※この作品はR-18です。

【ビッチ疑惑】の有名冒険者ちゃん!―責任取りたくないから処女は嫌だけど! ビッチなら!―   作:BIBI

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第16話 女から尽くされる男

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 久しぶりに山奥に来て〈固有世界(ラストダンジョン)〉を使用し、ゲートを開く。裂け目の闇に手を当てるとズズズと中に引きずり込まれる。

 

 

『サギリさんが換金せず倉に放置していたダンジョンコア、貰ってきました……! 少し埃は被ってますが……、品質に問題はないはずです!』

 

 

 

 満面の笑みでダンジョンコアを沢山くれたナヅナ。彼女の姿を思い出し、僕はチクチクと罪悪感に蝕まれる。

 

 

 

 当然の様に尽くしてくれるのは嬉しいけど、どう恩返ししたものか……。

 

 

『兄さん! ちゃんと鍛えなきゃ駄目でしょ! 不良に絡まれやすいんだから!』

 

 

 そう妹も口煩く心配していた。

 

 

 もしかして僕ってダメ男気質なのかな……。女に尽くしてもらうばかりの人生な気がする……。

 

 

「…………」

 

 

 夜空。嫌と言うほど目に焼き付いている寂れた古城。しかし僕は見慣れない者が目の前にいて動揺し言葉を失っていた。

 

 

「――私は敵じゃないわ。安心して」

 

 

 中背よりやや高いくらいだが、ハイヒールを履いている所為で身長が盛られている。真面目そうにキリッとした表情を浮かべる彼女は妖艶で、本当に美しい女性だった。

 

 

 しかしモンスターの中でも非常に希少な吸血鬼なのだろう。白に近い金髪で赤い瞳。口に鋭い牙。耳の先が少し尖っている。

 

 

 

 その美しさも通常のものとは異質。夜景や黒いドレスも相俟って、魅惑(みわく)の中に恐ろしさ混じる雰囲気を漂わせている。

 

 

 

「私も詳しくは分からないけど……、ここのダンジョンボスは貴方みたい。だから私が全力で貴方を護衛するわ。貴方が死んだら私も死んでしまうもの」

 

 

 

 彼女を眼差しは更に真剣さを増す。忠誠を誓う様な目には何か本能的な物を感じる。もしかするとモンスターは本能でダンジョンボスに忠誠心を持っているのかも知れない。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

『冒険者による暴行や性暴力、殺人は後を絶ちません。特に大手ギルドの四級以上の冒険者は、警察も手出しできないのが実情。これは日本に限らず世界中で起きている社会問題の一つです』

 

 

 

『ですが、本日ガーネットの出した声明によると、自浄作用を徹底する事が決定。これからは警察との連携も密に行うなど、冒険者の処罰を強化する意向が示されました。特に一般人に危害を加えるなら、階級を問わず処罰する事が強調されるとの事――』

 

 

 

『ガーネットは本気でしょうね。あのミシェル君ですら粛清(しゅくせい)するだなんて……。二番隊の隊長ですよ? 大きな痛手なはず……。それでも手心加える事なく始末するとは……』

 

 

 

 テレビではミシェルの粛清で話は持ち切り。正直、ミシェルのガチ恋勢は阿鼻叫喚だが、ガーネットの評判はうなぎ登り。

 

 

 ガーネットという最大手ギルドが、日本の治安維持に協力すると表明し、言葉だけではなく実際に処罰したという事例を作った事は、国民に信頼を抱かせるには十分だった。

 

 

 

「――ルナ。話聞いてるの?」

 

 

 二番隊会議室。蒼い髪を腰まで伸ばした長身の女――エルザは、向かい側の席に座るルナに義憤(ぎふん)を滲ませた瞳で見つめる。

 

 

 

「ミシェル先輩が粛清された事、君が関わってるはずだ。彼が何をやらかしたのか教えて貰えるかい?」

 

 

 彼女の隣で黒髪で小柄な男――ティムが落ち着いた声で追随(ついずい)する。雰囲気は穏やかだが腸が煮えくり返っているのが分かる程に、彼の視線は鋭かった。

 

 

「それが納得いかないものだとしたら、俺はこのギルドを辞める」

 

 

 煙草を吸いながら、少し離れた席から茶髪長身の男――ヴァジルは、感情を隠そうともしていない。怒り、不満を言葉と態度に出してルナに視線を向けた。

 

 

「あの子が何か悪い事をしたと思えない。だからってシュナさんが大した理由もなく団員に危害を加えるとも思えない。一体何があったの?」

 

 

「ルナ。話してくれないか。流石に長年一緒に戦ってきた戦友なんだ、僕等は。死んだ仲間の事を知りたいというのは当然の事だろう?」

 

 

「…………」

 

 

 エルザとティムが疑問の回答を催促し、ヴァジルも黙っていはいたが回答を待っている様子だった。

 

 

 

 大きく溜息を吐き、ルナは「…………単なる痴情の縺れ」と短く呟いて肩を竦める。

 

 

「まぁだろうね……。それは何となく察してはいたよ。熱愛報道の後だったからね」

 

 

「……もしかしてアンタが浮気した事が原因? 付き合ってたんでしょ、アンタ等。浮気が原因だとしたら、許せないんだけど」

 

 

 エルザがテーブルの皿から焼き菓子を手に取り、ボリボリと食べながら話す。「私の浮気が原因の一つだけど、私とミシェルが付き合っていた訳じゃない」そのルナの言葉を聞いて彼女の手はピタリと止まった。

 

 

 

「えっと……、という事はミシェルが遊び相手で……、ルナには別に本命がいたって事?」

 

