【ビッチ疑惑】の有名冒険者ちゃん!―責任取りたくないから処女は嫌だけど! ビッチなら!― 作:BIBI
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リンが三番隊の寮で暮らす様になって、二週間が経っていた頃。本部の改修工事が全て終わり、ギルドの周囲に普段の静けさが戻る。
「ナヅナが発現した〈
ソファで菓子を食べながら、シュナは残念そうに肩を竦める。
「惜しい? 寧ろ強すぎると思いますが……。防御無視の空間切断と別空間への転送。固有スキルの性能だけなら、十傑並みでは?」
隣に腰を降ろし、カオルは納得いかないように思った事を指摘した。彼女は別にナヅナが可愛くて贔屓している訳ではない。客観的に見ても〈
「…………。戦闘能力は文句なしね。でも長距離の移動が難しいという点が、少し惜しいと感じたのよ。長距離の移動が可能なら、いつでもどこでも私を召喚できたのに」
あまりにも我儘な要求。別に何か致命的な欠陥を見つけた訳でもなく、シュナはただただ自分の移動手段として考えていただけらしい。
「高望みし過ぎですよ……。それが出来たら最強すぎます。勝てないなと思った時点で、簡単に逃げられるって事ですし」
「それもそうね……」
呆れた様に肩を竦めるカオルに、シュナはカップを手に取って苦笑する。
「これで益々リン君の価値が上がった訳わね。今の所ナヅナはリン君以外とセックスするつもりがないみたいだし……。彼がウチを離れた時の損失が、あまりにもデカすぎる」
どうにかして七城リンをガーネットに引き入れなければと、シュナは真剣な表情で思考を巡らせていた。
あまり一人の荷物持ちがギルドを柱にするのは、彼女にとって望ましくはない。だがナヅナが望むのであれは話は別。今やナズナはシュナから見れば優秀過ぎる駒である。
少なくとも他の団員に比べると、将来性は最も高いと判断していた。
何より――。
『どういう訳か、固有スキルの影響でナヅナの上限レベルが上がったそうだ……』
サギリの発した一言。これがナヅナに拘る決め手となった。空間で敵を捩じ切る防御無視の攻撃も確かに強いが、本人のレベルが低ければ大して強くないとシュナは最初過小評価していた。
だがレベルの上限が引き上がったとなれば評価を改めざるを得ない――。
「…………私もリンが欲しいわ」
耳と唇にピアス。魔力で首筋にタトゥーを刻み、爪も黒く染めている。服装はズボンにブーツを合わせる様になり、長袖の上着を着るなど肌を見せる事が少なくなった。綺麗な金髪は黒いリボンでハーフツインに束ね、少しギャルっぽい。
その変わり果てたルナの姿の所為で、マスター室は静まり返ってしまう。
向かい側のソファに座り携帯を弄る彼女の姿を見て、「…………」シュナは絶句し、手に持っていたカップが震えている。
「…………随分と見た目が変わったわね? …………何で?」
口元は笑顔だが、目は笑ってない。ガタガタと怒りと困惑で震え、紅茶が波を立てた。
「…………? もう清楚キャラで売るのは厳しいと、諦めた……、から?」
「…………」
不思議そうに首を傾げるルナに、シュナの笑顔は固まる。
「だからってビッチで売るのは止めなさい……」
大きく溜息を吐き、こめかみに手を当て怒りを滲ませながらカオルはルナを睨む。
「色んな男の人の意見を聞いて、総合的に出した結論よ。男はビッチが清楚ぶると虫唾が走るらしいわ。ビッチはビッチを隠さず、エッチなお姉さん枠を目指すべき。これが男の本音……。だから
口元に手を当て、キリッとした顔でルナは雄弁に語り始めた。彼女にしては口数が多くて言っている事はアホなのに、何故か知的な雰囲気を醸し出している。
「……まぁ、そう言われると、そんな気もしてくる。じゃあ、一理あるか」
「ないです。止めなさい、そんな馬鹿な格好は。ピアスなんて不良じゃあるまいし」
固まった笑顔のまま僅かに納得し掛けるシュナに、カオルは突っ込みを入れつつ眼鏡を指で持ち上げる。
「ビッチだけど、ちゃんと男は選り好みする良い女ポジを目指してるから。ピアスやリングのアイテムは必須……。結構男ウケも良い……。後、何か格好いい」
ルナは中二趣味全開で銀系アクセサリーをジャラジャラ付けていた。どうやらビッチだとアピールする過程で、中二系ファッションに目覚めてしまったらしい。
「どんな男に影響されて、こんな趣味に……」
カオルは娘の様に可愛がっていたルナの姿に失望し、頭を抱えていた。
ギルドでは最近よくない噂が流れており、テレビや雑誌でもルナがビッチ化したと話題にされている。
