※この作品はR-18です。

ヤリチンリトに寝取られるお話   作:大軍

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金色の闇の場合(1)

 朝の校門は——不快だった。

 

風紀委員の朝の巡回。毎週月曜日は校門前の清掃と、登校する生徒の服装チェック。

私——古手川唯の、日課のひとつ。

 

ゴミ拾い用のトングで——花壇の脇に落ちているペットボトルを拾い上げる。

缶コーヒーの空き缶。菓子パンの袋。タバコの吸殻——これは近隣の大人のものだろう。

 

まったく……公共の場を何だと思っているのかしら。

 

ゴミ袋に次々と放り込んでいく。

朝日がアスファルトを照らして、四月の空気が少しだけ温い。

 

花壇の裏側に——何かが落ちていた。

 

薄い冊子。カラー印刷の表紙。

風で飛んできたのか、誰かが隠すように捨てたのか——花壇のブロックとフェンスの隙間に挟まっている。

 

トングで引っ張り出した。

 

——表紙が目に入った。

 

女の子と、男。制服。タイトルが——。

 

『お兄ちゃんのお仕置き ~妹は今日もおしおき中~』

 

「——っ⁉」

 

エロ漫画だった。

 

しかも——兄と妹の——。

 

表紙の女の子は——セーラー服の裾をたくし上げられて、涙目で頬を赤らめている。男——兄役——は、妹の腰に腕を回して、もう片方の手で——お尻を。

 

「は、破廉恥なっ……!」

 

顔が——かあっと熱くなった。

 

こんなものを——学校の校門前に捨てるなんて! いったいどういう神経をしているのかしら!

 

トングで冊子の端を摘みながら——ゴミ袋に入れようとした。

 

でも——手が、止まった。

 

表紙の絵が——目に焼き付いている。

兄に腰を掴まれた妹。お尻を突き出した体勢。涙を浮かべた大きな瞳。

 

(こんな……こんなの、現実にあるわけないじゃない……)

 

兄が——妹に——こんなことを——。

 

ぱらっ——と。

 

風が——ページをめくった。

 

風のせいだ。私がめくったんじゃない。風が——勝手に——。

 

見開きのページ。兄が妹を膝の上に乗せて——スカートをめくって——お尻を、平手で叩いている。

 

「ん゛っ……お兄ちゃん、やめてぇ……♡」

 

——というセリフが、吹き出しの中に。

 

「だめだ。お前が悪いことしたんだから、お仕置きだ」

 

兄のセリフ。低い声。有無を言わさない——。

 

(これは——証拠品として、内容を確認しているだけよ……! 風紀委員として、どの程度の猥褻物かを把握しておく必要が……!)

 

自分への言い訳が——苦しすぎた。

 

次のページ。妹が——ロープで手首を後ろで縛られて、ベッドの上に這いつくばっている。お尻を突き上げた格好で——兄が後ろに立っている。

 

「お兄ちゃんの言うこと聞けない子は——こうだぞ」

 

ぱしんっ——と。お尻を叩く擬音。

 

「ひゃあっ♡ ごめんなさい、お兄ちゃぁん♡」

 

——ぱたん。

 

冊子を——閉じた。

 

顔が——耳まで真っ赤だった。心臓が——ばくばく鳴っている。

 

(何を読んでるの、私は——! 早く捨てなさい——!)

 

ゴミ袋に——乱暴に押し込んだ。冊子がくしゃっと折れ曲がる。

 

はぁ、と息を吐いた。

 

まったく——朝から、とんでもないものを拾ってしまった。

こういうものが校門前に落ちているということ自体が、この学校の風紀の乱れを象徴している。

 

風紀委員として——断固として——。

 

「あの、おはようございます」

 

「——っ⁉」

 

声をかけられて——肩が跳ねた。

 

振り向くと——小学生の女の子が、ランドセルを背負って立っていた。

茶色いロングストレートの髪。大きめの丸い目。小さな体に、しっかりとした佇まい。

 

結城美柑——だった。

 

結城くんの——妹。

 

「あ——結城……美柑ちゃん?」

 

「はい。いつも兄がお世話になっています」

 

ぺこり——と、礼儀正しくお辞儀をした。

 

その所作が——小学五年生とは思えないくらい、きちんとしていた。

背筋がまっすぐで——頭の下げ方が丁寧で——目を合わせて話す。

 

(いい妹ね……)

 

素直にそう思った。

結城くんの家庭環境は——両親が海外にいて、兄妹二人暮らしだと聞いたことがある。

この子が——家事をしているのだろう。買い物袋を持って歩いているのを見かけたこともある。

 

