頭の挿入トレーニングでは、おちんちんの先っぽを集中的に鍛えることができたよ。たくさんのコンドームを使いました。よく頑張ったね」
「オーバースピードトレーニングでは、おまんこの中で五分以上も射精せずにピストンすることができました」
五分。あの地獄のような快感の時間が、五分だった。体感では三時間くらいに感じたが。
「最後は——」
いろはが、一拍だけ間を置いた。ペンが止まる。桃色の瞳がボードから上がって、青年の目を見た。
「わたしも気持ちよかったよ♡」
にこり。
——え。
肝心の早漏は改善されてなくない?
「じゃあ、次回の予約を取っていこうね」
いろはがタブレットを操作し始めた。青年の疑問に答える気配はない。
「来月の同じ曜日で大丈夫?」
「い、行きます。絶対行きます」
食い気味の即答。前回と同じだ。学習能力がない。でも後悔もしていない。
いろはが予約カードをプリントして、差し出した。
「着替えたら、受付でお会計してね。お疲れさまでした」
にこり。
「またね」
——またね。
青年は予約カードを受け取って、胸ポケットに入れた。前回のカードの隣に。心臓の上に、二枚目のお守り。
ぎこちなく服を着て、ぎこちなくドアに向かう。ドアノブに手をかけて振り返ると、いろはがデスクの向こうから小さく手を振っていた。
「あ、ありがとうございましたっ……! 環さん、来月も、よろしくお願いしますっ……!」
何度もお辞儀をして、廊下に出た。
受付で会計を済ませて、自動ドアをくぐった。夕暮れの神浜に出る。空がオレンジ色だった。
股間がまだ疼いている。腰が痛い。全身が今日一日の訓練の証拠を訴えている。
——はたして本当にこれで早漏改善になっているのだろうか。
九・七秒は確かに前回の倍以上だけど、世間的にはまだ重度の早漏だ。環さんのおまんこが凄すぎるせいで、早漏が改善しているのか悪化しているのか分からない。コンドームの山は見なかったことにしたい。
——でも、気持ちいいからいっか。
早漏が治る日が来るのかは分からない。でも、来月も環さんに会える。環さんに褒めてもらえる。環さんのおまんこで射精できる。それだけで——次の一ヶ月を生きていける気がした。
青年は胸ポケットの予約カード二枚を指先で確かめながら、帰り道を歩いた。夕陽が長い影を引いている。足取りは来たときと同じくらい軽くて、顔はにやけていて、チンポはまだ、いろはのおまんこの残り香を覚えている。
里見メディカルセンター、早漏改善クリニック。
中毒患者の二回目の通院が、終わった。
◇ ◇ ◇
青年が帰った診察室は、静かだった。
空調の音だけがかすかに回っている。ワゴンの上には、今日一日で回収されたシャーレと使用済みコンドームの山。夕方の集荷便で、七階の院長室に届けられる。
いろはは一人で、デスクの椅子に座っていた。
カルテを整理する手が、止まっている。
右手のペンが、紙の上で静止したまま動かない。視線が——カルテではなく、自分の左手に向いていた。
さっき、青年の額にキスをした手。おまんこから精液を吸収した手。いろはは、その手のひらを——開いて、閉じて、もう一度開いた。
今日の最後。
あれは——何だったんだろう。
いつも通りのトレーニングだったはず。器具を使ったオーバースピードは新しいメニューだったけれど、手順通りに行った。射精を封じて、長時間のピストンを体験させて、最後に解除して中出し。カリキュラム通り。何も間違えていない。
それなのに。
あの三分間の最後に——膣壁が、自分の意思とは違う動きをした。いつもなら完璧にコントロールできているはずの蠕動が、勝手に加速した。子宮口の吸引が、自分で止められなかった。身体が——勝手に、求めた。
トレーナーとして何百人もの患者を相手にしてきた。神デリ時代から数えれば、もっと多い。それでも——自分のおまんこが、患者のチンポに対してあんな反応を返したのは、初めてだった。
「…………」
頬がまだ、少し熱い。
いろはは首を振って、カルテに向き直った。ペンを走らせて、今日のデータを記入していく。タイム。射精回数。トレーニングメニュー。経過所見。
ペンが止まった。
経過所見の欄に、「患者の射精コントロールに若干の改善傾向が見られる」と書いた——そのあとに。
何か、書き足そうとして。
やめた。
ペンをデスクに置いて、椅子の背もたれに身体を預ける。天井を見上げた。白いLED照明が、無感情に部屋を照らしている。
小さく、息を吐いた。
——ふぅ♡
いろはは椅子から立ち上がって、ワゴンの上のシャーレを整理し始めた。夕方の集荷便の時間が近い。仕事はまだ残っている。
ナース帽を被り直す。鏡で確認はしない。
いつもの笑顔が、もう戻っていた。
——来月も、待ってるから。
誰にも聞こえない声で、いろはは呟いた。