結城家は──住宅街の中にある、ごく普通の一軒家だった。
表札に「結城」と書かれている。玄関の前に──小さなプランターが並んでいて、パンジーが咲いている。
美柑が世話をしているのだろう。花の手入れが行き届いていた。
インターホンを押す前に──一度、立ち止まった。
この家には──結城リトがいる。
あの男と同じ屋根の下で一晩を過ごすことになる。
美柑に会いに来ているだけだ。あの男は関係ない。
だが──暗殺者の本能が、わずかに警戒信号を発している。
(……問題ありません。美柑の家に泊まるだけです)
インターホンを──押した。
ぴんぽーん。
数秒の間を置いて──玄関の扉が開いた。
「ヤミさん! 来てくれたんだ!」
美柑が──笑顔で迎えてくれた。
エプロンをつけている。髪を後ろで一つに束ねていて──額に、少しだけ汗が浮いている。
料理の途中──だったらしい。
「……ええ。お邪魔します」
「上がって上がって! 今日のご飯、張り切って作ってるからね!」
美柑の笑顔は──いつも、まっすぐだった。
裏がない。計算がない。ただ──私に会えたことが嬉しいという、純粋な感情。
靴を脱いで──上がった。
廊下を歩く。リビングに向かう道すがら──周囲を確認する。
暗殺者の癖だ。間取りを把握する。出入り口の位置。窓の数。死角になる場所。
(……ここでは、必要のない習慣です)
わかっている。でも──身体に染みついた行動は、簡単には消えない。
リビングには──結城リトがいた。
ソファに座って、テレビを見ている。
こちらに気づいて──振り向いた。
「お、ヤミ。いらっしゃい」
軽い。その声が──いつも、軽い。
爽やかな笑顔。人当たりのいい声音。距離の詰め方が自然で──それが、逆に警戒心を刺激する。
「……お邪魔します」
最低限の挨拶だけ返して──視線を外した。
この男とは──必要以上に関わらない。
美柑がキッチンから顔を出した。
「リト、ヤミさんの荷物、二階に持っていってあげて」
「はいはい」
結城リトが──立ち上がって、私のバッグに手を伸ばした。
「自分で持ちます」
「いいよいいよ、客だし。美柑の部屋だよな?」
バッグのストラップに──結城リトの手が触れた。
その指先が──私の手の甲を、かすめた。
ぬるっ。
「──っ!」
身体が──硬直した。
結城リトの指が──汗で──少しだけ湿っていた。
ぬるりとした感触が──手の甲を滑った。
それだけのことだった。
ただの──汗。人間の体温と、僅かな水分。
なのに──全身に、鳥肌が立った。
ニュルニュル──。
あの感触が──蘇る。
暗殺者として活動していた頃──ある惑星で、標的を追って密林に入った。
そこで──触手生物に捕獲された。
樹木に擬態していた生物の触手が──不意に、私の四肢を絡めとった。
トランス能力で脱出を試みたが──触手の表面から分泌される粘液が、私の変形能力を阻害した。
ニュルニュルした粘液が──全身を覆った。
『なんですか……この触手ッ!!』
髪も、腕も、脚も──べっとりと、ぬめる粘液に塗れた。
力が──入らなくなった。
触手が──衣服の隙間から侵入した。
粘液にまみれた触手の先端が──肌の上を這い回った。首筋。脇腹。太ももの内側。
ニュルニュル──ッ。
ぬるぬると──身体を撫で回される感触が。
粘膜のように柔らかく、体温よりも少し温かい触手が──。
胸の先端を──ぬるっ──と、舐め上げた。
『やめ──っ……!』
声が──出た。暗殺者としてあってはならない失態だった。
でも──粘液の感触が、理性を溶かしていた。
触手が──脚の間に。
粘液まみれの先端が──下着越しに、割れ目を擦った。
ぬちゅっ──ぬちゅっ──。
『っ……ぁ……っ!』
身体が──震えた。逃げられない。力が入らない。
粘液が──肌の表面を滑るたびに──全身の感覚が、暴走した。
