※この作品はR-18です。

ヤリチンリトに寝取られるお話   作:大軍

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籾岡里紗の場合(3)

 放課後の裏門は、人通りが少ない。

 

正門と違って部活帰りの生徒くらいしか使わない。

街灯も少なくて、六月の夕方でも薄暗い影が落ちている。

 

里紗はイヤホンの片耳だけを外して、裏門を出た。

今日は友達と帰るタイミングが合わなかった。

——というのは嘘で、一人になりたかっただけ。

 

裏門を出てすぐの路地。

塀と塀の間の、車一台分しかない細い道。

 

——また、いた。

 

二人組。

見覚えがある。三日前に絡んできた他校の連中とは別だが、同じ匂いがする。

だらしなく着崩した制服。片方は煙草を吸っている。もう片方はスマホをいじりながら壁にもたれている。

 

里紗が通りかかった瞬間——目が光った。

 

「おー、待って待って。ねえ、ちょっと」

 

来た。

 

里紗は足を止めなかった。

イヤホンをしているフリで、まっすぐ前を見て歩く。

 

「聞こえてんでしょ。ねえ、可愛いじゃん。ちょっと話そうよ」

 

横に並ばれた。

煙草の煙が鼻をつく。

もう片方が——里紗の前に回り込んだ。道を塞がれる。

 

「なあ、無視すんなって。一緒に飯でも行こうぜ」

 

にやにや笑っている。目は里紗の脚を舐めるように見ている。着崩した制服のスカートから伸びた太腿を。胸元のボタンが一つ外れたブラウスの隙間を。

 

里紗は——足を止めた。

 

「邪魔なんだけど」

 

声は平たかった。怯えてはいない——少なくとも、そう見せている。

 

「冷たいなー。そのスカートの短さで誘ってんのかと思ったのに」

 

「は? お前の目が腐ってんだよ。どけ」

 

里紗が男の横を通り抜けようとした時——腕を掴まれた。

 

「つれないなー。もうちょっとさあ——」

 

指が——里紗の手首に食い込む。力が強い。

 

里紗の心臓が跳ねた。

——でも顔には出さない。絶対に。

 

「離せって言ってんだけど」

 

声は——少しだけ震えていた。

ほんの少し。自分にしか分からないくらい。

 

男の顔が近づく。煙草の匂い。吐息。

 

「ちょっとだけ——」

 

「おい」

 

声が——割って入った。

男二人の背後から。低い声。でも怒鳴っているわけじゃない。

さりげなく、でも有無を言わせないトーン。

 

里紗の手首を掴んでいた男が振り返る。

 

——結城リト。

 

制服のブレザーを肩にかけて、鞄を片手にぶら下げている。

少し癖のある髪。整った顔。

今——笑っていなかった。

 

「何してんの?」

 

リトが言った。

男二人に向けて。静かに。

 

「は? 誰だよお前」

 

煙草の男が里紗から手を離して、リトに向き直った。

 

「関係ないだろ、引っ込んでろよ」

 

リトが——半歩、前に出た。

 

「同じ学校の子だから。関係あるよ」

 

声の温度が——一段下がった。

笑顔の残滓もない。

里紗が知っている「爽やかな結城リト」とは、まるで別人のような目。

 

煙草の男が舌打ちした。

 

「チッ——彼氏かよ」

 

「違うけど。だから何?」

 

リトが——もう一歩、前に出た。

男二人との距離が一メートルを切る。

 

空気が——変わった。

里紗の背筋に、ぞくっとしたものが走った。

リトの目が——据わっている。本気だ。

 

煙草の男がリトを睨んだ。リトは動かなかった。

 

数秒——沈黙。

 

「……チッ、つまんねー」

 

煙草の男がそう吐き捨てて、もう片方の肩を叩いた。

二人は——舌打ちしながら、路地の奥に消えていった。

 

里紗は——その場に立ったまま、息を吐いた。

 

