リトの腕が、腰に回っている。
離れなきゃ。突き飛ばさなきゃ。
頭の中でそう叫んでいるのに——身体が動かない。
ブラウス越しに伝わるリトの体温が、腰の皮膚をじんわりと焼いている。
指が——里紗の腰骨のすぐ上に添えられていた。
親指が、くるり、とブラウスの布地の上で小さな円を描いた。
「っ——」
声にならない声が漏れた。
背筋に甘い痺れが走って、膝がかくんと折れかけた。
「ちょ——結城、やめ——」
「嫌?」
リトの声が——耳元で鳴った。
近い。近すぎる。吐息が鼓膜に触れるような距離。
嫌——と言うべきだ。
言わなきゃいけない。
里紗は口を開いた。
「——っ」
言えなかった。
嫌、の一文字が——喉の奥に引っかかって、出てこない。
嫌じゃないから。
里紗は——その事実に、ぞっとした。
(うそ——アタシ、こいつのこと——)
リトの手が、里紗の腰から背中に移った。
掌が、肩甲骨の間にぴたりと当たる。
そこから——ゆっくりと、背骨に沿って上がっていく。
ブラウスの布地が肌の上を滑り、その下をリトの指の熱が追いかけてくる。
里紗の呼吸が——浅くなっていた。
「籾岡」
リトの手が——里紗の後頭部に触れた。
明るい茶色のセミロングに、指が差し込まれる。
髪の間を指がすり抜ける感触が——頭皮をぞわぞわと撫でた。
里紗の目が——リトの顔を捉えた。
整った顔。少し癖のある前髪。長いまつ毛。
その奥にある目が——里紗だけを見ていた。
(やだ——やだ——アタシ——)
好きなんだ——この男のこと。
いつからかは分からない。
ナンパから助けてくれた時か。交番に行ってくれた時か。「似合ってる」と言った時か。「嫌だし」と言った時か。
全部だ。全部が積み重なって——里紗の中で、もう無視できないほど大きくなっていた。
リトの顔が——さらに近づいた。
鼻先が触れそうな距離。唇が——。
「——ん」
柔らかい感触が、里紗の唇を塞いだ。
ちゅ、と小さな音。
里紗の目が——大きく見開かれた。
キスされている。
結城リトに——キスされている。
頭が真っ白になった。
思考が全部吹き飛んだ。
リトの唇が——里紗の唇の上で、ゆっくりと動いた。
噛むでもなく、舌を入れるでもなく、ただ——柔らかく、触れるだけのキス。
ちゅ、ちゅ、と唇が離れてはまた合わさる。
角度を変えて。少しだけ深くなって。
里紗は——目を閉じていた。
いつの間にか。
(……あったかい)
リトの唇が離れた。
糸が——引かなかった。それくらい優しいキスだった。
里紗は——目を開けた。
リトの顔が目の前にある。息がかかる距離。
「……最低」
里紗が——小さな声で言った。
「……ごめん」
リトが——謝った。
でも腕は——里紗の背中に回ったままだった。
里紗は——リトの胸に額を押し付けた。
顔を見られたくなかった。
真っ赤になっているのが——自分でも分かったから。
「……アタシの家、すぐそこ」
自分でも信じられない言葉が——口から出た。
(何言ってんの、アタシ——)
「……いいの?」
「いいとか悪いとかじゃなくて……ここ、外だし……人来るし……」
意味不明な言い訳だった。
でもリトは——それ以上聞かなかった。
*
マンションのエレベーターの中は——沈黙だった。
里紗はエレベーターの壁にもたれて、自分の心臓の音を聞いていた。
リトは——反対側の壁に寄りかかって、里紗を見ていた。
目が——合った。
里紗はすぐに逸らした。
七階。
ドアの前に立つ。鍵を回す。
「……入って」
声が——小さくなった。
リトが——里紗の部屋に入った。
「おじゃまします」
靴を脱ぐ。里紗のローファーの横に、リトのローファーが並んだ。
里紗は——その光景を、一瞬だけ胸の奥が痛くなるほど見つめた。