触手が──下着をずらして──直接、粘膜に触れた。
ぬるぬるした表面が──陰裂をこじ開けるように押し入って──。
ずぷっ──。
『────ッ⁉』
内側から──充填された。
粘液を含んだ触手が──膣壁を押し広げながら、奥へ奥へと──。
ぬちゅっ……ぐちゅっ……ぬるっ……。
身体の中で──触手が蠢く。粘液が溢れる。内壁を撫で回されて──抵抗する意志が、溶けていく。
催淫効果のある粘液と、生暖かい触手。
穴という穴に触手が入ってきて、粘液まみれで犯された。
何度──絶頂させられたか、覚えていない。
気がついた時には──粘液の水溜まりの中で、意識を失っていた。
あれ以来──ニュルニュルしたものに触れると、身体が硬直する。
力が入らなくなる。あの時の──あの感触が、蘇ってしまう。
「……ヤミ? 大丈夫?」
結城リトの声が──現実に引き戻した。
「……問題ありません」
バッグを──奪い取るように、引っ張った。
「自分で持ちます。触らないでください」
「お、おう……ごめん」
結城リトが──困惑した顔をしている。
(……触れないでください。あなたには──特に)
あの男の手が──ぬるりと滑った感触が、まだ手の甲に残っている。
それだけで──下腹部に、微かな熱が灯っていた。
図書室で読んだ官能小説の──残響が、まだ身体に残っているせいだ。
それ以外の理由は──ない。
*
夕食後──美柑と一緒に、風呂に入った。
結城家の浴室は──清潔に保たれていた。
タイルの目地に汚れがない。シャンプーやボディソープが整然と並んでいる。美柑が毎日掃除しているのだろう。
洗い場で──並んで座る。
シャワーの湯が──タイルを叩く音が、浴室に反響していた。
「ヤミさん、シャンプーこれ使っていいよ。いい匂いなんだ」
「……ありがとうございます」
美柑が差し出したシャンプーのボトルには──花の絵が描いてあった。
蓋を開けると──柔らかい、甘い香りがした。
「美柑。これは何の香りですか」
「桜だよ! 春限定のやつ。最近出たんだけど、すっごくいい匂いでしょ?」
「……ええ。悪くないです」
私の語彙では──「いい匂い」を上手く表現できない。でも──悪くない、というのは本心だった。
髪にシャンプーを馴染ませながら──美柑の話を聞いていた。
「あのね、今日学校でさ、理科の実験でカエルの観察したの」
「カエル」
「そう! ヤミさんカエル好き?」
「……嫌いではありません」
暗殺者時代──ある惑星で、人間ほどの大きさのカエル型生物と遭遇したことがある。毒のある舌で攻撃してきた。あれは少し厄介だった。
──美柑に話す必要のない情報だ。
「あたしも最初ちょっと苦手だったんだけど、よく見ると目がくりくりしてて可愛いの。ヤミさんにも見せたかったなぁ」
「……機会があれば」
「あと、今度の日曜日にたい焼き屋さんの新メニュー出るんだって! 抹茶カスタードだって!」
「抹茶カスタード……」
たい焼きの新メニュー。それは──少し、気になった。
「一緒に行こうよ、ヤミさん!」
「……考えておきます」
「絶対行こうね! 約束!」
美柑が──にぱっと笑った。
シャンプーの泡が頬についていて──それが妙に可愛らしかった。
こういう時間が──私は、好きだった。
誰かと──他愛のない話をする。カエルの話。たい焼きの話。何の意味もない、どこにも繋がらない会話。
暗殺者だった頃には──存在しなかった時間。
身体を洗い始めた。
スポンジにボディソープを含ませて──腕を擦る。
隣で美柑も身体を洗っている──のが、視界の端に見えていた。
「ねえヤミさん、髪さらさらだよね。何かしてるの?」
「……特には。トランス能力の影響で、髪質が一定に保たれているだけです」
「えー、ずるい! あたしなんか毎日トリートメントしないとぱさぱさになっちゃうのに」