リトが振り返った。

 

「大丈夫?」

 

爽やかな笑顔——ではなかった。

心配そうな顔。眉が少し下がっている。

 

「……別に」

 

里紗の声は——まだ、少しだけ硬かった。

 

「手首、掴まれてたけど。痛くない?」

 

リトの視線が——里紗の右手首に落ちた。

赤い指の跡が、うっすらと残っている。

 

「平気だし。アタシ、この手のやつには慣れてるから」

 

里紗は手首を背中に隠した。

 

「慣れてるって……」

 

リトが——少しだけ眉を寄せた。

 

「毎回こういうの?」

 

「毎回じゃないけど、まあ、たまにね。見た目がこうだから。勝手に寄ってくんの」

 

里紗はスカートの裾をぴっと引っ張った。短い。自分でも分かってる。

 

「見た目関係ないでしょ。あいつらが悪い」

 

「……は?」

 

里紗が——リトを見た。

 

リトは——当たり前のように言った。

 

「籾岡がどんな格好してても、嫌がってるのに腕掴むのは普通にアウトだろ」

 

里紗は——一瞬だけ、言葉を失った。

 

(……何、それ)

 

「籾岡の見た目のせい」——そう言われると思った。

「そんな格好してるから声かけられんだよ」——そういう反応が来ると思った。

だって、いつもそうだから。親にも。先生にも。風紀委員にも。

 

なのにリトは——里紗の格好には触れなかった。

ただ「あいつらが悪い」と言った。

 

「……ふーん」

 

里紗は視線を逸らした。

唇を尖らせる。いつもの表情。余裕のある、生意気な顔。

 

「まあ、ありがと。助かったわ」

 

「ん。帰り道、途中まで一緒に行く? 同じ方向っぽいし」

 

「いい。一人で帰れるし」

 

里紗は手をひらひらと振って、歩き出した。

 

「じゃーね、結城」

 

背中を向ける。振り返らない。

——振り返ったら、何か余計なことを言ってしまいそうだったから。

 

五歩。十歩。

 

「籾岡」

 

リトの声が追いかけてきた。

 

里紗は——足を止めた。振り返らないまま。

 

「その格好、似合ってると思うよ」

 

——。

 

里紗の足が止まった。

 

ぱっ、と頬が熱くなった。

背中からリトの視線を感じる。

 

(……は? 何言ってんの、あいつ)

 

「は——はぁ? キモいこと言ってんじゃないわよ」

 

声が——裏返った。

しまった。噛んだ。

 

リトが——後ろで笑った気がした。

気配だけ。声は聞こえなかったけど。

 

里紗は早足で——ほとんど小走りで——路地を曲がった。

 

曲がった先で——立ち止まった。

 

心臓がうるさい。

頬が熱い。耳も熱い。

 

(やだやだやだ。何あれ。何あの台詞。ドラマかよ)

 

里紗は両手で顔を覆った。

 

似合ってる——って。

この格好が——似合ってるって。

 

(……褒められたの、初めてかも)

 

この格好を。短いスカート。開いた胸元。着崩した制服。

「直せ」「だらしない」「そんな格好するから」——そう言われるための服装だと、自分でも思っていた。

 

なのに——似合ってる、と。

 

(いやいやいや。結城だよ? ヤリチンの結城だよ? こういうの、手口じゃん。女の隙を突くための台詞じゃん)

 

里紗は頭を振った。

振ったけど——心臓は、まだ速かった。

 

         *

 

翌日の昼休み。

 

屋上に続く階段の踊り場で、里紗は友達二人と弁当——コンビニのおにぎりとサラダだったが——を食べていた。

 

「ねー、聞いた? 結城の新しい噂」

 

友達のユカが、おにぎりを頬張りながら言った。

 

「また? あいつ噂ばっかじゃん」

 

里紗は——いつも通りの声で返した。

 

