※この作品はR-18です。

【ビッチ疑惑】の有名冒険者ちゃん!―責任取りたくないから処女は嫌だけど! ビッチなら!―   作:BIBI

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第17話 ゲートクラッシュ

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 鹿児島県霧島(きりしま)市の観光スポットで有名な犬飼滝(いぬかいのたき)に進む道せがら、シュナとカオルは談笑しながら歩いていた。

 

 

 別に女二人で旅行という訳ではない。れっきとした調査である。ギルド本部を襲撃されて以来、少ない手がかりを頼りに独自捜査を進めていたのだ。

 

 

 

 そして賊がゲートに関し何かしらの研究を進めていた事が判明。故に賊の拠点や活動箇所(かしょ)に絞って、付近のゲートを虱潰(しらみつぶ)ししている最中という訳である。

 

 

「今頃ナヅナはリン君とデートにでも行ってるのかしら。羨ましいわよね。私もテーマパークとかでデートする青春を送りたかったわ」

 

 

「テーマパークって……、今どきの若い子は行きませんよ。今やテーマパークはオジオバがイチャイチャする為だけのデートスポットです。今どきの若い子は普通にネットで有名な飲食店を回ったり、少し高い店に行く事をデートって言うんですよ。まぁテーマパークも若い夫婦が子連れで行くなら有りなんでしょうけど、子供も居ないのに行っても仕方ないでしょ」

 

 

 

 物々しい軍服姿の二人。時代を感じる事をシュナが口にすると、眼鏡を指で持ち上げながらカオルは冷静に指摘する。

 

 

 

「…………。今どきの若い子のデート、食ってばっかりなの……? 随分食い意地が張った子が増えたものね……。年々テーマパークの売り上げが冷え込む訳だわ……」

 

 

 

 何か思っていた恋愛と違う。半ばガッカリしながら現代っ子の価値観にシュナは引いていた。若いカップルというのはもっと頭の悪そうな場所に行って、イチャイチャするものかと思っていたらしい。

 

 

 

「そもそも冒険者同士の定番デートと言えば、二人切りでダンジョン攻略ですよ。今二人共不在らしいので、今頃はダンジョンで青姦(あおかん)でもしているんじゃないですか?」

 

 

 

「だと良いけど……。私達は恋愛と無縁の人生送っているから、ナヅナに何のアドバイスも出来ないし、歯痒い所ね」

 

 

 さらりと下ネタをぶち込むカオルに、何ら突っ込みを入れないシュナ。二人は恋愛に無縁な人生を歩んでいたが、もういい年である。というか歳を取るにつれデリカシーが欠けつつあり、後輩相手にも下ネタをぶち込むせいで日頃からドン引きされていた。

 

 

 

「私と違ってシュナは恋愛自体に憧れはあるんですから、さっさと男作って子作りしたらどうですか? 戦力の増強は、それが一番の近道です」

 

 

 

 滝が見えてきて川の水面に着地するカオル。それを追って後からシュナも着地して「……私に釣り合う男が居ないのよ。何度も言ってるでしょ? 私は私より優れた男でないと、子作りする気はないって」と、当然の様に水面を歩き始める。

 

 

「それで六十年も未婚を続けるのは――」

 

 

「年齢の話は止めなさい。私は永遠の女子高生で……」

 

 

 カオルが軽口を叩くと、苦々しい表情で遮りつつシュナは言葉を止める。視線の先には滝と――人一人は入れる程度の小さなゲート。

 

 

 

「…………久しぶりに見たわ。一級ダンジョンでゲートクラッシュを起こすなんて、誰がやらかしたのかしら? いや――これは人為的?」

 

 

 

 パキパキと音を立て、ガラスが割れる様にゲートは広がりつつある。顎に手を当て、不敵に笑うシュナ。隣でカオルは冷や汗を掻きつつ「…………ッ」ゲートを見つめる。

 

 

 