「美柑の髪も──綺麗だと思いますが」
「えっ、ほんと? 嬉しい!」
美柑が──ぱあっと顔を輝かせた。
褒められ慣れていない子の──素直な反応だった。
「リトにも言われないのに……ヤミさんに言われた方が嬉しいかも」
「……結城リトは、そういうことを言わないのですか」
「んー、リトはなんか……変なとこで褒めてくるっていうか……」
美柑が──少しだけ、目を泳がせた。
何かを言いかけて──やめた。ように、見えた。
「まあいいや! ヤミさん、背中流そうか?」
「……お願いします」
美柑が──私の背中にスポンジを当てた。
くるくると──丁寧に洗ってくれる。力加減が──ちょうどいい。
家事慣れしている手つきだった。
「わ、ヤミさんの肌すべすべ……」
「……ありがとうございます」
「その……胸も、大きいよね……」
美柑の声が──少しだけ、しおれた。
「わたしなんか全然なのに……」
「美柑はまだ成長途中です。気にする必要はありません」
「そうかなぁ……ララさんもモモさんもみんな大きいし……」
「大きさは──戦闘において有利にはなりません」
「戦闘の話じゃないんだけどなぁ……」
美柑が──くすっと笑った。
こういう会話が──心地よかった。
友達と──風呂に入って、くだらない話をして。普通の──女の子の時間。
背中を流し終えて──美柑が自分の身体を洗い始めた。
腕。首。お腹。脚。
小学五年生の身体は──まだ薄くて、凹凸が少ない。白い肌に──湯気が纏わりついている。
私は──自分の髪を濯ぎながら、視線を壁に向けていた。
──その時だった。
視界の端で──美柑の動きが、変わった。
スポンジを置いた。
石鹸を──手のひらに、たっぷりと取った。
そして──お尻に、手を回した。
指で──お尻の割れ目に、手を差し入れている。
くいっ──と、片方のお尻を持ち上げるようにして──奥まで、指を滑り込ませた。
肛門の周囲を──くるくると、念入りに擦っている。
石鹸の泡が──臀部の谷間で白く泡立つ。
指先が──肛門の縁をなぞるように──何度も、何度も、丁寧に洗っている。
他の部位を洗う時間と比べて──明らかに、長い。
(……っ⁉)
私は──手を止めた。
シャワーヘッドを持ったまま──壁を向いたまま──視界の端で、美柑の手の動きを追っていた。
あれは──普通の身体の洗い方ではない。
肛門を──あそこまで丁寧に、執拗に洗う理由が──わからない。
まるで──何かの準備をしているように見える。
「……美柑」
「ん?」
美柑が──振り向いた。指はまだお尻に当てたまま。
「そこ──随分、念入りに洗うんですね」
言ってしまってから──少し後悔した。
踏み込みすぎた──かもしれない。
でも──美柑の反応は、予想と違った。
ぱあっ──と。
美柑の顔が──明るくなった。
嬉しそうな──誇らしげな表情。目がきらきらと輝いて──口元がほころんで。
「あ、うん! これはね──」
美柑が──何かを言おうとした。
嬉しそうに。自慢するように。まるで──大事な秘密を親友に打ち明けるような、わくわくした顔で。
「リトがね──」
──ぴたっ。
美柑の声が──止まった。
目が──大きく見開かれた。
さっきまでの嬉しそうな表情が──凍りついている。
口が──半開きのまま、言葉を飲み込んだ。
「…………」
数秒の──沈黙。
美柑の顔が──みるみる赤くなった。
耳まで──真っ赤に。
「え、えっと──! つまりその──清潔にしておくと──健康にいいって──テレビで見たから──!」
声が──裏返っていた。
目が──泳いでいる。さっきまでの嬉しそうな輝きが──動揺に変わっている。
「テレビで──お医者さんが言ってたの! おしりはちゃんと洗った方がいいって──!」
「……そうですか」