靴が——二足ある。自分のだけじゃない。
リビングに入る。
広い部屋。きれいな内装。大きなソファ。テレビ。
リトが——ぐるりと部屋を見回した。
「……いい部屋だね」
「まあね。親が見栄張りだから」
里紗はブレザーを脱いで、ソファの背もたれに引っ掛けた。
ブラウスのボタンが一つ外れた制服。短いスカート。
いつもの——着崩したまま。
「一人暮らし?」
リトが——さらっと聞いた。
里紗の手が——止まった。
「……一人暮らしじゃないし。親は、いるよ。今いないだけ」
「いつ帰ってくるの?」
「……知らない」
声が——掠れた。
リトが——里紗を見た。
里紗は目を逸らした。
「お父さんは出張? お母さんは?」
「なんで分かんの」
里紗が——リトを見た。
リトは——穏やかな顔をしていた。
「冷蔵庫、なんか作り置きっぽいのがなかったから。洗い物もほとんどないし。家族で住んでる感じがしない」
「……見すぎでしょ。探偵かよ」
里紗は唇を曲げた。
いつもの生意気な顔——を、作ろうとした。
でも——目が、少しだけ潤んでいた。
「お父さんは海外。お母さんは介護。二人とも忙しいから——アタシは一人で大丈夫なの」
「大丈夫じゃないでしょ」
里紗の呼吸が——止まった。
「毎日この部屋に帰って来て。ただいまって言っても返事がなくて。飯も一人で食って。大丈夫なわけないじゃん」
リトの声は——責めているのではなかった。
怒っているのでも、同情しているのでもない。
ただ——同じ目線で、言っているだけ。
里紗の目から——涙が、一滴だけ零れた。
「……っ」
里紗は慌てて拭った。
袖で。乱暴に。
「泣いてないから。花粉で——」
「六月に花粉?」
「——うるさいっ」
里紗が——リトの胸を叩いた。
拳は——ぜんぜん痛くなかった。
リトが——里紗を抱き締めた。
両腕が、里紗の背中に回る。
肩甲骨を包み込むように。腰を引き寄せるように。
里紗の身体が——リトの胸にぴたりと密着した。
「——っ!」
里紗の全身に——電流が走った。
抱き締められると——気持ち良くなる。
里紗の身体は、それを知っていた。
膝から力が抜ける。
腰が——溶けたみたいに柔らかくなる。
リトの腕の中で、里紗の全身が——一瞬にして力を失った。
「あ——」
甘い声が——勝手に漏れた。
リトの手が——里紗の後頭部を支えた。
もう片方の手が——腰から、ゆっくりと下がっていく。
スカートの裾に指先が触れた。短いスカートの裾。いつもの——着崩した制服のまま。
里紗の唇を——リトがもう一度、塞いだ。
ちゅ、と音がした。
今度は——さっきより深い。
唇が重なって、角度が変わって——舌先が、里紗の唇を割った。
「んっ——」
舌が絡んだ。
ぬるっとした感触と、リトの唾液の温度。
里紗の舌が——リトの舌に押されて、引かれて、吸われた。
じゅる、と音がした。
里紗の口から、涎が顎を伝って落ちた。
「ぁ——は——ちゅ——」
キスしながら——リトの手が動いていた。
スカートの裾から、太腿に触れる。
指先が——内腿をゆっくりと滑り上がっていく。
里紗の脚が——ぴくっと震えた。
「や——」
ろれつが回らない。
舌がリトに絡め取られていて——言葉が出てこない。
リトが——里紗をソファに座らせた。
いや——座らせたというより、崩れ落ちたのを受け止めた。
ソファに腰を下ろした里紗の上に、リトが覆い被さった。
ブラウスのボタンが一つ外れている。胸元が開いている。
スカートが太腿の上まで上がっている。
制服は——着崩したまま。何も直していないまま。
リトの目が——里紗の身体を見下ろした。
「……エロいな、この格好」
「っ——バカ、言うな——」
里紗の顔が——耳の先まで真っ赤だった。