「今度はさー、先生とやってるんじゃないかって。ティアーユ先生」

 

「先生と? まじ?」

 

もう一人の友達、マイが目を丸くした。

 

「あのおっとりした先生? ないでしょ」

 

「でもさー、放課後に特別教室棟で二人きりだったの見た子がいるんだって。結城が先生の手を引っ張ってたとか」

 

「うっわ、最低。先生にまで手出すとかマジありえない」

 

マイが顔をしかめた。

ユカもうんうんと頷いている。

 

「ほんと結城って最低だよね。顔だけは良いくせに中身クソっていう」

 

「ね。ああいう男が一番タチ悪い」

 

里紗は——おにぎりの包装を剥きながら、二人の会話を聞いていた。

 

いつもなら——ここで里紗も乗る。

「結城って最低だよね、マジ」——口癖みたいに言ってきた。

 

でも——今日は。

 

「……それって、ほんとに見たの? その子」

 

里紗が言った。

声のトーンが——いつもと少し違った。

 

ユカとマイが、ちらっと里紗を見た。

 

「え? うん、見たって言ってたけど」

 

「手を引っ張ってただけでしょ? それだけで『やってる』って決めつけんのは、ちょっと雑じゃない?」

 

里紗の口調は——軽い。

いつものギャルっぽい口調。でも——言っている内容が、いつもと違う。

 

「え、籾岡が結城かばうの? 珍しくない?」

 

マイが首を傾げた。

 

「かばってないし。ただ、噂って結局誰かの妄想じゃん。見た目で判断して、勝手にストーリー作って。それって——」

 

里紗は——一瞬、口を閉じた。

 

(——アタシが、されてることと同じじゃん)

 

見た目で判断される。勝手にストーリーを作られる。

「ギャルだから遊んでる」「着崩してるから男慣れしてる」「ナンパされる方にも原因がある」。

 

結城リトも——同じなんじゃないか。

顔が良くて、女の子と仲がいいだけで、勝手に「ヤリチン」にされてるんじゃないか。

 

(……分かんないけど)

 

「——ま、アタシは見てないから何とも言えないだけ。別にかばってるわけじゃないし」

 

里紗はおにぎりをぱくっと頬張って、話を切った。

 

ユカとマイは顔を見合わせたが——深くは追及しなかった。

 

里紗は——おにぎりを噛みながら、昨日のことを思い出していた。

 

あの路地。手首を掴まれた瞬間。

リトが割って入ってきた時の——あの声。

 

「関係ないだろ」と言われた時、「同じ学校の子だから」と返した。

あの時のリトの目は——ヤリチンの目じゃなかった。

 

(……噂って、あてにならないよね)

 

里紗は——そう思った。

まだ——「思い始めた」くらいのところで。

 

         *

 

五時間目が終わった後の休み時間。

 

里紗が廊下を歩いていると——後ろから声がかかった。

 

「籾岡」

 

振り返ると——結城リトがいた。

 

「あ」

 

里紗の口から——間抜けな声が漏れた。

 

リトは——いつもの爽やかな笑顔だった。

昨日の、あの据わった目とは全然違う。太陽みたいに明るい。

 

「昨日のあれ、その後大丈夫だった?」

 

「あー……うん。別に何もないし」

 

里紗は髪を弄った。毛先をくるくる巻く。癖だ。

 

「手首、跡残ってない?」

 

「残ってないって。大げさだなー」

 

リトが——里紗の右手首をちらっと見た。

里紗は反射的に手首を隠した——隠してから、隠す必要なかったと思った。

 

「あのさ、昨日通報した方がいいかなって思って。あの辺、結構あいつら出没してるっぽいし」

 

「通報? 結城がしたの?」

 

「うん。帰ってから交番に寄って、裏門付近に不審者がいるって言っておいた」

 

里紗は——目を丸くした。

 

「え、わざわざ?」

 

「うん。ついでだったし」

 

ついで——と言ったが、裏門からリトの家の方向とは逆だ。

里紗はそれを知っていた。リトが正門側から通学していることくらい、同じ学校にいれば分かる。

 

(わざわざ……反対方向の交番に寄ったってこと?)

