※この作品はR-18です。

ヤリチンリトに寝取られるお話   作:大軍

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ナナ・アスタ・デビルークの場合(2)

 あたしの名前は、ナナ・アスタ・デビルーク。

デビルーク星の第二王女で、動物と話せる能力を持っている。

地球の高校に通っていて、姉上——ララ・サタリン・デビルークの婚約者である結城リトの家に、姉上やモモと一緒に居候している。

 

あたしは——正直に言って、地球が好きだ。

 

朝起きると、窓の外から鳥のさえずりが聞こえる。

名前はまだ覚えてないけど、茶色い小さなやつと、灰色の丸っこいやつ。

あたしが窓を開けると、茶色いのが「おはよう、ツインテールのお姉ちゃん」って言ってくれる。

灰色のは恥ずかしがり屋で、電線の上からこっちをちらちら見てるだけ。

 

動物たちは——嘘をつかない。

お腹が空いたら「空いた」って言うし、嬉しい時は全身で嬉しいって伝えてくる。

怒ってる時も、悲しい時も、全部まっすぐ。

 

あたしは——そういうのが、好きだ。

人間は——ちょっと、わからない。

 

         *

 

姉上は——すごい人だ。

 

デビルーク星の第一王女。天才発明家。戦闘力も、あたしやモモなんか比べものにならないくらい強い。

なのに——すっごく天然で、すっごくお人好しで、すっごく——バカ。

 

褒めてるんだぞ。一応。

 

姉上は何でも発明で解決しようとするし、大体それが暴走して大惨事になるし、でも最後には笑ってるし、周りもなんだかんだ許しちゃう。

あたしは——そんな姉上が、大好きだ。

 

だから——姉上の婚約者が、あのリトだっていうのが、あたしにはどうしても納得いかない。

 

結城リト。

 

あいつは——ヤリチンだ。

 

学校中でそう噂されてるし、実際にいろんな女の子と怪しい関係を持ってるらしい。

コテ川が毎日のように「あの男は危険よ」って言ってるし、あたしだって見張ってればわかる。

あいつの周りには——いつも、女がいる。

 

モモ。御門先生。籾岡。ティアーユ先生。

名前を挙げればキリがないくらい、あいつの周りにはいつも誰かがいて——そいつらの目が、なんか、変なんだ。

 

なんて言えばいいのかわからないけど——目が、とろんとしてるっていうか。

動物で言えば、飼い主に撫でられた後の犬みたいな。あの、全部預けますっていう目。

 

あたしは——あの目が、嫌いだ。

あんな目をさせるやつが、姉上の隣にいていいはずがない。

 

「姉上を裏切るような男、あたしが絶対に許さないからな」

 

あたしは——毎朝、そう心の中で誓ってから学校に行く。

 

         *

 

モモのことも——話しておかなきゃ。

 

モモ・ベリア・デビルーク。あたしの双子の妹。デビルーク星の第三王女。

植物を操る能力を持っていて、頭が良くて、料理がうまくて、誰にでも愛想がよくて——腹黒い。

 

あたしとモモは、双子だけど全然似てない。

 

モモは——お嬢様みたいな喋り方をする。「~ですわ」とか「わたくし」とか。

あたしは——こんな感じだ。ガサツだって言われる。別にいいけど。

 

モモは——胸がある。

あたしより身長は同じくらいなのに、モモの胸は——Bカップ以上はある。制服のブラウスが、ちゃんと膨らんでる。

 

あたしは——A。

Aカップ。

ブラウスは余ってる。何も押し上げない。

 

……別に。気にしてないぞ。

 

モモのことは——好きだ。大事な妹だ。

喧嘩もするけど、いざって時は一緒に戦えるし、あたしのことをバカにしながらもちゃんと心配してくれる。

 

はず——だった。

 

         *

 

放課後。結城家のリビング。

 

姉上は自室で発明に没頭していて、リトはまだ学校から帰ってきてなかった。

美柑は買い物に出ている。

 

あたしとモモ、二人きり。

 

ソファに座って、テレビを見ていた。

地球のバラエティ番組。芸人が熱々のおでんを食べさせられて叫んでいる。意味がわからないけど、なんか面白い。

 