リトの手が——ブラウスの胸元に触れた。
外れているボタンの隣。まだ留まっているボタンに指がかかった。
ぷつん。
一つ外れた。
「ぁ——」
ぷつん。もう一つ。
ブラウスが——はだけた。
白いブラジャーが露出する。Dカップの膨らみが——ブラの中で重力に従って柔らかく揺れた。
リトの指が——ブラの縁に触れた。
指先がカップの中に滑り込んでいく。
くにゅ、と柔らかい肉が——指に押されて形を変えた。
「あっ——」
里紗が声を上げた。
指が——乳首の突起を、転がすように撫でた。
こり、こり。
硬くなった乳首を、人差し指の腹で円を描くように刺激する。
「んっ——やっ——」
ぴりぴりした快感が、胸から腹へ、腹から腰へ——波のように広がっていく。
リトが——もう片方の手で、里紗の腰を撫でた。
スカートの上から。布地越しに腰骨をなぞり、お腹の柔らかい肉を掌で包む。
「ひっ——」
身体が、リトの手に——吸い寄せられるように反応する。
触れられた場所から、甘い熱が広がっていく。
「籾岡って、めちゃくちゃ反応いいな」
「ぁ——う、うるさい——言うな——っ」
里紗が唇を噛んだ。
でも——噛んだ唇の隙間から、声が漏れ続けている。
リトの手が——スカートの裾から中に入った。
太腿の内側を指が滑る。ぬるっとした感触。
——汗だ。太腿の付け根が——もう、汗で濡れていた。
指が——下着に触れた。
「——っ!」
里紗の腰がびくんと跳ねた。
「濡れてる」
「っ——言うなって、言って——んぅっ!」
リトの指が——下着の上から、縦筋をなぞった。
布地がぐっしょりと湿っていて、指が触れるたびにぴちゃ、と小さな音がした。
「あぁっ——やっ——そこ——」
リトの指が——下着をずらした。
直接、指先が——秘所に触れた。
ぬるっ。
「ひぁっ——!」
里紗の背中がソファに押し付けられた。
腰が——勝手に動いている。リトの指に押し付けるように。
指が——花弁を割って、中に滑り込んでいく。
ずぷ、と音がした。
「あっ——あぁっ——だめ——」
一本の指が——里紗の中で、くるりと曲がった。
中の壁を——指の腹で押し上げるように撫でる。
くちゅ、くちゅ。
里紗の中が——指を絡め取るように締まった。
「やっ——あっ♡——な、にこれ——」
声に♡が混じった。里紗自身がそれに気づいて——でも、もう制御できなかった。
リトが——里紗のブラウスの裾をたくし上げた。
着崩した制服は脱がさない。スカートも——履いたまま。
ブラだけが胸の上にずらされて、Dカップの乳房が露になった。
白い肌。薄いピンクの乳首が、硬く尖って立っている。
リトの唇が——乳首に落ちた。
ちゅ、と吸われた。
「あっ♡——!」
里紗の背中が弓なりに反った。
ちゅぱっ♡ ちゅぱっ♡
舌先が乳首の先端を転がす。歯の先がかりっと擦る。その刺激が——下腹部に直接響いた。
「やっ——あっ♡ あっ♡——きもち——」
リトの指が抜かれた。
ぬぷ、と音がして——里紗の中が、名残を惜しむように震えた。
リトが——ズボンのジッパーを下ろす音がした。
里紗は——薄目を開けた。
リトの——硬く張り詰めたものが、見えた。
竿が太い。先端のカリが張り出していて、亀頭が怒ったように赤い。
血管が浮き出ている。脈打つように、びくんと跳ねた。
里紗の喉が——鳴った。
「だめ——それ——入んない——」
「大丈夫。ゆっくりやるから」
リトが——里紗の脚を開いた。
スカートが腰まで捲れ上がって——下着はもう横にずらされたまま。
秘所が——むき出しになっている。花弁が充血して赤く腫れていて、蜜が太腿を伝って垂れていた。
リトの先端が——花弁に触れた。
ぬるっ。
「ひ——」
カリが——入り口を押し広げた。