美柑が──慌てて話題を変えた。
「あっ、ヤミさん髪の泡まだ残ってるよ! 流してあげる──!」
「自分で流せます」
「いいからいいから──!」
美柑が──私の髪にシャワーを向けた。
手が──少し、震えていた。
(……リトがね──)
美柑が言いかけた言葉。
「リト」──結城リトの名前が、出かかっていた。
肛門を念入りに洗う理由を──嬉しそうに──結城リトの名前と一緒に言おうとした。
途中で我に返って──慌てて誤魔化した。
あの顔は──秘密をうっかり喋りそうになった子供の顔だった。
隠し事がある人間の──典型的な反応。
何を──隠しているのか。
結城リトと──肛門が──どう繋がるのか。
考えたくなかった。
でも──暗殺者の思考は、勝手に仮説を組み立てていく。
湯船に浸かりながら──美柑と話した。
今度の遠足のこと。お弁当に何を入れるか。ヤミさんも遠足あるの? ありません。えー、つまんない。
美柑は──よく笑い、よく喋った。
さっきの動揺が嘘のように──いつもの美柑に戻っていた。
(……いつもの美柑です。何も──おかしなところは、ない)
自分に──言い聞かせた。
でも──嘘だった。
「リトがね──」
あの嬉しそうな顔が──頭から、消えなかった。
*
美柑の部屋で──布団を並べて寝た。
美柑が貸してくれたパジャマは──ピンク色で、胸元にクマの刺繍がある。
少し小さくて──胸のあたりが窮屈だった。
美柑は同じデザインの水色のパジャマを着ていて──「お揃いだね!」と嬉しそうに笑った。
消灯。
暗闇の中で──美柑の寝息が聞こえる。
すう、すう、と──規則正しい呼吸。
私は──眠れなかった。
暗殺者の習性で──知らない場所では深い睡眠に入れない。
身体は横たわっているが──意識は半覚醒のまま、周囲の音を拾い続けている。
時計の秒針の音。エアコンの低い唸り。庭の虫の声。
どれくらい──時間が経ったか。
美柑が──動いた。
布団がかさりと擦れる音。身体を起こす気配。
私は──目を閉じたまま、暗殺者の感覚で気配を追った。
美柑が──布団から出た。
足音を殺して──部屋の扉に向かっている。
ゆっくりとドアノブを回して──廊下に出た。
扉が──静かに閉まる。
深夜──だった。時計の針が示す時刻は──午前一時を少し回っている。
トイレだろうか。水を飲みに行ったのだろうか。
五分──待った。
美柑は──戻ってこない。
十分。
戻ってこない。
(……美柑?)
身体を起こした。
暗殺者のスキルが──嫌でも、音を拾う。
さっきの風呂場でのことが、一瞬脳裏によぎった。
この家の構造は──夕食前に把握している。美柑の部屋は二階。隣が──結城リトの部屋。
美柑の足音は──隣の部屋の方向に向かっていた。
扉を──開けた。
廊下は──暗い。非常灯のぼんやりした光だけが、床を照らしている。
結城リトの部屋の前──扉が、わずかに開いていた。
隙間から──光が漏れている。
間接照明の──柔らかい、橙色の光。
そして──声が、聞こえた。
美柑の声だった。
「んっ……リト……くすぐったい……」
笑っている──ように、聞こえた。
甘えた声。幼い声。兄に甘える妹の──声。
「美柑、今日もする?」
結城リトの声。低い。落ち着いている。
「……うん」
美柑が──答えた。小さく、でも──はっきりと。
扉の隙間から──室内が、見えた。
ベッドの上。
結城リトが──座っている。美柑が──その膝の上に、座っていた。
パジャマの上から──結城リトの手が、美柑の腰を抱いている。
美柑が──結城リトの首に腕を回している。
顔を──見上げている。兄の顔を。
その表情は──嬉しそうだった。目が──きらきらと、光っている。
結城リトが──美柑の頬に唇を寄せた。
ちゅっ。
軽いキス。頬に。それから──額に。鼻の先に。
(…………え?)
