シンフォギアのスケベ二次創作 作:アウグスティンティン
ツヴァイウィングのライブ当日。
朝から雲一つない快晴だったが、俺の胸中は重かった。
今日、このドームで何が起こるかを知っているからだ。
アニメ、シンフォギアの第一話。
ツヴァイウィングのライブ中にノイズが出現し、天羽奏が死亡する。
回避するための準備はしてきたつもりだが、これで十分かどうか。
腰にぶら下げた懐中時計のようなアクセサリーを撫でる。
開場までまだ時間があるというのに、既に大勢のファンがドーム前の広場に集まり、長い行列ができていた。
みなウキウキでこの場に臨んでいるのだろう。熱気が凄まじい。
行列の少し後ろの方で、黒髪の少女が一人、所在なげに歩いてくるのが目に入った。
あれは、確かクラスメートの。
「……」
少し考えて、俺は列から離れて彼女に声をかけに行く。
「よ、椎名」
「あ……えっと……櫻井さん……?」
眼鏡をかけたおとなしい黒髪の女の子だ。
彼女は両手でチケットをぎゅっと握りしめ、周囲の賑やかなファンたちに気圧されたように肩を縮めていた。
「一人か? 奇遇だな、俺も一人で退屈してたんだ。せっかくだし並ぼうぜ」
椎名はびくりと肩を震わせ、眼鏡の奥の瞳を泳がせた。
長い髪が風に軽く揺れ、彼女は慌てたように視線を落とす。
「え……あ、は、はい?」
「おし、じゃあ邪魔にならないようほらほら」
彼女を促して、最後尾に並び直す。
一応通わされているだけの学校の、別に仲良いわけでもないクラスメート。無視してもよかったんだが、今日、ここで死ぬかもしれない相手だ。
休み明け、教室の机に花瓶を置く時に、声かけときゃよかったな、とか思いたくないしな。
「えと……いいんですか?」
「なにが?」
「順番が……」
「ああ、そんなこと。いいんだよ。どうせ指定席だ」
椎名は眼鏡を指でそっと押し上げながら、依然として肩を小さく縮めていた。
「……ありがとうございます、櫻井さん。私、一人で並ぶのちょっと……緊張してて……」
彼女の声は小さく、ほとんど周囲の喧騒にかき消されそうだった。
椎名はチケットを両手でぎゅっと握ったまま、時折視線を上げてはすぐに伏せてしまう。
「ツヴァイウィング、好きなのか?」
「は、はい……! 生で聴けるなんて、夢みたいで……」
「そうか? そりゃいいな。楽しんでいけよ」
「櫻井さん、も……ツヴァイウィング……好きなんですね」
「そうだな。うん、好きだ」
出会った場所が場所だ。ファン同士、ツヴァイウィングの話をしてれば自然と会話も続く。
他愛もないお喋りをしながら時間を潰していると、とうとう会場が開き、行列も進み始めた。
■◆■
俺は軽く手を上げて椎名と別れ、自分の指定席に向かった。
席はステージがよく見える中層ブロック。翼と奏の姿をしっかり捉えられる位置だ。
会場内の照明がさらに落ち、スポットライトがステージを照らし始めた。
観客の歓声が一気に大きくなり、ドーム全体が熱気に包まれる。
そして──ステージ上に、二人が舞い降りた。
長い青髪をなびかせた風鳴翼と、赤い髪を鮮やかに揺らす天羽奏。
ツヴァイウィング。
降り注ぐ白い羽根吹雪の中、文字通りに空から舞い降りてきた彼女達の歌が始まった。
──戦姫絶唱シンフォギア。
人間を襲うノイズって化け物が存在し、それを倒すにはシンフォギアを使うしかない。人類のために頑張れ!
