【ビッチ疑惑】の有名冒険者ちゃん!―責任取りたくないから処女は嫌だけど! ビッチなら!― 作:BIBI
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街に佇む――ギルド本部は襲撃で半壊となっていたが、今は三割ほどの改修作業は進んでおり、広い食堂は普段通り利用できる。
「ルナ……。リンって奴と付き合い始めたらしいね」
金髪の少年――ミシェル。高身長なわりに可愛い顔が印象的な彼は、今は不機嫌そうに溜息を漏らしていた。
頼んでいたうどんは目の前に置いているが、全く手を付ける様子もない。
「……そう」
ズルズルとうどんを啜りながら、ルナは普段通り無機質な返事をする。こうして二人が公然と秘匿案件を口にしているのは、単なる無警戒という訳ではない。
テーブルの上に設置してある小型の機器。そのボタンを押すと周囲の音が一定の距離で掻き消されてしまう。
だから人通りが多いこの空間でも、周囲の目を気にせず会話しても大して問題ないという訳だ。
「ルナ。自分が二級冒険者だって自覚ある?」
頬杖を突いて、向かい側の席に着いている彼女とミシェルは目を合わせる。
「…………どういう意味?」
モグモグと食べながら返事する。口に物を入れたまま喋るのは、結構行儀が悪い行為だがルナがやる分には不快感は少ない。
顔が無駄に整っている故だろう。大抵の事は上品な印象で塗り替えられてしまう。
「女冒険者の子供って第一子は才能を色濃く受け継ぐって事は、流石に知ってるよね?」
「当然」
「質の悪い男との間にできた子供は、才能を受け継ぎにくい事も理解してる?」
「当然」
ミシェルの短い問いに、短く答えるルナ。
「だったら何でリンって奴と付き合ってんだよ」
少し怒りや呆れが混じった声だった。そしてミシェルの瞳には悲哀が色濃く浮かんでおり、口調とは裏腹に真剣さを感じさせる。
「…………リンは才能あると思う。凄く優秀」
「あくまで希少な才を持っているってだけだろ。リンは――下級冒険者だ。二級のお前と釣り合わない」
首を傾げて何を言いたいのか分かって無さそうなルナに、あえて下級冒険者という分かりやすい区切りをミシェルは口にした。
一瞬、ルナはダンジョンコアに触れて吸収するリンを思い出しつつ、「言いたい事は、分かる……」と表向きには同調する意思を示す。
「なら――」
何で下級冒険者なんかと付き合っているんだと言い掛けるミシェル。しかしルナが遮る様に口を開く。
「でも下級冒険者は全体の99%だから……。一級、二級、三級、四級が残りの1%。その1%内だけで婚活してたら、私、行き遅れになっちゃう……、シュナやカオルみたいに。恋愛は、高望みや選り好みしてたら身を滅ぼす、かも……?」
ジト目で正論を叩き込むルナ。実際これは深刻な社会問題としても扱われている。特に近年は冒険者の恋愛離れも加速している。
シュナやカオルの様に極端に潔癖な女性が多いのは、幼少期から普通の男を遠ざけて高い理想を追い続けた結果らしい。
「その時は……、俺が……」
言い掛けて言えない。ごにょごにょと声が小さくなり途絶える。顔を耳まで真っ赤に染めてミシェルは口を真一文字に結ぶ。
やっぱ言えねぇ……。つーか何で今ので分かんねぇんだよ。
「…………?」
首をコテンと傾げてルナは不思議に「どうかした? 顔、赤いけど?」と天然発言していた。
「…………ルナ。今日暇だよな?」
空気を変える様にミシェルは勇気を出して切り出す。
「うん……。暇……。ホントはリンと過ごす予定だったけど……。一人で遊びに行っちゃったから」
落ち込んだ様子で肩を竦めるルナ。セックスの快感が忘れられなくて、起きてからずっと欲求が高まっている。
知らなかった……。自分でもこんなに性欲が強いなんて……。
「暇ならさ――俺と少し出掛けないか? 少し大事な話があるんだ」
「…………? …………分かった」
ミシェルは真剣な眼差しで誘い、ルナは何か事情があるのだろうと快諾した。
彼女からすればミシェルは幼馴染であり、大切な友人だ。その友人が真剣に頼んでいるのだから、積極的に協力したかった。何より拒否する理由もない。
寧ろ友人と出掛けるなんて久しぶりで、単純に楽しそうだと感じていた。
最近ミシェルって私に関わろうとしてこなかったから、何か嬉しい……。一緒に出掛けるとか何年振りだろ……。
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「はぁ……」
大きな溜息を吐いてビル内を歩く。中背より若干低い身長で、桜色の髪を腰まで伸ばした少女――ナヅナ。
彼女は本部襲撃の一件で、遠方から呼び出された三番隊隊長であり、気弱そうな態度や見た目とは想像が付かない程の立場を持つ。
最近は賊の動きが活発で……、どうにも腑に落ちない事ばかり……。しかも後手後手で大した手掛かりもなくて……、仮に私が狙われたらと思うと…………。
うぅ……。やっぱり冒険者辞めたい……。命を狙われ続ける立場なんて、幾らお金を貰っても割に合わない……。
でも私が居なくなったら、皆困るし、多分死亡リスクも格段に高くなっちゃいますよね……。
今の人手不足の時期に辞めたいだなんて……、絶対言えませんし……。
「……え?」
ごちゃごちゃと後ろ向きな気持ちを抱えていた時、二人の男女がナヅナの目に留まる。
周囲の冒険者も二人の姿に注目し、ざわざわと人だかりもできている。
「…………ッ!?」
手を握って……、そんな関係、だったんですか……? え? でもさっき団長がリンって男の子とルナちゃんが交際を始めたとか言ってた様な……。
こ、これって
無理やり……、じゃないですよね? ルナちゃん凄く楽しそう……。ミシェル君は照れた様に顔が赤くて、何か初々しい……。
「はわわわわ……」
ナヅナは壁際に隠れる様にして、二人がビルを出て行くまでの光景を陰からジー―ッと眺めるのであった。
昔から仲が良いとは思っていましたが……、やっぱりそういう感じだったんですね……。
でも、ミシェル君と浮気してるのは隠さない理由って……?
という事は公認の浮気……? 逆ハーレム? 冒険者なら珍しい話じゃありませんが、あのストイックで無表情なルナちゃんが……?
す、凄く、意外……。