「——なあ、モモ」

 

「なんですか?」

 

「リトのことなんだけどさ」

 

モモが——テレビから目を離さないまま、ふうん、と相槌を打った。

 

「最近さ、あいつまた帰り遅くないか? 昨日も七時過ぎだったぞ」

 

「部活の手伝いだって言ってたわ」

 

「部活? あいつ、どこの部にも入ってないだろ」

 

「手伝いよ。手伝い。頼まれたらしいわ」

 

モモの声が——少しだけ、硬い。

テレビを見ているフリをしているけど、目が画面を追っていない。

 

「あたしは信じてないからな。あいつ、絶対また女のところに——」

 

「ナナ」

 

モモが——テレビのリモコンを、ことん、とテーブルに置いた。

 

「リトさんのことを、そうやって決めつけるの——やめてなさい?」

 

声が——冷たかった。

いつものお嬢様口調なのに、中身が違う。

 

「決めつけ? 事実だろ。学校中が知ってるぞ、あいつがヤリチンだって」

 

「噂よ。噂と事実は違うの」

 

「じゃあモモは信じてるのかよ。あいつが清廉潔白だって」

 

「そうは言ってないわ。ただ——証拠もなく人を悪く言うのは、品がないと言ってるのよ」

 

品がない——って。

 

あたしは——カチンときた。

 

「品とか関係ないだろ! 姉上の婚約者だぞ? 姉上を裏切ってるかもしれないやつを、なんでお前は庇うんだよ!」

 

「庇ってるんじゃないわ。冷静になれって言ってるの」

 

「あたしは冷静だ!」

 

「冷静な人は声を荒げないのよ」

 

ソファから立ち上がった。

モモは座ったまま、あたしを見上げている。

 

緑色の目が——冷めている。

あたしを見ているのに、あたしを見ていないような目。

 

「——モモ。お前、まさかリトのこと——」

 

「わたしがリトさんをどう思っているかは、この話と関係ないわ」

 

「関係あるだろ! お前があいつに甘いから——」

 

「甘い?」

 

モモが——ふっ、と笑った。

笑ったのに——目が、笑ってなかった。

 

「ナナ。あなた——リトさんのことを語る割に、リトさんのこと、何もわかってないわよね」

 

「は?」

 

「リトさんがどんな人で、何を考えていて、何に悩んでいるか——あなた、考えたことある?」

 

「あいつが何考えてるかなんて知るか! スケベなことしか考えてないに決まってる——」

 

「ほら。それよ」

 

モモが——ため息をついた。

大人が子供を見るような、あの目。あたしが一番嫌いな、あの目。

 

「ナナは——いつもそう。表面だけ見て、わかった気になって、大声で騒ぐだけ」

 

「っ——」

 

「リトさんのことだけじゃないわ。何事も——深く考えない。考えられない。子供なのよ、あなたは」

 

「子供って——あたしとお前は同い年だろ!」

 

「年齢の話をしているんじゃないわ」

 

モモが——立ち上がった。

あたしより一センチだけ背が低いはずなのに、見下ろされている気がした。

 

「身体を見ればわかるでしょ?」

 

——え。

 

モモの緑色の目が——あたしの胸元を、舐めるように見下ろした。

それから——自分の胸元に、ちらりと視線を落とす。

制服のブラウスが、ふっくらと膨らんでいる。Bカップ以上の、ちゃんとした膨らみ。

 

そして——もう一度、あたしの胸。

 

ブラウスが——余っている。

何も押し上げていない、ぺたんこの、あたしの胸。

 

その視線の往復だけで——もう、十分だった。

十分だったのに——モモは、止まらなかった。

 

「ナナは————」

 

————————————————。

 

モモが——言った。

あたしの身体のことを。あたしの胸のことを。あたしが女として——どれだけ——。

 

————————————————。

 

一語一語が——刃物だった。

双子の妹の口から出てきたとは思えないくらい、正確に、あたしの一番柔らかいところを抉る言葉だった。

 

「——っ」

 

口が——開かなかった。

 