「……放置はできない訳だし、私が軽く攻略してくる。カオルはナヅナとルナを本部に招集して。また前の様に襲撃に遭ったら大変だし、各個撃破は正直避けたい。必要ないだろうけど一応は警戒した方が良いと思う。たとえ何か無くても、そのまま私が本部に帰還後、会議に参加させる。その旨を二人に伝えておいて」

 

 

 

 そう言い残して、シュナはゲートに手を当て中に入って行った。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「通常、ゲートクラッシュが起きれば、瞬く間にモンスターが押し寄せ溢れ出す。しかし今回は少し事情が異なる。非常に軽度なゲートクラッシュが起こっているそうだ。すぐにモンスターが溢れ出て来る心配はないみたいだけど……、時間の問題だろうね。放置は出来ないとシュナも判断したらしい。今はソロで攻略中だそうよ」

 

 

 

 タエが報告を読み上げ、現状を確認する。ソファに腰を降ろし、長身の老体。枯れ木の様に脆そうな細い体だが、冒険者協会の制服と顔の傷も相俟って貫禄が感じられる。

 

 

 

「軽度のゲートクラッシュなんて前代未聞よね。人為的に引き起こされたと考えるのが妥当。恐らくガーネットの本部襲撃も偶然じゃない。何かしら関与しているとしか思えない……」

 

 

 

 鋭い目つき。事の重大さを理解しているが故に、彼女は苛立ちを隠し切れていない。

 

 

「…………あぁ」

 

 

 向かい側のソファに座る大柄のオッサン――ガモンは、目を伏せて溜息を吐き「何とも厄介な事だな。今後は日本三大ギルドが連携し、この事件に対処する必要がある」とゆっくりと顔を上げた。悪人面で角刈りなのもあって、妙にヤクザっぽい雰囲気を漂わせている。

 

 

 

「これからの時代、ゲートクラッシュを人為的に起こす術が賊の間で広まるかも知れない……。そうなれば政府は常にモンスターの脅威に備える必要がある。今までは政府に納品した魔石の質と量で、ギルドの権力や補助金は決まっていた。これも少し改正する必要があるね。ガーネットは武力だけなら世界三位なんだ。協力して貰えるなら被害を大きく減らせるはずだよ」

 

 

 

「だがガーネットに金を与え過ぎれば魔石を備蓄し始める。今でも日本企業は魔石不足に悩まされているというのに……、これ以上は……」

 

 

 今後の時代の変化を見据えるタエに、ガモンはこめかみを抑えて悩む様子。彼の反応は至極当然で仕方ない事だろう。

 

 

 何せギルドは民間企業でありながら、目先の利益を大して考えていない場合が多い。特に武力に自信あるギルドの多くは政府の言いなりになりたがらない。

 

 

 

 ガーネットは最近になって警察と連携し、治安維持に協力を始める方針に切り替えはしたが、それでも日本中のゲートクラッシュに対応してくれる程に、民間人を守る気持ちがあるとは思えなかった。

 

 

 

「魔石の納品を促しつつ、ガーネットに協力して貰う落としどころを考えないとな……。下手を打ては簡単に経済が傾くぞ……」

 

 

 

 それだけじゃない。日本が民主主義を最低限維持できているのは、三大ギルドに支配欲がないからに他ならないと、ガモンは理解しているのだ。

 

 

 

 民主主義も魔石の納品システムも全て、三大ギルドの慈悲だ。国民が少しでも豊かな生活が出来るようにと、情けを掛けて貰っている状態……。

 

 

 

 仮に政府がギルドの利益を軽視する様な態度を取れば、内戦が始まる……。というか戦いにならない……。一方的にギルドが政府を掃除するだけだ。

 

 

 

 ギルドの負担を最低限に、且つ民間人の被害も抑えつつ、魔石の納品も続けて貰う。これを全てクリアしないと……、内戦……。

 

 

 

 もう俺……、ギルド本部長辞めようかな……。俺の手に国の命運が握られているとか流石に荷が重すぎるだろ……。

 

 

 

 考えるだけでも胃が痛いと、彼は大きく肩を落とした。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 マレーシア。ここは常夏で、秋が終わろうとしている日本と違って暖かい。黒髪を腰まで伸ばした女――ベルタは豪邸のプールに飛び込む。