 

「ていうか、交番に行ったってことは——遠回りしたでしょ」

 

「まあ、ちょっと」

 

リトがさらっと言った。

さらっと——まるで大したことじゃないように。

 

「……バカじゃないの」

 

里紗の声が——小さくなった。

 

「え?」

 

「いや——だから、別にそこまでしなくても良かったのに。アタシのことで、結城が手間かけることないじゃん」

 

「手間じゃないよ。放っておいて籾岡がまた絡まれたら嫌だし」

 

——嫌だし。

 

その言い方が——あまりにも自然で、里紗は返す言葉を失った。

 

「じゃ、また」

 

リトが手を上げて、教室に戻っていった。

 

里紗は廊下に立ったまま——数秒、動けなかった。

 

(……なに、あいつ)

 

心臓がうるさい。

また。昨日と同じだ。

 

「嫌だし」——その一言が、里紗の胸の真ん中に引っかかっている。

引っかかって、取れない。

 

(ヤリチンの手口。女の隙を突くための台詞。……そうだよね?)

 

そう思おうとした。

でも——リトの目を思い出す。昨日、あの男たちの前に立った時の目。今日、廊下で「手首大丈夫?」と聞いてきた時の声。

 

(……噂って、ほんとにあてにならないのかも)

 

里紗は——そう思い始めていた。

 

         *

 

放課後。

 

里紗は昇降口のベンチに座って、靴を履き替えていた。

 

すぐ隣に——リトが立った。

自分の靴箱からローファーを出している。

 

「お、籾岡。お疲れ」

 

「……お疲れ」

 

近い。距離が近い。

 

リトが靴を履き替えながら——里紗の方を見た。

 

「今日、帰り裏門?」

 

「……なんで?」

 

「いや、あの交番にちゃんと巡回してくれるか確認しに行こうと思って。一緒に行く?」

 

「一緒に……」

 

里紗の心臓が跳ねた。

 

(落ち着け。ただの帰り道だから。別に——)

 

「べっつに、一緒じゃなくてもいいし。勝手に行けば?」

 

「そう? じゃ、先に行くわ」

 

リトがあっさり歩き出した。

 

あっさりすぎる。

もう少し——もう少し食い下がってくると思った。

ヤリチンなら——しつこく誘うはずじゃないのか。

 

なのに——あっさり。

 

里紗は靴を履き替え終えて——リトの背中を見た。

もう昇降口の外に出ている。

 

(……ったく)

 

里紗は立ち上がって——リトの後を追った。

 

「ちょっと、待ちなさいよ」

 

リトが振り返った。

 

「ついてくけど——別にアンタと帰りたいわけじゃないから。たまたま同じ方向なだけだから」

 

「うん、分かってる」

 

リトが——笑った。

あの爽やかな笑顔。

 

里紗は顔を背けた。

耳が熱い。

 

(アタシ、何やってんの)

 

二人で裏門を出た。

 

あの路地を通る。昨日、男に腕を掴まれた場所。

今日は——誰もいなかった。

 

「いないね」

 

リトが周囲を見回した。

 

「当たり前でしょ。昼間だし」

 

「でも一応ね」

 

リトが——路地の先を覗き込んだ。

その横顔を、里紗は見ていた。

 

少し癖のある前髪。まつ毛が長い。横顔の輪郭が——整っている。

 

(……顔は、ほんとに良いんだよな)

 

認めたくないけど。客観的事実として。

 

「大丈夫そうだね。交番にも言ってあるし、しばらくは巡回してくれると思う」

 

「ん。ありがと」

 

里紗の声が——小さかった。

自分でも驚くくらい、素直な「ありがとう」だった。

 

リトが——里紗を見た。

 

