リトは——何も言わなかった。
しばらく——椅子に座ったまま、シャワーを浴びていた。
私は——シャワーヘッドを持ったまま、リトの横顔を見つめていた。
怒るかと思った。困るかと思った。
「美柑、さすがにこれは——」と、苦笑いされるかと思った。
でも——リトは。
「美柑。座れ」
「——え?」
「次、俺がお前洗う番だろ」
いつもの声だった。何もなかったみたいな。
さっき——妹に手で射精させられたはずなのに。その手を今シャワーで洗い流している妹を見ながら——いつも通りの声。
何を考えているの——この人は。
驚いた。驚いて——でも。
嬉しかった。
リトに身体を洗ってもらう——それは、私にとって毎日の入浴で一番嬉しい時間だった。
小さい頃から——リトがいつも洗ってくれた。
私がリトの身体を洗って、リトが私の身体を洗う。交代制。それが——結城家の入浴の、決まりごと。
リトの大きな手が——私の小さな身体を、全部包んでくれる。
背中を洗ってくれる時の、指の温度。肩を滑る掌の感触。
毎日のことなのに——毎日、嬉しい。
私は——リトと椅子を交代した。
小さな風呂椅子に座る。背筋を伸ばして、足を閉じて。
リトが——私の後ろに膝をついた。
泡立てる音が——背後から聞こえた。
「いくぞ」
「うん」
リトの手が——私の背中に、触れた。
ぬるっ。
「……ん」
温かい。大きい。リトの掌が——私の背中を覆う。
肩甲骨の間から——背骨に沿って、ゆっくり、下に滑っていく。
いつもの——感触。いつもの——温度。リトの手。
私の背中は——リトの片手で、半分くらい覆えてしまう。
小学生の身体は——こんなにも小さい。リトの手は——こんなにも大きい。
その大きさの差が——いつも、嬉しかった。
リトの指が——首の付け根から、背骨の凹凸をひとつずつ数えるように——腰まで滑っていく。
泡が——背中の上で白い線を引いて、脇に流れていく。
「ん……」
声が——自然に漏れた。気持ちいい。
毎日触られているはずなのに——リトの手が背中に触れる瞬間は、いつも少しだけ、心臓が跳ねる。
でも——今日は、何かが違った。
リトの指が——いつもより、ゆっくり動いている。
肩のラインを——なぞるように。肩甲骨の凹凸を——一つ一つ確認するように。
指の圧力が——いつもより、強い。押すんじゃなくて——揉むように。皮膚の下の筋肉の形を探るように。
「……リト?」
「ん?」
「今日——なんか、丁寧じゃない?」
「そうか? いつもと同じだけど」
同じじゃない。同じなわけがない。
リトの指が——背中の真ん中から、脇腹に滑った。
すうっ——と、肋骨の上を、指先がなぞる。
「ひゃっ——」
くすぐったい——のとは、少し違った。
指の圧力が——柔らかくて、でも確かで。皮膚の上を滑る泡が、やけに温かい。
リトの手が——腰に降りた。
腰骨の出っ張りを——掌で包み込むように、ぐうっと押す。
「あ——」
腰が——じんと温かくなった。
手が——腰から、くびれを通って、上に。
脇の下から——腕の内側を、指先がすうっと撫でた。
二の腕の柔らかい部分を——指で挟むように。
「くすぐったいよ、リト——」
「腕も洗わないとだろ」
腕なんて、いつもこんなに丁寧に洗わない。
リトの手が——私の首筋に触れた。
後ろから——耳の下あたりを、指先がすうっとなぞる。
髪の生え際を——指の腹で、くるくると。
「——っ❤」
首筋が——敏感だった。鳥肌が——背中に広がった。
リトの手が——両脇を通って、前に回ってきた。
私の胸——に、当たった。
「——っ」
胸——と言っても、ほとんどない。
小学五年生の、ほんの少しだけ膨らみ始めた——つぼみ。
でも——リトの掌が、そこに触れた。
ぬるっ。
「洗うぞ」
「う、うん——」
いつもは——胸のあたりは、さっと撫でるだけだった。
