【ビッチ疑惑】の有名冒険者ちゃん!―責任取りたくないから処女は嫌だけど! ビッチなら!― 作:BIBI
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「ミシェル……、君……?」
明らかに激しい動揺。何せ彼女の視線の先には、かつての仲間が青白い顔をして立っているのだから。明らかに正常ではないその様子は、初対面のリンでも理解できる。
テレビで特集が組まれ、笑顔が良く似合っていたミシェルとは大きくかけ離れた姿。口は半開きで、微妙に目も焦点が合っておらず――一切の生気を感じない。
「ナヅナ……。助けて……」
意識はあるのは判然としないが、枯れた様な声でミシェルは呟く。その声に「ミシェル君……! 私がすぐに助けます……!」と一歩前に踏み出そうとしたナヅナに、「待って」と僕は片手を広げて制止する。
「予め言っとくけど、彼は既に死体だよ。それに僕が殺した訳じゃない。君らにどう説明したのか分からないけど、シュナはミシェルを殺害している。彼が裏切り者として処罰されたらしいけど……、恐らく漏れちゃならない情報でもあったんだろうね。でも安心しなよ。僕を殺せばミシェルは生き返るから。今の時点でも半分生き返ってる様なものだしね」
心底呆れた様に溜息を吐き、ドウマは堂々した様子で未だに衣嚢から手を出さない。圧倒的に優位で勝ちを確信しているのだろう。
それを見てリンは確信する――こいつは嘘を吐いて面白がっている事を。
自分を殺せば仲間は生き返るぞって、流石に子供騙し過ぎるね。要はミシェルの体を傷つけ過ぎたら生き返らないぞって脅してるんだろ?
死体の体と魔力を操作できるなら、声を出せてもおかしくない。死体が喋る様子を目の前で見せ、本当に意識が薄ら残っているんじゃないかってナヅナさんに揺さぶりをかけているんだ。
きっとナヅナさんもそれは気づいている。気づいた上で、あの優男の言葉が本当だったらと
「…………」
てか、三級って確か世界に50人もいないはずだよね……。よくもまぁナヅナさんを潰す為だけに、こんだけ集めたもんだ。
つまり死体提供してくれる大きな組織が裏に潜んでいる可能性が大って事……?
とはいえ、あの優男はレベル70くらいで、他は55くらい。つまり45の僕がこの場で一番レベルが劣っている訳か……。きつー……。
レベル30離れたら身体能力は二倍差とか言われてるし、もしかしてこの状況は結構詰みか?
魔力で体感時間を引き伸ばしたリンは、短い時間の切れ目の中で色々と思考を巡らせていた。だが対人戦が初めての彼は自分の力が、どれほど人間相手に通用するのかを推測できない。
敵の
「…………随分と警戒し怖がってるみたいだけど、安心しなよ。君に用事はない。無駄な殺しはしない主義なんだ。逃げるなら追わない」
お互いに未知数の相手。ドウマの言葉も全くの嘘ではないのかも知れない。だがリンは少し笑い「敵の言葉は信じない。それにナヅナさんを見捨てられない」と、しっかりと一歩前に踏み出す。
「彼女に惚れてるのかい?」
「少しだけね」
揶揄うドウマに、真剣な目でリンは肯定する。突然の告白に「…………!?」ナヅナは顔を赤くし、僅かに動揺していた。
「でも君じゃあ、僕どころか、この子にも勝てないよ」
「…………」
ドウマが不敵に笑うと、隣のミシェルがリンに視線を向ける。やはりその瞳には一切の生気を感じず、敵意も悪意も宿っていない。
「…………」
最低限の力で勝つ。一人ならそうした。けど――今は守らなきゃいけない、この人を。それに相手は手練れなんだろうし、手加減して足を
リンは素手の状態。剣を構える訳でもなく、手を振り払おうと構えた。
「…………! やるかい?」
余裕綽々という態度。だが一応は用心しているのか、ドウマは少し腰を落とし、周囲の死者達も身構えた。
「…………ッ」
僕は引っ搔く様に手を振い、砲光を撃ち放つ。無詠唱では全力。この場においてレベルが最も低い劣るとはいえ――熟練度Aの砲光。
それは高が三級や二級如きが軽く受け流せる様な威力ではない事を、今はまだリンは知らない。
