【ビッチ疑惑】の有名冒険者ちゃん!―責任取りたくないから処女は嫌だけど! ビッチなら!― 作:BIBI
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賑わう商店街で一際注目される二人がいた。
「せめてルナは子供を孕んでおけば振られずに済んだかも知れないのに……」
溜息混じりにシュナは珍しくオシャレをして、抹茶の粉末をまぶしたモチを食べながらゆったりと歩く。少し肌寒い程度の秋だが、別にこれといって寒い訳じゃない。
彼女は魔力操作で幾らでも体温調節が可能だった。だが、あえて長袖の季節に合ったファッションなのは、周囲に合わせての事だ。
別に珍しい話じゃない。幾ら気温が気にならないからといって、年がら年中夏場の様な薄着で動く冒険者の方が少ない。
「…………」
彼女の軽々しい態度とは対照的に、カオルは思い詰めた様な表情だった。
「……ルナは誤解されやすい子なだけ。いつもそうやって貴女が庇った結果かしら?」
苦言というか、後の祭り故の軽口といった所だろう。保護者のカオルに責任があるんじゃないかと、シュナは鼻で笑う。
「…………。誤解されやすい子なのは事実です……。あの子は悪意を持って誰かを傷つけたいとは思っていないでしょうから……。周囲が言うほど性格が悪い子じゃありません。本当に天然で空気が読めないだけですよ」
堂々と街中で話すあたり、もはや隠す必要もないと判断したらしい。カオルは肩を竦めてシュナと一緒に買ったモチを口にする。
「周囲から悪く言われたら、自分はただ誤解されてるだけ。誤解する周囲がおかしんじゃないかって疑って生きてきたんでしょ? 十分に性格悪いわよ。まぁ私も人の性格にどういう言える程、善人じゃないけど」
何度も人を殺した。戦いの中で民間人を巻き込んだ事はある。少なくない数の犠牲を出しているので、シュナは自身を善人だとは思っていなかった。
「…………」
自分に憎しみを抱く無力な人々の瞳を思い出し、彼女は少し悲しそうな顔をした。
「あの子は言葉足らずな所があります……。ミシェルの言っている事だって、どこまで本当なのか分かりません……」
「優秀な荷物持ちの専属契約解消は痛手よ。その原因を作ったと自白して罰を受け入れる覚悟があったミシェルを疑う理由が今の所ないわ。それに対してルナは『分からない』『知らない』『浮気と思ってない』って言い張るだけだしね」
信じたいカオルは食い下がるが、シュナは公平に判断し一蹴した。
「正直ルナがゴミ女ってのは確定だけど、先にアプローチしたのはミシェルよ。定めたルールとして罰はルナではなく、ミシェルに与えるべき。というか既に、厳罰を下したわ」
淡々と話すシュナは平凡な日常会話の様に話し、周囲の店を見渡し始める。流石に「…………は?」とカオルは呆け足を止める。
「今朝の話よ。痛めつけた後、睾丸と眼球を潰した後、四肢を斬り落としてギルドから追放したわ。今は入院中なんじゃない? 死んでないなら。痙攣して泡拭いていたから、生きている保証はないわね」
彼女に近づき、コソコソと小さな声でシュナは教える。子供の様に悪い笑みを浮かべている辺り、彼女はかなりエグイ事をしている自覚はある様だ。
それを小さな声で喋るのは、周囲に聞かれると困るからではない。周囲の食べ歩きしている人に配慮した結果である。
「…………試験的とはいえ、ミシェルは二番隊の隊長よ? 正気? 戦力を著しく下げる決断だと理解しているの? 言い方は悪いけど
「痴情の縺れ如きだからよ。……筋を通せない奴は賊と同じよ? どれだけ将来性がある子だとしても、
また歩みを始めてシュナはつまらなそうに語る。先程とは声色が違い、真面目な物言いで厳しい意見を口にする。
「私が甘かった。今までの自浄作用じゃ足りない。上の立場だからで許される環境は、上の立場の者から腐っていく。これからは階級に関わらず、厳しくルールを適応する。それが嫌で辞める団員がいるのなら辞めれば良い。筋を通す気がないって事でしょ? 要らないのよ、そんなゴミは」
まともと言えばまともなのかも知れない。だが強い奴を一人でも多く取り込もうと躍起になってる時代において、これを大真面目に言える人は本当に一握りだ。