一秒もかけない。触れたか触れてないかわからないくらいの、一瞬。
今日は——違った。
リトの掌が——私のつぼみの上で、ゆっくりと円を描いた。
くるっ——くるっ——。
「っ……❤」
声が——漏れた。
小さなつぼみが——リトの掌の中心に収まって、くるくると撫でられている。
乳首に——泡越しに、リトの指の腹が当たる。
こりっ。
「あ——っ❤」
身体が——びくっと跳ねた。
「動くな。洗えない」
リトの声が——低かった。
いつもの軽い声——じゃなかった。ほんの少しだけ——違う温度。
リトの指が——私の乳首を、つまんだ。
きゅっ❤
「ひゃっ❤——リ、リト——❤」
小さな乳首が——指の間で、くにくにと転がされる。
まだつぼみの——ほとんど膨らんでいない——薄いピンク色の先端が、リトの指に弄ばれている。
「こういうとこも——ちゃんと洗わないとな」
「洗う——って——❤ そこは——❤」
「汚いだろ。ちゃんとやらないと」
リトの指が——もう片方の乳首にも触れた。
こりっ❤——こりっ❤——。
両方の乳首を——同時に、指先でくるくると転がされる。
「やぁ——❤ リト——❤ いつも——こんなとこ——洗わないのに——❤」
「今日からちゃんと洗う」
当たり前みたいに——言い切った。
さっきの——リトのを洗った時と、同じだ。「ちゃんと洗わないと」——その言葉を、そのままお返しされている。
(……わかってて、やってるんだ)
私が「洗う」を口実にリトの身体に触ったように——リトも、「洗う」を口実に私の身体に触っている。
同じ方法で。同じ建前で。
妹特権を——兄特権で返されている。
私は——椅子の上で、太ももをぎゅっと閉じた。
お腹の奥が——きゅっと縮まっている。心臓が——早い。耳の奥で、どくどくと鳴っている。
リトの指が——乳首から離れた。
ぱっと離れた瞬間——乳首が、じんじんと熱い。空気に触れただけで——びりっと、痺れるような。
リトの手が——私のお腹を、滑り降りていった。
泡のついた大きな掌が——私の平らなお腹を、ゆっくりと撫でる。
おへその周りを——くるっと円を描いて。
すうっ——と、下に。
下腹部。
リトの指先が——私の下腹部の、毛のない柔らかい肌に触れた。
「——っ❤」
閉じた太ももの——すぐ上。
恥骨のあたりを——指先が、すうっと横になぞった。
「リト——そこは——」
「洗えないだろ、自分じゃ」
「洗え——洗えるよ——自分で——」
「ちゃんと洗えてないから、俺が洗う」
リトの声が——有無を言わさなかった。
私は——抵抗しようとした。
膝を閉じて——リトの手が降りてくるのを——。
でも——リトの手が、私の膝に触れた。
「足、開け」
「やだ——❤」
「美柑。洗えないだろ」
リトの手が——私の膝を、くい、と開かせた。
力——入れれば、抵抗できた。
でも——リトの手に力を感じた瞬間——私の膝から、力が抜けた。
足が——少しだけ、開いた。
リトの手が——太ももの内側を、滑っていった。
ぬるっ——ぬるっ——。
太ももの内側の皮膚は——背中やお腹よりも、ずっと薄くて敏感だった。
リトの指が触れるたびに——びくっ、と筋肉が反応する。
泡が——太ももの内側を伝って、下に流れていく。
リトの手が——膝の内側から、ゆっくりと、太ももの付け根に向かって上がっていく。
指が——一本ずつ、太ももの柔らかい肉を撫でている。太ももの真ん中あたりで——きゅっと、掌で包み込むように握られた。
「あ——❤」
小さい声が——漏れた。
太ももを掴まれただけなのに——お腹の奥が、また、きゅっと。
リトの指が——太ももの付け根まで来て——止まった。
「——いくぞ」
「ま——待って——❤ リト——❤ そこは——❤」
「洗うだけだ。じっとしてろ」
リトの指が——私の割れ目に触れた。
ぬるっ❤
「————❤❤⁉」
声にならなかった。