妹として——しっかりしている。ちゃんとした子だ。

 

「ここ、お兄さんの学校よね? 何か用事?」

 

「いえ、通り道なので。いつもこの道を通って小学校に行くんです」

 

「そう。気をつけてね」

 

「はい。古手川さんも——お掃除、お疲れ様です」

 

にこっ——と、笑った。

小さな顔に——無邪気な笑顔。

 

(可愛い子ね。結城くんには——もったいないくらい……)

 

——結城くん。

 

その名前が——頭に浮かんだ瞬間。

 

——兄と妹。

 

さっきの——エロ漫画の内容が、脳裏にフラッシュバックした。

 

兄が——妹を——膝の上に乗せて——お尻を叩いて——縛って——お仕置き——。

 

(——っ⁉)

 

頭を——ぶんぶんと振った。

 

違う。違う違う違う。

何を考えているの——私は。

 

目の前にいるのは——結城くんの実の妹。小学五年生の——子供。

さっきのエロ漫画のシチュエーションなんて——現実に当てはめること自体が——破廉恥の極みだわ。

 

でも——振り払おうとすればするほど——映像が浮かぶ。

 

結城くんが——あの涼しい顔で。

「美柑、お前が悪いことしたから——お仕置きだ」

——なんて言って。

 

違う——違うわ——。

 

映像が——勝手に、主語を変えた。

 

妹——が。

 

私——に。

 

「お兄ちゃん——やめてください——」

 

——私の声で。

 

結城くんが——椅子に座っていて。私が——その膝の上に。うつ伏せで——スカートをめくられて——白い下着が露出して——。

 

「古手川。お前——いつも偉そうに風紀風紀って言ってるけど」

 

結城くんの声が——低くて——。

 

「本当は——こうされたいんだろ?」

 

ぱしんっ。

 

お尻を——平手で叩かれる。

 

「ひゃっ……! やめ——結城くん——っ」

 

お兄ちゃん——と、呼びたくなる。

なぜ——? なぜ「お兄ちゃん」?

 

「お兄ちゃんって呼べ」

 

「そ、そんな——破廉恥な——」

 

「呼ばないと——もっとやるぞ」

 

ぱしんっ。ぱしんっ。

 

お尻が——熱くなる。掌の跡が——白い肌に赤く浮かぶ。

 

「っ——お……お兄——ちゃ——」

 

手首を——後ろで縛られて。ロープが——手首の皮膚に食い込んで——動けない。

膝の上でもがいても——結城くんの腕が、腰をがっしり押さえていて——。

 

「よく言えたな。ご褒美だ」

 

結城くんの手が——叩いた場所を、そっと撫でる。

熱くなったお尻の皮膚を——大きな掌で、くるくると。

 

じんじんする——熱いお尻を、撫でられる。痛かったはずなのに——撫でられると——。

 

「——っ❤」

 

気持ち——。

 

「古手川さん?」

 

「——っ⁉⁉⁉」

 

現実に——引き戻された。

 

美柑ちゃんが——私の顔を、不思議そうに覗き込んでいた。

 

「大丈夫ですか? 顔、すごく赤いですけど——」

 

「だっ——大丈夫! 大丈夫よ! 朝日が——眩しくて——!」

 

何を——何を考えていたの——私は——!

結城くんの妹の目の前で——結城くんに「お兄ちゃん」と呼ばされてお尻を叩かれる妄想を——!

 

(美柑ちゃんに——失礼すぎる——!)

 

この子は——結城くんの大切な妹なのに。

こんな——こんな破廉恥なことを——この子の兄で想像するなんて——。

 

頭を——もう一度、ぶんぶんと振った。

 

「本当に大丈夫ですか? 何か飲み物——」

 

「大丈夫! 大丈夫だから——ありがとう、美柑ちゃん。学校遅れるわよ? 早く行きなさい」

 

「はい。じゃあ——行ってきます!」

 

美柑ちゃんが——もう一度ぺこりとお辞儀して、くるっと振り返った。

 

ランドセルを揺らしながら——歩道を歩いていく。

 

その後ろ姿を——見送った。

 

小さな身体。でも——背筋がぴんと伸びていて。歩き方がしっかりしている。

足取りが——どこか弾んでいるように見えた。朝から——機嫌がいいのだろうか。

ランドセルのカバーは手入れが行き届いていて——靴も綺麗。

 

(しっかりした子ね……本当に)

 

感心した。

あの年で——兄と二人暮らしで家事をこなして、礼儀正しくて、笑顔が明るくて。

 