反論しようとした。声が出なかった。

頭の中が——真っ白になって、モモの声だけが、遠くで鳴っている。

 

「————だから————なのよ。ナナは————」

 

まだ——言ってる。

 

あたしが一番触れてほしくないことを——一番知っているはずのモモが——一番残酷なやり方で、全部、全部、剥がしていく。

 

胸が小さいことは——知ってる。

鏡を見るたびに思う。お風呂に入るたびに思う。姉上やモモの身体を見るたびに——自分の平坦な胸板を見て、思う。

 

でも——それは、あたしだけの痛みだったはずだ。

あたしが一人で抱えて、一人で我慢して、誰にも見せないようにしてきた痛みだったはずだ。

 

それを——モモが。

双子の、妹が。あたしの——大切な家族が。

 

「……っ」

 

目の奥が——じわっと、熱くなった。

 

泣くな。泣くな。こんなことで泣くな。泣いたら——本当に子供だ。

 

「…………勝手にしろ」

 

それだけ言って——あたしは、リビングを出た。

足音を立てないように。涙を見られないように。

 

階段を駆け上がって、自分の部屋に入って、ドアを閉めた。

 

ベッドに——倒れ込んだ。

枕に顔を埋めた。

 

声は——出さなかった。

出さなかったけど、枕が——濡れた。

 

ツインテールが、ばさっとベッドに広がった。

小さな肩が、震えていた。

 

——あたしだって、わかってる。

 

胸がないことくらい、わかってる。

女として未熟だってことも、子供っぽいってことも、全部わかってる。

 

でも——モモに言われたくなかった。

あたしの妹に。あたしの——大切な家族に。

 

部屋の窓の外から、鳥の声が聞こえた。

さっきの茶色いやつが、「ツインテールのお姉ちゃん、どうしたの?」と聞いている。

 

あたしは——答えられなかった。

 

         *

 

次の日の夜。

 

あたしは——まだ、部屋にいた。

 

学校にも行かなかった。ご飯も食べなかった。

姉上が二回、ドアをノックした。美柑が一回。

全部——無視した。

 

布団の中で丸まって、天井を見て、また丸まって。

ツインテールは昨日のまま。崩れかけて、毛先が絡まっている。

でも——直す気にならなかった。

 

何もかもが——どうでもよかった。

 

コンコン。

 

またノックの音。姉上か、美柑だろう。無視すればいい。

 

「ナナ。——俺だ、リト」

 

——リト。

 

あいつの声が、ドアの向こうから聞こえた。

 

「飯食ってないんだろ。ララもモモも美柑も心配してる。——入るぞ」

 

ドアが——開いた。

 

あたしは——布団を被ったまま、動かなかった。

動けなかったんじゃない。動く意味がわからなかった。

 

「ナナ?」

 

リトの足音が近づいてきて、ベッドの横で止まった。

 

「……おい、大丈夫か」

 

布団の隙間から——リトの顔が見えた。

眉が下がっている。心配してるっぽい顔。

 

あたしは——その顔をぼんやりと見て、口を開いた。

 

「……リト」

 

「おう」

 

「あたしってさ」

 

声が——自分でも気持ち悪いくらい、平坦だった。

 

「——子供、だよな」

 

「……は?」

 

「胸もないし。ぺたんこだし。女として——なんていうか——足りてないんだよ、全部」

 

布団からのろのろと手を出して、自分の胸の上をぺたぺたと触った。

キャミソールの上から——何もない平坦な胸を。

 

「ほら。——何もないだろ」

 

「な、ナナ——?」

 

リトが——戸惑った声を出した。

いつものあたしなら「見るなスケベ!」と叫んでぶっ飛ばしてるところだ。

 

でも——そんな気力は、もうなかった。

 

「モモにはあるのにな。姉上にも。コテ川にも。ティアーユ先生にも」

 

指折り数えるみたいに名前を挙げて——最後に、自分の胸に手を置いた。

 

「あたしだけ——ない」

 

声が——震えなかった。

泣いてもいなかった。

昨日の涙は全部枕に吸われて、もう出てこなかった。

 

空っぽだった。

 

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