泡越しに——リトの指が、私の一番敏感な場所を——すうっと、なぞった。
上から下まで。割れ目の溝に沿って。ゆっくりと。
「あ——❤ あ——❤❤ リト——❤❤」
リトの指が——細い溝の中を、滑っていく。
泡で——ぬるぬると滑る。指の腹が——肉のひだに、当たる。
くにっ❤
小さな——突起に、指が触れた。
「ひっ——❤❤⁉」
身体が——大きく跳ねた。
椅子の上で——お尻が浮いて——リトの腕が、私のお腹を押さえた。
「動くな。洗えないだろ」
「む、むり——❤❤ そこ——だめ——❤❤」
「だめじゃない。ちゃんと洗う」
リトの指が——クリトリスの上で、くるっと円を描いた。
くるっ❤ くるっ❤ くるっ❤
「あ❤ あ❤ あ❤❤ やっ——❤❤ リト——❤❤ きもち——❤❤」
気持ちいい——と、言いかけた。
飲み込もうとした——飲み込めなかった。
リトの指が——正確だった。
私がトイレで自分で触る時とは——全然違う。
角度が違う。圧力が違う。指の温度が——違う。
自分の指は——場所を知っていても、こんなふうには動かせない。
プロみたいだった。
いろんな女の人の身体を——触っている男の、指。
リトの指が——クリトリスから、少し下に滑った。
入り口の——縁を、指先でなぞる。
くにっ❤——くにくに❤
「ひゃ❤❤ そこ——❤❤ だめ——中——❤❤」
入ってはこなかった。縁を——なぞっているだけ。
でも——そのじらすような動きが、余計に全身を震わせた。
指が——またクリトリスに戻った。
今度は——指の腹で、きゅっと押し込むように。小さな突起を——押しつぶすように。
「あ❤❤ あ❤❤❤ だめっ❤❤ リト❤❤ 私——❤❤ おかしくなる——❤❤❤」
リトの指が——クリトリスを押したまま、くるくると——高速で回した。
くるくるくる❤❤❤
「あ❤❤❤ あ❤❤❤❤ だめ❤❤ だめだめ❤❤ イく❤❤ リト❤❤ イっちゃう——❤❤❤」
リトのもう片方の手が——背後から、私の乳首を、きゅっとつまんだ。
こりっ❤❤
上と下——同時に。
「————❤❤❤❤❤⁉」
視界が——白く弾けた。
真っ白。何も見えない。
お腹の奥から——今まで感じたことのない大きな波が、全身に広がって。
足の指が——ぎゅっと丸まって。椅子の端を、両手で掴んで——背中が弓なりに反って——。
びくっ❤——びくっ❤——びくっ❤——びくっ❤——。
四回。大きな波が四回来て——五回目で、全身から力が抜けた。
「はっ——❤ はっ——❤ はぁ——❤…… はぁ——❤……」
シャワーの音だけが——浴室に響いていた。
私は——椅子の上で、前のめりに崩れ落ちそうになっていた。
リトの腕が——私の身体を支えている。大きな腕が、私の薄い身体を——後ろから抱え込むように。
イった。
リトの指で——イった。
トイレで一人でする時よりも——ずっとずっと、強い波だった。
身体の芯が——溶けたみたいに、力が入らない。
「は——❤ はぁ——❤」
リトが——シャワーヘッドを取って、私の身体にお湯をかけた。
温かい水が——泡を洗い流していく。
太ももの内側も。お腹も。背中も。全部——綺麗に。
「……ちゃんと洗えたろ」
リトの声が——聞こえた。
いつもの声。何もなかったみたいな。
さっき——妹の股間を洗って、指でイかせて——その指で今シャワーヘッドを持って、何事もなかったみたいに。
「……リト」
「ん?」
「今日——いつもと、違ったよね」
「そうか? ちゃんと洗っただけだけど」
嘘。嘘だ。
いつもはあんなところ——触らない。あんなふうに——触らない。
でも——リトの顔は、涼しかった。
湯気の中で——いつもの、あの何を考えているかわからない顔。
さっきの——手コキのこと。
私がリトのちんちんを洗って、射精させたこと。
そのお返し——なんだろうか。
やったからやり返した——そういうこと?