結城くんの妹——だけど。

結城くんとは——全然違う。

 

結城くんは——ヤリチンで。女癖が悪くて。あちこちの女の子に手を出して。

でも——この美柑ちゃんは、ちゃんとしている。兄がああでも——妹はまともに育っている。

 

(流石に——妹には手を出さないでしょう……結城くんも)

 

実の妹——だもの。いくらあの男でも。

いくらヤリチンでも——妹だけは、聖域のはずだ。

 

美柑ちゃんの後ろ姿が——信号のところで止まった。

赤信号を——ちゃんと待っている。偉い。

 

後ろ姿。

小さな背中。華奢な肩。細い足。

 

——お尻。

 

ショートパンツから伸びる白い太ももの上——丸い、小さなお尻。

小学生の身体は——まだ薄くて、凹凸が少なくて。でも——お尻だけは、ちゃんと丸みがあった。

ショートパンツの布地が——その小さな丸みを、きゅっと包んでいる。

 

形のいい——お尻。

 

(——ちょっと待って)

 

なぜ——私は今——小学生の女の子のお尻を凝視しているの——?

 

また——映像が浮かんだ。

 

結城くんの手が——あの大きな手が。

美柑ちゃんの——あの小さくて丸いお尻を。

 

撫でている。

 

くるくると——掌で。

ショートパンツの上から——丸みをなぞるように。指先が——布地の縁に引っかかって——少しだけめくれて——。

 

「やだ——リト——くすぐったい——」

 

美柑ちゃんが——困ったように笑って。でも——逃げない。

 

結城くんが——もう片方の手で、美柑ちゃんの頭を撫でながら——お尻をくにくにと——。

 

「美柑のお尻——形いいな」

 

「もう——リトのバカ——」

 

——嬉しそうに。

 

(——やめなさい——! 私——!)

 

頭を——三度目の、ぶんぶん。

 

何を考えているの——何を——!

結城くんが——実の妹のお尻を——そんなこと——あるわけないじゃない——!

 

美柑ちゃんは——ちゃんとした子だ。

結城くんだって——妹に対しては、ちゃんとしたお兄さんのはず——。

 

(そうよ。そうに決まっているわ)

 

信号が青に変わって——美柑ちゃんが歩き出した。

ランドセルが——朝日に反射して光っている。

 

小さな後ろ姿が——どんどん小さくなっていく。

 

あの形のいい——小さなお尻も。

 

「…………」

 

ゴミ袋の中の——くしゃっと丸まったエロ漫画が、視界の端に映った。

 

『お兄ちゃんのお仕置き ~妹は今日もおしおき中~』

 

(あの漫画のせいだわ——全部——あの破廉恥な漫画のせい——!)

 

ゴミ袋の口を——ぎゅっと縛った。

 

私は——風紀委員。

こんな破廉恥な想像をする人間では——ない。

 

結城くんにお尻を叩かれたいなんて——思っていない。

「お兄ちゃん」と呼びたいなんて——思っていない。

結城くんの手が美柑ちゃんのお尻を撫でる映像なんて——想像していない。

 

全部——あの漫画のせい。

 

トングを握り直して——清掃を再開した。

 

空き缶を拾う。ゴミを拾う。煙草の吸い殻を拾う。

黙々と——手を動かす。

 

でも——頭の中では。

 

結城くんの——あの低い声が。

 

「お兄ちゃんって呼べ」

 

——消えてくれなかった。

 

          *

 

校門前の清掃を続けていると──校門の向こう側から、一人の生徒が歩いてきた。

 

金色の長い髪。ワインレッドの瞳。無表情──というより、感情を消しているような顔。

校門をくぐる足取りに、迷いがない。

 

ヤミさん──だった。

 

金色の闇──と呼ばれている、転入生。

普段から学園内でも浮いた存在で、誰かと親しくしているところを見たことがない。

 

以前は──黒いボンテージのような、肌の露出が多い衣装を身につけていた。

超ミニスカートに、身体のラインがはっきり出る黒い布──あれは衣服と呼んでいいのかすら怪しかった。

風紀委員として何度注意しようかと思ったか知れない。

 

でも──今は、ちゃんと制服を着ている。

スカート丈はやや短めだけれど、以前のボンテージ姿と比べれば天と地の差だ。

ブレザーのボタンもきちんと留めていて──形式的には、問題ない。

 

(制服を着る気になったのかしら……)

 

少し──意外だった。

あの子が学校のルールに合わせるなんて。

 

「──おはよう、ヤミさん」

 