 

 

 

「科学は廃れ、今やインフラは魔石によって支えられているというのに、この世界は常に魔石不足に悩まされている……。結局の所、世界には強者が少なすぎるんだ。三級ですら50人。二級も20人程度。あまりにも少ない……」

 

 

 

 力を抜いて仰向けになって、「この世界は圧倒的人材不足……。だから私は考えたんだ――移民を入れたら解決じゃないかと」プカプカと水面に浮かびながら彼女は続ける。

 

 

 

「実際どうだか知らないが、政治家はよく口にするじゃないか、『移民が増えると経済は豊かになる』『移民が居れば皆の賃金は上がる』『移民が増えても治安は一切悪くならない』『移民は優しい』『移民が増えてたら国民全体が幸せになる』。政治家は皆そう言っている。だからこそ私は声を大にして言いたい――全く持ってその通りだと‼」

 

 

 

 ザバァっと水を撒き散らしながら、ベルタは水面に立ち上がる。そして――。

 

 

「移民最高‼ 移民最高‼ 移民最高‼ 共感しかないよ‼ 政治家は賢い‼ 政治家は天才‼ 移民を増やせば増やす程、社会は全て上手く回る‼ 移民受け入れ反対する奴は全員差別主義者だから殺した方が良い‼ 差別主義者は皆殺しだ‼ 差別反対‼ 差別主義者の皆殺し賛成――――ッ‼」

 

 

 

 彼女はスケート感覚で水面を華麗に滑り十回転ジャンプを見事に決めていた。マイクロ水着だと言うのに一ミリもエロく感じないのはもはや才能かも知れない。

 

 

 

「――だから、亜人を世界中にばら撒くつもりなんですか?」

 

 

 水を浴びながら気にする様子もなく、執事服を着た青髪赤目の男――エルヴィンは真剣な眼差しを向ける。

 

 

「その通りさ。考えるだけでもワクワクするよね。モンスターは良いよね。三級や二級程度なら掃いて捨てる程いる。やはり人材不足は移民受け入れに限るよ」

 

 

 

 ドウマを操っていた老人に師匠というだけあって、ベルタの口調は何となく彼に似ている。

 

 

「貴方は本当に碌でもない……。悪趣味が極まってますね」

 

 

 軽蔑した様に吐き捨てるエルヴィンは、あまり好ましく思っていない様子。しかし止める理由もないし、寧ろ好都合なので色々と協力していた。

 

 

 

「……私はただ人類の優しさと寛容さを信じたいだけさ。亜人と言っても所詮はモンスターだから、多少は女子供をレイプしてしまう事もあるだろう。でも移民達が全員悪人という訳じゃないんだ。あまり責めないでやって欲しい。女子供の被害は些細な犠牲だと思って、移民を差別せず広い心で受け入れるべきだ。それが人情であり、正義というものだろ? 私は多くの人類に暖かい心と正義があると信じたいね。何度も言うが、移民が全員悪人という訳じゃないんだ。一括りに移民差別するのは良くないよ、人としてね」

 

 

 

 まるで邪気が感じられない純粋な笑みだった。心の底からベルタは人を信じているのかも知れない。そう思わせる程に一切の邪気を感じさせない曇りなき眼。

 

 

 

 だからこそ「女子供を犠牲にしてまで移民を受け入れる国があると思えませんが……」とエルヴィンはあまりも悍ましさに寒気を感じてしまう。

 

 

「いやいや実際そうでもない。ドイツやフランスも女子供が幾ら性被害に遭い殺されようと移民を増やし続けた。何なら移民が暮らしやすい制度を作り続けたくらいさ。私はそういう光景を見て確信したね。人の優しさは無限だって。移民差別はきっとなくなるはずだよ。何たってこの世界は女子供が何されようと、笑って許せる人達ばかりなんだから……! きっと人型モンスターに女子供が酷い目に遭わされても、移民だから仕方ないって笑って許してくれる! 国民と移民は必ず共存できるよ!」

