結城リトの胸に──手を、置いた。
掌が──Tシャツの布地越しに、男の体温を感じている。
胸板の固さ。呼吸に合わせて上下する肋骨の動き。
押し返す──つもりだった。
暗殺者の腕力は──常人を軽く凌駕する。
トランス能力を使わなくても──成人男性を片手で吹き飛ばせる。
なのに──。
押せない。
掌に──力が、入らない。
ゆっくりと──非常にゆっくりと──結城リトの身体を、離した。
まるで──割れ物を扱うように。
まるで──ここから離れたくないと、身体が抵抗しているかのように。
腕が──弱々しく震えている。
かろうじて──結城リトの胸と、私の身体の間に──数センチの隙間ができた。
「……今日は──帰ります」
声が──掠れていた。
「美柑には──もう、ああいったことは──しないでください」
それだけ──言えたら。
それだけ言って──帰れたら。
結城リトの顔を──見上げた。
結城リトは──私を見下ろしていた。
あの涼やかな目が──少しだけ、細くなっている。
「嫌だ」
「──は?」
「嫌だ。ヤミに気持ち良くしてもらわないと、嫌だ」
「はぁっ!?」
何を──言っているんですか。この男は。
「意味がわかりません。話を聞いていましたか? 美柑のことを──」
どんっ。
結城リトが──私を、強く抱きしめた。
さっきまでの──穏やかな抱擁とは違う。
力が──強い。腕が──背中に回って、がっちりと固定されている。
身体が──密着した。
私の胸が──結城リトの胸板に──ぐにっ、と押しつぶされた。
「ひゃあっ!?」
声が──出た。
甲高い──悲鳴。
暗殺者の声では──ない。
女の子の──驚いた時の──可愛らしい悲鳴。
(──今の、私の声?)
信じられない。
「ひゃあ」って何。
宇宙一の暗殺者が──「ひゃあ」って。
「あはは、今の声すげえ可愛い」
「か──っ──可愛くないですっ!」
「もう一回聞きたい」
「聞きたくないです! 離してください!」
腕の中で──じたばたしている。
暗殺者が──男の腕の中で、じたばたしている。
情けない。情けなすぎる。
「ヤミ──お願い。ヤミに気持ち良くしてほしい」
結城リトが──耳元で、囁いた。
低い声。甘い──声。
「離さない。ヤミが──してくれるまで」
「──っ」
身体が──ぶるっと、震えた。
この声は──あの夜、美柑に「もう一回」と囁いた時と──同じトーンだ。
(……ずるい)
この声を出されると──思考が、鈍る。
(でも──これは──)
考えろ。暗殺者の思考で──考えろ。
結城リトが──私に、迫っている。
「気持ち良くしてほしい」と言っている。
これは──つまり──私が、相手をすれば──美柑の代わりになれる──ということ?