弧を描き、突き進む五本の光撃。そこに死者達が意識が持っていかれた瞬間に、リンは彼らに急接近して足を思い切り地面に叩き付ける。
これもまた砲光の応用技。ソロでダンジョン攻略を続けた故に、彼が得意とする多対一に極めて有効な一手。
叩き割れた地面の隙間から、眩い閃光が噴き出す――。
「「――――ッ!」」
ドウマを含め賊は五人共その光撃をモロに受けてしまう。死体とはいえ三級の死者全員に致命傷を与える程の力。
ミシェル以外の三級は光に呑まれて消え失せる。
「…………ッ!」
リンがミシェルに止めを刺そうとしたが、〈
「す、凄まじいね……! 何なんだい君はッ!」
三体も死体を消し飛ばされ、怒りを滲ませる表情。凄まじい力で剣を振るうドウマ。
切られる寸前で防御が間に合い、剣で強烈攻撃を受け止めるリンだが、勢いは到底殺し切れない。
舞い上がる土煙の中から彼等は飛び出し、何度か剣を打ち合いつつ、膝も突かずに崖の下へ着地する。
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ギルド本部の高層ビル。改修工事が行われており外は慌ただしいが、マスター室には音が響いていなかった。
「ミシェルの遺体は見つかりません」
カオルは指先で眼鏡をクイッと持ち上げ、少し焦った表情を浮かべていた。
『二級が一人。三級が四人だ。仮に襲撃を受ければ殆どの隊に勝ち目はないな。当然ナヅナも含めて』
携帯から響くサギリの声は重々しく事態の深刻さが伺える。二級は世界で20、三級は50人程度しか存在しないと言われている。
裏切り者だから仕方なくミシェルは処断した今、これ以上の戦力低下は避けたい。両袖机の席に、腰を降ろして足を組んでいるシュナは苛立った様子で眉間に皺を寄せている。
「……ナヅナの固有スキル次第じゃない? あの子、頑なに教えないもの。相当強力な固有スキルに目覚めた可能性も有り得るわ」
『……どうだろうな。ドウマと同じく、知られただけで周囲から忌避される力の類だと考えるのが妥当だろう』
自分でも有り得ないとは思いつつ少ない希望を抱くシュナに、現実的な言葉で返すサギリ。
『だが、ただ忌み嫌われるだけの固有スキルなら、私達に相談してきそうでもあるのは確かだ。もしかしたら何か別の事情があって人に言えないのかも知れないな。だとしたら敵襲に遭っても返り討ちにする可能性も……、いや、これは流石に希望を抱き過ぎか。一応心配だから、私がナヅナを迎えに行こうと思う。シュナは本部に待機していてくれ』
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軽く互いが技量を確かめ合う様に、体術を混ぜ剣を打ち合う。
「ははは、こんなの初めてだよ。レベルも身のこなしも僕が圧倒しているはずなのに、全然歯が立たないなんて……、呆れる程の魔力操作だ。でも――」
その瞬間、急激に加速したドウマの姿がぶれる。
「――――ッ」
懐に入り込まれ、心臓辺りに強烈な突き叩き込まれリンは後ろの崖に吹っ飛ぶ。風圧で木々が揺れ、大きな衝突音と主に土煙が広がる。
バタバタと周囲の鳥が羽ばたき急いで逃げる中、ゆらりと剣の切っ先を下げて、ドウマは己の勝利を確信していた。
「君は修行不足だね……。魔力の動きを体が覚えてない。こればっかりはどんな天才であろうと地道な努力が必要だから仕方ないとはいえ、君は杜撰すぎる。今までどれだけ修行をサボっていたんだか。これだから今の若い世代は……、嘆かわしい限りだね」
仮に生きているとしたら少しは聞こえているだろうと、ドウマは勝ち誇った笑みを浮かべて語っていた。
「それにしてもベラベラとよく喋る……。しかも老害丸出しな発言ばかり。アンタだって十かそこらしか歳が変わらない癖に」
土煙から何事もなかったかのように、リンは出て来た。片手で服を叩き、埃を散らす姿にはハッキリとした余裕が感じられ、やせ我慢は一欠片も感じない。
「――――ッ⁉」
馬鹿な!? 無傷……!? 確実に心臓を捉え突き刺したはず……!? 何故……!?