美柑が──くすくす笑った。
「リト、くすぐったいってば……」
「美柑が可愛いのが悪い」
「もう──バカ」
兄妹の──じゃれ合い。
微笑ましい──と言えなくもない。
でも──私の暗殺者の感覚が、これは「微笑ましい」の範疇ではないと告げていた。
結城リトの手が──美柑のパジャマの裾に触れた。
ゆっくりと──布地を、たくし上げていく。
白い肌が──露わになる。
小さな腰。薄いお腹。肋骨の浮いた胸。
パジャマが──頭の上から、抜かれた。
美柑が──上半身裸になった。
薄い胸。まだ膨らみかけの──小さな双丘。
乳首が──薄いピンク色で、ちょこんと突き出ている。
結城リトが──その胸に、唇を落とした。
ちゅっ──と、小さな乳首を──含む。
「ひゃっ……リ、リト……っ」
美柑の声が──変わった。
甘えた声から──喘ぎに。
(…………ええ?)
私は──動けなかった。
扉の隙間から──目を逸らせなかった。
暗殺者として──多くの場面を見てきた。戦場を。死体を。残虐な行為を。
でも──これは、そのどれとも違う。
結城リトが──美柑のパジャマのズボンを、下ろしていく。
下着ごと──膝まで。足首まで。
美柑が──全裸になった。
小さな身体。細い手足。白い肌。
そして──結城リトの大きな手が、美柑の身体を──自由に、触っている。
美柑は──最初、笑っていた。
結城リトの肩に顔を埋めて──「くすぐったい」「リトのバカ」と──甘えた声で。
楽しそうだった。
兄に愛されている妹の──幸せそうな表情。
結城リトが──美柑の身体をうつ伏せにした。
ベッドの上に──四つん這いにさせる。
美柑の──小さなお尻が、結城リトの前に突き出された。
丸い。形がいい。白い肌に──産毛が見えるほどの距離。
結城リトが──自分のズボンを下ろした。
陰茎が──露わになった。
硬く勃起している。太い幹が上向きに張り詰めていて──カリ首がくっきりと隆起している。
小学生の美柑の身体と比べると──明らかに、不釣り合いなほど大きい。
結城リトが──美柑のお尻の割れ目に、指を滑らせた。
肛門を──指の腹で、くるくると擦る。
ぬるっ──と。透明なジェルが──肛門の縁に塗られる。
ローションだ。
結城リトは──美柑の肛門に、指を一本──ゆっくりと差し入れた。
ぬぷっ──。
「ん……っ」
美柑が──小さく声を漏らした。
結城リトの指が──肛門の中で、くるくると回される。
括約筋を──ゆっくり解していく。丁寧な──準備。
(だから──美柑は──あの時──肛門を念入りに洗って──)
風呂での違和感が──ここで、繋がった。
結城リトが──陰茎を、美柑の肛門に押し当てた。
硬く張り詰めたカリ首が──小さな肛門の入り口を圧迫する。
ぬぷっ──……ずぶっ──……。
ゆっくりと──入っていく。
「あっ……んっ……リト……大きい……っ」
美柑の声が──切なく震えている。
でも──まだ、笑みが混じっていた。痛みと快感の境界で──兄への信頼が表情に残っていた。
結城リトが──腰を動かし始めた。
最初は──ゆっくりだった。
出し入れの幅が小さく──美柑の身体に馴染ませるような動き。
ずちゅっ──ぬぷっ──ずちゅっ──。
「あっ……あぅ……っ……リト……きもちい……っ」
美柑が──シーツを握りしめながら、喘いでいる。
小さな身体が──結城リトの腰の動きに合わせて、前後に揺れている。
やがて──結城リトの動きが、変わった。
腰の振りが──速くなった。深くなった。
ぱんっ──ぱんっ──ぱんっ──。
結城リトの腰が──美柑の小さなお尻に打ちつけられる音が、部屋に響いた。
「ひゃっ──! リ、リト──ちょっ──速──っ」
美柑の声が──悲鳴に変わった。