美柑にああいうことをしないでほしい。
その代わり──私が──。
「…………」
言い訳を──見つけた。
美柑のため──だ。
私が結城リトの相手をすれば──美柑は、今夜は安全になる。
暗殺者としての──戦略的判断。これは──犠牲じゃなく、作戦。
(……そう。これは作戦です。美柑を守るための──合理的な判断)
「……仕方ないです」
声が──思ったより、あっさり出た。
「え──マジ?」
「美柑のため──です。今夜だけ──私が代わりになります」
「ヤミ……」
「勘違いしないでください。えっちぃのは嫌いです。これは──美柑を守るための──」
言いながら──手が動いていた。
黒いボンテージの──スカートの中に手を入れた。
太腿の付け根にあるゴムの感触。白い──簡素な下着。
するっ──と。
脱いだ。
白い下着が──足首まで滑り落ちて、片足で蹴り上げられ──床に落ちた。
結城リトが──目を見開いている。
「……速くないか? 脱ぐの」
「暗殺者の着脱は──迅速が基本です」
意味がわからないことを言っている自覚は──ある。
でも──もう、考えている余裕がない。
考えたら──止まってしまう。止まったら──自分が何をしようとしているのか、直視してしまう。
「……結城リト。服を──脱いでください」
「え、俺?」
「早く」
催促した。
結城リトが──少し笑って──Tシャツを、頭から脱いだ。
男の上半身が──露わになった。
十六歳の身体。細身だが──腹筋の筋が薄く浮いている。胸板に──ほどよい厚みがある。
結城リトが──スウェットのズボンを下ろした。
トランクスの下に──膨らみがある。
明らかに──勃起している。
結城リトが──トランクスも下ろした。
陰茎が──露わになった。
硬い。太い。上向きに張り詰めている。
カリ首が──くっきりと隆起して──先端に向かって僅かに反り返っている。
十六歳の少年のものとは思えない──完成された、男の象徴。
あの夜──美柑の身体に入っていた──あれだ。
結城リトが──ベッドに腰を下ろした。
私は──。
ベッドに──膝を乗せた。
結城リトの──上に。
馬乗りになった。
黒いボンテージの太腿が──結城リトの腰を跨いでいる。
下着を脱いだ股間が──結城リトの下腹の上にある。
目の前に──聳り立つ陰茎。
ごくっ──と、唾を飲み込んだ。
近い。近すぎる。
硬く張り詰めた肉の幹が──私のお腹の前で──脈打っている。
先端から──透明な液体が、じわりと滲み出していた。
先走り液──だ。
粘り気のある──透明な雫が、カリ首の窪みに溜まって──ゆっくりと、幹を伝って流れ落ちている。
にゅるにゅる──だ。
「…………にゅるにゅる、です」
「え?」
「先走り液が──にゅるにゅるしています」
結城リトが──きょとんとした顔をした。
「……以前」
私は──陰茎を見つめながら、話し始めた。
「暗殺者として活動していた頃──ある惑星で、触手生物に捕獲されたことがあります」
「触手生物……?」
「はい。暗殺対象の護衛として配備されていた──生体兵器の一種です」
私は──結城リトの陰茎を見つめたまま──淡々と語り始めた。
「全長は約十二メートル。本体は暗紫色の──球状の肉塊で、そこから無数の触手が生えていました。触手の太さは──細いもので私の小指ほど。太いものは──」
視線が──結城リトの陰茎に向いた。
「これと──同じくらい」
「…………え」
「色は半透明の──薄紅色。表面には細かな突起が並んでいて──ざらざらとした質感でした。そして──全身からニュルニュルした粘液を分泌していました」
結城リトが──言葉を失っている。
「えっちぃ生態を持っていたのでしょう。暗殺対象に接近した時──背後から、四本の太い触手に──手首と足首を捕まれました」
「四本──同時に?」
「はい。トランス能力で髪を刃に変形させて切断しようとしましたが──触手の粘液が肌に触れた瞬間、全身から力が抜けました」
結城リトが──眉を寄せた。
「それが──ニュルニュルの?」
「ええ。粘液に──筋弛緩作用があったようです。四肢を大の字に拘束された状態で──宙吊りにされました」
私は──淡々と語っている。
暗殺者の報告口調で──まるで任務の事後報告のように。
