※この作品はR-18です。

ヤリチンリトに寝取られるお話   作:大軍

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モモ・ベリア・デビルークの場合(2)

 結城家のキッチンは狭い。

 

デビルーク王宮の厨房と比べれば、おもちゃみたいなものだ。

だからこそ、美柑さんと並んで包丁を握ると、お互いの肘がぶつかりそうになる。

その距離が──モモには心地よかった。

 

「モモさん、人参は乱切りでお願いね」

 

「はい、こうですね?」

 

まな板の上に転がした人参に包丁を入れる。

斜めに、回しながら。

美柑さんに教わった通りに。

 

地球に来て、まだ数週間。

お姉様──ララの後を追って、ナナと二人でこの星にやってきた。

宇宙船を降りた時は、空気の匂いが違うことに驚いた。

デビルーク星の無機質な空気と違って、地球の空気は湿っていて、草と土の匂いが混じっている。

 

結城家に居候させてもらうことになったのは、お姉様がそう決めたからだ。

モモに異論はなかった。

──お姉様の婚約者である、結城リトの近くにいられる。

その事実は、モモにとって都合が良かった。

 

ことん、と人参の切れ端がまな板から転がり落ちた。

 

モモはそれを拾い上げながら、自分の指先を見た。

細い指。爪はきれいに整えてある。

この手でリトさんに触れたことは、まだ一度もない。

 

(……リトさん)

 

心の中で名前を転がすだけで、胸の奥がちいさく疼く。

 

初めて会った時──リトさんは、モモの目を見て笑った。

「よろしくな、モモ」と。

それだけのことだ。それだけのことなのに、デビルーク星では誰にも向けられたことのない種類の笑顔だった。

作り物じゃない、真っ直ぐな──。

 

モモは包丁の手を止めた。

 

──いいえ。本当にそうかしら。

 

あの笑顔は本物なのか。

それとも、女を落とすために磨き上げた「武器」なのか。

 

学園で広まっている噂を、モモは知っている。

『結城リトはヤリチン』──。

複数の女と関係を持っている。噂だけなら聞き流せる。

けれど、モモの目は節穴ではない。

リトさんの周りにいる女性たちの空気が変わっていくのを、肌で感じ取っていた。

 

視線の温度。声の柔らかさ。身体の距離。

──落ちた女には、共通した匂いがある。

 

だからモモは他の女子に忠告した。

『リトさんには気をつけた方がいいですわ』と。

あれは本気だった。

 

同時に──自分自身への戒めでもあった。

 

お姉様の婚約者。

手を出してはいけない男。

ましてや、あんな噂のある男に。

好意を持つ自分自身が、一番危ない。

利用されるかもしれない。消費されるかもしれない。

大勢の中の一人にすら──。

 

「モモさん?」

 

美柑さんの声で意識が戻った。

 

「あ──ごめんなさい、少しぼうっとしてしまいました」

 

「大丈夫? 疲れた?」

 

「いいえ、平気ですわ」

 

猫をかぶった笑顔を貼り付ける。

これは得意だ。誰にも本心を見せない。それがモモ・ベリア・デビルークという女の生き方。

 

鍋に水を張り、火にかけた。

リビングの方から、ナナの声がする。

 

「うおっ、このサバンナキャットすげー! 見ろよこの跳躍力!」

 

テレビに食い入るナナの甲高い声。

平和な、結城家の午後。

 

鍋の水面に、小さな泡が浮かび始めた時──。

 

二階から、物音がした。

 

とん、と何かが壁にぶつかるような、くぐもった音。

モモの耳が、それを拾った。

デビルーク人の聴覚は地球人より鋭い。

 

続いて──声。

微かだけれど、確かに。

女の声。

 

モモの手が止まった。

水面の泡が、ひとつ弾けた。

 

「あれ、何の音だろ。ララさんかな」

 

美柑さんが天井を見上げた。

 

「きっとお姉様がまた発明品を壊したんです。わたし、見てきますね」

 

自分でも驚くほど滑らかに嘘が出た。

美柑さんは「お願いね〜」と鍋に向き直った。

 

         *

 

階段を上がる。

 

裸足の足裏が、木の段板を踏むたびに微かに軋む。

一段、一段。足音を殺す。

デビルーク人のしなやかな筋肉が、体重を分散させて着地する。

 

二階の廊下。

西日が窓から差し込んで、フローリングの上に長い橙色の帯を作っていた。

埃が光の中を舞っている。

 

声は──リトさんの部屋。

 

モモは廊下を進んだ。

自分の影が、壁に長く伸びているのが見えた。

心臓が、こめかみの辺りで脈打っている。

 

ドアの前。

 

開いている。

2センチほどの隙間。

ドアの下端と床の間にも僅かな隙間があって、そこから部屋の中の光が漏れている。

 