みたいな、まあここだけ抜き取ればよくある設定のアニメだ。
シンフォギアを擁する日本政府の秘密組織、特異災害対策機動部の二課。
翼や奏、そして俺が所属するこの組織は、今日のライブの裏で、人類を救うための切り札としてネフシュタンの鎧の起動実験を行っていた。
で、実験のさなか、ネフシュタンが起動するとほぼ同時にノイズが会場を襲撃するのである。
ちなみに物語にはこの後、ノイズを操れる秘密道具が登場したりするのだが、それは現時点では起動していない。
つまりこのどう考えても作為的な災害は、マジにただの偶然なのである。
翼達の歌が二曲目に突入したところで、爆発音が響いた。
会場が揺れ、観客の間に動揺が広がる。
そして──
「ノイズだーっ!」「助けてくれーっ!」
パニックになるのも一瞬だった。
どこからともなく現れた、多種多様な見た目をした化け物達。
それらは近くにいた人間目がけて飛びかかって、触れた端から諸共に炭となって崩れてしまう。
──Croitzal ronzell Gungnir zizzl
奏が聖詠を口ずさむ。
緊急事態を前に、許可無しで奏は彼女のシンフォギア、ガングニールを起動した。
両手を覆う籠手が外れ、合体して一本の槍を形成する。
後を追うようにして翼も自らのギア、天羽々斬を起動して参戦する。
戦姫絶唱、唄いながらノイズと戦い始める二人。
それを尻目に俺は持参したカバンから、ケースを取り出す。
留め金を外し、中身を手に取る。それは注射器だ。
中身はLiNKERと呼ばれるシンフォギアを扱えるようにする薬である。
生来シンフォギアを扱える翼と違い、奏は薬が無ければシンフォギアを扱えない。
アニメでは戦闘中にLiNKERの効果が切れてしまうのだが、ここに予備があるので問題はない、はずだ。
ちなみにこれは怪しまれないよう、以前から予備を持ち歩いている。
本業の人助けとして、あまり意味はないが避難誘導をしながら、奏の戦う場所へと近づいていく。
ただ渡すだけじゃ駄目だ。
アニメ通り、主人公である立花響がガングニールの破片で怪我してからでないと、今が良くても後が困る。
いい感じの位置まで移動できたところで、逃げ遅れた立花響を奏が庇い、ガス欠で砕けた奏のガングニールの破片が響に突き刺さる。
痛々しいな。黙って見てなきゃいけないってのも辛いが、とにかくこれで──
「……っ、ああもうっ!」
「え……うっ、けほっけほっ」
逃げ遅れていた椎名がいた。飛んでくるノイズに気付いていないようだったので、襟首を掴んで射線から逃がす。
鈍臭そうとは思っていたが。
「クソ、なんでこっちまでおんなじようなことしなきゃいけない」
「けほっけほっ……ごめんな、さ」
「悪いがお前に構ってる暇ないんだ。その辺のノイズは蹴散らすから一人で逃げろよ」
「け、蹴散らすって……危ない!」
──Seilien coffin airget-lamh tron
首にぶら下げ、服の下に隠していた俺のシンフォギア、アガートラームを起動する。
起動時に放出されるエネルギーが迫っていたノイズを吹き飛ばした。
歌によって増幅されたギアのエネルギーが、鎧として固定される。
特徴的な白銀の左腕の籠手から、蛇腹剣を抜き放ち、二度三度と振るって周囲のノイズを斬り伏せる。
そして振り返ることなく俺は跳躍した。
「奏──ッ!」
「バッカ、お前っ!」
伸ばした蛇腹剣をドリルのように回転させ、道を塞ぐノイズの群れに真っ直ぐ穴を空けながら奏の元まで辿り着く。
アガートラーム起動から約十秒、シンフォギアが維持できずに強制的に解除される。
「受け取れ!」
「〜〜っ、助かった!」
生身に戻ってしまったが、LiNKERを奏に投げ渡す。
奏は素早く注射器を受け取り、迷わず首に打ち込んだ。
「思いっきり唄うのはお預けか」
「後で聴いてやるよ」
「はは。じゃあもうひと踏ん張りするかぁ」
FG式回天特機装束:アガートラーム
第四号聖遺物から製造された
その特徴からアガートラームと呼ばれているが、実態は不明
櫻井了子がどっかから持ち込んだ
適合者不足から櫻井律が保有している
FG式回天特機装束
女の子ばっかじゃん、というツッコミに対して、生物学的男性には使えない設定が生えてきたエネルギー固着式のプロテクター
まあその設定はファウストローブのものだけど
本作では起動できても維持できない設定