「やっ──やめ──リト──お尻──壊れ──っ」
でも──結城リトは、止まらなかった。
ぱんっ♡ぱんっ♡ぱんっ♡──。
「あぁっ♡──やだ──やめてリト──あっ♡あっ♡」
美柑の身体が──大きく跳ねた。
びくっ♡びくっ♡──。
小さな身体が──痙攣している。
イッた──のだと、わかった。
でも──結城リトは、止まらなかった。
「美柑──もう一回」
「むり──っ♡リト──もうむり──あっ♡♡」
ずっぽ♡ずっぽ♡──。
陰茎が──美柑の肛門を、深く抉るように突いている。
カリ首が──括約筋の縁を擦り上げるたびに──美柑の全身が、びくっと震える。
「やっ──あぅ♡──またイク──イっちゃう──っ♡」
びくびくっ♡──。
二度目の──絶頂。
美柑の腕が──力を失って、上半身がベッドに崩れ落ちた。
お尻だけが──突き上がった姿勢。結城リトが──その腰を掴んで、動きを止めない。
ぐちゅっ♡ぬぷっ♡ずちゅっ♡──。
「ぁ……っ♡……あ……っ♡……リト……おにい……ちゃ……っ♡」
美柑の目に──涙が浮かんでいた。
シーツに顔を押し付けて──歯を食いしばりながら──耐えている。
でも──声が、止まらない。
「あっ♡あっ♡あっ♡──」
三度目の──絶頂が来た。
美柑の全身が──弓なりに反った。
小さな指が──シーツを引き裂くように掴んでいる。つま先が──ぴんと伸びて──震えている。
結城リトが──腰を数回、深く突いて──止まった。
どくんっ♡──どくんっ♡──。
射精している──のだと、わかった。
美柑の肛門から──白い液体が、陰茎の隙間を伝って滴り落ちた。
「…………」
私は──扉の隙間から、全てを見ていた。
呼吸が──荒くなっていたことに、気づいた。
手が──ドアの縁を、強く握りしめていた。爪が白くなるほど。
見てはいけないものを──見てしまった。
結城リトが──美柑を。実の妹を。
美柑は──最初、楽しそうだった。兄に甘えている──幸せそうな顔だった。
でも途中から──「やめて」と言った。「壊れる」と言った。止まらなかった。
美柑は──泣いていた。
快楽で泣いていたのか。苦痛で泣いていたのか。その境界が──わからなかった。
あれは──合意なのか。
最初は合意で始まったように見えた。でも──途中から?
「やめて」と言っているのに止まらないのは──。
静かに──美柑の部屋に戻った。
布団に潜り込んだ。目を閉じた。
しばらくして──美柑が戻ってきた。
足音を殺して──布団に入る気配がした。
すぐに──すう、すう、と寝息が聞こえた。
泣き疲れたのか。身体が疲れているのか。深い眠りに──落ちたようだった。
私は──眠れなかった。
天井を──見つめていた。
暗殺者として──多くの「暴力」を見てきた。
だが──あれは、私が知っている暴力とは違った。
美柑は──結城リトのことを「リト」と呼んだ。途中から「お兄ちゃん」と。
その声に──嫌悪はなかった。少なくとも──最初は。
結城リトを──問い詰めるべきか。
「美柑に何をしているのですか」と。
「やめなさい」と。
でも──美柑は、自分から結城リトの部屋に行った。
自分から──肛門を念入りに洗って。準備をして。
美柑に──聞くべきか。
「大丈夫ですか」と。
「あなたは──本当に、あれを望んでいるのですか」と。
でも──美柑が「うん、大丈夫だよ」と笑ったら。
私は──それ以上、何も言えなくなる。
美柑が──大丈夫じゃないと言ったら。
私は──結城リトを、殺すのか。
(……殺す?)
いつもの口癖が──今だけは、冗談に聞こえなかった。
答えが──出ない。
美柑の寝息を──聞きながら。
朝が来るまで──私は、天井を見つめ続けた。