ずぶっ……♡
「あぁぁっ♡——!」
里紗の口から——甘い悲鳴が漏れた。
太い。熱い。中を押し広げられる感覚が——腰の奥まで響いた。
リトの硬いものが——里紗の中を、ゆっくりと、奥まで進んでいく。
カリの段差が膣壁を擦る感触が——一つ一つ、鮮明に伝わってくる。
ぬぷぷ……♡
根元まで——入った。
「ぁ——あ——おく、まで——」
里紗の指が、ソファのクッションを掴んだ。
爪が食い込む。
リトが——動き始めた。
ずちゅっ♡
「あっ♡」
ぬぷっ♡ ぐちゅっ♡
「やっ——あっ♡ あっ♡——」
ぱんっ♡ ぱんっ♡
腰と腰がぶつかる音。里紗の中から溢れた蜜が、結合部でぐちゅぐちゅと泡立つ。
着崩した制服が——リトの挿入を邪魔しない。
スカートは腰に巻き上がって、ブラウスは胸の上までたくし上げられて。
制服を着たまま——犯されている。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡——すご——っ♡」
リトの腰が——テンポを上げた。
ぱんぱんっ♡ ぱんっ♡
里紗の身体がソファの上で跳ねる。
Dカップの乳房が、突き上げのたびにぶるんぶるんと揺れた。
乳首にはリトの唾液がてらてらと光っていて、空気に触れるたびにきゅっと硬くなる。
「だめっ♡ だめぇっ♡ きもちいいのぉっ♡——」
里紗の声が——壊れた。
ずちゅっ♡ ぬぷっ♡ ぐちゅっ♡
リトのカリが——奥の壁を叩くたびに、里紗の全身を痙攣させるような快感が走る。
腰が——自分の意思とは関係なく、リトに合わせて動いている。
打ち付ける腰を——迎え入れるように、腰が跳ね上がる。
「あっ♡ あっ♡ やぁっ♡——なんで——こんな——っ♡」
涙が——零れた。
気持ちよすぎて。怖くて。嬉しくて。全部混ざって——涙になった。
リトが——里紗を抱き起こした。
座位の姿勢。リトの上に、里紗が跨る形。
ずん、と重力で奥まで入った。
「ひぁっ♡♡——!」
里紗の両腕が——リトの首に回った。
しがみつくように。抱き締められるように。
リトの腕が——里紗の背中に回った。
あの時と同じ。抱き締められる。
里紗の身体が——溶けた。
「あぁっ♡ すきっ♡ すき——っ♡」
言ってしまった。
快楽の波の中で——本音が——漏れた。
リトが——里紗の耳元で、何か呟いた。
「——ギャル、とやりたかったんだよな——」
小さな声だった。
里紗の耳には——届かなかった。
リトの腰が——最後の突き上げを放った。
どぷっ♡ びゅるるっ♡
熱い。熱いものが——里紗の中を満たした。
「あぁぁぁっ♡♡——!」
里紗の身体が——びくんびくんと痙攣した。
リトにしがみついたまま、腰が跳ねて、膣が絞るように脈打って——。
数秒——十秒——里紗の意識が白く飛んだ。
気がついた時——里紗はリトの胸にもたれかかっていた。
着崩した制服は、もう原型をとどめていなかった。
ブラウスのボタンはすべて外れて、はだけたまま。
スカートは腰に巻きついたまま。
ブラは胸の上にずり上がって、乳房がむき出しになっている。
里紗の太腿を——白い液体が伝って流れていた。
「……っ」
里紗は——リトの胸に顔を押しつけたまま、動けなかった。
(アタシ——やっちゃった)
あれほど嫌いだと言った、ヤリチンの男に。
絶対ついて行かないと思った男に。
「……後悔してる?」
リトが——里紗の髪を撫でながら聞いた。
里紗は——答えなかった。
代わりに——リトの胸板に、額をぐりぐりと押し付けた。
「……してないし」
小さな声。
たぶん、リトにしか聞こえない声。
リトが——笑った気配がした。
里紗は目を閉じた。
リトの心臓の音が、耳に伝わってくる。
広い部屋に——二人の気配が、あった。