いや、だからこそなのかも知れない。あえて大手のギルドが時代に逆らうべきなのだと、シュナは一歩他者とは違う道に歩みを進めたのだ。
「裏切らない少数精鋭に切り替えるって事ですか……。そこまでギルドの方針を大きく変えるつもりなら、私に一言あっても良くありませんか?」
「今回の一件で堪忍袋の緒が切れたのよ。ルナにも失望した。次に何かあれば、あの子だろうと罰するわ。良いわね?」
呆れた様に大きく溜息を吐くカオルに、シュナは振り返り容赦なく釘を刺した。目が冗談ではない。微笑むシュナの瞳の奥には、どこか冷たいものがある。
強者は頼り甲斐と脅威の表裏一体。彼女の言う通り、どれだけ強くても敵に回るなら、それは脅威でしかないのだ。
「……私も裏切り者を庇う気はありません」
ルナがギルドのルールに逆らうなら容赦しないと、カオルは既に結論を出していた。これは彼女を預かった日に、既に決めていた事だ。今でも気持ちに揺るぎない。
身内贔屓は許せば、下の者に示しが付かない……。家族だからこそ厳しく罰を与えなければ……。
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今までのガーネットは身内に優しかった……。でもこれからは多分、大きく変化するはず、ですよね……。
話した感じ、リン君は自覚なさそうだけど、今の時代は特に荷物持ちや採掘員の不足が嘆かれて、どこも条件を良くして一人でも多く雇いたがってる……。
特にリン君の様に部位欠損や重傷を癒せる程の〈回復〉持ちは、日本でも五人だけ。ウチにも一人いるけど、何人でも確保したい程に超希少な人材な訳で……。
彼が専属契約を解消したのは、ガーネットにとって途轍もない痛手。これを受けてシュナさんは顔には出してないけど、ブチ切れモードのはず……。
というか、ブチ切れない理由がない……。
ルナちゃんはリン君とガーネットを繋げた事で、功罪相殺できたけど……、ミシェル君は半殺しにされたって聞いた……。
これはもうガーネットは身内贔屓ゼロってアピール……、見せしめな訳で……。
憶測にはなりますが、殆ど確実に最近のギルド本部襲撃事件も関係してますね。スパイの侵入阻止や今後裏切る可能性の高い者を炙り出す事が狙いのはず……。
「…………」
自分なりに思考を進め、今の状況を把握しているナヅナ。
別にシュナさんから命令を受けた訳じゃないけど、どうにかリン君をガーネットに繋ぎ留めないと……。ルナちゃんがしくじっちゃった以上、私が上手くフォローするべきなんだろうけど……。
でも、こっちの都合を押し付けるのは論外……。第一にしっかりと、リン君の人生を尊重しないと……。
ミシェル君だけじゃない……。
シュナさんやカオリさんからも、私がリン君を守ってあげなきゃ……!
「…………ッ」
年上のお姉さんとしてしっかりないといけないと決心しつつ、ナヅナは車を運転していた。だが、どうにもそういった姿が似合わない。
ナヅナは身長が平均より少し低く、胸も平均以下の大きさで、可愛さに寄った童顔で年上感が極端に薄い。普段のオドオドした態度も相俟って、車の運転が非常に上手いにも関わらず何処か不格好に見えてしまう。
「何か緊張するなぁ……」
彼女のシリアスな雰囲気に対し、リンは呑気に木の生い茂った外の景色を見ながら小さく呟く。
「大丈夫ですよ? 皆優しい人ばかりです! きっとすぐ仲良くなれます! 私がこんな気弱な人間だから、部下も大人しい人多いですしね……、はは……」
ギルドはマフィアに近い。だからこそ冒険者は舐められたら駄目だと、よく言われる話であり、その価値観でいえばナヅナの普段の態度はあまり褒められたものではない。
実際、彼女は実力が確かなのに人望がなかった。血の気が多い者からすればシュナの様な堂々とした態度の者が理想であり、ナヅナの様な気弱な者が上に立つと自分まで舐められると避けられてしまう。
ナヅナもまた気が強い部下は怖がって受け入れたがらない。それもあって、彼女の部隊は比較的に大人しい人が集められていた。
【補足】
ミシェルの予想では処罰は軽くなるはずだった。だからこそリスクを承知で自分から迫って肉体関係を持ったと嘘を吐いた。しかしシュナがその場でギルドの方針を大きく変えてしまう。そしてミシェルは立場に関係なく厳しい罰を受ける事になった訳です。