「宙吊りの状態で──細い触手が、ボンテージの隙間から侵入してきました。最初に狙われたのは──胸でした」
「……胸」
「乳首に──ざらざらした細かい触手が巻きついて。表面の突起が──乳首の先端をこりこりと擦りました。同時に粘液が──乳首のまわりに塗り広げられて」
声が──少しだけ、掠れた。
「……ニュルニュルと……乳首が、粘液でてらてらに濡れた状態で──ざらざらの突起に擦られ続けて──」
『やめ──なさい──っ!』
あの時の──自分の声が、蘇る。
「……何も、効きませんでした。腕も脚も動かない。髪も変形させられない。ただ──吊るされたまま、胸を弄られ続けました」
結城リトが──ごくっ、と唾を飲んだ。
「……それだけ……じゃないんだろ」
「……はい」
私は──一度、目を伏せた。
「次に──口を、狙われました。太い触手が──唇をこじ開けて──口の中に入ってきました」
「口に──」
「喉の──奥まで。太さは──この」
結城リトの陰茎を──ちらりと見た。
「これより──少し太いくらいでした。表面がニュルニュルと滑るので──抵抗できないまま──喉の奥まで押し込まれて」
『んぐっ──ごぼっ──』
嘔吐反射が──あの時も起きた。でも──触手は止まらなかった。
「喉の壁に──触手の突起が引っかかって──抜き差しされるたびに、ごぽっ、ごぽっ、と音がしました。涎が──顔中に垂れて──息が──できなくて──」
「ヤミ──もういい、無理に話さなくて──」
「大丈夫です。──続けます」
暗殺者の声で──続けた。
「口を塞がれている間に──下半身のボンテージを、細い触手が切り裂きました。露出した──」
一瞬──言い淀んだ。
「……股間に──粘液がたっぷりと塗られました。太腿の内側から──陰裂まで──ニュルニュルと」
「…………」
「そして──二本の触手が──同時に」
声が──微かに震えた。
「前と──後ろに。同時に──挿入されました」
結城リトの表情が──固まった。
「膣に入った触手は──太い方でした。表面のざらざらした突起が──内壁を撫でながら──奥へ奥へと進んでいって。後ろに入ったものは──少し細い触手で──でも粘液で滑って──抵抗する間もなく──」
『いやっ──そこは──だめっ──!」
あの時の──叫びが、耳の奥で反響する。
「前と後ろを──同時にピストンされました。交互ではなく──同時に。奥まで押し込まれて──同時に引き抜かれて──また同時に──」
口を塞がれ──胸を弄られ──前と後ろを同時に犯され──四肢を拘束されて、快楽から逃げることもできない。
「身体が──勝手に反応しました。暗殺者の自制心でも──三つの穴を同時に犯されながら、乳首を刺激され続ける状態には──耐えられなかった」
結城リトが──黙って、聞いている。
「何度も──イきました。声も出せないまま──触手に犯され続けて──どのくらいの時間が経ったのか──あの時の記憶は──途切れ途切れです」
「…………それで──どうなったんだ?」
「……気がついたら──触手生物は、いなくなっていました」
私は──声を落とした。
「床に──倒れていました。身体中が──粘液まみれで。髪も──顔も──胸も──お腹も──脚の間も──全部、ニュルニュルの粘液で覆われていて」
「…………」
「ボンテージは──ずたずたでした。布地の切れ端が──粘液に浮いていて。一人で──粘液の水たまりの中に、転がっていました」
結城リトが──何も言えずにいる。
「どのくらい気を失っていたのかも──わかりません。目を開けたら──天井が見えて。身体が──ニュルニュルして──動けなくて」
声が──平坦だった。感情を──消していた。
「完全に──負けました。暗殺者として──初めての、完敗です」
結城リトが──小さく息を吐いた。
「……ヤミ」
「立ち上がるまでに──かなり時間がかかりました。粘液が──身体中に張り付いて──拭っても拭っても──ニュルニュルが取れなくて」
「それ以来──ニュルニュルしたものに触れると、身体が硬直するようになりました。力が入らなくなる。あの時の──感覚が蘇ってしまって」
「ヤミ──それ、大丈夫なのか? 無理しなくて──」
「でも」
私は──結城リトの陰茎に、顔を近づけた。
先端の──にゅるにゅるした先走り液が、すぐ目の前にある。
透明な粘液の──甘い、生臭い匂いが──鼻腔に届く。