「本音を言うと、警戒して損した。貴方程度が相手なら本気を出すまでもなかったよ」
心底げんなりした様子。
そうリンは常に相手の強烈な一撃の為、いつでも防御できる様に身構えていたのだ。故に自ら攻撃する配分を最低限にし、得意な持久戦に持ち込むつもりだった。
だが――もうそれはする必要がないと悟る。
「く…………ッ! 舐めるなッ!」
再度、ドウマは剣を構えるが――。
「〈
簡易詠唱。九本の飛ぶ斬撃がリンから放たれる。その威力は当然の如く熟練度Aの影響を受けており強烈。
目を見開き、急激に体勢を変えてギリギリ受け流し急いで後退するドウマ。彼が一旦離れて攻撃をいなし隙を伺い勝機を見出そうと方針転換した瞬間――。
「連なる柱は」
リンは詠唱を始めた。
「…………ッ」
コイツ……!
急いで駆け出し、大技を放ってリンの詠唱を阻止しようと試みるドウマ。だが行く手を
「くッ……!」
無詠唱で九斬を繰り出され、ドウマは大技を出す隙を与えてもらえない。不用意に退けば遠のき詠唱を止められず、近づく程に避ける事が難しくなり大技を出す隙がなくなる。
リンがやっている行為は決して巧妙な策ではない。寧ろ小学生でも思いつく単純な戦法であり、一言で言えば――
詠唱している間、他のスキルの簡易詠唱すらできず、圧倒的な不利な状況に陥るリスクを抱えている。策と呼べる
だが、この杜撰で幼稚な策を奇策として成り立たせているのは、リンの圧倒的な魔力防御である。並みの攻撃を通さないこの防御力があれば、敵から攻撃を受けるリスクが高いという致命的な欠点を打ち消せてしまう。
つまり圧倒的才能の暴力。選ばれし者に許された特権であり、それは日々の鍛錬に重きを置くドウマの信念に傷を付けた。
「束ねる曲線に従い」
「貴様――ッ‼」
舐め腐った態度のリンを見て、血管がはち切れそうな程に激怒するドウマ。
リスクを恐れず前に突き進み、ギリギリで攻撃を寄せつつ、今出せる精一杯の力を振り絞りドウマは〈一閃〉を繰り出す。
剣から迸り、真っ直ぐに飛ぶ一筋の斬撃。それは確かに強烈で重みのある一撃であり並みの冒険者なら容易に消し飛ぶ力が込められていた。
しかしリンは真正面からそれを受けも無傷。地面が割れていようと彼には傷一つ付いていない。
クソ……ッ! どうなってる……! これでも斬れないなんて……!