モモはドアの横の壁に背中をつけた。

呼吸を浅くする。

そっと、顔を傾けて──隙間に目を寄せた。

 

最初に見えたのは、床に脱ぎ捨てられた服だった。

 

お姉様の制服。

白いブラウス。水色のリボン。チェックのスカート。

くしゃくしゃに丸まって、ベッドの脚元に落ちている。

その隣に、リトさんのシャツ。

 

モモの視線が、床から上に這い上がった。

 

ベッドが見えた。

 

ドアの隙間から覗ける角度は限られている。

だが──見えた。

 

お姉様の脚。

 

白い、長い脚が、宙に浮いていた。

足首から先がぴんと伸びて、つま先が天井を向いている。

膝の裏側に薄っすらと汗が光っている。

 

その脚の間に、リトさんの腰があった。

 

引き締まった腰が、ゆっくりと前後に動いている。

背中の筋肉が、動くたびに肩甲骨の下で波打つ。

お姉様の太腿が、その腰の両側で揺れている。

 

ぬぷっ……ぐちゅっ……

 

湿った音が、ドアの隙間から滑り込んできた。

その音の正体を、モモの頭が理解するより先に──身体が理解した。

下腹部に、じわりと熱が集まる。

 

「リトぉ……♡ もっと……奥……♡」

 

お姉様の声だった。

 

聞き慣れたあの明るい声が、全く別の音色になっている。

甘く、溶けて、ねだるような。

デビルーク第一王女の──あの毅然としたお姉様の声じゃない。

 

視界の端に、お姉様の手が見えた。

シーツを握りしめている。

指の関節が白くなるほど、きつく。

 

隙間から覗ける角度が変わった。

モモが僅かに首の角度を変えたから。

 

──見えた。

 

お姉様の顔。

 

ピンクのロングヘアが汗でこめかみに貼り付いている。

緑色の目は半分閉じられ、焦点が合っていない。

唇が半開きになって、そこから途切れ途切れの吐息が零れている。

頬は紅潮し、耳の先まで赤い。

 

モモが知っている「ララお姉様」の顔では、なかった。

 

完全に──壊されている。

 

リトさんの手が、お姉様の左の胸を掴んでいた。

大きい。お姉様の胸はGカップ。

リトさんの指が白い乳房に食い込んで、指の間から柔らかな肉がはみ出している。

くにゅっ……♡

親指が、勃ち上がった桜色の乳首を押し潰すように擦る。

 

「やぁっ♡ リト……そこ……乳首いじらないでぇ……♡」

 

いじらないで、と言いながら──お姉様の背中が弓なりに反っていた。

胸を突き出すように。もっと触って、と言うように。

言葉と身体が矛盾している。

 

リトさんは、笑っていたのだと思う。

背中越しだから表情は見えない。

けれど、肩の力の抜き方で分かる。余裕がある。

お姉様の反応を──楽しんでいる。

 

ずちゅっ♡ ぬぷっ♡

 

腰の動きが変わった。

さっきまでのゆっくりした動きから、一段深く、鋭くなる。

お姉様の脚が、びくんと跳ねた。

 

「ひぁっ♡♡ お、おく……っ♡ そこぉ♡ 当たって……っ♡♡」

 

リトさんの陰茎が、奥を突いている。

モモの位置からは直接見えない。

見えないけれど──音で分かる。

ぐちゅ、ぐちゅ、と粘膜が擦れ合う濡れた音。

お姉様の中がどれほど濡れているか、その音だけで想像できてしまう。

 

ぱんっ♡ ぱんっ♡

 

腰が打ちつけられるたびに、肌と肌がぶつかる乾いた音が響く。

お姉様のお腹の奥に、リトさんの硬い先端が押し込まれて、引き抜かれて、また叩き込まれる。

その度に、お姉様の大きな胸がぶるんと上下に揺れる。

 

「リトっ♡ リトっ♡ きもちいのぉ♡ おなかの中♡ ぐちゅぐちゅって♡♡」

 

品性の欠片もなかった。

 

あの、天真爛漫で、どんな時も堂々としていて、王女としての気品を自然に纏っていたお姉様が──。

涎を垂らしながら腰を振っている。

リトさんの腰に自分から脚を絡めて、もっと奥に、もっと深くと──。

 

モモの唇が、かさかさに乾いていた。

いつの間にか呼吸が浅くなっている。

ドアの縁を掴む指先に、力が入りすぎて爪が白くなっていた。

 

リトさんの右手が動いた。

お姉様の腰の後ろに回り込んで──尻尾を、掴んだ。

 

モモの身体が、反射的にびくっと震えた。

 