 

 

「……それが本当だとしたら、人間とはつくづく愚かですね。私は吸血鬼なので、愚かな人間の価値観は理解し難い」

 

 

 まくしたてるベルタに、冷たい視線を向けるエルヴィン。

 

 

「まぁ受け入れなければ、受け入れないで――殺し合うしかないよね。それはそれで面白いから私は大歓迎なんだけど……」

 

 

 ザブッっと水の中に勢いよく鼻まで浸かり、ベルタはブクブクと泡を吐いていた。

 

 

「寧ろそれが狙いなんでしょう、貴方は……」

 

 

 クーラーボックスから缶コーラを取り出し、エルヴィンは優しく投げた。

 

 

「十傑も倒し得るダンジョンも目星を付けた……。準備は万全。楽しくなるよ?」

 

 

 飛んでくる缶をキャッチし、プシュッと蓋を開けベルタは不敵に笑った。それにエルヴィンは「…………」一瞬だけ瞳から光を失う。

 

 

 

「……十傑を倒し得る。本気でそう考えているんですか? 十傑は6人しかいない。なのに何で十傑だなんて呼ばれているのか……。貴様が知らない訳じゃないでしょう?」

 

 

 彼は缶コーラの蓋を開けて、「未来永劫いつの時代であろうと、奴らが十人揃う事はない。それ程に稀有な才能。規格外の存在。だからこそ、あえて十傑と呼ばれている」と近場に配置してあった椅子に座る。

 

 

 

「私は実際に見た事ないんだけど、そんなに凄いモノなのかい? 十傑の戦いってのは」

 

 

 嘘か本当か分からない事を言いつつ、ベルタは尋ねた。普段は過去をお互いに探らない間柄だが、計画が上手くいって浮かれているのだろう。二人は少しだけ昔より親しく会話する様になっていた。

 

 

 

「凄いなんて安い言葉では語れんよ。私はこの目で見ました……。十傑の一人が一級四人を瞬殺し、我が主君を灰に変える瞬間を――……」

 

 

 

 思い出すのは主君を守り切れなかった汚点の過去。エルヴィンは目を伏せ、歯噛みし、飲み終わった缶を握り潰す。

 

 

「君が手も足も出なかったって言うのかい? にわかには信じ難いが……」

 

 

 ベルタは自分と同等の強さを持つ一級のエルヴィンを高く評価している。十傑とはいえ全く歯が立たない状況は想像が付かなかった。

 

 

 

「私は向かい合っただけで死を悟り、動けなかった……。主君が殺されたというのに、怒りを忘れる程の恐怖を抱いてしまった……」

 

 

 未だに悪夢を見る。エルヴィンは目に焼き付いた景色を何度も何度も思い出してしまうのだ。それ程に彼の中で主君の存在は大きかった。

 

 

 

「君の主君、レーネと言ったかな。文献でしか知らないけど、わざわざ十傑が出向く程に強かったのかい……?」

 

 

 ベルタは飲み終わった缶をプールの縁に置き、エルヴィンの方へ視線を向けた。

 

 

「ポテンシャルだけなら規格外。それこそ十傑に届き得たかと。だからこそ既存の十傑に危険視された。かの有名な十傑ですら、レーネ様の才能を恐れたという事です」

 

 

 

 誰もが見惚れる様なレーネの美貌を思い出し、それを守り切れないばかりか、動く事すらままならなかった過去の自分に苛立つエルヴィン。

 

 

 

 必ず私が――――奴を殺す。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 〈固有世界(ラストダンジョン)〉のダンジョン内。僕は黙って少し警戒しつつ、城の階段を上っていた。

 

 

「――レーネ。それが私の名前よ」

 

 

 白に近い金髪を腰まで伸ばした女性――レーネは、歩きながらそう教えてくれた。

 

 

 どうしてだろうか、「見た目が変化してないから、前世と言うべきか怪しい所だけど、かつてそう呼ばれ現世で生活していた事もあるの」そう言いながら彼女は何処か寂しげで、悲しそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

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