 

 信じられない。そう顔に書いている様に恐る恐るティムは確認する。

 

 

 ルナは「……そう」と肯定し、「私はあくまで友人のつもりだったから、付き合えないってちゃんと振った。でも私の彼氏は冒険者ではない一般人だったから……。ミシェルは負けた事が気に食わなかったみたい。それで色々と問題を起こしちゃって……――。でも深くは教えられない……。シュナに口止めされてるから」と出来る限り言える範囲で説明する。

 

 

「「…………」」

 

 

 しばし訪れる沈黙のひと時。音はルナが呑気に手元の紙袋破り、菓子を取り出す音のみであり、他の者は絶句していた。

 

 

「…………。それは、まぁ、目に浮かぶというか……。お前の事マジで好きだったしな。暴走しちまったか。殴るか、脅迫か、何かしら団長に粛清されちまう様な事しでかしちまったのか」

 

 

「……僕に相談してくれたら、絶対止めたのに」

 

 

「あの馬鹿……、ホントしょうもない死に方して……。この業界は恋愛絡みで死ぬ奴多いから気を付けろって、私が普段から忠告してあげてたのに」

 

 

 

 深い溜息を吐きヴァジル、ティム、エルザが肩を落としていた。どうやら三人から見てもミシェルは恋に盲目な所があったようで、暴走しても不思議ではないと判断している様子。

 

 

 

「……その彼氏さんはどうなったんだ? 安否というか……、無事なのかい?」

 

 

 ティムは言葉を選ぼうと逡巡しつつも、自分の隊で起こった不祥事が気になっているらしい。ミシェルの勝手な暴走とはいえ、同じ隊のやらかした事だ。一般人に迷惑を掛けたとなっては、責任も多少は感じてしまう。

 

 

「無事だけど……、私の浮気が原因で別れる事になった……。というか寝取られた。流石に辛い」

 

 

「浮気された彼氏の方が辛いでしょ。何でアンタが傷ついてんのよ」

 

 

 肩を落とし落ち込んだ様子のルナに、間髪入れずエルザは突っ込む。

 

 

「君が男に飢えているのは意外だったよ。今までそんな素振り見せなかったのに、最近は派手だよね。いや、勿論人の貞操観念に文句を言う筋合いはないのは分かってるから、文句がある訳じゃないよ」

 

 

「彼氏君もルナがこんなビッチだと知らなかっただろうな、可哀想に……。同じ男として同情するぜ……」

 

 

 ティムもヴァジルもエルザに同意見の様子だ。擁護する意見や同情する意見は一つもなかった。

 

 

「…………大丈夫。いずれ寝取り返す。元カレと浮気エッチはビッチの特権だから」

 

 

「だ、大丈夫じゃねぇ……! 何一つ!」

 

 

「君はいつか刺されるよ」

 

 

「シュナさんに粛清されるわよ」

 

 

「大丈夫……。両想いっぽいだけで、まだ付き合ってないみたいだから。後少しで付き合えるかもって夢見てるピュアな女に、濃厚な浮気エッチ見せつけるわ……。純粋で一途な女だから泡吹いて倒れて精神崩壊するはず……」

 

 

「怖ぇよ」

 

 

「刺されるよ」

 

 

「彼氏君、別れて正解ね。クソ女すぎる。性格が終わってる」

 

 

 

 ルナが口を開く度、ヴァジル、ティム、エルザの順で突っ込みを入れる。

 

 

 ミシェルの事は確かに仲間として信頼していたが、事情を知ったら同情できなかったのだろう。悲哀や怒りは呆れに変化し、意外といつもの調子に団員が戻りつつあった。というか今まで以上に団員達はルナと打ち解け、どこか楽しげだった。

 

 

 

 今のルナからは、かつてのストイックで高潔で住む世界が違う印象は消え失せている。好みの男を食い散らかすクソビッチと見られて、いい意味でも悪い意味でも親近感が湧くタイプになったらしい。

 

 

 

 団員達も、もう変な気遣いは不要だと判断し、肩の力を抜いて談笑していた。

 

 

「…………」

 

 

 冗談を交えつつ部下と談笑を続ける中、ルナは少しミシェルの事を思い出していた。

 

 

 多分、私もミシェルも甘やかされ過ぎてた……。シュナやカオルから家族の様に大切に扱われて、つい忘れてしまっていたんだと思う――。

 

 

 

 ここはギルドで、無法者の集まりだって事を。

 

 

 しかもガーネットを率いるシュナは――――十傑(じゅっけつ)の一人。長寿不老がひしめく一級の中でも更に格上の存在。

 

 

 (たか)が――三級。

 

 

 ミシェルは最初から大した価値を見出されてなかった。

 

 

 

 




【補足】
ミシェルは嘘を吐き、ルナを最低な浮気女に仕立て上げた。そうする事でシュナとカオルからルナの信用を失わせる事が狙い。二人がリンとルナの仲を取り持つ事を阻止したかった。加えてリンとルナを破局に追い込む事も狙いの一つ。実際に企みは成功した。


勿論深い罪悪感はあったが、ミシェルはこれがルナの為だと疑わなかった。何せ『ルナは純粋無垢だから悪い男に騙されている』と思い込んでいたから。


因みにミシェルは色々と勘違いしています。彼はルナを『性欲がなくて、奥手。無垢すぎて貞操観念も身に付いてない少女』と思い込み、実際のルナを理解してません。


因みに実際のルナは『超性欲が強くて、積極的。貞操観念が強くて初めての相手に執着する少女』です。ミシェルが思っている様な人物像とは、かけ離れています。

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