それとも——もっと違う意味が。
わからない。
リトの考えていることが——わからない。
でも——一つだけ、わかることがある。
リトの指は——知っていた。
女の身体の、どこを触れば気持ちいいか——知り尽くしている指だった。
噂は——本当だ。
この指は——御門先生にも、モモさんにも、ナナさんにも——触れてきた指だ。
いろんな女の人を——イかせてきた指だ。
その同じ指で——今日、私も。
「……入るか、湯船」
リトが——立ち上がって、浴槽に足を入れた。
私は——まだ椅子の上で、震える足に力を入れていた。
太ももの内側が——かすかに痙攣している。乳首が——じんじんと余韻を引きずっている。
ゆっくりと——立ち上がった。
膝が——少し笑っている。一歩目が——ふらついた。
リトが——浴槽の中から、手を差し伸べた。
大きな手。さっき私をイかせた——あの手。
指の先まで——私の身体を知り尽くしている、あの手。
私は——その手を取って、浴槽に入った。
お湯が——身体を包んだ。温かくて——全身の力が、溶けていく。
イった後の敏感な身体に——お湯の温度が、じわっと染み込む。
乳首が——お湯の中でも、まだぴりぴりとしていた。
リトの隣。肩が触れる距離。
湯気の中で——リトの横顔を見た。
目を閉じて、天井を見て、ぼんやりしている。
何を考えているんだろう。
私の身体を触って——何を思ったんだろう。
子供の身体だって——思ったかな。
まだ何もない、ぺたんこの胸。毛の生えていない、つるつるの肌。
それとも——女の身体だって——思ってくれたかな。
御門先生とは——比べものにならない。
モモさんとも、ナナさんとも——全然違う。
私は——小学生だ。身体も心も、まだ子供だ。
でも——リトの指は、私の身体を——ちゃんと、「女」として扱ってくれた気がする。
クリトリスの触り方。乳首のつまみ方。太ももの撫で方。
あれは——子供の身体を適当に触っている手じゃなかった。
(……リトは——私のことも、女として見てくれてるの?)
そう思ったら——胸の奥が、きゅっとなった。
嬉しい方の——きゅっ。
「……リト」
「ん」
「明日も——一緒に入ろうね」
「おー」
いつもの声。いつもの——軽い返事。
「明日も——今日みたいに、洗ってね」
リトが——ほんの一瞬だけ、こっちを見た。
湯気の中で——何を考えているかわからない、あの目。
「……隅々まで、な」
「うん」
明日も——今日と同じように、触ってくれるのかな。
それとも——もっと先まで。
私の中の——「妹特権」の境界線が、また少しだけ動いた気がした。
わからないまま——お湯の中で、リトの肩にこてん、と頭を預けた。
リトが——何も言わずに、私の頭を撫でた。
大きな手。温かい指。
さっき私のあそこを触った——同じ指で。
私の乳首をつまんだ——同じ指で。
私は——目を閉じて、リトの体温に身を任せた。
お湯の中で——リトの手が、私の頭をゆっくりと撫で続けている。
怖くなかった。
嬉しかった。
明日が——待ち遠しかった。