声をかけた。

風紀委員として──というより、なんとなく。

制服をちゃんと着ているのを見て、少しだけ好感を持ったから。

 

ヤミさんが──足を止めた。

ワインレッドの目が──こちらを見る。ジト目。表情は──ない。

 

「……ええ」

 

それだけだった。

 

「制服、ちゃんと着てるのね。前の服よりずっといいわ」

 

「……まあ」

 

視線が──もう私から外れている。

校舎の方を見ている。もう歩き出しそうな──そういう空気。

 

「あの──最近、学校には慣れた? 困ったことがあったら、風紀委員に相談してくれてもいいのよ?」

 

「……必要ありません」

 

静かだった。

拒絶──というほど強くはない。でも、会話を続ける意思が──まったく感じられない。

壁のように平坦な声が、朝の空気に溶けて消える。

 

ヤミさんは──もう歩き出していた。

金色の長い髪が、背中で揺れている。

小柄な身体──だけど、歩き方に隙がない。重心が低くて、足音がほとんどしない。

 

あっという間に──校舎の中に消えてしまった。

 

「…………」

 

トングを持ったまま──立ち尽くした。

 

(相変わらず……とっつきにくい子ね)

 

嫌われているのか、人付き合いが苦手なのか──判断がつかない。

でも、悪い子ではないと思う。制服をちゃんと着ているし、遅刻もしない。授業態度も問題ないと聞いている。

ただ──誰とも距離を詰めない。

 

金色の闇──ヤミさん。

転入してきた時から、妙な噂がつきまとっている子だった。

 

宇宙一の暗殺者──だとか。

 

本当かどうかなんて──わからない。

この学校には宇宙人の生徒が何人かいるから、荒唐無稽な話とも言い切れないけれど。

暗殺者なんて──映画じゃあるまいし。

 

でも──さっきの歩き方。

あれは普通の女子高生の身のこなしではなかった。

 

足音を殺して歩く。視線を向けずに周囲を把握している。校舎に入る直前──一瞬だけ、背後を確認していた。

あれは──訓練された動きだ。

 

(もし……本当に暗殺者だったとしたら)

 

強いのだろう。

 

あの無表情の下に──どれほどの力が隠れているのか。

髪を変形させて武器にするという噂もある。嘘みたいだけど──宇宙人だと言われれば、そうなのかもしれない。

 

ならば──結城くんに対しても、大丈夫なのではないだろうか。

 

あのヤリチンが──いくら手を出そうとしても。

相手が宇宙一の暗殺者なら──抵抗どころか、返り討ちにされるだろう。

 

(そうよね。ヤミさんなら大丈夫だわ)

 

むしろ──心配すべきは結城くんの方かもしれない。

 

もし結城くんが──ヤミさんに例のセクハラ行為を働いたら。

あの子の性格なら──黙ってはいないだろう。

「殺します」と言うのが口癖だという話も聞いたことがある。

 

殺す──は比喩だとしても。

 

例えば──結城くんが、不用意にヤミさんの身体に触れたりしたら。

あの金色の髪が──刃に変わって。

 

ざくっ──と。

 

結城くんの──。

 

…………。

 

おちんちんが──。

 

切り落とされる──とか。

 

「…………」

 

な、なんでそんなこと考えてるの──私は。

結城くんのおちんちんの心配なんて──していない。していないわ。

 

(そもそも──なんで結城くんの──そ、そこの──安否を気にしなきゃいけないのよ……!)

 

あいつは──ヤリチンなのだ。

女の子に手を出しまくっている、学園一の破廉恥男。

そのシンボルが切り落とされたところで──むしろ学園の風紀は守られるのではないだろうか。

 

切り落とされてしまえばいいのだ。

そうすれば──もう誰にも手を出せなくなる。

 

…………。

 

でも。

 

…………ちょっとだけ──かわいそうかもしれない。

 

(──かわいそう⁉ 何を言ってるの私──⁉)

 

トングを──ぎゅっと握り締めた。

金属が軋む音がした。

 

朝から──おかしい。

エロ漫画のせいだ。あの破廉恥な漫画のせいで──思考が汚染されている。

 

結城くんのお尻を叩きたいわけでも──叩かれたいわけでも──おちんちんの心配をしているわけでもない。

 

私は──風紀委員。

古手川唯。

こんなことを考える人間では──ない。

 

ゴミ袋を持ち直して──清掃を再開した。

 

空き缶。ペットボトル。紙くず。

 

黙々と──拾う。

 

頭の中を──空にする。

 

何も──考えない。

 

何も。

 

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