「
リンが構えを取ると、周囲に五つの光弾が出現する。そして手を振り払った瞬間、指先に触れた順で光弾が
たった一つでも触れれば、いや掠っただけでも死は
大きな爆発が起こり、木よりも高く土煙が打ちあがる。流石にアレを受ければ死んだとしか思えないが、モクモクと立ち込めた煙の中に影が現れた。
「へぇ、今の防げるんだ。それが貴方の固有スキルって訳ね……」
透明なバリアを張り、それに守られている部分だけ地面が抉られていない。当然中にいるドウマも傷一つなく無事な訳だ。
「…………」
意識があるのか分からない光を失った瞳。膝を突き、剣は地面に捨てている。両手で印を結んでおり、結界型の固有スキルを発動していた。
「まぁ、凄いけど――悪手だね」
「…………くそ」
リンが爽やかに笑うと、ドウマも悔しさ半分楽しさ半分で笑う。
「完全詠唱で飛距離を強化した。威力は大して上げてない。高が三級を仕留めるのに大した威力は必要ないのはさっき確かめたからね。一キロ先、森の奥底に気配が一つ取り残されたままなのが気になっていたんだ……。やっぱ森の奥で隠れている方が本体だったのか」
力尽き倒れたドウマに、リンは近寄りながら話し掛ける。そうリンは最初から四つの光弾はドウマに当てるつもりなどなかったのだ。
狙っていたのは森の奥に潜む敵だった。そして狙い通り光弾は賊に命中していた。リンはまだ確認していないが、森の奥でドウマを操っている爺さんが胴体を抉られており、息を引き取る間際であった。
「君は一体何者なんだい……?」
「……僕が知りたいよ」
ドウマの質問に、リンは呆れ交じりの苦笑で返す。
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「……ごめんなさい。私、すぐに駆け付けなきゃいけなかったのに」
ナヅナさんは地面にへたり込み、顔を俯かせていた。目の前には糸が切れた人形の様に、地面に転がっているミシェルの死体。
やはり死んだ者は生き返らないらしい。体に傷がない。僕が敵を仕留める事を信じて、彼女はミシェルを傷つけない様にしつつ、降り掛かる猛攻に耐えていたらしい。
だが、その努力は完全な無駄だった。
「仕方ないですよ。知り合いだったんでしょ?」
彼女の後ろに立ち、僕はヤレヤレと肩を竦ませる。
「…………。ずっと私……、ミシェル君の事が好きで、憧れていたから……。もう諦めたつもりだったけど……、ミシェル君を傷つける事はできなくて……」
「何か……、冒険者って意外と恋愛脳多いんですね……。ま、まぁでも人間だし、割り切るのは難しいのかも。仕方ないですよ」
胸の内に秘めていたであろう想いを
「でも私がやった事は、貴方を見捨てるのと同じ事ですよ……。許されません……」
涙を流し、深く反省している様子。確かにナヅナさんの行動は有り得ない程に軽率なのは間違いない。敵の言葉を根拠もなく信じるなんて言語道断かも知れない。
しかも普通の力なき民間人ならともかく、冒険者がやる行動じゃないだろう。しかし僕は人としては理解できる範疇だと、彼女を責める気にはなれなかった。
そもそも彼女は善意で赤の他人の僕を見捨てられなかった。それが親しい仲の人ともなれば尚更……。
「僕は何とも思ってませんよ。寧ろ大切な人を亡くしたナヅナさんに同情してます……。ただシュナさんは怒りますよね……。ミシェル君の事を考えると、裏切り者を徹底的に殺す方針らしいし……」
ナヅナさんの寂しげな背中を見つめながら僕は、「まぁ、こうなった以上は僕も力を隠し通すのは難しいだろうから、僕がナヅナさんを全力で庇いますよ。僕がナヅナさんの処分を軽くする為、また専属契約したら
「…………何で。何でそこまで私にしてくれるんですか? 出会ったばかりの私に……」
ナズナさんは振り返らず、今にも泣きそうな震える声で尋ねてくる。
「…………? 貴女だけなら逃げようと思ったら自分一人でも逃げられたかも知れないのに、僕を庇おうとしてくれたので……。僕もお返しで、庇うのが道理かなと」
「…………」
自分でも大した理由がないので思いつく本音を
「力……、周囲にバレたくないんですよね……?」
何か意味深な事をナヅナさんが尋ねてきた。「できればバレたくないんですけど、何か秘策でもあるんですか?」僕は思わず食いつき、しゃがみ込む。しっかりと目線を合わたら何故か彼女は目を逸らし、顔を赤らめる。
「リン君さえ嫌でなければ……、一応隠し通せるかと……」
「是非、教えて下さい……! 力を隠せるなら、大抵の事は受け入れますよ!」
声が震え耳まで赤く染まるナヅナさんに、僕は歓喜を込めた声でグイグイと迫る。
「…………。だったら、私と……。…………。私と
何かナヅナさんが
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【
・他者と互いに血を取り込み合い契約する事で、スキルや固有スキルを劣化模倣可能。
・定期的に契約相手の血を取り込まなければ、日に日に力が衰える。血を取り込む度、契約相手に激しい発情を覚えてしまう。
・契約は一度切り。一人の相手としか結べない。
【あとがき】
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