「籾岡って、ありがとって言う時だけ声小さくなるよな」

 

「っ——うるさい! 小さくない!」

 

里紗がリトの肩をばしっと叩いた。

リトはよろけたフリをして、へらっと笑った。

 

(こいつ——)

 

なんだろう。この距離感。

馴れ馴れしくて——でも不快じゃない。

ぐいぐい来るけど——押し付けがましくない。

 

里紗は——気づかないうちに、笑っていた。

口の端が上がっている。いつものにやにやした笑いじゃなく——もっと自然な、力の抜けた笑み。

 

「——ね、籾岡」

 

リトの声が——少し変わった。

 

里紗は顔を上げた。

 

リトが——近い。

半歩分。さっきまでより、半歩分だけ近い。

 

「何——」

 

リトの手が——里紗の髪に伸びた。

 

「葉っぱ、ついてる」

 

指先が里紗の耳の横を掠めた。

明るい茶色のセミロングを、さらり、と指が通り抜ける。

 

里紗は——動けなかった。

 

「取れた」

 

リトが——小さな葉っぱを摘んで見せた。

桜の枯れ葉。もう茶色くなったやつ。

 

「……ぁ、ありがと」

 

(葉っぱ——本当に、葉っぱだった)

 

里紗は胸を撫で下ろした。

何を想像したんだ。何を警戒したんだ。

ヤリチンだから何かしてくると思った——でも、ただ葉っぱを取ってくれただけで。

 

(やっぱり——噂は、噂なんだ)

 

里紗は——そう確信しかけた。

 

結城リトは、噂ほどひどい奴じゃない。

ナンパから助けてくれて。交番に通報してくれて。見た目を褒めてくれて。

優しくて——爽やかで——距離感が心地よくて。

 

噂なんて——嘘じゃん。

 

里紗がそう思った——その瞬間。

 

リトの手が——里紗の背中に触れた。

 

「——え?」

 

掌が——里紗の背中の中央に置かれていた。

ブラウス越し。指の温度が——伝わってくる。

 

「ちょ——結城?」

 

声が——ひっくり返った。

 

リトの手が——ゆっくりと、里紗の背中を下に滑った。

肩甲骨の間から——腰のカーブに向かって。

指先が、ブラウスの布地を僅かに引くように——なぞる。

 

里紗の背筋を、電流のようなものが走った。

 

「なっ——何、して——」

 

リトの手が——里紗の腰に回った。

横腹に指が触れる。引き寄せるように。

里紗の身体が——リトの胸に、半歩分だけ近づいた。

 

「離——」

 

言いかけた。

離せ、と。

 

でも——声が、出なかった。

 

リトの腕が——里紗の腰に回っている。

抱き寄せるほど強くはない。でも——離れることを許さない程度の力。

 

里紗の心臓が——破裂しそうなほど速かった。

 

リトの顔が——近い。

吐息が——里紗の額にかかっている。

 

「籾岡」

 

低い声。廊下で聞くのとは違う。

もっと——近い場所で鳴る、鼓膜を震わせる声。

 

里紗の身体が——熱い。

リトの手の温度が、ブラウス越しに腰の皮膚を焼いている。

 

(やだ——なに——これ——)

 

抱き締められると気持ち良くなる。

性感帯——なんて言葉は知らないが、里紗の身体は知っていた。

腰に手を回されて——引き寄せられて——密着しかけたその瞬間から、膝の力が抜け始めている。

 

「はな……して……」

 

声が——甘くなっていた。

自分で分かった。抵抗の言葉なのに——声が、震えて、甘い。

 

リトの指が——里紗の腰で、くいっと布地を握った。

 

里紗の腰が——びくっと跳ねた。

 

(うそ——なんで——こんな——)

 

抵抗しなきゃ。

突き飛ばさなきゃ。

 

——できない。

 

リトの腕の中で——里紗の身体は、力を失い始めていた。

 

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