そしてルナの見た目や言動の変化を見る限り、男の趣味に合わせるタイプなのだろうとカオルは推測していた。
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「何かルナちゃん変わったよね……。少し前までストイックだったのに……」
「色恋に興味持ってない感じだったのにねぇ」
「毎晩色んな男に抱かれてるってホントなのかな?」
「小汚いオッサン複数人とセックスしたって聞いたけど、本当なのかな……」
「毎回中出しされてるんだって」
ビルの通路。周囲が失望した様な声でヒソヒソと話している。
それを聞きながら歩き、「…………はぁ」ルナはリンを思い出して少し溜息を吐く。胸中には深い罪悪感と激しい後悔。でも、もはや何もかも取り返しが付かないと諦めている。
夜中までミシェルと遊んだけど、ホテルでは外ではできない仕事の話をしていただけ。それが真実だけど、結局誰も信用してくれなかった。
これは、まぁ、無念……。私が恋愛に疎かったのが悪いから、仕方ない……。
でも私は今回の失敗を機に多くを学んだ……。雑誌や本で沢山の男を学び、恋愛小説を100冊読破した。今や恋愛のスペシャリストと言っても過言じゃない……。
売れてるAVの調査もした結果、わりと男はビッチも好きだと判明した……。そして売れてる傾向を事細かく分析した結果、私は強い女路線でいくべきというのが結論。
この路線でいけば少なくとも、リンと恋人に戻れないとしても、愛人ポジションはいけるはず……。
「あのさ、ルナ……。最近の噂、本当なの? 男を見境なく食い散らかしてるって……。流石に嘘だと信じたいんだけど……」
緑髪を肩まで伸ばした女――マチは最近気になりながらも抱え続けていた疑問を口にした。
「…………。半分本当で半分嘘……。ちゃんと見境は付けてる。私が声を掛けるのは、年下で好みの面した男だけ……!」
鏡の前で練習した不敵な笑み。年下の男の子を揶揄うエッチなお姉さんの演出である。練習しただけあって、実際ルナは非常に魅力的だった。その証拠に「「おぉ……」」と周囲の男達は魅了され頬を赤らめて吐息交じりの声を漏らしていた。
「…………ッ⁉ ホント、人って変わるわよね……。何か昔のアンタの方が私は好きだった気がする。ま、まぁ今のアンタも嫌いじゃないけどね……?」
一応10年の付き合い故に、この程度では友情が崩れる事はなかった。しかしマチとしては意外な回答であり、本人の口から聞いた事とはいえ信じられないと疑念が残った。
「…………良かった」
ホントはリン以外と経験ないから……、少し罪悪感あるけど……。でもこういう嘘は悪い事じゃない……、はず。
私のデータによると、童貞の9割は自分は童貞じゃないって嘘を吐いてるから……、私も似た様なもの。
「い、今の聞いたか? 噂を少し認めたぞ! つーか、ルナちゃんって年下好きだったのか……⁉」
「正直、クソッ羨ましい! このギルドにもいんの⁉ ルナちゃんを抱いた奴!」
「俺がイケメンだったら! 寧ろ俺から声を掛けたのに!」
「相手して貰った年下男子君が羨まし過ぎる……! 俺もあんなエッチなお姉さんに奉仕されたい人生だった……!」
「こんな小柄で童顔なお姉さんって存在して良いのか……?」
「平均身長はあるからセーフ……! お姉さんだと脳が認識できる身長は満たしてるから……!」
「服の面積は寧ろ増えたのに、何で前よりエッチに見えるんだ……!」
「昔のルナちゃんより魅力的に感じるのは俺だけか? あの妖艶な雰囲気がたまらないんだがッ! 殆ど無表情なのに! 何故かエロく感じる……!」
「何で男ってこんなバカなの……? た、確かに小悪魔っぽい感じは少し食らうけど……」
「あれはしゃーない。ルナちゃん可愛いもん。何か魔性の女って感じ。私達じゃ絶対に勝てないよ……」
周囲もざわついて反応も悪くない。
「…………」
ふふんと、ほぼ無表情ながら薄らドヤるルナ。
私のデータに狂いなし……。間違いなく、リンを口説ける確率は90%を超えてる。はやりデータ……。データが全てを解決する……。
「な、何かアンタの人気、昔より凄くない……?」
「私のデータによると、男の子がエッチなお姉さんを好きな確率は――97%」
マチが呆れ半分で顔を引き攣らせると、顎に手を当て片目を閉じたルナは決め顔で微笑した。
――そう。ルナはナヅナにリンを取られて以降、そこそこ脳が破壊されてしまった。今は現実逃避でビッチを演じるなど、色々と迷走中。
メールですらリンに話し掛ける勇気が湧かない彼女は、自分の魅力に自信を取り戻すまで、まだ少し時間が掛かりそうだった――。
【あとがき】
一章――――完。