「だから──結城リト。あなたのこのニュルニュルは──こうです」
口を──開けた。
唇が──先端に触れた。
ちゅっ──。
先走り液が──唇に付着した。ぬるっ──とした感触。
そのまま──唇で先端を包み込んで──。
ちゅぽっ──♡
「っ──!」
口の中に──カリ首が入った。
硬い。熱い。舌の上で──肉の弾力が、脈動している。
先走り液が──舌の上を、ぬるぬると滑っていく。
にゅるにゅる──だ。
あの触手の──粘液を思い出す。でも──これは。
(……違う──触手とは──全然──)
口の中で──結城リトのものが、どくんどくんと脈打っている。
生きている──熱を持った──男の──。
じゅるっ──♡
舌で──カリ首の裏側を舐め上げた。
先走り液がぬるぬると広がって──口の中が、にゅるにゅるになっていく。
「ヤミ──お前、初めてなのに──すごい──」
結城リトの声が──掠れている。
「ふぁっ──触手で──訓練──しまひたから──」
口に含んだまま──喋ろうとした。
言葉が──まともに出ない。涎が──唇の端から垂れた。
ちゅぽっ♡──じゅるっ♡──ちゅぱっ♡──。
音が──部屋に響いている。
暗殺者が──男のものを口に含んで、ニュルニュルの先走り液をすすっている音。
「ぷはっ──」
一度──口を離した。
唾液と先走り液が混ざった糸が──私の唇と先端の間に、ぬるっと引いた。
結城リトが──笑っていた。
「あはは──ヤミ、にゅるにゅるって──お前──」
「笑わないでください。真剣にやっています」
「いや──可愛すぎて──」
「可愛くないです。殺──んっ♡」
結城リトの手が──私の胸に、触れた。
黒いボンテージの上から──胸の膨らみを、掌で包み込まれた。
くにっ♡──。
「ひっ──♡」
背筋に──電流が走った。
胸を──揉まれている。大きな手が──布地越しに、柔肉を捏ねるように──。
ぐにっ♡──ぐにっ♡──。
「んっ──ちょ──胸は──っ♡」
「ヤミの胸──柔らかい」
「や──っ──触らないで──と言って──っ♡」
言いながら──身体が、逃げていない。
むしろ──前のめりになっている。
結城リトの手に──胸を押し付けるように。
(……嘘──何──この身体──勝手に──)
胸が──布地の下で、熱くなっている。
乳首が──硬く尖って、ボンテージの布地に擦れるたびに──びくっ、と腰が跳ねる。
こりこりっ♡──。
親指で──乳首の先端を、布地の上から弾かれた。
「あっ♡──そこ──だめ──っ♡」
(──もっと──)
声と──心が、逆のことを言っている。
口では──やめてと言いながら。
身体は──もっとと叫んでいる。
結城リトの手が──胸を揉みながら、ボンテージの布地をずらそうとしている。
肩の留め具に──指がかかって──。
ぱちんっ──と、留め具が外れた。
黒い布地が──ずるっと落ちて──白い胸が、露わになった。
形のいい──大きすぎず、小さすぎない双丘。桜色の乳首が──硬く勃起して、ぷっくりと突き出ている。
「綺麗だな──ヤミ」
「見ないでください──殺し──あっ♡」
直接──乳首に触れられた。
指先が──硬くなった乳首を、くりっと転がした。
こりっ♡──。
「ひぁっ♡──っ♡♡」
全身が──びくんっと震えた。
直接触れられると──布地越しとは比べ物にならない。
電気が──乳首から全身に走って──下腹部が──きゅうっと、締まった。
結城リトの陰茎が──私の太腿の間で、さらに硬くなっているのがわかる。
カリ首が──私の下腹部に押し付けられて──先走り液が、お腹の肌をぬるっと濡らしている。
「ヤミ──もう──出そう──」
結城リトの声が──切羽詰まっていた。
出そう──。
射精しそう──ということ。
私は──身体を起こした。
結城リトの腰の上で──姿勢を正した。
聳り立つ陰茎が──私の股間の直下にある。
下着を脱いだ──裸の陰裂が──カリ首の先端と──数ミリの距離。
先走り液と愛液が──にゅるにゅると、私の太腿の内側を伝っている。
私は──結城リトを、見下ろした。
葡萄酒色の目で──涼やかな目を、見つめた。
「──まだ、出さないでください」
「え──」
「これから──です」
結城リトの目が──大きく見開かれた。
私は──腰を、ゆっくりと──下ろし始めた。