デビルーク人の尻尾がどれほど敏感か、モモは自分の身体で知っている。

毛の一本一本に神経が通っているような、あの感覚。

それを──掴まれた。

 

「ひぃっ♡♡♡ しっぽっ♡♡ だめぇ♡♡ そこだけはっ♡♡」

 

お姉様の身体が大きく痙攣した。

腰が跳ね上がり、シーツが引き攣れる。

リトさんは手を離さない。

尻尾の付け根を親指の腹でゆっくり、円を描くように擦りながら──腰の動きは止めない。

 

ずちゅっ♡ ぬちゃっ♡ ぐちゅんっ♡

 

二つの刺激が同時にお姉様を襲っている。

尻尾と、中と。

 

お姉様の目が見開かれた。

口が大きく開いて、けれど声が出ない。

無音の悲鳴。

全身が硬直して、指が痙攣するようにシーツを引っ掻いて──。

 

「あ────っ♡♡♡♡」

 

声が、弾けた。

 

お姉様の背中がシーツから浮き上がった。

その瞬間、モモの目に──お姉様の尻尾が見えた。

ピンク色の細い尻尾が、リトさんの腕にきつく巻きついている。

離したくない。離さないで。

本能が──理性を超えた身体の叫びが──リトさんを求めている。

 

リトさんの腰が、最後に──深く、奥まで突き入れられた。

 

どくんっ……♡

 

お姉様の身体が、細かく震えていた。

唇が何かを呟いている。

 

「リト……すきぃ……♡ だいすきぃ……♡」

 

ぼんやりと焦点の合わない目で、天井を見つめながら。

リトさんの腕の中で、お姉様は──笑っていた。

壊された後の、満たされた笑顔。

モモが今まで見た、どんな表情よりも幸せそうな顔。

 

モモは、ドアから顔を離した。

 

壁に背中を預ける。

天井が見えた。白い天井。結城家の、普通の天井。

心臓の音が耳の中で反響して、他の音が聞こえない。

 

自分の身体を見下ろした。

エプロンの下の胸が、荒い呼吸で上下している。

 

太腿の内側が──熱い。

 

モモは唇を噛んだ。

歯が皮膚を食い破りそうなほど、強く。

 

(わたくしは……今……っ)

 

反応している。

お姉様が抱かれているのを見て──この身体が。

 

足の裏がフローリングの冷たさを感じる。

その冷たさだけが、今のモモを現実に繋ぎ止めていた。

 

ゆっくりと、壁から背中を離した。

足音を殺して、階段を降りる。

一段降りるごとに、二階の空気から遠ざかっていく。

リトさんの部屋の湿った熱が、モモの肌から少しずつ剥がれていく。

 

キッチンに戻る直前、モモは立ち止まった。

洗面所の鏡に、自分の顔が映っていた。

 

頬が赤い。

目が潤んでいる。

唇に、歯の跡がついている。

 

モモは冷水で顔を洗った。

タオルで拭いて、鏡を見る。

 

──よし。いつもの顔。

 

キッチンに踏み入れる。

 

「お姉様の発明品、やっぱり暴走していましたわ。片付けておきましたの」

 

完璧な猫かぶりの微笑み。声は一ミリも揺れていない。

 

「もう、ララさんったら〜。いつも壊すんだから」

 

美柑さんが苦笑する。

疑っていない。当然だ。モモの演技は完璧だから。

 

まな板の前に戻った。

包丁を握る。人参を切る。

 

手が震えている。

左手で右手首を押さえた。止まらない。

 

こんっ、と音を立てて包丁がまな板に落ちた。

 

「モモさん? 大丈夫?」

 

「ええ、手が滑っただけですわ」

 

微笑む。笑う。猫をかぶる。

 

鍋の湯が、ぼこぼこと沸騰していた。

出汁を取るのが遅れた。美柑さんが「あ、お湯!」と慌てて火を弱める。

 

その騒ぎの隙に──モモは、自分の手のひらを見つめた。

 

この手で、リトさんに触れたことは一度もない。

この手を、リトさんに掴まれたことも一度もない。

 

お姉様は、全身をリトさんに掴まれていた。

あんな風に。あんな顔で。あんな声で。

 

(──気をつけなければ)

 

モモは手のひらを握りしめた。

爪が掌に食い込む。

 

(あの人は、本当に……危険ですわ)

 

警戒心が、一段引き上がる。

 

──けれど。

 

握りしめた手のひらの中に残っている感覚は、恐怖でも嫌悪でもなかった。

 

お姉様の尻尾が、リトさんの腕に巻きついていた──あの光景。

デビルーク人として、あれが何を意味するか、モモには分かる。

分かるから、怖い。

 

自分の尻尾が、エプロンの下で微かに揺れていることに──モモは気づかないふりをした。

 




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